説明

菓子用プレミックス、及び菓子の製造方法

【課題】 しっとり感及びボリューム感に優れる菓子を製造するための菓子用プレミックス、及び該プレミックスを用いた菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも穀粉を含む菓子用プレミックスにおいて、穀粉の主成分が大豆粉及びグネツム種子粉であることを特徴とする菓子用プレミックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菓子用プレミックス、及び該プレミックスを用いた菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、菓子としては、スポンジケーキ、ロールケーキ、マドレーヌ、及びホットケーキなどのケーキ、クッキー、及びまんじゅうなどの和菓子などが挙げられ、それらの原料である穀粉としては小麦粉、大豆粉、及び米粉などが使用されている(特許文献1〜4)。
【0003】
しかし、大豆粉を用いたケーキ、小麦粉及び大豆粉を用いたケーキは、ぱさぱさして食感が悪く、ボリューム感も満足できるものではなく、しかも経時により品質が低下しやすい(乾燥しやすい、ぱさぱさになりやすい、しぼみやすい)という問題を有していた。
【0004】
一方、グネツム(別名メリンジョ)はグネツム科の植物であり、東南アジアで広く栽培され、インドネシアでは煮たり焼いたりして食料として利用されている。また、グネツムは、パン、ケーキなどの原料としても利用されている。
【0005】
例えば、果皮及び種皮を剥いて乾燥後、粉砕した粉末グネツム種子を小麦粉、上新粉、糯粉、蕎麦粉、澱粉、増粘多糖類などと混合して、パン、ケーキ、ホットケーキなどのグネツム食品を製造することが提案されている(特許文献5)。
【0006】
また、グネツム果実に豆類、穀類などを配合した発酵食品が提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−237682号公報
【特許文献2】特開平8−89159号公報
【特許文献3】国際公開2006/025112パンフレット
【特許文献4】特許第3416881号明細書
【特許文献5】特開2006−81405号公報
【特許文献6】特開2008−22726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、しっとり感及びボリューム感に優れるケーキを製造するための菓子用プレミックス、及び該プレミックスを用いた菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、穀粉の主成分として大豆粉及びグネツム種子粉を用いることにより、しっとり感及びボリューム感に優れ、経時により品質が低下しにくい菓子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも穀粉を含む菓子用プレミックスにおいて、穀粉の主成分が大豆粉及びグネツム種子粉であることを特徴とする菓子用プレミックス、に関する。
【0011】
穀粉中の大豆粉及びグネツム種子粉の含有量は、合計で60重量%以上であることが好ましい。
【0012】
グネツム種子粉の含有量は、大豆粉100重量部に対して50〜200重量部であることが好ましい。
【0013】
また、穀粉は、米粉、アルファ化米粉、澱粉、及びアルファ化澱粉からなる群より選択される少なくとも1種の補助穀粉を合計で40重量%以下含有することが好ましい。
【0014】
本発明の菓子の製造方法は、前記菓子用プレミックスと、少なくとも卵成分とを混合して菓子用生地を作製する工程、及び作製した菓子用生地を焼成する工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
穀粉の主成分が大豆粉及びグネツム種子粉である菓子用プレミックスを用いることにより、しっとり感及びボリューム感に優れる菓子が得られる。また、得られた菓子は、表面がなめらかであり、経時により品質が低下しにくい。また、上記特定の配合量にすることにより、しっとり感及びボリューム感がさらに向上する。また、補助穀粉として米粉又はアルファ化米粉を加えることにより、菓子の表面のなめらかさ及び保水性が向上し、品質の低下をより抑制することができる。さらに、大豆粉は、大豆レシチン、イソフラボン及び食物繊維を多く含み、グネツム種子粉は、ポリフェノール及び食物繊維を多く含むため、栄養価の高い美味しい菓子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の菓子用プレミックスは、少なくとも穀粉を含み、穀粉の主成分は大豆粉及びグネツム種子粉である。
【0017】
