説明

荷電粒子ビーム照射デバイス及び荷電粒子ビーム照射デバイスを動作させるための方法

【課題】エミッタ表面を有する冷陰極電界エミッタを含む荷電粒子ビーム照射デバイス、特に電子ビーム照射デバイスを動作する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、(a)所与の引き出し電界下で高い初期照射電流と低い安定平均照射電流とを示す冷陰極電界エミッタを真空中に配置する段階と、(b)エミッタ表面から電子を照射するために冷陰極電界エミッタに引き出し電界を印加して、冷陰極電界エミッタの照射電流が安定平均照射電流よりも高くなるようにする段階と、(c)少なくとも1つの加熱パルスを印加してエミッタ表面を温度にまで加熱することにより清浄化処理を行い、清浄化処理は、冷陰極電界エミッタの照射電流が低い安定平均照射値にまで低下する前に行われるようにする段階と、(d)清浄化処理(c)を繰返して、冷陰極電界エミッタの照射電流が安定平均照射値を連続的に上回るように維持する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム装置の分野における改良に関し、更に詳細には、冷陰極電界エミッタ(cold field emitter)を含む電子ビーム照射デバイスを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷陰極電界放出型エミッタ等の荷電粒子ビームエミッタは、これらの輝度が高いこと、照射源サイズが小さいこと、及びエネルギー拡散が低いことに起因して大きな可能性を有する。冷陰極電界エミッタは通常、タングステンワイヤのループに装着される極細尖端に形成されたタングステン結晶を含む。極細尖端はまた、エミッタ先端と呼ばれることも多い。冷陰極電界エミッタに電圧を印加すると、エミッタ先端の湾曲が小さいことにより、極めて高い電界がエミッタ先端に形成される。この高電界により、冷陰極電界エミッタが置かれている真空と金属との間のポテンシャル障壁を電子が通過することが可能になる。従って、この設定される電界は、エミッタ先端から電子を「引き出す」ので、引き出し電界と呼ばれる場合もある。熱放射を可能とする程十分な温度まで加熱されるいわゆる熱エミッタと比較すると、冷陰極電界エミッタは加熱されず、その結果、強い電界が存在することによって電子が照射されるだけである。引き出し電界の電界強度は、高度に湾曲したエミッタ先端の近傍においてのみ十分に強いので、電子はそこからのみ照射され、結果として点状電子照射源が得られる。
【0003】
冷陰極電界エミッタは、輝度、照射源サイズ、及び低エネルギー拡散に関して優れた利点があるにも関わらず、冷陰極電界エミッタの照射特性を大きく変化させる真空残留ガス分子の吸着及び脱着によって不安定且つ敏感であることが知られている。適度に安定した照射を得るためには超高真空が必要とされ、典型的には、1.33×10-7Pa(10-9Torr)より優れており、限定的には、1.33×10-9Pa(10-11Torr)よりも優れている。基本的には圧力が低い程真空は良好であり、従って安定性も良好である。
【0004】
一定の引き出し電界の下での清浄な冷陰極電界エミッタの典型的な照射特性は、初期高照射電流I0を示す。標準状態で(すなわち一定の引き出し電界、所与の真空、及び一定の低温下で)更に動作すると、照射電流は、エミッタ先端表面上への真空中の残留ガス分子の吸着が増大することによって連続的に低下する。同時に、エミッタ表面に付着するガス分子は、エミッタ表面から脱着し始め、これにより一定の時間期間後にはガス分子の吸着と脱着とが平衡状態となる。平衡状態に達すると、換言すれば吸着と脱着との動的平衡が確立すると、照射電流は実質的に安定し、安定平均照射電流ISを有するようになる。この平衡状態の下では照射電流は、初期高照射電流I0をはるかに下回る実質的に安定平均照射電流ISの前後を変動する。冷陰極電界エミッタの例証的な照射電流は、Okumura他(US4,090,106)の図1に示されており、本出願の図4において再現されている。図4に示されるように、照射電流Iは、I0から安定平均照射電流I1(=IS)にまで低下する。この期間は、初期不安定期間と呼ばれる場合もある。照射電流の安定化に要する時間及び照射電流低下の範囲は、真空度に依存する。平衡状態はこの真空度に応じて数分後には確立される。従来的には、安定した照射の期間は安定照射期とも呼ばれる。
【0005】
一定の照射電流を得るために、Okumura他は、初期不安定領域の間においても照射電流がおよそISに維持されるように引き出し電界の電界強度を制御することを提案している。具体的には、エミッタ先端が依然として清浄な電界照射の開始時において、低い引き出し電界が印加され照射電流をISに維持する。これより以降の動作時には、一定の電界状態では発生するはずの照射電流の低下を補償するために引き出し電界の電界強度が引き上げられる。
【0006】
平衡状態は、正に帯電したイオン又は分子によって影響される可能性があり、これらのイオン又は分子は引き出し電界によってエミッタ先端表面に向かって加速され、結果として照射電流を変動させる。エミッタ先端表面上に衝突する分子又はイオンは、吸着されたガス分子の部分的脱着、従ってエミッタ先端からの残留ガス分子の一時的な除去に至り、結果として照射電流の一時的上昇を生じる。この作用は連続的なガス分子の吸着によって相殺されるときに、照射電流の変動が観測される。変動は長期間の動作にわたりより大きくなり、Okumura他の注釈を用いると、大きな変動が観測される時には、末期の不安定領域に達している。最悪の場合、この変動は、脱着の雪崩現象、続いて無制御照射を引き起こす恐れがある。引き出し電界の電界強度を速やかに低減させることができない場合には、エミッタ先端が破壊される可能性がある。
【0007】
変動を低減し、照射電流を増大するための様々な手法が提案されてきた。例えば、電子を引き出すのに必要とされる電圧を下げるために、低い仕事関数を有する材料でエミッタ先端を被覆することができる。或いは、ZrO/W[100]Shottkyエミッタ等のエミッタ先端は、約1800Kから2000Kまで加熱され、電子照射を熱的に誘導することができる。しかしながら、このようなエミッタは、「冷陰極」エミッタではない。冷陰極エミッタとは異なり、高温又は熱エミッタは、エミッタ先端からだけではなく全エミッタ表面から照射するため、冷陰極エミッタのように点状照射源を有さない。変動を低減させる別の選択肢は、真空を改善することである。しかしながら、この手法は極めて高価であり、維持管理費用が増大する。
【0008】
また、所与の長期間動作後にエミッタ先端の汚染除去を行うことが提案されてきた。典型的にはエミッタ先端は、フラッシングとも呼ばれる短い加熱パルスによって清浄化され、この間、エミッタ先端は吸着ガス分子の顕著な脱着を引き起こすのに十分な高温に加熱される。例えば上記で参照されたOkumura他によって開示されているように、エミッタ先端は、ほぼ平均安定照射電流ISの変動が顕著になると電気ヒータを用いてフラッシングすることによって清浄化される。従って、汚染除去間隔は通常数時間の範囲である。また例えば、Iwasaki(US5,491,375)によって説明されているように、照射を平均照射電流ISで安定に維持するために、陰極線型電子銃のエミッタ先端を一定時間間隔で加熱することは公知である。更に、Steigerwald(US2004/0124365)は、部分的汚染除去のためにエミッタ先端に合焦された光子ビームを用いてエミッタ先端を約1300Kから1500Kまで加熱することを提案している。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,090,106号公報
【特許文献2】米国特許第5,491,375号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0124365号公報
【特許文献4】米国特許第3,817,592号公報
【特許文献5】米国特許第3,947,716号公報
【非特許文献1】W.K.Lo他の「窒化チタニウム被覆タングステンの冷陰極電界照射源(Titanium nitride coated tungsten cold field emission sources)」、J.Vac.Sci.Thechnol.B14(6)、11月/12月1996年、3787−3791
【発明の開示】
【0010】
上述のことを考慮して、エミッタ表面を有する荷電粒子ビーム源を含む荷電粒子ビーム照射デバイスを動作するための方法が提供され、本方法は、
(a)所与の動作条件下で高い初期照射電流I0と低い安定平均照射電流ISとを示す荷電粒子ビーム源を所与の圧力の真空中に配置する段階と、
(b)エミッタ表面から荷電粒子を照射するために荷電粒子ビーム源に所与の動作条件を適用して、荷電粒子ビーム源の照射電流が安定平均照射電流ISよりも高くなるようにする段階と、
(c)少なくとも1つの加熱パルスを荷電粒子ビーム源に印加してエミッタ表面を温度TCにまで加熱することにより清浄化処理を行い、これにより荷電粒子ビーム源の照射電流が低い安定平均照射値ISにまで低下する前に清浄化処理を行うようにする段階と、
(d)清浄化処理(c)を繰返して、荷電粒子ビーム源の照射電流が実質的に安定した平均照射値ISを連続的に上回るように維持する段階と、
を含む。
【0011】
以下の明細書における用語「粒子」及び「荷電粒子」は、本明細書全体を通じて同意語として用いられ、あらゆるタイプの荷電粒子を意味する。更に、用語「粒子ビーム源」及び「荷電粒子ビーム源」もまた本明細書全体を通じて同意語として用いられる。荷電粒子の例は電子及びイオンである。上述の方法の態様によれば、粒子ビーム照射デバイスは電子ビーム照射デバイスであり、粒子ビーム源は電子を照射するための電子エミッタであり、所与の動作条件は、電子エミッタのエミッタ表面に印加される所与の圧力及び所与のエネルギーを含む。電子エミッタの例は、光エミッタ、電界アシスト光エミッタ、及び冷陰極電界エミッタである。光エミッタ及び電界アシスト光エミッタでは、所与の波長の放射が光電子放出を誘導するのに十分であるので、エネルギーは少なくとも部分的に印加される。対照的に冷陰極電界エミッタは、エミッタ表面に印加される強い引き出し電界によって電子を放出する。
