説明

葉面積指数算出装置、葉面積指数算出方法及びそのプログラム

【課題】航空レーザー計測を用いて葉面積指数を高精度に推定することができる葉面積指数算出方法を提供する。
【解決手段】上空から地上へレーザーを照射し、地上で反射したレーザーの反射強度データを記憶する手順と、地盤の反射率を記憶する手順と、記憶した反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出する手順(S13)と、記憶した反射強度データから、樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出する手順(S14)と、記憶した反射強度データ及び反射率に基づいて、樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出する手順(S12)と、樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、樹冠を通過したレーザーの反射強度、及び樹冠で反射したレーザーの反射強度を用いて、樹木の葉面積指数を算出する手順(S15)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林分パラメータとして重要な葉面積指数を算出する葉面積指数算出装置、葉面積指数算出方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹木本数、樹冠面積、樹高、胸高直径、及び葉面積指数(Leaf Area Index:LAI)等の林分パラメータを把握することは、森林の状態を定量化し、林業や保全活動へ反映させる上で重要である。ここで、LAIは、植物の葉の多少の度合いを示す指標であり、地上の単位面積に対しての、その上方に存在するすべての葉の片側の総面積の比率である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
LAI推定手法としては、現地調査を行うのが一般的である。しかし、この方法では、局所的にしか推定することができず、広域のLAIを推定するのには、時間や労力がかかる。
【0004】
そこで、広域にLAIを推定する場合には、衛星データを活用する手法がある。これは、衛星データより正規化植生指標(NDVI)を求め、NDVIとLAIの回帰分析を実施することによって得られた回帰式に基づいて推定をするものである。この手法においても、LAIの実測値を取得していることが前提であり、広域展開できるものの、実測データがなければ実施できない。
【0005】
また、航空レーザーを活用して広域のLAIを推定する手法がある。この方法では、航空レーザーにより計測されたレーザー反射地点の高さとDEMの差をとった地上面からの高さ(樹高データ)を用いてLAIを推定する。具体的には、横軸を地上面からの高さ、縦軸を頻度としたヒストグラムから累積頻度分布を作成し、これが光の減衰を表現していると仮定してLAIを算出している。
【特許文献1】特開2005−52045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の航空レーザーを活用したLAI推定手法では、ヒストグラムが樹冠内部の情報を反映しきれていないため、算出したLAIには疑問が残る。即ち、LAIを高精度に推定することができない問題点があった。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明は、航空レーザー計測を用いて広域かつ簡易にLAIを高精度に推定することができる葉面積指数算出装置、葉面積指数算出方法及びそのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様によれば、(イ)上空から地上へレーザーを照射し、地上で反射したレーザーの反射強度データを記憶するステップと、(ロ)地盤の反射率を記憶するステップと、(ハ)記憶した反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出するステップと、(ニ)記憶した反射強度データから、樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出するステップと、(ホ)記憶した反射強度データ及び反射率に基づいて、樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出するステップと、(ヘ)記憶した反射強度データから、地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出するステップと、(ト)樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、樹冠を通過したレーザーの反射強度、樹冠で反射したレーザーの反射強度、及び地盤で反射したレーザーの反射強度を用いて、樹木の葉面積指数を算出するステップとを含む葉面積指数算出方法が提供される。
【0009】
本願発明の他の態様によれば、コンピュータを、(イ)上空から地上へレーザーを照射し、地上で反射したレーザーの反射強度データを記憶する手段と、(ロ)地盤の反射率を記憶する手段と、(ハ)記憶した反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出する手段と、(ニ)記憶した反射強度データから、樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出する手段と、(ホ)記憶した反射強度データ及び反射率に基づいて、樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出する手段と、(ヘ)記憶した反射強度データから、地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出する手順と、(ト)樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、樹冠を通過したレーザーの反射強度、樹冠で反射したレーザーの反射強度、及び地盤で反射したレーザーの反射強度を用いて、樹木の葉面積指数を算出する手段手段として機能させるためのプログラムが提供される。
【0010】
本願発明の更に他の態様によれば、(イ)上空から地上へレーザーを照射するレーザー照射手段と、(ロ)地上で反射したレーザーの反射強度データを記憶する反射強度記憶手段と、(ハ)地盤の反射率を記憶する反射率記憶手段と、(ニ)記憶した反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出し、記憶した反射強度データから、樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出し、記憶した反射強度データから、地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出し、記憶した反射強度データ及び反射率に基づいて、樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出し、樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、樹冠を通過したレーザーの反射強度、樹冠で反射したレーザーの反射強度、及び地盤で反射したレーザーの反射強度を用いて、樹木の葉面積指数を算出する演算手段と、(ホ)葉面積指数を出力する出力手段とを備える葉面積算出装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、航空レーザー計測を用いてLAIを高精度に推定することができる葉面積指数算出装置、葉面積指数算出方法及びそのプログラムを提供することができる。
【0012】
したがって、このLAIを林分パラメータとして用いて、CO2削減量を精度良く推定すること等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
本発明の第1の実施の形態に係る葉面積指数算出装置は、図1に示すように、中央処理装置(CPU)1、表示部2、入力部3、出力部4及び記憶装置5を備える。入力部3としては、例えばキーボード、マウス、OCR等の認識装置、スキャナ、カメラ等の画像入力装置、マイク等の音声入力装置等が使用可能である。出力部4としては、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等の表示装置や、インクジェットプリンタ、レーザープリンタ等の印刷装置等を用いることができる。表示部2は、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等である。記憶装置5には、ROM及びRAMが組み込まれている。ROMは、CPU1において実行されるプログラムを格納する。RAMは、CPU1におけるプログラム実行処理中に利用されるデータ等を一時的に格納したり、作業領域として利用される一時的なデータメモリ等として機能する。記憶装置5としては、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクや磁気テープ等が採用可能である。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施の形態の葉面積指数算出装置の概略構成図である。(第1の)地盤反射強度抽出部6、入射強度算出部7、表示処理部10、(第2の)地盤反射強度抽出部11、反射率算出部12、樹冠反射強度抽出部13、樹冠通過強度抽出部14、及び葉面積指数算出部15は、図1に示したCPU1により実現される。
