説明

蒸気弁装置

【課題】高温高圧の蒸気条件で熱応力を抑制するとともに低コストに加えて安全性を向上させ、且つメンテナンスが容易な蒸気弁装置を提供する。
【解決手段】第1の蒸気弁は主流蒸気通路間に弁体を内包する第1の内側ケーシングを、第2の蒸気弁は主流蒸気通路間に弁体を内包する第2の内側ケーシングを夫々備え、該第1の内側ケーシングと第2の内側ケーシングとがシール機構を介在させて接続されるとともに、接続された第1、第2の内側ケーシングを共に内包する外側ケーシングを備え、前記内側ケーシングと外側ケーシングの間に空隙を設けて冷却用蒸気流路を形成するとともに、第1、第2の弁体は摺動自在に駆動させる弁軸を支持するブッシュを介して第1、第2の内側ケーシング及び外側ケーシングの蓋体に夫々設けられ、前記第1の蒸気弁の外側ケーシングが主流蒸気の入口部側通路に対して分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンへの蒸気の流入を制御する蒸気弁装置に関し、特に、高温高圧の蒸気条件で熱応力を抑制するとともに低コストに加えて安全性を向上させ、且つメンテナンスが容易な蒸気弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンに流入する蒸気を遮断する蒸気弁は、蒸気タービンと同様に重要な部分であって、弁を構成する耐熱材料と温度や圧力などの蒸気条件とは密接な関係がある。
従来、蒸気タービン発電プラントの高温部にはその大半に製造性や経済性に優れたフェライト系耐熱鋼が使用されている。しかし近年は、環境保全を背景とした火力発電設備の高効率化が積極的に進められ、600℃級程度の高温蒸気を利用した蒸気タービンが運転されており、このような蒸気タービンにおいてはフェライト系耐熱鋼の諸特性では要求を満足できない部品が少なからずあるため、より高温特性に優れた耐熱合金や耐熱合金鋼が使用されている場合もある。
【0003】
図3に一般的な蒸気タービンプラントの概略系統図を示す。図3において、高圧タービン50、中圧タービン52、低圧タービン54および発電機56の各軸は同一軸線上で連結され、軸系の振動に対する安定性を確保するようにしている。このような蒸気タービンプラントにおいて、ボイラ58で発生した主蒸気は主蒸気管59を通り、主蒸気止め弁(MSV)51、蒸気加減弁(GV)53を経て高圧タービン50に送られて膨張仕事を行う。その後、低温再熱管66を経て再熱器60に送られて再熱され、高温再熱管68を通り、再熱蒸気止め弁55、インターセプト弁57を経て中圧タービン52に送られる。この中圧タービン52で仕事を行った蒸気はクロスオーバー管61を通って低圧タービン54に送られる。そしてこの低圧タービン54で仕事を行った蒸気は復水器65で復水されたのち、ボイラ給水ポンプ63によってボイラ58に還流するように構成されている。
【0004】
このように構成された蒸気タービン発電プラントにおいては、再熱蒸気条件が600℃以上の高温下での運転を想定した場合は、中圧タービンロータおよび中圧タービンケーシングにも、オーステナイト系耐熱合金や耐熱合金鋼製の部品素材の使用部位が拡大することは必至である。特に、ボイラ58にて発生した蒸気が直接作用する主蒸気止め弁(MSV)51、蒸気加減弁(GV)53や再熱蒸気止め弁55、インターセプト弁57は、600℃以上、700℃以上あるいはそれを超える高温且つ高圧の蒸気が流入されるため、非常に厳しい環境下での使用となる。
よって、蒸気タービン発電プラントを起動させると、上述した主蒸気止め弁(MSV)51、蒸気加減弁(GV)53等の蒸気弁には起動前の温度が低下した状態と比較してかなりの高温且つ高圧の蒸気が供給されることになり、蒸気弁の蒸気室(弁室)が急激に加熱され、蒸気室を形成するケーシングの内面と外面の大きな温度差により熱応力が発生してしまい、ケーシングのひび割れなどの損傷が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、上記したような熱応力の発生を出来るだけ抑えるために、特許文献1(特開第2005−048639号公報)のような蒸気弁の蒸気室を外側蒸気室と内側蒸気室の二重構造とし、この間に空間を形成する発明が開示されている。詳しくは、内側ケーシングと外側ケーシングの間に空隙(外側蒸気室)を設け、圧力や温度が異なる蒸気を流すものである。この空隙に流通される蒸気により、前記内側ケーシングの内面と外面の温度勾配を減少させ、熱応力を抑えるものが知られている。
