説明

蒸発装置及びこれを用いた燃料電池システム

【課題】 所定の蒸発部位で確実にかつ連続的に蒸発させて水蒸気を安定的に供給し得る蒸発装置及びこの蒸発装置を用いた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 電池モジュールから排ガスを排出する排ガス導出流路5の途中に蒸発装置6を介装させる。排ガスを熱源として加熱される蒸発面63に対し電池モジュール外に配管した水供給管7の先端71を近接配置して、液滴にならずに水が蒸発面63に連続して移動するようにする。水供給管7を断熱材8で被覆・断熱し、水供給管内部での水の蒸発を回避させる。蒸発面63を微細な凹凸面として濡れ性を増大させる。蒸発面63で蒸発した水蒸気を水蒸気供給管64により電池モジュール内の燃料ガス供給管内の燃料ガスに混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発装置及びこれを用いた燃料電池システムに関し、特に水蒸気を安定的に発生させ得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形燃料電池システムにおいて、電池モジュールに供給過程にある燃料ガスを加熱・加湿するための加湿器を備えたものが提案されている。このものでは、加湿器として、燃料ガス流路を間に挟んで、オフガス流路を一側に、燃料電池の冷却水流路を他側に配置し、互いに境界に透湿膜を介在させて湿熱交換し得るように組み合わせて構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
又、水や炭化水素系の原燃料等の被蒸発液体を蒸発させて改質器に供給するために用いられる蒸発器として、被蒸発液体を加熱する伝熱基板の表面に溝を設けるとともに、その溝と連通する多数の孔を有する表皮を上記伝熱基板の表面に接合したものが提案されている。このものでは、溝及び孔として、毛管現象の効果が期待できる0.2〜0.3mm程度のサイズにし、溝から孔を介して伝熱面表面に薄液膜を供給して高い熱伝達率を維持して蒸発器コア温度の均一化が図られるとしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−31073号公報
【特許文献2】特開2005−233477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、固体酸化物型燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cells)においては、炭化水素系の燃料に対し水蒸気を高温状況下で反応させて水素と一酸化炭素に変換させる水蒸気改質が行われる。しかしながら、この水蒸気改質のための水蒸気の供給が不安定化すると、種々の不都合が生じることが予想される。
【0006】
例えば図6に示すように、電池モジュール200の高温環境下にあるハウジング201内に蒸発部202を配置し、この蒸発部202の内部空間に対し燃料ガス供給管203と、水(純水)の供給管204とを合流させ、高温環境下で高温に加熱された状態の蒸発部202において水を蒸発させて水蒸気を燃料ガスに混合させるという構造の場合、次のような不都合発生が予想される。
【0007】
すなわち、水の供給管204もハウジング201内において水の沸点以上の高温環境下に晒されて、蒸発部202に至る前段階においても蒸発してしまう可能性があり、供給管204及び蒸発部202において、どの部位においてどの位の量の水が蒸発しているのか不確定な状況に陥って水蒸気の供給が不連続化するおそれがある。又、蒸発部202は高温環境下において例えば200〜300℃の高温になっており、内部空間での水の蒸発の際にライデンフロスト(Leidenfrost )現象を引き起こしている可能性があり、これに起因して蒸発速度が不安定化するおそれがある。ライデンフロスト現象が生じると、水の蒸発が阻害されたり蒸発自体が不規則になったりし、蒸発や水蒸気量の不安定化を招くだけでなく、突発的・瞬間的な水の蒸発により、燃料ガス流量側の圧力損失が急激に上昇して燃料ガス流量の急激な低下を招くことになる。以上の如き燃料ガスに混合される水蒸気量の不連続化や不安定化によって、下流側への燃料ガス流量が不連続に変動したり、改質器に供給される水蒸気量が変動したりし、これにより、スチーム/カーボン比(S/C)の値の変動を招いて改質器内部の触媒を劣化(カーボン析出)させたり、セルに対する燃料ガス流量の瞬間的な低下によりセルの耐久性を損なったりする事態も生じることになる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の蒸発部位で確実にかつ連続的に蒸発させて水蒸気を安定的に供給し得る蒸発装置及びこの蒸発装置を用いた燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、蒸発装置に係る発明では、熱源により加熱される蒸発部と、この蒸発部の蒸発面に対し水を供給する水供給管とを備え、上記水供給管の先端の開口を上記蒸発面に対し近接して配置することとした(請求項1)。