【0016】
図2に示す地盤反射強度記憶部8、反射率記憶部9、オルソフォト画像記憶部20、反射強度データ記憶部21、反射率記憶部22、樹木頂点記憶部23、DEM記憶部24、閾値記憶部25、地盤反射強度記憶部26、入射強度記憶部27、樹冠反射強度記憶部28、樹冠通過強度記憶部29及び葉面積指数記憶部31は、図1に示した記憶装置5に含まれる。
【0017】
オルソフォト画像記憶部20は、LAI算出対象となる森林域Aを含むオルソフォト画像を格納する。「オルソフォト画像」とは、写真画像に三次元計測データ等を与えて正射変換を行った画像である。オルソフォト画像は、例えば、座標(X,Y)とそれに対応する赤(R)、緑(G)、青(B)の色情報を含む。
【0018】
反射強度データ記憶部21は、航空レーザー(以下、単に「レーザー」という。)の反射強度データを格納する。反射強度データは、航空機に設けたレーザー照射手段(図示省略)によりレーザーを地上へ照射し、航空機内のレーザー受信手段(図示省略)により地上で反射したレーザーを受信することで取得することができる。反射強度データは、任意の地点で得られるランダムデータであり、3次元座標(X,Y,Zd)とレーザーの反射強度を含む。高さの座標Zdは、地盤や樹木等のレーザーの反射地点の高さを示す。
【0019】
レーザーの反射強度は、パルス波形で示される。パルス波形には複数のピーク値があり、最初のピーク値を「ファーストパルスの強度Ifirst」、最後のピーク値を「ラストパルスの強度Ilast」と定義する。
【0020】
DEM記憶部24は、森林の地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model)を格納する。DEMは、例えば平面直角座標系のX軸、Y軸を一定間隔(0.5m)で区切ったメッシュの格子点に割り当てている。DEMは、3次元座標(X,Y,Zh)を含む。高さの座標Zhは、地盤の高さを示す。
【0021】
地盤反射強度抽出部6は、反射強度データ記憶部21から、既知反射率領域内の座標(X,Y)の複数の反射強度データに含まれるファーストパルスの強度Ifirstをそれぞれ読み出す。ここで、「既知反射率領域」とは、地盤の反射率が予め分かっている領域をいい、例えばアスファルトや草原の領域である。更に、地盤反射強度抽出部6は、複数のファーストパルスの強度Ifirstの平均値を算出し、その平均値を、図3に示すような、既知反射率領域における地盤に直接達して反射したレーザーの反射強度(以下、「地盤反射強度」という。)Iaとして抽出する。既知反射率領域における地盤反射強度Iaは、地盤反射強度記憶部8に記憶される。
【0022】
入射強度算出部7は、地盤反射強度記憶部8から、既知反射率領域における地盤反射強度Iaを読み出す。更に、入射強度算出部7は、反射率記憶部9から反射強度Iaに対応する既知の反射率Raを読み出す。既知の反射率Raは、図4に示すような一般的な分光反射特性のグラフから設定可能である。入射強度算出部7は、既知反射率領域における地盤反射強度Ia及び既知の反射率Raを用いて、式(1)のように、図3に示すような、地盤に入射するレーザーの強度(以下、「入射強度」という。)I0を算出する。
【0023】
I0=Ia/Ra …(1)
例えば、地盤反射強度Iaの値を12.2とし、使用したレーザーの波長が1.064[μm]程度であることを考慮して反射率Raの値を0.14とすると、入射強度I0の値は、87.12となる。算出された入射強度I0は、入射強度記憶部27に格納される。
【0024】
樹木頂点記憶部23は、森林域A内の樹木毎に、樹木頂点の座標を格納する(この樹木頂点の算出方法については後述する)。本発明の第1の実施の形態においては、一例として、図5に示すオルソフォト画像において、森林域A内の樹木(樹冠)T1〜T6のLAIを算出することとする。例えば、オルソフォト画像記憶部20が、樹木(樹冠)T1〜T6の形状・座標等を、オルソフォト画像に対応させて格納していれば良い。なお、LAIの算出対象は樹木T1〜T6に限定されず、例えば森林域A内のすべての樹木のLAIを算出しても良い。樹木頂点記憶部23は、図5に示した樹木T1〜T6毎に、樹木頂点Pi(i=1〜6)の座標(Xi,Yi)を格納する。
【0025】
樹冠反射強度抽出部13は、樹木頂点記憶部23から樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)を読み出し、樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)のラストパルスの強度Ifirstを、図3に示すような樹冠で反射したレーザーの反射強度(以下、「樹冠反射強度」という。)Ictとして抽出する。樹冠反射強度Ictは、樹冠反射強度記憶部28に格納される。
【0026】
樹冠通過強度抽出部14は、樹木頂点記憶部23に格納された樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)を参照して、反射強度データ記憶部21から、樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)の反射強度データの反射地点の高さ(Z値)Zdを読み出す。更に、樹冠通過強度抽出部14は、DEM記憶部24から、DEMの樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)の地盤の高さZhを読み出す。更に、樹冠通過強度抽出部14は、反射地点の高さZdと地盤の高さZhとの差分値Zkを算出する。
【0027】
更に、樹冠通過強度抽出部14は、閾値記憶部25から閾値(例えば、1m)を読み出して、差分値Zkと比較する。差分値Zkが閾値以内の場合、レーザーが樹冠を通過し、地盤で反射したものと判断されるので、反射強度データのラストパルスの強度Ilastを、図3に示すような樹冠を通過して減衰した後に地盤で反射したレーザーの反射強度(以下、「樹冠通過強度」という。)Icbとして抽出する。図3に示すように、樹冠通過強度Icbは、樹冠を通過することで減衰しているので、樹冠内部の情報を有するといえる。抽出した樹冠通過強度Icbは、樹冠通過強度記憶部29に格納される。
【0028】
地盤反射強度抽出部11は、反射強度データ記憶部21から、森林域A内の反射強度データの反射地点の高さ(Z値)Zdを読み出す。更に、地盤反射強度抽出部11は、DEM記憶部24から、森林域A内のDEMの地盤の高さZhを読み出す。更に、地盤反射強度抽出部11は、反射地点の高さZdと地盤の高さZhとの差分値Zkを算出する。
【0029】
更に、地盤反射強度抽出部11は、閾値記憶部25から閾値(例えば、1m)を読み出して、差分値Zkと比較する。差分値Zkが閾値よりも小さい場合、レーザーが直接地盤に到達したものと判断されるので、反射強度データのファーストパルスの強度Ifirstを、図3に示すような地盤に直接達して反射したレーザーの反射強度(以下、「地盤反射強度」という。)Ibとして抽出する。抽出した樹冠通過強度Icbは、樹冠通過強度記憶部29に格納される。なお、樹冠通過強度Icbが森林域A内の反射率Rbで得られることから、地盤反射強度Ibも森林域Aから抽出している。
【0030】
反射率算出部12は、入射強度記憶部27から入射強度I0を読み込み、地盤反射強度記憶部26から森林域A内の地盤反射強度Ibを読み込んで、式(2)を用いて、森林域A内の反射率Rbを算出する。
【0031】
Rb=Ib/I0 ・・・(2)
森林域A内の反射率Rbは、反射率記憶部22に記憶される。
【0032】
図6に示すように、樹木T1〜T6毎に、森林域A内の地盤反射強度Ib、樹冠反射強度Ict、樹冠通過強度Icb及び入射強度I0が設定される。
【0033】
葉面積指数算出部15は、地盤反射強度記憶部26、入射強度記憶部27、及び樹冠反射強度記憶部28、樹冠通過強度記憶部29のそれぞれに格納された森林域A内の地盤反射強度Ib、樹冠反射強度Ict、樹冠通過強度Icb及び入射強度I0を読み出して、樹木T1〜T6毎に、LAIを算出する。
【0034】
地盤反射強度Ibは下の式で表される。
【0035】
Ib=I0・Rb …(3)
ベール−ランベルトの法則を参考にすると、葉間隙(gap fraction)は下の式(4)で表される。
【0036】
T(z)=exp(−G・μ・z) …(4)
ここで、Tは葉間隙、Gは葉の投影係数、μは葉群密度、zは梢端からの透過距離を表す。
【0037】
樹冠通過強度Icbは、下の式(5)で表される。
【0038】
Icb=(I0−Ict) ・exp(-2G・μ・d)・Rb …(5)
ここで、dは樹冠厚さを表す。式(5)より、樹冠通過強度Icbと 森林域A内の地盤反射強度Ibの比をとると式(6)のようになる。
【0039】
Icb/Ib= ((I0−Ict)/ I0) ・ exp(-2G・μ・d) …(6)
葉面積指数は下の式(7)で表される。
【0040】
LAI=μ・d …(7)
葉を水平面に投影したと仮定して、G=1とする。式(6)及び式(7)より、葉面積指数LAIは、式(8)で求めることができる。