【0006】
一方、ボイラにて発生した高温且つ高圧の蒸気が直接作用する主蒸気止め弁、蒸気加減弁は一緒に用いられることが法律で定められており、例えば特許文献2(特開2004−316454号公報)に開示されるような主蒸気止め弁と蒸気加減弁とを一つのケーシングに収容させた一体型蒸気弁が従来から使用されている。
特許文献2に開示される蒸気弁は、主蒸気止め弁を主蒸気の流れの上流側に、蒸気加減弁を主蒸気止め弁の下流側にそれぞれ配置するとともに、主蒸気止め弁と蒸気加減弁とを一つあるいは共通のケーシング内に収容している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−048639号公報
【特許文献2】特開2004−316454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一体型蒸気弁は特許文献2のように従来から使用されているものの、内側ケーシングと外側ケーシングによって形成される二重構造の蒸気弁の発明が開示されている特許文献1には、その二重構造の蒸気弁の一体化構造について、何ら示されていない。
また、仮に上述した特許文献1の蒸気弁を一体化したとしても、特許文献1では、外側蒸気室に加圧冷却流体としての低温・低圧蒸気を内側蒸気室から導入するためのオリフィスが内側蒸気室の弁座近傍部に設けられており、このオリフィスにより、内側蒸気室を流れる蒸気を膨張により冷却させ、圧力で11〜13MPa、温度で540〜570度の低温・低圧蒸気として外部蒸気室に導入させているが、700度級の蒸気の場合、実際に540〜570度までオリフィスによって冷却させるのは困難であり、630〜670度程度までしか冷却できないと考えられる。650度では冷却蒸気とは呼べず、外側蒸気室を低温耐熱鋼で構成させることもできず、二重構造のメリットは著しく失われる。
一方、特許文献2に開示される一体型蒸気弁は、主流蒸気の入口部側通路と出口部側通路にフランジを有しているので蒸気弁を分解することができず、メンテナンスが困難である。また、特許文献1もフランジを有しており、内側ケーシングまで分解することができないし、蒸気弁を分解することは考慮されていない。
【0009】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、高温高圧の蒸気条件で熱応力を抑制するとともに低コストに加えて安全性を向上させ、且つメンテナンスが容易な蒸気弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる目的を達成するもので、主流蒸気の入口部側通路と出口部側通路を備え、該入口部側通路と出口部側通路を連絡する連絡通路の配置方向(連絡通路軸線方向)が前記入口部側通路と出口部側通路の配置方向に直交する方向に沿って延在し、
前記入口部側通路終端と連絡通路の始端間に弁体が位置するように、連絡通路軸線方向に沿って配置した第1の弁体を有する第1の蒸気弁と、前記連絡通路の終端と出口部側通路の始端間に弁体が位置するように、出口通路軸線方向に沿って配置した第2の弁体を有する第2の蒸気弁とを具えた蒸気弁装置において、
前記第1の蒸気弁は主流蒸気通路間に弁体を内包する第1の内側ケーシングを、前記第2の蒸気弁は主流蒸気通路間に弁体を内包する第2の内側ケーシングを夫々備え、該第1の内側ケーシングと第2の内側ケーシングとがシール機構を介在させて接続されるとともに、接続された第1、第2の内側ケーシングを共に内包する外側ケーシングを備え、
前記内側ケーシングと外側ケーシングの間に空隙を設けて冷却用蒸気流路を形成するとともに、前記第1、第2の弁体は摺動自在に駆動させる弁軸を支持するブッシュを介して第1、第2の内側ケーシング及び外側ケーシングの蓋体に夫々設けられ、
