落雷電柱検索システム、落雷電柱検索方法および落雷電柱検索プログラム
【課題】 落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定する。
【解決手段】 停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定する配電自動化システム2と、落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定する落雷位置標定システム3と、配電線の電柱の位置情報を記憶した電柱データベース43と、配電自動化システム2によって特定された停電領域内で、かつ、落雷位置標定システム3によって標定された落雷位置SPから所定の範囲SR内に位置する電柱を、電柱データベース43から検索する検索タスク46と、を備える。
【解決手段】 停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定する配電自動化システム2と、落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定する落雷位置標定システム3と、配電線の電柱の位置情報を記憶した電柱データベース43と、配電自動化システム2によって特定された停電領域内で、かつ、落雷位置標定システム3によって標定された落雷位置SPから所定の範囲SR内に位置する電柱を、電柱データベース43から検索する検索タスク46と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱を検索する落雷電柱検索システム、落雷電柱検索方法および落雷電柱検索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷が発生した際に、その落雷位置をより精度高く標定することが可能な落雷位置標定システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムは、落雷により発生した雷電波が少なくとも3箇所の受信局に到達した時間の差から、この到達時間差を生じさせるような水平面上の伝搬距離差を持つ仮の落雷位置を算出する。そして、この仮の落雷位置を基に地表面の凹凸に沿った沿面距離で到達時間差を評価した落雷位置に補正する。これにより、地形に依存した誤差がない落雷の位置を標定できる、というものである。
【特許文献1】特開2003−294824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、配電設備などが落雷によって被害を受けて停電(事故)が発生すると、需要家への電力の供給ができなくなる。このため、早急に被害箇所を特定して改修を行ったり、落雷地域の周辺設備を点検して停電の未然防止措置を行ったりする必要がある。そして、このような点検、措置の対象となる設備には電柱が含まれ、被害を受けた電柱あるいは被害を受けたおそれがある電柱や配電線を特定して(探して)、点検、措置する必要がある。
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載されたシステムでは、落雷位置をより精度高く標定することが可能なものの、被害を受けた電柱あるいは被害を受けたおそれがある電柱までをも特定することはできない。このため、例えば、落雷位置標定システムで標定された落雷位置の周辺の配電線やその電柱をすべて巡視し、異常の有無を点検する必要があり、多大な労力と時間とを要していた。
【0005】
そこでこの発明は、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に(精度高く)特定することが可能な落雷電柱検索システム、落雷電柱検索方法および落雷電柱検索プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索システムであって、停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定する停電領域特定手段と、落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定する落雷位置標定手段と、配電線の電柱の位置情報を記憶した配電位置データベースと、前記停電領域特定手段によって特定された停電領域内で、かつ、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、前記配電位置データベースから検索する検索手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、停電が発生すると、停電領域特定手段によって停電日時と配電線の停電領域とが特定され、落雷が発生すると、落雷位置標定手段によって落雷日時と落雷位置とが標定される。そして、検索手段によって、停電領域特定手段による停電領域内で、かつ、落雷位置標定手段による落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱が、配電位置データベースから検索される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の落雷電柱検索システムにおいて、前記検索手段は、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた地域において、その差異である標定誤差以上に前記所定の範囲を設定して検索する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索方法であって、停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定するステップと、前記停電日時と所定の関係を有する落雷日時の落雷の落雷位置を割り出すステップと、前記特定した停電領域内で、かつ、前記割り出した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を検索するステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索プログラムであって、コンピュータに、指定された停電と所定の時間的関係を有する落雷の落雷位置を、落雷日時と標定された落雷位置とを記憶したデータベースから検索するステップと、前記停電による配電線の停電領域内で、かつ、前記検索した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、配電線の電柱の位置情報を記憶したデータベースから検索するステップと、を実行させるための落雷電柱検索プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、3および4に記載の発明によれば、配電線の停電領域内で、かつ落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱が検索される。