説明

蓄光機能と再帰反射機能とを有する蓄光ビーズ

【課題】蓄光性と再帰反射性とを備えるとともに耐水性を有し、水性塗料と組み合わせたり、屋外でも使用でき、暗い場所や暗い時でも認識できる標示物の形成に使用できる蓄光ビーズを提供する。
【解決手段】ガラスビーズの周囲に蓄光顔料を配置し、耐水性透光性樹脂で被覆して蓄光性と再帰反射性とを備えた蓄光ビーズを構成する。このようにして蓄光機能と再帰反射機能とを有し、視認性の高い蓄光性塗料が実現でき、戸外で使用でき、水性塗料と共に使用することのできる蓄光ビーズを実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光機能と再帰反射機能とを具えた蓄光ビーズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスビーズを含有することにより再帰反射機能を有する標示用塗料を塗布した路面表示などの施工物が知られている。しかし、このような施工物の標示は、夜間、トンネル内、あるいは曇天時などの暗所では、自動車のヘッドライトなどの光が当たらない場合には標示からの再帰反射がなく、標示内容の認識が困難であるという問題点があった。
【0003】
暗所でも標示物を認識し易くする手段として、蓄光材料の使用が知られている。特許文献1(特開平10−088031号公報)には、アルミナを主成分とする蓄光顔料を含有させた蓄光性の道路標示材が記載されている。また、特許文献2(特開平10−219621号公報)には、蓄光材料を有する路面標示材塗料塗布面に設けた自発光型路面標示についての記載がある。また特許文献3(特開平10−121424号公報)には、標示シートの少なくとも表面付近にガラスビーズ及び/又は蓄光顔料が含有された道路標示シートが開示されている。さらに特許文献4(特開平11−288233号公報)には、標示シートの少なくとも表面付近に光反射素子と蓄光素子が、釉薬とともに焼成され、基板と一体化されている表示装置が開示されている。
【0004】
標示に対するこれら蓄光材料の使用は、暗所でも標示の標示内容を認識しやすくする上で、有効な手段ではあるものの、次のような問題点がまだ残されている。
【0005】
その1つは、蓄光材料を単に塗料中に混合して用いるだけでは、蓄光材料からの発光により、標示物の標示内容を暗所で認識するのには十分ではないという点である。
【0006】
もう1つの問題点は、蓄光材料は水分と反応すると加水分解が生じ、蓄光機能が失われてしまうことから、特に戸外で用いる場合には、蓄光寿命が短くなるという点にある。また、塗布を行って標示用施工物を形成するには、水性塗料の使用が望まれるが、蓄光材料は水と反応すると蓄光性を失うという性質があるので、蓄光材料を水性塗料にて塗布することができないという点に問題点がある。なお、蓄光材料を含有する標示用施工物を施工する際には、蓄光材料の供給装置のノズルを用いて蓄光材料を含有する塗料を塗布する過程で、ノズルなどに詰まりが生じることがあり、これによって塗布の作業性が低下するという難点もある。
【特許文献1】特開平10−088031号公報
【特許文献2】特開平10−219621号公報
【特許文献3】特開平10−121424号公報
【特許文献4】特開平11−288233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、標示用施工物を形成するための塗料に加えて用いることによって、蓄光機能と再帰反射機能とが付与され、暗所でも高い視認性を得ること可能となる蓄光ビーズであって、耐水性を有することから、戸外で使用できるほか、水性塗料に含有させて塗布することのできる蓄光ビーズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄光ビーズは、ガラスビーズと、ガラスビーズの周囲に配置された蓄光顔料と、これらガラスビーズと蓄光顔料とを被覆する耐水性透明性樹脂とを備えたものである。