【0041】
LAI=-1/2 ・ ln( (Icb・I0) / (Ib・(I0 - Ict)) ) …(8)
葉面積指数算出部15は、樹木T1〜T6毎に、地盤反射強度記憶部26、入射強度記憶部27、樹冠反射強度記憶部28及び樹冠通過強度記憶部29から、森林域A内の地盤反射強度Ib、樹冠反射強度Ict、樹冠通過強度Icb及び入射強度I0を読み出す。更に、葉面積指数算出部15は、式(8)のように、LAIを算出する。算出したLAIは、葉面積指数記憶部31に格納される。葉面積指数記憶部31は、図7に示すように、樹木T1〜T6毎に、LAIの値を格納する。出力部4は、LAIの値を、記録媒体に記録したり、画面に表示したり、印刷したりする。
【0042】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る葉面積指数算出方法の一例を、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0043】
(イ)ステップS11において、地盤反射強度抽出部11が、反射強度データ記憶部21から、図3に示すような地盤に直接達して反射したレーザーの反射強度(地盤反射強度)Ibを抽出する。森林域A内の地盤反射強度Ibは、地盤反射強度記憶部26に格納される。
【0044】
(ロ)ステップS12において、地盤反射強度抽出部6が、反射強度データ記憶部21から、図3に示すような既知反射率領域の地盤反射強度Iaを抽出し、地盤反射強度記憶部8に記憶させる。そして、入射強度算出部7が、地盤反射強度記憶部8から、既知反射率領域の地盤反射強度Iaを読み出し、更に反射率記憶部9から既知の反射率Raを読み出して、式(1)を用いて、樹木T1〜T6の樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度(入射強度)I0を算出する。入射強度I0は、入射強度記憶部27に格納される。
【0045】
(ハ)ステップS13において、樹冠反射強度抽出部13が、反射強度データ記憶部21から、図3に示すような樹木T1〜T6の樹冠で反射したレーザーの反射強度(樹冠反射強度)Ictを、樹木T1〜T6毎に抽出する。樹冠反射強度Ictは、樹冠反射強度記憶部28に格納される。
【0046】
(ニ)ステップS14において、樹冠通過強度抽出部14は、反射強度データ記憶部21から、図3に示すような、樹木T1〜T6の樹冠を通過した後に地盤で反射したレーザーの反射強度(樹冠通過強度)Icbを、樹木T1〜T6毎に抽出する。樹冠通過強度Icbは、樹冠通過強度記憶部29に格納される。
【0047】
(ホ)ステップS15において、葉面積指数算出部15が、地盤反射強度記憶部26、入射強度記憶部27、樹冠反射強度記憶部28及び樹冠通過強度記憶部29から森林域A内の地盤反射強度Ib、樹冠反射強度Ict、樹冠通過強度Icb及び入射強度I0を読み出して、式(7)を用いて、樹木T1〜T6毎にLAIを算出する。LAIは、葉面積指数記憶部31に格納される。
【0048】
なお、ステップS11〜S14の手順は、それぞれ独立して行うことが可能であり、図8のフローチャートに示した順序に特に限定されない。
【0049】
次に、図8のステップS11の森林域A内の地盤反射強度Ibの設定方法の詳細を、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0050】
(イ)ステップS21において、表示部2が、オルソフォト画像を画面に表示している。利用者が、オルソフォト画像の森林域AをLAIの算出対象とする指示を入力部3に入力する。表示処理部10が、入力部3からの指示に応じて、森林域Aを示す画面上のピクセル座標(Xp,Yp)を読み出す。そして、表示処理部10が、ピクセル座標(Xp,Yp)に該当するオルソフォト画像上の平面直角座標(Xo,Yo)を読み、地盤反射強度抽出部11に引き渡す。
【0051】
(ロ)ステップS22において、地盤反射強度抽出部11が、森林域A内の反射強度データを引き当てる。ステップS23において、地盤反射強度抽出部11が、反射強度データに含まれるレーザーの反射地点の高さZdを抽出する。
【0052】
(ハ)ステップS24において、地盤反射強度抽出部11が、DEM記憶部24から、森林域A内のDEMの地盤の高さZhを読み出す。ステップS25において、地盤反射強度抽出部11が、反射強度データの反射地点の高さZdと、DEMの地盤の高さZhとの差分値Zkをとる。
【0053】
(ニ)ステップS26において、地盤反射強度抽出部11が、差分値Zkが閾値と比較する。差分値Zkが閾値以上の場合は、ステップS24に戻り、森林域A内の他の反射強度データを引き当てる。他方、差分値Zkが閾値以内場合は、ステップS27に進む。
【0054】
(ホ)ステップS27において、地盤反射強度抽出部11が、反射強度データのファーストパルスの強度Ifirstを、図3に示すような地盤反射強度Ibとして抽出する。ステップS28において、地盤反射強度抽出部11が、地盤反射強度Ibを地盤反射強度記憶部26に記憶させる。
【0055】
次に、図8のステップS13の樹冠反射強度Ictの設定方法の詳細を、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
(イ)ステップS31において、表示部2が、オルソフォト画像を表示している。表示処理部10が、入力部3からの指示に応じて、表示部2の画面に表示された森林域Aを示すピクセル座標(Xp,Yp)を読み出す。表示処理部10が、ピクセル座標(Xp,Yp)に該当するオルソフォト画像の平面直角座標(Xo,Yo)を読み、樹冠反射強度抽出部13に引き渡す。
【0057】
(ロ)ステップS32において、樹冠反射強度抽出部13が、平面直角座標(Xo,Yo)に基づいて、樹木頂点記憶部23から森林域A内に存在する樹木T1〜T6の樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)を読み出す。
【0058】
(ハ)ステップS33において、樹冠反射強度抽出部13が、樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)のうち、樹木頂点P1に着目する。
【0059】
(ニ)ステップS34において、樹冠反射強度抽出部13が、樹木頂点P1の座標(X1,Y1)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)を有する反射強度データのファーストパルスの強度Ifirstを樹冠反射強度Ictとして抽出する。
【0060】
(ホ)ステップS35において、樹冠反射強度抽出部13が、抽出した樹冠反射強度Ictを、樹木T1の樹木頂点P1に対応させて樹冠反射強度記憶部28に記憶させる。
【0061】
(ヘ)ステップS36において、樹冠反射強度抽出部13が、着目した樹木頂点Piが最後の樹木頂点P6であるか、即ち全ての樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)に対して樹冠反射強度Ictを設定したか判断する。全ての樹木T1〜T6の樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)に対して樹冠反射強度Ictを抽出していなければ、ステップS37においてiを1インクリメントし、ステップS34に戻り、次の樹木頂点P2に対して樹冠反射強度Ictを抽出する。この結果、全ての樹木T1〜T6の樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)に対して樹冠反射強度Ictが抽出される。
【0062】
次に、図8のステップS14の樹冠通過強度Icbの設定方法の詳細を、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0063】
(イ)ステップS41において、表示部2が、オルソフォト画像を表示している。表示処理部10が、入力部3からの指示に応じて、表示部2の画面に表示されたLAIの算出対象となる樹木群の森林域Aを示すピクセル座標(Xp,Yp)を読み出す。表示処理部10が、ピクセル座標(Xp,Yp)に該当する平面直角座標(Xo,Yo)を読み、樹冠通過強度抽出部14に引き渡す。
【0064】
(ロ)ステップS42において、樹冠通過強度抽出部14が、樹木頂点記憶部23から、森林域A内に存在する樹木T1〜T6の樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)を読み出す。
【0065】
(ハ)ステップS43において、樹冠通過強度抽出部14が、読み出した樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)のうち、樹木頂点P1に着目する。
【0066】
(ニ)ステップS44において、樹冠通過強度抽出部14が、樹木頂点P1の座標(X1,Y1)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)を有する反射強度データを引き当てる。
【0067】
(ホ)ステップS45において、樹冠通過強度抽出部14が、反射強度データの反射地点の高さZdを抽出する。
【0068】
