落石用防護柵の格納構造と格納方法
【課題】使用状態と格納状態に変更することができる落石用防護柵の格納構造を提供する。
【解決手段】斜面101に立設した傾動可能な複数の支柱2L,3,3,2Rと、それら支柱2L,3,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備える。斜面101に略沿って傾倒した複数の支柱2L,3,3,2Rと、これら複数の支柱2L,3,3,2Rの上を覆うシート80とを備えるから、積雪期間は、支柱2L,3,3,2Rを倒してシート80で覆うことにより、格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網11により落石を捕捉することができる。また、支柱を立てた使用状態で冬場を経過することに伴う積雪荷重によって、合成樹脂からなる網11が悪影響を受けることもない。
【解決手段】斜面101に立設した傾動可能な複数の支柱2L,3,3,2Rと、それら支柱2L,3,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備える。斜面101に略沿って傾倒した複数の支柱2L,3,3,2Rと、これら複数の支柱2L,3,3,2Rの上を覆うシート80とを備えるから、積雪期間は、支柱2L,3,3,2Rを倒してシート80で覆うことにより、格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網11により落石を捕捉することができる。また、支柱を立てた使用状態で冬場を経過することに伴う積雪荷重によって、合成樹脂からなる網11が悪影響を受けることもない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石用防護柵の格納構造と格納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、山腹の斜面部に間隔を置いて縦孔を穿孔し、この縦孔に建て込んだパイプ支柱を並設すると共に、これら各パイプ支柱に複数段のケーブルとともに金網を張設した落石等の防護柵が提案され、防護面には金網が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、防護面に用いる網に係り、防護ネットは鋼製又はワイヤー等の剛性線材を並行に取り付けたものや、剛性線材でネット上に編成したもの、複数の水平ロープ材と金網を組み合わせたもの等、公知の各種ネットを含むものである(公報第0011段)と記載されている(例えば特許文献2)。
【0004】
上記従来技術のように、この種の網を用いる防護体では、ワイヤーロープや鋼製の網を組み合わせることにより、落石等から道路などを防護するようにしている。
【0005】
しかし、鋼製のワイヤーロープや網を用いるものでは、部材自身が重量物となるため、据付用の重機が必要となり、施工範囲に制約を受け、工期が長期化し、工費が嵩む問題がある。そして、落石防護のために設けられる防護体は重機の使用に不向きな山の斜面などに設けられることが多いため、このような山の斜面に防護体を設ける施工では、部材が重量物であると、その搬入作業も煩雑となり、施工性に劣る問題がある。
【0006】
そこで、支柱間に合成樹脂からなる網を張設した防護柵であって、前記支柱を傾動可能に立設し、前記支柱の上部と該支柱一側の地山との間に控えロープ装置を設け、この控えロープ装置のロープ材に余長部を設けると共に、この余長部を摺動可能に把持する緩衝具を設けた防護柵である(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平7−197423号公報
【特許文献2】特開2000−273827号公報
【特許文献3】特開2004−76275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献3の防護柵では、合成樹脂からなる網は鋼製などの網に比べ、変形し易く、切断までの伸び率が大きいから、落石を受けると、網が他側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網から支柱に所定以上の力が加わると、緩衝具に対して余長部が摺動して支柱が他側に傾動する。このように落石を受けると、網が他側に変形すると共に伸び、さらに、支柱が他側に傾動することにより、落石を受けてから網が変形移動する量及び時間が大となり、衝撃吸収能力が効果的に向上する。
【0008】
ところで、合成樹脂の網はその伸縮性により衝撃吸収が得られ、落石用として高い性能を有するが、その伸縮性により雪崩防止用としては不向きな面がある。
【0009】
しかし、従来の防護柵では、一旦据付けたものは、簡単には取り外すことができず、合成樹脂製の網を備えた防護柵を、冬場に積雪のある斜面に用いることの障害となっていた。また、斜面などの作業において、邪魔になる場合などには、防護柵を使用状態と格納状態に簡単に変更できるものがあれば便利です。
【0010】
そこで、本発明は、積雪の伴う設置場所などにおいて合成樹脂製の網を備えた防護柵を使用状態と格納状態に変更することができる落石用防護柵の格納構造と格納方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納構造において、前記設置面に略沿って傾倒した前記複数の支柱と、これら複数の支柱の上を覆うシートとを備えるものである。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記設置面が斜面であり、前記シートの上面が低摩擦面である。
【0013】
また、請求項3の発明は、前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備えるものである。
【0014】
また、請求項4の発明は、設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納方法において、前記設置面に略沿って前記複数の支柱を傾倒し、これら複数の支柱の上を覆う方法である。
【0015】
また、請求項5の発明は、前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備え、この着脱手段により連結を解除し、解除後、前記控えロープ材を前記網に沿わせる方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の構成によれば、積雪期間は、支柱を倒してシートで覆うことにより、格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網により落石を捕捉することができる。
【0017】
また、請求項2の構成によれば、斜面に設置した防護柵を格納した状態で、シートの上に雪が降っても、斜面に沿って滑り落ちるため、支柱の上に雪の荷重が加わることを防止できる。
【0018】
また、請求項3の構成によれば、設置面との連結を解除することにより、控えロープ材を網に沿わせて格納することができる。
【0019】
また、請求項4の構成によれば、積雪期間は、支柱を倒してシートで覆い、シートの下部に格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網により落石を捕捉することができる。
【0020】
また、請求項5の構成によれば、控えロープ材もシートの下に格納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる落石用防護柵の格納構造を採用することにより、従来にない落石用防護柵の格納構造が得られ、その落石用防護柵の格納構造と格納方法を夫々記述する。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の防護体の第1実施形態について図1〜図25を参照して説明する。同図に示すように、防護柵1は、両側に配置した端末支柱2L,2Rの間に、複数の中間支柱3,3を並設し、これら支柱2L,3,3,2R間に網11を設ける。尚、防護柵1の一側は一例として山側Yである。
【0023】
まず、図5〜図8により網11の構成について説明すると、前記網11は合成樹脂からなる貫通型無結筋網であり、例えば合成樹脂製の繊維糸12,12Aを複数撚り合わせて線材13,13Aを形成し、これら線材13,13Aは交差方向をなし、交差部14により無結筋により相互に固定されている。尚、無結節網にはラッセル式もあるが、好ましくは貫通型を用いる。図5は構造を説明する説明図であり、同図に示すように、線材13,13Aの交差部14において、一方の線材13の繊維糸12,12の間に隙間により形成する輪部15に、他方の線材13Aの繊維糸12A,12Aを前後逆方向から挿通し、さらに、交差部14においても繊維糸12,12Aを撚って輪部15,15Aを閉めることにより、両線材13,13Aを交差部14で固定する。尚、15Aは交差部14で前記繊維糸12A,12Aの間に隙間により形成する輪部である。そして、図5は説明のために輪部15,15Aを開いて図示したが、実際の網11では、前記輪部15,15Aは閉じられた構造となる。
