説明

落下防止装置及びその据付方法

【課題】レベル2地震動を超える地震動であっても、橋桁や橋梁等の上部構造の落下を効果的に抑制することができる落下防止装置及びその据付方法を提供する。
【解決手段】上部構造2に接続される第一連結部材42と、下部構造3に接続される第二連結部材43と、第一連結部材42及び第二連結部材43の間に配置されるエネルギー吸収機構5と、を有し、エネルギー吸収機構5は、第一連結部材42に配置された第一定着部52と、第二連結部材43に配置された第二定着部53と、第一定着部52及び第二定着部53に接続され低降伏点材により形成されるエネルギー吸収部材51と、第二連結部材43に挿通されるとともに第一定着部52に接続される結合部材54と、を備え、結合部材54は第二定着部53との間にエネルギー吸収部材51の塑性変形による移動を許容する遊間が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁や橋梁等の上部構造が橋脚や橋台等の下部構造から落下することを防止する落下防止装置及びその据付方法に関し、特に、大地震時に効果的に作用する落下防止装置及びその据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
想定外の地振動の発生、周辺地盤の破壊、構造部材の予測しない振動等により、想定を超える地震力や変位又は変形が橋等の陸上構造物や海上構造物に生じる場合がある。かかる不測の事態が生じた場合であっても、橋桁や橋梁等の上部構造が橋脚や橋台等の下部構造から落下することを防止する必要があり、種々の落下防止装置が提案されている(特許文献1〜特許文献3)。なお、一般に、橋の落下防止装置を落橋防止装置と称する。
【0003】
例えば、特許文献1には、橋桁の端部に固定された筒状部材と、前記筒状部材の内部に収容され、連結部材が挿通される筒状の緩衝部材とを備え、前記緩衝部材は内外周に内周テーパ面及び外周テーパ面を有し、前記内周テーパ面と前記連結部材との間に内側環状空隙が形成され、前記外周テーパ面と前記筒状部材の内周との間に外側環状空隙が形成され、前記連結部材に作用する衝撃力により、前記緩衝部材が半径方向に膨出可能となっていることを特徴とする落橋防止装置が開示されている。かかる落橋防止装置では、緩衝部材に所定の空隙を形成することにより、緩衝部材の緩衝効果を高め、安全性の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献2には、橋桁の端部に設けられ連結ケーブルが挿通される挿通孔を有するブラケットと、このブラケットから突出する連結ケーブルの端部に固定されたストッパとを備え、前記ブラケットと前記ストッパとの間の連結ケーブルの外周に、互いに隣接するものどうしが逆向きとなるように多数の皿ばね状部材を嵌合配置し、前記各皿ばね状部材は、互いに隣接するものどうしが当接する外周縁が平坦面に形成されていることを特徴とする落橋防止装置が開示されている。また、皿ばね状部材には、降伏後の延びが大きいSS400等の低降伏点鋼が用いられる旨も開示されている。かかる落橋防止装置では、橋桁の変位が小さい通常の地震時にはコイルスプリングが作用し、橋桁の変位が大きい大地震時には皿ばね状部材が作用するように構成されている。皿ばね状部材は、降伏点に達した後、塑性変形して地震のエネルギーを吸収する。
【0005】
また、特許文献3には、橋桁と橋桁又は橋桁と下部工からなる連結対象どうしを橋軸に沿う垂直平面上で相対変位可能に連結する第1、第2連結手段を有し、上記第2連結手段が、上記第1連結手段と比べて、降伏耐力又は降伏点が小さく降伏後の伸びが大きい部材を主要構成とし、しかも変位許容範囲が小さいことを特徴とする橋桁の落橋防止装置が開示されている。かかる落橋防止装置では、大地震が起きたときに、第2連結手段によって地震エネルギーを吸収し、橋桁の連結状態を確実に維持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3124500号公報
【特許文献2】特許第4145196号公報
【特許文献3】特開2002−294627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、橋の耐震設計では、道路橋示方書によれば、橋の供用期間中に発生する確率が高い地震動(レベル1地震動)及び橋の供用期間中に発生する確率は低いが大きな強度をもつ地震動(レベル2地震動)の二段階のレベルの設計地震動を考慮しなければならないとされている。また、近年では、落橋防止装置の設計に際し、レベル2地震動を超える地震動(以下、本明細書において「レベル3地震動」という。)を考慮することが好ましいとされている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された落橋防止装置では、緩衝部材の緩衝力を向上させることにより装置の小型化を図ることはできるものの、レベル3地震動に耐え得る構造にはなっていなかった。
【0009】