前記第1の蒸気弁の外側ケーシングが前記主流蒸気の入口部側通路に対して分離されることを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、主流蒸気通路間に弁体を内包する内側ケーシングと該内側ケーシングを内包する外側ケーシングからなる二重構造の蒸気弁同士を一体に構成することにより、前記内側ケーシングと外側ケーシングの間にある程度の圧力および温度を持った冷却蒸気を流すことができるので、蒸気通路を形成するケーシングの内面と外面の大きな温度差による熱応力を低減することができ、内側ケーシングの肉厚を薄くすることが可能になる。よって、蒸気条件が700度級の高温・高圧の環境下でも内側ケーシングの材料であるNi基合金の重量を低減させることができ、低コスト化が実現できる。
また、第1の蒸気弁の外側ケーシングが前記主流蒸気の入口部側通路に対して分離することができるので、二重構造の蒸気弁を一体に構成しているにもかかわらず分解することができ、メンテナンスが容易となる。
なお、ここでは第1、第2の蒸気弁として、主蒸気止め弁(MSV)と蒸気加減弁(GV)の他に、再熱蒸気の流入を制御する再熱蒸気止め弁とインターセプト弁も上述したような一体化構造を形成することができる。また、主流蒸気として主蒸気や再熱蒸気を用いることができる。
【0012】
また、前記第1の蒸気弁及び第2の蒸気弁において、前記弁体を摺動自在に駆動させる弁軸を支持するブッシュが前記内側ケーシングと外側ケーシングの蓋体に設けられ、前記ブッシュが内側ケーシングの蓋体と外側ケーシングの蓋体の間の空隙をもって分割され、該内側ケーシングの蓋体と外側ケーシングの蓋体が夫々独立して同一軸線方向に分離可能に構成されていることを特徴とする。
弁軸の摺動範囲を支持するブッシュが前記内側ケーシングの蓋体と外側ケーシングの蓋体の間の空隙で分割されて設けられているので、内側ケーシングによって形成される内側蒸気室から高温高圧の主流蒸気がリークしたとき、そのリーク蒸気は内側ケーシングと外側ケーシングの間の空隙により形成される冷却用蒸気流路に流れる冷却蒸気へ排出され、大気中へは排出されず安全である。
【0013】
また、前記第1の弁体を有する第1の蒸気弁において、前記第1の弁体の下流側に位置する第1の主流蒸気通路用ケーシングと、主流蒸気通路間に弁体を内包する第1の内側ケーシングとを一体化した第1のケーシング体が連絡通路軸線方向に沿って抜出可能に構成されたことを特徴とする。
さらに、前記第2の弁体を有する第2の蒸気弁において、前記第2の弁体の下流側に位置する第2の主流蒸気通路用ケーシングと、主流蒸気通路間に弁体を内包する第2の内側ケーシングとを一体化した第2のケーシング体が連絡通路軸線方向と直交する方向に沿って抜出可能に構成されたことを特徴とする。
これにより、外側ケーシングだけでなく、内側ケーシングも分離可能となる。すなわち、二重構造で一体化された蒸気弁でも分解することができ、メンテナンスが容易になる。
【0014】
前記内側ケーシングと外側ケーシングの間に空隙を設けて冷却用蒸気流路を形成するとともに、該冷却用蒸気流路のリーク部を主流蒸気の入口部側通路に設け、前記第2の蒸気弁の出口部側通路側に位置する冷却用蒸気流路止端と主流蒸気通路間の間壁に、前記第2の内側ケーシングを出口通路軸方向に摺動可能にするシール機構を介在させたことを特徴とする。
【0015】
このように、前記第2の蒸気弁の出口部側通路側に位置する冷却用蒸気流路止端と主流蒸気通路間の間壁に、前記第2の内側ケーシングを出口通路軸方向に摺動可能にするシール機構を介在させたことにより、該第2の蒸気弁の出口部側通路側にリーク部を設けることなく蒸気弁装置を形成することができる。