【0024】
また、網11は略長方形状をなし、網11の縁にはロープ材16が設けられ、このロープ材16の四方には金属製の環体17を設けている。また、図6及び図7に示すように、前記ロープ材16において線材13,13Aの端部側を折り返し、線材13,13Aの重複部分18で線材13,13A相互を固定し、表裏の線材13,13Aの間にロープ材16を配置する。
【0025】
また、網11に用いる合成樹脂としては、高密度のポリエチレンなどが好適であり、その高密度のポリエチレンを用いた場合、網11の比重は0.94〜0.96である。また、必要に応じて、網11にカーボンブラックや紫外線吸収剤を使用して耐候性を向上することができる。
【0026】
さらに、図8に示すように、網11,11は網目の一辺の長さM,mが異なり(M>m)、且つ線材13,13Aの太さの異なるものを組み合わせて使用する。大きな網目の網11は、小さな網目の網11に比べて太い線材13,13Aが用いられる。例えば、一辺の長さMは100mm、一辺の長さmは50mmである。そして、網目の大きな網11の前に、網目の小さな網11を重ね合わせ、即ち、山側の網目の小さな綱11が位置するようにして複数の網11,11を重ね合わせて支柱2L,2R,3間に張設する。また、1枚の網目の小さい網11と、2枚の網目の大きな網11,11とを重ね合わせるようにしてもよい。
【0027】
次に、前記支柱2L,2R,3とその取付構造の詳細について説明する。
【0028】
図9及び図10などに示すように、支柱2L,2R,3は、鋼製角パイプからなる本体21を備え、その本体21の前の上下にそれぞれ網係止部23,23を設ける。そして、これら網係止部23,23に前記ロープ材16などを係止する。また、両側の支柱2L,2Rは、その支柱3側の上下に横ロープ連結部24を設け、中間の支柱3は左右両側にそれぞれ横ロープ材連結部24を設ける。
【0029】
さらに、支柱2L,2R,3の前上部に、一側控えロープ用の一側連結部25を設け、また、左側の支柱2Lはその防護柵外側(右側)に外側控えロープ用の外側連結部26を設け、右側の支柱2Rはその防護柵外側(左側)に外側控えロープ用の外側連結部26を設けている。尚、それら係止部23及び連結部24,25,26は板材に孔を有するものである。
【0030】
斜面101などの設置場所に、支柱の取付部材31を設ける。図11〜図12に示すように、前記取付部材31は金属などからなり、ベース部32と、支柱2L,2R,3を回動可能に連結する連結受部33とを一体に有する。この連結受部33は、間隔を置いて一対の腕部34,34を前記ベース部32に立設し、それら腕部34,34の下部間に、支柱2L,2R,3の下部を挿入すると共に、この下部の孔22と両腕部34,34の孔34A,34Aとに、枢軸たるボルト36を挿通し、これにより取付部材31に前記支柱2L,2R,3下部を回動可能に連結する。前記ベース部32は複数のアンカーたるロックボルト38により斜面101などの設置面に固定される。尚、前記ベース部32の左右には、左右で前後異なる位置の長孔32Aを穿設し、この長孔32Aは左右方向に長く形成され、アンカープレート39の孔39Aに挿通した前記ロックボルト38を、前記長孔32Aに挿通する。したがって、長孔32Aによりロックボルト38の左右方向の位置を調整できる。
【0031】
また、前記取付部材に下部を回動可能に連結した状態で、前記支柱2L,2R,3の下端とベース部32の上面との間には隙間があり、それら支柱2L,2R,3の下端がベース部32に干渉することなく回動可能になっており、支柱2L,2R,3はベース部32に垂直な位置から前後にそれぞれ略90度回動可能に構成している。即ち、支柱2L,2R,3は、その上側が斜面101に当たるまで倒れることができるように連結されている。
【0032】
隣合う支柱2L,3,3,2Rの間の上,下段には横ロープ材51,51が張設され、これら横ロープ材51,51に図示しない結束具により網11が取り付けられている。前記横ロープ材51は一方と他方のロープ材51A,51Bよりなり、一方のロープ材51Aを調整張り具たるターンバックル52により一方の支柱2L,3,3の前記連結部24に連結し、他方のロープ材51Bを隣合う他方の支柱3,3,2Rの前記連結部24に連結し、支柱2L,3,3,2R間で両ロープ材51A,51Bの端部を重ね合わせて余長部たる重複部53を形成し、この重複部53において、両ロープ材51A,51Bを締め具たるワイヤクリップ54により所定の摩擦力で締め付けている。また、このワイヤクリップ54は緩衝具を構成する。尚、下段の横ロープ材51では、ロープ材51Bにターンバックル52が用いられている。また、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部は、太さの等しい切断端となっている。
【0033】
したがって、横ロープ材51に所定以上の引張力が加わると、ワイヤクリップ54の締付力に抗してロープ材51A,51Bが離れる方向に摩擦摺動する。また、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部は、太さの等しい切断端となっているから、端部がワイヤークリップ54に係止することなく抜け出し、この後の横ロープ材51から拘束されることなく網11が変形可能となり、合成樹脂製の網11の特性を生かすことができる。
【0034】
また、隣り合う前記支柱2L,3,3,2Rの上側と下側とは、斜めロープ材56,56により連結され、それら支柱2L,3,3,2Rの本体21の側面の上側と下側には、丸鋼を略環状に形成した横ロープ連結部57U,57Sが設けられ、前記斜めロープ材56,56は所定の張力で張設される。尚、斜めロープ材56の一端は、張力調整手段であるターンバックル56Aにより前記横ロープ連結部57U,57Sに連結されている。
【0035】
また、前記斜めロープ材56は、網11と同一材質の合成樹脂製のものを用いる。したがって、金属製のロープを用いる場合に比べ、斜めロープ材56と網11とが擦れても、網11の損傷を防止できる。
【0036】
前記支柱2L,3,3,2Rの前上部の一側連結部25と、防護柵の一側である前側の地山との間には、控えロープ装置61を設ける。この控えロープ装置61は、ロープ材62とこのロープ材62の余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63とを備える。この緩衝具63のナット71が、控えロープ材62と傾斜面101との連結を解除可能な着脱手段である。
【0037】
この緩衝具63は、図14〜図18に示すように、前記ロープ材62を所定の摩擦力で把持する一対の把持体64,64を備え、これら把持体64,64の合せ面に、ロープ材62に嵌合する嵌合溝65を形成し、両把持体64,64をボルトナットなどの締付手段66により締め付け固定する。相互に固定された把持体64,64の側面には、Uボルト67が係合する係合溝68,68が形成され、この係合溝68,68にUボルト67の両端部67T,67Tが係合する。また、Uボルト67の両端部67T,67Tを挿通するプレート69を備え、このプレート69にはロープ材62の余長部62A側を遊挿する溝部70が形成されている。そして、Uボルト67の途中を前記一側連結部25に挿通連結し、その両端部67T,67T間に、ロープ材62を締め付けた把持体64,64を嵌め入れ、さらに、端部67T,67Tを押さえ板69に挿通し、端部67T,67Tにナット71を螺合する。そして、前記一対の把持体64,64により、ロープ材62を所定の摩擦力で把持する把持具72を構成し、また、図1及び図18に示すように、控えロープ装置61の緩衝具63は、前記2つの把持具72を並べて設けている。このようにUボルト67に複数の把持具72を並べて設けることができ、また、さらに、Uボルト67を長くすれば3個以上の把持具72を並べて設けることもできる。
【0038】
そして、前記ロープ材62の余長部62Aを把持した前記緩衝具63が、アンカーたるロックボルト73により地山に固定される。具体的には、前記緩衝具63のUボルト67を、ロックボルト73の頭部に係止した状態で、ロックボルト73の頭部にアンカープレート91を配置し、そのロックボルト73の頭部に着脱手段たるナット92を螺合することにより、前記ロープ材62をロックボルト73に連結している。尚、アンカープレート91には、ロックボルト73の頭部を挿通する孔93が穿設されている。
【0039】
端部支柱2L,2Rの外側連結部26には、控えロープ装置61A,61Bが設けられ、これら控えロープ装置61A,61Bは把持具72を用いている点と、張設方向が異なる以外は、前記控えロープ装置61と同一構成であり、前記控えロープ装置61Aは、防護柵の左右方向に対して平面約45度の角度をなし、すなわちその反余長部が一側に位置し、前記控えロープ装置61Bは、防護柵の左右方向に沿って設けられている。
【0040】