大豆粉の品種は特に制限されず、例えば、白大豆、黒大豆、及び赤大豆などが挙げられる。また、大豆粉は、生大豆を粉末化したもの、生大豆を煎った後に粉末化したもの(きな粉)、生大豆を脱脂した後に粉末化したもの、又は生大豆をフリーズドライした後に粉末化したものなどいずれでもよい。
【0018】
グネツム種子粉は、グネツム(別名メリンジョ)の種子を粉末化したものであり、乾燥したものであってもよく、未乾燥のものでもよい。
【0019】
穀粉中の大豆粉及びグネツム種子粉の含有量は、合計で60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは合計で70重量%以上である。
【0020】
グネツム種子粉の含有量は、大豆粉100重量部に対して50〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは100〜150重量部である。
【0021】
他の穀粉としては、例えば、米粉、アルファ化米粉、小麦粉、アルファ化小麦粉、澱粉、アルファ化澱粉、大麦粉、そば粉、きび粉、及びあわ粉などが挙げられる。米粉の原料としては、例えば、うるち米、もち米、玄米、発芽玄米、発芽玄米アロゲン、赤米、及び黒米などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、特に米粉、アルファ化米粉、澱粉、及びアルファ化澱粉からなる群より選択される少なくとも1種の補助穀粉を用いることが好ましい。菓子のボリューム感をより向上させるために、澱粉、アルファ化澱粉、又はその両方を加えることが好ましい。特に、生大豆を粉末化した大豆粉を用いる場合には、澱粉、アルファ化澱粉、又はその両方を加えることが有効である。また、米粉、アルファ化米粉、又はその両方を加えることにより、菓子の表面のなめらかさ及び保水性が向上し、経時による品質の低下をより抑制することができる。
【0022】
穀粉中の補助穀粉の含有量は、合計で40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは合計で30重量%以下である。
【0023】
本発明の菓子用プレミックスは、前記穀粉以外に、例えば、糖類、乳成分、油脂、膨張剤、無機塩類、乳化剤、米飴、フレーバー、香辛料、着色料、及び野菜パウダーなど、菓子の製造に用いられる公知の配合成分を1種以上含有していてもよい。なお、これら配合成分は、菓子用生地を作製する際に菓子用プレミックスと混合してもよい。
【0024】
糖類としては、例えば、砂糖などの糖、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、フルクトースなどのオリゴ糖、マルチトール、ソルビト−ル、キシリトール、水添水飴などの糖アルコールが挙げられ、これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0025】
乳成分としては、例えば、粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
油脂としては、例えば、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油などがあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0027】
膨張剤としては、例えば、ベーキングパウダー、重曹、イーストパウダーなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
無機塩類としては、食塩、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の菓子用プレミックスは、スポンジケーキ、ロールケーキ、シフォンケーキ、マドレーヌ、ケーキドーナツ、及びホットケーキなどの各種のケーキ;クッキー;まんじゅうなどの和菓子の製造に好適に用いられる。
【0030】
本発明の菓子の製造方法は、前記菓子用プレミックスと、少なくとも卵成分とを混合して菓子用生地を作製する工程、及び作製した菓子用生地を焼成する工程を含む。
【0031】
卵成分としては、卵黄、卵白、全卵、その他の卵に由来する成分が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0032】
菓子用生地は、前記菓子用プレミックス、卵成分、必要に応じて前記配合成分を所定の割合で常法に従って混合(必要により泡立て)することにより作製することができる。菓子用生地の作製に際しては、通常、全卵、又は全卵と水の混合物が使用されるが、その他に卵黄、卵白、牛乳、クリームなどを加えてもよい。通常、全卵は、菓子用生地中に10〜60重量%程度配合される。菓子は、このようにして得られた菓子用生地を(ケーキの場合は型に入れて)常法に従って焼成することにより製造することができる。