【0012】
粒子を放射するのに熱供給を必要としないエミッタに対しては、頻繁な清浄化が特に好適である。そのため、荷電粒子ビーム源に関係する場合には、いわゆる「冷陰極」エミッタは、特に冷陰極電界エミッタ、光エミッタ及び冷イオンエミッタなどを意味する。従って、1つの態様によれば、荷電粒子ビーム源は「冷陰極」エミッタであって、粒子を放出するのに十分なエネルギーを供給するために加熱される「熱」エミッタではない。
【0013】
電子ビーム照射デバイスの場合には、上述の方法は、エミッタ表面を有する冷陰極電界エミッタを含む電子ビーム照射デバイスを動作するために提供され、本方法は、
(a)所与の引き出し電界下で高い初期照射電流I0と低い安定平均照射電流ISとを示す冷陰極電界エミッタを所与の圧力の真空中に配置する段階と、
(b)エミッタ表面から電子を照射するために冷陰極電界エミッタに所与の引き出し電界を印加して、冷陰極電界エミッタの照射電流が安定平均照射電流ISよりも高くなるようにする段階と、
(c)少なくとも1つの加熱パルスを冷陰極電界エミッタに印加してエミッタ表面を温度TCにまで加熱することにより清浄化処理を行い、これにより清浄化処理は、冷陰極電界エミッタの照射電流が低い安定平均照射値ISにまで低下する前に行われるようにする段階と、
(d)清浄化処理(c)を繰返して、冷陰極電界エミッタの照射電流が実質的に安定平均照射値ISを連続的に上回るように維持する段階と、
を含む。
【0014】
本発明の更なる利点、特徴、態様、並びに詳細は、請求項、明細書、及び添付図面から明らかである。本発明は主に電子ビーム照射デバイスに関して説明されているが、本発明はこれに限定されず、イオンビーム照射デバイスなどの粒子ビーム照射デバイスにも一般に適用することができる。以下で説明される方法は、エミッタ表面を残骸及び汚染物が連続的又は実質的に存在しない状態に維持して、極めて高い照射電流を得て、粒子エミッタの寿命を延ばすためのあらゆるタイプの荷電粒子ビーム照射デバイスにも好適であることは、当業者であれば明らかであろう。
【0015】
清浄化処理を頻繁に行うことにより、エミッタ表面からの照射は、冷陰極電界電子エミッタが通常動作する安定平均照射電流を上回る極めて高レベルに維持することができる。冷陰極電界エミッタの一般照射特性を参照すると、冷陰極電界エミッタは、本方法によって照射が初期不安定領域に留まるように動作される。この領域では、吸着ガス分子の量が頻繁な加熱又はフラッシングによって連続的に最小に保たれるので、安定した領域よりも変動があまり顕著ではない。従って、照射は、低ノイズ(短期安定性)を示す。これに加えてエミッタ表面は、頻繁なフラッシング(加熱パルス)によって連続して清浄化され、雪崩脱着の危険性、すなわち制御外照射が大幅に低減され、これによって冷陰極電界電子エミッタの寿命は有意に改善される。実際に、長期の安定性を伴う制限のない冷陰極電界エミッタ寿命が得られる。頻繁な加熱はまた、エミッタ表面が真空条件にも関わらず清浄に保たれることを保証する。照射電流は監視することができ、清浄化処理を開始させるための制御パラメータとして用いることができる。換言すると照射電流の測定変化を用いて、清浄化を起動することができる。
【0016】
以下により詳細に説明する頻繁な清浄化は、エミッタ(例えば冷陰極電界エミッタ及び光エミッタなどの電子エミッタ)の連続的な高照射をもたらし、I0に近い照射電流を得ることができるので、このエミッタは従来動作されているエミッタよりもはるかに輝度が高い。有利には、より高い輝度は、結果としてより高速のイメージ取得及びより少ないイメージノイズといった、良好な光学性能をもたらす。
【0017】
単一の清浄化処理は、例えば10個の加熱パルス、特に2つから4つの加熱パルスといった1つ又はそれ以上の加熱パルスを含むことができる。単一の加熱パルスの持続時間及び連続する加熱パルス間の時間は、特定の要求に応じて選択することができる。単一の清浄化処理全体の持続時間は、電子ビーム照射デバイスの通常動作の中断を低減するために最小に保たれなければならない。清浄化中はエミッタ表面が、1800Kから2500K、好ましくは約2200Kから2500Kとすることができる温度TCにまで加熱される。
【0018】
他方、清浄化処理は、照射電流が安定平均照射電流を著しく上回って維持することが必要とされる度に繰返されなければならない。例えば、安定平均照射値ISよりも高い事前に定められた又は事前に決定された最小照射基準値ICは、IC=αI0と定義することができ、αは、例えば0.9、特に0.95、更に限定的には0.99とすることができる。ICは、許容可能な照射の下限を定める基準値として用いることができる。照射がICにまで低下すると、清浄化処理を開始し、エミッタ表面を清浄化して、照射を初期照射電流I0近くにまで戻す。
【0019】
本方法を言い換えると、清浄化処理は、照射電流Iが初期照射電流I0に対してβ=1−α倍だけ低下した時に開始される。初期照射電流I0を定義することも考えられる。この場合には、I0は安定平均照射電流ISよりもかなり高く、清浄化処理が開始される照射電流IC=αI0もまた、安定平均照射電流ISよりもかなり高く、照射電流がISをはるかに上回って保持されるようになる。そのため、照射電流はI0とICとの間で変動又は変化する。
【0020】
電子ビーム照射デバイスを動作するための方法の一態様では、事前に定められた又は事前に決定された最大値Imax及び事前に定められた又は事前に決定された最小値Imin=IC>ISが選択され、これにより平均偏差値ΔIはΔI=Imax−Iminで定義され、ΔI/Imax=γであり、清浄化処理は照射電流が最大照射値ImaxからIminにまで低下した時に行われる。値Imax及びIminは、これらが平均安定照射電流ISよりも有意に高くなるように選択される。Iminは、事前に定められた最小照射電流値であるICに等しい。平均偏差値γは、通常は偏差を小さく保持するよう小さい値である。従って、電子照射デバイスは、ISをはるかに上回る小さな照射電流帯域内に照射電流を保持するように動作される。よって、測定照射電流の安定性は、清浄化処理が必要とされるか否かの判断基準として選択することができる。照射帯域の幅、すなわち最大偏差は、ΔI=γImaxとなる。典型的にはγは約0.1であり、限定的には約0.05、更に限定的には約0.02、最も限定的には約0.01である。
【0021】
更に、エミッタ表面を有する冷陰極電界エミッタを含む電子ビーム照射デバイスを動作するための方法が提供され、本方法は、
(a)所与の引き出し電界下で高い初期照射電流I0と低い安定平均照射電流ISとを示す冷陰極電界エミッタを所与の圧力の真空中に配置する段階と、
(b)エミッタ表面から電子を照射するために冷陰極電界エミッタに所与の引き出し電界を印加して、冷陰極電界エミッタの照射電流が安定平均照射電流ISよりも高くなるようにする段階と、
(c)引き出し電界の強度を調節して、照射電流が実質的に安定し且つ平均安定照射電流ISを連続的に上回ってISよりも高い事前に定められた値ICに維持する段階と、
(d)少なくとも1つの加熱パルスを冷陰極電界エミッタに印加してエミッタ表面を温度TCにまで加熱することにより清浄化処理を行い、これにより引き出し電界の強度が事前に定められた基準値を超える時に清浄化処理を行うようにする段階と、
(e)調節段階(c)及び清浄化処理(d)を繰返して、冷陰極電界エミッタの照射電流が実質的に安定した照射値ISを連続的に上回るように維持する段階と、
を含む。
【0022】
照射電流の安定性を改善するために、引き出し電界の電界強度は、連続する清浄化処理間の照射電流変化を補償するように調節される。例えば、引き出し電界の電界強度を高めることにより、増加する汚染に起因する照射電流の低下を補償することができる。一般的には引き出し電界を発生させるために印加される電圧Uによって定義される引き出し電界の電界強度が、基準電圧Umaxによってこれに相応して定義される事前に定められた基準値を超えると、清浄化処理が開始されエミッタ表面を清浄化する。照射電流を安定に保つために必要とされる電圧Uの上昇は、エミッタ表面の汚染が増大したことを示す。この増大は、一定の電圧U、よって一定の引き出し電界を印加する場合、清浄化が行われない場合には結果として照射電流の観測可能な減少を生じることになる。従って、引き出し電界を発生させるために印加される電圧は、清浄化処理を開始させるための制御パラメータとして用いられ、その結果、照射電流を安定に保つために印加される電圧の上昇が清浄化を起動することになる。
【0023】
事前に定められた値ICは、IC=αI0として定義することができ、ここでα>0.9、特にα>0.95、更に限定的にはα>0.98、最も限定的にはα>0.99である。
【0024】
清浄化処理は、事前に決定された間隔で周期的に適用するか、又は要求に応じて適用することができる。
【0025】
通常、主清浄化処理は、動作の開始時に任意選択的に行われる。この主清浄化処理又は主フラッシングは、電子ビーム照射デバイス内に配置されているフィラメント又は他の構成要素を加熱することにより拡散される可能性がある炭素又は他の不純物等の残留する吸着物から先端を清浄化するのに必要とされる。主フラッシングは、新しいエミッタ先端に対して、及びエミッタ先端のエミッタ表面が汚染され照射電流が明らかに低過ぎる時にのみ使用されることになる。主清浄化処理中、エミッタ表面は、通常清浄化処理の温度TCよりも高い温度TMCにまで加熱される。例えば、TMCは約2500Kから2800Kの範囲内とすることができる。典型的には、これは、冷陰極電界エミッタに大きな損傷を与える可能性があるエミッタ先端からの強い照射を回避するために、主清浄化処理中には引き出し電界は発生されない。
【0026】
別の実施形態では、ビルドアップ処理が一定の間隔で行われ、又は要求に応じて行われる。ビルドアップ処理は、冷陰極電界エミッタの先端を尖鋭化するための方法である。この目的のためには、冷陰極電界エミッタは、該エミッタの材料の表面原子の十分な移動度を確保するために十分に高い温度まで加熱されなければならない。エミッタ頂点へ向かう表面原子の移動を引き起こしてエミッタ先端を再形成するために、エミッタ表面に高静電界が印加される必要がある。
