説明

蒸着マスク

【課題】異物および取り扱いによる被成膜基板の蒸着膜あるいは表面の損傷を発生させることのない信頼性を向上する蒸着マスクを提供する。
【解決手段】蒸着マスク2は、被成膜基板4上に蒸着するパターンに対応する開口部12が形成された蒸着マスクであって、開口部12は、被成膜基板4に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積S1に比べて被成膜基板4に対向する側のマスク面の開口面積S2が大きくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種デバイスにおける電極や配線等の金属膜パターンの形成、有機エレクトロルミネッセンス(Electro-Luminescence:以下、ELと略記する)装置における有機層等の有機膜パターンの形成等に蒸着法が用いられている。蒸着法により膜パターンを形成するには、膜パターンの形成領域に対応した開口を有する蒸着マスクを用意する。そして、被成膜基板と蒸着マスクとを位置合わせした後に、開口内に露出した部分の被成膜基板に気化させた膜材料を接触させる。これにより、膜材料が被成膜基板に開口のパターンで転写され、膜パターンが得られる。蒸着法に用いる蒸着マスクとしては、金属薄板からなるメタルマスクが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−95411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蒸着マスクと被成膜基板とが接触することにより、蒸着マスク上の異物が被成膜基板に転写されたり、接触により被成膜基板にキズが付いたりして、発光欠陥の原因となっている。
具体的には、異物および取り扱いによる被成膜基板の蒸着膜あるいは表面の損傷を中心に陰極が劣化して非点灯エリアが拡大する虞がある。
被成膜基板側に凹凸をつけて、被成膜基板と蒸着マスクとの接触状態を制御する方法もあるが、接触位置を蒸着膜から遠ざけることが難しい、EL膜をスピンコートで形成する場合には、被成膜基板の凹凸によってスピン膜厚の分布を制御できない、などの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]被成膜基板上に蒸着するパターンに対応する開口部が形成された蒸着マスクであって、前記開口部は、前記被成膜基板に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積に比べて該被成膜基板に対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【0007】
これによれば、蒸着マスクの開口部は、被成膜基板に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積に比べて被成膜基板に対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように形成されるので、蒸着マスクと被成膜基板との接触位置を被成膜基板に対向する側のマスク面の開口部の中心(蒸着膜)から遠ざけることができる。これにより、被成膜基板上に蒸着するパターンの製造を連続して行っても、異物および取り扱いによる被成膜基板の蒸着膜あるいは表面の損傷を発生させることのない信頼性を向上する蒸着マスクとなる。
【0008】
[適用例2]上記蒸着マスクであって、前記開口部の内周壁には、前記被成膜基板が対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように段差が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【0009】
これによれば、蒸着マスクの開口部の内周壁には、被成膜基板が対向する側に段差が設けられることで、蒸着マスクの開口部は、被成膜基板に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積に比べて被成膜基板に対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように形成されるので、蒸着マスクと被成膜基板との接触位置を被成膜基板に対向する側のマスク面の開口部の中心(例えば、画素)から遠ざけることができる。これにより、被成膜基板上に蒸着するパターンの製造を連続して行っても、異物および取り扱いによる被成膜基板の蒸着膜あるいは表面の損傷を発生させることのない信頼性を向上する蒸着マスクとなる。
【0010】
[適用例3]上記蒸着マスクであって、前記開口部の内周壁には、前記被成膜基板が対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように傾斜が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【0011】
