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蒸気滅菌用インジケータパック
説明

蒸気滅菌用インジケータパック

【課題】Bowie&Dick試験の試験結果の信頼性を高めつつ、小型化でき且つ取り扱い性を改良した簡易な蒸気滅菌用インジケータパックを提供する。
【解決手段】蒸気で発色又は変色する模様を片面に形成した滅菌確認インジケータシート22を挟むように配設した蒸気透過調節層20、20を、その両層の合計厚さが5〜25mmとなるように複数枚の蒸気透過調節用紙18を積層して形成した滅菌確認インジケータ部24を、蒸気透過調節層20よりも蒸気を透過する紙箱12内に収容しているパックであって、前記パックを載置したオートクレーブ内に蒸気を導入して134℃で3.5分間保持した際に、前記オートクレーブ内に残留空気が存在していたとき、滅菌確認インジケータシート22の模様の変色が完了した部分と変色しない部分とのが肉眼で判別できるように、最低でも密度0.75g/cmの蒸気透過調節用紙18を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療用器材を滅菌する真空式加圧蒸気滅菌器が正常に作動しているか否かの確認テストに用いる蒸気滅菌用インジケータパックに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、手術着、衣服、器具類等の医療器材を滅菌する方法の一つにオートクレーブ内での加圧蒸気滅菌法がある。この滅菌方法では、そのオートクレーブ内に空気が存在していると滅菌効果が低下する。空気の断熱効果が高いためである。特に、手術着や衣服等の被滅菌物中に空気が存在する場合には、加圧蒸気による加熱を行っても湿熱の伝達が阻害されて滅菌効果が減じられ、滅菌不良をきたすことがある。そのため、加圧蒸気滅菌法ではオートクレーブに挿入された被滅菌物中の空気を充分に排除した後に加圧蒸気を供給し、加圧蒸気による滅菌を行う方法が用いられる。
【0003】
このようにオートクレーブ内から空気を排除した際に、その後に供給される加圧蒸気の流れを阻害する残留空気等が存在せず、加圧蒸気の供給によってオートクレーブ内が十分に滅菌し得るよう正常に運転されているかを判定する方法の一つとして、ボウィーアンドディック(Bowie&Dick)試験(以下、単にBowie&Dick試験と称する)がある。この試験は、蒸気に接触すると発色又は変色するインジケータシートを挟んだパックをオートクレーブ内に挿入し、規定の操作で加圧蒸気滅菌を行ったとき、インジケータシートの発色又は変色状態により、内部に加圧蒸気の流れを阻害する残留空気等が存在せず、オートクレーブが正常に運転されていることを判定する方法である。具体的には、折り畳んだ外科用タオルを一定の寸法に束ねた中心部にインジケータシートを配置して包装し、これをオートクレーブに挿入した後、減圧したオートクレーブ内に加圧蒸気を導入して134℃で3.5分間加熱を行い、インジケータシートの発色又は変色状態を確認する方法である。インジケータシートが均一に発色した場合は、内部に加圧蒸気の流れを阻害する残留空気等が存在せず、オートクレーブが正常に運転されたと判定される。一方、インジケータシートの発色又は変色が不均一な場合は、内部に加圧蒸気の流れを阻害する残留空気等が存在し、オートクレーブが正常に運転されなかったと判定される。このため、オートクレーブ内に被滅菌物が一緒に挿入されていれば、この被滅菌物に対しては再度加熱滅菌等を施す等の措置がとられる。
【0004】
Bowie&Dick試験に用いるテスト器材として、折りたたんだ外科用タオルを一定の寸法に束ねた中心部にインジケータシートを配置して包装したものは、嵩張って取り扱い難い。このため、簡易型のテスト器材として、例えば下記特許文献1には、インジケータシートの両面に複数枚の不織布を積層して形成した多孔質本体を配設した状態で、全体を紙製のカバーシートで覆ったテストパックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−4409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲した簡易型のテスト器材であるテストパックによれば、折り畳んだ外科用タオルを用いた従来のテスト器材に比較して簡易であって、従来のテスト器材に比較して小型化でき、その取り扱い性も向上されている。