そして、防護柵1の施工においては、斜面101にロックボルト38により取付部材31を固定し、取付部材31に支柱2L,3,2Rをボルト36により傾動可能に連結した状態で、防護柵の一側である前側の地山との間には、控えロープ装置61を設け、支柱2L,3,2Rは、その本体21を垂直位置から前側に5度傾斜して設けられる。支柱2L,3,2R間に、斜めロープ材56,56を交差方向に張設して支柱2L,3,2R間の間隔を保持した後、適宜手順により、支柱2L,3,2R間の上下段に横ロープ材51,51を張設し、端部支柱2L,2Rの外側連結部26に、控えロープ装置61A,61Bを連結して取り付ける。これら控えロープ装置61A,61Bを張設すると、端末支柱2L,2Rを外側に倒そうとする力が加わるが、斜めロープ材56,56により支柱2L,3,2R間の間隔が保持されているから、横ロープ材51,51や控えロープ装置61A,61Bを比較的容易に取り付けることができる。尚、横ロープ材51,51の取付は、控えロープ装置61A,61Bの取付の後でもよく、斜めロープ材56,56及び控えロープ装置61A,61Bの取付けた後、ターンバックル52を用いて横ロープ材51の張力を調整できる。
【0041】
このようにして、支柱2L,3,2R、斜めロープ材56,56、控えロープ装置61,61A,61B及び横ロープ材51,51の取付及び張力などの調整を終えた後、横ロープ材51,51などを用いて網11を、支柱2L,3,2R間に張設する。また、網11の下部は、防護柵前側の斜面101に沿って配置し、その端部を固定手段である補助アンカー75により斜面101に固定する。
【0042】
次に、図1,図19〜図24を主にして、防護柵1の格納構造につき説明する。
【0043】
このような落石用防護柵において、冬場に積雪のある斜面101において、防護柵1を格納する。上記支柱2L,2R,3の下端がベース部32に干渉することなく回動可能になっており、支柱2L,2R,3はベース部32に垂直な位置から前後にそれぞれ略90度回動可能に構成しているから、それら支柱2L,2R,3を前側の斜面101に沿って傾倒することができる。
【0044】
さらに、収納構造は、支柱2L,2R,3を覆うシート80を備える。このシート80は、複数のシート単体81を防護柵1の左右長さ方向に連結してなり、そのシート単体81は、例えば合成樹脂製の布地を合成樹脂フィルムで挟んだ構造をなす。尚、図20では、2枚のシート単体81,81を図示しているが、これらシート単体81,81の両側にさらに複数のシート単体81・・・を連結することができる。そして、隣合うシート単体81,81の縁81F,81Fを重ね合わせ、これらを接続している。この接続には、輪状をなすジョイントテープ82で連結された幅方向一方及び他方の帯体83,83を用い、これら一対の帯体83,83には対応する位置に孔84,84を穿設し、これら孔84,84に挿通したジョイントテープ82を輪状に形成して一対の帯体83,83を連結する。尚、前記ジョイントテープ82が連結部材であり、帯体83は補強部材である。また、一方の帯体83の縁を、上側にした一方のシート単体81の縁81Fに縫着部85により縫着し、他方の帯体83の縁を、下側にした他方のシート単体81に縫着部85により縫着する。尚、前記帯体83,83には、前記シート単体81の材料に比べて、硬質で強度の高い板状の材料が用いられる。
【0045】
また、帯体83と平行な外側の縁81F,81Fには、帯体83が縫着部85により縫着されている。一方、帯体83と交差する外側の縁81F,81Fには、折返し部86を形成し、押返し部86の重ね合わせ部分を縫着部85Aにより縫着し、その折返し部86内には全長に渡って芯材87を挿入する。この補強用の芯材87としてはワイヤーロープなどが例示される。
【0046】
したがって、シート単体81,81を展開した状態で、縁81Fが上側になった一方のシート単体81をジョイントテープ82側を中心に裏返しにして、他方のシート単体81の上に重ね合わせることができ、逆に開いて展開することができる。また、シート80はロール状に巻取り可能である。
【0047】
そして、前記シート80の上面は、低摩擦面に形成されている。この例では、低摩擦面は、合成樹脂の平滑面により構成され、周囲の斜面101より摩擦が小さい面である。
【0048】
尚、シート80の周囲は、固定手段たるアンカー88により斜面101に固定され、このアンカー88は金属製のピンを打設してなる。また、シート80の山側は、固定手段たるアンカー89により斜面101に固定され、このアンカー89は、アンカー本体をセメントで固定するセメントアンカーなどが例示され、それらアンカー88,89はそれぞれ所定間隔で設けられている。
【0049】
そして、通常は落石用の防護柵1として使用し、冬場の積雪時の前に、防護柵1を格納する。まず、ナット93を緩め、アンカープレート91をロックボルト73から外し、これにより、ロックボルト73から緩衝具63と共にロープ材62を外すことができる。そして、各控えロープ装置61,61A,61Bのロープ材62を網11の前面に沿わせるように配置し、この状態で、図1に示すように、各支柱2L,3,3,2Rを山側に倒して斜面101に沿わせる。
【0050】
このようにして倒した防護柵11の上から、前記シート80を被せて覆い、シート80の周囲をアンカー88,89により固定する。この場合、支柱2L,3,3,2R,網11及び控えロープ材62と共に、山側のロックボルト73及びアンカープレート91もシート80により覆う。
【0051】
そして、冬場、シート80の上に雪が積もっても、シート80の上面が低摩擦面であるため、積もった雪が傾斜するシート80の上面に沿って滑り落ち、支柱2L,3,3,2Rの上に雪が積もることを防止できる。
【0052】
積雪期間が終わったら、シート80を取外し、支柱2L,3,3,2Rを起し、各控えロープ装置61,61A,61Bのロープ材62をロックボルト73に連結し、必要に応じて緩衝具63を調節し、防護柵1を使用状態に戻す。
【0053】
このように本実施例では、請求項1に対応して、設置面たる斜面101に立設した傾動可能な複数の支柱2L,3,3,2Rと、それら支柱2L,3,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備えた落石用防護柵の格納構造において、斜面101に略沿って傾倒した複数の支柱2L,3,3,2Rと、これら複数の支柱2L,3,3,2Rの上を覆うシート80とを備えるから、積雪期間は、支柱2L,3,3,2Rを倒してシート80で覆うことにより、格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網11により落石を捕捉することができる。また、支柱を立てた使用状態で冬場を経過することに伴う積雪荷重によって、合成樹脂からなる網11が悪影響を受けることもない。
【0054】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、設置面が斜面101であり、シート80の上面が低摩擦面であるから、斜面101に設置した防護柵1を格納した状態で、シート80の上に雪が降っても、斜面101に沿って滑り落ちるため、支柱支柱2L,3,3,2Rの上に雪の荷重が加わることを防止できる。
【0055】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、設置面たる斜面101と支柱2L,3,3,2Rとの間を連結可能な控えロープ材62を備え、この控えロープ材62は斜面101との連結を解除可能な着脱手段たるナット92を備えるから、斜面101との連結を解除することにより、控えロープ材62を網11に沿わせて格納することができる。
【0056】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、斜面101に立設した傾動可能な複数の支柱2L,3,3,2Rと、それら支柱2L,3,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備えた落石用防護柵の格納方法において、斜面101に略沿って複数の支柱2L,3,3,2Rを傾倒し、これら複数の支柱2L,3,3,2Rの上を覆うから、積雪期間は、支柱2L,3,3,2Rを倒してシート80で覆い、シート80の下部に格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網10により落石を捕捉することができる。
【0057】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、設置面たる斜面101と支柱2L,3,3,2Rとの間を連結可能な控えロープ材62を備え、この控えロープ材62は斜面101との連結を解除可能な着脱手段たるナット92を備え、このナット92により連結を解除し、解除後、控えロープ材62を網10に沿わせるから、控えロープ材62もシート80の下に格納することができる。そして、支柱を立てた使用状態で冬場を経過すると、控えロープ材62に積もった雪の荷重により、控えロープ材62が伸びる虞があるが、格納して冬場を過ごすため、この心配もない。