つまり、停電と落雷とが重なる領域内に位置する電柱が検索されるため、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた地域においては、標定された落雷位置から標定誤差以上の所定の範囲内に位置する電柱が検索される。このため、このような地域においても、実際の落雷位置を含む範囲内で検索が行われ得、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係る落雷電柱検索システム1を示す概略構成図である。この落雷電柱検索システム1は、落雷によって影響を受けた可能性(おそれ)がある電柱を検索するシステムであり、主として、配電自動化システム(停電領域特定手段)2と、落雷位置標定システム(落雷位置標定手段)3と、検索用コンピュータ4とを備え、検索用コンピュータ4は、配電自動化システム2および落雷位置標定システム3と通信網Nを介して通信可能に接続されている。
【0015】
配電自動化システム2は、停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定などするシステムであり、電力会社などに広く導入されている配電自動化システムと同等の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、一例としては、概略次のような構成となっている。すなわち、配電自動化システム2は、配電自動化サーバ、配電遠制装置(遠方監視制御装置)および、監視制御卓、系統計画卓(ワークステーション)などを備え、それぞれがLAN(Local Area Network)で接続されている。また、図2に示すように、電柱Pに取り付けられた開閉器21と配電遠制装置とが伝送線路22(通信ケーブルなど)によって接続され、さらに、総合制御所23を介して配電用変電所24と配電遠制装置とが伝送線路22によって接続されている。
【0016】
そして、配電線の運用状態を常時監視し、例えば、配電線事故による停電が発生すると、開閉器21を制御しながら停電を引き起こした事故区間(配電線、フィーダや故障区間自動検出装置・DMの区間)を特定し、事故区間(停電区間)以外の配電線への配電(自動逆送)を行う。また、変電所事故(特高事故、瞬時電圧低下など)による停電が発生すると、停電が発生した地域に対して周辺の配電線からの配電(自動逆送)を行ったりするものである。また、この実施の形態では、停電が発生して配電線の停電領域(停電区間)を特定すると、その停電日時や停電領域などを含む停電情報を検索用コンピュータ4に送信するようになっている。
【0017】
落雷位置標定システム3は、落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定するシステム(LLS:Lightning Location System)であり、広く知られている落雷位置標定システムと同等の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、一例としては、概略次のような構成となっている。すなわち、複数のDF局(方位探知局)を備え、落雷時に発生する電磁波を各DF局のサンサで捕らえ、DF局間で生じた到達時間差を生じさせるような伝搬距離差を持つ地点(経緯、緯度)を算出して、落雷位置を標定するものである。また、この実施の形態では、落雷が発生して落雷位置を標定すると、その落雷日時や落雷位置などを含む落雷情報を検索用コンピュータ4に送信するようになっている。
【0018】
検索用コンピュータ4は、図3に示すように、停電データベース41と、落雷データベース42と、電柱データベース(配電位置データベース)43と、誤差データベース44と、記憶タスク45と、検索タスク(検索手段、落雷電柱検索プログラム)46と、これらを制御などするCPU(Central Processing Unit)47とを備えている。
【0019】
停電データベース41は、停電に関する情報を記憶したデータベースであり、図4に示すように、停電ごとに、つまり停電を識別する停電ID(IDentification)411ごとに、停電日時412、発変電所名413、フィーダ名414、事故区分415およびその他416が記憶されている。そして、停電日時412には、停電が発生した日時が記憶され、発変電所名413には、停電対象の発電所名や変電所名が記憶される。フィーダ名414には、停電対象のフィーダ名や配電線名、あるいはDM間が記憶され、事故区分415には、短絡事故や地絡事故などの事故の種類や、長時間停電や短時間停電(瞬停)などの停電の種類が記憶される。ここで、このようなデータは、後述するようにして記憶タスク45によって記憶されるようになっている。
【0020】
落雷データベース42は、落雷に関する情報を記憶したデータベースであり、図5に示すように、落雷ごとに、つまり落雷を識別する落雷ID421ごとに、落雷日時422、落雷位置423、雷電流424、極性425およびその他426が記憶されている。そして、落雷日時422には、落雷が発生した日時が記憶され、落雷位置423には、標定された落雷の位置、つまり経緯、緯度が記憶され、雷電流424には、落雷の電流値が記憶され、極性425には、落雷の極性、つまり正極、または負極が記憶される。ここで、このようなデータは、後述するようにして記憶タスク45によって記憶されるようになっている。
【0021】
電柱データベース43は、配電線の電柱の位置情報を記憶したデータベースであり、図6に示すようなデータ構成となっている。すなわち、検索対象のすべての変電所に対して、各変電所に属するすべてのフィーダが記憶され、さらに、各フィーダに属するすべての電柱が記憶されている。また、電柱の情報としては、電柱名、電柱が設置されている経緯、緯度などが記憶されている。
【0022】
誤差データベース44は、落雷位置標定システム3によって標定された落雷位置(標定位置)と実際の落雷位置とに差異が生じ場合に、その差異である標定誤差を記憶したデータベースである。具体的には、変電所(地域)ごとに、差異が生じた場合の標定誤差(誤差距離)が記憶され、同一変電所で二回以上差異が生じた場合には、最新の標定誤差が記憶されている。このようなデータは、後述するようにして、電柱を点検して落雷の位置が確認された後に記憶される。ここで、同一変電所で二回以上差異が生じた場合に、最長の標定誤差を記憶してもよく、また、変電所ごとではなく、電柱が設置されている地理的領域(地域)ごとに標定誤差を記憶してもよい。