【0010】
本発明の場合、水供給管の先端を蒸発面に対し近接配置しているため、先端から供給される水を表面張力により蒸発面に対し確実に移動させることが可能となり、これにより、高温の蒸発面に対し水供給管により極微流量の水を供給したとしても、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制することが可能になる。このため、蒸発面において連続的にかつ安定的に蒸発させることが可能となって、蒸発した水蒸気の連続的かつ安定的な供給が実現する。なお、ここで「熱源」としては、電気ヒータ等の他、例えば高温の排ガスを用いて排熱利用するようにしてもよい。又、「近接」とは上述の如く、水供給管の先端から供給される水を表面張力により蒸発面に対し確実に移動させ得る程度の微小間隔を限度とする近接の意であり、水供給管の先端をその一点で又は一部で蒸発面に接触させるようにしてもよい。
【0011】
本発明における水供給管を上記蒸発面からの伝熱が遮断されるよう断熱することができる(請求項2)。このようにすることにより、水供給管により供給される水が水供給管の先端以外の供給途中の段階で蒸発してしまう事態の発生を確実に回避させ得ることになり、供給された水の全量を蒸発面において蒸発させることで、より安定的な水蒸気供給が可能になる。ここで「断熱」するには、例えば断熱材で被覆することにより断熱したり、水供給管を二重管により構成して気体層により断熱したりする等の手段を採用すればよい。
【0012】
又、本発明における蒸発面を微細な凹凸面により構成することができる(請求項3)。このようにすることにより、蒸発面の濡れ性を増大させることが可能となり、これにより、ライデンフロスト現象発生の防止・抑制をより一層確実なものとすることが可能となる。これにより、水供給管により極微流量の水を供給したとしても、蒸発面における連続的にかつ安定的な蒸発がより一層確実なものとなり、蒸発した水蒸気の連続的かつ安定的な供給もより一層確実に実現させ得ることになる。
【0013】
一方、燃料電池システムに係る発明では、以上の蒸発装置を、電池モジュール内から排ガスを外部に導出する排ガス導出流路の途中において、排ガス導出流路内の排ガスを熱源として蒸発部が加熱されるように介装し、蒸発面で蒸発する水蒸気が燃料ガス供給管内の燃料ガスに混合されるように水蒸気供給管を配設することとした(請求項4)。
【0014】
本発明の場合、水供給管を電池モジュール内の高温環境下には配設せずに排ガス導出流路内に介装させているため、水供給管による水供給の途中での水の蒸発を回避させ得る一方、蒸発面を加熱するための熱源として排ガス導出流路内の排ガスを有効利用することが可能となる。この際、水供給管を断熱させた構成とすることにより、供給途中での水の蒸発をより確実に防止することが可能となる。そして、高温の蒸発面に対し水供給管により極微流量の水を供給したとしても、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制することが可能になって、蒸発面において連続的にかつ安定的に蒸発させることが可能となるため、燃料ガス供給管内の燃料ガスに対し水蒸気の連続的かつ安定的な供給が実現することになる。これにより、スチーム/カーボン比も安定的に維持され、水蒸気改質を行う改質器の触媒劣化や電池本体の耐久性低下等を招くという不都合を発生させることもない。
【0015】
この燃料電池システムにおいては、水供給管の先端を除き、水供給管を上記蒸発面からの伝熱が遮断されるよう燃料ガス供給管の内部を通して配管するようにすることができる(請求項5)。燃料ガス供給管の内部に水供給管を配置することで、燃料ガスが断熱材の役割を果たすことになり、特別な断熱材を不要にして水供給管の断熱を実現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、蒸発装置に係る発明によれば、水供給管の先端を蒸発面に対し近接配置しているため、先端から供給される水を表面張力により蒸発面に対し確実に移動させることができ、これにより、高温の蒸発面に対し水供給管により極微流量の水を供給したとしても、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制することができるようになる。このため、蒸発面において連続的にかつ安定的に蒸発させることができ、蒸発した水蒸気の連続的かつ安定的な供給を実現させることができるようになる。
【0017】
特に請求項2によれば、水供給管により供給される水が水供給管の先端以外の供給途中の段階で蒸発してしまう事態の発生を確実に回避することができるようになり、供給された水の全量を蒸発面において蒸発させることで、より安定的な水蒸気供給を実現させることができるようになる。
