説明

蒸気原動機

【課題】タービン構造の大幅な見直しをすることなく、緊急停止時に生じる逆向きのスラスト力を抑制することができる機能を備えた蒸気原動機を提供すること。
【解決手段】蒸気によって回転駆動される容積型タービン2と、容積型タービン2に接続された給気管10および排気管11と、給気管10に取り付けられた緊急遮断弁4とを具備してなる蒸気原動機である。この蒸気原動機は、緊急遮断弁4と容積型タービン2との間の給気管10へ排気管11から分岐して接続する排気戻管12と、排気戻管12に取り付けられた第1逆止弁5と、排気管11から分岐する放気管13に取り付けられた電磁弁7とを有する。緊急遮断弁4の作動により給気側圧力が低下していったとき、第1逆止弁5が開いて、緊急遮断弁4と容積型タービン2との間の給気管10へ排気管11から蒸気が戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気エネルギーを機械的エネルギー(動力)に変換する蒸気原動機に関する。特に、容積型タービンを備える蒸気原動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な加熱源として蒸気は幅広く活用されているが、システムによっては熱利用されないまま大気放出または復水循環されている場合がある。また、様々な生産プロセスで蒸気が使用される際にも、減圧弁でその蒸気圧が制御されているため減圧時の圧力差エネルギーは有効利用されていない。本願出願人は、これらの未利用蒸気エネルギーを有効利用するため、蒸気エネルギーを機械的エネルギー(動力)として高効率で回収して発電する蒸気発電機を開発している。なお、蒸気エネルギーを機械的エネルギー(動力)として高効率で回収するために、速度型タービンではなく容積型タービンを採用している。
【0003】
ここで、蒸気エネルギーを機械的エネルギー(動力)として回収して発電する蒸気発電機に関する技術としては、いずれも速度型タービンを備える蒸気発電機に関するものではあるが、例えば、特許文献1・2に記載された技術がある。
【0004】
特許文献1には、緊急停止時に系統負荷から発電機が解列された(電気的に切り離された)ときに、小型蒸気タービン(蒸気原動機)および発電機が過回転速度になることを防止するため、タービン排気側の制御弁15を閉じて排気側圧力を高めるという技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、停止時に、ラジアルタービン(蒸気原動機)が過回転速度になることを防止するため、給気管に残留した蒸気を放風弁17から排出することで給気側圧力を低下させるという技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101489号公報
【特許文献2】特開平7−158406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように、特許文献1・2に記載された技術は、いずれも、現在普及している速度型タービンを備える蒸気発電機に関するものである。一方で、容積型タービンを備える蒸気発電機(蒸気原動機)において以下のような解決すべき課題があることが判明した。
【0008】
容積型タービンを備える蒸気原動機では、緊急停止時に、タービン上流側に設けられた緊急遮断弁が閉じると、タービンを構成するロータの慣性力によりタービンは一定時間給気を継続する。これにより、緊急遮断弁とタービンとの間の給気管内圧力は低下する。そのため、タービン前後の圧力は、通常運転時には、給気側圧力が排気側圧力よりも高くなっているが、緊急停止時には、両者の圧力が逆転し、通常運転時とは逆向きのスラスト力がロータに作用する。逆向きのスラスト力をロータが受けると、当該ロータが給気側に移動する場合があり、ロータとケーシングとが接触する可能性がある。軸受構造などを見直すことにより、ロータの給気側への移動を防止することは可能ではあろうが、タービン構造の大幅な見直しが必要になる点や、重量面・製造コスト面などから好ましくない。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、タービン構造の大幅な見直しをすることなく、緊急停止時に生じる逆向きのスラスト力を抑制することができる機能を備えた蒸気原動機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、緊急遮断弁と容積型タービンとの間の給気管とタービン下流側に位置する排気管との間を、逆止弁を介して排気戻管で連通させ、緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったときに排気側の蒸気が給気側に戻るようにすることで、タービンが過回転速度になることを防止しつつ、前記課題を解決することができた。この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、蒸気によって回転駆動される容積型タービンと、前記容積型タービンに接続された給気管および排気管と、前記給気管に取り付けられた緊急遮断弁と、前記緊急遮断弁と前記容積型タービンとの間の前記給気管へ前記排気管から分岐して接続する排気戻管と、前記排気戻管に取り付けられた自動弁と、を備え、前記緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、前記自動弁が開いて、前記緊急遮断弁と前記容積型タービンとの間の前記給気管へ前記排気管から蒸気が戻されることを特徴とする蒸気原動機である。
