説明

蒸練装置

【課題】 蒸しムラをなくし均一な性状の米菓生地を得たり、酵素添加が可能な温度に均一に温度降下させるように成した蒸練装置を提供する。
【解決手段】 米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部2と、この第1蒸練部2に続いて設けられ、第1蒸練部2で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部4と、この熟成部4に続いて設けられ、当該熟成部4で熟成された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部か或は均一に温度降下させるための混練りを行う混練部とを備えたことにより、前記課題を解決したが、前記熟成部はこれを省略することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに煎餅やあられ、おかきなどの菓子類を製造するに当って、原料の米粉から原料生地を作る際に用いて好適な蒸練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米を原料とする、例えば煎餅、あられ、おかき、団子等の菓子類の製造に当っては、その生地を得るために米粉(或は加水した米粉)に蒸気を吹き付けながら混練りして糊化(即ち、アルファ化)させる蒸練装置が用いられている。この蒸練装置としては、下記特許文献1に記載されたものが公知である。この特許文献1に記載された蒸練装置は、米粉或は米粉に水を加えて加水したものを蒸練室内に入れ、これに蒸気を吹き付けながら撹拌羽根で混練りすることによって、糊化された団塊状の生地が得られるので、この団塊状の生地を蒸練装置の下方に設けた熟成室へ送って熟成させた後、この熟成室のさらに下方に設けた送出室に徐々に流下させてこの送出室に設けた練り出しローラを用いて外部の次の工程(例えば冷却工程)へと送り出すものである。
【特許文献1】特公平7−95924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載されている蒸練装置は、蒸練室の下部に熟成室を設けて、熟成室内において生地を熟成させることで、高温の材料に含まれている遊離の高温水が米粉内に十分浸透するエージング作用が行われて、芯の生じない生地が得られるとするものである。しかしながら、蒸練室からの生地は熟成室内を上方から下方へと団塊状のままで流動するために、生地の熟成に温度ムラが生じて均一な熟成効果が得られないことから、所謂蒸しムラが生じてしまうのを避けることができなかった。
【0004】
また、米菓の種類によっては、とくに柔らかい食感を得られるようにしたり、日持ちを良くしたりするために酵素を用いるものがあり、この酵素は温度が高いと酵素作用が阻害されてしまうことから、蒸練した生地を均一な温度(例えば、60℃〜70℃)に温度降下させる必要があるが、前述した従来技術のものでは、この均一な温度降下が困難であるという問題もあった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、蒸しムラをなくし均一な性状の米菓生地を得ることのできるように成した蒸練装置を提供せんとするにある。
本発明のさらなる目的は、蒸練した生地を均一な温度に温度降下させることができるように成した蒸練装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の目的を達成するための本発明に係る蒸練装置は、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部と、この第1蒸練部に続いて設けられ、前記第1蒸練部で蒸練された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部とを備えたことを特徴とする。
この発明はまた、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部と、この第1蒸練部に続いて設けられ、前記第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部に続いて設けられ、前記熟成部で熟成された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせる第1蒸練部と、この第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部で熟成された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部とを備えたことで、第1蒸練部で蒸練された高温の米菓生地を熟成部で熟成をさせた上で、第2蒸練部で再度蒸練させることができるので、蒸しムラや芯塊のない均一な性状の米菓生地が得られることになる。