また、特許文献2に記載された落橋防止装置では、皿ばね状部材を塑性変形させることにより、地震エネルギーを吸収することができ、レベル3地震動に耐え得る構造が提供されるものの、PCケーブルの端部に複数の皿ばね状部材を配置しなければならず、ブラケットの背面に配置される部分が長くなってしまい、橋側に空間的な余裕がない場合には落橋防止装置を設置できなくなってしまうという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に記載された落橋防止装置では、降伏耐力又は降伏点が小さく降伏後の伸びが大きい第2連結手段により、地震エネルギーを吸収することができ、レベル3地震動に耐え得る構造が提供されるものの、第2連結手段が露出しており、風雨に曝されてしまうことから、錆びが生じ易く、経年劣化が早いという問題があった。
【0011】
また、上述したこれらの問題は、落橋防止装置に限られるものではなく、橋以外の陸上構造物や海上構造物における落下防止装置においても同様に生じ得る問題である。
【0012】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、レベル2地震動を超える地震動であっても、橋桁や橋梁等の上部構造の落下を効果的に抑制することができる落下防止装置及びその据付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、一端が上部構造に接続され、他端が下部構造に接続され、前記上部構造の前記下部構造からの落下を防止する落下防止装置であって、前記上部構造に接続される第一連結部材と、前記下部構造に接続される第二連結部材と、前記第一連結部材及び前記第二連結部材の間に配置されるエネルギー吸収機構と、を有し、前記エネルギー吸収機構は、前記第一連結部材の先端に配置された第一定着部と、前記第二連結部材の先端に配置された第二定着部と、前記第一定着部及び前記第二定着部に接続され低降伏点材により形成されるエネルギー吸収部材と、前記第一連結部材又は前記第二連結部材の一方に挿通されるとともに先端が前記第一連結部材又は前記第二連結部材の他方に配置された前記第一定着部又は前記第二定着部に接続される結合部材と、を備え、前記結合部材は、接続状態で内蔵する前記第一定着部又は前記第二定着部との間に前記エネルギー吸収部材の塑性変形による移動を許容する遊間が形成されている、ことを特徴とする落下防止装置が提供される。
【0014】
前記結合部材は、前記第二連結部材に挿通されるとともに先端が前記第一定着部に接続され、接続状態で内蔵する前記第二定着部との間に前記遊間が形成されていてもよい。
【0015】
前記第一定着部又は前記第二定着部は、断面が多角形に形成されていてもよい。
【0016】
前記エネルギー吸収部材は、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合に相当する力が作用した場合に、塑性変形して地震エネルギーを吸収する部材であってもよい。また、前記エネルギー吸収部材は、中央部が縮径されるとともに両端部が逆螺子となるように螺子切りされた柱状部材であってもよい。
【0017】
前記第一連結部材又は前記第二連結部材は、後端にコイルスプリングを備えた緩衝機構が接続され、該コイルスプリングの長さ又は弾性力を調節することにより、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合又はレベル2地震動以下の地震動が発生した場合に、前記エネルギー吸収部材に対して塑性変形し得る力が作用するように構成してもよい。
【0018】
前記上部構造は、例えば、橋桁又は橋梁であってもよいし、前記下部構造は、例えば、橋脚又は橋台であってもよい。
【0019】
また、本発明によれば、一端が上部構造に接続され、他端が下部構造に接続され、前記上部構造の前記下部構造からの落下を防止する落下防止装置の据付方法であって、前記上部構造に接続される第一連結部材と、前記下部構造に接続される第二連結部材と、前記第一連結部材及び前記第二連結部材の間に配置されるエネルギー吸収機構と、を有し、前記第一連結部材又は前記第二連結部材を支持するブラケットを前記上部構造及び前記下部構造に設置し、前記第一連結部材及び前記第二連結部材をそれぞれ前記ブラケットに接続し、前記エネルギー吸収機構を前記第一連結部材及び前記第二連結部材に接続することによって前記第一連結部材及び前記第二連結部材を結合する、ことを特徴とする落下防止装置の据付方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明に係る落下防止装置によれば、低降伏点材により形成されたエネルギー吸収部材を有するエネルギー吸収機構を第一連結部材及び第二連結部材の間に配置したことにより、レベル2地震動を超える地震動であっても、エネルギー吸収部材の塑性変形によって、橋桁や橋梁等の上部構造の落下を効果的に抑制することができる。また、上部構造や下部構造に連結部材を引き込む空間的な余裕がない場合であっても、容易に落下防止装置を据え付けることもできる。また、エネルギー吸収機構に結合部材を配置したことにより、エネルギー吸収部材の塑性変形時又は破断時の移動を一定の範囲内に制限することができ、上部構造の落下を抑制することができる。また、エネルギー吸収部材を風雨から保護することができ、錆びの発生を抑制し、経年劣化の進行を抑制することもできる。また、エネルギー吸収機構のメンテナンス時に、エネルギー吸収部材を交換するだけで容易に修繕することができる。
【0021】