【0012】
この構成によると、緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、緊急遮断弁と容積型タービンとの間の給気管へ蒸気が戻されることで、給気側圧力と排気側圧力との圧力差がほとんどなくなり、逆向きのスラスト力発生を抑制することができる。
【0013】
また本発明において、前記自動弁は逆止弁であり、前記排気管から分岐する放気管に取り付けられた自動放気弁と、前記自動放気弁の開閉を制御する制御部と、をさらに備え、前記緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、前記逆止弁が開く前に、前記制御部により前記自動放気弁が開けられて、前記放気管から蒸気が排出されることが好ましい。
【0014】
ここで、排気側圧力が高い場合には、緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、給気側圧力が排気側圧力よりもまだ高い状態であっても、逆向きのスラスト力が生じることがある。
【0015】
この構成によると、逆止弁が開くよりも先に自動放気弁が開いて排気側圧力が低下することで、逆止弁が開く前に生じ得る逆向きのスラスト力発生を防止できる。
【0016】
さらに本発明において、前記容積型タービンはスクリュロータを有することが好ましい。スクリュ式によると、圧力差がそのまま回転力となるためエネルギー変換効率をより高めることができる。
【0017】
また本発明は、その第2の態様によれば、蒸気によって回転駆動される容積型タービンと、前記容積型タービンに接続された給気管および排気管と、前記給気管に取り付けられた緊急遮断弁と、前記排気管から分岐する放気管に取り付けられた自動放気弁と、前記自動放気弁の開閉を制御する制御部と、を備え、前記緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、常に給気側圧力≧排気側圧力となるように、前記制御部により前記自動放気弁が開けられて前記放気管から蒸気が排出されることを特徴とする蒸気原動機である。
【0018】
この構成によると、緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、常に給気側圧力≧排気側圧力となるように排気管内の蒸気圧がコントロールされる。これにより、逆向きのスラスト力発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、容積型タービンを備える蒸気原動機において、タービン構造の大幅な見直しをすることなく、緊急停止時に生じる逆向きのスラスト力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸気原動機を具備してなる蒸気発電機を示すブロック図である。
【図2】排気側圧力が比較的低い場合における緊急遮断弁作動時のスクリュロータ回転数、給気側圧力、および排気側圧力の挙動を示すタイムチャートである。
【図3】排気側圧力が比較的高い場合における緊急遮断弁作動時のスクリュロータ回転数、給気側圧力、および排気側圧力の挙動を示すタイムチャートである。
【図4】排気側圧力が比較的高い場合における緊急遮断弁作動時のスクリュロータ回転数、給気側圧力、および排気側圧力の挙動を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、発電機を駆動する蒸気原動機として本発明に係る蒸気原動機を例示しているが、本発明に係る蒸気原動機は、例えば圧縮機など、発電機以外の機器を駆動する原動機としても用いることができる。
【0022】
(蒸気原動機を具備してなる蒸気発電機の構成)
図1に示すように、蒸気発電機1は、容積型タービン2と、容積型タービン2に連結された発電機Gとを主要機器として具備してなる。容積型タービン2および発電機Gは、その他の付属機器(制御盤3など、詳しくは後述する)とともにユニットカバー14内に収められている。蒸気発電機1を構成する複数の機器のうち発電機Gを除く機器群で容積型タービン2を主要機器とする蒸気原動機を構成する。
【0023】
容積型タービン2は、一対のスクリュロータ8と、スクリュロータ8を収容するスクリュケーシング9とを有する。スクリュケーシング9には給気管10および排気管11が接続されている。スクリュケーシング9内へ給気管10から蒸気を流すと、蒸気は膨張しながらスクリュロータ8を通過して排気管11から出ていく。
【0024】
