説明

蓄光性水変色体

【課題】 明所においては多孔質層に水を付着させることにより様相変化を視認でき、暗所にあっては、蓄光層が永続して発光する機能を有するため、水変色性及び蓄光性の各機能の効果を有効に発現させることができ、明所と暗所で永続して変化性を付与できる蓄光性水変色体を提供する。
【解決手段】 アルカリ土類金属酸化物に希土類酸化物をドープさせてなる蓄光顔料を含む蓄光層2、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層3を積層してなり、前記蓄光顔料は、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である蓄光性水変色体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光性水変色体に関する。更に詳細には、水を吸液して乾燥状態とは異なる様相に変化し、その様相は暗所においても視認でき、乾燥により再び元の状態に復する蓄光性水変色体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体上に蓄光像を設けた化粧材やカーテンが開示されており、明所と暗所で異なる様相が視覚されるものの、明所において変化性に乏しい(例えば、特許文献1、2参照)。
そこで、支持体上に蓄光顔料を含む蓄光層を設け、前記蓄光層上に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けた変色性積層体が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
前記積層体は明所では多孔質層に水を付着させることにより様相変化を付与でき、暗所では蓄光顔料を含む蓄光層による発光を視認できるため、明所と暗所で共に様相変化を視認できるものである。
しかしながら、前記積層体は、繰り返し多孔質層に水を適用すると、暗所において蓄光層の発光低下が見られ、暗所での様相変化を永続して付与でき難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−132346号公報
【特許文献2】特開平10−127478号公報
【特許文献3】特開平11−227314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、明所では多孔質層に水を付着させることにより様相変化を付与できると共に、暗所では蓄光層による発光を視認でき、明所と暗所で永続して変化性を付与できる蓄光性水変色体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アルカリ土類金属酸化物に希土類酸化物をドープさせてなる蓄光顔料を含む蓄光層、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を積層してなり、前記蓄光顔料は、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である蓄光性水変色体を要件とする。
更には、前記蓄光層中に着色顔料を含有してなること、支持体上に前記蓄光層と多孔質層を積層してなること、前記支持体と蓄光層の間に着色顔料を含む非変色層を設けてなること、前記多孔質層中に着色顔料を含んでなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、明所においては多孔質層に水を付着させることにより様相変化を視認でき、暗所にあっては、蓄光層が永続して発光する機能を有するため、水変色性及び蓄光性の各機能の効果を有効に発現させることができ、明所と暗所で永続して変化性を付与できる蓄光性水変色体を提供でき、色変化の妙味、特異性、装飾性、意匠効果等の要求される各種分野に応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明蓄光性水変色体の一実施例の縦断面説明図である。
【図2】本発明蓄光性水変色体の他の実施例の縦断面説明図である。
【図3】本発明蓄光性水変色体の他の実施例の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を更に詳しく説明すると、前記した蓄光顔料を含む蓄光層上に、低屈折率顔料を含む吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を積層した水変色体は、各々の層を設けた系では成し得ない効果を有する。
蓄光層のみを設けた場合、明所で視覚されなかった像が暗所では発光して視覚される。よって、明暗によって前記様相変化が視覚されるが、明所での像の視認性に乏しい。
多孔質層のみを設けた場合、水の適用により多孔質層が透明化し、乾燥すると多孔質層は不透明化するため、明所では水の適用と乾燥による様相変化に優れるものの、暗所では視認し難い。
本発明は蓄光層と多孔質層を積層することにより、明所及び暗所において共に装飾性と様相変化に富む水変色体を得ることができる。
【0009】
以下に蓄光顔料を含む蓄光層について説明する。
前記蓄光層は、層中に蓄光顔料を含むものであり、前記蓄光顔料はアルカリ土類金属酸化物に希土類酸化物をドープさせてなる蓄光顔料をリン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である。
前記蓄光顔料は、例えば特開平7−11250号公報に開示されているSrAl、SrAl1425、或いは、CaAlにユウロピウム、ジスプロシウム、サマリウム等を賦活剤として添加したもの、特開平10−168448号公報に開示されているSr(AlB);EuDy、Sr(AlB);EuDy、或いはSr(AlB);EuDyが挙げられる。
前記蓄光顔料は、水が付着するとアルカリ土類酸化物が水と反応して水和物となり、同時にアルカリ性を示すイオンが放出され、長期間発光する機能が低下し易い。
そこで、耐水性を有する蓄光顔料として、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料を用いる。
前記リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料は、顔料表面のアルカリ土類金属とリンが反応して表面を水に不溶化或いは難溶化して耐水性を向上させるものであって、リン酸塩としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素アンモニウムナトリウム四水和物、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を例示でき、カリウム塩等も使用できる。
前記蓄光顔料とリン酸塩を混合またはリン酸塩溶液中で接触させ、150℃〜300℃、好ましくは200℃〜250℃の温度で加熱して耐水性を有する蓄光顔料が得られる。
前記蓄光層は、前記蓄光顔料を熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂中にブレンドして形成した成形体の他、支持体上に蓄光顔料をバインダー樹脂に分散して固着させた蓄光層であってもよい。
従来の耐水性を有しない蓄光顔料(未処理の蓄光顔料)は水が付着すると、発光強度が低下する傾向にあり、繰り返しの使用を満足させ難いが、前記耐水性を有する蓄光顔料の適用は、水を付着させても発光強度が低下し難く、繰り返しの使用を満足させることができる。
【0010】
前記支持体は、材質や形態が特に限定されるものではないが、材質として紙、合成紙、布帛、植毛或いは起毛布、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、金属、ガラス、陶磁器、木材、石材等が挙げられる。
前記支持体として布帛を用いる場合、蓄光層、多孔質層は水性インキを用いて印刷することが一般的である。その際、予め調製した水性インキ中で耐水処理した蓄光顔料は発光強度が低下することなく、よって、良好な蓄光性を有する蓄光層を形成することができる。
なお、前記支持体上に蓄光層を設ける場合、支持体と蓄光層の間に着色層を設けることもできる。
【0011】
前記バインダーは、透明状の膜形成樹脂であればよく、従来より汎用の各種バインダーが適用できる。
前記樹脂としては、アイオノマー樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸樹脂共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、天然ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリビニルアルキルエーテル、ロジン、ロジンエステル、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、油溶性フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、シェラック、環化ゴム、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース等を挙げることができ、水や有機溶剤等の適宜の溶剤に溶解または分散させて適用できる。
