説明

蒸気発生機能付高周波調理器

【課題】加熱効率を向上させて調理時間の短縮を図ることのできる蒸気発生機能付高周波調理器を提供する。
【解決手段】加熱室の被加熱物取出口を開閉するドアと、前記加熱室のドアとは反対側の奥側底面に配設された水溜凹所を有する蒸発皿を加熱することで蒸気を発生する蒸気発生部41と、前記加熱室に供給する高周波を発生するマグネトロンと、前記マグネトロンからの前記高周波を前記加熱室に放射する回転アンテナ32、33とを備え、前記回転アンテナを設置した空間のドア側に高周波反射部材34a、34bを設けた構成としてある。これにより、回転アンテナ32、33からドア側に向けて放射される高周波の一部は高周波反射部材34a、34bによって加熱室奥側に反射され、ドア側部分に放射される高周波が少なくなり、レッドスポットの虞が容易に回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生機能付高周波調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蒸気発生機能付高周波調理器は、図8に示すように、被加熱物を収容する加熱室100に、高周波と水蒸気との少なくともいずれかを供給して被加熱物を加熱処理するものであり、高周波を発生する高周波放射手段102としてのマグネトロン103と、加熱室101内で水蒸気を発生する蒸気発生部104と、加熱室101の上方に配置された上部加熱ヒータ105と、加熱室101内の空気を撹搾・循環させる循環ファン106と、加熱室101内を循環する空気を加熱するコンベクションヒータ107とを備えている。マグネトロン103は、例えば加熱室101の下側の空問に配置されており、マグネトロン103から発生したマイクロ波を受ける位置には電波放射手段としての回転アンテナ108が設けられている。そして、マグネトロン103からのマイクロ波を、回転アンテナ108に照射することにより、高周波を加熱室101内に放射している。なお、加熱室101の中間高さ位置には、加熱室101を上下に分割する仕切板としてのトレイ109が着脱可能に設けられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−66137号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前述した特許文献1に記載されているような従来の蒸気発生機能付高周波調理器においては、加熱室の101内の奥部に上記発生部104が設けてある関係から回転アンテナ108の位置は加熱室のセンターから前面側、すなわちドアで開閉される被加熱物取出口側に偏って設けられることになり、回転アンテナ108から放射される高周波によって被加熱物取出口側のドア内面部でレッドスポットが生じやすい傾向にあった。特に前記回転アンテナ108を電波指向性の強い部位を持つタイプにして局所加熱もできるようにした場合にはこの電波指向性の強い部位がドア側を向いたときにレッドスポットが生じやすくなる。
【0004】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ドア側でのレッドスポットの虞を少なくして安全な蒸気発生機能付高周波調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の蒸気発生機能付高周波調理器は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室の被加熱物取出口を開閉するドアと、前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、前記加熱室に供給する高周波を発生するマグネトロンと、前記マグネトロンからの前記高周波を前記加熱室に放射する回転アンテナとを備え、前記上記発生部の蒸発皿を前記ドアとは反対側の加熱室内奥側底面に配設するとともに、前記回転アンテナは前記蒸発皿より手前側に配置し、かつ、当該回転アンテナの前記ドア側に高周波反射部材を設けた構成としてある。
【0006】
この構成により、回転アンテナからドア側に向けて放射される高周波の一部は高周波反射部材によって加熱室奥側に反射され、ドア側部分に放射される高周波が少なくなり、レッドスポットの虞が容易に回避できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、加熱室のドア側とは反対側の加熱室奥部に蒸気発生部を有して回転アンテナ
がドア側に偏って設けられたものであってもドア側のレッドスポットを容易に回避することができ、安全な蒸気発生機能付高周波調理器が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室の被加熱物取出口を開閉するドアと、前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、前記加熱室に供給する高周波を発生するマグネトロンと、前記マグネトロンからの前記高周波を前記加熱室に放射する回転アンテナとを備え、前記上記発生部の蒸発皿を前記ドアとは反対側の加熱室内奥側底面に配設するとともに、前記回転アンテナは前記蒸発皿より手前側に配置し、かつ、当該回転アンテナの前記ドア側に高周波反射部材を設けた構成としてあり、回転アンテナからドア側に向けて放射される高周波の一部は高周波反射部材によって加熱室奥側に反射され、ドア側部分に放射される高周波が少なくなり、レッドスポットの虞が容易に回避できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明における回転アンテナに電波指向性の強い部位を設け、この電波指向性の強い部位を所定部分に向けて局所集中加熱を可能としたものであり、加熱室内の被加熱物を均一或は局所集中加熱が可能となる。