これによれば、蒸着マスクの開口部の内周壁には、被成膜基板が対向する側に傾斜が設けられることで、蒸着マスクの開口部は、被成膜基板に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積に比べて被成膜基板に対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように形成されるので、蒸着マスクと被成膜基板との接触位置を被成膜基板に対向する側のマスク面の開口部の中心(蒸着膜)から遠ざけることができる。これにより、被成膜基板上に蒸着するパターンの製造を連続して行っても、異物および取り扱いによる被成膜基板の蒸着膜あるいは表面の損傷を発生させることのない信頼性を向上する蒸着マスクとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る蒸着マスクを示す平面図。
【図2】図1のII−II断線に沿う概略断面図。
【図3】第1の実施形態に係る蒸着マスクの開口部付近の拡大断面図。
【図4】第1の実施形態に係る蒸着マスクの開口部付近の拡大断面図。
【図5】段差付きマスク基板による被成膜基板上のパターンとマスク基板の開口部との蒸着位置のズレを説明する図。
【図6】被成膜基板の中心からの距離にともなう蒸着位置のズレ量の分布を示すグラフ。
【図7】第1の実施形態に係る蒸着マスクの製造工程を示す工程図。
【図8】第1の実施形態に係る蒸着マスクの製造工程を示す工程図。
【図9】第1の実施形態に係る被成膜基板を示す平面図。
【図10】第1の実施形態に係る蒸着マスクを用いた成膜装置を示す構成図。
【図11】変形例に係る蒸着マスクの開口部付近の拡大断面図。
【図12】第2の実施形態に係る蒸着マスクを示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態に係る蒸着マスクについて図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。ここで、図1は、本実施形態に係る蒸着マスク2を示す平面図、図2は、図1のII−II断線に沿う概略断面図である。
【0014】
本実施形態に係る蒸着マスク2は、例えば有機EL装置を構成する画素パターンを形成する際に用いられるマスクであって、図1および図2に示すように、平面視ほぼ矩形の板状のマスク基板10を基体として形成されている。
マスク基板10は、例えば金属材料で形成されており、開口部12とマスクアライメント部14とが形成されている。また、マスク基板10の厚さは、例えば40μm以上1mm以下となっている。
【0015】
開口部12は、マスク基板10に形成された貫通孔であって、後述する被成膜基板4における薄膜パターンに対応する形状を有している。また、開口部12は、マスク基板10にエッチング処理を施すことにより形成されている。
【0016】
マスクアライメント部14は、マスク基板10に形成された凹部であって、蒸着マスク2と被成膜基板4との位置合わせに用いられる。このマスクアライメント部14の開口端面は、蒸着マスク2を用いた蒸着を行う際に被成膜基板4を向く上面に形成されている。そして、マスクアライメント部14は、マスク基板10の対向する2つの角部それぞれに形成されており、平面視において円形となっている。また、マスクアライメント部14は、マスク基板10にエッチング処理を施すことにより形成されている。
【0017】
そして、マスク基板10の上面には、磁性体膜(図示略)がスパッタ法などにより成膜されている。
【0018】
図3は、本実施形態に係る蒸着マスク2の開口部12付近の拡大断面図である。
本実施形態では、マスク基板10の開口部12は、図3に示すように、被成膜基板4が対向する側とは反対側のマスク面の開口面積S1に比べて被成膜基板4が対向する側のマスク面の開口面積S2が大きくなるように形成されている。
【0019】
具体的には、マスク基板10の開口部12の内周壁18には、被成膜基板4が対向する側のマスク面の開口面積S2が被成膜基板4が対向する側とは反対側のマスク面の開口面積S1より大きくなるように段差16が形成される。つまり、開口部12の内周壁18の被成膜基板4側には、凹部を形成して内周壁18の周方向に延びる段差16が形成されている。この段差16は、被成膜基板4に対向する水平面16aと、この水平面16aに連なってこの水平面16aに略垂直に延びる立面16bとを備えている。
これによれば、開口部12の内周壁18には、被成膜基板4が対向する側に段差16が設けられ、マスク基板10の開口部12は、被成膜基板4に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積S1に比べて被成膜基板4に対向する側のマスク面の開口面積S2が大きくなるように形成されるので、蒸着マスク2と被成膜基板4との接触位置を被成膜基板4に対向する側のマスク面の開口部12の中心(蒸着膜)から遠ざけることができる。これにより、被成膜基板4上に蒸着するパターンの製造を連続して行っても、異物あるいは取り扱いによる被成膜基板4の蒸着膜あるいは表面の損傷を発生させることのない信頼性を向上する蒸着マスク2となる。