上述した本発明に係る落下防止装置の据付方法によれば、第一連結部材及び第二連結部材をそれぞれブラケットに接続し、エネルギー吸収機構を第一連結部材及び第二連結部材に接続することによって第一連結部材及び第二連結部材を結合するようにしたことから、上部構造や下部構造に連結部材を引き込む空間的な余裕がない場合であっても、容易に落下防止装置を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態に係る落下防止装置の全体構成図である。
【図2】図1に示したエネルギー吸収機構の拡大図であり、(a)は平常時、(b)は塑性変形時、(c)は破断時、を示している。
【図3】図1に示した落下防止装置の作用を示す図であり、(a)は平常時、(b)はレベル1地震動時、(c)はレベル2地震動時、(d)はレベル3地震動時、を示している。
【図4】本発明の他の実施形態に係る落下防止装置を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、を示している。
【図5】本発明の実施形態に係る落下防止装置の据付方法を示す図であり、(a)はブラケット設置工程、(b)は連結部材接続工程、(c)はエネルギー吸収部材接続工程、(d)は結合部材接続工程、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の落下防止装置に係る第一実施形態について、図1〜図3を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る落下防止装置の全体構成図である。図2は、図1に示したエネルギー吸収機構の拡大図であり、(a)は平常時、(b)は塑性変形時、(c)は破断時、を示している。図3は、図1に示した落下防止装置の作用を示す図であり、(a)は平常時、(b)はレベル1地震動時、(c)はレベル2地震動時、(d)はレベル3地震動時、を示している。
【0024】
本発明の第一実施形態に係る落下防止装置1は、図1及び図2に示したように、一端が上部構造2に接続され、他端が下部構造3に接続され、上部構造2の下部構造3からの落下を防止する落下防止装置であって、上部構造2に接続される第一連結部材42と、下部構造3に接続される第二連結部材43と、第一連結部材42及び第二連結部材43の間に配置されるエネルギー吸収機構5と、を有し、エネルギー吸収機構5は、第一連結部材42の先端に配置された第一定着部52と、第二連結部材43の先端に配置された第二定着部53と、第一定着部52及び第二定着部53に接続され低降伏点材により形成されるエネルギー吸収部材51と、第二連結部材43に挿通されるとともに先端が第一定着部52に接続される結合部材54と、を備え、結合部材54は、接続状態で内蔵する第二定着部53との間にエネルギー吸収部材51の塑性変形による移動を許容する遊間55が形成されている。
【0025】
前記上部構造2及び前記下部構造3は、例えば、橋等の陸上構造物や海上構造物を構成する構造物の総称であり、下部構造3の上に上部構造2が配置された位置関係を有する。以下、落下防止装置1が落橋防止装置の場合を前提として説明する。すなわち、以下の説明において、上部構造2は橋桁や橋梁等を意味し、下部構造3は橋脚や橋台等を意味する。落下防止装置1は、かかる上部構造2と下部構造3とを連結部材4(第一連結部材42及び第二連結部材43)で連結することにより、上部構造2の地震時における移動を制限し、下部構造3からの落下を防止する。特に、本実施形態に係る落下防止装置1は、レベル2地震動を超える地震動、すなわち、レベル3地震動が生じた際に効果的に作用する。
【0026】
上部構造2と下部構造3との間には、落下防止装置1の他に、主として、レベル2地震動以下の地震によるエネルギーを吸収する支承32、伸縮装置33、変位制限装置34等が配置されることが多い。下部構造3は、上部構造2を載置する支持面3aと、上部構造2の側面に沿って形成された壁面3bと、を有し、支持面3aには、ゴム製の支承32が配置され、支承32の上に上部構造2が載置される。また、壁面3bと上部構造2との間には伸縮装置33が配置される。かかる支承32の歪み及び伸縮装置33の伸縮により地震時における上部構造2のエネルギーが吸収される。さらに、支持面3aには、変位制限装置34も配置される。変位制限装置34は、支持面3aに立設された鋼棒を上部構造2の底面に形成された凹部に挿通することによって形成される。変位制限装置34は、鋼棒が凹部の壁部に押し付けられることによって物理的に上部構造2の移動を拘束する。支持面3aには、支承32が破壊した際に生じる上部構造2の落差をなくすための段差防止部材を配置するようにしてもよい。また、上部構造2と下部構造3との係止部分の長さ(係止長さ)を桁かかり長Sと称する。
【0027】
前記第一連結部材42及び前記第二連結部材43は、上部構造2と下部構造3とを連結する連結部材4を構成する。連結部材4は、例えば、PCケーブルである。PCケーブルは、プレストレストコンクリート構造物の緊張材として用いる鋼線である。なお、連結部材4は、鋼棒、チェーン等であってもよい。従来の連結部材は、一本のPCケーブルの一端が上部構造2に接続され、他端が下部構造3に接続されていたが、本実施形態の連結部材4は、上部構造2に接続される第一連結部材42と下部構造3に接続される第二連結部材43とに分割されている。
【0028】