(ヘ)ステップS46において、樹冠通過強度抽出部14が、樹木頂点P1の座標(X1,Y1)に一致する、或いは最も近いDEMの地盤の高さZhを読み出す。
【0069】
(ト)ステップS47において、樹冠通過強度抽出部14が、反射強度データの反射地点の高さZdと、DEMの地盤の高さZhとの差分値Zkをとる。
【0070】
(チ)ステップS48において、樹冠通過強度抽出部14が、差分値Zkが、閾値以上か判断する。閾値よりも大きい場合は、ステップS49に進み樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)に次に近い座標を有する反射強度データを引き当て、ステップS44に戻る。他方、閾値以内の場合は、ステップS50に進み、樹冠通過強度抽出部14が、Zdを有する反射強度データを引き当てる。
【0071】
(リ)ステップS51において、樹冠通過強度抽出部14が、反射強度データのラストパルスの強度Ilastを樹冠通過強度Icbとして抽出する。
【0072】
(ヌ)ステップS52において、樹冠通過強度抽出部14が、樹冠通過強度Icbを樹冠通過強度記憶部29に樹木頂点P1と対応させて保存(設定)する。
【0073】
(ル)ステップS53において、樹冠通過強度抽出部14が、着目したのが樹木頂点P6であるか、即ち全ての樹木T1〜T6の樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)について樹冠通過強度Icbを設定したか判断する。全ての樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)について樹冠通過強度Icbを設定していなければ、ステップS54に進み、次の樹木頂点P2を対象として、ステップS44に戻る。この結果、全ての樹木T1〜T6の樹木頂点Pi(P1,P2,…P6)について樹冠通過強度Icbが抽出される。
【0074】
本発明の第1の実施の形態によれば、従来、現地調査により局所的なLAIを求めることしかできなかったが、航空レーザー計測でLAIを推定できるので、現地に立ち入ることなく、広域かつ迅速にLAIを推定することができる。
【0075】
更に、地盤反射強度Ib、樹冠反射強度Ict、樹冠通過強度Icb及び入射強度I0等のレーザーの強度を活用し、樹冠内部の情報(レーザー反射強度の減衰量)を用いてLAIを推定しているので、高精度なLAIを推定することができる。
【0076】
更に、樹木頂点記憶部23に格納された樹木頂点Piを用いて、樹冠反射強度抽出部13が、樹木頂点Piに一致、或いは最も近い座標(X,Y)の樹冠反射強度Ictを抽出し、樹冠通過強度抽出部14が、樹木頂点Piに一致、或いは最も近い座標(X,Y)の樹冠通過強度Icbを抽出することにより、LAIを推定することができる。樹木頂点Piの決定方法は後述する。
【0077】
このようにして求めたLAIは森林のCO2吸収量を推定する際のパラメータとして活用することもできる。
【0078】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態として、樹木頂点の特定方法について説明する。図13に示した樹木頂点記憶部23に含まれる樹木頂点Piは、以下のように特定している。
【0079】
本発明の第2の実施の形態は、樹冠を際立たせて再現し、単木の頂点を認識するものである。この単木の頂点の認識のために、新たに「尾根谷度」データを作成することによって樹冠形状を判別する。
【0080】
尾根谷度は次の様に算出する。
【0081】
本発明の第2の実施の形態では、DEMとDSMの差のデータである樹木高のグリッドデータ(0.5m)を用いて、8方向(=全方位)に探索して地上開度(φ1)と地下開度(φ2)を求める。検索範囲は1m・2m・5m・10mの4通り試算し、樹冠形状を適切に表現できた2mに決定した。そして、検索範囲2mにおける大まかな地形を表す、地上開度と地下開度とに挟まれる角度の2等分線とを尾根谷度(φ3)と定義する。
【0082】
以下に図面を用いて樹木認識の実施の形態を説明する。
【0083】
図12は本発明の第2の実施の形態の樹木頂点認識装置の概略構成図である。図12に示すように、特定地域の地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model)を記憶したデータベース110と、特定地域の表層(森林)のグリッドデータ(DSM:Digital Surface Model)を記憶したデータベース111と、特定地域のデジタル写真を記憶したデータベース112と、表示部13と、樹木高算出部114と、樹木高データが記憶されるファイル(メモリ)115と、平滑フィルタ部116と(3ピクセル×3ピクセル)、尾根谷度算出部117と、尾根谷度が記憶されるファイル118と、表示処理部119と、局所最大フィルタ部120と、樹木頂点候補抽出部121と、樹木頂点候補データが記憶されるファイル122と、樹冠上部抽出部123と、樹冠上部データが記憶されるファイル124と、樹木頂点決定部125と、樹木頂点データが記憶されるファイル126と出力部130等を備えている。
【0084】
データベース110は、特定地域の地盤のグリッドデータ(DEM:Digital Elevation Model:本発明の第2の実施の形態では0.5m間隔の格子状のデータ)を記憶している。このグリッドデータは、地盤のX、Y、Z(地盤高Za)とを対応させて記憶させられている。つまり、レーザーデータを読み込み、それぞれの同じ標高値を結んだ等高線図に対してTINを発生させて地面を復元する。
【0085】
データベース111は、特定地域の表層(森林)のグリッドデータ(DSM:Digital Surface Model:本発明の第2の実施の形態では0.5m間隔)を記憶している。このグリッドデータ(本発明の第2の実施の形態では0.5m間隔の格子状のデータ)は、樹木表面のX、Y、Z(Zb:樹木表面高)とを対応させて記憶している。つまり、レーザーデータを読み込み、それぞれの同じ標高値を結んだ等高線図に対してTINを発生させて表層を復元する。
【0086】
すなわち、これらのグリッドデータは、格子間隔0.5mのX−Y平面直角座標系に、緯度経度に対応するX値、Y値とレーザー計測によって得られたZ値を割り当てている。
【0087】
樹木高算出部114は、データベース110のDSMとデータベース111のDEMとの差を求め、これをファイル115(メモリ)のX,Y座標に割付ける。
【0088】
平滑フィルタ部116は、Average filterとも呼ばれるものであり、ファイル115の樹木高グリッドデータDiに対して、各々のデータを中心とするX−Y座標面3×3範囲(本発明の第2の実施の形態では1.5m×1.5m)で平均を求め、これをファイル126に保存する。
【0089】
尾根谷度算出部117は、ファイル126に平均化された樹木高グリッドデータDdi(Dd1、Dd2・・)が保存されると、樹木高グリッドデータDdiが付加されている任意の平均化された樹木高グリッドデータDdi(以下樹木高グリッドデータDdiという)から各々のデータを中心としたX−Y座標面の任意半径の検索範囲(検索範囲は樹冠の立体形状の特徴を適切に表現できた2mに決定している。以下2m範囲毎)で尾根谷度を求め、これをファイル118に保存する。
【0090】
局所最大値フィルタ部120は、ファイル118の尾根谷度のデータDeiに3×3範囲のフィルタを順次適用し、この結果をファイル127に保存する。
【0091】
樹木頂点候補抽出部121は、ファイル127の樹冠立体形状の特徴データDfi(XY、尾根谷度)とファイル118のDei(Xpi、Ypi、尾根谷度)とを比較し、同じものを頂点候補Dgiとしてファイル122に保存する。
【0092】
樹冠上部抽出部123は、ファイル118の尾根谷度データ(樹冠立体形状の特徴データDei)に森林の状態に応じた閾値を設けることによって樹冠の上部のデータDeiを抽出し、これを樹冠上部のデータDhi(Dh1、Dh2・・・)としてファイル124に保存する。
【0093】
樹木頂点決定部125は、ファイル124の樹冠の上部のデータDhi(Dh1、Dh2・・)とファイル122の頂点候補Dgi(Dg1、Dg2・・)とを重ね合わせ一致したものを仮の頂点と決定し、これをファイル128に保存する。そして、樹冠上部に複数の仮の頂点が存在するときは、この樹冠上部で最も樹木高が高いものを単木の頂点として決定し、これをファイル129に保存する(Pi)。
【0094】
表示処理部119は決定した頂点を例えば○印(△印、×印、番号等の識別)にして画面に表示する。このとき、写真画像と重ねて表示してもよい。
【0095】
出力部130は、ファイル129の頂点Piの座標(XY)に樹木番号を付けてプリンタ(図示せず)又は画面に表示する。このとき、樹木高も表示してもよい。
【0096】
(動作説明)
上記のように構成された樹木頂点特定装置について以下に動作を説明する。本発明の第2の実施の形態では表示部13にデータベース110のDSM及びデータベース111のDEM並びにデジタル写真を重ね表示している。
【0097】
図13は本発明の第2の実施の形態の樹木頂点認識装置の概略動作を説明するフローチャートである。
【0098】
本発明の第2の実施の形態では、樹木高算出部114が航空レーザー計測により取得されたデータ(DSM:Digital Surface Model)を読み込む(S71)。また、地盤のグリッドデータ(以下、DEM:Digital Elevation Model)を読み込む(S72)。