【0008】
前記第2の目的を達成するための本発明に係る蒸練装置は、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部と、この第1蒸練部に続いて設けられ、前記第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部に続いて設けられ、前記熟成部で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けるか、或は蒸気を吹き付けないで混練りする混練部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせる第1蒸練部と、この第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けるか、或は蒸気を吹き付けないで混練りする混練部とを備えたことで、第1蒸練部で蒸練された高温の米菓生地を熟成部で熟成させた上で、混練部で混練りさせることができる。このように熟成させた米菓生地を再度混練りさせることで、生地全体に蒸しムラや芯塊がなくなる上に、均一な温度に温度降下されて冷却されることになる。また、混練りしながら米菓生地の冷却を行うことができるために、米菓生地を均一な温度に温度降下させることができ、例えば、酵素の添加により生地全体で酵素の作用を発揮させることが可能となる。尚、酵素作用を阻害させないために、原料生地を均一な温度に降下(冷却)させることは、混練部以外にも上述した第2蒸練部で行うことは可能である。
【0010】
本発明に係る蒸練装置において、前記熟成部は、開閉可能なシャッター板が設けられていることができる。また、本発明に係る蒸練装置において、前記第2蒸練部或は前記混練部には、米菓生地を外部へ送出する送出手段が連設されていることが好ましい。また、本発明に係る蒸練装置において、前記第2蒸練部、前記混練部又は前記送出手段のいずれか1つには、米菓生地へ酵素を添加する酵素供給管が接続されていることが好ましい。また、本発明に係る蒸練装置において、前記第2蒸練部又は前記混練部内の米菓生地は、酵素作用を阻害しない温度に温度降下させられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明に係る蒸練装置によれば、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせる第1蒸練部と、この第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部で熟成された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部か、又は熟成部で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けるか、或は蒸気を吹き付けないで混練りする混練部とを備えたので、蒸しムラや芯塊をなくし均一な性状の米菓生地が得られることになる。また、米菓生地の温度を均一な温度に温度降下させることによって、酵素を添加した際に酵素作用が促進されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を米菓用の米菓生地を作る場合について図面を用いて説明するが、本発明はこのものに限定されるものではなく、米粉の他に、小麦粉、ライ麦粉、そば粉等を蒸練して原料生地を作る場合にも適用できる。
【0013】
図1〜図3は本発明に係る蒸練装置の一例を示す図である。本発明に係る蒸練装置は、図1〜図3に示すように、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部2と、この第1蒸練部2に続いて設けられ、第1蒸練部2で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部4と、この熟成部4に続いて設けられ、熟成部4で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けて、混練りする第2蒸練部3とを備えたことに特徴がある。第2蒸練部3は同時に混練部とすることもできる。このように第2蒸練部3が混練部を構成する場合、該混練部は熟成部4で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けることなく、或は蒸気を吹き付ける場合にも温度の低い蒸気を用いて再度混練りするものとなる。また、この発明によれば、熟成部はこれを省略して、第2蒸練部3を第1蒸練部2に直接連結してしまうことも考えられる。この場合には、第2蒸練部3が同時に熟成部を兼ねることになろう。原材料としては米粉に限定されるものではなく、小麦粉、ライ麦粉、そば粉等を蒸練する場合にも適用できることは上述した。
【0014】