なお、一対のスクリュロータ8(ダブルロータ)ではなく、1本のスクリュロータ(シングルロータ)を有する容積型タービンであってもよい。本実施形態のようなスクリュ式によると、スクリュロータ前後の圧力差がそのままスクリュロータ8の回転力となるためエネルギー変換効率をより高めることができている。なお、スクリュ式以外の容積型タービンとしては、ロータリー式、スクロール式、ルーツ式などの容積型タービンを挙げることができる。
【0025】
給気管10には、緊急遮断弁4が取り付けられている。緊急遮断弁4は、電磁弁を用いることが多いが空気作動弁などであってもよい。緊急遮断弁4と容積型タービン2との間の給気管10には圧力計P1が取り付けられている。圧力計P1は、容積型タービン2の給気圧力を測定するための計器である。
【0026】
また、排気管11には、容積型タービン2の出口近くに圧力計P2が取り付けられている。圧力計P2は、容積型タービン2の排気圧力を測定するための計器である。
【0027】
ここで、圧力計P1と容積型タービン2との間の給気管10と、容積型タービン2と圧力計P2との間の排気管11との間は、排気戻管12により接続されている。また、排気戻管12には第1逆止弁5が取り付けられている。第1逆止弁5は、排気管11から給気管10へ蒸気を戻す(給気管10から排気管11へは蒸気を流さない)向きに取り付けられている。容積型タービン2の給気側圧力<容積型タービン2の排気側圧力となると、圧力差で第1逆止弁5が自動で開き、排気側の蒸気が給気側に流れる。この第1逆止弁5は、本発明に係る、排気戻管に取り付けられた自動弁に相当する。
【0028】
なお、排気戻管12において、排気管11からの分岐点は圧力計P2の下流側であってもよい。また、排気戻管12において、給気管10への接続点は圧力計P1の上流側(緊急遮断弁4と圧力計P1との間)であってもよい。
【0029】
排気管11の下流部には第2逆止弁6が取り付けられている。本実施形態では、排気管11の下流端をプロセス機器50に接続している。ここで、プロセス機器50は、蒸気を使用して例えば加熱・殺菌などをするための機器である。様々なプロセス機器50があり、すなわち、プロセス機器50で使用される蒸気圧は、例えば、0.2MPa〜0.9MPaとプロセス機器50によってその使用蒸気圧は様々である。第2逆止弁6は、プロセス機器50からの蒸気の逆流を防止するための弁である。
【0030】
また、容積型タービン2と第2逆止弁6との間の排気管11から分岐する放気管13が排気管11に設けられ、この放気管13には電磁弁7が取り付けられている。この電磁弁7は、本発明に係る自動放気弁に相当する。なお、自動放気弁として空気作動弁などを用いてもよい。
【0031】
次に、図1に点線で示したように、蒸気発電機1の制御盤3には、圧力計P1および圧力計P2からの信号が入力されている。また、緊急遮断弁4および電磁弁7には、制御盤3からの開閉信号が入力されるようにされている。なお、制御盤3は、本発明に係る制御部に相当する。
【0032】
(緊急停止時の制御)
蒸気発電機1を設置している例えば工場内で事故などが発生すると、制御盤3からの信号により、系統負荷(工場内の設備に電力を供給する自家用電力系統)から発電機Gを解列させる(電気的に切り離す)とともに、緊急遮断弁4を閉じて容積型タービン2への蒸気の供給を急ぎ停止する。緊急遮断弁4を閉じるのは、負荷がなくなることによってスクリュロータ8が過回転速度にならないようにするためである。
【0033】
以下では、通常運転時の排気側圧力が0.2MPa程度の場合と、通常運転時の排気側圧力が0.5MPa程度の場合とに分けて、緊急停止時の蒸気発電機1の制御について説明する。なお、通常運転時の給気側圧力(容積型タービン2に供給される蒸気の圧力)は、例えば、0.8MPa〜2MPa程度である。
【0034】
(排気側圧力が0.2MPa程度と比較的低い場合)
図2は、排気側圧力が0.2MPa程度と比較的低い場合における緊急遮断弁作動時のスクリュロータ回転数、給気側圧力、および排気側圧力の挙動を示すタイムチャートである。図2(a)は、排気戻管12・第1逆止弁5・電磁弁7などが設けられていない従来技術におけるタイムチャートであり、図2(b)は本実施形態の蒸気発電機1におけるタイムチャートである。図2(a)および図2(b)に示したいずれのタイムチャートにおいても時刻T1で緊急遮断弁を閉じたとしている。また、図2に示した給気側圧力は、緊急遮断弁と容積型タービンとの間の給気管内の蒸気圧力(圧力計P1で検出される)であり、排気側圧力は、容積型タービンと第2逆止弁6との間の排気管内の蒸気圧力(圧力計P2で検出される)である。
【0035】
まず、図2(a)を参照しつつ、従来技術における問題点について説明する。容積型タービンを備える蒸気原動機では、緊急停止時に、タービン上流側に設けられた緊急遮断弁を閉じると、タービンを構成するロータの慣性力によりタービンは一定時間給気を継続する。これにより、図2(a)に示したように、緊急遮断弁とタービンとの間の給気管内圧力は急低下する。そのため、タービン前後の圧力は、通常運転時には、給気側圧力が排気側圧力よりも高くなっているが、緊急停止時には、両者の圧力が逆転し、通常運転時とは逆向きのスラスト力がロータに作用する時間帯がある。逆向きのスラスト力をロータが受けると、当該ロータが給気側に移動する場合があり、ロータとケーシングとが接触する可能性がある。