【0023】
記憶タスク45は、停電データベース41および落雷データベース42に、上記のようなデータ(情報)を記憶するタスク(プログラム)である。具体的には、配電自動化システム2から受信した停電情報に基づいて、停電データベース41の停電ID411を更新し、停電日時412や発変電所名413などにデータを記憶する。また、落雷位置標定システム3から受信した落雷情報に基づいて、落雷データベース42の落雷ID421を更新し、落雷日時422や落雷位置423などにデータを記憶するものである。
【0024】
検索タスク46は、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱を検索、抽出するタスクであり、図7、8に示すフローチャートに基づいた処理を行う。まず、検索タスク46が起動されると、入力画面を表示し(ステップS1)、停電を指定する入力待ちの状態となる。そして、停電が指定されると(ステップS2)、指定された停電に該当する停電に関する情報を停電データベース41から取得して(ステップS3)表示し、落雷日時を指定する入力待ちの状態となる。ここで、停電の指定は、例えば、変電所名やフィーダ名を入力、選択することで行い、入力、選択された変電所名やフィーダ名を停電領域とする最新の停電に関する情報を取得するようになっている。このように、この実施の形態では、停電を指定することで停電に関する情報を取得しているが、停電に関する情報、つまり停電日時や発変電所名、フィーダ名などを直接入力させるようにしてもよい。あるいは、検索タスク46が起動された時点での最新(直近)の停電に関する情報を自動的に取得し、常に最新の停電によって影響を受けたおそれがある電柱を検索、抽出するようにしてもよい。
【0025】
次に、落雷日時が指定されると(ステップS4)、指定された落雷日時に該当する落雷に関する情報を落雷データベース42から取得して(ステップS5)、検索距離を指定する入力待ちの状態となる。ここで、落雷日時の指定は、停電日時などの停電に関する情報を参照しながら、落雷の発生日時の範囲(幅)を入力し、例えば、停電日時の2秒ほど前から停電日時までを入力する。また、このような指定は、入力を待つことなく、停電に関する情報に基づいて自動的に設定してもよい。一方、指定された落雷日時に該当する落雷が複数存在する場合には、該当するすべての落雷に関する情報を取得する。このようにして、指定された停電と所定の時間的関係を有する落雷の落雷位置を検索する(割り出す)。
【0026】
続いて、検索距離が指定されると(ステップS6)、ステップ7以降の処理を行う。ここで、検索距離とは、落雷データベース42から取得した落雷位置(標定位置)を中心にして電柱の検索を行う範囲を規定する距離(後述する図9の符号R)であり、落雷位置標定システム3の精度誤差などを考慮して設定される。また、このような指定は、入力を待つことなく、一律に設定したり、あるいは、落雷位置標定システム3の精度誤差や落雷の強度などに基づいて自動的に設定してもよい。
【0027】
次に、当該停電が発生した発電所において、過去に落雷位置標定システム3による標定位置と実際の落雷位置とに差異が生じた場合、つまり誤差データベース44に標定誤差が記憶されている場合(ステップS7で「Y」の場合)には、その標定誤差が指定された検索距離よりも大きいか否かを判断する(ステップS8)。そして、検索距離よりも大きい場合には、検索距離を標定誤差とする(ステップS9)。あるいは、標定誤差に所定の距離を加えた値を検索距離としてもよい。
【0028】
続いて、当該停電の停電領域内で、かつ、当該落雷の標定位置から検索範囲(所定の範囲)内に位置する電柱を、電柱データベース43から検索、抽出する(ステップS10)。例えば、図9は、停電領域における配電線とその電柱Pを示す図であり、標定位置を図中符号SP(2箇所)とした場合、次のようにして抽出する。すなわち、各落雷位置SPを中心として前後左右(東西南北)が検索距離Rまでの範囲を検索範囲SRとし、停電領域においてこの検索範囲SR内に位置する電柱Pを電柱データベース43から抽出し、その電柱名と経緯、緯度を取得する。また、図10に示すように、1つの変電所に複数のフィーダを備え、各フィーダから配電線が配設され、1つのフィーダの配電線が停電領域である場合には、次のようにして抽出する。すなわち、上記と同様にして定めた検索範囲SR内に位置し、かつ停電領域の配電線(例えば、フィーダAAの配電線)に属する電柱Pを電柱データベース43から抽出し、その電柱名と経緯、緯度を取得する。ここで、図9は、停電領域が検索範囲SRよりも広く、図10は、検索範囲SRが停電領域よりも広い(検索範囲SR内に停電対象以外の配電線、電柱を含む)ケースを示している。
【0029】
そして、このようにして検索、抽出したすべて電柱の電柱名と経緯、緯度を、電柱リストとして、例えば図11に示すようにディスプレイに表示する(ステップS11)ものである。なお、図11中の「VO」は地絡を意味し、「OC」は短絡を意味する。さらに、外部入力指示に基づいて、このリストを印刷したり、作業車のナビゲーション端末などの携帯端末に送信したりできるようになっている。
【0030】
次に、このような構成の落雷電柱検索システム1の作用および、この落雷電柱検索システム1による落雷電柱検索方法について、図12に基づいて説明する。
【0031】
まず、落雷が発生すると、落雷位置標定システム3によって落雷日時と落雷位置が標定され、落雷位置標定システム3から検索用コンピュータ4に落雷情報が送信される(ステップS21)。そして、検索用コンピュータ4において記憶タスク45が起動されて(ステップS22)、上記のようにして落雷データベース42にデータが記憶される。同様に、停電が発生すると、配電自動化システム2によって停電日時や停電領域などが特定され、配電自動化システム2から検索用コンピュータ4に停電情報が送信される(ステップS23)。そして、検索用コンピュータ4において記憶タスク45が起動されて(ステップS24)、上記のようにして停電データベース41にデータが記憶される。
【0032】
次に、検索タスク46を起動して(ステップS25)、停電や落雷日時、および検索距離を指定すると、上記のようにして、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱が検索、抽出され、その電柱リストがディスプレイに表示される。さらに、予め登録された作業車のナビゲーション端末や、作業者の携帯端末などに電柱リストを送信すると(ステップS26)、これを受けて電柱の巡視、点検が行われる。そして、実際の落雷位置(落雷被害があった電柱や配電線の位置)を含む巡視、点検の結果が検索用コンピュータ4に送信され(ステップS27)、標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異がある場合には、誤差データベース44に標定誤差が記憶される(ステップS28)ものである。