しかしながら、テストパックの多孔質本体を形成する不織布は、50〜100g/mの結合剤を使用しないスパンボンドのポリプロピレンの単一シートが用いられており、薄く且つ低密度のものであるため、テストパックを用いたBowie&Dick試験の試験結果にバラツキが発生し易い。また、多孔質本体は、60〜300枚の前記単一シートを積層して形成しているため、依然としてテストパックは嵩張って取り扱い難いものになっている。しかも、このように多数枚の不織布を積層した多孔質本体では、透過できる加圧蒸気量が減少し、オートクレーブ内に加圧蒸気を導入して134℃で3.5分間の加熱保持では、インジケータシートの全面が発色又は変色できないおそれがある。
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、小型化でき且つ取り扱い性が改良された簡易型のBowie&Dick試験に用いるテスト器材であって、前記テスト器材を用いたBowie&Dick試験の試験結果のバラツキを可及的に小さくして信頼性を高めることができる蒸気滅菌用インジケータパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された蒸気滅菌用インジケータパックは、蒸気と接触して発色又は変色する模様が印刷された滅菌確認インジケータシートを両面から挟むように二層の蒸気透過調節層が配設された滅菌確認インジケータ部が、前記蒸気透過調節層よりも前記蒸気を透過する紙製の包装体内に収容されているパックであって、前記蒸気透過調節層の各々は、その両層の合計厚さが5〜25mmとなるように、複数枚の蒸気透過調節用紙が積層されて形成されており、前記パックを載置して減圧したオートクレーブ内に加圧蒸気を導入し、前記オートクレーブ内の温度を134℃に加熱して3.5分間保持した際に、前記オートクレーブ内に残留空気が存在していたとき、前記滅菌確認インジケータシートの模様のうち、前記蒸気透過調節層の各々を通過した前記加圧蒸気と接触して発色又は変色した部分と、前記加圧蒸気と接触せずに発色又は変色しない部分とが肉眼で判別できるように、前記蒸気透過調節用紙に、最低でも密度0.75g/cmのものが含まれていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された蒸気滅菌用インジケータパックは、請求項1に記載されたものであって、前記蒸気透過調節層の各々を形成する蒸気透過調節用紙が、同質で且つ同一厚さであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された蒸気滅菌用インジケータパックは、請求項1に記載されたものであって、前記蒸気透過調節用紙として、少なくとも前記滅菌確認インジケータシートと接触する前記蒸気透過調節用紙が最高でも密度0.6g/cmの低密度蒸気透過調節用紙が使用されていると共に、その余の前記蒸気透過調節用紙に、最低でも密度0.85g/cmの高密度蒸気透過調節用紙が含まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された蒸気滅菌用インジケータパックは、請求項1〜3のいずれか一項に記載されたものであって、前記滅菌確認インジケータシートの模様のうち、前記蒸気透過調節層の各々を通過した前記加圧蒸気と接触して発色又は変色が完了した部分と、前記加圧蒸気と接触せずに発色又は変色していない部分との色差(ΔE)が少なくとも10であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る蒸気滅菌用インジケータパックでは、全体が紙製である簡易型のテスト器材であるため、小型化でき且つ取り扱い性を良好とすることができる。更に、滅菌確認インジケータ部では、蒸気と接触して発色又は変色する模様が印刷された滅菌確認インジケータシートが、所定密度の蒸気透過調節用紙が積層されて所定厚さに形成された二層の蒸気透過調節層に挟まれており、蒸気透過調節用紙のバラツキによるBowie&Dick試験の試験結果のバラツキを可及的に少なくできる。しかも、Bowie&Dick試験において、蒸気滅菌用インジケータパックが載置された雰囲気内に残留空気が存在していたとき、滅菌確認インジケータシートの模様のうち、加圧蒸気と接触して発色又は変色した部分と、加圧蒸気と接触できずに発色又は変色しなかった部分とを肉眼で確実に認識できる。このため、Bowie&Dick試験の試験結果の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る蒸気滅菌用インジケータパックの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す蒸気滅菌用インジケータパック10の断面図である。