第1蒸練部2は、投入された原材料の蒸練を行う第1撹拌羽根23を有する第1ドラム21と、その第1撹拌羽根23を回転駆動させる第1駆動手段22とを備えてなる。第1ドラム21は、有底円筒体状のものを横に寝かせた状態で、本体フレーム11の上方に取り付けられている。第1ドラム21の前面の開口部には、この開口部を密閉可能にする密閉蓋24が開閉可能に取り付けられている。この密閉蓋24には、これを第1ドラム21へ押し付けて密閉性を確保するためのハンドル25が設けられている。なお、密閉蓋24は、例えば、油圧シリンダー等で開閉を行うようにしても良い。さらに、指示記号51のものは第1蒸気供給管である。この第1蒸気供給管51には、蒸気ヘッダー52、圧力調節弁53が設けられている。なお、第1蒸気供給管51は、第1ドラム21或は密閉蓋24に接続される。
【0015】
第1ドラム21内には、この第1ドラム21に回転可能に取り付けられた第1駆動軸61の一端部61aに取り付けられて、第1ドラム21内に投入された原材料を混練りするための第1撹拌羽根23が設けられている。この第1撹拌羽根23は、原材料を混練りすることができればとくにその構成に限定はなく、後述する第2撹拌羽根33と同じでも良いし異なっていても良い。即ち、第1ドラム21内に突出した第1駆動軸61の一端部61aにクランク軸29が取り付けられ、このクランク軸29に片側に4本の第1撹拌羽根23と反対側に1本の第1撹拌羽根23が設けられて構成されており、第1駆動軸61の回転によりクランク軸29を介して合計5本の第1撹拌羽根23が第1ドラム21内で回転することによって、その第1ドラム21内に投入された原材料が混練りされるようになっている。
【0016】
第1駆動手段22は、本体フレーム11に回転可能に支持されている第1駆動軸61と、この第1駆動軸61を回転駆動させる第1モータ62とを備えてなる。第1駆動軸61の一端部61aは、上述したように、第1ドラム21内に突出されている。第1駆動軸61には、減速機構付きの正逆回転可能な第1モータ62より駆動力伝達手段64を介して駆動力が伝達され、この第1駆動軸61を介して第1撹拌羽根23が適宜回転速度で回転駆動されるようになっている。なお、この駆動力伝達手段64は、実施の形態のものは、例えばVベルトであるが、このものに限定されるものではなく、他にもチェーン、ギヤ等の公知構成の駆動力伝達手段を用いることができる。
【0017】
また、第1ドラム21の上部、すなわち、第1ドラム21を本体フレーム11に取り付けたときに上部となる周面の一部は、開口されて原料投入口21aが形成されている。この原料投入口21aには、筒状の投入部21bが設けられ、この投入部21bの上部の開口部には、密閉可能な上蓋21cが開閉可能に取り付けられている。また、投入部21bには、水供給管(図示せず)が接続されていても良い。この水供給管は必要に応じて水を第1ドラム21に供給され、米粉に加水するものである。なお、水供給管を第1ドラム21に直接接続するようにしても良い。
【0018】
第1ドラム21の下部、すなわち、第1ドラム21を本体フレーム11に取り付けたときに下部となる周面の一部は、開口されて材料落下口26が形成されている。この材料落下口26には、密閉可能な下蓋27が摺動可能に取り付けられている。下蓋27の内面は、第1ドラム21の内面と同一な曲面状に形成されており、この下蓋27を材料落下口26に密閉状態で取り付けたとき、下蓋27の内面と第1ドラム21の内面とが略同一曲面上になるように下蓋27が第1ドラム21に取り付けられていることが好ましい。下蓋27の第1ドラム21に対する開閉手段は、下蓋27を開閉できればとくに限定されないが、実施の形態では、第1ドラム21の軸方向に下蓋27をスライドさせて材料落下口26の開閉を行うスライド方式となっている。また、下蓋27を開閉させる駆動手段としては、シリンダー28が設けられているが、このものに限定されず、モーターその他の一般に周知である駆動手段を用いることができる。
【0019】
第1ドラム21の下部の材料落下口26には、熟成部4が連接して設けられている。この熟成部4は、第1蒸練部2と第2蒸練部3とをつなぐものである。熟成部4は、高さ方向に延びる筒状のもので、例えば、上端部が第1ドラム21の材料落下口26を覆うように接続されていると共に、下端部が第2ドラム31の材料投入口31aを覆うように接続されている。熟成部4には、シリンダー49で開閉されるシャッター板42が設けられており、このシャッター板42上が熟成室41として形成されている。シャッター板42の前面には、清掃、点検、メンテナンス等が容易に行われるように密閉可能な蓋45が開閉可能に取り付けられている。なお、熟成部4は、個別の部材を第1ドラム21と第2ドラム31とに接続するようにしてもよいし、第1ドラム21と第2ドラム31のいずれか一方又は両方に一体的に形成したものでもよい。
【0020】