【0033】
以上のように、この落雷電柱検索システム1および落雷電柱検索方法によれば、配電線の停電領域内で、かつ落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱が検索、抽出される。つまり、停電と落雷とが重なる領域内に位置する電柱が抽出されるため、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。しかも、標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた変電所においては、検索距離を標定誤差以上に拡大して電柱が検索される。このため、地形による影響(地形による電磁波の輻射)などによって落雷位置を精度高く標定できない変電所地域においても、実際の落雷位置を含む範囲内で検索が行われ得、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。
【0034】
そして、このようにして電柱を特定できる結果、落雷の影響を受けたおそれがある電柱を迅速、効率的かつ適正に巡視、点検して、被害箇所を改修したり、配電線故障の未然防止措置を行ったりすることが可能となる。例えば、図9に示す停電、落雷状況の場合には、停電領域内のすべての電柱P(図示のすべての電柱P)を巡視、点検する必要がなく、また、図10に示す停電、落雷状況の場合には、検索範囲SR内のすべての電柱Pを巡視、点検する必要がない。
【0035】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、予め停電データベース41と落雷データベース42に記憶されたデータに基づいて電柱を検索しているが、検索の際に配電自動化システム2と落雷位置標定システム3から停電情報や落雷情報を受信して検索するようにしてもよい。また、上記の実施の形態では、停電を指定して、この停電の停電日時と所定の時間的関係を有する落雷を検索(抽出)しているが、落雷を指定して、この落雷の落雷日時と所定の時間的関係を有する停電を検索して、電柱を検索するようにしてもよい。
【0036】
さらに、停電が発生した際に、つまり配電自動化システム2から停電情報を受信した場合に、自動的に検索タスク46を起動させ、当該停電を対象にして落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索するようにしてもよい。すなわち、当該停電の停電日時と落雷日時とが所定の時間的関係(落雷日時が停電日時の数秒前など)を有する落雷の落雷位置を、落雷データベース42あるいは落雷位置標定システム3から取得する。そして、上記と同様にして、当該停電の停電領域内で、かつ、当該落雷位置から検索範囲SR内に位置する電柱を、電柱データベース43から検索、抽出するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態に係る落雷電柱検索システムを示す概略構成図である。
【図2】図1の落雷電柱検索システムにおける配電自動化システムの概略構成図である。
【図3】図1の落雷電柱検索システムの検索用コンピュータの構成ブロック図である。
【図4】図3の検索用コンピュータの停電データベースのデータ構成図である。
【図5】図3の検索用コンピュータの落雷データベースのデータ構成図である。
【図6】図3の検索用コンピュータの電柱データベースのデータ構成図である。
【図7】図3の検索用コンピュータの検索タスクのフローチャートである。
【図8】図7の続きを示すフローチャートである。
【図9】図7の検索タスクにおいて、停電領域内の配電線およびその電柱と、落雷位置および検索範囲との位置関係例を示す図である。
【図10】図7の検索タスクにおいて、複数のフィーダと、落雷位置および検索範囲との位置関係例を示す図である。
【図11】図7の検索タスクによって出力される電柱リストの一例を示す図である。
【図12】図1の落雷電柱検索システムによる落雷電柱検索方法などを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 落雷電柱検索システム
2 配電自動化システム(停電領域特定手段)
3 落雷位置標定システム(落雷位置標定手段)
4 検索用コンピュータ
41 停電データベース
42 落雷データベース
43 電柱データベース(配電位置データベース)
44 誤差データベース
45 記憶タスク
46 検索タスク(検索手段)
SP 落雷位置(標定位置)
SR 検索範囲
P 電柱
【技術分野】
【0001】
この発明は、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱を検索する落雷電柱検索システム、落雷電柱検索方法および落雷電柱検索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷が発生した際に、その落雷位置をより精度高く標定することが可能な落雷位置標定システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムは、落雷により発生した雷電波が少なくとも3箇所の受信局に到達した時間の差から、この到達時間差を生じさせるような水平面上の伝搬距離差を持つ仮の落雷位置を算出する。そして、この仮の落雷位置を基に地表面の凹凸に沿った沿面距離で到達時間差を評価した落雷位置に補正する。これにより、地形に依存した誤差がない落雷の位置を標定できる、というものである。
【特許文献1】特開2003−294824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、配電設備などが落雷によって被害を受けて停電(事故)が発生すると、需要家への電力の供給ができなくなる。このため、早急に被害箇所を特定して改修を行ったり、落雷地域の周辺設備を点検して停電の未然防止措置を行ったりする必要がある。そして、このような点検、措置の対象となる設備には電柱が含まれ、被害を受けた電柱あるいは被害を受けたおそれがある電柱や配電線を特定して(探して)、点検、措置する必要がある。