また、このような構成とすることにより、第2の蒸気弁の出口部側通路側に溶接部位を設けることができる。さらに、本発明の蒸気弁装置はシール性の高い溶接部位を設けることができるにも関わらず、前記第2の内側ケーシングを出口通路軸方向に摺動可能にするシール機構を介在させたことにより、該第2の内側ケーシングを分離することができる。例え、冷却用蒸気流路止端と主流蒸気通路間の間壁に介在されたシール機構から主流蒸気がリークしたとしても、それは冷却用蒸気流路に流れて主流蒸気の入口部側通路に設けられたリーク部より排出される。
【0016】
さらにまた、前記内側ケーシングと外側ケーシングの蓋体が夫々のケーシングと別体に形成されるとともに、前記蓋体を形成する耐熱合金が前記ケーシングと同一若しくは異なる種類の耐熱合金であることを特徴とする。
このように、第1、第2の蒸気弁において、前記内側ケーシングと外側ケーシングの蓋体が夫々のケーシングと別体に形成することにより、ケーシングと弁軸の設計における偏りを防止することができる。
また、蒸気条件によってケーシングとボンネットを形成する耐熱合金の選定の自由度が増し、直接高温高圧の蒸気に曝される部分にのみ限定して耐熱合金を使用することができる。すなわち、蒸気条件によって耐熱合金を選択した蒸気弁を形成することによりコストを低減することができる。
【0017】
また、前記第1の内側ケーシングと前記外側ケーシングとの間、若しくは前記第2の内側ケーシングと前記外側ケーシングとの間の少なくともいずれか一方に、各々の弁軸の半径方向に対し摺動可能な位置決め機構を少なくとも3箇所配置させたことを特徴とする。
これにより、蒸気の温度差や圧力差により、前記内側ケーシングと外側ケーシングに変形が生じても、前記内側ケーシングとの同心を保つことができるので、各々のケーシングに分割されて配置されたブッシュの同心を保つことができる。
【0018】
また、前記冷却用蒸気流路を流通する冷却蒸気は、主流蒸気とは別系統から供給されることを特徴とする。
このように、本発明における蒸気弁はケーシングにかかる熱応力を抑制してタービン停止過程の強制急冷、若しくは起動前のウォーミング時に、第1、第2の内側ケーシングの内面を急激な温度変化から保護することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
かかる発明によれば、主流蒸気通路間に弁体を内包する内側ケーシングと該内側ケーシングを内包する外側ケーシングからなる二重構造の蒸気弁同士を一体に構成することにより、前記内側ケーシングと外側ケーシングの間にある程度の圧力および温度を持った冷却蒸気を流すことができるので、蒸気通路を形成するケーシングの内面と外面の大きな温度差による熱応力を低減することができ、内側ケーシングの肉厚を薄くすることが可能になる。よって、蒸気条件が700度級の高温・高圧の環境下でも内側ケーシングの材料であるNi基合金の重量を低減させることができ、低コスト化が実現できる。
また、弁軸の摺動範囲を支持するブッシュが前記内側ケーシングの蓋体と外側ケーシングの蓋体の間の空隙で分割されて設けられているので、内側ケーシングによって形成される内側蒸気室から高温高圧の主流蒸気がリークしたとき、そのリーク蒸気は内側ケーシングと外側ケーシングの間の空隙により形成される冷却用蒸気流路に流れる冷却蒸気へ排出され、大気中へは排出されず安全である。
さらに、本発明によれば、外側ケーシングだけでなく、内側ケーシングも分離可能であるので、熱応力を低減させるとともにコストを低減させる二重構造で一体化された蒸気弁装置でも分解することができ、メンテナンスが容易になる。
さらにまた、第2の蒸気弁の出口部側通路側に溶接部位を設け、蒸気弁装置のリーク部の数を減らすことができる。さらに、シール性の高い溶接部位を設けることができるにも関わらず、第2の内側ケーシングを分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
ここで、主流蒸気として、ボイラで発生して主蒸気止め弁(MSV)と蒸気加減弁(GV)を経て高圧タービンへ送られる主蒸気や、再熱器で再熱されて再熱蒸気止め弁とインターセプト弁を経て中圧タービンへ送られる再熱蒸気が好適に用いられる。
【0021】