【0033】
特に本発明のケーキは、従来の大豆粉を用いたケーキ、小麦粉及び大豆粉を用いたケーキに比べてしっとり感及びボリューム感に優れ、経時により品質が低下しにくい。また、原料である大豆粉は、大豆レシチン、イソフラボン及び食物繊維を多く含み、グネツム種子粉は、ポリフェノール及び食物繊維を多く含むため、栄養価の高い美味しい菓子が得られる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0035】
実施例1
大豆粉(生大豆を粉末化したもの)50重量部、グネツム種子粉50重量部を混合してスポンジケーキ用プレミックスを調製した。調製したスポンジケーキ用プレミックス全量、全卵179重量部、上白糖126.3重量部、無塩バター21重量部、及び牛乳52.6重量部を混合し泡立ててスポンジケーキ用生地を調製した。その後、調製したスポンジケーキ用生地を型に入れ、オーブン(上火175〜180℃、下火170℃)で25分焼成することによりスポンジケーキを製造した。
【0036】
実施例2〜10及び比較例1〜3
下記表1に記載の配合を採用した以外は実施例1と同様の方法でスポンジケーキを製造した。なお、きな粉の原料としては黒大豆を用い、澱粉としてはコーンスターチを用い、アルファ化澱粉としてはワキシーアルファ−Yを用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例11
大豆粉(生大豆を粉末化したもの)50重量部、グネツム種子粉50重量部、及びアルファ化澱粉(ワキシーアルファ−Y)2重量部を混合してロールケーキ用プレミックスを調製した。調製したロールケーキ用プレミックス全量、卵黄62.5重量部、全卵328.13重量部、砂糖218.75重量部、ベーキングパウダー0.94重量部、及び無塩バター62.5重量部を混合してロールケーキ用生地を調製した。その後、調製したロールケーキ用生地を型に入れ、オーブン(上火175〜180℃、下火170℃)で18分焼成することによりロールケーキを製造した。
【0039】
実施例12〜18及び比較例4
下記表2に記載の配合を採用した以外は実施例11と同様の方法でロールケーキを製造した。なお、きな粉の原料としては黒大豆を用い、澱粉としてはコーンスターチを用いた。
【0040】
【表2】

【0041】
〔評価方法〕
実施例1〜10及び比較例1〜3のスポンジケーキ、実施例11〜18及び比較例4のロールケーキについて、しっとり感及びボリューム感を10人のパネラーが以下の基準(5段階)で評価した。その平均値を表3に示す。
(しっとり感)
5:かなりしっとりしている
4:しっとりしている
3:普通
2:ぱさぱさしている
1:かなりぱさぱさしている
(ボリューム感)
5:かなりふんわりしている
4:ふんわりしている
3:普通
2:やや重い感じ
1:かなり重い感じ
【0042】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも穀粉を含む菓子用プレミックスにおいて、穀粉の主成分が大豆粉及びグネツム種子粉であることを特徴とする菓子用プレミックス。
【請求項2】
穀粉中の大豆粉及びグネツム種子粉の含有量が、合計で60重量%以上である請求項1記載の菓子用プレミックス。
【請求項3】
グネツム種子粉の含有量は、大豆粉100重量部に対して50〜200重量部である請求項1又は2記載の菓子用プレミックス。
【請求項4】
穀粉は、米粉、アルファ化米粉、澱粉、及びアルファ化澱粉からなる群より選択される少なくとも1種の補助穀粉を合計で40重量%以下含有する請求項1〜3のいずれかに記載の菓子用プレミックス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の菓子用プレミックスと、少なくとも卵成分とを混合して菓子用生地を作製する工程、及び作製した菓子用生地を焼成する工程を含む菓子の製造方法。

【公開番号】特開2011−36212(P2011−36212A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188628(P2009−188628)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【特許番号】特許第4605724号(P4605724)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(503067502)株式会社福盛ドゥ (13)
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