【図3】図2に示す滅菌確認インジケータシート22の正面図である。
【図4】図2に示す滅菌確認インジケータシート22が部分的に発色又は変色した状態を説明する正面図である。
【図5】紙箱形成用紙を折り畳んで形成した紙箱12を説明する斜視図である。
【図6】図1に示す蒸気滅菌用インジケータパック10の他の例を説明する正面図である。
【図7】図4に示す滅菌確認インジケータシート22において、発色又は変色した部分22aの中央部と発色又は変色しなかった部分22bとの色差(ΔE)と、蒸気透過調節用紙18の密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る蒸気滅菌用インジケータパックの一例を図1に示す。図1は、蒸気滅菌用インジケータパック10の斜視図であり、包装体としての紙箱12内には、図2に示すように滅菌確認インジケータ部24が収容されている。滅菌確認インジケータ部24は、滅菌確認インジケータシート22が両面から二層の蒸気透過調節層20,20に挟まれて形成されている。かかる滅菌確認インジケータシート22には、図3(a)に示すように星形の模様が全面に亘って描かれている。この模様は、滅菌確認インジケータシート22の全面が蒸気と接触すると、図3(b)に示すように星形の模様の全体が発色又は変色する。
【0016】
一方、滅菌確認インジケータシート22の星形の一部が蒸気と接触するものの、その他の星形の部分が蒸気と接触しなかった場合には、図4に示すように、蒸気と接触しなかった部分22aは発色又は変色していないが、蒸気と接触した部分22bは発色又は変色が完了している。図4に示す滅菌確認インジケータシート22は、発色又は変色していない部分22aは星形の中央部及びその近傍であり、発色又は変色が完了している部分22bは星形の周縁部であることを示す。かかる部分22aと22bとを肉眼で明確に区別するには、両者間の色差(ΔE)を10以上とすることが好ましい。
【0017】
滅菌確認インジケータシート22の模様は、蒸気と接触して発色又は変色する熱変色性インクをシート用紙に印刷して形成できる。この発色する熱変色性インクとしては、例えばニッケル、コバルト、銅、鉛、ビスマスの塩基性炭酸塩、水酸化物、酸化物及びステアリン酸化合物等の遷移金属化合物と、硫化亜鉛、チオ尿素、メチルチオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、2,2′−ジトリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素のいずれかの硫黄化合物及び硫黄のうちの少なくとも一種と、C.I(カラーインデックス)ディスパースレッド58、C.Iディスパースレッド88、C.Iディスパースレッド110、C.Iディスパースレッド117、C.Iディスパースレッド137、C.Iディスパースバイオレット43、C.Iディスパースブルー102等のモノアゾ染料と、クエン酸、マロン酸、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸等の有機酸及びサリチル酸カルシウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛等の有機酸の金属塩の少なくとも一種を含む組成のものを挙げることができる。また、変色する熱変色性インクとしては、例えばC.I(カラーインデックス)ディスチャージレッド88、C.Iディスチャージレッド117、C.Iディスチャージレッド137、C.Iディスチャージバイオレット43等のモノアゾ染料と、アジピン酸等の有機酸又はサリチル酸カルシウム、サリチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛等の有機酸の金属塩の少なくとも一種を含む組成のものを挙げることができる。
