説明

落下試験装置

【課題】被試験体に作用する危害の大きさや状況等を高精度に把握することができ、しかも、取り扱いに便利な落下試験装置を提供する。
【解決手段】正面視略門形の基礎フレーム1と、この基礎フレーム1の左右一対の支柱3間に水平に横架される上下方向の位置調整が可能な吊持フレーム10と、この吊持フレーム10の略中央部に装着されてレバー21のON操作により磁力を発生させるON/OFF機能付き磁石20と、被試験体である半導体ウェーハWを収納するウェーハ収納容器30と、このウェーハ収納容器30に装着されてON操作されたON/OFF機能付き磁石20に吸着される磁性プレート40とを備える。専用の落下試験装置を使用するので、落下試験の内容や条件の画一化を図ることができる。したがって、半導体ウェーハWに加わる危害の大きさや状況を高精度に把握、評価して後の開発に寄与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハや基板収納容器等の落下試験の際に使用される落下試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは基板収納容器に収納されるが、この基板収納容器は、図示しない複数枚の半導体ウェーハを整列収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体とを備え、半導体ウェーハの保管、搬送、輸送等に利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、半導体ウェーハや基板収納容器は、搬送や輸送に供される関係上、衝撃や振動が作用したり、落下のおそれがあるので、落下衝撃を試験して再現し、危害の大きさや状況、基板収納容器の保護力を予め調査して把握しておく必要がある。この種の分野の落下試験は、貨物等の他の分野(特許文献2、3、4参照)と異なり、確立された専用の試験装置が存在しないので、例えば試験担当者が所定の高さまで基板収納容器を持ち上げた後、この基板収納容器を落下させることにより実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−283537号公報
【特許文献2】特開2010−160074号公報
【特許文献3】特開2010−66204号公報
【特許文献4】特開2009−63506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における半導体ウェーハや基板収納容器の落下試験は、以上のように実施され、試験担当者の手作業に任されているので、試験の内容や条件の画一化を図ることができない。したがって、半導体ウェーハや基板収納容器に加わる危害の大きさや状況、保護力を高精度に把握し、評価するのが困難であるという問題がある。
【0006】
係る問題を解決する手法としては、他の分野で使用されている既存の試験装置を流用する方法があげられる。しかしながら、この方法を採用する場合には、危害の大きさや状況等をある程度把握することができるものの、半導体ウェーハや基板収納容器に対応した専用の試験装置を用いるのではないので、正確な把握に支障を来たすおそれがある。さらに、他分野の試験装置は、一般的にシリンダやプランジャ、駆動モータ、コントローラ等を備えた複雑高価な構成であり、しかも、流用時の取り扱いが煩雑となる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、被試験体に作用する危害の大きさや状況等を高精度に把握することができ、しかも、取り扱いに便利な落下試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、所定の高さから被試験体を落下させる装置であって、
正面視略門形の基礎フレームと、この基礎フレームの一対の支柱の間に架設される上下方向の位置調整が可能な吊持フレームと、この吊持フレームに取り付けられてスイッチのON操作により磁力を発生させる磁石と、被試験体に取り付けられてON操作された磁石に吸着される磁性材とを含んでなることを特徴としている。
【0009】
なお、基礎フレームの下部に配置される被試験体用の緩衝材を含むことができる。
また、被試験体を、半導体ウェーハと、半導体ウェーハを収納可能な基板収納容器の少なくとも一部のいずれかとすることができる。
また、被試験体を半導体ウェーハとし、この半導体ウェーハをウェーハ収納容器に収納してその天井に磁性材を装着することができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における被試験体には、少なくとも半導体関連品、例えば各種大きさの半導体ウェーハ(例えば、φ200、300、450mmのシリコンウェーハ等)、半導体ウェーハを未収納な基板収納容器、半導体ウェーハを収納した基板収納容器やその容器本体、容器本体の開口を開閉する蓋体、ガラス基板等が含まれる。磁性材は、プレートやブロック等に構成され、被試験体に直接的に取り付けられたり、被試験体を保護する各種の容器や枠体等に間接的に取り付けられる。また、緩衝材は、単数複数を特に問うものではない。