【0036】
しかしながら、図2(b)に示したように、本実施形態の蒸気発電機1の場合には、緊急遮断弁4の作動により給気側圧力が低下していったとき、給気側圧力<排気側圧力となった段階で第1逆止弁5が開き、緊急遮断弁4と容積型タービン2との間の給気管10へ排気管11から蒸気が戻る。これにより、給気側圧力と排気側圧力との圧力差がほとんどなくなり、結果として逆向きのスラスト力発生を抑制することができる。すなわち、スクリュロータ8とスクリュケーシング9との接触を防止することができる。また、緊急遮断弁4と容積型タービン2との間の給気管10と排気管11との間を、第1逆止弁5を介して連通させることにより、逆向きのスラスト力発生を抑制でき、本発明によると、軸受部などタービン構造の大幅な見直しを必要としない。
【0037】
なお、前記したように、緊急遮断弁4の作動により給気側圧力が低下していったとき、給気側圧力<排気側圧力となった段階で第1逆止弁5が差圧により開くので、第1逆止弁5を外部からの信号で開にする、という制御はない。一方、第1逆止弁5(逆止弁)の代わりに電磁弁を排気戻管12に設けてもよい。この場合、例えば、給気側圧力と排気側圧力とが等しくなったタイミングで、制御盤3からの信号により上記電磁弁を開く。これにより、逆向きのスラスト力発生を抑制することができる。給気側圧力のモニタリングは圧力計P1で行い、排気側圧力のモニタリングは圧力計P2で行う。なお、信頼性(故障が少ない)という観点・制御するバルブが少なくてよいという観点などから、電磁弁よりも逆止弁を自動弁として用いることのほうが好ましい。
【0038】
(排気側圧力が0.5MPa程度と比較的高い場合)
図3は、排気側圧力が0.5MPa程度と比較的高い場合における緊急遮断弁作動時のスクリュロータ回転数、給気側圧力、および排気側圧力の挙動を示すタイムチャートである。図3(a)は、排気戻管12・第1逆止弁5・電磁弁7などが設けられていない従来技術におけるタイムチャートであり、図3(b)は本実施形態の蒸気発電機1におけるタイムチャートである。図3(a)および図3(b)に示したいずれのタイムチャートにおいても時刻T1で緊急遮断弁を閉じたとしている。なお、図2と図3との条件の相違は、排気側圧力の値のみである。
【0039】
まず、図3(a)を参照しつつ、従来技術における問題点について説明する。容積型タービンを備える蒸気原動機では、排気側圧力が高い場合に、緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、給気側圧力が排気側圧力よりもまだ高い状態であっても、逆向きのスラスト力が生じることがある。具体的には、図3(a)に示したポイントA(給気側圧力が排気側圧力よりも少し高い)で、逆向きのスラスト力が発生することがある。
【0040】
そこで、本実施形態の蒸気発電機1では、制御盤3からの信号により、緊急遮断弁4が閉じた後であって、かつ第1逆止弁5が開くよりも前に電磁弁7を開ける。そして、排気側圧力が例えば0.2MPa程度に低下したら電磁弁7を閉じる。そのときの排気側圧力の変化は、図3(b)に示した通りである。電磁弁7を開けることにより、放気管13から排気管11の蒸気が排出され排気側圧力が低下する。その後は、給気側圧力<排気側圧力となった段階で第1逆止弁5が開くことにより、給気側圧力と排気側圧力との圧力差はほとんど生じず、逆向きのスラスト力は発生しない。
【0041】
本実施形態によると、第1逆止弁5が開くよりも前に電磁弁7を開けて排気側圧力を低下させることで、第1逆止弁5が開く前に生じ得る逆向きのスラスト力発生を防止できる。
【0042】
なお、緊急遮断弁4を閉じるのと同時に電磁弁7を開けると、容積型タービン2前後の差圧が瞬間的に大きくなり、スクリュロータ8の回転速度が過回転速度になる可能性がある。緊急遮断弁4を閉じた後であって、かつ第1逆止弁5が開くよりも前に電磁弁7を開けるのは、スクリュロータ8の回転速度が過回転速度になることを防止するためでもある。排気側圧力が例えば0.2MPa程度に低下したら電磁弁7を閉じるのも、スクリュロータ8の回転速度が過回転速度になることを防止するためである。すなわち、本実施形態によると、緊急停止時に、タービン回転数を必要以上に上昇させることなく、かつ、逆向きのスラスト力の発生を防止しつつタービンを停止させることができる。
【0043】
前記したように、給気側圧力のモニタリングは圧力計P1で行い、排気側圧力のモニタリングは圧力計P2で行う。第1逆止弁5が開くよりも前に電磁弁7を開けるとは、圧力計P1による検出値と圧力計P2による検出値とが等しくなるよりも前に電磁弁7を開けることを意味する。すなわち、電磁弁7を開けるタイミングにあるか否かは、圧力計P1による検出値と圧力計P2による検出値との差で判断する。よって、圧力計P1による検出値と圧力計P2による検出値との差が所定の閾値にまで低下したら電磁弁7を開ける。