次に、第2蒸練部3は、第1蒸練部2と基本的な構成が同じであり、例えば、投入された原料生地の混練りを行う第2撹拌羽根33を有する第2ドラム31と、その第2撹拌羽根33を回転駆動させる第2駆動手段32とを備えてなる。なお、第1蒸練部2と第2蒸練部3とは、基本的構成が同じであるので、以下の説明においては、第2蒸練部3の各部材についてその説明を省略することがある。
【0021】
第2ドラム31は、有底円筒体状のものを第1ドラム21と同様に横に寝かせた状態で本体フレーム11の第1ドラム21の下方に取り付けられている。すなわち、第1ドラム21、熟成部4及び第2ドラム31が垂直方向に重なり合った状態で本体フレーム11に取り付けられている。第2ドラム31の上部となる周面の一部は、開口されて材料投入口31aが形成されている。この材料投入口31aには、熟成部4が接続されている。なお、材料投入口31aに、密閉可能な上蓋を開閉可能に取り付けてもよい。この上蓋は、第2ドラム31の周面と同一な曲面状に形成され、例えば、シリンダーを用いて第2ドラム31の軸方向にスライドさせて、材料投入口31aの開閉を行うようにしてもよい。このように、上蓋を材料投入口31aに開閉可能に取り付けることにより、この上蓋とシャッター板42との間を第2熟成部とすることができ、この場合、熟成部4全体で熟成を行ったり熟成室41とシャッター板42の下側との2箇所で別々に熟成を行ったりすることができるので、第2ドラム31での材料の熟成や冷却時間を短くすることができ、生産効率を向上させることができる。
【0022】
第2ドラム31の前面の開口部には、密閉性を確保するためのハンドル35を有する密閉蓋34が開閉可能に取り付けられている。指示記号55のものは第2蒸気供給管である。この第2蒸気供給管55には、蒸気ヘッダー56、圧力調節弁57が設けられている。なお、第2蒸気供給管55は、第2ドラム31或は密閉蓋34に接続され、第2蒸気供給管55からの蒸気が第2ドラム31内の生地に噴射されるようになっている。また、第2ドラム31には、生地に酵素を添加する酵素供給管58が取り付けられており、タンク58aより原料生地に液状の酵素が添加されるようになっている。酵素としては、たんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)、デンプン分解酵素(アミラーゼ)、セルロース分解酵素(セルラーゼ)、油脂分解酵素(リパーゼ)等を用いることができる。なお、酵素供給管58を密閉蓋34に接続するようにしても良いし、場合によっては、ホッパー6に接続しても良い。
【0023】
第2ドラム31内には、第2撹拌羽根33が取り付けられている第2駆動軸66の一端部66aが突出して回転可能に設けられている。第2撹拌羽根33の形状及び構造はとくに限定されず、第1ドラム21に設けられている第1撹拌羽根23と同じでも良いし異なっていても良い。即ち、第2駆動軸66の一端部66aにクランク軸36が取り付けられ、このクランク軸36の片側に4本の第2撹拌羽根33と反対側に1本の第2撹拌羽根33が設けられており、第2駆動軸66の回転によりクランク軸36を介して合計5本の第2撹拌羽根33が第2ドラム31内で回転することによって、その第2ドラム31内に投入された生地が混練りされるようになっている。
【0024】
第2駆動手段32は、本体フレーム11に回転可能に支持されている第2駆動軸66と、減速機構付きの正逆回転可能な第2モータ67とからなり、第2モータ67の駆動力が駆動力伝達手段69を介して第2駆動軸66に伝達されて、適宜回転速度で第2駆動軸66を介して第2撹拌羽根33が回転駆動されるようになっている。第2ドラム31の下部には、密閉可能な下蓋38が開閉可能に取り付けられている材料落下口31bが形成されている。下蓋38は、例えば、第2ドラム31の周面と同一な曲面状に形成されており、この下蓋38をシリンダー38aを用いて第2ドラム31の軸方向にスライドさせて、材料落下口31bの開閉を行うように構成されている。そしてこの材料落下口31bを覆うようにホッパー6が取り付けられている。
【0025】
このホッパー6の下部には、蒸練された生地を外部に送り出す送出手段7が設けられている。送出手段7としては、とくに限定されず、例えば、スクリューコンベア71等である。スクリューコンベア71は、例えば、螺旋状のスクリュー羽根72が設けられたスクリュー軸73と、スクリュー軸73を回転駆動させる駆動部74とを備えてなる。スクリュー羽根72を有するスクリュー軸73の個数は、とくに限定されず、1個でも2個でも3個以上でも良く、実施の形態では、2個である。駆動部74は、主たる構成要素が例えば減速機構付きの正逆回転可能な駆動モータ75であり、この駆動モータ75によりスクリュー軸73が回転駆動されてスクリュー羽根72によってホッパー6から材料が外部に送り出されるようになっている。