【0011】
本発明によれば、被試験体の落下衝撃を試験して再現したい場合には、試験対象として選択した被試験体に磁性材を直接間接に取り付け、基礎フレームに架設した吊持フレームの高さを所定の高さに調整し、磁石のスイッチをON操作して磁石に被試験体を磁性材を介して吸着する。磁石に被試験体を吸着したら、スイッチをOFF操作して磁石の磁力を消失させ、被試験体を吊持フレームから落下させて衝撃を加えれば、被試験体に加わる危害の大きさや状況等を従来よりも高精度に把握することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被試験体に作用する危害の大きさや状況等を高精度に把握することができ、しかも、取り扱いに便利な落下試験装置を提供することができるという効果がある。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、緩衝材で落下した被試験体を受け止めて衝撃を緩和し、被試験体が過剰に損傷したり、割れて飛散等するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る落下試験装置の実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【図2】本発明に係る落下試験装置の実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図3】本発明に係る落下試験装置の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における落下試験装置は、図1ないし図3に示すように、正面視略門形の基礎フレーム1と、この基礎フレーム1の一対の支柱3間に架設される位置調整が可能な吊持フレーム10と、この吊持フレーム10に装着されるON/OFF機能付き磁石20と、被試験体である半導体ウェーハWを収納する試験用のウェーハ収納容器30と、このウェーハ収納容器30に装着されてON/OFF機能付き磁石20に吸着される磁性プレート40とを備え、半導体ウェーハWの落下衝撃を試験して再現する。
【0016】
基礎フレーム1は、間隔をおいて相対向する左右一対の脚2と、この一対の脚2の中央部にそれぞれ垂直に立設される左右一対の支柱3と、この一対の支柱3の上端部間に水平に横架される上部連結桟4とを備えた正面視略逆U字形に螺子等の締結具を介して組み立てられる。一対の脚2の両端部間には下部連結桟5がそれぞれ水平に架設され、各脚2と支柱3との間には補強用の連結柱6が斜めに架設されており、一対の支柱3の下端部間には任意の下部連結桟5が必要に応じて架設される。
【0017】
これら脚2、支柱3、上部連結桟4、下部連結桟5、連結柱6の材料は、特に限定されるものではないが、例えばアルミニウムやチタン製のフレーム等があげられる。また、一対の支柱3の下部間には、吊持フレーム10の下方に位置する緩衝材7が必要に応じて敷設される。この緩衝材7は、例えば平面矩形を呈した弾性のスポンジやマット等からなり、選択的に複数枚が積層されており、上方から落下したウェーハ収納容器30を受け止めて衝撃を緩和したり、二次衝撃の発生を防止し、半導体ウェーハWが必要以上に損傷するのを有効に防止する。
【0018】
吊持フレーム10は、例えば基礎フレーム1同様、アルミニウムやチタン等のフレームからなり、基礎フレーム1の一対の支柱3間に水平に横架される。この吊持フレーム10は、基礎フレーム1に締結具を介して着脱自在に螺着されたり、あるいはスライド可能に凹凸嵌合されることにより、上下方向の位置が自由に調整される。
【0019】
ON/OFF機能付き磁石20は、例えば小型のボックスに、磁極が逆向きとなる複数の磁石が継鉄を間に挟んで内蔵されるとともに、平坦な吸着面に、複数の磁石と同間隔で配置された継鉄が非磁性材を挟むよう配置され、ボックスの表面には、複数の磁石と継鉄とをスライドさせる切換用のレバー21が回転操作可能に軸支されており、吊持フレーム10の略中央部に締結具を介し螺着固定されて吸着面を下方向に指向させる。
【0020】
このようなON/OFF機能付き磁石20は、レバー21のON操作により一つの磁石の両極が非磁性材により仕切られる場合には、吸着面から外部に出る磁力線が発生するので、磁性プレート40が吸着される。これに対し、レバー21のOFF操作により吸着面がスライドし、一つの磁石の両極が非磁性材により仕切られない場合、すなわち、隣接する磁石と磁石との間が非磁性部材により仕切られる場合には、吸着面から外部に出る磁力線が消失するので、磁性プレート40が吸着されないこととなる。
【0021】