本発明の発明者は、蓄光機能と再帰反射機能とを兼ね備た耐水性の蓄光ビーズを得ることを目的として、非常に多くの検討と試行を重ねた結果、上記の構成にすることによって、蓄光機能と再帰反射機能とを具え、十分な耐水性を具えた蓄光ビーズが得られることを見出した。また、このような構成にすれば、蓄光ビーズを生産性よく製造できることも見出すことができ、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明に係る蓄光ビーズを用いることにより、暗所でも視認性の高い蓄光性の標示物が実現できるようになった。しかも本発明に係る蓄光性塗料は、耐水性を有するので、戸外での使用においても蓄光性の低下が非常に少ないという特徴を示し、また水性塗料とともに使用して標示物を形成することができる。
【0010】
本発明に係る蓄光ビーズは、標示物などを形成する塗料中に含有させて用いることができる。標示物の形成に用いる塗料は、塗布時における環境対策の観点から、水性塗料が望ましい。従って水性塗料と共に使用できる本発明に係る蓄光ビーズは、この意図によく適ったものとなっている。
【0011】
なお、本発明に係る蓄光ビーズを塗料に含有させる場合には、蓄光ビーズが球状であることが好ましい。蓄光ビーズを塗布して標示物を施工する作業では、塗布装置のノズルに詰まりが生じると、作業性が著しく低下することになる。ノズルの詰まりは塗料中の固形分が原因である場合が多く、蓄光ビーズを含有する塗料は、塗料中に含有させる蓄光ビーズをよく揃った球状のものににすることによって、塗料の流動性が改善され、ノズルの詰まりの防止に役立つことがわかった。球形の蓄光ビーズを得るには、ガラスビーズとして球形のものを用い、その周囲に配置する蓄光顔料にはガラスビーズよりも十分に小さな粒径のものを用いれば、これを樹脂被覆して球形の蓄光ビーズに仕上げることができる。なお、本発明において粒子がよく揃って球状であるとは、粒子の粒径分布が小さく、等方的であり、表面かなめらかであることである。なお、形状因子fを
f=((粒子の表面積の総和)/(粒子体積の総和))×(平均粒径)
と定義すれば、よく揃った球の場合には、この値が最も小さくなり、粒子の総個数をn、揃った粒子の直径をdとすると、
(n4π(d/2))/(n(4π/3)・(d/2))・d=6
となる。この形状因子fを用いて数量的に表現すると、ガラスビーズはその粒径分布の標準偏差の平均粒径に対する比の値が0.3以下であり、形状因子fが10以下であることが好ましく、また、形状因子fが8以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明に係る蓄光ビーズを塗布して標示物を形成することによって、再帰反射機能と蓄光性とが相互に作用した効果的な標示物が得られる。これはガラスビーズの周囲に蓄光顔料が存在すると、蓄光顔料とガラスビーズとの間で光のやり取りがなされることにより、蓄光顔料は外部からの光を直接取り込むだけでなく、ガラスビーズを経由した光も取り込むことができる、また蓄光顔料が発光する際にも、直接に光を発するほかに、ガラスビーズを経由して光を発することができるためと考えられる。
【0013】
本発明に係る蓄光ビーズは、先に標示用の塗料を塗布して塗膜を形成し、この塗膜の上から本発明に係る蓄光ビーズを散布し、塗膜に蓄光ビーズを保持させる形であってよい。このようにすれば、蓄光ビーズを塗膜の表面に配置でき、再生反射の効率や蓄光効率の良好な標示物が形成できる。本発明に係る蓄光ビーズは、耐水性を必要とする場合などには、特に好都合である。
【0014】