【0099】
そして、樹木高算出部114がDSMとDEMデータの差分Zci(Zci、Zci・・)をとり樹木高グリッドデータDiとして、ファイル115に保存する(S73)。
【0100】
この樹木高のグリッドデータDiに対して、平滑フィルタ部116(Average filter16ともいう)が3×3範囲で順次平均化し、ファイル126に保存(樹木高のグリッドデータDdi(Dd1、Dd2、・・・))する(S74)。
【0101】
次に、尾根谷度算出部117が2m範囲毎(Ddi)に地上開度及び地下開度を算出する(S75)。次に、地下開度及び地上開度を用いて尾根谷度算出部117が「尾根谷度」データを作成することによって樹冠の立体形状の特徴を判別できるようにした尾根谷画像を得てファイル118に保存する(S76)。
【0102】
尾根谷度は次の様に算出する。樹木高のグリッドデータDdiを用いて、8方向(=全方位)に探索して地上開度(φ1)と地下開度(φ2)を求める。
【0103】
検索範囲は1m・2m・5m・10mの4通り試算し、樹冠形状を適切に表現できた2mに決定した。
【0104】
そして、検索範囲2mにおける大まかな地形を表す、地上開度と地下開度に挟まれる角度の2等分線を尾根谷度(φ3)と定義していく(図20参照)。この尾根谷度のデータDeiは表示処理部119によって表示(尾根谷度画像)される。
【0105】
さらに、尾根谷度のデータDeiに局所最大値フィルタ部120を順次適用し(S77)、これをファイル127に保存する。
【0106】
このとき、樹冠の大きさに限らず最小のエリアサイズである3×3範囲に固定して、樹頂点ではなく「樹頂点の候補点」を抽出し、ファイル122に樹木頂点候補Dgh(dg1、・・)として保存する(S78)。この3×3範囲に固定したのは、例えば5×5にすると、樹木頂点候補が存在しない樹冠上部が多くなるという実験結果を得たので、3×3範囲とした。
【0107】
一方で、「尾根谷度>0」は尾根地形を表現し、「尾根谷度<0」は谷地形を表現するといった性質を利用して、樹木頂点候補抽出部121が尾根谷度データに森林の状態に応じた閾値を設けることによって樹冠の上部を抽出して(S79)、冠上部抽出部124をラベリング化する(S80)。
【0108】
さらに、樹木頂点決定部125が樹頂候補点と樹冠上部エリア毎に、樹木頂点候補点の中から最高樹木高を求め、その点を樹木頂点と決定(S81)し、これを樹木頂点として抽出する(S82)。この樹木頂点の決定については後述する。
【0109】
図14は本発明の第2の実施の形態の樹木頂点認識装置の尾根谷度を求める処理を説明するフローチャートである。
【0110】
本発明の第2の実施の形態では、表示部13にオルソフォト画像を表示している(S90)。
【0111】
樹木高算出部114は、DSM(X、Y、Z)及びDEM(X、Y、Z)とを読み込み(S91)、差Zciを求め(S92)、これらを樹木高のグリッドデータDi(D1、D2、・・・)としてファイル115に保存する。
【0112】
この樹木高データDiは、図15に示すように、座標(X,Y:平面直角座標)と樹木高Zciとが対応させられたデータとなる。
【0113】
次に、平滑フィルタ部116がファイル115の多数の樹木高のグリッドデータDiに対してフィルタ16で順次平均化(3×3範囲)し(S93)、この樹木高のグリッドデータDdiをファイル126に保存する。
【0114】
次に、尾根谷度算出部117は、個々のDdiにおいて2m範囲で順次、尾根谷度を求めることによって樹冠の立体形状の特徴を判別する(S94)。
【0115】
尾根谷度は、8方向に探索(木の種類によって1m、5m、10mで行う場合もある)して地上開度と地下開度とを求め、地上開度と地下開度との差を2で割ることで求める(S94)。つまり、樹木の冠部(葉、枝)の立体形状の特徴が求められる。
【0116】
ファイル126の樹木高のグリッドデータDdiを用いて、図16に示すように8方向(=全方位)に探索して地上開度(φ1)と地下開度(φ2)を求める。検索範囲は樹冠の立体形状の特徴を適切に表現できた2mに決定している。
【0117】
図17は任意の検索範囲における樹木高のグリッドデータDdiを距離と高さからなる軸にプロットしたものである。また、図17の黒点は0.5m間隔のグリッドデータDdiを示す(2m範囲は図示せず)。
【0118】
つまり、図17は着目する標本地点から任意半径の範囲で一方向を見た場合の大まかな樹冠形状を表している。そして、この図17において、φ1が地上開度(地上角)であり、φ2が地下開度(地下角)である。そして、図18(a)(b)では地上開度と地下開度に挟まれる角度の2等分線と距離軸(水平軸)とで挟まれた角度を尾根谷度(φ3)と定義している。また、図18の黒点は0.5m間隔のグリッドデータDdiを示す(2m範囲は図示せず)
本形態では索範囲を2mとして、尾根谷度(φ3)を求め、尾根谷度のデータ(以下樹冠立体形状の特徴データDei(Dei:De1、De2・・・)としてファイル118に保存する(S96)。
【0119】
図19が樹木高をY軸とし距離をX軸として軌跡Aiの樹冠形状を表現した説明図である。図20が尾根谷度をY軸にし距離をX軸として軌跡Aiの樹冠の立体形状の特徴を表現した説明図である。
【0120】
つまり、図20に示すように尾根谷度で軌跡Aiの樹冠の立体形状の特徴を表現すると、図19より顕著に樹冠間の境界が現れる。図19及び図20の番号(1)〜(6)は写真から肉眼で読み取った樹冠エリアを示すものである。
【0121】
単木としての認識しやすさを向上するには、樹頂点とエッジ部分の値の差が大きいこと、樹頂点において値が同傾向を示すこと、エッジにおいて値が同傾向を示すこと等が挙げられる。図20に示すように、従来までの「高さ」データより本手法の「尾根谷度」データの方が先にあげた条件を満たしていることがわかる。これにより、樹冠ポリゴンを自動作成する際の精度向上に寄与することができる。
【0122】
図20においては、尾根谷度がマイナスの値となる点から急激に+方向にあがり、そして急激にマイナスの値となる点までの範囲が単木の樹冠部であることが分かる。
【0123】
また、図22は頂点候補と樹頂点の選定法を説明する図であり、各樹冠上部で樹木高が最も高い候補を選定することし示している。この樹木頂点の決定については詳細に後述する。
【0124】
次に、尾根谷度算出部117は、求めた尾根谷度を樹冠立体形状の特徴データDeiとしてファイル118(XYが対応させられている)に保存(図21参照)する(S96)。
【0125】
前述の地上開度は、各要素(Ddi)に対し、その要素から8方向に探索し、考慮距離内で最大傾斜角を求める。8方向それぞれの最大傾斜角の平均を、天頂からの角度で表す。なお、地上開度の値は考慮範囲に依存し、判読を行いたい対象のスケールに合わせて設定する必要がある。
【0126】
また、地下開度は各要素に対し、その要素から8方向に探索し、考慮距離内で最小傾斜角を求める。8方向それぞれの最小傾斜角の平均を、天頂からの角度で表す。地上開度と同様に、値は考慮範囲に依存し、判読を行いたい対象のスケールに合わせて設定する必要がある。
【0127】
尾根谷度は、算出された地上開度から地下開度を引き、2で割ることによって計算する。尾根地形は値がプラスになり、谷地形は値がマイナスで表現される。
【0128】
そして、図13の樹木頂点抽出処理に進む。樹木頂点抽出処理のステップS7でファイル118の樹冠立体形状の特徴データDei(De1、De2・・)に対して3×3の局所最大値フィルタ部120(3×3範囲のウインドウを用いる)を適用して、これをファイル127に保存(Dfi)する。
【0129】
ステップS78で、樹木頂点候補抽出部121が樹冠エリア((1)、(2)・・)に存在するピーク点の樹冠立体形状の特徴データDfi(図22参照)を頂点候補(以下Dgi)として抽出し、ファイル122に保存する(図23参照)。具体的にはファイル118のデータの値とファイル127の同じ座標値のデータの値が同値の場合を「1」と、他を「0」としてファイル122に定義する(図23参照)。
【0130】
ここで、局所最大フィルタ部120及び樹木頂点候補抽出部121の処理について説明を補充する。
【0131】
つまり、局所最大フィルタ部120(Local max filter20ともいう)は、ファイル118の樹冠立体形状の特徴データDei(De1、De2・・)に3×3範囲のウインドウをかけ、このウインドウ内で最大となる値をウィンドウの中央値に置き換える処理を順次行う。これらを樹冠立体形状の特徴データDfiとしてファイル127に保存する。
【0132】
そして、樹木頂点候補算出部21が樹冠立体形状の特徴データDfi(XY、尾根谷度)とファイル118のDei(XY、尾根谷度)とを比較し、同じものを頂点候補Dgiとしてファイル122に保存している。
【0133】
一方、ステップS79で樹冠上部抽出部123が「尾根谷度>0」は尾根地形を表現し、「尾根谷度<0」は谷地形を表現するといった性質を利用して、ファイル118の尾根谷度データ(樹冠立体形状の特徴データDei)に森林の状態に応じた閾値を設けることによって樹冠の上部のデータDeiを抽出し、これを樹冠上部のデータDhi(Dh1、Dh2・・・)としてファイル124に保存する(図24参照)。