本実施形態で示す蒸気弁装置は、主蒸気止め弁(MSV)と蒸気加減弁(GV)の一体型蒸気弁装置であり、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る蒸気弁装置の断面図である。図1における蒸気弁装置は、蒸気タービンへの流入する蒸気を遮断する主蒸気止め弁(MSV)10と、蒸気タービン負荷に応じて蒸気流量を制御する蒸気加減弁(GV)30とが連絡通路33を介在させて一体となって構成されている。主蒸気止め弁10を全開させた後、蒸気加減弁30を開閉制御することにより、蒸気弁装置を通過する蒸気流量の制御を行い、蒸気タービンを負荷に対応させて作動させるようにしている。
なお、図1には、主流蒸気の入口部と出口部が平行な蒸気弁装置を示しているが、出口部を連絡通路軸線に対して回転させた構成でもよい。
【0022】
上述した弁のうち、主蒸気止め弁10は、弁体12を内包する内側ケーシング(第1の内側ケーシング)21と、内側ケーシング21を内包する外側ケーシング13と、弁体12を摺動自在に駆動させる弁軸16と、該弁軸16を支持するブッシュ11によって構成される。弁軸16は蒸気加減弁30との連絡通路33の軸線方向に沿って配置されている。
また、矢印Sで示される主流蒸気を導入する主流蒸気入口管18と、前記外側ケーシング13と内側ケーシング21との間に区画形成される冷却用蒸気流路(外側蒸気室)9と、矢印Cで示される冷却蒸気を主流蒸気とは別系統から冷却用蒸気流路9へ流入させる冷却蒸気入口管24とが備えられている。
【0023】
さらにまた、主流蒸気入口管18の近傍にリーク管26が設置され、冷却蒸気の漏れを回収できるようになっている
さらに、外側ケーシング13と内側ケーシング21には、シール機構が設けられており、
27はグランドパッキンを示す。また、内側ケーシング21と内側ケーシング21に設けられるボンネット(内側ボンネット20)との間に自封式のガスケット6を介在させている。
また、主蒸気止め弁10は、主流蒸気入口管側にボルト23を具備するフランジ15が設けられている。
【0024】
一方、蒸気加減弁30は、連絡通路33を介して主蒸気止め弁10の下流側に配置される。蒸気加減弁30は、弁体32を内包する内側ケーシング(第2の内側ケーシング)41と、内側ケーシング41を内包する外側ケーシング13と、弁体32を摺動自在に駆動させる弁軸36と、該弁軸36を支持するブッシュ31によって構成される。弁軸31は連絡通路33の軸線方向と直交する方向に沿って配置されている。
また、矢印Sで示される主流蒸気を排出する主流蒸気出口管38と、前記外側ケーシング13と内側ケーシング41との間に区画形成される冷却用蒸気流路(外側蒸気室)9で流通された冷却蒸気Cを排出する冷却蒸気出口管44とが設けられている。
さらに、主蒸気止め弁10と同様に、ケーシングとケーシングのボンネットの間には自封式ガスケットが設けられている。
【0025】
図1において、例えば図3に示される蒸気タービンプラントのボイラ58より主流蒸気入口管18を介して流入した蒸気は、主蒸気止め弁10の主流蒸気通路(内側蒸気室)8a内に入り、弁体12を弁座14に対して進退させることにより制御され、弁座14より上流に設置された蒸気中の異物を取り除くストレーナ28を通り、弁体12が弁座14と当接する弁体のシート面12sと弁座14との間を流れ、連絡通路33を介して蒸気加減弁30へ送られる。
その後、蒸気加減弁30へ送られた蒸気は、弁体32を弁座34に対して進退させることにより制御され、弁体32が弁座34と当接する弁体のシート面32sと弁座34との間を流れ、主流蒸気出口管38から蒸気タービンへ流れる。
なお、主蒸気止め弁10は非常時・緊急時にタービンに流入する蒸気を遮断したり、運転休止時の締め切りに用いたりするものであり、また蒸気加減弁30は通常の起動時・停止時に穏やかに蒸気流量を増減したり負荷の変動に合わせて流量を調節したりするものである。
【0026】