【0018】
ここで言う「模様」とは、文字や図形を含む意味である。また、模様は、滅菌確認インジケータシート22の片面のみに印刷されていてもよく、両面に印刷されていてもよい。かかる「模様」は、図3に示すように滅菌確認インジケータシート22の全面に印刷されておらず、例えば滅菌確認インジケータシート22の周縁部と中央部とに部分的に印刷されていてもよい。
【0019】
かかる滅菌確認インジケータシート22の両面に密着して配設されている図2に示す蒸気透過調節層20,20の各々は、その合計厚さが5〜25mm(好ましくは10〜20mm)となるように、複数枚の蒸気透過調節用紙18が積層されて形成されている。合計厚さが5mm未満の蒸気透過調節層20,20では、蒸気の透過量が過多となり易い。一方、合計厚さが25mmを超える蒸気透過調節層20,20では、蒸気の透過量が過少となり易い。蒸気透過調節層20,20の各々の厚さは、同一厚さであることが好ましいが、5〜10mm程度の差があってもよい。また、蒸気透過調節層20,20の各々を形成する蒸気透過調節用紙18としては、同質で且つ同一厚さのものが好ましく、その厚さが0.05〜0.6mmであるものが好ましい。また、蒸気透過調節層20,20の各々の形成する蒸気透過調節用紙18の枚数は、同数であることが好ましいが、5〜10枚程度の差があってもよい。
【0020】
この蒸気透過調節用紙18としては、最低でも密度が0.75g/cm(好ましくは0.75〜0.85g/cm、特に好ましくは0.80〜0.85g/cm)のものが使用されている。ここで、蒸気透過調節層20,20の各々を、密度0.75g/cm未満の蒸気透過調節用紙のみで形成した場合、蒸気透過調節層20の蒸気の透過量が過多となって、Bowie&Dick試験において、オートクレーブ内に加圧蒸気の流れを阻害する残留空気が存在しても、滅菌確認インジケータシート22の模様の略全体が発色又は変色し、或いは滅菌確認インジケータシート22の模様のうちに、発色又は変色が不均一の部分が存在していても肉眼で簡単に判別できず、オートクレーブの状態が「良好」との結果となるおそれがある。
【0021】
また、蒸気透過調節層20,20の各々を、密度0.85g/cmを超える蒸気透過調節用紙のみで形成した場合、蒸気透過調節層20の蒸気の透過量が少なくなる傾向があり、Bowie&Dick試験において、オートクレーブ内に残留空気が存在しなくても、蒸気の透過量が不均一になって、滅菌確認インジケータシート22の模様に、加圧蒸気と接触して発色又は変色が完了した部分22aと、蒸気と接触できずに発色又は変色しなかった部分22bとが肉眼で認められる傾向がある。このような場合には、少なくとも滅菌確認インジケータシート22と接触する蒸気透過調節用紙18に、最高でも密度0.6g/cmの単数又は複数枚の低密度蒸気透過調節用紙を使用し、その余の蒸気透過調節用紙18に、最低でも密度0.85g/cmの高密度蒸気透過調節用紙を含むことによって、Bowie&Dick試験において、オートクレーブ内に残留空気が存在しないときは、滅菌確認インジケータシート22の模様の全体が発色又は変色する。ここで、高密度蒸気透過調節用紙は、その厚さが薄くなる傾向があるため、低密度蒸気透過調節用紙として、高密度蒸気透過調節用紙よりも厚いものを用いることによって、少ない枚数の高密度蒸気透過調節用紙で蒸気透過調節層20,20の合計厚さを簡単に5〜25mmとすることができる。尚、この低密度蒸気透過調節用紙は、滅菌確認インジケータシート22と接触する蒸気透過調節用紙18とその近傍の蒸気透過調節用紙18に使用してもよい。
【0022】
図2に示す滅菌確認インジケータ部24を収容する紙箱12は、蒸気透過調節用紙18よりも低密度の紙によって形成されており、蒸気透過調節層20よりも加圧蒸気の透過量が大となるように形成されている。
【0023】