【0010】
第3の発明は、第1、第2発明の加熱室は横長形状としてその横長方向に沿って二つの回転アンテナを設けた構成としてあり、横長形状の加熱室であっても被加熱物を均一に加熱することができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態の加熱調理器について、図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施形態1にかかる蒸気発生機能付高周波調理器の斜視図、図2は同調理器の内部を示す斜視図、図3は同調理器の内部を示す断面図、図4は同赤外線センサの取付部を示す断面図、図5は図4中V方向から見た赤外線センサの正面図、図6は同調理器の高周波放射部の一形態を示す斜視図、図7は同反射板の拡大斜視図、図8は同調理器のドアを後方から見た分解斜視図、図9は従来の蒸気発生機能付高周波調理器の斜視図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、加熱調理器としての蒸気発生装置付加熱調理器10は、前面が開口し内部に被加熱物Mを収納する横長形状の加熱室11を有する矩形箱状の本体12と、本体12の開口を開閉するドア20を有している。図2および図3に示すように、加熱室11には、加熱室11内の空気を撹拌・循環させる循環ファン13と、加熱室11内を循環する空気を加熱するコンベクションヒータ14と、加熱室11の側壁11cに設けられ加熱室11内の温度を検出する赤外線センサ15が設けられている。加熱室11の底板11aには凹部11bが設けられており、この凹部11bには高周波(マイクロ波)を放射する高周波放射部30が設けられている。この凹部11bの上は、通常、板で覆われているので、高周波放射部30は隠されている。また、底板11aにおける凹部11bの奥側には、蒸気発生部40が設けられている。
【0014】
加熱室11は、加熱室11の奥部に設けられている仕切板16によって仕切られて、本体12の後壁12aとの間に空間17が設けられており、この空間17に循環ファン13およびコンベクションヒータ14が設けられている。仕切板16には、中央に複数の吸気用通風孔16aが設けられており、仕切板16の周縁部には複数の送風用通風孔16bが設けられている。従って、循環ファン13によって、吸気用通風孔16aから加熱室11の空気を吸い込んでコンベクションヒータ14によって加熱し、加熱された空気を送風用通風孔16bから加熱室11に送り込むことにより、加熱室11内を加熱できるようになっている。
【0015】
図2および図4に示すように、加熱室11の右側の側壁11cの上部には、三角柱状の突起11dが加熱室11内に突出して設けられており、突起11dの内部に赤外線センサ15が設けられている。突起11dの下面には窓11eが切り欠かれており、赤外線センサ15からの測定光が加熱室11内に投光されるようになっている。赤外線センサ15は首振り機構15aによって首振り可能となっており、図5に示すように、調理中は窓11eを通って加熱室11に向いている(図5中実線で表示)が、調理後は首を振って、赤外線センサ15のレンズが窓11eから外れる(図5中点線で表示)ようにする。また、図2に示すように、加熱室11の左右の側壁11c、11cには、高周波調理器用のグリル皿50を支持するために、上面が水平な支持突起11fが前後方向に水平に複数段(図2では、例えば3段)設けられている。
【0016】
なお、図5に示すように、赤外線センサ15は窓11eの中心から偏心して取付けられており、赤外線センサ15の首振りを行うことによって、レンズを完全に窓11eから外すことが可能になる。これは、温度測定時以外は窓11eから外して位置させることにより蒸気Sを用いて調理するとき等に、加熱室11内の蒸気Sが赤外線センサ15のレンズに結露して、その後の調理の際の温度検出に狂いが生じるのを防止するためである。
【0017】
図2、図3および図6に示すように、高周波放射部30は、加熱室11の底板11aの下側の機械室に高周波を発生するマグネトロン31を有し、このマグネトロン31からの高周波を第1、第2回転アンテナ32、33に導く導波管31aが設けてある。また、底板11a上面の凹部11bにマグネトロン31からの高周波を放射する第1回転アンテナ32と第2回転アンテナ33が設けてある。この各アンテナはマグネトロン31からの高周波を特定の部分に強く放射する電波向性の強い部位32b、33bが設けてあり、この電波指向性の強い部位を特定部分に向けることによって局所集中加熱ができるようになっている。また、底板11aにおける凹部11bの奥側には、蒸気発生部40の蒸発皿41が設けられており、蒸発皿41の下側には蒸発皿加熱ヒータ42(図3参照)が設けられている。したがって、図6に示すように、前記各回転アンテナ32、33は加熱室の前後方向のセンターよりドア20側に偏った位置の左右方向に設けられている。
【0018】