また、上部構造2には上部ブラケット21が設置され、下部構造3には下部ブラケット31が設置されている。そして、第一連結部材42は上部ブラケット21に接続され、第二連結部材43は下部ブラケット31に接続される。かかる上部ブラケット21及び下部ブラケット31については、従来から使用されているものをそのまま使用することができ、例えば、連結部材4の外周を囲うような箱状に形成されていてもよいし、連結部材4を支持する偏向具を備えていてもよい。なお、上部ブラケット21及び下部ブラケット31を上部構造2及び下部構造3に固定するアンカーについては、図を省略してある。
【0029】
また、図1では、上部構造2の底部に上部ブラケット21を設置し、下部構造3の側面部に下部ブラケット31を設置しているが、上部構造2の側面部に上部ブラケット21を設置してもよいし、上部ブラケット21及び下部ブラケット31は略水平となる位置に設置されてもよい。
【0030】
第一連結部材42は、上部ブラケット21のうち連結部材4に対して略垂直に配置された垂直プレート21aに形成された貫通孔に挿通され、垂直プレート21aの背面に配置された緩衝機構6を介してナット7により固定されている。緩衝機構6は、ゴム等により形成される緩衝材61と、緩衝材61の背面に接続された止圧板62と、止圧板62の背面に配置されたコイルスプリング63と、コイルスプリング63の位置を固定する止め部材64と、これらを覆う保護カバー65と、を有する。緩衝機構6を構成する各部品は第一連結部材42の後端に挿通され、ナット7により固定される。かかる緩衝機構6により、第一連結部材42が軸方向に移動した際に生じる衝撃を緩和することができる。特に、コイルスプリング63は、連結部材4の大きな移動に対して作用し、緩衝材61は、コイルスプリング63が圧縮された際の衝撃に対して作用する。
【0031】
第二連結部材43は、下部ブラケット31のうち連結部材4に対して略垂直に配置された垂直プレート31aに形成された貫通孔に挿通され、垂直プレート31aの背面に配置された緩衝機構8を介してナット9により固定されている。緩衝機構8は、ゴム等により形成される緩衝材81と、緩衝材81の背面に接続された止圧板82と、止圧板82の位置を固定する止め部材83と、を有する。緩衝機構8を構成する各部品は第二連結部材43の後端に挿通され、ナット9により固定される。かかる緩衝機構6により、第一連結部材42が軸方向に移動した際に生じる衝撃を緩和することができる。一般に、コイルスプリング63は、緩衝機構6又は緩衝機構8のいずれか一方に配置されていればよく、上部ブラケット21側に配置されることが多い。なお、緩衝機構8に保護カバーを配置するようにしてもよい。
【0032】
前記エネルギー吸収機構5は、第一連結部材42と第二連結部材43とを結合するように配置される機構である。具体的には、図2(a)に示したように、第一連結部材42と第二連結部材43とをエネルギー吸収部材51によって結合する。第一連結部材42の先端には、第一定着部52が接続されており、第二連結部材43の先端には、第二定着部53が接続されている。第一定着部52及び第二定着部53は、それぞれ第一連結部材42及び第二連結部材43に対して回転可能に接続されてもよい。第一定着部52及び第二定着部53を回転可能に接続することにより、エネルギー吸収部材51を接続する際に、第一連結部材42及び第二連結部材43のねじれを抑制することができる。
【0033】
第一定着部52は、第一連結部材42よりも大径の略円柱形状を有し、先端に形成された凹部52aと、凹部52aの底部に形成された螺子穴52bと、先端の外周に形成された螺子山52cと、を有する。凹部52aには、エネルギー吸収部材51が挿通され、螺子穴52bには、エネルギー吸収部材51が螺合され、螺子山52cには結合部材54が螺合される。なお、凹部52aは、エネルギー吸収機構5の全長を短くするために形成されており、必要に応じて省略するようにしてもよい。
【0034】
第二定着部53は、第二連結部材43よりも大径の略円柱形状を有し、先端面に螺子穴53aが形成されている。螺子穴53aには、エネルギー吸収部材51が螺合される。なお、第二定着部53の先端には、必要に応じて、第一定着部52の凹部52aと同様の凹部を形成するようにしてもよい。
【0035】
エネルギー吸収部材51は、図2(a)に示したように、中央部が縮径されるとともに両端部が螺子切りされた円柱状部材である。かかるエネルギー吸収部材51の一端を第一定着部52に螺合し、他端を第二定着部53に螺合することにより、第一連結部材42と第二連結部材43とが結合され、一本の連結部材4を構成する。
【0036】
また、エネルギー吸収部材51は、低降伏点鋼やアルミニウム合金等の低降伏点材により形成される。低降伏点材は、一般構造用圧延鋼材や溶接構造用圧延鋼材に比べ降伏点が低い金属である。特に、低降伏点鋼は、添加元素を極力低減した純鉄に近い鋼材であり、従来の軟鋼と比較して強度が低く、延性が極めて高い鋼材である。かかる性質を有する低降伏点材を連結部材4の中間部に配置することにより、図2(b)に示したように、第一連結部材42と第二連結部材43との間でエネルギー吸収部材51が塑性変形してダンパーとして作用し、地震エネルギーを吸収することができる。エネルギー吸収部材51のエネルギー吸収量は、材質及び断面の形状や大きさを調整することにより任意に設定することができ、例えば、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合に塑性変形するように調整される。すなわち、エネルギー吸収部材51は、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合に相当する力が作用した場合に、塑性変形して地震エネルギーを吸収する部材である。