ウェーハ収納容器30は、所定の材料(例えば樹脂や金属板等)を使用して少なくとも正面の開口したオープンボックスに成形され、例えばφ450mmの半導体ウェーハWを支持片を介し水平に収納する。このウェーハ収納容器30は、基本的には既存の基板収納容器や開発中の基板収納容器の容器本体に準じて構成されるが、天井や周壁に観察用の空間や窓孔が必要数形成される。
【0022】
磁性プレート40は、例えば平面矩形の鉄板等からなり、半導体ウェーハWの落下試験時にウェーハ収納容器30の天井中央部に締結具や粘着テープ等により装着され、ON操作されたON/OFF機能付き磁石20に吸着固定される。
【0023】
上記構成において、半導体ウェーハWの落下衝撃を試験して再現したい場合には、先ず、試験対象の半導体ウェーハWをウェーハ収納容器30に必要枚数収納し、このウェーハ収納容器30の天井に磁性プレート40を装着固定するとともに、基礎フレーム1に架設した吊持フレーム10を上下動させてその高さを必要な高さに調整し、ON/OFF機能付き磁石20のレバー21をON操作してON/OFF機能付き磁石20の吸着面に持ち上げたウェーハ収納容器30を磁性プレート40を介して吸着固定する。
【0024】
この際、基礎フレーム1の周囲に、落下した半導体ウェーハWが破損して飛散するのを防止する包囲壁を適宜設けることができる。また、基礎フレーム1の近傍に、半導体ウェーハWの破損時の状態を撮影する撮像装置等を配置することもできる。
【0025】
半導体ウェーハWに磁性プレート40をウェーハ収納容器30を介して固定し、ウェーハ収納容器30を吸着固定して所定の高さに吊持したら、レバー21をOFF操作して磁力を消失させ、ウェーハ収納容器30を吊持フレーム10から下方の緩衝材7に自然落下させて衝撃を加えれば、半導体ウェーハWに加わる危害の大きさ、破損の有無、破損の程度、破損箇所等を高精度に把握して評価することができる。
なお、緩衝材7の厚さや種類を調節すれば、ウェーハ収納容器30に加わる衝撃を調整することができ、しかも、緩衝材7自体の性能をも評価することができる。
【0026】
上記構成によれば、試験担当者の裁量に一任するのではなく、専用の落下試験装置を使用するので、落下試験の内容や条件の画一化を図ることができる。したがって、半導体ウェーハWに加わる危害の大きさや状況を高精度に把握、評価し、新たな基板収納容器の開発や改造に大いに寄与することができる。また、落下試験装置が簡易な構成なので、簡単に取り扱うことができ、製造コストの削減も期待できる。
【0027】
なお、上記実施形態では半導体ウェーハWの落下衝撃を試験して再現したが、半導体ウェーハWを収納した基板収納容器やその容器本体を試験対象としても良い。この場合、基板収納容器は、フロントオープンボックスタイプ、トップオープンボックスタイプ、ボトムオープンボックスタイプを特に問うものではない。また、上記実施形態ではON/OFF機能付き磁石20の吸着面を平坦にしたが、必要に応じ、V字形にしたり、湾曲させても良い。
【0028】
また、ON/OFF機能付き磁石20に、回転操作用のレバー21ではなく、押圧操作用のボタンスイッチを設けても良い。また、ON/OFF機能付き磁石20をレバー21と共に回転可能にボックスに内蔵し、この外側のボックスを、吸着面の中央が非磁性材で仕切られた継鉄により形成し、レバー21を回転させることにより、吸着面の外側に磁力線を発生させたり、消失させることができる。さらに、ON/OFF機能付き磁石20を電磁石とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る落下試験装置は、半導体ウェーハ、基板収納容器、半導体製造、液晶装置等の試験分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 基礎フレーム
3 支柱
10 吊持フレーム
20 ON/OFF機能付き磁石(磁石)
21 レバー(スイッチ)
30 ウェーハ収納容器
40 磁性プレート(磁性材)
W 半導体ウェーハ(被試験体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さから被試験体を落下させる落下試験装置であって、正面視略門形の基礎フレームと、この基礎フレームの一対の支柱の間に架設される上下方向の位置調整が可能な吊持フレームと、この吊持フレームに取り付けられてスイッチのON操作により磁力を発生させる磁石と、被試験体に取り付けられてON操作された磁石に吸着される磁性材とを含んでなることを特徴とする落下試験装置。
【請求項2】
基礎フレームの下部に配置される被試験体用の緩衝材を含んでなる請求項1記載の落下試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−42347(P2012−42347A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184013(P2010−184013)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】