【0027】
上述の方法の別の態様によれば、清浄化処理は、荷電粒子ビーム照射デバイス又は電子ビーム照射デバイスの非動作期間と自動的に同期される。通常、荷電粒子ビーム照射デバイスの非動作又は非アクティブ期間は、サンプル又は試料から粒子ビーム又は電子ビームがデフォーカス又は偏向される期間を意味する。換言すると、非動作又は非アクティブ期間中は、発生する荷電粒子ビームは意図する目的又は機能のために使用されない。このような目的又は機能は、表面を画像化するためのサンプル又は試料表面の走査(電子顕微鏡検査)、表面の化学組成を分析するためのサンプル又は試料表面の一部の微量分析、及び半導体産業においてリソグラフィマスクとして使用されるレチクルを製造するための電子ビームによる試料表面処理を含む。非動作又は非アクティブ期間中には、荷電粒子ビームは発生されるが、サンプル又は試料表面上へは配向されず、及び/又はこの表面に対してデフォーカスされる。他方、動作又はアクティブ期間中では、粒子ビームは、サンプル又は試料表面上に配向され合焦される。動作及び非動作期間、或いはアクティブ及び非アクティブ期間はそれぞれ、連続して交互する。荷電粒子ビーム照射デバイスの動作の通常モードは動作及び非動作期間を含み、荷電粒子ビームは通常動作中に連続的に発生し、非動作期間中には中断されないことは注目に値する。
【0028】
非動作期間は、タイマーのインパルス、照射電流の低下、サンプル又は試料の交換、粒子ビーム照射デバイス又は電子ビーム照射デバイスの較正、サンプル又は試料の移動、及び/又はステージの移動によって起動し、従ってこれらに対応することができる。これらの例示的な事象中には、例えばサンプル又は試料が交換されるので、粒子ビーム照射デバイスは、その意図された目的のためには利用されない。
【0029】
更に一般的には、エミッタ表面を有する荷電粒子ビーム源を含む荷電粒子ビーム照射デバイスを動作するための方法が提供され、本方法は、
(a)荷電粒子ビームを発生させる段階と、
(b)発生した荷電粒子ビームをサンプル又は試料上に合焦させる段階と、
(c)トリガー事象(triggering event)の発生に基づいてエミッタ表面の清浄化のための清浄化処理を自動的に実行する段階と、
を含む。
【0030】
荷電粒子ビームは、清浄化処理中にサンプル又は試料からデフォーカス又は偏向させることができる。
【0031】
別の態様では、荷電粒子ビーム照射デバイスが提供され、これは、
エミッタ表面を含む、荷電粒子を照射するための荷電粒子ビーム源と、
荷電粒子ビーム源に電圧を印加して荷電粒子ビームを発生させるための電圧ユニットと、
エミッタ表面を加熱するための加熱要素と、
トリガー信号(triggering signal)を受け取るための入力部を含む制御ユニットと、
を含み、
制御ユニットは、トリガー信号を受け取ると、加熱要素を制御して、荷電粒子ビームの発生中に荷電粒子ビーム源のエミッタ表面に少なくとも1つの加熱パルスを印加するように動作する。
【0032】
1つの実施形態では、荷電粒子ビーム照射デバイスはビームブランカを含み、制御ユニットは、トリガー信号を受け取るとビームブランカを制御して、発生した粒子ビームを偏向させるように動作する。別の実施形態では、荷電粒子ビーム照射デバイスは、荷電粒子ビームをサンプル又は試料上に合焦及びデフォーカスするための合焦ユニットを含み、制御ユニットは、トリガー信号を受け取ると、合焦ユニットを制御して、発生した荷電粒子ビームをサンプル又は試料に対してデフォーカスするように動作する。
【0033】
別の実施形態によれば、荷電粒子ビーム源のエミッタ表面は250nmよりも小さな曲率半径を有する。
【0034】
別の実施形態によれば、荷電粒子ビーム照射デバイスは、荷電粒子ビーム源の照射電流を測定するための測定要素と、照射電流が事前に定められた値にまで低下した時にトリガー信号を供給するように適合されたトリガーユニット(triggering unit)とを含む。代替的に、又はこれに加えて、荷電粒子ビーム照射デバイスは、試料を移動可能に支持するための支持要素と、該支持要素を制御するためのモーションコントローラユニットと、支持要素の移動に基づいてトリガー信号を供給するように適合された同期手段とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】電子ビーム照射デバイスの一般的な配置を示す図である。
【図2】1つの実施形態による方法の主な段階を示す図である。
【図3】ある実施形態による加熱パルスの特徴を示す図である。
【図4】冷陰極電界エミッタの一般的な照射特性を示す図である。
【図5】照射電流を制御パラメータとして利用することによって清浄化を制御したときの照射電流の時間的推移を示す図である。
【図6】引き出し電界を発生させるために印加される電圧を制御パラメータとして利用することによって清浄化を制御したときの照射電流の時間的推移を示す図である。
【図7】清浄化処理をトリガー事象と同期するための主な段階を示す図である。
【図8】1つの実施形態による粒子ビーム照射デバイスの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の最良の態様を含む、当業者に対する本発明の完全且つ実施可能な開示事項は、本明細書の以下の部分において添付図面の参照を含めてより詳細に説明される。
ここで種々の実施形態を詳細に参照し、それらの実施例が各図面で例示される。以下の図及び説明では同じ数字は同じ要素を示している。実施例は説明の目的で提供され、本発明を限定するものではない。例えば、1つの実施形態の一部として例示又は説明される特徴は、他の実施形態において又はこれと関連して用いて、別の実施形態をもたらすことができる。本発明はこのような修正及び変更を含むものとする。
【0037】
冷陰極電界エミッタの照射電流を極めて高レベルに維持するために、冷陰極電界エミッタ、特にそのエミッタ表面は、該エミッタ表面に付着した汚染物を除去するよう頻繁に、例えば周期的に清浄化される。本発明をより良く理解するために、冷陰極電界エミッタの一般的な照射特性を示す図4を参照する。図4はOkumura他(US4,090,106)の図1を再現したものである。一般に、冷陰極電界エミッタのエミッタ表面は適切な真空中に置かれ、この真空は少なくとも1.33×10-7Pa(10-9Torr)、特に1.33×10-9Pa(10-11Torr)よりも低い圧力を有する必要がある。ここで、冷陰極電界エミッタのエミッタ表面が清浄である、すなわちいかなる残骸又は汚染物も存在しないと仮定する。エミッタ先端の材料自体中の不純物、加熱フィラメントから放出される不純物、及び/又はエミッタ表面を部分的に汚染する真空中の残留ガス分子が常に存在するので、完全に清浄なエミッタ表面は実際には得られないことは当業者には明らかである。従って、清浄なエミッタ表面と呼ぶ場合、残骸及び汚染物がエミッタ表面にほぼ存在しないことを意味する。
【0038】
清浄なエミッタ表面を有する冷陰極電界エミッタは、極めて高い照射電流を照射する。照射電流のレベルは、印加される引き出し電界の電界強度に強く依存する。電界照射を観測するためには、電界強度は約10MVcm-1及びこれを上回る範囲でなければならない。このような高電界強度では、エミッタ表面材料と真空との間に存在するポテンシャル障壁の幅は狭くなり、その結果、電子は波動力学のトンネル効果によってこの障壁を越えることができる。エミッタ表面の近傍でこのような高電界を発生させるためには、約0.1μm又はそれ以下の曲率半径を有する点状エミッタ先端が使用される。電界強度は曲率半径に反比例するので、先端において高度に湾曲した表面のみが有効なエミッタ表面を形成する。エミッタの小さく湾曲した部分の近傍では、電子を感知できる程引き出すには確立された電界では弱すぎるので、電子は、冷陰極電界エミッタの先端、すなわち点状電子源を形成する先端からのみ引き出される。
【0039】
引き続き図4を参照すると、時間t0における所与の真空中の所与の引き出し電界での清浄なエミッタ表面の初期照射電流が、横座標に示されたI0で表されている。これ以降の標準動作では、すなわち一定の引き出し電界、一定の真空状態、及び一定の低温の下では、照射電流はエミッタ表面上でのガス吸着の増大に起因して時間と共に顕著に低下する。吸着はガス脱着によって次第に平衡がとられると、エミッタ表面の一時的に安定した汚染をもたらす一定時間後には吸着と脱着との動的平衡になる。動的平衡又は平衡のとれた領域が形成されると、冷陰極電界エミッタの照射電流は、安定平均照射電流の前後の変動は別として、実質的に一定に保持される。図4では平衡のとれた領域は、照射電流が、初期照射電流I0よりも実質的に低い値I1まで低下した時間t1に到達する。冷陰極電界エミッタの照射特性の具体例は、例えばW.K.Lo他の「窒化チタニウム被覆タングステンの冷陰極電界照射源(Titanium nitride coated tungsten cold field emission sources)」、J.Vac.Sci.Thechnol.B14(6)、11月/12月1996年、3787−3791において開示されている。この科学論文の図3(A)では、照射電流が300秒以内に約800μAから500μAに低下することを示している。照射は少なくとも1時間の間ほぼ安定した状態を維持する。本出願の図4に戻ると、照射電流が低下するt0とt1との間の初期段階は、多くの場合初期不安定領域と呼ばれ、この初期不安定領域に続く段階、すなわち時間t1後の領域は安定領域と呼ばれる。
【0040】
通常、電子ビーム照射デバイスは、長期間にわたってほぼ安定した照射を得るために、安定領域内、すなわち平衡状態が確立した後で動作されてきた。W.K.Lo他の図3(A)から明らかになるように、この安定領域における照射電流Iは清浄なエミッタ表面の初期照射電流よりも実質的に低い。
【0041】