【0058】
また、実施例上の効果として、シート80の山側の縁81Fには、折返し部86を形成し、この折返し部86内に補強材であって可撓性を有する芯材87を挿入し、固定手段たるアンカー89により斜面101に固定したから、シート80の山側を安定して固定することができ、シート80下部への雪の侵入を防止できる。
【0059】
また、以下、防護柵1の構成に係る実施例上の効果として、傾動可能に立設した複数の支柱2L,3,2Rと、それら支柱2L,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備える防護柵において、隣り合う支柱2L,3,2Rの上側と下側とを連結する斜めロープ材56,56を備えるから、斜めロープ材56,56により支柱2L,3,2R間の間隔が保持されることにより、網11を安定して支柱2L,3,2R間に張設することができる。
【0060】
また、このように本実施例では、支柱2L,3,2Rの上部と該支柱2L,3,2R一側の地山である斜面101との間に控えロープ装置61を設け、この控えロープ装置61のロープ材62に余長部62Aを設けると共に、この余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63を設けたから、斜めロープ材56,56により支柱間の間隔が保持されることにより、控えロープ装置61を安定して設置することができる。
【0061】
また、このように本実施例では、支柱2L,3,2R間に横ロープ材51を設け、この横ロープ材51に余長部たる重複部53を設けると共に、この重複部53を摺動可能に把持する緩衝具たるワイヤクリップ54を設けたから、斜めロープ材56,56により支柱間の間隔が保持されることにより、緩衝具を備えた横ロープ材51を安定して設置することができる。
【0062】
また、このように本実施例では、網目の大きさの異なる網11,11を重ね合わせて支柱2L,3,2R間に張設したから、複数の網11,11を張設しても、支柱2L,3,2R間の間隔を保持することができ、しかも、小さい網目の網11で小さな落石も補足でき、さらに、小さい網目の網11により捕捉した落石の衝撃力を大きな網目の網11で吸収し、落石の衝撃力を効率よく吸収することができる。
【0063】
また、このように本実施例では、支柱を立設すると共に、隣り合う支柱2L,3,2Rの上側と下側とを斜めロープ材56,56により連結した後、支柱2L,3,2R間に網11を張設するから、網11により支柱2L,3,2R間の間隔を保持する必要がなく、網11の張設作業を容易に行うことができる。
【0064】
また、実施例上の効果として、支柱2L,3,3,2R間に合成樹脂からなる網11を張設した防護柵1であって、支柱2L,3,3,2Rを傾動可能に立設し、支柱2L,3,3,2Rの上部と該支柱2L,3,3,2R一側の地山である斜面101との間に控えロープ装置61を設け、この控えロープ装置61のロープ材62に余長部62Aを設けると共に、この余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63を設けたから、合成樹脂からなる網11は鋼製などの網に比べ、切断までの伸び率が大きいから、落石を受けると、網11が他側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網11から支柱2L,3,3,2Rに所定以上の力が加わると、緩衝具63に対して余長部62Aが摺動して支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動する。このように落石を受けると、網11が他側に変形すると共に伸び、さらに、支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動することにより、落石を受けてから網11が変形移動する量及び時間が大となり、衝撃吸収能力が効果的に向上する。
【0065】
また、支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動する際、緩衝具63に対して控えロープ材62の余長部62Aが摺動することにより、落石エネルギーの一部を吸収できる。
【0066】
そして、網11を合成樹脂とすることにより軽量となり、施工運搬において、クレーンなどの大型重機が不要となり、地形的に施工に制約を受ける場所にも防護柵1を設置することができる。また、合成樹脂製の網11は柔軟性を有するから、搬入時にも巻く等することにより、コンパクトにでき、同時に現場での作業性も良好となる。
【0067】
また、支柱2L,3,3,2R他側の傾動位置を位置決め決めするから、落石を受けると、網11が他側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網11から支柱2L,3,3,2Rに所定以上の力が加わると、緩衝具63に対して余長部62Aが摺動して支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動し、支柱2L,3,3,2Rが倒れて落石のエネルギーを受けるから、高い衝撃吸収効果が得られる。
【0068】
また、緩衝具63には、ロープ材62を所定の摩擦力で把持する把持具72を複数設けたから、ロープ材62の摩擦摺動による衝撃吸収効果を高めることができる。特に、共通の把持具72を用意し、その数を調整することにより、所望の衝撃吸収効果が得られるから、把持具72及び緩衝具63を汎用品として使用することができる。
【0069】
また、網11が無結節網であるから、網11を構成する線材13,13Aは、交差部14において結ばれずに真っ直ぐに形成されているため、網11に落石等の力が加わると、その力が網11全体に分散するため、高い衝撃吸収機能が得られる。また、結節がないから、その分軽量で厚さも薄くなり、重ねたり、折ったり、巻いたりした際、コンパクトになる。
【0070】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、支柱を山側に倒したが、谷側に倒してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例1を示す防護体の側面図である。
【図2】同上、一部正面図である。
【図3】同上、一部平面図である。
【図4】同上、一部平面図である。
【図5】同上、網の構造を説明する正面説明図である。
【図6】同上、網の端部の平面展開図であり、網とロープ材とを示す。
【図7】同上、一部を断面にした網の側面図であり、図7(A)は網の端部側にロープ材を重ねて配置した状態、図7(B)は網の端部を折り返して重複部分を形成した状態を示す。
【図8】同上、一部を断面にした網の要部の側面図であり、図8(A)は網目の大きな網、図8(B)は網目の小さな網を示す。
【図9】同上、端末支柱を示し、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図である。
【図10】同上、中間支柱を示し、図10(A)は正面図、図10(B)は側面図である。
【図11】同上、支柱下部の正面図である。
【図12】同上、支柱下部の平面図である。
【図13】同上、支柱の平面図である。
【図14】同上、緩衝具の正面図である。
【図15】同上、緩衝具の把持具の平面図である。
【図16】同上、緩衝具の把持具の側面図である。
【図17】同上、緩衝具の側面図である。
【図18】同上、2つの把持具を有する緩衝具の側面図である。
【図19】同上、格納状態の平面図である。
【図20】同上、シートの平面図である。
【図21】同上、図21のA−A線断面説明図である。
【図22】同上、図21のB−B線断面説明図である。
【図23】同上、図21のC−C線断面説明図である。
【図24】同上、シートの接合箇所の平面図である。
【図25】同上、控えロープ材の着脱手段回りの断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 防護柵
2L,2R 支柱
3 中間支柱
11 網
51 横ロープ材
52 ターンバックル
53 重複部(余長部)
54 ワイヤクリップ(緩衝具)
56 斜めロープ材
61 控えロープ装置
62 控えロープ材
62A 余長部
63 緩衝具
80 シート
92 ナット(着脱手段)
101 斜面(設置面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石用防護柵の格納構造と格納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、山腹の斜面部に間隔を置いて縦孔を穿孔し、この縦孔に建て込んだパイプ支柱を並設すると共に、これら各パイプ支柱に複数段のケーブルとともに金網を張設した落石等の防護柵が提案され、防護面には金網が用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、防護面に用いる網に係り、防護ネットは鋼製又はワイヤー等の剛性線材を並行に取り付けたものや、剛性線材でネット上に編成したもの、複数の水平ロープ材と金網を組み合わせたもの等、公知の各種ネットを含むものである(公報第0011段)と記載されている(例えば特許文献2)。