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載されたシステムでは、落雷位置をより精度高く標定することが可能なものの、被害を受けた電柱あるいは被害を受けたおそれがある電柱までをも特定することはできない。このため、例えば、落雷位置標定システムで標定された落雷位置の周辺の配電線やその電柱をすべて巡視し、異常の有無を点検する必要があり、多大な労力と時間とを要していた。
【0005】
そこでこの発明は、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に(精度高く)特定することが可能な落雷電柱検索システム、落雷電柱検索方法および落雷電柱検索プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索システムであって、停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定する停電領域特定手段と、落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定する落雷位置標定手段と、配電線の電柱の位置情報を記憶した配電位置データベースと、前記停電領域特定手段によって特定された停電領域内で、かつ、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、前記配電位置データベースから検索する検索手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、停電が発生すると、停電領域特定手段によって停電日時と配電線の停電領域とが特定され、落雷が発生すると、落雷位置標定手段によって落雷日時と落雷位置とが標定される。そして、検索手段によって、停電領域特定手段による停電領域内で、かつ、落雷位置標定手段による落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱が、配電位置データベースから検索される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の落雷電柱検索システムにおいて、前記検索手段は、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた地域において、その差異である標定誤差以上に前記所定の範囲を設定して検索する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索方法であって、停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定するステップと、前記停電日時と所定の関係を有する落雷日時の落雷の落雷位置を割り出すステップと、前記特定した停電領域内で、かつ、前記割り出した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を検索するステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索プログラムであって、コンピュータに、指定された停電と所定の時間的関係を有する落雷の落雷位置を、落雷日時と標定された落雷位置とを記憶したデータベースから検索するステップと、前記停電による配電線の停電領域内で、かつ、前記検索した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、配電線の電柱の位置情報を記憶したデータベースから検索するステップと、を実行させるための落雷電柱検索プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、3および4に記載の発明によれば、配電線の停電領域内で、かつ落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱が検索される。つまり、停電と落雷とが重なる領域内に位置する電柱が検索されるため、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた地域においては、標定された落雷位置から標定誤差以上の所定の範囲内に位置する電柱が検索される。このため、このような地域においても、実際の落雷位置を含む範囲内で検索が行われ得、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係る落雷電柱検索システム1を示す概略構成図である。この落雷電柱検索システム1は、落雷によって影響を受けた可能性(おそれ)がある電柱を検索するシステムであり、主として、配電自動化システム(停電領域特定手段)2と、落雷位置標定システム(落雷位置標定手段)3と、検索用コンピュータ4とを備え、検索用コンピュータ4は、配電自動化システム2および落雷位置標定システム3と通信網Nを介して通信可能に接続されている。
【0015】
配電自動化システム2は、停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定などするシステムであり、電力会社などに広く導入されている配電自動化システムと同等の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、一例としては、概略次のような構成となっている。すなわち、配電自動化システム2は、配電自動化サーバ、配電遠制装置(遠方監視制御装置)および、監視制御卓、系統計画卓(ワークステーション)などを備え、それぞれがLAN(Local Area Network)で接続されている。また、図2に示すように、電柱Pに取り付けられた開閉器21と配電遠制装置とが伝送線路22(通信ケーブルなど)によって接続され、さらに、総合制御所23を介して配電用変電所24と配電遠制装置とが伝送線路22によって接続されている。
【0016】
そして、配電線の運用状態を常時監視し、例えば、配電線事故による停電が発生すると、開閉器21を制御しながら停電を引き起こした事故区間(配電線、フィーダや故障区間自動検出装置・DMの区間)を特定し、事故区間(停電区間)以外の配電線への配電(自動逆送)を行う。また、変電所事故(特高事故、瞬時電圧低下など)による停電が発生すると、停電が発生した地域に対して周辺の配電線からの配電(自動逆送)を行ったりするものである。また、この実施の形態では、停電が発生して配電線の停電領域(停電区間)を特定すると、その停電日時や停電領域などを含む停電情報を検索用コンピュータ4に送信するようになっている。
【0017】