上述のことから、本発明は照射電流を著しく増大させ、これを極めて長期間にわたって高いレベルに維持することを達成した。本発明の重要な概念に従って、冷陰極電界エミッタは初期の不安定領域において連続的に動作される。この目的のために、最初に清浄なエミッタ表面は、エミッタ表面から汚染物を除去して照射電流を取得可能な最大照射電流近くに維持する清浄化処理を頻繁に受ける。清浄化処理は、時間tCの経過後に開始され、ここでtCは、t0とt1(図4での)との間、すなわち換言すると、照射電流が平均安定照射値IS(図4でのI1)に落ち込む前である。清浄化処理を完了した後、照射電流は上昇し、特にその初期の高照射電流I0を取り戻す。清浄化処理は、更なる時間期間tCが経過した後に繰り返えされ、或いは、照射電流がIS(=I1)とI0との間の事前に選択された基準値ICに低下した時に繰返される。結果として照射電流は、清浄化が頻繁に行われることにより、ICとI0との間で変化する。
【0042】
清浄化処理の開始が、照射電流の低下によって決定される場合には、清浄化処理を制御するために照射電流が適切なデバイスで測定される必要がある。上述の照射電流制御の代わりに、或いはこれと組み合せて、清浄化処理は、事前に定められた時間間隔の後に繰返すことができ、この時間間隔は、安定平均照射電流ISを上回って連続的に照射が維持されるように選択することができる。冷陰極電界エミッタの特定のタイプについて事前に対照測定を行い、後でそれぞれの清浄化間隔を選択するための基準として機能する、各タイプの固有の放射特性を得ることができる。
【0043】
清浄化処理が開始する値ICは、IC=αI0と定義することができ、ここでαは0.8から0.99の範囲、特に0.9と0.99との間の範囲とすることができる。選択されるαの値が高い程、冷陰極電界エミッタが動作される平均照射電流が高くなる。また他方では、極めて高いαはまた、清浄化処理の極めて頻繁な繰返しを必要とし、これは、アクティブ期間と非アクティブ期間との間のより頻繁な切り替りにつながる。従って、値αは、中断を少なく保ちながら極めて高い照射電流を維持するように選択する必要がある。
【0044】
各単一の清浄化処理の持続時間が同時に短縮されることで、清浄化処理は必要とされているよりもより頻繁に繰返すことができる点は注目すべきである。この場合には、単一の清浄化処理は、単一の加熱パルス(フラッシング)だけを含むことができる。単一の清浄化処理は、エミッタ表面を完全に清浄化し照射電流をI0にまで戻すには十分ではない可能性があるが、エミッタ表面を前回の清浄化処理後と同じ清浄状態にするには十分である。清浄化処理は極めて頻繁に繰返されるので、従ってエミッタ表面は十分に清浄な状態に保たれる。他方汚染レベルは、清浄化処理が極めて頻繁で且つ短いことに起因して、あまり変化することはなく、従って、照射電流は実質的に安定した状態に留まる。その結果、照射電流の短期安定性が改善される。一例として、照射電流は、上限値が約0.95I0から下限値が約0.93I0の間で変動又は変化することができる。換言すると、照射電流は、最大値Imaxと最小値Iminとによって定義される照射電流帯域内に保たれる。ImaxとIminとの間の差異は、ΔI=Imax−Imin=γImaxとして定義される。照射電流帯域の幅はΔI=γImaxで与えられる。例えばγが約0.1の場合、照射電流帯域はImaxの約10%の幅を有し、γ=0.05はImaxの約5%の幅を与え、γ=0.02はImaxの約0.02%の幅を与えることになる。従って照射電流は、頻繁な清浄化により、Imax及びγによって定義される照射電流帯域内に保たれる。
【0045】
清浄化処理は、冷陰極電界エミッタが作動している時に特に行われる点に留意されたい。通常モード、すなわち照射される電子ビームが試料を照らすモードの中断はできる限り短く保たれることを確実にする必要がある。単一の清浄化処理は実質的に5分よりも短くなければならない。好ましくは、単一の清浄化処理は、60秒、或いは実質的にそれよりも短く、例えば20又は10秒よりも短くすることができる。単一の清浄化処理の持続時間は、汚染レベルに応じて調節することができる。或いは、照射電流がその初期照射値とされたとき、又はこれに近い値に到達した時に清浄化処理が停止するように、清浄化中に照射電流を制御することができる。
【0046】
通常は、清浄化処理は、約60秒よりも長い、特に約240秒又は300秒よりも長い間隔で行われる。40分から10分毎(約240秒と約600秒との間の間隔)のエミッタ表面の清浄化は、多くの用途に対して十分であることが判明している。連続した清浄化処理の間の期間は、主に真空度によって決定される。真空度を高めることにより、必要とされる清浄化処理の頻度が少なくなる。極めて高度な真空又は超高真空の維持は多大な費用を要するので、異なるレベルの真空を有する分離した区画に粒子ビーム照射デバイスを分割することは有利である。例えば、粒子又は電子ビーム照射デバイスは3つのチャンバを含むことができる。超高真空が維持される第1のチャンバでは、粒子ビーム源が配置される。第2又は中間のチャンバは、粒子ビーム照射デバイスの光学軸方向に配置される。光学軸に沿って更に下側に第3又は試料チャンバが配置される。第1と第2のチャンバ及び第2と第3のチャンバはそれぞれ、差圧アパーチャによって互いに分離されている。第3のチャンバ内の圧力は、第2のチャンバ内のものよりも高く、次いで第2のチャンバ内の圧力は第1のチャンバ内のものよりも高い。従って、最も良い真空は第1のチャンバ内にある。様々なレベルの真空は、分離真空ポンプによって維持される。粒子ビーム照射デバイスの分割は、粒子ビーム源が配置される第1のチャンバの真空を極めて高レベルに保つことを可能にし、他の2つのチャンバ、特に試料表面との電子ビームの相互作用によって汚染が発生する第3のチャンバからの汚染物の侵入を阻止する。結果として第1のチャンバは汚染される可能性が低く、従って清浄化をそれほど頻繁に行う必要はない。粒子ビーム照射デバイスの分離チャンバの更なる態様及び詳細は、同一出願人のWO2005/027175から推定することができ、その開示事項は引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
電子ビーム照射デバイスが、半導体ウェーハ上に形成される集積回路の製造中のプロセス診断又はウェーハ検査に使用される電子顕微鏡である場合には、清浄化処理は、画像化又は試料作業と組み合せて適用することができる。例えば、清浄化処理は、延長フレームブランキングの間隔においてのみ行うことができる。例えば、CD/DR(限界寸法/欠陥調査)ウェーハ検査では、清浄化処理は、ウェーハ交換作業間の約10秒の取り替え時間内に行うことができる。他の電子ビーム照射デバイスは、透過電子顕微鏡(TEM)及び走査透過電子顕微鏡(STEM)であり、これらはエミッタを頻繁に清浄化することによって得られる輝度改善及びノイズ低減により大きな恩恵がもたらされる。
【0048】
単一の清浄化処理は、エミッタ表面を十分に高い温度TCに加熱して汚染除去を誘起するための1つ、2つ、又はそれ以上の加熱パルスを含むことができる。1つの実施形態によれば、TCは約2200Kから2500Kの範囲にある。この温度範囲は、タングステンを含む冷陰極電界エミッタに特に好適である。TCは、エミッタに使用される材料に応じて変化する場合がある。当業者であれば、説明した方法に基づいて他の材料に好適な温度範囲を容易に識別することができる。パルス幅は、約1秒から2秒といった短時間でなければならない。図3に加熱パルスの実施例が示されている。図3に示されている加熱パルスは、制御電流インパルスを冷陰極電界エミッタに印加し、エミッタ表面を含む冷陰極電界エミッタを抵抗加熱で加熱することによって生成される。エミッタ表面を所与の温度まで加熱するのに必要とされる電流は、とりわけ冷陰極電界エミッタに電流を流すタングステンワイヤの抵抗に依存する。一般に単一の清浄化処理は、2から4つの加熱パルスを含み、その各々は約1秒から2秒の持続時間を有する。加熱パルスは、1秒から3秒の間隔で印加することができる。しかしながら、他の数の加熱パルス、持続時間、及び間隔も同様に可能であり、特定の必要性に従って調節できることは当業者には明らかであろう。
【0049】
エミッタ表面が清浄化される温度は、先端半径の肥厚化が誘起されないように選択すべきである。高温では冷陰極電界エミッタ材料、例えばタングステンの表面原子の移動度が高くなる。しかしながら、材料は溶融せず、加熱温度は使用される材料の溶融温度よりもはるかに下回る。エミッタ先端は大きく湾曲しているため、エミッタ表面は、表面を平坦化又は鈍化にする傾向を備えた高い表面張力を示す。従って、高表面張力は、エミッタ先端を再形成させる可能性がある。清浄化温度があまり高くない場合には、冷陰極電界エミッタ材料の原子は、エミッタ先端の再形成を誘起する程十分な移動性がない。
【0050】
冷陰極電界エミッタの加熱中に、熱放射が誘起される可能性がある。熱放射はエミッタ先端、すなわち先端において大きく湾曲したエミッタ表面だけでなく、冷陰極電界エミッタ表面の他の部分においても発生すると考えられるので、電界照射から生じる照射電流を超える可能性のある高電子シャワーが発生する場合がある。この一時的に追加される熱放射電流は、エミッタ先端及び/又は電子ビーム照射デバイスの精巧な部品、或いは電子ビーム照射デバイス内に配置されるサンプルに大きな損傷を与える可能性があるので、清浄化中に熱放射を低減させるために適切な処置が必要とされる。1つの選択肢は、いわゆる抑制電極の使用である。抑制電極は、冷陰極電界エミッタの周囲に配置された特別な形状にされた電極である。抑制電極の例示的な配置が図1に示されており、以下で更に詳細に説明する。典型的には抑制電極は、エミッタ先端が貫通して突出する中央開口を有する。抑制電圧が抑制電極に印加され、これにより抑制電極は冷陰極電界エミッタに対して低い電気ポテンシャルを有するようになる。従って、抑制電圧は反発作用を有し、熱放射を抑制する。抑制電圧は、清浄化処理中のどのような望ましくない照射も実質的に抑制するように選択する必要がある。一例として、約300Vから1000V、好ましくは約700Vから1000Vの抑制電圧を印加することができる。
【0051】
抑制電極の使用に加え、或いはその代替として、清浄化処理中にビームブランカを印加することができる。ビームブランカは、静電界又は静磁界を印加することにより電子ビームを偏向させる電子ビーム偏向デバイスである。ビームブランカは、電子源、すなわち冷陰極電界エミッタと調査対象の試料又はサンプルとの間で電子ビーム照射デバイス内に組み込まれる。清浄化中、ビームブランカは冷陰極電界エミッタから照射される電子ビームを偏向させ、これにより電子が試料に衝突しないようになる。清浄化中に照射電流は10倍よりも高く上昇する場合があるので、この高照射電流の偏向は試料を損傷から保護する。