【0004】
上記従来技術のように、この種の網を用いる防護体では、ワイヤーロープや鋼製の網を組み合わせることにより、落石等から道路などを防護するようにしている。
【0005】
しかし、鋼製のワイヤーロープや網を用いるものでは、部材自身が重量物となるため、据付用の重機が必要となり、施工範囲に制約を受け、工期が長期化し、工費が嵩む問題がある。そして、落石防護のために設けられる防護体は重機の使用に不向きな山の斜面などに設けられることが多いため、このような山の斜面に防護体を設ける施工では、部材が重量物であると、その搬入作業も煩雑となり、施工性に劣る問題がある。
【0006】
そこで、支柱間に合成樹脂からなる網を張設した防護柵であって、前記支柱を傾動可能に立設し、前記支柱の上部と該支柱一側の地山との間に控えロープ装置を設け、この控えロープ装置のロープ材に余長部を設けると共に、この余長部を摺動可能に把持する緩衝具を設けた防護柵である(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平7−197423号公報
【特許文献2】特開2000−273827号公報
【特許文献3】特開2004−76275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献3の防護柵では、合成樹脂からなる網は鋼製などの網に比べ、変形し易く、切断までの伸び率が大きいから、落石を受けると、網が他側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網から支柱に所定以上の力が加わると、緩衝具に対して余長部が摺動して支柱が他側に傾動する。このように落石を受けると、網が他側に変形すると共に伸び、さらに、支柱が他側に傾動することにより、落石を受けてから網が変形移動する量及び時間が大となり、衝撃吸収能力が効果的に向上する。
【0008】
ところで、合成樹脂の網はその伸縮性により衝撃吸収が得られ、落石用として高い性能を有するが、その伸縮性により雪崩防止用としては不向きな面がある。
【0009】
しかし、従来の防護柵では、一旦据付けたものは、簡単には取り外すことができず、合成樹脂製の網を備えた防護柵を、冬場に積雪のある斜面に用いることの障害となっていた。また、斜面などの作業において、邪魔になる場合などには、防護柵を使用状態と格納状態に簡単に変更できるものがあれば便利です。
【0010】
そこで、本発明は、積雪の伴う設置場所などにおいて合成樹脂製の網を備えた防護柵を使用状態と格納状態に変更することができる落石用防護柵の格納構造と格納方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納構造において、前記設置面に略沿って傾倒した前記複数の支柱と、これら複数の支柱の上を覆うシートとを備えるものである。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記設置面が斜面であり、前記シートの上面が低摩擦面である。
【0013】
また、請求項3の発明は、前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備えるものである。
【0014】
また、請求項4の発明は、設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納方法において、前記設置面に略沿って前記複数の支柱を傾倒し、これら複数の支柱の上を覆う方法である。
【0015】
また、請求項5の発明は、前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備え、この着脱手段により連結を解除し、解除後、前記控えロープ材を前記網に沿わせる方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の構成によれば、積雪期間は、支柱を倒してシートで覆うことにより、格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網により落石を捕捉することができる。
【0017】
また、請求項2の構成によれば、斜面に設置した防護柵を格納した状態で、シートの上に雪が降っても、斜面に沿って滑り落ちるため、支柱の上に雪の荷重が加わることを防止できる。
【0018】
また、請求項3の構成によれば、設置面との連結を解除することにより、控えロープ材を網に沿わせて格納することができる。
【0019】
また、請求項4の構成によれば、積雪期間は、支柱を倒してシートで覆い、シートの下部に格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網により落石を捕捉することができる。
【0020】
また、請求項5の構成によれば、控えロープ材もシートの下に格納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる落石用防護柵の格納構造を採用することにより、従来にない落石用防護柵の格納構造が得られ、その落石用防護柵の格納構造と格納方法を夫々記述する。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の防護体の第1実施形態について図1〜図25を参照して説明する。同図に示すように、防護柵1は、両側に配置した端末支柱2L,2Rの間に、複数の中間支柱3,3を並設し、これら支柱2L,3,3,2R間に網11を設ける。尚、防護柵1の一側は一例として山側Yである。
【0023】
まず、図5〜図8により網11の構成について説明すると、前記網11は合成樹脂からなる貫通型無結筋網であり、例えば合成樹脂製の繊維糸12,12Aを複数撚り合わせて線材13,13Aを形成し、これら線材13,13Aは交差方向をなし、交差部14により無結筋により相互に固定されている。尚、無結節網にはラッセル式もあるが、好ましくは貫通型を用いる。図5は構造を説明する説明図であり、同図に示すように、線材13,13Aの交差部14において、一方の線材13の繊維糸12,12の間に隙間により形成する輪部15に、他方の線材13Aの繊維糸12A,12Aを前後逆方向から挿通し、さらに、交差部14においても繊維糸12,12Aを撚って輪部15,15Aを閉めることにより、両線材13,13Aを交差部14で固定する。尚、15Aは交差部14で前記繊維糸12A,12Aの間に隙間により形成する輪部である。そして、図5は説明のために輪部15,15Aを開いて図示したが、実際の網11では、前記輪部15,15Aは閉じられた構造となる。
【0024】
また、網11は略長方形状をなし、網11の縁にはロープ材16が設けられ、このロープ材16の四方には金属製の環体17を設けている。また、図6及び図7に示すように、前記ロープ材16において線材13,13Aの端部側を折り返し、線材13,13Aの重複部分18で線材13,13A相互を固定し、表裏の線材13,13Aの間にロープ材16を配置する。
【0025】
また、網11に用いる合成樹脂としては、高密度のポリエチレンなどが好適であり、その高密度のポリエチレンを用いた場合、網11の比重は0.94〜0.96である。また、必要に応じて、網11にカーボンブラックや紫外線吸収剤を使用して耐候性を向上することができる。
【0026】
さらに、図8に示すように、網11,11は網目の一辺の長さM,mが異なり(M>m)、且つ線材13,13Aの太さの異なるものを組み合わせて使用する。大きな網目の網11は、小さな網目の網11に比べて太い線材13,13Aが用いられる。例えば、一辺の長さMは100mm、一辺の長さmは50mmである。そして、網目の大きな網11の前に、網目の小さな網11を重ね合わせ、即ち、山側の網目の小さな綱11が位置するようにして複数の網11,11を重ね合わせて支柱2L,2R,3間に張設する。また、1枚の網目の小さい網11と、2枚の網目の大きな網11,11とを重ね合わせるようにしてもよい。
【0027】
次に、前記支柱2L,2R,3とその取付構造の詳細について説明する。
【0028】
図9及び図10などに示すように、支柱2L,2R,3は、鋼製角パイプからなる本体21を備え、その本体21の前の上下にそれぞれ網係止部23,23を設ける。そして、これら網係止部23,23に前記ロープ材16などを係止する。また、両側の支柱2L,2Rは、その支柱3側の上下に横ロープ連結部24を設け、中間の支柱3は左右両側にそれぞれ横ロープ材連結部24を設ける。
【0029】
さらに、支柱2L,2R,3の前上部に、一側控えロープ用の一側連結部25を設け、また、左側の支柱2Lはその防護柵外側(右側)に外側控えロープ用の外側連結部26を設け、右側の支柱2Rはその防護柵外側(左側)に外側控えロープ用の外側連結部26を設けている。尚、それら係止部23及び連結部24,25,26は板材に孔を有するものである。
【0030】
