説明

蒸気タービン設備

【課題】他の設備に影響を与える事無く、減温器下流側及び温度計上流側に推奨される十分な直管長を確保可能な蒸気タービン設備を提供する。
【解決手段】蒸気タービンと、蒸気タービンから排出される蒸気を復水とする為の復水器と、非常運転時に蒸気タービンに供給される蒸気を復水器に放出するためのタービンバイパス系統と、タービンバイパス系統に設けられ復水器に放出される蒸気に注水して減温する減温器とを備える蒸気タービン設備において、復水器に放出される蒸気と注水の混合に必要な長さの減温器下流側直管部を、復水器の上部胴内に確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンと復水器で構成される蒸気タービン設備に係り、特にタービンバイパス系統からの蒸気を冷却して復水器に放出する減温器を備える蒸気タービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンと復水器で構成される蒸気タービン設備では、ボイラ等の蒸気発生装置から供給される蒸気のエネルギーによりタービンを回転させている。
【0003】
また、事故及び何らかの事情によって速やかに蒸気タービンの運転を停止しなければならない場合に備え、蒸気タービンに供給されている蒸気を即座に遮断し、本来蒸気タービンに供給される蒸気を復水器に放出するためのタービンバイパス系統を備えている。
【0004】
さらに、タービンバイパス系統からの蒸気放出時の復水器保護のために、復水器が受け入れられる蒸気の温度には制限があり、復水器に流入する蒸気温度をその制限値以下に下げるために蒸気に注水する減温器を備える。減温器においては、減温器に注水された後の蒸気温度を計測する温度計が設置され、適切な注水量に制御される。
【0005】
上記のように構成される蒸気タービン設備としては、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−18847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蒸気タービン設備において、復水器保護のために減温器に注水する水の量を適切に制御するためには、減温器において蒸気に注水を行った後の、減温後の蒸気温度を正確に計測する必要がある。
【0008】
然るに、減温器で注水が行われた後、その下流の配管内部を流れながら蒸気と注水との混合が進んでいくが、蒸気と注水を効率良く混合するためには、減温器の下流側に十分な直管長が必要である。例えば、減温器の直後に温度計を設置することは、蒸気と注水が十分に混合されていない状態での温度計測となり、計測値にばらつきが生じ、制御上好ましくない。また、温度計の上流側についても、正確な蒸気温度の計測のためには、配管内の蒸気が整流の状態で温度計測する必要が有り、蒸気の整流化のために温度計の上流側に十分な直管部を設ける必要がある。
【0009】
この点に関し、減温器の下流側及び温度計の上流側に必要な直管長の具体的な値は、各減温器メーカによって多少異なるが、例えば次のように推奨値として示されている。
1.減温器の下流側に8m以上の直管長を確保すること。
2.温度計上流に直径の10倍以上の直管長を確保すること。例えば、直径が600mmの配管であれば約6m以上。
【0010】
しかしながら、実際の蒸気タービン設備においては、その他の機器の配置や配管・ケーブルルートとの関係から、減温器・温度計の配置及び必要となる直管部のルーティングに対する自由度は低い場合が多い。
【0011】
このことは、実際のタービン建屋を想定すると理解し易い。一般的なタービン建屋は、3階構造になっており、1階に復水器の貯水タンク、2階に復水器上部胴、3階にタービンを配置することが多い。かかる配置において、タービンバイパス系統は、3階のタービン位置から2階に導かれ、2階の水平方向面内に直径1m程度の配管を長さ10m程度にわたり往復延伸させることで減温器と、その下流の直管部を確保する。しかも蒸気と注水を効率良く混合するためには、曲管部も必要とするので、2階部分の利用効率が著しく悪い。
【0012】
特許文献1の図2には、タービン入口から復水器に至るタービンバイパス系統が図示され、その間に減温器が配置されているが、実際の配置は上記のような位置関係、容量関係にある。その結果、上記推奨の直管長さを確保できずに可能な範囲で推奨値に近付けることに留め、実用上問題の無い範囲で温度計測値の誤差を許容する場合や、推奨されている直管長を確保するためにその他の機器の配置や配管・ケーブルルートといった全体計画との大掛かりな調整を行う必要があった。
【0013】
以上のことから本発明の目的は、他の設備に影響を与える事無く、減温器下流側及び温度計上流側に推奨される十分な直管長を確保可能な蒸気タービン設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、蒸気タービンと、蒸気タービンから排出される蒸気を復水とする為の復水器と、非常運転時に蒸気タービンに供給される蒸気を復水器に放出するためのタービンバイパス系統と、タービンバイパス系統に設けられ復水器に放出される蒸気に注水して減温する減温器とを備える蒸気タービン設備において、復水器に放出される蒸気と注水の混合に必要な長さの減温器下流側直管部を、復水器の上部胴内に確保する。
【0015】
なお、減温器への注水量を制御するために減温器下流側で蒸気と注水が混合されたあとの蒸気温度を計測するための温度計を備え、減温器下流側直管部の下流側に曲管部を設け、かつ曲管部から温度計までに必要な長さの温度計上流側直管部を復水器の上部胴内に配置するのがよい。
【0016】
また、減温器下流側直管部と温度計上流側直管部を復水器の上部胴内に収納し、減温器と温度計と曲管部を、復水器の上部胴外に配置するのがよい。
【0017】
また、減温器下流側直管部と温度計上流側直管部と曲管部を前記復水器の上部胴内に収納し、減温器と温度計とを復水器の上部胴外に配置するのがよい。