また、凹部11bにおける第1回転アンテナ32および第2回転アンテナ33の前方(図6において下方)の近傍には、各々高周波反射部材となる反射板34a、34bが設けられている。この反射板34a、34bは、例えば反射板34a、34bをネジ止め等によって取付けることも可能である。このように、回転アンテナ32、33の前方に反射板34a、34bを設けたので、回転アンテナ32、33に当たって加熱室11の前方へ向かう高周波を反射板34a、34bによって反射して、加熱室11内部へ向かうようにしている。
【0019】
図7にドア20の内側の構造を示す。図7に示すように、ドア筐体22下部の操作部22bの後側(図7において右側)には、操作基板27a、樹脂製の基板蓋27b、アルミ製の放熱板27cが順次設けられている。また、ドア筐体22全体の後側には、電波シール板28およびドア20の内面を化粧する裏側化粧カバー29が設けられている。電波シール板28は、矩形の金属枠28aの開口に、耐熱ガラス28bを取付けたものであり、ドア筐体22の後面にネジ止めされるようになっている。そして、放熱板27cと裏側化粧カバー29との間には冷却のための空間が形成されており、ドア20の幅方向に沿って、空気を供給して冷却するようにしてある。
【0020】
上記構成において、この高周波加熱調理装器は、第1回転アンテナ32および第2回転アンテナ33の2つの回転アンテナを加熱室11の左右方向に沿って配列しているので、これらの回転アンテナ32、33を回転させることによって横長形状の加熱室であっても
高周波を加熱室11全体に均一に放射することができ、加熱効率が向上する。また、上記回転アンテナ32、33は電波指向性の強い部位32b、33b を有しているから、この電波指向性の強い部位32b、33bが調理メニューに応じて集中加熱を必要とする部分、或は赤外線センサ15によって検出した温度の低い部分に向くよう駆動すれば、これを集中的に局所加熱することができ、コンビニ弁当等の複品を効果的に加熱することができる。また、蒸発皿41を備えているから、この蒸発皿41から加熱室11内に蒸気を供給すれば蒸気加熱調理が単独或は高周波加熱と併せて可能となる。
【0021】
さて、このような高周波加熱調理装器において前記回転アンテナ32、33のドア20側には高周波反射部材となる反射板34a、34bが設けてあるから、回転アンテナ32、33からドア側に向けて放射される高周波の一部は反射されて加熱室内部側へと向かうことになる。これによって加熱室11の奥部に蒸発皿があって加熱室のドア側に回転アンテナ32、33が偏って配置されていてもドア内面部分でレッドスポットが発生するのを防止することができる。特に電波指向性の強い部位32a、33aを持った回転アンテナ32、33を採用したものであって、この電波指向性の強い部位32a、33aがドア側を向いたときであっても確実にレッドスポットを防止することができ、均一加熱、局所集中加熱を実現しつつ安全な調理器を提供することができる。
【0022】
なお、本発明の加熱調理器は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明にかかる蒸気発生機能付高周波調理器は、回転アンテナからドア側に向けて放射される高周波の一部が高周波反射部材によって加熱室奥側に反射され、ドア側部分に放射される高周波が少なくなり、レッドスポットの虞が容易に回避でき、蒸気加熱調理もできる安全な蒸気発生機能付高周波調理器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1にかかる蒸気発生機能付高周波調理器の斜視図
【図2】同調理器の内部を示す斜視図
【図3】同調理器の内部を示す断面図
【図4】同赤外線センサの取付部を示す断面図
【図5】図4中V方向から見た赤外線センサの正面図
【図6】同高周波放射部の一形態を示す斜視図
【図7】ドアを後方から見た分解斜視図
【図8】従来の蒸気発生機能付高周波調理器を示す斜視図
【符号の説明】
【0025】
10 蒸気発生機能付高周波調理器
11 加熱室
11a 底板(底面)
31 マグネトロン
32 第1回転アンテナ
33 第2回転アンテナ
32b、33b 電波指向性の強い部位
34a、34b 高周波反射部材(反射板)
40 蒸気発生部
41 蒸発皿
M 被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室と、前記加熱室の被加熱物取出口を開閉するドアと、前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、前記加熱室に供給する高周波を発生するマグネトロンと、前記マグネトロンからの前記高周波を前記加熱室に放射する回転アンテナとを備え、前記上記発生部の蒸発皿を前記ドアとは反対側の加熱室内奥側底面に配設するとともに、前記回転アンテナは前記蒸発皿より手前側に配置し、かつ、当該回転アンテナの前記ドア側に高周波反射部材を設けた蒸気発生機能付高周波調理器。
【請求項2】
回転アンテナは電波指向性の強い部位を有し、この電波指向性の強い部位を所定部分に向けて局所集中加熱を可能とした請求項1記載の蒸気発生機能付高周波調理器。
【請求項3】
加熱室は横長形状としてその横長方向に沿って二つの回転アンテナを設けた請求項1または2記載の蒸気発生機能付高周波調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−281222(P2008−281222A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123199(P2007−123199)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】