落雷位置標定システム3は、落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定するシステム(LLS:Lightning Location System)であり、広く知られている落雷位置標定システムと同等の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、一例としては、概略次のような構成となっている。すなわち、複数のDF局(方位探知局)を備え、落雷時に発生する電磁波を各DF局のサンサで捕らえ、DF局間で生じた到達時間差を生じさせるような伝搬距離差を持つ地点(経緯、緯度)を算出して、落雷位置を標定するものである。また、この実施の形態では、落雷が発生して落雷位置を標定すると、その落雷日時や落雷位置などを含む落雷情報を検索用コンピュータ4に送信するようになっている。
【0018】
検索用コンピュータ4は、図3に示すように、停電データベース41と、落雷データベース42と、電柱データベース(配電位置データベース)43と、誤差データベース44と、記憶タスク45と、検索タスク(検索手段、落雷電柱検索プログラム)46と、これらを制御などするCPU(Central Processing Unit)47とを備えている。
【0019】
停電データベース41は、停電に関する情報を記憶したデータベースであり、図4に示すように、停電ごとに、つまり停電を識別する停電ID(IDentification)411ごとに、停電日時412、発変電所名413、フィーダ名414、事故区分415およびその他416が記憶されている。そして、停電日時412には、停電が発生した日時が記憶され、発変電所名413には、停電対象の発電所名や変電所名が記憶される。フィーダ名414には、停電対象のフィーダ名や配電線名、あるいはDM間が記憶され、事故区分415には、短絡事故や地絡事故などの事故の種類や、長時間停電や短時間停電(瞬停)などの停電の種類が記憶される。ここで、このようなデータは、後述するようにして記憶タスク45によって記憶されるようになっている。
【0020】
落雷データベース42は、落雷に関する情報を記憶したデータベースであり、図5に示すように、落雷ごとに、つまり落雷を識別する落雷ID421ごとに、落雷日時422、落雷位置423、雷電流424、極性425およびその他426が記憶されている。そして、落雷日時422には、落雷が発生した日時が記憶され、落雷位置423には、標定された落雷の位置、つまり経緯、緯度が記憶され、雷電流424には、落雷の電流値が記憶され、極性425には、落雷の極性、つまり正極、または負極が記憶される。ここで、このようなデータは、後述するようにして記憶タスク45によって記憶されるようになっている。
【0021】
電柱データベース43は、配電線の電柱の位置情報を記憶したデータベースであり、図6に示すようなデータ構成となっている。すなわち、検索対象のすべての変電所に対して、各変電所に属するすべてのフィーダが記憶され、さらに、各フィーダに属するすべての電柱が記憶されている。また、電柱の情報としては、電柱名、電柱が設置されている経緯、緯度などが記憶されている。
【0022】
誤差データベース44は、落雷位置標定システム3によって標定された落雷位置(標定位置)と実際の落雷位置とに差異が生じ場合に、その差異である標定誤差を記憶したデータベースである。具体的には、変電所(地域)ごとに、差異が生じた場合の標定誤差(誤差距離)が記憶され、同一変電所で二回以上差異が生じた場合には、最新の標定誤差が記憶されている。このようなデータは、後述するようにして、電柱を点検して落雷の位置が確認された後に記憶される。ここで、同一変電所で二回以上差異が生じた場合に、最長の標定誤差を記憶してもよく、また、変電所ごとではなく、電柱が設置されている地理的領域(地域)ごとに標定誤差を記憶してもよい。
【0023】
記憶タスク45は、停電データベース41および落雷データベース42に、上記のようなデータ(情報)を記憶するタスク(プログラム)である。具体的には、配電自動化システム2から受信した停電情報に基づいて、停電データベース41の停電ID411を更新し、停電日時412や発変電所名413などにデータを記憶する。また、落雷位置標定システム3から受信した落雷情報に基づいて、落雷データベース42の落雷ID421を更新し、落雷日時422や落雷位置423などにデータを記憶するものである。
【0024】
検索タスク46は、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱を検索、抽出するタスクであり、図7、8に示すフローチャートに基づいた処理を行う。まず、検索タスク46が起動されると、入力画面を表示し(ステップS1)、停電を指定する入力待ちの状態となる。そして、停電が指定されると(ステップS2)、指定された停電に該当する停電に関する情報を停電データベース41から取得して(ステップS3)表示し、落雷日時を指定する入力待ちの状態となる。ここで、停電の指定は、例えば、変電所名やフィーダ名を入力、選択することで行い、入力、選択された変電所名やフィーダ名を停電領域とする最新の停電に関する情報を取得するようになっている。このように、この実施の形態では、停電を指定することで停電に関する情報を取得しているが、停電に関する情報、つまり停電日時や発変電所名、フィーダ名などを直接入力させるようにしてもよい。あるいは、検索タスク46が起動された時点での最新(直近)の停電に関する情報を自動的に取得し、常に最新の停電によって影響を受けたおそれがある電柱を検索、抽出するようにしてもよい。
【0025】
次に、落雷日時が指定されると(ステップS4)、指定された落雷日時に該当する落雷に関する情報を落雷データベース42から取得して(ステップS5)、検索距離を指定する入力待ちの状態となる。ここで、落雷日時の指定は、停電日時などの停電に関する情報を参照しながら、落雷の発生日時の範囲(幅)を入力し、例えば、停電日時の2秒ほど前から停電日時までを入力する。また、このような指定は、入力を待つことなく、停電に関する情報に基づいて自動的に設定してもよい。一方、指定された落雷日時に該当する落雷が複数存在する場合には、該当するすべての落雷に関する情報を取得する。このようにして、指定された停電と所定の時間的関係を有する落雷の落雷位置を検索する(割り出す)。
【0026】
続いて、検索距離が指定されると(ステップS6)、ステップ7以降の処理を行う。ここで、検索距離とは、落雷データベース42から取得した落雷位置(標定位置)を中心にして電柱の検索を行う範囲を規定する距離(後述する図9の符号R)であり、落雷位置標定システム3の精度誤差などを考慮して設定される。また、このような指定は、入力を待つことなく、一律に設定したり、あるいは、落雷位置標定システム3の精度誤差や落雷の強度などに基づいて自動的に設定してもよい。
【0027】