【0018】
また、減温器下流側直管部あるいは温度計上流側直管部を復水器の上部胴内に収納するための管通用スリーブが復水器の上部胴内に予め形成されているのがよい。
【0019】
また、減温器下流側直管部あるいは温度計上流側直管部は、復水器の長手方向に沿って復水器の上部胴内に収納されるのがよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蒸気タービン設備によれば、減温器から温度計までの配管を復水器上部胴内に通すことで、他の設備に影響を与える事無く、減温器下流側及び温度計上流側に推奨される十分な直管長を復水器上部胴内部に確保可能となり、蒸気タービン発電設備のプラント制御精度の向上と省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】蒸気タービン設備を上方から見た図。
【図2】蒸気タービン設備を図1のA−A断面で見た高さ方向の図。
【図3】蒸気タービン設備を図1のB−B断面で見た高さ方向の図。
【図4】蒸気タービン設備を上方から見た図。
【図5】蒸気タービン設備を上方から見た図。
【図6】蒸気タービン設備を図5のA−A断面で見た高さ方向の図。
【図7】蒸気タービン設備を図5のB−B断面で見た高さ方向の図。
【図8】蒸気タービン設備を上方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
蒸気タービンと復水器で構成される蒸気タービン設備を実施するに当たり、蒸気タービンと復水器を別のメーカが製造据付する場合と、一括で同一メーカが製造据付する場合がある。前者の場合に好適な実施形態を図1、図2、図3及び図4にて説明し、後者の場合に好適な実施形態を図5、図6、図7及び図8にて説明する。
【実施例】
【0023】
最初に本実施例の構成を簡単に紹介しておくと、これは蒸気タービン設備の2階の水平方向面内に確保していた減温器下流の直管部を、復水器上部胴内に収納したものである。
【0024】
図1、図2及び図3は、蒸気タービン設備において、バイパス弁3及び減温器4の下流に必要となる減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6を、復水器上部胴2に設けたスリーブ9及びスリーブ10の内部に通した後、温度計7を設置して、最終的に復水器ノズル8に接続している図である。以下詳細に説明する。
【0025】
まず、図2は、本実施例の蒸気タービン設備を高さ方向から見た図であり、3階フロアー3Fには蒸気タービン1が据えつけられている。図の位置では、高圧、低圧の各タービン、並びに発電機は同軸上に配置され、紙面奥行き方向に並べられている。
【0026】
2は、復水器であり、1階に据えつけられた復水器タンク20と、その上部の2階位置に設けられる傾斜を有する復水器上部胴21とから形成される。復水器2は、仕事を終えた蒸気を排出する低圧タービンの下部に位置づけられ、排出蒸気を復水器上部胴21の傾斜部で膨張させると共に、復水器タンク20の上部に設けられた冷却配管(図示せず)で冷却して復水とし、復水器タンク20内に貯留する。
【0027】
3は、タービンバイパス弁であり、その上部31は高圧タービン入口に、その下部32は減温器4に導かれる。減温器4からは、さらに直管部5に至る。ここで、減温器4では、タービンバイパス弁からの高温蒸気に注水することから、復水器上部胴21の外部に配置されるが、直管部5自体は復水器上部胴21内の空間を利用して配置される。また、減温器4ならびに直管部5は、2階部分の同じ高さ位置に設けられる。従って、減温器4に至るまでのタービンバイパス系統は、3階から2階に向かう高さ方向の配管となり、減温器4ならびに直管部5は、復水器2の上部空間を用いた水平方向配置の配管とできるので、2階の水平方向部分の領域を有効に使用することができる。
【0028】
なお、先にも述べたように、この事例では蒸気タービンと復水器を別のメーカが製造据付することを想定しているので、復水器2の復水器上部胴21には、予め貫通スリーブ9を形成しておき、据付現場において貫通スリーブ9内に直管部5を貫通据え付けする必要がある。
【0029】
図1は、図2の蒸気タービン設備を上方から見た図である。但し、理解を容易にするためにタービン1の図示を省略している。尚、説明が前後したが図2は、図1のA−A断面から上側を見たときの図である。
【0030】
図1によれば、タービンバイパス弁3からの配管は、復水器2の外側に設けられた減温器4を経由して復水器2の復水器上部胴21に至り、復水器上部胴21に予め設けられた貫通スリーブ9を通り、貫通スリーブ9を抜けた後で、左側の曲管部30で折り返す。さらに、折り返し後の配管は再び復水器2の復水器上部胴21に至り、復水器上部胴21に予め設けられた貫通スリーブ10を通る。貫通スリーブ10を抜けた後で、右側の曲管部31に至り、最終的に復水器入口8から、復水器内に温度の下げられた蒸気を導く。
【0031】
ここで、減温器4から左側の曲管部30に至るまでの配管5は、減温器下流側直管部であり、左側の曲管部30から右側の曲管部31に至るまでの配管6は、温度計上流側直管部である。なお、減温器4における注水制御のための温度計測点7は、温度計上流側直管部6の出口(復水器上部胴21の外側)とするのがよい。
【0032】
また、減温器下流側直管部5および温度計上流側直管部6は、長さを確保するためには、復水器上部胴21の長手方向に沿って配置されるのがよい。
【0033】
図3は、図1のB−B断面から上側を見た図であり、図2と相違するのは、減温器下流側直管部5ではなく、温度計上流側直管部6側と温度計測点7が見えている点である。
【0034】
図4は、図1において左側の曲管部30も、復水器上部胴21に収納した実施例であり、貫通スリーブを減温器下流側直管部5側と、温度計上流側直管部6側とで個別に設ける煩雑さを避け、1つの共通な貫通スリーブ90としたものである。