【0052】
良好な清浄化結果を得て、必要とされる清浄化点順の数を低減するため、すなわち清浄化手続きの頻度を少なく維持し、換言すると連続する清浄化処理間の間隔を長く維持するために、真空は高度なものでなければならない。限定的には6.65×10-9Pa(5×10-11Torr)の真空、更に限定的には1.33×10-9Pa(10-11Torr)又はそれよりも良好な真空は、汚染のレベル全体が比較的小さく、全体的な照射性能を改善し、清浄化処理に対する要求が小さくなる。
【0053】
本発明の別の実施形態では、ビルドアップ処理が周期的な間隔又は要求に応じて行われる。ビルドアップ処理は、冷陰極電界エミッタの先端を尖鋭化する方法である。この目的のために冷陰極電界エミッタ温度は、冷陰極電界エミッタ材料の表面移動度を確保にするために十分に高い温度まで高める必要がある。表面原子のエミッタ頂点に向かう移動を生じさせるためには、高静電界がエミッタ表面に印加される必要がある。表面移動は大きく湾曲したエミッタ先端の表面張力によって生じるので、表面原子上に作用する静電力が表面張力によって発生する力よりも大きくなるように、印加される静電界の電界強度が十分に高い必要がある。周期的なビルドアップ処理は、大きく湾曲したエミッタ表面の形状を維持し、表面張力及び通常動作中の材料の除去によって引き起こされる緩慢に進むエミッタ表面の鈍化を補償する。ビルドアップ処理は、予防措置として、或いは汚染によっては生じない照射電流の劣化が観察されるときに繰返すことができる。
【0054】
再形成処理は、互いに相反する2つの作用によって主に決定付けられる。1つの作用は、静電界の影響下でエミッタ先端が延伸する傾向であり、別の作用は、結果としてエミッタ先端の鈍化を生じる表面張力の影響である。従って、エミッタ先端が再形成される程度は、特定の温度及び静電界の電界強度を選択することによって制御することができる。要求があればエミッタ先端は、事前に選択された形状を有するように再形成することができる。形状、すなわち曲率半径が照射電流を決定付けるので、ビルドアップ処理は、照射電流を測定することによって監視することができる。Swanson(US3,817,592)及びFrazer,Jr.他(US3,947,716)によってそれぞれ説明されたビルドアップ処理とは異なり、上述のビルドアップ処理は真空チャンバ内に導入されることになるどのような追加のガスをも必要としない。更に、非被覆の冷陰極電界エミッタが通常用いられているので、例えば、Fraser,Jr.他によって説明されているような追加の被覆が要求されないように上述のビルドアップ処理を適用することができる。
【0055】
実施形態によれば、ビルドアップ処理の温度範囲は、材料及びエミッタ先端における印加電界強度に応じて約2000Kから3000Kの範囲内にすべきである。特にパルス加熱が印加される。追加のガス(例えばO2)を真空中に導入する必要はなく、従って、ビルドアップ処理中にはいかなるガス成分の分圧も一定状態になる。
【0056】
ここで図1を参照すると、半導体産業においてウェーハ検査又はプロセス診断(CR及びDR)に使用される走査電子顕微鏡(SEM)に基づく電子ビーム照射デバイスの実施例が示されている。図1は、冷陰極電界エミッタを含むデバイス、いわゆる電子銃のみを示している。しかしながらSEMは、いわゆるSEMのコラムを構成する静電及び静磁のレンズ、偏向器、ビームシェーパ等のようなより多くの構成要素を含むことは当業者には明らかであろう。
【0057】
半導体産業用途では、高輝度及び高分解能の粒子ビーム検査、評価、及びCDツールが必要とされる。詳細には、上述の清浄化法によって大きな恩恵を得る高分解能SEMが用いられている。SEMは、リソグラフィマスク及びウェーハの外観検査を可能とし、これにより製造品質を迅速且つ容易に評価することが可能となる。ウェーハ又はマスクが処理チャンバからSEMに移され、検査完了後は別のチャンバに入れられる。検査及び製造処理の中断を制限するために、ウェーハ又はマスクをSEMとの間で移動させるのに必要とされる交換時間期間は、特に清浄化処理を実行するのに使用される。従って、SEMのアクティブ期間又は動作期間、すなわち検査に利用可能な時間には影響しない。更に、1つの場所から別の場所へのステージ移動、又はシステム較正等のSEMツールの他の非アクティブ期間又は非動作期間も同様に、清浄化処理を開始できる時間フレームを提供する。コンピュータ制御システムを利用すると、エミッタ表面の清浄化とシステム動作とを同期させるために、取るべき全ての動作を管理することができる。
【0058】
SEMの電子照射銃は、U字形に曲げられたタングステンワイヤ1を含む。タングステンワイヤ1の曲げ部分には、極めて細い尖端又は先端(エミッタ表面)5に形成されたタングステン結晶4が溶接される。通常、[100]又は[310]配向を有する非被覆多結晶タングステン又は非被覆単結晶タングステンが使用される。タングステン結晶は冷陰極電界エミッタ2を形成する。図1では尖鋭な先端5がSEMの光学軸9に沿って下側に向いている。カップ状の抑制電極8が、冷陰極電界エミッタ、及び特にタングステン結晶4を囲んでいる。その中心には、抑制電極8が開口7を含み、タングステン結晶4がここを通って部分的に延び、先端5が抑制電極8を下側に突出させるようになる。引き出しアノード6は、抑制電極8及びエミッタ先端5に離間した関係で光学軸9に沿って配置されている。引き出しアノード6は、SEMの光学軸9に整合する中央開口を含む。通常動作中は、引き出し電圧が引き出しアノード6と冷陰極電界エミッタ2との間に印加され、引き出しアノード6が冷陰極電界エミッタ2に対して正のポテンシャルを有するようにする。尖鋭先端5によって、電界は先端5で大きく湾曲され、該先端近傍において高い引き出し電界強度を生じさせる。他方、抑制電極8は冷陰極電界エミッタ2に対して負のポテンシャルを有し、先端を除く冷陰極電界エミッタ及びタングステンワイヤの一部を引き出し電界から遮蔽する。印加された抑制電圧によって発生する抑制電界は、実質的に引き出し電界を弱め、先端のみが引き出し電界に暴露されるようになる。清浄化中に抑制電界は、冷陰極電界エミッタからの望ましくない熱放射を抑制する。
【0059】
冷陰極電界エミッタ2は、SEMの他の部分と共に高真空チャンバ10内に配置される。真空は、6.65×10-9Pa(5×10-11Torr)よりも良好な範囲内でなければならない。真空が良好である程(すなわち圧力が低い程)、エミッタ表面はの汚染がより緩慢になる。上述のように、真空チャンバ10は、適切な差圧アパーチャによって互いに分離した複数の真空サブチャンバによって形成することができる。
【0060】
タングステンワイヤ1は、加熱電流コントローラ16によって制御される加熱電流源12に接続されている。加熱電流コントローラ16は、加熱パルスの長さ、振幅、及び幅を定める。加熱電流コントローラ16と接続された総合システム制御コンピュータ18は、清浄化処理を起動し、これを検査サイクルと同期させる。総合システム制御コンピュータ18はまた、抑制及び引き出し電圧、並びに加熱電流源と接続されたHV発生源14を制御する。
【0061】
図2を参照すると、1つの実施形態によるシーケンス処理が記述されている。
【0062】
動作開始時、特に新しい冷陰極電界エミッタが電子ビーム照射デバイスに組立み込まれたときには、主清浄化処理(20)を実行して、全ての残留汚染物からエミッタ表面を清浄化する。一般に主清浄化処理は、エミッタ表面を約2500Kから2800Kの温度TMCにまで加熱する短く且つ強い加熱パルス(主フラッシング)を利用する。主清浄化中は、熱電子放射が低く維持されるように、冷陰極電界照射と引き出しアノードとの間に印加される引き出し電圧はオフにされる必要がある。
【0063】
主清浄化(20)後、引き出し電界を印加することによって冷陰極電界エミッタが通常動作(22)に入る。冷陰極電界エミッタは、どのような加熱も追加することなく室温で動作され、電子照射は電界誘起だけになる。通常動作中は電子ビームが発生し、調査される試料に配向される。
【0064】
次に、SEMの通常動作(22)又はアクティブ期間は、清浄化処理(24)を行うために短期間中断される。通常モードの中断は、電子ビームが試料上に合焦されないことを意味する。従って、通常モードの動作状態を維持することが可能であり、例えば、ビームブランカを用いて電子ビームを偏向させることが可能である。このことから、照射電流の変動が許容できなくなり、従って電子ビーム照射デバイスが停止される時に清浄化段階を行う従来技術とは異なり、一般的には、清浄化処理は冷陰極電界エミッタが作動している時に開始される。
【0065】
加熱パルスは、清浄化処理(24)中に冷陰極電界エミッタに印加され、エミッタ表面を約2200Kから2500Kの最高温度にまで加熱する。最高温度は、高表面張力によりエミッタ先端の鈍化又は肥厚化が観測される温度を下回るべきである。一例として、単一の清浄化処理は、1秒から3秒の間隔で約1秒から2秒のパルス幅を有する2つから4つの加熱パルスを含む。単一の清浄化処理の持続時間は、通常モードの中断を可能な限り小さく保つためにできるだけ短くする必要がある。例えば、清浄化処理は1分より短く、特に10秒よりも短くなくてはならない。
【0066】
清浄化中のエミッタ表面の損傷を回避するために、約300Vから1000V、好ましくは約700Vから1000Vの高い抑制電圧が印加され、これにより冷陰極電界エミッタの加熱部分からの望ましくない照射が阻止される。
【0067】