【0134】
図24(a)の樹冠の上部のデータDhiは、閾値を超えるDeiを抽出したものであり、例えば番号1のエリアのデータDeiは、(Xh5、Yh5)を「1」、(Xh6、Yh6)を「1」・・(Xh10、Yh10)を「1」として示している。
【0135】
図24の(b)は図24(a)を具体的に示すものであり、閾値を超えた頂点は「1」とする。「1」が連続している範囲が樹冠上部である。
【0136】
そして、ステップS80でファイル124の中の頂点候補DhiのXhi、Yhiをポリゴン化(座標Xhi、Yhiと色情報)して表示処理部119によってラベルリング(纏まったエリアを(上部)にラベルを振る)させる(図25参照)。
【0137】
次に、ステップS81で樹木頂点決定部125は、ファイル124の樹冠の上部のデータDhi(Dh1、Dh2・・)とファイル122の頂点候補Dgi(Dg1、Dg2・・)とを重ね合わせ一致したものを仮の頂点と決定する。そして、樹冠上部のエリア内に複数の仮の頂点が存在するときは、この樹冠上部のエリア(図19、図20においては、番号1、2・・のエリア)で最も樹木高が高いものを単木の頂点として決定し、これをファイル129に保存する(Pi)。表示処理部119は決定した頂点を画面に表示する(図26参照)。すなわち、例えば、頂点候補Dgiは図27に示すように表示されるが、頂点決定された画像は図28に示すようになる。
【0138】
前述の頂点の決定について説明を補充する。例えば、図29の(a)に示すように、ファイル124に第1列目が「00110011100」、第2列目が「01111011110」、第3列目が「00110001000」、第4列目が「00000100011」という具合に頂点上部域が得られた場合に、図29(b)に示すように、「1」が隣接するまとまり(「0」が区切り)を1つの樹冠上部としてまとまり毎に通し番号を割り振っていく。
【0139】
そして、例えば、同一高の頂点が樹冠内に複数の頂点が存在することになると、一度、ファイル128のデータDQiを表示させて、オペレータによって指定させ、指定されたものを頂点Piと決定してファイル129に保存する。
【0140】
次に、尾根谷度について説明を補充する。尾根谷度の特徴としては、図30に示すようなsinカーブの地形を考えると、尾根地形は「尾根谷度>0」、谷地形は「尾根谷度<0」で表現されるとともに、中腹のところで「尾根谷度=0」となることが挙げられる。
【0141】
ここで、わかりやすくするために、理想の樹木が図30に示すような形状をしているとすると、樹頂点では「尾根谷度>0」となっており、必ず「尾根谷度=0」となる点を通過して樹冠のエッジに到達し、そこでは「尾根谷度<0」となっていると考えられる。したがって、樹冠の上部は「尾根谷度>0」で定義できると言える。
【0142】
このことを利用して、本業務では、図31に示すように樹頂点を絞り込むこととした。つまり、尾根谷度の値を利用することによって樹冠上部を抽出し、この抽出した中に存在する樹頂候補点のうち、最も樹高(DSM-DEM)が高い候補点を樹頂点として選定することとした。
【0143】
尾根谷度の閾値について説明を補充する。
【0144】
尾根谷度に閾値を設定して樹冠上部を抽出する際、図32に示すように閾値αの場合には樹木5が抽出できなくなってしまうことがわかる。一方で、閾値βの場合には樹木5と樹木6が一本として認識されてしまう。このように、閾値によって抽出される樹頂点が左右されしまう問題を抱えている。
【0145】
したがって、ここでは、樹冠上部を抽出するための最適な閾値について検討することとした。具体的には、尾根谷度の閾値を「10,15,20,25,30」の5種類に設定して、樹頂点の抽出結果が最も良いものを採用することとした。絞込み後の樹頂点の集計結果を表1に示す。
【表1】

【0146】
表1を見ると、「尾根谷度>20」での結果が最もよかったことがわかる。これと比較して「尾根谷度>10」での抽出本数が少ない理由は隣接する樹冠が一つとして認識されたためである。また、「尾根谷度>30」での抽出本数が少ない理由は、閾値を高く設定したために抽出できなかった樹冠があったためである。
【0147】
従って、樹冠上部を抽出するための尾根谷度の閾値は「20」が最適であることがわかった。樹冠上部の抽出画像は図25、絞込み後の樹頂点抽出画像は図26に示している。
【0148】
上記のようにある山林の樹冠の頂点を算出することによって、単木を特定できるので山林の資産の管理等に適用できる。例えば、出力部130がファイル129の頂点のデータPi(X、Y、Z)を出力して印刷させると、本数と高さが分かるので山林の価値等が自動的に把握できる。
【0149】
図33においては、樹木頂点を算出した後で樹冠ポリゴンを作成している。樹冠ポリゴン作成は、ステップS82で抽出された樹木頂点とファイル118の尾根谷度を用いてWetershedアリゴリズムにより、樹冠ポリゴン(図34参照)を生成する(S83、S85)。
【0150】
また、ステップS83の閾値の決定方法は下記の通りである。
【0151】
図14の写真画像のようにオルソフォト画像において任意の線(軌跡Ai)を引き、尾根谷度算出部が尾根谷度の横断図を作成し、これを表示する(図20に該当)。
【0152】
次に、この横断線のスタートからの追加距離(図20のX軸に相当)を追い、表示部のオルソ画像の樹冠と樹冠の境界を探す。
【0153】
そして、境界位置の追加距離を見て、その追加距離の尾根谷度(尾根谷度算出部が算出して表示させる)を図20から作業者が読み取る。
【0154】
この行程を繰り返し、樹冠上部が形成される尾根谷度を読み取る。
【0155】
図20の(1)では0と-50、(2)では-50と-20、(3)では-20と0、(4)では0と0、(5)では0と10、(6)では10と-10となった。
【0156】
この結果から、(1)〜(6)が分かれる尾根谷度10を閾値とする。
【0157】
閾値を0とすると(5)と(6)が一つの樹冠上部になるため、0は不採用とする。
【0158】
閾値を30とすると(2)では樹冠上部が2つ形成され、(5)が樹冠上部にならないので、これも不採用とする。よって、図20では尾根谷度10程度が閾値としてふさわしいことになる。このようにして決定した閾値を用いている。
【0159】
なお、上記実施の形態では航空写真を用いて説明したが、樹木高のグリッドデータ又はDEM、DSMにグレイスケールを割り当ててもよい。
【0160】
例えば、地上開度と地下開度の差分画像をグレイに、傾斜を赤のチャンネルにいれて、擬似カラー画像を作成することにより、尾根や山頂部分を白っぽく、また谷や窪地を黒っぽく表現し、傾斜が急な部分ほど赤く表現する。このような表現の組み合わせにより、1枚でも立体感のある画像(立体赤色化マップともいう)を用いてもよい。
【0161】
例えば、地上開度の値が40度から120度程度の範囲に収まる場合は、50度から110度をグレイスケールに対応させ、255諧調に割り当てる。つまり、尾根の部分(凸部)の部分ほど地上開度の値が大きいので、色が白くなる。
【0162】
また、本発明の第2の実施の形態は、図35に示すようなコンピュータシステムVPSによって実現するのが好ましい。VPS1は、ワークステーション、プロセッサ、マイクロコンピュータ、ロジック、レジスタ等の適宜な組み合わせからなる中央情報処理装置(CPU)と、この中央情報処理装置に必要な制御・操作情報を入力するキーボード(KB)、マウス、対話型ソフトスイッチ、外部通信チャネル等を含む情報入力部と、中央情報処理装置から出力された情報を広義な意味で表示・伝送するディスプレイ、プリンタ、外部通信チャネル等を含む情報出力部と、中央情報処理装置に読み込まれるオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等の情報が格納されたロム(ROM)と、中央情報処理装置で随時処理すべき情報及び中央情報処理装置から随時書き込まれる情報を格納するラム(RAM)等とを備える。ROM、RAMを適宜統合、細分化することは差し支えない。
【0163】
前述のアプリケーションプログラムは、本発明の第2の実施の形態の、樹木高算出部114と、尾根谷度算出部117と、表示処理部119と、局所最大フィルタ部120(Local max filterともいう)と、樹木頂点候補抽出部121と、樹冠上部抽出部123と、樹木頂点決定部125と、出力部130等である。
【0164】
本実施形態では、開度という概念を用いている。開度は当該地点が周囲に比べて地上に突き出ている程度及び地下に食い込んでいる程度を数量化したものである。つまり、地上開度は、着目する標本地点から距離Lの範囲内で見える空の広さを表しており、また地下開度は逆立ちをして地中を見渡す時、距離Lの範囲における地下の広さを表している。
【0165】
開度は距離Lと周辺地形に依存している。一般に地上開度は周囲から高く突き出ている地点ほど大きくなり、山頂や尾根では大きな値をとり窪地や谷底では小さい。逆に地下開度は地下に低く食い込んでいる地点ほど大きくなり、窪地や谷底では大きな値をとり山頂や尾根では小さい。
【0166】
また、開度図は計算距離の指定によって、地形規模に適合した情報抽出が可能であり、方向性及び局所ノイズに依存しない表示が可能である。
【0167】