前記した蓄光層には、一般の顔料を含有させることもできる。
【0012】
前記蓄光層上には、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、液体を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmのものが好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
尚、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられる。
前記珪酸は、乾式法により製造される珪酸(以下、乾式法珪酸と称する)であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)が好適である。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるものと、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別される。
乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した構造であるのに対して、湿式法珪酸は、珪酸が縮合して長い分子配列を形成した構造部分を有している。
従って、湿式法珪酸は乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を適用した場合、乾式法珪酸を用いた系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0013】
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等のバインダー樹脂が挙げられる。
前記低屈折率顔料とバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2重量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5重量部である。低屈折率顔料1重量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5重量部未満の場合には、形成される多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2重量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いて耐擦過強度を高めることが好ましい。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、2種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
尚、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分比率で30重量%以上含有させることが好ましい。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
前記多孔質層中には着色剤を含有させることもできる。
【0014】
前記多孔質層は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を示す。実施例中の部は質量部である。
実施例1(図1参照)
発光色が黄緑色の蓄光顔料(平均粒子径:2〜60μm、発光最大波長520nm、)10部、赤色顔料2部、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂188部を混練し、230℃でエクストルーダーにて溶解混合してペレットを得た。
前記ペレットを用いて、240℃で平板形状に射出成形することで、明所では赤色が視覚され、暗所で淡黄緑色に発光する蓄光層2を得た。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、蓄光性水変色体1を得た。
【0016】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して蓄光層による赤色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は、暗所において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視覚され、多孔質層が乾燥すると発光した像が視覚されなくなる。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0017】
実施例2(図2参照)
支持体4として青色の合成紙上に、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)50部、アクリル酸エステル樹脂40部、シリコーン系消泡剤0.5部、酢酸ブチル20部、芳香族系中沸点溶剤15部を均一に分散した蓄光インキを用いてベタ印刷により蓄光層2を形成した。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、蓄光性水変色体1を得た。
【0018】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して支持体による青色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は、暗所において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視覚され、多孔質層が乾燥すると発光した像が視覚されなくなる。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0019】
実施例3(図3参照)
支持体4として白色のテトロン/コットンブロード生地(65/35、目付量:100g/m)上に、緑色顔料2部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散した緑色インキを用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて着色層5を形成した。
前記着色層上に、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)50部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散した蓄光インキを用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて蓄光層2を形成した。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
次いで、前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層3を形成し、蓄光性水変色体1を得た。
【0020】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して着色層による緑色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は、暗所において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視覚され、多孔質層が乾燥すると発光した像が視覚されなくなる。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0021】
実施例4
支持体として白色のテトロン/コットンブロード生地(65/35、目付量:100g/m)上に、青色顔料2部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散した青色インキを用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて着色層を形成した。
前記着色層上に、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)50部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散した蓄光インキを用いてベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて蓄光層を形成した。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