清浄化処理(24)は、エミッタ表面を清浄に保つために必要とされるたびに繰返される(26)。清浄化処理は、一定の間隔で、又は照射電流が事前に選択された最小値ICまで低下した時に要求に基づいて開始することができ、最小値ICはαI0として定義され、αは約0.9又はこれよりも大きく、例えば0.95、0.96、0.97、0.98、或いは特に0.99である。αが高い程ICは高くなり、清浄化処理がより頻繁に行われる。値αは、ICが特定の冷陰極電界エミッタの安定平均照射電流ISよりも実質的に高くなるように選択する必要がある。上記で参照したW.K.Lo他の論文で示されているように、標準平均安定照射電流は、初期の高い照射電流の約60%に過ぎない。その結果、α=0.9を選択すると、エミッタ表面は初期の高照射I0の約90%の最小照射を有するように清浄に保たれる。値0.95とは95%の最小照射を与え、α=0.99では99%を与える。従って、冷陰極電界エミッタは、上述のように汚染の平衡がとれていない初期不安定領域において動作される。汚染は常に最小に保たれるため、エミッタ表面上の有害な作用が実質的に低減され、冷陰極電界エミッタの長期安定性及び長寿命につながる。
【0068】
例えば清浄化処理(24)は、事前に選択された時間間隔の後に開始することができ、或いは調査される試料を移すためのSEMの非アクティブ又は非動作期間と同期させることができる。固定の時間間隔は通常、適用される真空度、使用される冷陰極電界エミッタのタイプ、及び最小照射電流を定める値IC>ISに対して決定される。固定の時間間隔の代わりに、或いはこれと組み合せて、照射電流を監視し、照射電流が事前に選択されたICにまで低下した時、又は不安定化の傾向がある時に次の清浄化処理を開始することができる。
【0069】
更に清浄化処理は、照射電流I1が最小値IminであるICとI0よりも低いImaxとの間に維持されるように行われる。すなわち照射電流は、Imin=ICとImaxとの間で変動又は変化する。
【0070】
図5を参照すると、照射電流Iの時間的推移が示されている。時間t0において清浄なエミッタ先端が提供されたと仮定する。エミッタ先端と引き出し電極との間に印加された所与の定電圧Uによって発生する所与の一定引き出し電界下、及び所与の真空下では、t0において高い初期照射電流I0を有する照射電流Iが発生する。一定条件下でこれ以降を動作させた場合、照射電流Iは減少し、t1において低い安定平均電流ISを示す。照射電流の減少は、経時的にエミッタ表面の汚染が増大することによって生じる。頻繁な清浄化を伴わない所与の一定条件下での冷陰極電界エミッタの典型的な照射特性は、図5に点線42で示されている。
【0071】
これとは対照的に、同じ条件ではあるがエミッタ表面の頻繁な清浄化を伴った冷陰極電界エミッタの照射特性は、図5の実線40で示されている。図5に示されているように、第1の清浄化処理24は、照射電流IがImin=ICにまで低下した時に実行される。清浄化処理は小さな矢印24で示されている。Iminは望ましい照射電流の下側範囲を定め、ISよりも有意に高い事前に定められた値である。清浄化後、照射電流は値Imaxにまで上昇する。Imaxは図5においてはI0よりも低く示されているが、I0と等しくすることもできる。清浄化後に得られる照射電流Iは、温度、持続時間、及び印加される加熱パルスの数によって決定される清浄化処理の強度に依存する。一定条件、すなわち一定の引き出し電界及び所与の真空条件下でのこれ以降の動作では、照射電流は再び低下する。照射電流Iが再びIminまで低下すると、更に清浄化処理24が実行される。清浄化処理は必要とされる度に繰返され、図5に示されているように照射電流がIminまで低下した時に起動される。よって、清浄化処理を制御する制御パラメータは照射電流Iであり、これを監視する必要がある。この手法を採用することにより、照射電流IはIminとImaxとの間で変動又は変化する。清浄化処理は照射電流の監視を行わずに実行できることは当業者には明らかであろう。この場合、清浄化は、使用される冷陰極電界エミッタのタイプに応じて事前に定めることができる固定間隔で行われる。
【0072】
長期の時間期間の後、図5において大きな矢印で示されたビルドアップ処理28を行い、エミッタ先端の緩慢に進む変形を補償することができる。
【0073】
ここで図6を参照すると、引き出し電界を発生させる印加電圧Uを連続する清浄化処理間で調節し、照射電流を安定に保つ場合における照射電流Iの時間的推移が例示されている。図5におけるように、点線42は、頻繁な清浄化を伴わない冷陰極電界エミッタの典型的な照射特性を示している。図5及び6に示される特性42間の差異は、図6では印加電圧Uが照射電流Iの低下を補償するよう調節される点である。清浄化が無ければ、照射Iはほぼt1でISまで低下し、次いで、2点鎖線で時間的推移が示される電圧Uの変動によってISの前後を変動する。
【0074】
頻繁な清浄化を伴わない照射電流とは異なり、実線40で例示される照射電流Iは、頻繁な清浄化及び連続する清浄化処理間の補償によって実質的に安定状態のまま維持される。図6では、印加電圧Uminは、最初に期間t′にわたって一定に保たれる。この期間中に照射電流は、I0からIminに低下する。時間t′において電圧Uの上昇によって低下の補償が始まる。電圧Uは、照射電流IがIminにおいて実質的に一定に留まるように調節される。照射電流の低下を補償するためには電圧Uを上昇させることが必要であり、事前に定められた値Umaxに到達すると、清浄化処理24が行われエミッタ表面を清浄化する。清浄化後、エミッタ表面は、時間t′におけるのと実質的に同じ照射特性を示し、その結果、印加電圧Uを初期電圧U0にまで低下させ、照射を一定に保つことができる。エミッタ表面の汚染が再び増加すると、電圧Uも更に調節する必要があり、特に、他の場合に観察される照射電流の低下を補償するために電圧Uを上げることが必要とされる。従って、印加電圧Uは、照射品質の間接的な尺度であり、事前に定められた電圧値Umaxに達したときに清浄化処理が起動される。そのため印加電圧Uは、この実施形態では清浄化処理を制御する制御パラメータである。この制御のために、照射電流を監視することも必要となる。
【0075】
補償は、照射電流をI0又はこれに極めて近接して保つことができるように、時間t0において開始することも可能である。
【0076】
図5におけるように、ビルドアップ処理28は、要求に応じて行うか、又はエミッタ表面の緩慢に進む変形又は鈍化によって照射品質が影響を受ける時に行うことができる。
【0077】
ここで図7を参照すると、トリガー事象の発生に応じた清浄化処理の開始を示している。通常動作中に、粒子ビームが発生し(50)、試料又はサンプル表面上に合焦(52)されて、例えばその表面を走査する。この期間は、アクティブ又は動作期間と呼ばれる。トリガー事象(54)が行われるときには、粒子ビーム照射デバイスは非アクティブにされ、すなわちその動作を一時的に中断する。このようなトリガー事象は、上述のように照射特性の低下、又は引き出し電圧のUmaxまでの上昇を含むことができる。更なる事象は、例えば処理された半導体ウェーハの高スループット検査又はプロセス診断(CD及びDR)で行われるサンプル又は試料の交換である。このような交換の通常の持続時間は約10秒である。更なる選択肢は、タイマーによって発生する信号を含む。タイマー期間は、特定の粒子ビーム源の照射特性を決定するために行われる予備テスト或いは経験に基づいて設定することができる。粒子ビーム照射デバイスを較正するのに必要とされる時間期間、並びに試料、サンプル、又は試料が配置されるステージを移動させる期間を同様に利用し、短期間のトリガー事象を形成することができる。これらの例示的な事象に共通するのは、これらが粒子ビーム照射デバイスの意図した目的又は機能を中断又は阻止する点である。例えばこれらの事象の間、試料表面の走査は行われない。
【0078】
トリガー事象によって開始され定められる非アクティブ又は非動作期間中は、試料の損傷を回避するために粒子ビームは偏向又はデフォーカスされる。更に、清浄化処理が自動的に開始され、粒子又は電子ビーム源のエミッタ表面を清浄化する。通常、粒子又は電子ビームの生成は、非アクティブ期間及び清浄化処理中に中断されることはない。これにより、アクティブ期間への迅速な復帰、又は非アクティブ期間とアクティブ期間との間の迅速な切替えが可能となる。更に、清浄化処理の即時検証及び制御が可能となる。清浄化処理を完了した後に、粒子ビーム照射デバイスはそのアクティブ状態に切り替り復帰する。
【0079】
清浄化処理を開始するかどうかの決定は、2つ又はそれ以上の事象に依存することも可能である。例えば清浄化処理は、照射電流がIminに低下した場合に限り試料又はサンプル交換中に行われる。
【0080】
図8を参照すると、粒子ビーム照射デバイスが記載されている。図8に示される実施形態は、エミッタ表面、引き出し電極、及び抑制電極(図示せず)を含む粒子ビーム源60を有する。図8は例証のためのものであり、縮尺通りに描かれていない。
【0081】
粒子ビーム源60は、この実施形態では電子ビームである荷電粒子ビーム78を発生する。電子ビーム78は、アノード62によって約10keVのエネルギーにまで加速され、高電圧ビームコラム70を通じてサンプル又は試料72に向けて誘導される。高電圧ビームコラム70は、電子ビーム78の電子をこれらが減速するまで高エネルギーに維持する役割を果たす。ビーム光学システム74の通過中、電子の高エネルギーは、電子ビーム78の拡散及び分散を最小にするのに役立つ。
【0082】
上述の構成要素に加えて、図8のビーム光学システム74は、電子ビーム78を試料72上に合焦させるためのコンデンサ64及び最終合焦レンズ76を含む。この実施形態における最終合焦レンズ76は、最終合焦マグネットコイル68によって発生する磁界と、試料72と高電圧ビームコラム70との間に印加される電圧によって発生する電界とを組合せて電子ビームを合焦する。電子ビーム78を試料72に向けて移送するための無電界領域を設けるため、高電圧ビームコラム70がアノード62に電気的に接続される。最終合焦レンズ76と試料72との間の領域において、電子ビーム78は、試料が検査される必要がある望ましい最終エネルギーにまで減速される。ビームブランカ又は偏向器66が粒子ビーム源60と試料72との間に配置され、粒子ビームを試料表面外に偏向させる。図8に例示されているビーム光学システムは、図面を簡単にする目的だけのために、通常はSEM内に実装される構成要素の一部だけが示されている。例えば、図8には、アパーチャ、試料表面を走査するための偏向器、又は二次電子用の検出器が示されていない。しかしながら、図8の例示的なSEMが、SEMの用途に応じて追加の構成要素を含むことができる点は当業者には明らかであろう。
【0083】