つまり、尾根線及び谷線の抽出に優れており、豊富な地形・地質情報が判読できるものであり、一定範囲のDEMデータ上において、設定した当該地点Aから8方向のいずれか一方を見たときに最大頂点となる点Bを結ぶ直線L1と、水平線とがなす角度ベクトルθiを求める。この角度ベクトルの求め方を8方向に渡って実施し、これらを平均化したものを地上開度と称し、一定範囲のDEMデータ上(地表面:立体)に空気層を押し当てた立体を裏返した反転DEMデータの当該地点Aから8方向のいずれか一方を見たときに最大頂点となる点C(一番深い所に相当する)を結ぶ直線L2と、水平線とがなす角度を求める。この角度を8方向に渡って求めて平均化したのを地下開度ψiと称している。
【0168】
すなわち、地上開度は、着目点から一定距離までの範囲に含まれるDEMデータ上において、8方向毎に地形断面を生成し、それぞれの地点と着目点を結ぶ線L1の傾斜の最大値(鉛直方向から見たとき)を求める。このような処理を8方向に対して行う。傾斜の角度は天頂からの角度(平坦なら90度、尾根や山頂では90度以上、谷底や窪地では90度以下) また、地下開度は、反転DEMデータの着目点から一定距離までの範囲において、8方向毎に地形断面を生成し、それぞれの地点と着目点を結ぶ線の傾斜の最大値(地表面の立体図において鉛直方向からL2を見たときには最小値)を求める。このような処理を8方向に対して行う。
【0169】
地表面の立体図において鉛直方向からL2を見たときの角度ψiは、平坦なら90度、尾根や山頂では90度以下、谷底や窪地では90度以上である。
【0170】
つまり、地上開度と地下開度は、2つの基本地点A(iA,jA,HA)とB(iB,jB,HB)を考える。
【0171】
AとBの距離は
P = {(iA − iB)2 + (jA − jB)2}1/2 …(1)
となる。
【0172】
標高0mを基準として、標本地点のAとBの関係を示したものである。標本地点Aから標本地点Bを見た仰角θは
θ=tan-1{(HB−HA)/P}
で与えられる。θの符号は(1)HA<HB の場合には正となり、(2)HA>HB の場合には負となる。
【0173】
着目する標本地点から方位D距離Lの範囲内にある標本地点の集合を DSL と記述して、これを「着目する標本地点のD−L集合」を呼ぶことにする。ここで、
DβL :着目する標本地点の DSL の各要素に対する仰角のうちの最大値
DδL :着目する標本地点の DSL の各要素に対する仰角のうちの最小値
として、次の定義をおこなう。
【0174】
定義1:着目する標本地点のD−L集合の地上角及び地下角とは、各々
DφL =90− DβL
及び
DψL =90+ DδL
を意味するものとする。
【0175】
DφL は着目する標本地点から距離L以内で方位Dの空を見ることができる天頂角の最大値を意味している。一般に言われる地平線角とはLを無限大にした場合の地上角に相当している。また、DψL は着目する標本地点から距離L以内で方位Dの地中を見ることができる天底角の最大値を意味している。Lを増大させると、 DSL に属する標本地点の数は増加することから、 DβL に対して非減少特性を持ち、逆に DδL は非増加特性を持つ。したがって DφL 及びDψLは共にLに対して非増加特性を持つことになる。
【0176】
測量学における高角度とは、着目する標本地点を通過する水平面を基準にして定義される概念であり、θとは厳密には一致しない。また地上角及び地下角を厳密に議論しようとすれば、地球の曲率も考慮しなければならず、定義1は必ずしも正確な記述ではない。定義1はあくまでもDEMを用いて地形解析をおこなうことを前提として定義された概念である。
【0177】
地上角及び地下角は指定された方位Dについての概念であったが、これを拡張したものとして、次の定義を導入する。
【0178】
定義II:着目する標本地点の距離Lの地上開度及び地下開度とは、各々 ΦL=(0φL +45φL +90φL +135φL +180φL +225φL +270φL +315φL )/8
及び
ΨL=(0ψL +45ψL +90ψL +135ψL +180ψL +225ψL +270ψL +315ψL )/8
を意味するものとする。
【0179】
地上開度は着目する標本地点から距離Lの範囲内で見える空の広さを表しており、また地下開度は逆立ちをして地中を見渡す時、距離Lの範囲における地下の広さを表している。
【0180】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0181】
例えば、本発明の第1の実施の形態では、樹冠反射強度抽出部13が、樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)の反射強度データのラストパルスの強度Ifirstを、樹冠反射強度Ictとして抽出する例を説明したが、樹木頂点Piの代わりに、本発明の第2の実施の形態において説明した樹冠上部データ抽出部123により抽出された樹冠上部のデータDhiを用いても良い。即ち、樹冠反射強度抽出部13が、樹冠上部のデータDhiを用いて、樹冠上部付近の座標(X,Y)のラストパルスの強度Ifirstを、樹冠反射強度Ictとして抽出しても良い。
【0182】
また、本発明の第1の実施の形態では、樹冠通過強度抽出部14が、樹木頂点Piの座標(Xi,Yi)に一致、或いは最も近い座標(X,Y)の反射強度データのラストパルスの強度Ilastを、樹冠通過強度Icbとして抽出する例を説明したが、樹木頂点Piの代わりに、本発明の第2の実施の形態において説明した樹冠上部データ抽出部123により抽出された樹冠上部のデータDhiを用いても良い。即ち、冠通過強度抽出部14が、樹冠上部のデータDhiを用いて、樹冠上部付近の座標(X,Y)の反射強度データのラストパルスの強度Ilastを、樹冠通過強度Icbとして抽出しても良い。
【0183】
また、本発明の第2の実施の形態において樹木頂点の決定方法を説明したが、本発明の第1の実施の形態において用いる樹木頂点は、本発明の第2の実施の形態において説明した決定方法によるものでなくても良く、決定方法は特に限定されない。例えば、樹木頂点の特定方法としては、写真画像等の樹木の頂点を目視により特定する手法や、航空レーザー計測により取得されたデータを用いてDSMとDEMを作成し、DSMとDEMの差分をとることによって樹木高のグリッドデータを算出し、樹木高や樹木高の極大値を判別指標として樹木頂点を特定する手法を用いても良い。
【0184】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る具体的なハードウエア構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る葉面積指数算出装置の概略構成図である。
【図3】レーザー反射強度を説明する説明図である。
【図4】分光特性(反射率)のグラフである。
【図5】算出エリアを説明するための平面図である。
【図6】抽出した樹冠内部情報(レーザー反射強度)を示す表である。
【図7】算出した葉面積指数を示す表である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る葉面積指数算出方法のフローチャートである。
【図9】地盤反射強度の設定方法のフローチャートである。
【図10】樹冠反射強度の設定方法のフローチャートである。
【図11】樹冠通過強度の設定方法のフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態の樹木頂点認識装置の概略構成図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態の樹木頂点認識装置の概略動作を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施の形態の樹木頂点認識装置の尾根谷度を求める処理を説明するフローチャートである。
【図15】樹木高データDiの説明図である。
【図16】尾根谷度の算出を説明する説明図である。
【図17】尾根谷度の算出を説明する説明図である。
【図18】尾根谷度の算出を説明する説明図である。
【図19】樹木高をY軸とし距離をX軸として軌跡Aiの樹冠形状を表現した説明図である。
【図20】尾根谷度をY軸にし距離をX軸として軌跡Aiの樹冠の立体形状の特徴を表現した説明図である。
【図21】樹木高グリッドデータの説明図である。
【図22】尾根谷度による頂点候補の算出を説明する説明図である。
【図23】頂点候補Dgiの説明図である。
【図24】樹冠の上部のデータDhiの説明図である。
【図25】樹冠上部のラベリングを説明する説明図である。
【図26】決定した頂点を画面の説明図である。
【図27】頂点決定までの説明図である。
【図28】頂点決定までの説明図である。
【図29】頂点決定までの説明図である。
【図30】尾根谷度の説明図である。
【図31】尾根谷度の説明図である。
【図32】閾値と樹冠部の関係を説明する説明図である。
【図33】他の実施の形態を説明するフローチャートである。
【図34】他の実施の形態によって得られた樹冠のポリゴンを説明する説明図である。
【図35】本発明の第2の実施の形態の具体的なハードウエア構成図である。
【符号の説明】
【0186】
1…CPU
2…表示部
3…入力部
4…出力部
5…記憶装置
10…表示処理部
11…地盤反射強度抽出部