図1に示す紙箱12は、紙箱形成用の紙を折り畳んで図5に示すように箱状に形成した後、滅菌確認インジケータ部24を収容し、紙箱12の開口部を蓋部12aによって閉じる。更に、蓋部12aの端縁を、図1に示すようにシールテープ14によってシールする。この蓋部12aには、蓋部12aの端縁が使用済表示シールテープ14によってシールされている状態で、収容されている滅菌確認インジケータシート22を取り出すことができるように、ミシン目で切裂部16が形成されている。かかるシールテープ14としては、感熱インキをシールテープ基材に塗布したものであってもよく、感熱インキが塗布されたシールテープ14によれば、蒸気と接触したとき、図5に示すように発色して、蒸気滅菌用インジケータパック10が使用済であることを表示する。
【0024】
図1及び図2に示す蒸気滅菌用インジケータパック10を用いてBowie&Dick試験を施す。この際には、オートクレーブ内の最も滅菌条件の悪い箇所、例えば排気口近傍に蒸気滅菌用インジケータパック10を載置して密閉した後、オートクレーブ内を真空ポンプ(図示せず)によって真空状態とする。次いで、蒸気をオートクレーブ内に導入して常圧に復圧した後、真空ポンプを再起動してオートクレーブ内を真空状態とする。かかる真空−復圧の操作を三回ほど繰り返して、オートクレーブ内の空気を充分に排出する。このように、空気を充分に排出したオートクレーブ内に温度134℃の加圧蒸気を導入し、オートクレーブ内を所定圧力(0.3MPa)で3.5分間保持する。その後、オートクレーブ内の圧力を放圧して蒸気滅菌用インジケータパック10を取り出す。更に、蒸気滅菌用インジケータパック10の蓋部12aの切裂部16を切り裂いて、滅菌確認インジケータシート22を取り出して、その模様の発色又は変色を観察する。
【0025】
かかる保持時間の間に、オートクレーブ内に導入された蒸気は、紙箱12を透過し、蒸気透過調節層20,20で透過量を制御されつつ、滅菌確認インジケータシート22に到達してその模様を発色又は変色する。滅菌確認インジケータシート22の模様は、図3(b)に示すように全体が変色している場合には、3.5分間の保持時間の間に滅菌確認インジケータシート22の全面に亘って充分な蒸気が到達しており、オートクレーブ内に加圧蒸気の流れを阻害する残留空気が存在せず、オートクレーブが十分に滅菌し得るよう正常に運転されていたことを示す。
【0026】
ここで、オートクレーブ内を十分に(21.3〜2.3kPa程度)真空状態とすることができずに残存空気が過剰に存在すると、加圧蒸気を導入してオートクレーブ内を所定圧力(0.2〜0.36Mpa、好ましくは0.3MPa)で3.5分間保持した後、オートクレーブ内の圧力を放圧して取り出した滅菌確認インジケータシート22は、図4に示すように星形の模様が部分的に発色又は変色が完了しているものとなる。図4に示す発色又は変色が完了している部分22bと発色又は変色していない部分22aとは肉眼で簡単に識別できる。両者の色差(ΔE)は10以上であった。このように、図1及び図2に示す蒸気滅菌用インジケータパック10によれば、オートクレーブ内に加圧蒸気の流れを阻害する残留空気が存在し、オートクレーブ内が十分に滅菌し得る状態にないことを確実に検出できる。
【0027】
かかる蒸気滅菌用インジケータパック10を用いたBowie&Dick試験では、その保持時間内に滅菌確認インジケータシート22の面に到達する加圧蒸気量を制御でき、且つオートクレーブ内に残存空気が過剰に存在していたときには、滅菌確認インジケータシート22が部分的に発色又は変色していることが確実に判別できることが、Bowie&Dick試験の試験結果の信頼性の観点から重要である。この点、図1〜図6に示す蒸気滅菌用インジケータパック10は、蒸気透過調節層20,20を、複数枚の所定密度の蒸気透過調節用紙18を所定厚さに積層して形成している。このため、蒸気透過調節層20,20を透過する加圧蒸気の透過量を確実に制御できる。しかも、オートクレーブ内に残存空気が過剰に存在しており、滅菌確認インジケータシート22が部分的に発色又は変色したときは、発色又は変色が完了した部分と発色又は変色しなかった部分との色差が10以上であるため、オートクレーブ内に加圧蒸気による滅菌を阻害するほどの残存空気が存在し滅菌が不十分となっていることを肉眼で確実に判定でき、Bowie&Dick試験の試験結果の信頼性を高めることができる。更に、図1〜図6に示す蒸気滅菌用インジケータパック10は、全体が紙製であり、簡易であって、小型化でき且つ取り扱い性も良好である。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
滅菌確認インジケータシート22を、下記の方法で作製した。