【0037】
前記結合部材54は、エネルギー吸収部材51の保護カバーであるとともに、エネルギー吸収部材51のストッパとして作用する部品である。具体的には、結合部材54は、図2(a)に示したように、略円筒形状を有し、先端の内周面に形成された螺子切り部54aと、後端に配置されるとともに連結部材4を挿通可能な開口部54bを備えた底部54cと、を有する。螺子切り部54aには、第一定着部52の螺子山52cが螺合され、開口部54bには、第二連結部材43が挿通される。また、開口部54bの径は、第二連結部材43の径よりも大きく、第二定着部53の径よりも小さく形成される。
【0038】
かかる構成により、結合部材54の内部にエネルギー吸収部材51を配置することができ、風雨に曝されないようにすることができ、エネルギー吸収部材51の錆びの発生や経年劣化の進行を抑制することができる。また、結合部材54の開口部54bに第二連結部材43を挿通するようにしたことにより、開口部54bが下を向くように配置することができ、異物(砂、ゴミ等)や結合部材54又は連結部材4の表面を伝って流れてくる雨露の結合部材54内への侵入を抑制することができる。なお、エネルギー吸収部材51の表面に防錆塗料を塗布するようにしてもよい。
【0039】
また、結合部材54は、底部54cと第二定着部53との間に遊間55を有する。かかる遊間55により、図2(b)に示したように、エネルギー吸収部材51の塑性変形による移動が許容される。また、例えば、エネルギー吸収部材51が破断した場合には、図2(c)に示したように、第二定着部53が底部54cに当接し、第二定着部53のそれ以上の移動を制限し、連結部材4の切断(第一連結部材42と第二連結部材43との分離)が防止される。なお、エネルギー吸収部材51が破断せずに延びた場合であっても、第二定着部53が底部54cに当接し、第二定着部53の移動を制限することができる。
【0040】
遊間55の長さLは、例えば、上部構造2及び下部構造3の桁かかり長S(係止長さ)の0.75倍以下に設定される。このように、遊間55をL≦0.75×Sの条件を満足するように設計することにより、第二定着部53が底部54cに当接した場合であっても、支持面3a上に道路橋示方書に基づく0.25×Sの余裕を残した状態で、上部構造2と下部構造3との相対移動を防止し、上部構造2の下部構造3からの落下を抑制することができる。
【0041】
ここで、上述した落下防止装置1の作用について、図3を参照しつつ説明する。図3(a)は、地震が生じていない平常時を示している。かかる平常時は、落下防止装置1には大きな負荷が生じておらず、エネルギー吸収部材51は図2(a)に示した塑性変形していない状態になっている。なお、説明の便宜上、橋軸方向Xにおいて、平常時における上部構造2の位置を原点(0地点)とする。
【0042】
図3(b)は、レベル1地震動が生じた状態を示している。レベル1地震動は、いわゆる中小規模の地震に相当する。レベル1地震動が生じた場合には、主として、支承32、伸縮装置33及び変位制限装置34によって、地震エネルギーが吸収される。具体的には、図示したように、地震エネルギーによって、支承32は歪み、伸縮装置33は伸縮し、変位制限装置34の鋼棒は上部構造2に押し付けられ、これらの作用により地震エネルギーが吸収される。また、落下防止装置1において、地震の揺れによって生じる変位X及び衝撃は、主として、緩衝機構6のコイルスプリング63によって吸収される。
【0043】
図3(c)は、レベル2地震動が生じた状態を示している。レベル2地震動は、いわゆる大規模の地震に相当する。レベル2地震動が生じた場合には、主として、支承32、変位制限装置34及び落下防止装置1によって、地震エネルギーが吸収される。具体的には、図示したように、地震エネルギーによって、支承32は大きく歪み(場合によっては破壊される。)、伸縮装置33は破壊され、変位制限装置34の鋼棒は上部構造2に押し付けられて塑性変形し、落下防止装置1の連結部材4が上部構造2及び下部構造3の間で緊張し、これらの作用により地震エネルギーが吸収される。このとき、落下防止装置1に生じる衝撃及び変位Xは緩衝機構6,8によって吸収される。また、レベル2地震動以下の地震では、エネルギー吸収部材51は塑性変形しないため、図3(c)の状態では、エネルギー吸収機構5はまだ作用していない。
【0044】
図3(d)は、レベル2地震動を超えるレベル3地震動が生じた状態を示している。レベル3地震動が生じた場合には、主として、落下防止装置1によって、地震エネルギーが吸収される。図示したように、地震エネルギーによって、伸縮装置33に加え、支承32及び変位制限装置34も破壊され、上部構造2は下部構造3の支持面3a上にずり落ちる。そして、上部構造2が下部構造3の支持面3aから落下しないように、落下防止装置1のエネルギー吸収機構5が作用することとなる。すなわち、レベル3地震動が生じた場合に、エネルギー吸収部材51は、図2(b)に示したように、塑性変形して地震エネルギーを吸収する。
【0045】