【0020】
具体的には、蒸着マスク2と被成膜基板4との接触位置を被成膜基板4に対向する側のマスク面の開口部12の中心(蒸着膜)から遠ざけることにより、被成膜基板4の表面の損傷を中心にカルシウム陰極が劣化して有機EL装置を構成する画素パターンの非点灯エリア(欠陥)が拡大発生する時期を、遅らせることができる。
【0021】
これは段差16の幅および深さをある値に設定することで、欠陥発生時期とカルシウム陰極の劣化速度とを制御できることになる。
図4は、本実施形態に係る蒸着マスク2の開口部12付近の拡大断面図である。例えば、図4に示すように、段差16の水平面16aの幅は、0.5mmである。また、段差16の立面16bの深さは、洗浄後のマスク基板10上の異物の大きさから0.01mm程度で十分だが、蒸着粒子の陰の液晶を最小とするために蒸着源側を段差(テーパー)形状にする場合の強度や、密着を行うための磁石による変形などを考慮して0.05mmとする。
これにより、常温常圧で段差16を設けない場合に比べ3倍まで欠陥の発生時期を遅らせることができる。
なお、マスク基板10の厚さは、0.5mm、開口部12の被成膜基板4に対向する側とは反対側のマスク面の広がり幅は、0.35mm、開口部12の被成膜基板4に対向する側のマスク面から開口部12の内周壁18の端部までの深さは、0.15mmである。
【0022】
また、蒸着パターンとして、被成膜基板4内に、図1に示すような配線上のパターンを形成する場合、段差16付きマスク基板10では被成膜基板4上のパターンとマスク基板10の開口部12との蒸着位置のズレが発生する場合がある。
図5は、段差16付きマスク基板10による被成膜基板4上のパターンとマスク基板10の開口部12との蒸着位置のズレを説明する図であり、図5(A)は、被成膜基板4と蒸着源20との位置関係を示す側面図、図5(B)は、被成膜基板4の中心からx離れた位置の拡大断面図である。図5(A)に示すように、成膜装置6では、真空チャンバー内(蒸着室)(図示せず)の上方位置に、被成膜基板4および蒸着マスク2を保持する基板ホルダー(図示せず)が配置されている。被成膜基板4および蒸着マスク2は、被成膜基板4の下面側(被蒸着面側)の所定位置に蒸着マスク2を重ねた状態で基板ホルダーにより保持され、蒸着時、この状態で、矢印Pで示すように回転する。蒸着マスク2には、被成膜基板4に対する蒸着パターンに対応する開口部12(図5(B))が形成されている。真空チャンバー内の下方位置には、被成膜基板4に向けて蒸着分子や蒸着原子を供給する蒸着源20が被成膜基板4および蒸着マスク2の回転中心軸からL離れた位置および被成膜基板4の下面からH離れた位置に配置されており、蒸着源20は、図示しない蒸着材料を内部に保持する坩堝、坩堝内の蒸着材料を加熱するためのヒーター、および坩堝の上部開口を開閉するシャッターなどを備えている。
【0023】
図5(A)および(B)に示すように、拡がり量aは、a=h×tan(θ1)=h×(L+x)/Hで表すことができる。拡がり量bは、b=h×tan(θ2)=h×(L−x)/Hで表すことができる。なお、xは被成膜基板4の中心からの距離、hは段差16の深さ、θ1は開口部12と蒸着源20との距離が最大のときの開口部12と蒸着源20とを結んだ線と垂直面とのなす角、θ2は開口部12と蒸着源20との距離が最小のときの開口部12と蒸着源20とを結んだ線と垂直面とのなす角である。つまり蒸着パターンのズレ量は、(a−b)/2により求めることができる。これにより、補正が可能である。
【0024】
また、図6は、被成膜基板4の中心からの距離にともなう蒸着位置のズレ量の分布を示すグラフである。線L1は、設計値による被成膜基板4の中心からの距離にともなう蒸着位置のズレ量の分布である。線L2は、実測値による被成膜基板4の中心からの距離にともなう蒸着位置のズレ量の分布である。図6に示すように、被成膜基板4の中心からの距離にともなう蒸着位置のズレ量の分布は、被成膜基板4の中心からの距離の絶対値が大きくなれば、蒸着位置のズレ量はある増加量をもって大きくなる傾向である。これにより、被成膜基板4の中心からの距離にともなう蒸着位置のズレ量は計算により求めることができるため、補正が可能である。
【0025】
次に、以上のような構成の蒸着マスク2の製造方法について図7および図8を参照しながら説明する。
図7および図8は、本実施形態に係る蒸着マスク2の製造工程を示す工程図である。
【0026】
まず、図7(A)に示すように、マスク基板10の上下両面にフォトリソグラフィ技術などを用いてレジスト層22,24を形成する。ここで、レジスト層22は、マスク基板10の上面を被覆している。また、レジスト層24は、マスク基板10の下面を被覆しており、開口部12の形成領域に開口24aが形成されている。