なお、上記の特許文献1および3には、標示物を透明あるいは半透明のゴムまたは樹脂で被覆し、これによって蓄光性粒子を保護してもよい、との記載がある。しかし、これらの記載は標示物を被覆することを述べているだけであって、蓄光顔料粒子自体を被覆することを述べたものではない。標示物を被覆しただけでは、蓄光顔料を水分に対し保護する上で決して十分なものではなかった。本発明において、水分に対する保護が非常に優れているのは、がラスビーズの周囲に蓄光顔料を配置し、この蛍光顔料の配置されたガラスビーズを個々に被覆していることによると考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、耐水性の蓄光ビーズが得られるようになり、この蓄光ビーズを用いて、蓄光機能と再帰反射機能とを有するとともに耐水性を有する標示用施工物を形成することができるようになった。この蓄光ビーズは戸外でも使用でき、また水性塗料に含有させて蓄光塗料として用いることができ、また、この蓄光塗料を塗布する際には、有機溶剤を大量に蒸発させることなく、標示用施工物を形成することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための具体的な形態について、図面を参照しながら、その詳細を述べる。
【0017】
図1(a)および(b)は、本発明に係る蓄光ビーズの一実施形態を模式的に示した図である。図1(a)において、蓄光ビーズ10は、ガラスビーズ12の表面に蓄光顔料14を配置し、これを耐水性で透光性の樹脂16で被覆し保護した構成を有している。本発明に係る蓄光ビーズは、図1(a)に示されているように、蓄光顔料14はガラスビーズ12の表面に接触して存在し、これらが耐水性で透光性の樹脂16で被覆され保護されていてもよいし、また図1(b)に示されているように、蓄光顔料14が、ガラスビーズ12の表面から離れて存在し、これらが耐水性で透光性の樹脂16で被覆され保護されていてもよい。このような構成により、蓄光ビーズ14に対し光は入射したり出射したりすることを可能にしている一方で、水分が内部に到達しないようにして、水分が侵入し蓄光顔料14を加水分解し蓄光機能が失われるのを防止している。
【0018】
本発明において、蓄光ビーズ10が保有する蓄光顔料14は、太陽光や電灯光などの照射光のエネルギーを吸収し、この吸収したエネルギーによって照射終了後も長時間にわたって発光を続ける物質である。
【0019】
そのような蓄光顔料14の具体例として、SrAl2 4 :Eu、SrAl2 4 :Eu,Dy、SrAl2 4 :Eu,Nd、SrAl2 4 :Eu,Pr、SrAl2 4 :Eu,Sm、SrAl2 4 :Eu,Tb、SrAl2 4 :Eu,Ho、SrAl2 4 :Eu,Mn、SrAl2 4 :Eu,Sn、SrAl2 4 :Eu,Bi、CaAl2 4 :Eu,Nd、CaAl2 4 :Eu,Sm、CaAl2 4 :Eu,Tm、CaAl2 4 :Eu,Nd,La、CaAl2 4 :Eu,Nd,Ce、CaAl2 4 :Eu,Nd,Pr、CaAl2 4 :Eu,Nd,Sm、CaAl2 4 :Eu,Nd,Gd、CaAl2 4 :Eu,Nd,Tb、CaAl2 4 :Eu,Nd,Dy、CaAl2 4 :Eu,Nd,Ho、CaAl2 4 :Eu,Nd,Er、CaAl2 4 :Eu,Nd,Tm、CaAl2 4 :Eu,Nd,Yb、CaAl2 4 :Eu,Nd,Lu、CaAl2 4 :Eu,Nd,Mn、CaAl2 4 :Eu,Nd,Sn、CaAl2 4 :Eu,Nd,Bi、Ca0.9 Sr0.1 Al2 4 :Eu,Nd,La、Ca0.9 Sr0.1 Al2 4 :Eu,Nd,Dy、Ca0.7 Sr0.3 Al2 4 :Eu,Nd,Dy、Ca0.9 Sr0.1 Al2 4 :Eu,Nd,Ho、Ca0.7 Sr0.3 Al2 4:Eu,Nd,Ho、硫化亜鉛化合物、B2 3 ・SrO・Al2 3 化合物を挙げることができる。これらは1種を選んで用いることができ、また2種以上の混合物として使用することもできる。
【0020】