【0018】
又、請求項3によれば、蒸発面を微細な凹凸面により構成することで、蒸発面の濡れ性を増大させることができ、これにより、ライデンフロスト現象発生の防止・抑制をより一層確実なものとすることができる。このため、蒸発面における連続的かつ安定的な蒸発がより一層確実なものとすることができ、蒸発した水蒸気の連続的かつ安定的な供給もより一層確実に実現させることができるようになる。
【0019】
一方、燃料電池システムに係る発明によれば、水供給管を電池モジュール内の高温環境下には配設せずに排ガス導出流路内に介装させているため、水供給管による水供給の途中での水の蒸発を回避させることができる一方、蒸発面を加熱するための熱源として排ガス導出流路内の排ガスを有効利用することができる。その際、水供給管を断熱させた構成とすることにより、供給途中での水の蒸発をより確実に防止することができる。そして、高温の蒸発面に対し水供給管により極微流量の水を供給したとしても、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制することができ、蒸発面において連続的にかつ安定的に蒸発させることができ、このため、燃料ガス供給管内の燃料ガスに対し水蒸気の連続的かつ安定的な供給を実現させることができるようになる。これにより、スチーム/カーボン比も安定的に維持され、水蒸気改質を行う改質器の触媒劣化や電池本体の耐久性低下等を招くという不都合の発生も回避することができるようになる。
【0020】
この場合、特に請求項5によれば、燃料ガス供給管の内部に水供給管を配置することで、燃料ガスが断熱材の役割を果たすことになり、特別な断熱材を不要にして水供給管の断熱を実現させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の蒸発装置を用いた燃料電池システムの実施形態を示す模式図である。
【図2】図1の蒸発装置の拡大説明図である。
【図3】図3(a)は図2のA部拡大図であり、図3(b)は図2のB−B線における拡大断面説明図である。
【図4】図3(b)の部分拡大図である。
【図5】他の実施形態を示す図2対応図である。
【図6】本発明の課題を示すための燃料電池システムの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸発装置を用いた燃料電池システムを示す。この実施形態では、固体酸化物形の燃料電池システムの例を示す。同図中の符号2は電池モジュール、3は電池モジュール2を構成する電池本体、4は燃料ガス供給管、5は電池モジュール2のハウジング20内から排ガスを導出する排ガス導出流路、6はこの排ガス導出流路5の途中に配設した蒸発装置であり、蒸発装置6は排ガス導出流路5内の排ガスを熱源として水(純水)を蒸発させて燃料ガス供給管4内の燃料ガスに混合させるようになっている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0024】
電池本体3は円筒型のセル31と、改質器32と、空気用熱交換器33とを備えている。 セル31は、小径円筒形状のアノード(燃料極)311と、この外周側を覆う大径円筒形状のカソード(空気極)312とが間に電解質313を挟んだ状態で同心円状に一体化されたものであり、複数のセルが所定間隔ずつ隔てた状態で立設されてセルスタックが構成されている。つまり、カソード312が内部空間314に露出し、アノード311はカソード312等により内部空間314からは遮蔽されている。アノード311や、カソード312はいずれもNi等の金属酸化物を含有するセラミックスにより形成されたものであり、電解質313は例えばYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されたものである。なお、図1には原理的に図示した関係上1つのセル31のみを図示しているが、図示省略の複数のセルによりセルスタックとして構成されている。
【0025】
セル31のアノード311の内周面により構成される内孔315に対し、改質器32から供給された燃料ガスが下端から上端に向けて流されるようになっている。又、セル31の外周面がカソード312の外周面により構成され、空気用熱交換器33から内部空間314にカソード空気が噴出されることによりカソード312の外周面に対し供給されるようになっている。カソード312ではカソード空気の酸素が酸素イオンとなって電解質313を通り、アノード311では燃料ガスの水素と反応して水(水蒸気)を生成する一方、その際に生じた電子が回路を通してカソード312側に移動して酸素を再びイオン化するということを繰り返して発電される。内孔315に供給された燃料ガスは内孔315を上方に向けて通過する間に上記反応に利用された後、その上端から排出されるオフガスが改質器バーナ321に導かれて燃焼用の燃料として利用されるようになっている。そして、改質器バーナ321からの排ガスがハウジング20内から排ガス導出流路5を通して図外の排熱回収回路(例えば排熱回収熱交換器)に導出され、この排熱回収回路での熱回収の際に排ガス中の水分回収等により回収された水を精製して純水にした上で蒸発装置6に供給する水の一部又は全部として利用されるようになっている。又、ハウジング20内は電池本体3の側からの放熱や、上記の排ガスによって高温環境下(例えば200〜300℃)となる。