本実施形態では、主流蒸気通路(内側蒸気室)8a,8bと冷却用蒸気流路(外側蒸気室)9とで蒸気室を2重構造とし、冷却用蒸気流路にある程度の圧力及び温度を持った冷却蒸気(暖気用蒸気)を流すことにより、内側ケーシング21,41の肉厚を薄くすることが可能になり、低コスト化が図れる。また、前記冷却蒸気は起動前に予め流すことが可能であるので、起動時の内側ケーシング21,41の内面と外面の温度差を極力減少させることができ、起動時の熱応力を低減することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、ケーシングの蓋体である外側ボンネットと内側ボンネットは、それぞれのケーシングである外側ケーシングと内側ケーシングと別体に形成される構成とした。すなわち、主蒸気止め弁10においては、外側ボンネット22は外側ケーシング13と、内側ボンネット20は内側ケーシング21と別体に形成される。また、蒸気加減弁30においては、外側ボンネット42は外側ケーシング13と、内側ボンネット40は内側ケーシング41と別体に形成される。
このように、ボンネットをケーシングと別体にすることにより、ケーシングと弁軸の設計における偏りを低減することができる。
【0028】
さらに、上述した各ケーシングは図1に示すボルト17,19,23,37,39にてボルト締めされているので、外側ケーシングだけでなく、内側ケーシングも分離可能となり、二重構造で一体化された蒸気弁装置でも容易に分解することができる。
詳しくは例えば、主蒸気止め弁10においては、該主蒸気止め弁側の外側ケーシング13が主流蒸気通路の入口部側通路に対して、図1中のXに示されるように分離される。これにより、ボルト19により接合されていた外側ボンネット22が分離され、フランジ18を有していても分解することができる。
また、主蒸気止め弁10の弁体12の下流側に位置する連絡通路33を形成する第1の主流蒸気通路用ケーシング7と、主流蒸気通路間に弁体12を内包する第1の内側ケーシング21とを一体化した第1のケーシング体が連絡通路33の軸線方向に沿って抜き出すことができる。第1の主流蒸気通路用ケーシング7と第2の内側ケーシング41の間は摺動可能な金属シール45bでシールされているため上述したように抜き出して分離することができる。
【0029】
さらに、蒸気加減弁30の弁体32の下流側に位置する第2の主流蒸気通路用ケーシング43と、主流蒸気通路間に弁体32を内包する第2の内側ケーシング41とを一体化した第2のケーシング体が連絡通路33の軸線方向と直交する方向に沿って抜き出すことができる。第2の主流蒸気通路用ケーシング43と第2の内側ケーシング41の間は摺動可能な金属シール45aでシールされているために抜き出して分離することができる。
【0030】
なお、主流蒸気出口管38側には、摺動可能な前記金属シール45aだけでなく、外側ケーシング13を溶接する溶接部位35が設けられている。一般に溶接部位はシール機構よりも高いシール性を有してはいるものの、取り外しすることができない構造となっている。しかし、本実施形態によれば、図1のように前記第2の内側ケーシング41を出口通路軸方向に摺動可能にする金属シール45aを介在させたことにより、前記第2のケーシング体を分離することができる。すなわち、シール性を向上させるとともにケーシングの分解を可能としている。
また、冷却用蒸気流路9の止端と主流蒸気通路8bのあいだの間壁に介在された金属シール45aから主流蒸気がリークしたとしても、それは冷却用蒸気流路9に流れて主流蒸気の入口部側通路に設けられたリーク管26より排出される。
【0031】
さらに、上記構成により冷却蒸気の蒸気条件をもとにケーシングとボンネットを設計することができる。即ち、蒸気条件によってケーシングとボンネットを形成する耐熱合金の選定することができ、例えば、内側は主流蒸気の700℃に対応できるインコネルとし、外側は500℃〜600℃に対応できるCr鋼とすることができる。
【0032】
また、主蒸気止め弁10において、弁軸16を円滑に摺動させる支持片であるブッシュ11を、内側ケーシング21と外側ケーシング13との間の空隙を介して分割し、図1で示されるように形成する構成とした。