【0044】
(第1変形例)
なお、図1に示した蒸気発電機1(蒸気原動機)において、第1逆止弁5および排気戻管12を省略してもよい。この場合、緊急遮断弁4の作動により給気側圧力が低下していったとき、常に給気側圧力≧排気側圧力となるように、制御盤3からの信号で電磁弁7を開けるとともにその開度制御を行う。具体的には、例えば、圧力計P1による検出値と圧力計P2による検出値との差が所定の閾値にまで低下したら電磁弁7を開け、排気側圧力がゼロになるまで、その閾値(差圧値)を一定に維持するように電磁弁7の開度制御を行う。このときの排気側圧力などの挙動を図4に示した。
【0045】
なお、必ずしも閾値(差圧値)を一定に維持するように電磁弁7の開度制御を行わなくてもよく、所定の閾値にまで低下して電磁弁7を開けた後は、少なくとも給気側圧力≧排気側圧力の状態を維持することで逆向きのスラスト力発生を抑制することができる。上記したように、閾値(差圧値)をほぼ一定に維持することで、逆向きのスラスト力発生を抑制することができるとともに、スクリュロータ8の回転速度が過回転速度になることをより防止することができる。
【0046】
図1に示した蒸気原動機と、第1逆止弁5および排気戻管12を省略した態様の蒸気原動機(第1変形例)とは、給気側圧力≧排気側圧力の状態を維持するように構成されている、という点で共通している。
【0047】
(第2変形例)
また、図1に示した蒸気発電機1(蒸気原動機)において、放気管13および電磁弁7(自動放気弁)を省略できる場合もある。排気蒸気の使用条件が、比較的低い条件のみに限られる場合(通常運転時の排気側圧力が0.2MPa程度など比較的低い条件のみに限られる場合)、容積型タービンの構造(吸込体積、吐出体積など)によっては、放気管13および電磁弁7(自動放気弁)を省略してもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0049】
例えば、排気管11の接続先は各種のプロセス機器50に限られるものではなく、煙突などに排気管11を接続してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:蒸気発電機
2:容積型タービン(スクリュ式)
3:制御盤(制御部)
4:緊急遮断弁
5:第1逆止弁(自動弁)
7:電磁弁(自動放気弁)
8:スクリュロータ
9:スクリュケーシング
10:給気管
11:排気管
12:排気戻管
13:放気管
G:発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気によって回転駆動される容積型タービンと、
前記容積型タービンに接続された給気管および排気管と、
前記給気管に取り付けられた緊急遮断弁と、
前記緊急遮断弁と前記容積型タービンとの間の前記給気管へ前記排気管から分岐して接続する排気戻管と、
前記排気戻管に取り付けられた自動弁と、
を備え、
前記緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、前記自動弁が開いて、前記緊急遮断弁と前記容積型タービンとの間の前記給気管へ前記排気管から蒸気が戻されることを特徴とする、蒸気原動機。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気原動機において、
前記自動弁は逆止弁であり、
前記排気管から分岐する放気管に取り付けられた自動放気弁と、
前記自動放気弁の開閉を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、前記逆止弁が開く前に、前記制御部により前記自動放気弁が開けられて、前記放気管から蒸気が排出されることを特徴とする、蒸気原動機。
【請求項3】
蒸気によって回転駆動される容積型タービンと、
前記容積型タービンに接続された給気管および排気管と、
前記給気管に取り付けられた緊急遮断弁と、
前記排気管から分岐する放気管に取り付けられた自動放気弁と、
前記自動放気弁の開閉を制御する制御部と、
を備え、
前記緊急遮断弁の作動により給気側圧力が低下していったとき、常に給気側圧力≧排気側圧力となるように、前記制御部により前記自動放気弁が開けられて前記放気管から蒸気が排出されることを特徴とする、蒸気原動機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の蒸気原動機において、
前記容積型タービンはスクリュロータを有することを特徴とする、蒸気原動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236806(P2011−236806A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108628(P2010−108628)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】