【0027】
次に、図7(B)に示すように、レジスト層24をマスクとしてマスク基板10にウェットエッチング処理を施す。ここでは、酸系のエッチャントを用いる。このとき、開口部12(図1)が形成される領域では、マスク基板10の下面にレジスト層24の開口24aが形成されていることから、マスク基板10の下面からエッチングが進行する。ここのとき、マスク基板10は等方エッチングによりオーバーエッチされる。
【0028】
次に、図7(C)に示すように、上面側のレジスト層22の開口部12の形成領域に開口22aを形成する。そして、レジスト層22,24をマスクとしてマスク基板10にウェットエッチング処理を施す。このとき、開口部12が形成される領域では、マスク基板10の上下両面にレジスト層22,24の開口22a,24aが形成されていることから、マスク基板10の上下両面からエッチングが進行する。その際、下面側のレジスト層24のレジストパターンは変更しない。ここでは貫通しないように、一定の厚さが残るよう時間管理でエッチングを終了する。
【0029】
次に、図7(D)に示すように、上面側のレジスト層22の開口部12の形成領域に開口22bを形成する。そして、レジスト層22,24をマスクとしてマスク基板10にウェットエッチング処理を施す。このとき、開口部12が形成される領域では、マスク基板10の上下両面にレジスト層22,24の開口22b,24aが形成されていることから、マスク基板10の上下両面からエッチングが進行する。その際、下面側のレジスト層24のレジストパターンは変更しない。図7(D)では、貫通直後のマスク基板10の状態を示している。
【0030】
次に、図8(A)に示すように、貫通後に一定時間エッチングを続けることで、内周壁18の端部の形状を整える。
【0031】
次に、図8(B)に示すように、レジスト層22,24を剥離して終了する。以降、洗浄などを適宜行う。
【0032】
次に、以上のような構成の蒸着マスク2を用いて薄膜パターンが形成される被成膜基板4について、図9を参照しながら説明する。ここで、図9は、本実施形態に係る被成膜基板4を示す平面図である。
被成膜基板4は、平面視でほぼ矩形であってガラス、石英などの透光性材料を主体として形成されており、例えば有機EL装置を構成する透明基板である。そして、被成膜基板4の表面において互いに対向する2つの角部それぞれには、蒸着マスク2との位置合わせを行うための基板アライメント部(他のアライメント部)26a,26bが形成されている。
【0033】
基板アライメント部26a,26bは、被成膜基板4に形成された凸部であり、被成膜基板4の表面をパターニングすることにより形成されている。そして、基板アライメント部26a,26bそれぞれは、被成膜基板4の対向する2つの角部それぞれに形成されている。また、基板アライメント部26aは平面視において十字型となっており、基板アライメント部26bは平面視において円形となっている。
【0034】
次に、蒸着マスク2を用いて被成膜基板4に薄膜パターンを形成する成膜装置6について、図10を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態に係る蒸着マスク2を用いた成膜装置6を示す構成図である。
成膜装置6は、図10に示すように、チャンバー28と、フレーム30と、蒸着源20と、永久磁石32と、撮像手段34と、照明手段36と、移動機構38と、これらを制御する制御手段40とを備えている。
フレーム30は、蒸着マスク2の外周縁を保持する構成となっている。また、蒸着源20は、被成膜基板4に堆積させる成膜材料で形成されている。そして、永久磁石32は、マスク基板10の上面に成膜された磁性体膜との間で発生する引力により蒸着マスク2および被成膜基板4を保持する構成となっている。
【0035】
撮像手段34は、マスクアライメント部14および基板アライメント部26a,26bそれぞれを撮像する構成となっている。また、撮像手段34は、例えばCCD(Charge Coupled Device)で構成されており、蒸着マスク2の2つの角部に形成されたマスクアライメント部14と被成膜基板4の2つの角部に形成された基板アライメント部26a,26bとのそれぞれを撮像するように2箇所に設けられている。
【0036】
照明手段36は、蒸着マスク2および被成膜基板4に対して重ね合わせ方向の上方から照明光を照射する落射照明系を構成となっている。なお、被成膜基板4が透光性材料で形成されていることから、被成膜基板4に向けて照射された照明光は、被成膜基板4を透過して蒸着マスク2にも照射される。
【0037】
移動機構38は、蒸着マスク2を被成膜基板4に対して移動させる構成となっている。
【0038】
制御手段40は、撮像手段34による撮像結果からマスクアライメント部14および基板アライメント部26a,26bそれぞれを検出し、移動機構38による蒸着マスク2および被成膜基板4の位置合わせを行う構成となっている。