ブッシュを分割することにより、主流蒸気通路8aから蒸気がリークしても矢印Lのようにリーク蒸気は前記空隙から冷却用蒸気流路9へ排出され大気に排出されない。また、ブッシュ11は内側ケーシング21、外側ケーシング13にそれぞれ設けられているので、シール機構が不要になる。
【0033】
また、蒸気加減弁30についても同様に、弁軸36を円滑に摺動させる支持片であるブッシュ31を、内側ケーシング41と外側ケーシング13との間の空隙を介して分割して形成した。
ブッシュを分割することにより、主流蒸気通路8bから蒸気がリークしても矢印Lのようにリーク蒸気は前記空隙から冷却用蒸気流路9へ排出され大気に排出されない。
なお、ブッシュ11,31はボンネットと同様に、蒸気条件によって耐熱合金の選定をすることができ、特に外側に位置するブッシュに関してはNi基合金ではなくCr鋼を用いることができるので、コストを低減することができる。
【0034】
次に、図2を用いて本実施形態で用いられる位置決め機構について説明する。
図2は図1中の軸線Xで分離される断面の概略図を示し、本実施形態に係る位置決め機構の構成例を示している。また、図1で示されているものと同一の構成については、同一符号を付している。
図1に示す29,49は本実施形態に係る位置決め機構である。図2では主蒸気止め弁10における位置決め機構29について説明する。図2に示されるように外側ケーシング13の内側に内側ケーシング21が配置され、内側ケーシング21は位置決め機構29によって位置決めされている。また、位置決め機構29は内側ケーシング21の外周側に取り付けられた突起部29aと外側ケーシング13の内周側に取り付けられた保持部29b,29cからなり、突起部29aが保持部29b,29cによって挟まれ、円周方向の移動を制限しつつ、半径方向には摺動可能になっている。
位置決め機構29は、外側ケーシング13と内側ケーシング21の間の円周方向に少なくとも3箇所配置されている。これにより、外側ケーシング13や内側ケーシング21に蒸気の温度差や圧力差による変形が生じても、外側ケーシング13や内側ケーシング21の同心を保つことができるとともに、分割されたブッシュ11の同心を保つことができる。
なお、位置決め機構29において、突起部29aが外側ケーシング13の内周側に取り付けられ、保持部29b,29cが内側ケーシング21の外周側に取り付けられていてもよく、特に限定されるものではない。
また、蒸気加減弁30の位置決め機構49についても同様であるのでその説明は省略する。
【0035】
最後に、本実施形態ではケーシングやボンネット、ブッシュだけでなく、主蒸気止め弁10や蒸気加減弁30内に設置されるストレーナ、弁体、弁座および弁軸についても、従来より使用されている耐熱合金若しくは例えば9Cr−1MoNbV鋼のようなフェライト系耐熱鋼、高温特性に優れたオーステナイト系耐熱鋼、あるいはインコネル系のNi基合金を用いて構成されている。このような材質は物理的使用条件と経済的設備条件とから選択的に使用することができ、よって安価な蒸気弁を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、高温高圧の蒸気条件で熱応力を抑制するとともに低コストに加えて安全性を向上させ、且つメンテナンスが容易な蒸気弁装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る蒸気弁装置の断面図である。
【図2】図1中の軸線Xで分離される断面の概略を示す図である。
【図3】従来の蒸気タービンプラントの概略系統図である。
【符号の説明】
【0038】
8a、8b 主流蒸気通路(内側蒸気室)
9 冷却用蒸気流路(外側蒸気室)
10 主蒸気止め弁
11 ブッシュ
12 弁体(第1の弁体)
13 外側ケーシング
16 弁軸
18 主流蒸気入口管
21 内側ケーシング(第1の内側ケーシング)
26 リーク管
29、49 位置決め機構
30 蒸気加減弁
31 ブッシュ
32 弁体(第2の弁体)
33 連絡通路
36 弁軸
35 溶接部位
38 主流蒸気出口管