次に、当該停電が発生した発電所において、過去に落雷位置標定システム3による標定位置と実際の落雷位置とに差異が生じた場合、つまり誤差データベース44に標定誤差が記憶されている場合(ステップS7で「Y」の場合)には、その標定誤差が指定された検索距離よりも大きいか否かを判断する(ステップS8)。そして、検索距離よりも大きい場合には、検索距離を標定誤差とする(ステップS9)。あるいは、標定誤差に所定の距離を加えた値を検索距離としてもよい。
【0028】
続いて、当該停電の停電領域内で、かつ、当該落雷の標定位置から検索範囲(所定の範囲)内に位置する電柱を、電柱データベース43から検索、抽出する(ステップS10)。例えば、図9は、停電領域における配電線とその電柱Pを示す図であり、標定位置を図中符号SP(2箇所)とした場合、次のようにして抽出する。すなわち、各落雷位置SPを中心として前後左右(東西南北)が検索距離Rまでの範囲を検索範囲SRとし、停電領域においてこの検索範囲SR内に位置する電柱Pを電柱データベース43から抽出し、その電柱名と経緯、緯度を取得する。また、図10に示すように、1つの変電所に複数のフィーダを備え、各フィーダから配電線が配設され、1つのフィーダの配電線が停電領域である場合には、次のようにして抽出する。すなわち、上記と同様にして定めた検索範囲SR内に位置し、かつ停電領域の配電線(例えば、フィーダAAの配電線)に属する電柱Pを電柱データベース43から抽出し、その電柱名と経緯、緯度を取得する。ここで、図9は、停電領域が検索範囲SRよりも広く、図10は、検索範囲SRが停電領域よりも広い(検索範囲SR内に停電対象以外の配電線、電柱を含む)ケースを示している。
【0029】
そして、このようにして検索、抽出したすべて電柱の電柱名と経緯、緯度を、電柱リストとして、例えば図11に示すようにディスプレイに表示する(ステップS11)ものである。なお、図11中の「VO」は地絡を意味し、「OC」は短絡を意味する。さらに、外部入力指示に基づいて、このリストを印刷したり、作業車のナビゲーション端末などの携帯端末に送信したりできるようになっている。
【0030】
次に、このような構成の落雷電柱検索システム1の作用および、この落雷電柱検索システム1による落雷電柱検索方法について、図12に基づいて説明する。
【0031】
まず、落雷が発生すると、落雷位置標定システム3によって落雷日時と落雷位置が標定され、落雷位置標定システム3から検索用コンピュータ4に落雷情報が送信される(ステップS21)。そして、検索用コンピュータ4において記憶タスク45が起動されて(ステップS22)、上記のようにして落雷データベース42にデータが記憶される。同様に、停電が発生すると、配電自動化システム2によって停電日時や停電領域などが特定され、配電自動化システム2から検索用コンピュータ4に停電情報が送信される(ステップS23)。そして、検索用コンピュータ4において記憶タスク45が起動されて(ステップS24)、上記のようにして停電データベース41にデータが記憶される。
【0032】
次に、検索タスク46を起動して(ステップS25)、停電や落雷日時、および検索距離を指定すると、上記のようにして、落雷によって影響を受けた可能性がある電柱が検索、抽出され、その電柱リストがディスプレイに表示される。さらに、予め登録された作業車のナビゲーション端末や、作業者の携帯端末などに電柱リストを送信すると(ステップS26)、これを受けて電柱の巡視、点検が行われる。そして、実際の落雷位置(落雷被害があった電柱や配電線の位置)を含む巡視、点検の結果が検索用コンピュータ4に送信され(ステップS27)、標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異がある場合には、誤差データベース44に標定誤差が記憶される(ステップS28)ものである。
【0033】
以上のように、この落雷電柱検索システム1および落雷電柱検索方法によれば、配電線の停電領域内で、かつ落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱が検索、抽出される。つまり、停電と落雷とが重なる領域内に位置する電柱が抽出されるため、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。しかも、標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた変電所においては、検索距離を標定誤差以上に拡大して電柱が検索される。このため、地形による影響(地形による電磁波の輻射)などによって落雷位置を精度高く標定できない変電所地域においても、実際の落雷位置を含む範囲内で検索が行われ得、落雷によって影響を受けたおそれがある電柱をより適正に特定することが可能となる。
【0034】
そして、このようにして電柱を特定できる結果、落雷の影響を受けたおそれがある電柱を迅速、効率的かつ適正に巡視、点検して、被害箇所を改修したり、配電線故障の未然防止措置を行ったりすることが可能となる。例えば、図9に示す停電、落雷状況の場合には、停電領域内のすべての電柱P(図示のすべての電柱P)を巡視、点検する必要がなく、また、図10に示す停電、落雷状況の場合には、検索範囲SR内のすべての電柱Pを巡視、点検する必要がない。
【0035】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、予め停電データベース41と落雷データベース42に記憶されたデータに基づいて電柱を検索しているが、検索の際に配電自動化システム2と落雷位置標定システム3から停電情報や落雷情報を受信して検索するようにしてもよい。また、上記の実施の形態では、停電を指定して、この停電の停電日時と所定の時間的関係を有する落雷を検索(抽出)しているが、落雷を指定して、この落雷の落雷日時と所定の時間的関係を有する停電を検索して、電柱を検索するようにしてもよい。
【0036】
さらに、停電が発生した際に、つまり配電自動化システム2から停電情報を受信した場合に、自動的に検索タスク46を起動させ、当該停電を対象にして落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索するようにしてもよい。すなわち、当該停電の停電日時と落雷日時とが所定の時間的関係(落雷日時が停電日時の数秒前など)を有する落雷の落雷位置を、落雷データベース42あるいは落雷位置標定システム3から取得する。そして、上記と同様にして、当該停電の停電領域内で、かつ、当該落雷位置から検索範囲SR内に位置する電柱を、電柱データベース43から検索、抽出するものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態に係る落雷電柱検索システムを示す概略構成図である。