C.Iディスパースレッド137 50重量部
フタロシアニンブルー 5重量部
フタル酸 800重量部
20%エチルセルロースのブチルセロソルブ溶液 1600重量部
ブチルセロソルブ 800重量部
これらの化合物をボールミルで3日間混練してスクリーン印刷用インキを得た。このインキを上質紙に印刷した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにてラミネートを行い滅菌確認インジケータシート22とした。
【0030】
また、蒸気透過調節用紙18として、下記表1に示す厚さ、密度の種々の紙を使用した。表1に示す紙を、滅菌確認インジケータシート22の両面側に積層して蒸気透過調節層20,20を形成して、滅菌確認インジケータ部24を形成した。この蒸気透過調節層20,20の各厚さを約6.5mmとし、両層の合計厚さを約13mmとした。次いで、紙箱12を、日本大昭和板紙株式会社製の紙(320g/m)を用いて形成した。形成した紙箱12内に滅菌確認インジケータ部24を収容し、蓋部12aで開口部を閉じ、蓋部12aの端縁をシールテープ14によってシールし、蒸気滅菌用インジケータパック10を形成した。尚、紙の透気抵抗度は、JIS P 8117に準拠して測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
形成した蒸気滅菌用インジケータパック10を用いてBowie&Dick試験を行った。先ず、オートクレーブ内の排気口近傍に形成した蒸気滅菌用インジケータパック10を載置して密閉した後、オートクレーブ内を真空ポンプによって16.3kPaの真空状態とした。次いで、蒸気をオートクレーブ内に導入して常圧に復圧した後、真空ポンプを再起動してオートクレーブ内を真空状態とした。かかる真空−復圧の操作を三回ほど繰り返して、オートクレーブ内の残留空気を充分に排出した。このように、残留空気を充分に排出したオートクレーブ内に温度134℃の蒸気を導入し、オートクレーブ内を所定圧力(0.3MPa)で3.5分間保持した。その後、更に、蒸気滅菌用インジケータパック10の蓋部12aの切裂部16を切り裂いて、滅菌確認インジケータシート22を紙箱12から取り出した。滅菌確認インジケータシート22の模様は、全体として変色していた。
【0033】
(実施例2及び比較例1)
比較のため、残留空気の無い状況と、故意に空気が残留した状況とで実施した。実施例1において、残留空気を充分に排出したオートクレーブ内に温度134℃の蒸気を導入すると共に、空気をオートクレーブのチャンバー容量(0.196m)に対して大気圧換算で380ml(チャンバー容量に対して0.2vol%)の空気を故意に導入した。オートクレーブ内を所定圧力(0.3MPa)で3.5分間保持した。その後、更に、蒸気滅菌用インジケータパック10の蓋部12aの切裂部16を切り裂いて、模様が部分的に変色している滅菌確認インジケータシート22を紙箱12から取り出した。取り出した滅菌確認インジケータシート22の模様の変色が完了している周辺部と変色していない中央部との色差(ΔE)を色彩色差計(コニカミノルタ株式会社製 色彩色差計 CR−321)で測定し、その結果を図7に示す。図7に示すように、蒸気透過調節用紙18の密度と色差(ΔE)とは、相関係数Rを0.9622とする強い正の相関を示している。滅菌確認インジケータシート22の模様の変色が完了している部分と模様が変色していない部分とを肉眼で明確に認識できるのは、両者の色差(ΔE)が10以上のものであり、密度が0.75g/cm以上の蒸気透過調節用紙18を用いた水準のものであった。他方、密度が0.75g/cm未満の蒸気透過調節用紙18を用いた水準のものは、滅菌確認インジケータシート22の模様の変色が完了している部分と模様が変色していない部分とを肉眼で認識することは困難であった。一方、空気を故意に導入しないと、滅菌確認インジケータシート22の模様は、全体として変色していた。
【0034】
(実施例3及び比較例2)
比較のため、残留空気の無い状況と、故意に空気が残留した状況とで実施した。実施例1において、滅菌確認インジケータシート22の両面に、密度0.5g/cmで厚さ1mmの低高密度蒸気透過調節用紙を1枚配し、その上に密度0.92g/cmで厚さ0.49mmの高密度蒸気透過調節用紙を11枚積層して蒸気透過調節層20を形成した。蒸気透過調節層20,20の合計厚さは約13mmであった。次いで、実施例1と同様にして蒸気滅菌用インジケータパック10を形成した。