【0039】
このような構成の成膜装置6では、蒸着マスク2と被成膜基板4とを間隙をあけて重ね合わせた状態で、撮像手段34がマスクアライメント部14および基板アライメント部26a,26bそれぞれを検出する。
【0040】
制御手段40は、撮像手段34で取得した画像からマスクアライメント部14および基板アライメント部26a,26bそれぞれを検出し、マスクアライメント部14および基板アライメント部26a,26bそれぞれが所定の位置関係となるように移動機構38を制御する。このとき、マスクアライメント部14がマスク基板10よりも暗く表示されるとともに基板アライメント部26a,26bがマスク基板10よりも明るく表示されるため、マスクアライメント部14と基板アライメント部26a,26bとの間のコントラストが向上する。したがって、制御手段40は、マスクアライメント部14および基板アライメント部26a,26bそれぞれを精度よく検出できる。
【0041】
移動機構38は、蒸着マスク2を被成膜基板4に対して移動させる。以上のようにして、蒸着マスク2と被成膜基板4との位置合わせを行う。この後、永久磁石32は、蒸着マスク2に成膜された磁性体膜を吸着することにより、蒸着マスク2および被成膜基板4を保持する。この状態で、成膜装置6は、蒸着源20から開口部12を介して薄膜形成材料を被成膜基板4に堆積させ、薄膜パターンを形成する。
【0042】
本実施形態によれば、蒸着マスク2の開口部12の内周壁18には、被成膜基板4が対向する側に段差16が設けられることで、蒸着マスク2の開口部12は、被成膜基板4に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積S1に比べて被成膜基板4に対向する側のマスク面の開口面積S2が大きくなるように形成されるので、蒸着マスク2と被成膜基板4との接触位置を被成膜基板4に対向する側のマスク面の開口部12の中心(蒸着膜)から遠ざけることができる。これにより、被成膜基板4上に蒸着するパターンの製造を連続して行っても、異物および取り扱いによる被成膜基板4の蒸着膜あるいは表面の損傷を発生させることのない信頼性を向上する蒸着マスク2となる。
【0043】
(変形例1)
図11は、変形例に係る蒸着マスク50,60の開口部52,62付近の拡大断面図である。図11(A)は、段差54付きマスク基板56の開口部52付近の拡大断面図である。なお、本変形例において、上記実施形態と同様の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
上記実施形態では、段差16の立面16bが水平面16aに対して略垂直である場合について説明したが、本変形例では、段差54は、被成膜基板4に対向する水平面54aと、この水平面54aに連なって被成膜基板4側の開口部52の開口面積S2が広くなるように傾斜して延びる立面54bとを備えており、開口部52の内周壁58に形成された段差54の立面54bが、被成膜基板4側の開口面積S2が被成膜基板4に対向する側とは反対側の開口面積S1よりも大きくなるように傾斜している。この段差54は、開口部52の内周壁58の被成膜基板4側に凹部を形成して内周壁58の周方向に延びて形成されている。
【0045】
(変形例2)
図11(B)は、マスク基板64の開口部62付近の拡大断面図である。なお、本変形例において、上記実施形態と同様の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
本変形例では、開口部62の内周壁66は、被成膜基板4が対向する側のマスク面の開口面積S2が被成膜基板4に対向する側とは反対側の開口面積S1よりも大きくなるように傾斜している。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、本実施形態に係る蒸着マスク70について図面に基づいて説明する。本実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明するとともに、上記実施形態で説明した構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。ここで、図12は、本実施形態に係る蒸着マスク70を示す概略断面図である。
【0048】
本実施形態に係る蒸着マスク70は、図12に示すように、マスク基板72が平面視でほぼ矩形の板状の下基板74と下基板74に接合された上基板76とを備えている。
下基板74は、例えばSUS430などの磁性を有する金属材料で形成されており、第1開口部78が形成されている。また、下基板74の厚さは、例えば1mmとなっている。
【0049】