【図2】図1の落雷電柱検索システムにおける配電自動化システムの概略構成図である。
【図3】図1の落雷電柱検索システムの検索用コンピュータの構成ブロック図である。
【図4】図3の検索用コンピュータの停電データベースのデータ構成図である。
【図5】図3の検索用コンピュータの落雷データベースのデータ構成図である。
【図6】図3の検索用コンピュータの電柱データベースのデータ構成図である。
【図7】図3の検索用コンピュータの検索タスクのフローチャートである。
【図8】図7の続きを示すフローチャートである。
【図9】図7の検索タスクにおいて、停電領域内の配電線およびその電柱と、落雷位置および検索範囲との位置関係例を示す図である。
【図10】図7の検索タスクにおいて、複数のフィーダと、落雷位置および検索範囲との位置関係例を示す図である。
【図11】図7の検索タスクによって出力される電柱リストの一例を示す図である。
【図12】図1の落雷電柱検索システムによる落雷電柱検索方法などを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 落雷電柱検索システム
2 配電自動化システム(停電領域特定手段)
3 落雷位置標定システム(落雷位置標定手段)
4 検索用コンピュータ
41 停電データベース
42 落雷データベース
43 電柱データベース(配電位置データベース)
44 誤差データベース
45 記憶タスク
46 検索タスク(検索手段)
SP 落雷位置(標定位置)
SR 検索範囲
P 電柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索システムであって、
停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定する停電領域特定手段と、
落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定する落雷位置標定手段と、
配電線の電柱の位置情報を記憶した配電位置データベースと、
前記停電領域特定手段によって特定された停電領域内で、かつ、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、前記配電位置データベースから検索する検索手段と、
を備えることを特徴とする落雷電柱検索システム。
【請求項2】
前記検索手段は、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた地域において、その差異である標定誤差以上に前記所定の範囲を設定して検索する、
ことを特徴とする請求項1に記載の落雷電柱検索システム。
【請求項3】
落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索方法であって、
停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定するステップと、
前記停電日時と所定の関係を有する落雷日時の落雷の落雷位置を割り出すステップと、
前記特定した停電領域内で、かつ、前記割り出した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を検索するステップと、
を有することを特徴とする落雷電柱検索方法。
【請求項4】
落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索プログラムであって、
コンピュータに、
指定された停電と所定の時間的関係を有する落雷の落雷位置を、落雷日時と標定された落雷位置とを記憶したデータベースから検索するステップと、
前記停電による配電線の停電領域内で、かつ、前記検索した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、配電線の電柱の位置情報を記憶したデータベースから検索するステップと、
を実行させるための落雷電柱検索プログラム。
【請求項1】
落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索システムであって、
停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定する停電領域特定手段と、
落雷が発生した場合に、その落雷日時と落雷位置を標定する落雷位置標定手段と、
配電線の電柱の位置情報を記憶した配電位置データベースと、
前記停電領域特定手段によって特定された停電領域内で、かつ、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、前記配電位置データベースから検索する検索手段と、
を備えることを特徴とする落雷電柱検索システム。
【請求項2】
前記検索手段は、前記落雷位置標定手段によって標定された落雷位置と実際の落雷位置とに差異が生じた地域において、その差異である標定誤差以上に前記所定の範囲を設定して検索する、
ことを特徴とする請求項1に記載の落雷電柱検索システム。
【請求項3】
落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索方法であって、
停電が発生した場合に、その停電日時と配電線の停電領域を特定するステップと、
前記停電日時と所定の関係を有する落雷日時の落雷の落雷位置を割り出すステップと、
前記特定した停電領域内で、かつ、前記割り出した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を検索するステップと、
を有することを特徴とする落雷電柱検索方法。
【請求項4】
落雷によって影響を受けた可能性がある電柱を検索する落雷電柱検索プログラムであって、
コンピュータに、
指定された停電と所定の時間的関係を有する落雷の落雷位置を、落雷日時と標定された落雷位置とを記憶したデータベースから検索するステップと、
前記停電による配電線の停電領域内で、かつ、前記検索した落雷位置から所定の範囲内に位置する電柱を、配電線の電柱の位置情報を記憶したデータベースから検索するステップと、
を実行させるための落雷電柱検索プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−270981(P2009−270981A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122871(P2008−122871)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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