【0026】
また、本体フレーム11には、制御部8が設けられている。制御部8は、第1ドラム21への米粉の投入時間の調節、第1撹拌羽根23の回転数の制御、第1ドラムへ21の蒸気の供給量の調節を行って第1ドラム21で原材料の蒸練を行い、第2撹拌羽根33の回転数の制御、第2ドラム31への蒸気の供給量の調節、第2ドラム31への酵素の供給量の調節を行って第2ドラム31で生地の混練りや蒸練や酵素添加を行うように動作させると共に、下蓋27、シャッター板42及び下蓋38の開閉を制御し、さらに送出手段7の動作を制御するものである。
【0027】
それによって制御部8は、例えば、第1ドラム21で原材料の蒸練を行い、熟成部4内で熟成を行い、さらに第2ドラム31で蒸練を行うように制御する機能、第1ドラム21で原材料の蒸練を行い、この蒸練後の材料を熟成部4で熟成させた後、第2ドラム31で混練りしつつ冷却して酵素を供給するように制御する機能、第1ドラム21で原材料の蒸練を行い、熟成部4で熟成させた後、再度の蒸練を第2ドラム31で行いながら冷却し、かつ、所定の温度以下で酵素を材料内に供給するように制御する機能等を備えることが可能である。すなわち、制御部8は、第1蒸練部2で蒸練され、熟成部4で熟成された原料生地を再蒸練させる機能、単に混練りさせる機能、温度降下させて酵素を添加させる機能等の全部或は一部を選択的に制御することができるようになっている。
【0028】
次に本発明に係る蒸練装置1の作用を説明する。
【0029】
原料投入口21aから予め計量された原材料例えば米粉が第1ドラム21内に投入されると共に、必要に応じて水供給管から水が第1ドラム21内に導入されて米粉に対する加水がなされる。次いで、この第1ドラム21に第1蒸気供給管51から所定量の蒸気を噴出させながら第1駆動手段22によって第1撹拌羽根23を回転させて、米粉を蒸気下で例えば100℃の温度下で所定時間(通常15分程度)混練りして蒸練させると、糊化した団塊状の原料生地が得られる。蒸練後、第1ドラム21の下蓋27を開くと、高温の原料生地が材料落下口26から熟成室41内のシャッター板42上に落下する。なお、熟成室41の上部の材料落下口26の近傍等に排出ローラ等を設けて、第1ドラム21内の蒸練された材料が材料落下口26から熟成室41内に確実に落下するように構成しても良い。
【0030】
熟成室41に落下した高温の原料生地は、この熟成室41内で熟成され、所定時間経過後、シャッター板42を開けて材料投入口31aから第2ドラム31内に落下投入される。次いで、この第2ドラム31でも蒸練が行われることになる。尚、連続運転時には、第1蒸練部2への米粉の投入は、熟成室41内の米菓生地がシャッター板42を開いて第2ドラム31へ流下移動させられた後に、第1蒸練部2で蒸練された米菓生地が熟成室41へ流下移動させられるように、時間を見計らってなされることになる。
【0031】
第2蒸練部3での蒸練が行われる場合、第2ドラム31では第2蒸気供給管55から所定量の蒸気が供給されながら第2駆動手段32によって第2撹拌羽根33が回転されることで、第2ドラム31に投入された原料生地が混練りされて所定時間蒸練される。蒸練後、第2ドラム31の下蓋38が開かれ、蒸練された米菓生地が材料落下口31bからホッパー6に落下する。なお、ホッパー6内の材料落下口31bの近傍等に排出ローラ等を設けて、第2ドラム31内の米菓生地が材料落下口31bからホッパー6に確実に落下するように構成しても良い。ホッパー6に落下した材料は、ホッパー6の下部のスクリューコンベア71により搬出されて、次工程に送り出される。
【0032】
このように、第1ドラム21と第2ドラム31との2つのドラムで蒸練を行うことで、生地全体がムラなく蒸練されることになる。その結果、蒸しムラをなくし芯塊のない均一な性状の米菓生地が得られる。また、高温の材料を撹拌せずに下方に移動させるだけで冷却を行う場合に比して、短時間で均一に原料生地の冷却を行えるので、生産効率がさらに向上する。なお、第2蒸練部3を混練部としてのみ用いて単に生地を混練りさせる場合は、前述と同様に第2ドラム31内では生地全体が第2撹拌羽根33によって撹拌されつつ練られるので、生地全体がムラなく均一な温度に温度降下され冷却されることになる。
【0033】