斜面101などの設置場所に、支柱の取付部材31を設ける。図11〜図12に示すように、前記取付部材31は金属などからなり、ベース部32と、支柱2L,2R,3を回動可能に連結する連結受部33とを一体に有する。この連結受部33は、間隔を置いて一対の腕部34,34を前記ベース部32に立設し、それら腕部34,34の下部間に、支柱2L,2R,3の下部を挿入すると共に、この下部の孔22と両腕部34,34の孔34A,34Aとに、枢軸たるボルト36を挿通し、これにより取付部材31に前記支柱2L,2R,3下部を回動可能に連結する。前記ベース部32は複数のアンカーたるロックボルト38により斜面101などの設置面に固定される。尚、前記ベース部32の左右には、左右で前後異なる位置の長孔32Aを穿設し、この長孔32Aは左右方向に長く形成され、アンカープレート39の孔39Aに挿通した前記ロックボルト38を、前記長孔32Aに挿通する。したがって、長孔32Aによりロックボルト38の左右方向の位置を調整できる。
【0031】
また、前記取付部材に下部を回動可能に連結した状態で、前記支柱2L,2R,3の下端とベース部32の上面との間には隙間があり、それら支柱2L,2R,3の下端がベース部32に干渉することなく回動可能になっており、支柱2L,2R,3はベース部32に垂直な位置から前後にそれぞれ略90度回動可能に構成している。即ち、支柱2L,2R,3は、その上側が斜面101に当たるまで倒れることができるように連結されている。
【0032】
隣合う支柱2L,3,3,2Rの間の上,下段には横ロープ材51,51が張設され、これら横ロープ材51,51に図示しない結束具により網11が取り付けられている。前記横ロープ材51は一方と他方のロープ材51A,51Bよりなり、一方のロープ材51Aを調整張り具たるターンバックル52により一方の支柱2L,3,3の前記連結部24に連結し、他方のロープ材51Bを隣合う他方の支柱3,3,2Rの前記連結部24に連結し、支柱2L,3,3,2R間で両ロープ材51A,51Bの端部を重ね合わせて余長部たる重複部53を形成し、この重複部53において、両ロープ材51A,51Bを締め具たるワイヤクリップ54により所定の摩擦力で締め付けている。また、このワイヤクリップ54は緩衝具を構成する。尚、下段の横ロープ材51では、ロープ材51Bにターンバックル52が用いられている。また、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部は、太さの等しい切断端となっている。
【0033】
したがって、横ロープ材51に所定以上の引張力が加わると、ワイヤクリップ54の締付力に抗してロープ材51A,51Bが離れる方向に摩擦摺動する。また、両ロープ材51A,51Bの重複部53側の端部は、太さの等しい切断端となっているから、端部がワイヤークリップ54に係止することなく抜け出し、この後の横ロープ材51から拘束されることなく網11が変形可能となり、合成樹脂製の網11の特性を生かすことができる。
【0034】
また、隣り合う前記支柱2L,3,3,2Rの上側と下側とは、斜めロープ材56,56により連結され、それら支柱2L,3,3,2Rの本体21の側面の上側と下側には、丸鋼を略環状に形成した横ロープ連結部57U,57Sが設けられ、前記斜めロープ材56,56は所定の張力で張設される。尚、斜めロープ材56の一端は、張力調整手段であるターンバックル56Aにより前記横ロープ連結部57U,57Sに連結されている。
【0035】
また、前記斜めロープ材56は、網11と同一材質の合成樹脂製のものを用いる。したがって、金属製のロープを用いる場合に比べ、斜めロープ材56と網11とが擦れても、網11の損傷を防止できる。
【0036】
前記支柱2L,3,3,2Rの前上部の一側連結部25と、防護柵の一側である前側の地山との間には、控えロープ装置61を設ける。この控えロープ装置61は、ロープ材62とこのロープ材62の余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63とを備える。この緩衝具63のナット71が、控えロープ材62と傾斜面101との連結を解除可能な着脱手段である。
【0037】
この緩衝具63は、図14〜図18に示すように、前記ロープ材62を所定の摩擦力で把持する一対の把持体64,64を備え、これら把持体64,64の合せ面に、ロープ材62に嵌合する嵌合溝65を形成し、両把持体64,64をボルトナットなどの締付手段66により締め付け固定する。相互に固定された把持体64,64の側面には、Uボルト67が係合する係合溝68,68が形成され、この係合溝68,68にUボルト67の両端部67T,67Tが係合する。また、Uボルト67の両端部67T,67Tを挿通するプレート69を備え、このプレート69にはロープ材62の余長部62A側を遊挿する溝部70が形成されている。そして、Uボルト67の途中を前記一側連結部25に挿通連結し、その両端部67T,67T間に、ロープ材62を締め付けた把持体64,64を嵌め入れ、さらに、端部67T,67Tを押さえ板69に挿通し、端部67T,67Tにナット71を螺合する。そして、前記一対の把持体64,64により、ロープ材62を所定の摩擦力で把持する把持具72を構成し、また、図1及び図18に示すように、控えロープ装置61の緩衝具63は、前記2つの把持具72を並べて設けている。このようにUボルト67に複数の把持具72を並べて設けることができ、また、さらに、Uボルト67を長くすれば3個以上の把持具72を並べて設けることもできる。
【0038】
そして、前記ロープ材62の余長部62Aを把持した前記緩衝具63が、アンカーたるロックボルト73により地山に固定される。具体的には、前記緩衝具63のUボルト67を、ロックボルト73の頭部に係止した状態で、ロックボルト73の頭部にアンカープレート91を配置し、そのロックボルト73の頭部に着脱手段たるナット92を螺合することにより、前記ロープ材62をロックボルト73に連結している。尚、アンカープレート91には、ロックボルト73の頭部を挿通する孔93が穿設されている。
【0039】
端部支柱2L,2Rの外側連結部26には、控えロープ装置61A,61Bが設けられ、これら控えロープ装置61A,61Bは把持具72を用いている点と、張設方向が異なる以外は、前記控えロープ装置61と同一構成であり、前記控えロープ装置61Aは、防護柵の左右方向に対して平面約45度の角度をなし、すなわちその反余長部が一側に位置し、前記控えロープ装置61Bは、防護柵の左右方向に沿って設けられている。
【0040】
そして、防護柵1の施工においては、斜面101にロックボルト38により取付部材31を固定し、取付部材31に支柱2L,3,2Rをボルト36により傾動可能に連結した状態で、防護柵の一側である前側の地山との間には、控えロープ装置61を設け、支柱2L,3,2Rは、その本体21を垂直位置から前側に5度傾斜して設けられる。支柱2L,3,2R間に、斜めロープ材56,56を交差方向に張設して支柱2L,3,2R間の間隔を保持した後、適宜手順により、支柱2L,3,2R間の上下段に横ロープ材51,51を張設し、端部支柱2L,2Rの外側連結部26に、控えロープ装置61A,61Bを連結して取り付ける。これら控えロープ装置61A,61Bを張設すると、端末支柱2L,2Rを外側に倒そうとする力が加わるが、斜めロープ材56,56により支柱2L,3,2R間の間隔が保持されているから、横ロープ材51,51や控えロープ装置61A,61Bを比較的容易に取り付けることができる。尚、横ロープ材51,51の取付は、控えロープ装置61A,61Bの取付の後でもよく、斜めロープ材56,56及び控えロープ装置61A,61Bの取付けた後、ターンバックル52を用いて横ロープ材51の張力を調整できる。
【0041】
このようにして、支柱2L,3,2R、斜めロープ材56,56、控えロープ装置61,61A,61B及び横ロープ材51,51の取付及び張力などの調整を終えた後、横ロープ材51,51などを用いて網11を、支柱2L,3,2R間に張設する。また、網11の下部は、防護柵前側の斜面101に沿って配置し、その端部を固定手段である補助アンカー75により斜面101に固定する。
【0042】
次に、図1,図19〜図24を主にして、防護柵1の格納構造につき説明する。
【0043】
このような落石用防護柵において、冬場に積雪のある斜面101において、防護柵1を格納する。上記支柱2L,2R,3の下端がベース部32に干渉することなく回動可能になっており、支柱2L,2R,3はベース部32に垂直な位置から前後にそれぞれ略90度回動可能に構成しているから、それら支柱2L,2R,3を前側の斜面101に沿って傾倒することができる。
【0044】