【0026】
燃料ガス供給管4は、改質器32に対し燃料ガス(例えば都市ガス13A等)を供給するために電池モジュール2のハウジング20外から内部に延ばされ、その下流端が改質器32に接続されている。ハウジング20内の燃料ガス供給管4内の燃料ガスに対し蒸発装置6の後述の水蒸気供給管64から水蒸気が供給されて混合されるようになっている。
【0027】
蒸発装置6は、図2に詳細を示すように、排ガス導出流路5の途中(ハウジング20からの出口と、図外の排熱回収回路との間)に内嵌状態で介装したものであり、蒸発装置6のケーシング61の適所(例えばケーシング61に設けた取付フランジ等)で排ガス導出流路5を構成する筒壁に対し着脱可能に固定されている。上記ケーシング61は密閉容器として形成され、その一側の内面が蒸発部62の蒸発面63により構成される一方、他側の上面には水蒸気を供給するための水蒸気供給管64の上流端が連通して接続されている。この水蒸気供給管64の下流端は、ハウジング20(図1参照)を貫通して内部に延ばされ燃料ガス供給管4内に開口するように配設されている。一方、ケーシング61には、電池モジュール2の外部に配管された水供給管7がケーシング61の外部から内部に貫通して配置され、その下流端である先端71が上記蒸発面63に近接して配置されている。
【0028】
より具体的に説明すると、蒸発面63はケーシング61の内部空間に臨んで斜め下り勾配に傾斜して露出した状態で配設され、この蒸発面63に対し水供給管7の斜めにカットされた先端71の開口が臨んで正対するように配設されている。水供給管7の先端71は、蒸発面63に対し、その開口の少なくとも一点(一部)、好ましくは最下位の一点で当接するか、あるいは、微小間隔を隔てたとしても出来るだけ近接した状態に配置されている。この近接配置における間隔は、細管(例えば内径8mmのステンレスパイプ)により構成した水供給管7に対し水を極微流量(例えば1〜6.5cc/min)で供給したとしても、例えば図3(a)に示すように、先端71から液滴とはならずに表面張力により蒸発面63に確実に移動することになる程度の微小間隔αを限度とする。これにより、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制するようにされている。
【0029】
蒸発面63の反対側となる蒸発部62の背面は排ガス導出流路5内の排ガスに曝されて受熱面となるが、さらに排ガスから効率よく集熱するために、蒸発部62の背面に対し図3(b)に示すように集熱部材65,65,…が結合されている。この集熱部材65,65,…は、例えばフィン・プレートにより構成され、排ガス導出流路5内の排ガス(例えば400〜500℃)から吸熱して蒸発部62に伝熱することにより蒸発面63を高温状態まで加熱するようになっている。又、蒸発面63の表面は微細な凹凸面631(図4参照)になるように形成されており、これにより、濡れ性を増大させて水供給管7の先端71から供給される水(図4で黒く塗りつぶした部分参照)を凹凸面631に付着させ、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制するようにされている。
【0030】
水供給管7はその外周面が断熱材(例えばグラスウール)8で被覆され、内部の水が先端71に到達するまでの間に蒸発しないようにされている。なお、水供給管7を互いに間を離した二重管により形成し、内管と外管との間の空気層により断熱させるようにしてもよい。又、断熱材8の被覆は、図例では水供給管7の先端71部位を除き全てに対し行っているが、蒸発装置6の内部において蒸発面63から高熱の影響を受ける部分に対してのみ行うようにすればよい。
【0031】
以上の蒸発装置6の場合、水供給管7をハウジング20内の高温環境下には配設しないようにして、水供給管7による水供給の途中での水の蒸発を回避させることができる一方、排ガス導出流路5内に介装しているため蒸発面63を加熱するための熱源として排ガス導出流路5内の排ガスを有効利用することができることになる。この際、断熱材8で水供給管7を被覆することで、供給途中での水の蒸発をより確実に防止することができる一方、蒸発部62に対し集熱部材65,65,…を結合せさることで上記の排ガスの熱利用をより効率的に行うことができるようになる。
【0032】