【0035】
減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6の長さは、温度計7で正確な蒸気温度が測定できるようにある一定の長さが推奨値として定められている。この点、図1、図2及び図3のように復水器上部胴21の内部に減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6を通すことにより、他の機器および配管等との干渉といった制約条件を受けずに減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6の布設スペースを確保することができることから、推奨長さの確保も容易に可能となり、温度計7に置ける蒸気温度精度が保証され、精度の良いプラント制御が可能となる。
【0036】
また、図1、図2及び図3のように復水器上部胴21の内部に減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6を通すことにより、従来のプラントにおいて必要だった減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6の布設スペースが不要となり、設備全体を省スペース化することができる。
【0037】
図5、図6及び図7は、それぞれ図1、図2及び図3に対応する図であり、図1、図2及び図3で説明した蒸気タービン設備において、減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6を復水器上部胴21と一体化した図である。つまり、蒸気タービンと復水器を一括で同一メーカが製造据付する場合には、当初からこれらを一体に設計構成することが可能であることから、一体としたものである。一体化したことにより、図1、図2及び図3で説明した、通常布設スペースの確保が困難である減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6を復水器上部胴21内に敷設したことによるプラント制御性の向上と省スペース化が可能となる。さらに、これに加え、減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6が復水器上部胴21にて支持されることによる減温器下流側直管部5及び温度計上流側直管部6の支持部材低減と構造の簡素化を可能とした。
【0038】
図8は、この構成において、さらに左側の曲管部30までを復水器上部胴21に収納したものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、空間を広く取ることができるので、多くの蒸気タービン設備に適用して好適である。
【符号の説明】
【0040】
1:蒸気タービン
21:復水器上部胴
3:タービンバイパス弁
4:減温器
5:減温器下流側直管部
6:温度計上流側直管部
7:温度計設置点
8:復水器入口
9:減温器下流側直管部貫通用スリーブ
10:温度計上流側直管部貫通用スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンと、該蒸気タービンから排出される蒸気を復水とする為の復水器と、非常運転時に蒸気タービンに供給される蒸気を復水器に放出するためのタービンバイパス系統と、該タービンバイパス系統に設けられ復水器に放出される蒸気に注水して減温する減温器とを備える蒸気タービン設備において、
前記復水器に放出される蒸気と注水の混合に必要な長さの減温器下流側直管部を、前記復水器の上部胴内に確保したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項2】
減温器への注水量を制御するために減温器下流側で蒸気と注水が混合されたあとの蒸気温度を計測するための温度計を備えた請求項1の蒸気タービン設備において、
前記減温器下流側直管部の下流側に曲管部を設け、かつ該曲管部から温度計までに必要な長さの温度計上流側直管部を前記復水器の上部胴内に配置したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項3】
請求項2の蒸気タービン設備において、
前記減温器下流側直管部と前記温度計上流側直管部を前記復水器の上部胴内に収納し、前記減温器と前記温度計と前記曲管部を、前記復水器の上部胴外に配置したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項4】
請求項2の蒸気タービン設備において、
前記減温器下流側直管部と前記温度計上流側直管部と前記曲管部を前記復水器の上部胴内に収納し、前記減温器と前記温度計とを前記復水器の上部胴外に配置したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の蒸気タービン設備において、
前記減温器下流側直管部あるいは前記温度計上流側直管部を前記復水器の上部胴内に収納するための管通用スリーブが前記復水器の上部胴内に予め形成されていることを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の蒸気タービン設備において、
前記減温器下流側直管部あるいは前記温度計上流側直管部は、前記復水器の長手方向に沿って前記復水器の上部胴内に収納されていることを特徴とする蒸気タービン設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−256753(P2011−256753A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130759(P2010−130759)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】