次いで、前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ピンク色蛍光顔料〔商品名:シンロイヒカラーSX−117、シンロイヒ(株)〕3部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
【0022】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では淡ピンク色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して着色層による青色と多孔質層のピンク色が混色となった紫色が視認され、乾燥により再び元の淡ピンク色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は、暗所において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視覚され、多孔質層が乾燥すると発光した像が視覚されなくなる。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体を25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0023】
実施例5
支持体として白色の合成紙(厚み200μm)上に、青色顔料2部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、架橋剤2.0部を均一に分散した青色インキを用いてベタ印刷し、70℃で30分間乾燥硬化させることにより着色層を形成した。
前記着色層上に、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)50部、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:45%)100部、シリコーン系消泡剤0.5部、増粘剤5部、レベリング剤1.0部、エポキシ系架橋剤5.0部を均一に分散した水性系蓄光性インキを用いてベタ印刷し、70℃で30分間乾燥硬化させることにより蓄光層を形成した。
なお、前記蓄光顔料は、SrAl:Eu,Dyにリン酸塩(リン酸水素二アンモニウム)を添加、混合し、予め200℃に加温した乾燥機中で加熱する。次いで、乾燥機から取り出して放冷し、純水で不純物を除去、乾燥させて得られる。
次いで、前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、150メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
【0024】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して支持体による青色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体は、暗所において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視覚され、多孔質層が乾燥すると発光した像が視覚されなくなる。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
また、前記蓄光性水変色体を室温下で25℃の水中に24時間浸漬させても、発光強度を損なうことなく、変色機能を維持していた。
【0025】
実施例6
実施例5と同様の方法により蓄光性水変色体を得た。
次いで、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG6000、三洋化成工業(株)製〕50部を水50部に均一溶解させた変色体用液状組成物を吸収材料となる連続気泡を有する発泡ウレタンフォーム(直径200mm、厚み5mm)に含浸させ、円形容器内に収容してスタンプ台を作製した。
前記蓄光性水変色体とスタンプ台を組み合わせて蓄光性水変色体セットを得た。
前記スタンプ台の吸液材料に幼児の手のひらを約10秒間押し付けて液状組成物を均一に付着させた後、前記蓄光性水変色体の多孔質層上に手を約5秒間押し付けると、多孔質層が液状組成物を吸液して透明化し、下層の非変色層による青色の手形が採取され、変色体用液状組成物の水が蒸発しても採取された手形像は保持されていた。
前記採取された手形は変色体を水で洗うことにより除去でき、乾燥後、再び手に液状組成物を付着させて多孔質層上に押し付けることにより、手形を採取することができた。
また、暗所においては、採取した手形が下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視覚された。
手形が形成された蓄光性水変色体は、20℃の環境下で3カ月間放置しても、初期と同様の色濃度と形状を維持しており、保存安定性に優れていた。
【0026】
比較例1
発光色が黄緑色の蓄光顔料(SrAl:Eu,Dy、平均粒子径:2〜60μm、発光最大波長520nm、)10部、赤色顔料2部、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂188部を混練し、230℃でエクストルーダーにて溶解混合してペレットを得た。
前記ペレットを用いて、240℃で平板形状に射出成形することで、明所では赤色が視覚され、暗所で淡黄緑色に発光する蓄光層を得た。
前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
【0027】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して蓄光層による赤色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
前記蓄光性水変色体は暗色において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視認されるものの、繰り返し水を付着させると蓄光顔料の発光強度が低下して暗色で発光し難くなり、実用性を満足させることができなかった。
【0028】
比較例2
支持体として青色の合成紙上に、発光色が黄緑色の蓄光性顔料(SrAl:Eu,Dy、平均粒子径:2〜40μm、発光最大波長520nm)50部、アクリル酸エステル樹脂40部、シリコーン系消泡剤0.5部、酢酸ブチル20部、芳香族系中沸点溶剤15部を均一に分散した蓄光インキを用いてベタ印刷により蓄光層を形成した。
前記蓄光層上に湿式法微粒子シリカ〔商品名:ニップシールE−220、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランAP−10、大日本インキ化学工業(株)製、固形分30%〕45部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面ベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成し、蓄光性水変色体を得た。
【0029】
前記蓄光性水変色体は、明所において乾燥状態(非吸水状態)では白色の多孔質層が視認され、水を含浸させた筆を用いて水を付着させると吸液により多孔質層が透明化して支持体による青色の像が視認され、乾燥により再び元の白色の多孔質層が視認される。前記様相変化は繰り返し行なうことができた。
前記蓄光性水変色体は暗色において多孔質層に像が形成された状態では、下層の蓄光層が黄緑色に発光することにより発光した像が視認されるものの、繰り返し水を付着させると蓄光顔料の発光強度が低下して暗色で発光し難くなり、実用性を満足させることができなかった。
【符号の説明】
【0030】
1 蓄光性水変色体
2 蓄光層
3 多孔質層
4 支持体
5 着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属酸化物に希土類酸化物をドープさせてなる蓄光顔料を含む蓄光層、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を積層してなり、前記蓄光顔料は、リン酸塩と混合またはリン酸塩溶液中で接触させた後、加熱処理した蓄光顔料である蓄光性水変色体。
【請求項2】
前記蓄光層中に着色顔料を含有してなる請求項1記載の蓄光性水変色体。
【請求項3】
支持体上に前記蓄光層と多孔質層を積層してなる請求項1記載の蓄光性水変色体。
【請求項4】
前記支持体と蓄光層の間に着色顔料を含む着色層を設けてなる請求項3記載の蓄光性水変色体。
【請求項5】
前記多孔質層中に着色顔料を含んでなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蓄光性水変色体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56095(P2012−56095A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198515(P2010−198515)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】