【0035】
形成した蒸気滅菌用インジケータパック10を用いて、実施例1と同様にしてBowie&Dick試験を行ったところ、滅菌確認インジケータシート22の模様は全体として変色していた。
【0036】
更に、実施例2及び比較例1と同様にして、残留空気を充分に排出したオートクレーブ内にオートクレーブ内に温度134℃の蒸気を導入すると共に、空気を導入したところ、滅菌確認インジケータシート22の模様は部分的に変色していることを肉眼で明確に確認できた。一方、空気を故意に導入しないと、滅菌確認インジケータシート22の模様は、全体として変色していた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る蒸気滅菌用インジケータパックは、簡易型であるため、小型化でき且つ取り扱い性を向上できる。しかも、簡易型の蒸気滅菌用インジケータパックを用いたBowie&Dick試験の試験結果の信頼性を向上でき、被滅菌物の滅菌品質の向上に寄与できる。
【符号の説明】
【0038】
10は蒸気滅菌用インジケータパック、12は紙箱、12aは蓋部、14はシールテープ、16は切裂部、18は蒸気透過調節用紙、20は蒸気透過調節層、22は滅菌確認インジケータシート、22aは発色又は変色しない部分、22bは発色又は変色が完了した部分、24は滅菌確認インジケータ部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気と接触して発色又は変色する模様が印刷された滅菌確認インジケータシートを両面から挟むように二層の蒸気透過調節層が配設された滅菌確認インジケータ部が、前記蒸気透過調節層よりも前記蒸気を透過する紙製の包装体内に収容されているパックであって、
前記蒸気透過調節層の各々は、その両層の合計厚さが5〜25mmとなるように、複数枚の蒸気透過調節用紙が積層されて形成されており、
前記パックを載置して減圧したオートクレーブ内に加圧蒸気を導入し、前記オートクレーブ内の温度を134℃に加熱して3.5分間保持した際に、前記オートクレーブ内に残留空気が存在していたとき、前記滅菌確認インジケータシートの模様のうち、前記蒸気透過調節層の各々を通過した前記加圧蒸気と接触して発色又は変色した部分と、前記加圧蒸気と接触せずに発色又は変色しない部分とが肉眼で判別できるように、前記蒸気透過調節用紙に、最低でも密度0.75g/cmのものが含まれていることを特徴とする蒸気滅菌用インジケータパック。
【請求項2】
前記蒸気透過調節層の各々を形成する蒸気透過調節用紙が、同質で且つ同一厚さであることを特徴とする請求項1に記載の蒸気滅菌用インジケータパック。
【請求項3】
前記蒸気透過調節用紙として、少なくとも前記滅菌確認インジケータシートと接触する前記蒸気透過調節用紙が最高でも密度0.6g/cmの低密度蒸気透過調節用紙が使用されていると共に、その余の前記蒸気透過調節用紙に、最低でも密度0.85g/cmの高密度蒸気透過調節用紙が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気滅菌用インジケータパック。
【請求項4】
前記滅菌確認インジケータシートの模様のうち、前記蒸気透過調節層の各々を通過した前記加圧蒸気と接触して発色又は変色が完了した部分と、前記加圧蒸気と接触せずに発色又は変色しない部分との色差(ΔE)が少なくとも10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蒸気滅菌用インジケータパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94363(P2013−94363A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238875(P2011−238875)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【特許番号】特許第5048863号(P5048863)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】