第1開口部78は、下基板74に形成された貫通孔であって、その開口端面が被成膜基板4における薄膜パターンに対応する形状を有している。また、第1開口部78は、下基板74にエッチング処理を施すことにより形成されている。また、下基板74において上基板76に向く上面の全面には、エッチング処理が施されており、上基板76において下基板74から離間する上面よりも表面粗さが大きくなっている。
【0050】
上基板76は、例えばSUS304などの金属材料で形成されており、第2開口部80とアライメント孔(貫通孔)82とが形成されている。また、上基板76の厚さは、例えば0.1mmであって下基板74より薄くなっている。そして、上基板76の上面は、基板アライメント部26a,26bの表面よりも粗い。
【0051】
第2開口部80は、上基板76に形成された貫通孔であって、その開口端面が被成膜基板4における薄膜パターンと対応する形状を有している。これら第1および第2開口部78,80により、開口部84が形成される。ここで、第2開口部80は、第1開口部78よりも大きく形成されている。
アライメント孔82は、上基板76に形成された貫通孔であって、上基板76の対向する2つの角部にそれぞれ形成されており、平面視において円形となっている。そして、アライメント孔82は、下基板74側の開口端面が下基板74により覆われている。このアライメント孔82とこれを塞ぐ下基板74とによりマスクアライメント部86が形成される。したがって、マスクアライメント部86は、開口端面が上基板76の上面に形成されており、底面において下基板74が露出している。
【0052】
以上のような構成の蒸着マスク70においても、上述と同様の作用、効果を奏するが、下基板74および上基板76を接合した構成とすることで、上基板76の設計の自由度が向上する。
また、下基板74を磁性材料で形成することで、永久磁石32を用いて蒸着マスク70および被成膜基板4を保持固定する際、蒸着マスク70に別途磁性体膜を形成する必要がなくなり、蒸着マスク70の製造工程の簡略化が図れる。
さらに、下基板74を上基板76よりも厚くすることで、蒸着マスク70の機械的強度が増大する。
【0053】
なお、本実施形態において、下基板74を上基板76よりも厚くしているが、下基板の厚さが上基板の厚さ以下であってもよい。
【0054】
また、上記第1および第2の実施形態において、蒸着マスクは、フレーム上の支持基板上に薄膜パターンに対応する開口部が形成された板状のマスクチップを複数固定した構成であってもよい。
そして、蒸着マスクは、被成膜基板への蒸着に用いられているが、スパッタやCVD法(化学的気相成長法)など、他の薄膜パターンの成膜時に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0055】
2…蒸着マスク 4…被成膜基板 6…成膜装置 10…マスク基板 12…開口部 14…マスクアライメント部(アライメント部) 16…段差 16a…水平面 16b…立面 18…内周壁 20…蒸着源 22,24…レジスト層 22a,24a…開口 26a,26b…基板アライメント部(他のアライメント部) 28…チャンバー 30…フレーム 32…永久磁石 34…撮像手段 36…照明手段 38…移動機構 40…制御手段 50…蒸着マスク 52…開口部 54…段差 54a…水平面 54b…立面 56…マスク基板 58…内周壁 60…蒸着マスク 62…開口部 64…マスク基板 66…内周壁 70…蒸着マスク 72…マスク基板 74…下基板 76…上基板 78…第1開口部 80…第2開口部 82…アライメント孔(貫通孔) 84…開口部 86…マスクアライメント部(アライメント部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜基板上に蒸着するパターンに対応する開口部が形成された蒸着マスクであって、
前記開口部は、前記被成膜基板に対向する側とは反対側のマスク面の開口面積に比べて該被成膜基板に対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸着マスクにおいて、
前記開口部の内周壁には、前記被成膜基板が対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように段差が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸着マスクにおいて、
前記開口部の内周壁には、前記被成膜基板が対向する側のマスク面の開口面積が大きくなるように傾斜が形成されていることを特徴とする蒸着マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−216000(P2010−216000A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67551(P2009−67551)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】