ビームブランカ66を採用することにより、粒子ビーム源60から照射される電子ビーム又はイオンビーム等の粒子ビームは、清浄化処理中に偏向させることができる。或いは、粒子ビームは、最終合焦レンズ76によってデフォーカスすることができる。更に、例えば照射電流が清浄化中に臨界値上限を超えない場合、又は粒子ビーム照射デバイス内に試料が配置されない場合には、粒子ビームを偏向させずに合焦を保持することもできる。エミッタ表面を清浄化するために、粒子ビーム源60はエミッタ表面に加熱パルスを印加する加熱要素82を含む。加熱要素の実施例は、冷陰極電界エミッタのタングステンワイヤ等の抵抗ヒータ、及びエミッタ表面上に配向されるレーザビームである。タングステンワイヤを用いる代わりに、分離抵抗ヒータを同様に用いることができる。加熱要素82は、加熱制御ユニット84によって制御される。粒子ビーム源60及びアノード62に印加される高電圧は、電圧ユニット86によって制御され、最終合焦マグネットコイル68は、合焦ユニット92によって制御される。入力90を有する制御ユニット88は、加熱制御ユニット84、電圧ユニット86、ビームブランカ66、及び合焦ユニット92を制御するために備えられる。
【0084】
入力90によるトリガー信号を受信すると、制御ユニット88は、エミッタ表面に加熱パルスを印加するよう加熱制御ユニット84を促すことにより清浄化処理を開始する。同時に、連続的に発生している粒子ビーム78は、ビームブランカ66によって偏向され、又は最終合焦レンズ76によってデフォーカスされる。制御ユニット88は個々の構成要素の総合制御を可能にする。
【0085】
トリガー信号は、トリガーユニット又は同期手段98が供給することができ、該手段は照射電流を測定するための測定ユニット94、並びに支持要素96の移動を制御するためのモーションコントローラと動作可能に接続される。モーションコントローラは図8には示されていない。支持要素96は、例えば検査又は画像化中に試料を保持するためのステージとすることができ、或いは荷電粒子ビーム照射デバイス内と試料を移送するための移送ユニットとすることができる。トリガー信号の発生を生じさせることができる支持要素の移動は、試料の様々な部分を荷電粒子ビームに曝露するステージ移動及び試料交換である。
【0086】
図2に戻ると、ビルドアップ処理(29)は、エミッタ先端を尖鋭化し、頻繁な加熱により生じる悪影響を無効にするために、頻繁な清浄化に加えて周期的又は散発的に実行される。一例として、清浄化処理温度は、エミッタ先端の観測できる鈍化又は平坦化を防ぐために十分に低く保たれているが、きわめて多くの清浄化処理を含む長い期間の間に、エミッタ先端が次第に鈍化するようになり、これは、エミッタ先端の曲率半径が減少することを意味する。エミッタ先端での電界強度は、先端曲率半径に反比例するので、この鈍化によってエミッタ表面における電界強度が減少し、従って照射電流の観測可能な低下が生じることになる。ビルドアップは通常、照射電流が不安定になりやすく、又は許容範囲外のビーム品質を有する場合に実行される。
【0087】
ビルドアップ処理(28)は、強静電界の存在下でエミッタ先端に加熱パルスを印加することによって実行される。高静電界は、エミッタ先端材料の頂点に向かう移動を引き起こし、これによりエミッタ先端がより細長くより尖鋭になる。印加電界によって発生する静電気力は、加熱されたエミッタ先端の表面張力によって発生する力よりも大きい必要があることは当業者には理解されるであろう。エミッタ先端を加熱する温度は、約2000Kから3000Kである。印加される電界の極性は重要ではなく、従って、引き出し電界の極性とは反対の電界極性を用いることができ、これにより電界放射が発生せず、熱放射が実質的に抑制されることが確実になる。一定の静電界を印加するために適切な電圧が引き出し電極に印加される。ビルドアップ中に印加される電圧は通常、引き出し電圧よりも高い。ビルドアップ処理に必要とされる電界強度F0は、次式(1)に従う。
【数1】

【0088】
ここでrは先端半径であり、単位はcmである。50nmのエミッタ先端半径では、対応する電界強度は3.6×107V/cmよりも高い必要がある。
【0089】
ビルドアップ処理(28)中に印加される加熱パルスの形式、すなわちパルス幅及び振幅は、ビルドアップ処理の効率において重要な役割を果たすことができる。一例として、単一の加熱パルスは、約1秒から2秒の幅を有することができる。通常、エミッタ先端を尖鋭化するためには、5から10の加熱パルスが必要とされる。
【0090】
ビルドアップ処理と清浄化処理とが異なる処理であることは注目に値する。所与のエミッタ先端に対する清浄化とビルドアップとの間の主な差異は、エミッタ先端が加熱される温度がビルドアップ処理中よりも清浄化処理中の方がより低いことであり、清浄化処理中にはエミッタ先端材料が観測可能な再形成を生じる程十分な移動性がないようにされる。
【0091】
ビルドアップ処理中に、エミッタ先端又はエミッタ表面の照射電流をそれぞれ測定し、ビルドアップ処理を監視することができる。ビルドアップ処理は、照射電流の望ましい強度が検出された時に終了する。
【0092】
従来技術のビルドアップ処理とは異なり、上述のビルドアップ処理(28)は、特定のガス成分(例えばO2)の分圧を調節するための追加のガスを必要としない。更に、複数の加熱パルスが一定加熱の代わりに使用される。
【0093】
ビルドアップ処理(28)は、定期的に繰り返されるが(30)、清浄化処理よりも頻度は少ない。通常、ビルドアップ処理は、不安定な照射電流又は照射電流の減少を検出すると開始される。
【0094】
最良の結果を得るために、照射電流の高い安定性(例えば約1%)、冷陰極電界エミッタの高輝度、及び冷陰極電界エミッタの実際の無制限の寿命を得るように主清浄化、頻繁な清浄化、及びビルドアップ処理の適切な組合せが望ましい。
【0095】
上述の通り本発明を詳細に説明してきたが、添付の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく本発明に様々な修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0096】
20 主清浄化
22 通常動作
24 頻繁な清浄化
28 ビルドアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタ表面(5)を有する荷電粒子ビーム源(2、60)を含む荷電粒子ビーム照射デバイスを動作するための方法であって、
(a)所与の動作条件下で高い初期照射電流I0と低い安定平均照射電流ISとを示す前記荷電粒子ビーム源(2、60)を所与の圧力の真空中に配置する段階と、
(b)前記エミッタ表面(5)から荷電粒子を照射するために前記荷電粒子ビーム源(2、60)に前記所与の動作条件を適用して、前記荷電粒子ビーム源の照射電流が前記安定平均照射電流ISよりも高くなるようにする段階と、
(c)少なくとも1つの加熱パルスを前記荷電粒子ビーム源に印加して前記エミッタ表面(5)を温度TCにまで加熱することにより清浄化処理を行い、これにより前記荷電粒子ビーム源の照射電流が前記低い安定平均照射値ISにまで低下する前に前記清浄化処理を行うようにする段階と、
(d)前記清浄化処理(c)を繰返して、前記荷電粒子ビーム源の照射電流が前記実質的に安定した平均照射値ISを連続的に上回るように維持する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記清浄化処理(c)は、事前に定められた時間間隔で行われ、又は前記照射電流が、前記安定平均照射値ISよりも高い事前に定められた値ICにまで低下した時に行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CはIC=αI0で定義され、α>0.9であり、特にα>0.95であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
事前に定められた最大値Imaxと事前に定められた最小値Imin=IC>ISとが選択され、これにより平均偏差値ΔIはΔI=Imax−Iminで定義され、前記清浄化処理は、前記照射電流が前記最大照射値ImaxからIminにまで低下した時に行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ΔI/Imax=γであり、γは約0.1、特に約0.05であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスは電子ビーム照射デバイスであり、
前記荷電粒子ビーム源は電子を照射するための電子エミッタであり、
前記所与の動作条件は、電子を引き出すために前記電子エミッタのエミッタ表面に印加される所与の圧力及び所与のエネルギーを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記電子エミッタが冷陰極電界エミッタであり、前記エネルギーが電界であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスがイオンビーム照射デバイスであり、
前記荷電粒子ビーム源がイオンを照射するためのイオンエミッタである、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
エミッタ表面(5)を有する冷陰極電界エミッタ(2、60)を含む電子ビーム照射デバイスを動作するための方法であって、
(a)所与の引き出し電界下で高い初期照射電流I0と低い安定平均照射電流ISとを示す前記冷陰極電界エミッタ(2、60)を所与の圧力の真空中に配置する段階と、
(b)前記エミッタ表面(5)から電子を照射するために前記冷陰極電界エミッタ(2、60)に前記所与の引き出し電界を印加して、前記冷陰極電界エミッタの照射電流が前記安定平均照射電流ISよりも高くなるようにする段階と、
(c)前記引き出し電界の強度を調節して、前記照射電流が実質的に安定し且つ前記平均安定照射電流ISを連続的に上回ってISよりも高い事前に定められた値ICに維持する段階と、
(d)少なくとも1つの加熱パルスを前記冷陰極電界エミッタに印加して前記エミッタ表面(5)を温度TCにまで加熱することにより清浄化処理を行い、これにより前記引き出し電界の強度が事前に定められた基準値を超える時に前記清浄化処理を行うようにする段階と、