12…I0算出部
13…樹冠反射強度抽出部
14…樹冠通過強度抽出部
15…葉面積指数算出部
16…平滑フィルタ(アベレージフィルタ)
20…オルソフォト画像記憶部
21…反射強度データ記憶部
22…反射率記憶部
23…樹木頂点記憶部
24…DEM記憶部
25…閾値記憶部
26…地盤反射強度記憶部
27…入射強度記憶部
28…樹冠反射強度記憶部
29…樹冠通過強度記憶部
31…葉面積指数記憶部
110…データベース
111…データベース
112…データベース
113…表示部
114…樹木高算出部
116…平滑フィルタ
117…尾根谷度算出部
118…ファイル
119…表示処理部
120…局所最大値フィルタ
121…樹木頂点候補抽出部
122…ファイル
123…樹冠上部データ抽出部
124…ファイル
125…樹木頂点決定部
126…ファイル
127…ファイル
128…ファイル
129…ファイル
130…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空から地上へレーザーを照射し、前記地上で反射した前記レーザーの反射強度データを記憶するステップと、
地盤の反射率を記憶するステップと、
記憶した前記反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出するステップと、
記憶した前記反射強度データから、前記樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出するステップと、
記憶した前記反射強度データ及び反射率に基づいて、前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出するステップと、
記憶した前記反射強度データから、地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出するステップと、
前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、前記樹冠を通過したレーザーの反射強度、前記樹冠で反射したレーザーの反射強度、及び前記地盤で反射したレーザーの反射強度を用いて、前記樹木の葉面積指数を算出するステップ
とを含むことを特徴とする葉面積指数算出方法。
【請求項2】
前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出するステップが、
記憶した前記反射強度データから、前記地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出し、
前記地盤で反射したレーザーの反射強度を前記地盤の反射率で割って、前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の葉面積指数算出方法。
【請求項3】
前記反射強度データが、前記レーザーのファーストパルスの強度、前記レーザーのラストパルスの強度及び前記レーザーの反射地点の高さを含み、
前記地盤の高さを記憶するステップと、
特定の閾値を記憶するステップと、
前記反射地点の高さと前記地盤の高さとの差分値と前記閾値を比較するステップと、
前記比較の結果、前記差分値が前記閾値以内である前記反射強度データに含まれる前記ラストパルスの強度を、前記樹冠を通過したレーザーの反射強度として抽出するステップと、
前記比較の結果、前記差分値が前記閾値よりも小さい前記反射強度データに含まれる前記ファーストパルスの強度を、前記地盤で反射したレーザーの反射強度として抽出するステップ
とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の葉面積指数算出方法。
【請求項4】
前記地盤で反射したレーザーの反射強度を、前記樹木の樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度で割ることにより、前記反射率を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の葉面積指数算出方法。
【請求項5】
(プログラム。請求項5〜8は請求項1〜4と同じ内容です。)
コンピュータを、
上空から地上へレーザーを照射し、地上で反射したレーザーの反射強度データを記憶する手段と、
地盤の反射率を記憶する手段と、
記憶した前記反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出する手段と、
記憶した前記反射強度データから、前記樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出する手段と、
記憶した前記反射強度データ及び反射率に基づいて、前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出する手段と、
記憶した前記反射強度データから、地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出する手段と、
前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、前記樹冠を通過したレーザーの反射強度、前記樹冠で反射したレーザーの反射強度、及び前記地盤で反射したレーザーの反射強度を用いて、前記樹木の葉面積指数を算出する手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、
記憶した前記反射強度データから、前記地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出する手段と、
前記地盤で反射したレーザーの反射強度を前記地盤の反射率で割って、前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出する手段
として機能させるための請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記反射強度データが、前記レーザーのファーストパルスの強度、前記レーザーのラストパルスの強度及び前記レーザーの反射地点の高さを含み、
前記コンピュータを、
前記地盤の高さを記憶する手段と、
特定の閾値を記憶する手段と、
前記反射地点の高さと前記地盤の高さとの差分値と前記閾値を比較する手段と、
前記比較の結果、前記差分値が前記閾値以上である前記反射強度データに含まれる前記ラストパルスの強度を、前記樹冠を通過したレーザーの反射強度として抽出する手段と、
前記比較の結果、前記差分値が前記閾値よりも小さい前記反射強度データに含まれる前記ファーストパルスの強度を、前記地盤で反射したレーザーの反射強度として抽出する手段
として機能させるための請求項5又は6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、
前記地盤で反射したレーザーの反射強度を、前記樹木の樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度で割ることにより、前記反射率を算出する手段
として機能させるための請求項5〜7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
上空から地上へレーザーを照射するレーザー照射手段と、
前記地上で反射した前記レーザーの反射強度データを記憶する反射強度記憶手段と、
地盤の反射率を記憶する反射率記憶手段と、
記憶した前記反射強度データから、樹木の樹冠で反射したレーザーの反射強度を抽出し、記憶した前記反射強度データから、前記樹冠を通過して地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出し、記憶した前記反射強度データ及び反射率に基づいて、前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度を算出し、記憶した前記反射強度データから、地盤で反射したレーザーの反射強度を抽出し、前記樹冠に到達する直前のレーザーの入射強度、前記樹冠を通過したレーザーの反射強度、前記樹冠で反射したレーザーの反射強度、及び前記地盤で反射したレーザーの反射強度を用いて、前記樹木の葉面積指数を算出する演算手段と、
前記葉面積指数を出力する出力手段
とを備える葉面積指数算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図35】
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【図5】
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【図14】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図34】
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【公開番号】特開2008−111725(P2008−111725A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294820(P2006−294820)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【Fターム(参考)】