さらに、エネルギー吸収部材51は、図2(c)に示したように、遊間55の長さLの範囲内で結合部材54内を移動し、長さLだけ移動した場合には、第二定着部53が結合部材54の底部54cに当接し、移動が制限される。したがって、連結部材4は、遊間55の長さLだけ延長された状態を維持するように構成されており、上部構造2の橋軸方向X(水平方向)の移動を変位Xに制限することができる。ここで、道路橋示方書によれば、(S−X)≧0.25×Sとなるように設計される。したがって、遊間55の長さLは、0.75×S以下となるように設定され、好ましくは、橋軸方向Xに投影した長さが0.75×S以下となるように設定され、さらに好ましくは、橋軸方向Xに投影した長さが(0.75×S−X)以下となるように設定される。
【0046】
本実施形態に係る落下防止装置1では、低降伏点材により形成されたエネルギー吸収部材51を有するエネルギー吸収機構5を連結部材4(第一連結部材42及び第二連結部材43)の間に配置したことにより、レベル2地震動を超えるレベル3地震動であっても、エネルギー吸収部材51の塑性変形によって、上部構造2の落下を効果的に抑制することができる。
【0047】
上述した第一実施形態では、エネルギー吸収部材51は、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合に相当する力が作用した場合に、塑性変形して地震エネルギーを吸収する部材であるところ、図3(d)に示したように、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合にエネルギー吸収部材51が塑性変形するように調整されている。
【0048】
ところで、このエネルギー吸収部材51に作用する力は、コイルスプリング63の長さ又は弾性力を調整することにより、変更することができる。例えば、第一実施形態に示したナット7を締め付けてコイルスプリング63の長さを変更したり、長さの短いコイルスプリング63に変更したり、第一実施形態に示したコイルスプリング63よりも弾性力が低いものに変更したりすることにより、早い段階で緩衝機構6が効かなくなる状態にして、エネルギー吸収部材51に高い負荷をかけることができる。したがって、レベル2地震動以下の地震動が発生した場合であっても、エネルギー吸収部材51に対して、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合に相当する力を作用させることができ、塑性変形させることができる。
【0049】
このように、レベル2地震動以下の地震動が生じた際に、エネルギー吸収部材51を塑性変形可能にした場合には、より早い段階から地震エネルギーを吸収することができ、例えば、支承32、伸縮装置33、変位制限装置34等の一部を省略したり、小型化又は簡略化したり、地震動による支承32、伸縮装置33、変位制限装置34等の破壊を抑制することができる。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る落下防止装置1では、第一連結部材42の後端にコイルスプリング63を備えた緩衝機構6が接続され、コイルスプリング63の長さ又は弾性力を調節することにより、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合又はレベル2地震動以下の地震動が発生した場合に、エネルギー吸収部材51に対して塑性変形し得る力が作用するように構成されている。
【0051】
次に、本発明の落下防止装置1に係る他の実施形態について説明する。ここで、図4は、本発明の他の実施形態に係る落下防止装置を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0052】
図4(a)に示した第二実施形態は、エネルギー吸収機構5の上下を反転させたものである。すなわち、第一実施形態における第一定着部52が第二実施形態における第二定着部53に変更され、第一実施形態における第二定着部53が第二実施形態における第一定着部52に変更される。したがって、第二実施形態に係る落下防止装置1は、第一連結部材42に挿通されるとともに先端が第二定着部53に接続される結合部材54を備え、結合部材54は、接続状態で内蔵する第一定着部52との間にエネルギー吸収部材51の塑性変形による移動を許容する遊間55が形成されているものと言い換えることができる。かかる構成によっても、エネルギー吸収の観点において、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
ただし、第二実施形態においては、結合部材54の開口部54b(図示せず)に第一連結部材42を挿通するようにしたことにより、開口部54bが上を向いた状態で配置されるため、異物(砂、ゴミ等)や結合部材54又は連結部材4の表面を伝って流れてくる雨露が結合部材54内に侵入しないように又は異物や雨露が結合部材54内に侵入してもエネルギー吸収部材51が劣化しないようにする手段を付加することが好ましい。例えば、第一連結部材42に傘のようなシールドを配置するようにしてもよいし、開口部54bの形状を工夫することにより異物や水滴が侵入しにくくなるようにしてもよいし、強力な防錆塗料をエネルギー吸収部材51の表面や結合部材54の内面に塗布するようにしてもよいし、耐錆性に優れた低降伏点材を使用するようにしてもよい。
【0054】