本発明における耐水性で透光性の樹脂16には、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂をはじめとして、各種の耐水性を有する樹脂が使用できる。塗布厚さは9μm以上、14μm以下であることが望ましい。塗布厚さがこの範囲より小さいと被覆が十分でなくなり、耐水性の低下する傾向がみられる。塗布厚さが少ないと後述の耐薬品性も低下する。他方、塗布厚さがこの範囲より大きく厚くなり過ぎると、再帰反射の光学特性に影響が生じる傾向がみられ、また、コストアップにもなる。
【0021】
本発明において、蓄光ビーズ10は、施工時の供給の際に流動性を確保する観点から、すでに述べた通り、球状の粒子であることが好ましい。この場合、蓄光ビーズが塗料中に存在するときに、蓄光ビーズ10の粒子の外形が球状であればよく、従って被覆を有する場合には被覆された蓄光ビーズ10の粒子の外形が球状になっていればよい。なお、本発明における球状粒子は、粒子の最長の径と最短の径との比の平均値で0.7〜1.3の範囲内であるものが好ましく、またこの値が0.9〜1.1の範囲内にあるものがさらに好ましい。
【0022】
蓄光ビーズ10において、ガラスビーズ12の周囲に配置される蓄光顔料14の量が少なければ再帰反射性は高いが蓄光性が小さく、他方で蓄光顔料14の量が多くなると再帰反射性が低下するが、蓄光性は増す。このため、ガラスビーズ12の周囲に配置される蓄光顔料14の量はこれらの兼ね合いから、重量比でガラスビーズの0.1〜10%の範囲であることが好ましく、また0.5〜5%の範囲であることがさらに好ましい。これらガラスビーズ12と蓄光顔料14とを被覆する樹脂の量は、被覆によって耐水性を確保するのに十分な量であればよい。
【0023】
蓄光ビーズ10は、ガラスビーズの表面に蓄光顔料を付着させ、これを液状の樹脂で被覆し硬化させる方法、あるいはガラスビーズの表面に蓄光顔料を含有させた液状の樹脂で被覆し硬化させる方法、などの方法によって製造することができる。
【0024】
ガラスビーズ12は、より高い再帰反射特性を得る観点から、ほぼ球状で粒子径が0.01〜2mmのものが好ましく、ほぼ球状で粒子径が0.1〜1mmのものをがさらに好ましい。これらのガラスビーズは、屈折率が1.5〜2.5の程度であり、その光屈折によって入射光が再帰反射される。すでに述べたように、ガラスビーズ12を球状にし、このガラスビース12の周囲に蓄光顔料14を配置し樹脂16で被覆した蓄光ビーズ10を球形にすることにより、これを含有させた塗料の流動性を高めることができる。例えばホッパーのノズルから塗料の塗布された路面にこれらの粒子を供給する際に、ノズルのつまりがなく、安定した粒子供給が可能になり、安定した塗布作業ができるようになる。
【0025】
蓄光ビーズ10を含有させ、標示物の形成などに用いる塗料の作成においては、塗料添加剤として二酸化チタン、黄鉛などの着色顔料、炭酸カルシウム、タルクなどの体質顔料などを用いることができる。これらを分散させる分散媒としては、主として水を用いることができるほか、必要に応じ芳香族系、ケトン系、エステル系、アルコール系などの溶剤を用い、塗料化することができる。道路の路面標示用塗料では、ペイント式として常温式または加熱式の形で用いられる。路面表示用の施工物の形成には、このほかに溶剤を用いるペイント式ではない溶融式が用いられ、これらのいずれの場合に対しても適用が可能である。
【0026】
これらの標示物を施工する際には、図2に示したように、蓄光ビーズ10を標示物20のベース22上の塗膜24の表面近くに存在させると、蓄光機能と再帰反射機能に対する塗料の影響を少なくできるので好ましい。このため、蓄光ビーズ10を表示物に付与する方法として、塗料中に蓄光ビーズ10を添加し混合して塗布する方法のほかに、蓄光ビーズ10が標示物の表面近くに存在するようにするために、すでに述べたように、未乾燥の塗膜22の上に蓄光ビーズ10を散布して固定させる方法を用いることができる。