次に、第2蒸練部3で生地の温度降下を行って酵素を添加させる場合には、例えば、第1ドラム21で原材料の蒸練が行われ、再度の蒸練が第2ドラム31で行われながら冷却され、かつ、所定の温度以下で酵素が生地内に添加される。添加される酵素により異なるが、例えば、60℃を超えると分解する酵素を用いる場合には、60℃以下になったときに酵素を第2ドラム31に供給するようにする。このとき、第2ドラム31内では生地全体が第2撹拌羽根33によって撹拌されつつ練られるので、生地全体がムラなく冷却されているので、生地全体を60℃以下でかつ均一に冷却した状態で生地に酵素を添加することができ、しかもその添加を混練りしながら行えるので、生地全体にムラなく酵素の添加を行える。その結果、生地全体で酵素の作用を発揮させることができ、食感のやわらかい米菓を品質良くしかも効率良く作ることが可能となる。尚、上述したように、第2蒸練部3を混練部として用いることができ、この場合には、温度の低い蒸気の存在下、或は蒸気を用いないで、米菓生地の混練りを行い、温度降下させて必要に応じて酵素を添加するものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように本発明に係る蒸練装置は、米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせる第1蒸練部と、第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、熟成部で熟成された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部か又は、熟成部で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けるか、或は蒸気を吹き付けないで混練りする混練部とを備えたので、蒸しムラをなくし芯塊のない均一な性状の米菓生地が得られることになると共に、生地の温度を均一な温度に温度降下させることができ、酵素の添加をその作用を阻害することなく行えることから品質の良い食感が柔らかく、日持ちのする煎餅や団子などの菓子類等を効率良くかつ衛生的に作ることが可能となるので、とくに煎餅や団子などの菓子類を製造する蒸練装置として好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る蒸練装置の一例を示す正面図である。
【図2】本発明に係る蒸練装置の一例を示す側面図である。
【図3】本発明に係る蒸練装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 蒸練装置
2 第1蒸練部
3 第2蒸練部(混練部)
4 熟成部
6 ホッパー
7 送出手段
8 制御部
21 第1ドラム
31 第2ドラム
41 熟成室
42 シャッター板
51 第1蒸気供給管
55 第2蒸気供給管
58 酵素供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部と、この第1蒸練部に続いて設けられ、前記第1蒸練部で蒸練された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部とを備えたことを特徴とする、蒸練装置。
【請求項2】
米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部と、この第1蒸練部に続いて設けられ、前記第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部に続いて設けられ、前記熟成部で熟成された米菓生地を再度蒸練させる第2蒸練部とを備えたことを特徴とする、蒸練装置。
【請求項3】
米粉或は加水させた米粉に蒸気を吹き付けて混練りさせることにより、米菓生地を得る第1蒸練部と、この第1蒸練部に続いて設けられ、前記第1蒸練部で蒸練された米菓生地を熟成させる熟成部と、この熟成部に続いて設けられ、前記熟成部で熟成された米菓生地を蒸気を吹き付けるか、或は蒸気を吹き付けないで混練りする混練部とを備えたことを特徴とする、蒸練装置。
【請求項4】
前記熟成部は、開閉可能なシャッター板が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の蒸練装置。
【請求項5】
前記第2蒸練部或は前記混練部には、米菓生地を外部へ送出する送出手段が設けられていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の蒸練装置。
【請求項6】
前記第2蒸練部、前記混練部又は前記送出手段のいずれか1つには、米菓生地へ酵素を添加する酵素供給管が接続されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸練装置。
【請求項7】
前記第2蒸練部又は前記混練部内の米菓生地は、酵素作用を阻害しない温度に温度降下させられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−65948(P2009−65948A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240839(P2007−240839)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(591095708)株式会社新井機械製作所 (15)
【Fターム(参考)】