図4(b)に示した第三実施形態は、第一実施形態における第一定着部52の断面を多角形に形成したものである。具体的には、第一定着部52の断面は六角形に形成される。かかる構成により、現地でエネルギー吸収部材51を第一連結部材42及び第二連結部材43に螺合させる際に、第一定着部52を工具により締め付けやすくすることができる。特に、太径の連結部材4(例えば、50〜60mm以上の径を有するPCケーブル)の場合に効果的である。なお、多角形は六角形に限定されるものではないし、第二定着部53を多角形断面に形成してもよいし、第一定着部52及び第二定着部53のいずれか一方又は両方を多角形断面に形成してもよい。
【0055】
図4(c)に示した第四実施形態は、エネルギー吸収部材51の両端部が逆螺子となるように螺子切りしたものである。かかる構成により、エネルギー吸収部材51を一方向に回転させるだけで、第一定着部52及び第二定着部53の両方に容易に螺合させることができる。特に、太径の連結部材4(例えば、50〜60mm以上の径を有するPCケーブル)の場合に効果的である。
【0056】
続いて、本発明の落下防止装置の据付方法に係る実施形態について説明する。ここで、図5は、本発明の実施形態に係る落下防止装置の据付方法を示す図であり、(a)はブラケット設置工程、(b)は連結部材接続工程、(c)はエネルギー吸収部材接続工程、(d)は結合部材接続工程、を示している。なお、上述した落下防止装置1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0057】
本発明の実施形態に係る落下防止装置1の据付方法は、一端が上部構造2に接続され、他端が下部構造3に接続され、上部構造2の下部構造3からの落下を防止する落下防止装置1の据付方法であって、上部構造2に接続される第一連結部材42と、下部構造3に接続される第二連結部材43と、第一連結部材42及び第二連結部材43の間に配置されるエネルギー吸収機構5と、を有し、第一連結部材42又は第二連結部材43を支持するブラケット(上部ブラケット21及び下部ブラケット31)を上部構造2及び下部構造3に設置し、第一連結部材42及び第二連結部材43をそれぞれブラケット(上部ブラケット21及び下部ブラケット31)に接続し、エネルギー吸収機構5を第一連結部材42及び第二連結部材43に接続することによって第一連結部材42及び第二連結部材43を結合し、落下防止装置1を上部構造2及び下部構造3に据え付ける。
【0058】
具体的には、本発明の実施形態に係る落下防止装置1の据付方法は、図5(a)〜(d)に示したように、ブラケット設置工程、連結部材接続工程、エネルギー吸収部材接続工程及び結合部材接続工程を有する。
【0059】
図5(a)に示したブラケット設置工程は、第一連結部材42を支持する上部ブラケット21を上部構造2に設置し、第二連結部材43を支持する下部ブラケット31を下部構造3に設置する工程である。なお、上部ブラケット21及び下部ブラケット31を固定するアンカーの図は省略してある。
【0060】
図5(b)に示した連結部材接続工程は、上部ブラケット21に第一連結部材42を接続し、下部ブラケット31に第二連結部材43を接続する工程である。第一連結部材42は、上部ブラケット21の垂直プレート21aに下部ブラケット31側から挿通され、垂直プレート21aの背面に配置される緩衝機構6によって上部ブラケット21に固定される。なお、第一連結部材42の先端には、第一定着部52が予め形成されている。
【0061】
同様に、第二連結部材43は、下部ブラケット31の垂直プレート31aに上部ブラケット21側から挿通され、垂直プレート31aの背面に配置される緩衝機構8によって下部ブラケット31に固定される。なお、第二連結部材43の先端には、第二定着部53が予め形成されているとともに、第二連結部材43には、結合部材54が挿通されている。
【0062】
図5(c)に示したエネルギー吸収部材接続工程は、第一連結部材42及び第二連結部材43にエネルギー吸収部材51を接続する工程である。エネルギー吸収部材51の一端は第一定着部52に螺合され、他端は第二定着部53に螺合される。かかる工程によって、第一連結部材42及び第二連結部材43が結合され一本の連結部材4を構成する。
【0063】
図5(d)に示した結合部材接続工程は、結合部材54を第一定着部52に接続する工程である。結合部材54の先端を第一定着部52の先端に螺合させる。かかる工程によって、エネルギー吸収機構5が構成され、落下防止装置1の据付が完了する。
【0064】
一般に、一本のPCケーブルを用いた落下防止装置1では、PCケーブルの一端を上部ブラケット21の内側から引き込み、PCケーブルの他端を下部ブラケット31の内側から挿通させることによって、一本のPCケーブルを上部ブラケット21及び下部ブラケット31の両方に挿通させてから固定される。かかる据付方法では、上部構造2側に空間的な余裕がない場合には落下防止装置1を設置できなくなってしまうという問題がある。
【0065】
しかしながら、上述した落下防止装置1では、エネルギー吸収機構5を連結部材4の間に配置して、連結部材4を第一連結部材42と第二連結部材43とに分離可能に構成したことにより、エネルギー吸収機構5の部分で上部側と下部側とに二分割して据え付けることができる。したがって、上部構造2や下部構造3に連結部材4を引き込む空間的な余裕がない場合であっても、容易に落下防止装置1を据え付けることができる。
【0066】
また、上述した落下防止装置1では、連結部材4の間にエネルギー吸収機構5が配置されていることから、劣化した又は使用したエネルギー吸収機構5のメンテナンス時に、緩衝機構6,8等を分解せずに、結合部材54を取り外してエネルギー吸収部材51を交換するだけで済み、容易に修繕することができる。