その上に、水供給管7の先端71を蒸発面63に対し近接配置しているため、先端71から供給される水を表面張力により蒸発面63に対し確実に移動させることができ、これにより、高温の蒸発面63に対し水供給管7により極微流量の水を供給したとしても、ライデンフロスト現象の発生を防止・抑制することができるようになる。加えて、蒸発面63を微細な凹凸面631により形成しているため、濡れ性を増大させることができ、これにより、上記のライデンフロスト現象発生の防止・抑制をより一層確実なものとすることができる。以上より、水供給管7により極微流量の水を供給したとしても、蒸発面63において連続的にかつ安定的に蒸発させることができ、蒸発した水蒸気を水蒸気供給管64を通して燃料ガス供給管4内の燃料ガスに対し連続的かつ安定的に供給することができるようになる。これにより、スチーム/カーボン比も安定的に維持され、改質器32の触媒劣化やセル31の耐久性低下等を招くという不都合を発生させることもない。
【0033】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、水供給管7内の供給途中での蒸発を確実に回避するために、断熱材8を被覆することで断熱するようにしているが、これに限らず、例えばハウジング20の外部に配管されている燃料ガス供給管4の内部に水供給管7を挿入し、燃料ガス供給管4内の燃料ガスによって水供給管7内の水を断熱するようにしてもよい。例えば図5に示すように、燃料ガス供給管4の内のハウジング20内に導入する前の外部燃料ガス供給管41を蒸発装置6のケーシング61内を通過させ、その先端411を水蒸気供給管66の内部に挿入して開口させる。上記のケーシング61内に通過させた外部燃料ガス供給管41の内部に水供給管7を通し、その先端71を蒸発面63近傍位置で外部燃料ガス供給管41内から突出させて蒸発面63に対し近接配置させるのである。蒸発面63で発生した水蒸気は水蒸気供給管66の内部を通って、外部燃料ガス供給管41の先端411が開口する合流部位651で燃料ガスと混合され、以後、ハウジング20内の内部燃料ガス供給管42を通して改質器32に供給されることになる。このようにすることで、断熱材8等を省略しつつも、供給途中段階での水供給管7内での水の蒸発を確実に防止することができるようになる。
【0034】
又、上記実施形態では、蒸発装置6の蒸発面63を加熱する熱源として排ガスを利用しているが、これに限らず、例えば電気ヒータを熱源とするようにしてもよい。この場合には、例えば蒸発部62の背面に電気ヒータを付設すればよい。このようにすることで、蒸発装置6を排ガス導出流路5とは全く切り離してハウジング20の外部に設置することができるようになる。あるいは、燃料電池システムとは異なるシステムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
2 電池モジュール
4 燃料ガス供給管
5 排ガス導出流路
6 蒸発装置
7 水供給管
8 断熱材
62 蒸発部
63 蒸発面
64,66 水蒸気供給管
71 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源により加熱される蒸発部と、この蒸発部の蒸発面に対し水を供給する水供給管とを備え、
上記水供給管の先端の開口が上記蒸発面に対し近接して配置されている、
ことを特徴とする蒸発装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発装置であって、
上記水供給管は上記蒸発面からの伝熱が遮断されるよう断熱されている、蒸発装置。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸発装置であって、
上記蒸発面が微細な凹凸面により構成されている、蒸発装置。
【請求項4】
燃料ガスに対し水蒸気改質を行う燃料電池システムであって、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蒸発装置が、電池モジュール内から排ガスを外部に導出する排ガス導出流路の途中において、排ガス導出流路内の排ガスを熱源として蒸発部が加熱されるように介装され、
蒸発面で蒸発する水蒸気が燃料ガス供給管内の燃料ガスに混合されるように水蒸気供給管が配設されている、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムであって、
水供給管は、上記先端を除き、上記蒸発面からの伝熱が遮断されるよう燃料ガス供給管の内部を通して配管されている、燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131141(P2011−131141A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291517(P2009−291517)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】