さらに、収納構造は、支柱2L,2R,3を覆うシート80を備える。このシート80は、複数のシート単体81を防護柵1の左右長さ方向に連結してなり、そのシート単体81は、例えば合成樹脂製の布地を合成樹脂フィルムで挟んだ構造をなす。尚、図20では、2枚のシート単体81,81を図示しているが、これらシート単体81,81の両側にさらに複数のシート単体81・・・を連結することができる。そして、隣合うシート単体81,81の縁81F,81Fを重ね合わせ、これらを接続している。この接続には、輪状をなすジョイントテープ82で連結された幅方向一方及び他方の帯体83,83を用い、これら一対の帯体83,83には対応する位置に孔84,84を穿設し、これら孔84,84に挿通したジョイントテープ82を輪状に形成して一対の帯体83,83を連結する。尚、前記ジョイントテープ82が連結部材であり、帯体83は補強部材である。また、一方の帯体83の縁を、上側にした一方のシート単体81の縁81Fに縫着部85により縫着し、他方の帯体83の縁を、下側にした他方のシート単体81に縫着部85により縫着する。尚、前記帯体83,83には、前記シート単体81の材料に比べて、硬質で強度の高い板状の材料が用いられる。
【0045】
また、帯体83と平行な外側の縁81F,81Fには、帯体83が縫着部85により縫着されている。一方、帯体83と交差する外側の縁81F,81Fには、折返し部86を形成し、押返し部86の重ね合わせ部分を縫着部85Aにより縫着し、その折返し部86内には全長に渡って芯材87を挿入する。この補強用の芯材87としてはワイヤーロープなどが例示される。
【0046】
したがって、シート単体81,81を展開した状態で、縁81Fが上側になった一方のシート単体81をジョイントテープ82側を中心に裏返しにして、他方のシート単体81の上に重ね合わせることができ、逆に開いて展開することができる。また、シート80はロール状に巻取り可能である。
【0047】
そして、前記シート80の上面は、低摩擦面に形成されている。この例では、低摩擦面は、合成樹脂の平滑面により構成され、周囲の斜面101より摩擦が小さい面である。
【0048】
尚、シート80の周囲は、固定手段たるアンカー88により斜面101に固定され、このアンカー88は金属製のピンを打設してなる。また、シート80の山側は、固定手段たるアンカー89により斜面101に固定され、このアンカー89は、アンカー本体をセメントで固定するセメントアンカーなどが例示され、それらアンカー88,89はそれぞれ所定間隔で設けられている。
【0049】
そして、通常は落石用の防護柵1として使用し、冬場の積雪時の前に、防護柵1を格納する。まず、ナット93を緩め、アンカープレート91をロックボルト73から外し、これにより、ロックボルト73から緩衝具63と共にロープ材62を外すことができる。そして、各控えロープ装置61,61A,61Bのロープ材62を網11の前面に沿わせるように配置し、この状態で、図1に示すように、各支柱2L,3,3,2Rを山側に倒して斜面101に沿わせる。
【0050】
このようにして倒した防護柵11の上から、前記シート80を被せて覆い、シート80の周囲をアンカー88,89により固定する。この場合、支柱2L,3,3,2R,網11及び控えロープ材62と共に、山側のロックボルト73及びアンカープレート91もシート80により覆う。
【0051】
そして、冬場、シート80の上に雪が積もっても、シート80の上面が低摩擦面であるため、積もった雪が傾斜するシート80の上面に沿って滑り落ち、支柱2L,3,3,2Rの上に雪が積もることを防止できる。
【0052】
積雪期間が終わったら、シート80を取外し、支柱2L,3,3,2Rを起し、各控えロープ装置61,61A,61Bのロープ材62をロックボルト73に連結し、必要に応じて緩衝具63を調節し、防護柵1を使用状態に戻す。
【0053】
このように本実施例では、請求項1に対応して、設置面たる斜面101に立設した傾動可能な複数の支柱2L,3,3,2Rと、それら支柱2L,3,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備えた落石用防護柵の格納構造において、斜面101に略沿って傾倒した複数の支柱2L,3,3,2Rと、これら複数の支柱2L,3,3,2Rの上を覆うシート80とを備えるから、積雪期間は、支柱2L,3,3,2Rを倒してシート80で覆うことにより、格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網11により落石を捕捉することができる。また、支柱を立てた使用状態で冬場を経過することに伴う積雪荷重によって、合成樹脂からなる網11が悪影響を受けることもない。
【0054】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、設置面が斜面101であり、シート80の上面が低摩擦面であるから、斜面101に設置した防護柵1を格納した状態で、シート80の上に雪が降っても、斜面101に沿って滑り落ちるため、支柱支柱2L,3,3,2Rの上に雪の荷重が加わることを防止できる。
【0055】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、設置面たる斜面101と支柱2L,3,3,2Rとの間を連結可能な控えロープ材62を備え、この控えロープ材62は斜面101との連結を解除可能な着脱手段たるナット92を備えるから、斜面101との連結を解除することにより、控えロープ材62を網11に沿わせて格納することができる。
【0056】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、斜面101に立設した傾動可能な複数の支柱2L,3,3,2Rと、それら支柱2L,3,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備えた落石用防護柵の格納方法において、斜面101に略沿って複数の支柱2L,3,3,2Rを傾倒し、これら複数の支柱2L,3,3,2Rの上を覆うから、積雪期間は、支柱2L,3,3,2Rを倒してシート80で覆い、シート80の下部に格納することができる。これにより、積雪期間以外は、合成樹脂からなる網10により落石を捕捉することができる。
【0057】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、設置面たる斜面101と支柱2L,3,3,2Rとの間を連結可能な控えロープ材62を備え、この控えロープ材62は斜面101との連結を解除可能な着脱手段たるナット92を備え、このナット92により連結を解除し、解除後、控えロープ材62を網10に沿わせるから、控えロープ材62もシート80の下に格納することができる。そして、支柱を立てた使用状態で冬場を経過すると、控えロープ材62に積もった雪の荷重により、控えロープ材62が伸びる虞があるが、格納して冬場を過ごすため、この心配もない。
【0058】
また、実施例上の効果として、シート80の山側の縁81Fには、折返し部86を形成し、この折返し部86内に補強材であって可撓性を有する芯材87を挿入し、固定手段たるアンカー89により斜面101に固定したから、シート80の山側を安定して固定することができ、シート80下部への雪の侵入を防止できる。
【0059】
また、以下、防護柵1の構成に係る実施例上の効果として、傾動可能に立設した複数の支柱2L,3,2Rと、それら支柱2L,3,2R間に張設した合成樹脂からなる網11とを備える防護柵において、隣り合う支柱2L,3,2Rの上側と下側とを連結する斜めロープ材56,56を備えるから、斜めロープ材56,56により支柱2L,3,2R間の間隔が保持されることにより、網11を安定して支柱2L,3,2R間に張設することができる。
【0060】
また、このように本実施例では、支柱2L,3,2Rの上部と該支柱2L,3,2R一側の地山である斜面101との間に控えロープ装置61を設け、この控えロープ装置61のロープ材62に余長部62Aを設けると共に、この余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63を設けたから、斜めロープ材56,56により支柱間の間隔が保持されることにより、控えロープ装置61を安定して設置することができる。
【0061】
また、このように本実施例では、支柱2L,3,2R間に横ロープ材51を設け、この横ロープ材51に余長部たる重複部53を設けると共に、この重複部53を摺動可能に把持する緩衝具たるワイヤクリップ54を設けたから、斜めロープ材56,56により支柱間の間隔が保持されることにより、緩衝具を備えた横ロープ材51を安定して設置することができる。
【0062】
また、このように本実施例では、網目の大きさの異なる網11,11を重ね合わせて支柱2L,3,2R間に張設したから、複数の網11,11を張設しても、支柱2L,3,2R間の間隔を保持することができ、しかも、小さい網目の網11で小さな落石も補足でき、さらに、小さい網目の網11により捕捉した落石の衝撃力を大きな網目の網11で吸収し、落石の衝撃力を効率よく吸収することができる。
【0063】
また、このように本実施例では、支柱を立設すると共に、隣り合う支柱2L,3,2Rの上側と下側とを斜めロープ材56,56により連結した後、支柱2L,3,2R間に網11を張設するから、網11により支柱2L,3,2R間の間隔を保持する必要がなく、網11の張設作業を容易に行うことができる。