41 内側ケーシング(第2の内側ケーシング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流蒸気の入口部側通路と出口部側通路を備え、該入口部側通路と出口部側通路を連絡する連絡通路の配置方向(連絡通路軸線方向)が前記入口部側通路と出口部側通路の配置方向に直交する方向に沿って延在し、
前記入口部側通路終端と連絡通路の始端間に弁体が位置するように、連絡通路軸線方向に沿って配置した第1の弁体を有する第1の蒸気弁と、
前記連絡通路の終端と出口部側通路の始端間に弁体が位置するように、出口通路軸線方向に沿って配置した第2の弁体を有する第2の蒸気弁とを具えた蒸気弁装置において、
前記第1の蒸気弁は主流蒸気通路間に弁体を内包する第1の内側ケーシングを、前記第2の蒸気弁は主流蒸気通路間に弁体を内包する第2の内側ケーシングを夫々備え、該第1の内側ケーシングと第2の内側ケーシングとがシール機構を介在させて接続されるとともに、接続された第1、第2の内側ケーシングを共に内包する外側ケーシングを備え、
前記内側ケーシングと外側ケーシングの間に空隙を設けて冷却用蒸気流路を形成するとともに、前記第1、第2の弁体は摺動自在に駆動させる弁軸を支持するブッシュを介して第1、第2の内側ケーシング及び外側ケーシングの蓋体に夫々設けられ、
前記第1の蒸気弁の外側ケーシングが前記主流蒸気の入口部側通路に対して分離されることを特徴とする蒸気弁装置。
【請求項2】
前記第1の蒸気弁及び第2の蒸気弁において、前記弁体を摺動自在に駆動させる弁軸を支持するブッシュが前記内側ケーシングと外側ケーシングの蓋体に設けられ、前記ブッシュが内側ケーシングの蓋体と外側ケーシングの蓋体の間の空隙をもって分割され、該内側ケーシングの蓋体と外側ケーシングの蓋体が夫々独立して同一軸線方向に分離可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸気弁装置。
【請求項3】
前記第1の弁体を有する第1の蒸気弁において、前記第1の弁体の下流側に位置する第1の主流蒸気通路用ケーシングと、主流蒸気通路間に弁体を内包する第1の内側ケーシングとを一体化した第1のケーシング体が連絡通路軸線方向に沿って抜出可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の蒸気弁装置。
【請求項4】
前記第2の弁体を有する第2の蒸気弁において、前記第2の弁体の下流側に位置する第2の主流蒸気通路用ケーシングと、主流蒸気通路間に弁体を内包する第2の内側ケーシングとを一体化した第2のケーシング体が連絡通路軸線方向と直交する方向に沿って抜出可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載の蒸気弁装置。
【請求項5】
前記内側ケーシングと外側ケーシングの間に空隙を設けて冷却用蒸気流路を形成するとともに、該冷却用蒸気流路のリーク部を主流蒸気の入口部側通路に設け、前記第2の蒸気弁の出口部側通路側に位置する冷却用蒸気流路止端と主流蒸気通路間の間壁に、前記第2の内側ケーシングを出口通路軸方向に摺動可能にするシール機構を介在させたことを特徴とする請求項1記載の蒸気弁装置。
【請求項6】
前記内側ケーシングと外側ケーシングの蓋体が夫々のケーシングと別体に形成されるとともに、前記蓋体を形成する耐熱合金が前記ケーシングと同一若しくは異なる種類の耐熱合金であることを特徴とする請求項1若しくは2記載の蒸気弁装置。
【請求項7】
前記第1の内側ケーシングと前記外側ケーシングとの間、若しくは前記第2の内側ケーシングと前記外側ケーシングとの間の少なくともいずれか一方に、各々の弁軸の半径方向に対し摺動可能な位置決め機構を少なくとも3箇所配置させたことを特徴とする請求項1記載の蒸気弁装置。
【請求項8】
前記冷却用蒸気流路を流通する冷却蒸気は、主流蒸気とは別系統から供給されることを特徴とする請求項1記載の蒸気弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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