(e)前記調節段階(c)及び前記清浄化処理(d)を繰返して、前記冷陰極電界エミッタの照射電流が実質的に安定した照射値ISを連続的に上回るように維持する段階と、
を含む方法。
【請求項10】
前記事前に定められた値ICはIC=αI0で定義され、α>0.9であり、特にα>0.95であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Cは約2200Kから2500Kであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの加熱パルスのパルス幅が1秒から2秒であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
各清浄化処理が、約10の加熱パルスを含み、特に2つから4つの加熱パルスがほぼ1秒から3秒毎に前記粒子ビーム源又は冷陰極電界エミッタに印加されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電子ビーム照射デバイスは、前記エミッタ又は冷陰極電界エミッタの周囲に配置された抑制電極(8)を含み、前記清浄化処理中に抑制電圧が該抑制電極(8)に印加されることを特徴とする請求項6から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抑制電圧が300Vと1000Vとの間であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記段階(a)は、前記荷電粒子ビーム源又は冷陰極電界エミッタが前記高い初期照射電流I0及び前記低い安定平均照射電流ISを示すように、前記エミッタ表面(5)を清浄化するための主清浄化処理を含む請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記主清浄化処理は、前記エミッタ表面を温度TMCにまで加熱するために少なくとも1つの主加熱パルスを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
MCは約2500Kから2800Kであることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記荷電粒子ビーム源又は前記冷陰極電界エミッタは、前記エミッタ表面が形成されるエミッタ先端を有し、前記エミッタ先端を尖鋭化するために熱ビルドアップ処理(e)が行われることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ビルドアップ処理(e)中に複数の加熱パルスが前記荷電粒子ビーム源又は前記冷陰極電界エミッタ(2、60)に印加されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱パルスは、前記エミッタ表面を前記清浄化処理の温度TCよりも高い温度TBにまで加熱することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記清浄化処理は、前記荷電粒子ビーム照射デバイス又は前記電子ビーム照射デバイスの非動作期間と自動的に同期されることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記非動作期間は、前記荷電粒子ビーム又は前記電子ビームがサンプル又は試料からデフォーカス又は偏向される期間であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記非動作期間は、タイマーのインパルス、特に請求項1から請求項21のいずれかにおいて定義された前記照射電流の低下、サンプル又は試料の交換、前記荷電粒子ビーム照射デバイス又は電子ビーム照射デバイスの較正、サンプル又は試料の移動、及び/又はステージの移動によって起動されることを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
エミッタ表面(5)を有する荷電粒子ビーム源(2、60)を含む荷電粒子ビーム照射デバイスを動作するための方法であって、
(a)荷電粒子ビームを発生させる段階と、
(b)前記発生した荷電粒子ビームをサンプル又は試料上に合焦させる段階と、
(c)トリガー事象の発生に基づいて前記エミッタ表面の清浄化のための清浄化処理を自動的に実行する段階と、
を含む方法。
【請求項26】
前記荷電粒子ビームは、前記清浄化処理中に前記サンプル又は試料からデフォーカス又は偏向されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記トリガー事象は、タイマーのインパルス、特に請求項1から請求項20のいずれかにおいて定義された前記照射電流の低下、サンプルの交換、較正、サンプル又は試料の移動、及び/又はステージの移動であることを特徴とする請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
エミッタ表面(5)を含む、荷電粒子を照射するための荷電粒子ビーム源(60)と、
前記荷電粒子ビーム源(60)に電圧を印加して荷電粒子ビーム(78)を発生させるための電圧ユニット(86)と、
前記エミッタ表面(5)を加熱するための加熱要素(82)と、
トリガー信号を受け取るための入力部(90)を含む制御ユニット(88)と、
を備え、
前記制御ユニット(88)は、トリガー信号を受け取ると、前記加熱要素(82)を制御して、前記荷電粒子ビーム(78)の発生中に前記荷電粒子ビーム源(60)のエミッタ表面(5)に少なくとも1つの加熱パルスを印加するように動作することを特徴とする荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項29】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスが、ビームブランカ(66)を備え、前記制御ユニット(88)は、前記トリガー信号を受け取ると前記ビームブランカ(66)を制御して、前記発生した粒子ビームを偏向させるように動作することを特徴とする請求項28に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項30】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスは、前記荷電粒子ビーム(78)をサンプル又は試料(72)上に合焦及びデフォーカスするための合焦ユニット(92)を備え、前記制御ユニット(88)は、前記トリガー信号を受け取ると、前記合焦ユニット(92)を制御して、前記発生した荷電粒子ビーム(78)を前記サンプル又は試料(72)に対してデフォーカスするように動作することを特徴とする請求項28に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項31】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスは電子ビーム照射デバイスであり、前記荷電粒子ビーム源は、電子エミッタ、特に冷陰極電界電子エミッタであることを特徴とする請求項28から請求項30のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項32】
前記電子ビーム照射デバイスは、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、又は走査透過電子顕微鏡(STEM)であることを特徴とする請求項31に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項33】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスはイオンビーム照射デバイスであり、前記荷電粒子ビーム源はイオンエミッタであることを特徴とする請求項28から請求項30のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項34】
前記荷電粒子ビーム源(60)のエミッタ表面は、250nmよりも小さい曲率半径を有することを特徴とする請求項28から請求項33のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項35】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスは、前記荷電粒子ビーム源(60)の照射電流を測定するための測定要素(94)と、前記照射電流が事前に定められた値にまで低下した時にトリガー信号を供給するように適合されたトリガーユニット(98)とを備えることを特徴とする請求項28から請求項34のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。
【請求項36】
前記荷電粒子ビーム照射デバイスは、試料を移動可能に支持するための支持要素(96)と、該支持要素(96)を制御するためのモーションコントローラユニットと、前記支持要素(96)の移動に基づいてトリガー信号を供給するように適合された同期手段(98)とを備えることを特徴とする請求項28から請求項35のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−117394(P2009−117394A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48243(P2009−48243)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【分割の表示】特願2006−240568(P2006−240568)の分割
【原出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(506147342)イツェーテー インテグレイテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フュール ハルブライタープリュッフテヒニク ミット ベシュレンクテル ハフツング (11)
【Fターム(参考)】