【0064】
また、実施例上の効果として、支柱2L,3,3,2R間に合成樹脂からなる網11を張設した防護柵1であって、支柱2L,3,3,2Rを傾動可能に立設し、支柱2L,3,3,2Rの上部と該支柱2L,3,3,2R一側の地山である斜面101との間に控えロープ装置61を設け、この控えロープ装置61のロープ材62に余長部62Aを設けると共に、この余長部62Aを摺動可能に把持する緩衝具63を設けたから、合成樹脂からなる網11は鋼製などの網に比べ、切断までの伸び率が大きいから、落石を受けると、網11が他側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網11から支柱2L,3,3,2Rに所定以上の力が加わると、緩衝具63に対して余長部62Aが摺動して支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動する。このように落石を受けると、網11が他側に変形すると共に伸び、さらに、支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動することにより、落石を受けてから網11が変形移動する量及び時間が大となり、衝撃吸収能力が効果的に向上する。
【0065】
また、支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動する際、緩衝具63に対して控えロープ材62の余長部62Aが摺動することにより、落石エネルギーの一部を吸収できる。
【0066】
そして、網11を合成樹脂とすることにより軽量となり、施工運搬において、クレーンなどの大型重機が不要となり、地形的に施工に制約を受ける場所にも防護柵1を設置することができる。また、合成樹脂製の網11は柔軟性を有するから、搬入時にも巻く等することにより、コンパクトにでき、同時に現場での作業性も良好となる。
【0067】
また、支柱2L,3,3,2R他側の傾動位置を位置決め決めするから、落石を受けると、網11が他側に伸びて衝撃を吸収し、落石を受けた網11から支柱2L,3,3,2Rに所定以上の力が加わると、緩衝具63に対して余長部62Aが摺動して支柱2L,3,3,2Rが他側に傾動し、支柱2L,3,3,2Rが倒れて落石のエネルギーを受けるから、高い衝撃吸収効果が得られる。
【0068】
また、緩衝具63には、ロープ材62を所定の摩擦力で把持する把持具72を複数設けたから、ロープ材62の摩擦摺動による衝撃吸収効果を高めることができる。特に、共通の把持具72を用意し、その数を調整することにより、所望の衝撃吸収効果が得られるから、把持具72及び緩衝具63を汎用品として使用することができる。
【0069】
また、網11が無結節網であるから、網11を構成する線材13,13Aは、交差部14において結ばれずに真っ直ぐに形成されているため、網11に落石等の力が加わると、その力が網11全体に分散するため、高い衝撃吸収機能が得られる。また、結節がないから、その分軽量で厚さも薄くなり、重ねたり、折ったり、巻いたりした際、コンパクトになる。
【0070】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、支柱を山側に倒したが、谷側に倒してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例1を示す防護体の側面図である。
【図2】同上、一部正面図である。
【図3】同上、一部平面図である。
【図4】同上、一部平面図である。
【図5】同上、網の構造を説明する正面説明図である。
【図6】同上、網の端部の平面展開図であり、網とロープ材とを示す。
【図7】同上、一部を断面にした網の側面図であり、図7(A)は網の端部側にロープ材を重ねて配置した状態、図7(B)は網の端部を折り返して重複部分を形成した状態を示す。
【図8】同上、一部を断面にした網の要部の側面図であり、図8(A)は網目の大きな網、図8(B)は網目の小さな網を示す。
【図9】同上、端末支柱を示し、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図である。
【図10】同上、中間支柱を示し、図10(A)は正面図、図10(B)は側面図である。
【図11】同上、支柱下部の正面図である。
【図12】同上、支柱下部の平面図である。
【図13】同上、支柱の平面図である。
【図14】同上、緩衝具の正面図である。
【図15】同上、緩衝具の把持具の平面図である。
【図16】同上、緩衝具の把持具の側面図である。
【図17】同上、緩衝具の側面図である。
【図18】同上、2つの把持具を有する緩衝具の側面図である。
【図19】同上、格納状態の平面図である。
【図20】同上、シートの平面図である。
【図21】同上、図21のA−A線断面説明図である。
【図22】同上、図21のB−B線断面説明図である。
【図23】同上、図21のC−C線断面説明図である。
【図24】同上、シートの接合箇所の平面図である。
【図25】同上、控えロープ材の着脱手段回りの断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 防護柵
2L,2R 支柱
3 中間支柱
11 網
51 横ロープ材
52 ターンバックル
53 重複部(余長部)
54 ワイヤクリップ(緩衝具)
56 斜めロープ材
61 控えロープ装置
62 控えロープ材
62A 余長部
63 緩衝具
80 シート
92 ナット(着脱手段)
101 斜面(設置面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納構造において、前記設置面に略沿って傾倒した前記複数の支柱と、これら複数の支柱の上を覆うシートとを備えることを特徴とする落石用防護柵の格納構造。
【請求項2】
前記設置面が斜面であり、前記シートの上面が低摩擦面であることを特徴とする請求項1記載の落石用防護柵の格納構造。
【請求項3】
前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の落石用防護柵の格納構造。
【請求項4】
設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納方法において、前記設置面に略沿って前記複数の支柱を傾倒し、これら複数の支柱の上を覆うことを特徴とする落石用防護柵の格納方法。
【請求項5】
前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備え、この着脱手段により連結を解除し、解除後、前記控えロープ材を前記網に沿わせることを特徴とする請求項4記載の落石用防護柵の格納方法。
【請求項1】
設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納構造において、前記設置面に略沿って傾倒した前記複数の支柱と、これら複数の支柱の上を覆うシートとを備えることを特徴とする落石用防護柵の格納構造。
【請求項2】
前記設置面が斜面であり、前記シートの上面が低摩擦面であることを特徴とする請求項1記載の落石用防護柵の格納構造。
【請求項3】
前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の落石用防護柵の格納構造。
【請求項4】
設置面に立設した傾動可能な複数の支柱と、それら支柱間に張設した合成樹脂からなる網とを備えた落石用防護柵の格納方法において、前記設置面に略沿って前記複数の支柱を傾倒し、これら複数の支柱の上を覆うことを特徴とする落石用防護柵の格納方法。
【請求項5】
前記設置面と前記支柱との間を連結可能な控えロープ材を備え、この控えロープ材は前記設置面との連結を解除可能な着脱手段を備え、この着脱手段により連結を解除し、解除後、前記控えロープ材を前記網に沿わせることを特徴とする請求項4記載の落石用防護柵の格納方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2009−161926(P2009−161926A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339731(P2007−339731)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(501047173)株式会社ライテク (30)
【出願人】(500464528)和光物産株式会社 (24)
【出願人】(000125107)開発コンクリート株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(501047173)株式会社ライテク (30)
【出願人】(500464528)和光物産株式会社 (24)
【出願人】(000125107)開発コンクリート株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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