【0067】
なお、上部構造2や下部構造3に連結部材4を引き込む空間的な余裕がある場合には、上述した落下防止装置1であっても、事前にエネルギー吸収機構5を第一連結部材42及び第二連結部材43に接続して連結部材4を一本化してから、従来の据付方法によって上部構造2及び下部構造3に据え付けるようにしてもよい。
【0068】
本発明は上述した実施形態に限定されず、橋以外の陸上構造物や海上構造物にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 落下防止装置
2 上部構造
3 下部構造
4 連結部材
5 エネルギー吸収機構
6,8 緩衝機構
21 上部ブラケット
31 下部ブラケット
42 第一連結部材
43 第二連結部材
51 エネルギー吸収部材
52 第一定着部
53 第二定着部
54 結合部材
55 遊間
63 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が上部構造に接続され、他端が下部構造に接続され、前記上部構造の前記下部構造からの落下を防止する落下防止装置であって、
前記上部構造に接続される第一連結部材と、前記下部構造に接続される第二連結部材と、前記第一連結部材及び前記第二連結部材の間に配置されるエネルギー吸収機構と、を有し、
前記エネルギー吸収機構は、前記第一連結部材の先端に配置された第一定着部と、前記第二連結部材の先端に配置された第二定着部と、前記第一定着部及び前記第二定着部に接続され低降伏点材により形成されるエネルギー吸収部材と、前記第一連結部材又は前記第二連結部材の一方に挿通されるとともに先端が前記第一連結部材又は前記第二連結部材の他方に配置された前記第一定着部又は前記第二定着部に接続される結合部材と、を備え、
前記結合部材は、接続状態で内蔵する前記第一定着部又は前記第二定着部との間に前記エネルギー吸収部材の塑性変形による移動を許容する遊間が形成されている、
ことを特徴とする落下防止装置。
【請求項2】
前記結合部材は、前記第二連結部材に挿通されるとともに先端が前記第一定着部に接続され、接続状態で内蔵する前記第二定着部との間に前記遊間が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項3】
前記第一定着部又は前記第二定着部は、断面が多角形に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の落下防止装置。
【請求項4】
前記エネルギー吸収部材は、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合に相当する力が作用した場合に、塑性変形して地震エネルギーを吸収する部材である、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の落下防止装置。
【請求項5】
前記エネルギー吸収部材は、中央部が縮径されるとともに両端部が逆螺子となるように螺子切りされた柱状部材である、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の落下防止装置。
【請求項6】
前記第一連結部材又は前記第二連結部材は、後端にコイルスプリングを備えた緩衝機構が接続され、該コイルスプリングの長さ又は弾性力を調節することにより、レベル2地震動を超える地震動が発生した場合又はレベル2地震動以下の地震動が発生した場合に、前記エネルギー吸収部材に対して塑性変形し得る力が作用するように構成した、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の落下防止装置。
【請求項7】
前記上部構造は橋桁又は橋梁であり、前記下部構造は橋脚又は橋台である、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の落下防止装置。
【請求項8】
一端が上部構造に接続され、他端が下部構造に接続され、前記上部構造の前記下部構造からの落下を防止する落下防止装置の据付方法であって、
前記上部構造に接続される第一連結部材と、前記下部構造に接続される第二連結部材と、前記第一連結部材及び前記第二連結部材の間に配置されるエネルギー吸収機構と、を有し、
前記第一連結部材又は前記第二連結部材を支持するブラケットを前記上部構造及び前記下部構造に設置し、
前記第一連結部材及び前記第二連結部材をそれぞれ前記ブラケットに接続し、
前記エネルギー吸収機構を前記第一連結部材及び前記第二連結部材に接続することによって前記第一連結部材及び前記第二連結部材を結合する、
ことを特徴とする落下防止装置の据付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−122287(P2012−122287A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275368(P2010−275368)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【特許番号】特許第4726094号(P4726094)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(395013212)株式会社IHIインフラ建設 (10)
【Fターム(参考)】