(実施例1)
【0027】
日本道路公団「レーンマーク試験施工要領」に準拠し、塗布面1平方メートル当たり、ペイント0.4Lに蓄光ビーズ0.42kgを散布した施工物を試料板上に形成した試料を作製し、この試料の蓄光機能として、照射終了後の経過時間による輝度変化および再帰反射機能を測定した。ここで用いた蓄光ビーズは、根本特殊化学(株)製の蓄光顔料GSS300FF(平均粒径4μm、粒径分布幅0.5−8μm)を、ガラスビーズに対し重量比較で2%をガラスビーズの周囲に配置し、アクリルシリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(旧GE東芝シリコーン社)製 シリコーンアクリルワニスTSR171)にて厚さ10μmの被覆をした樹脂被覆粒子である。
【0028】
図3は作製した試料の断面を模式的に示した図である。図3に示したように、試料30は蓄光ビーズ32を、試料ボード34の上に塗布した塗料36に散布し固定したものである。塗料36としては、エポキシ塗料と水性塗料であるラテックス塗料の2種類を用いた。
【0029】
蓄光機能の測定は、安全標識板に関するJIS Z 9100に基づいて行なった。輝度の測定には(株)トプコン製のBM−5Aを用い、測定角は2度、測定距離を1.1mとして行った。また照射用光源には、色比較・色検査用D65蛍光ランプ(東芝ライテック(株)製)を用いた。施工物に対し、この照射光を20分照射し、照射を止めてから5分後、10分後、20分後、及び60分後の輝度を測定した。測定箇所は試料の面のほぼ中央とした。その範囲は約27mmである。
【0030】
この結果を表1に示す。
【表1】

【0031】
この照射後の発光輝度の経過時間変化を図4に示した。表1または図4から、照射後60分を経過しても発光がみられ、蓄光性を示すことが確認された。
【0032】
また上記の蓄光性測定に用いた試料に対し、再帰反射性の測定を行った。 測定には、再帰反射機能測定器(MX−7)を用い、サンプル板のほぼ中央の5ヶ所について行い、これら5ヶ所の測定値の平均値を再帰反射輝度として表2に示した。表2には、参照試料として、表面に蓄光顔料を有しないガラスビーズのまま、上記試料と同じ重量を散布し、塗料に固定したものを用意し、同じ条件で再帰反射輝度の測定を行い、試料の再帰反射輝度測定の結果と比較した。
【0033】
表2は測定の結果である。周囲に蓄光顔料を有する蓄光ビースを散布し固定した試料の再帰反射輝度は、ガラスビーズをそのまま散布し固定した試料の再帰反射輝度の約1/4になっているものの、十分な再帰反射輝度を示すことが確認された。
【表2】

【0034】
次に上記の各試料を水中に浸漬し、浸漬時間の経過によるの蓄光機能の変化を調べた。図5にその結果を示す。
【0035】
図5にみられるように、水に浸漬した時間が4ヶ月を経過しても、蓄光機能の変化はが全くみられないという結果を得た。併せて再帰反射性の測定も行ったが、再帰反射性についても、水に浸漬したことによる変化は時間が4ヶ月を経過しても全くみられず、高い耐水性を有していることが確認された。
(実施例2)
本発明に係る蓄光性ビーズの耐薬品性試験を行った。蓄光性ビース構成は、実施例1の場合と同様、根本特殊化学(株)製の蓄光顔料GSS300FF(平均粒径4μm、粒径分布幅0.5−8μm)を、ガラスビーズに対し重量比較で2%をガラスビーズの周囲に配置し、アクリルシリコーン樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(旧GE東芝シリコーン社)製 シリコーンアクリルワニスTSR171)にて厚さ10μmの被覆をした樹脂被覆粒子である。
試験のための薬品液として、1)95%エチルアルコール、 2)2%苛性ソーダ、 3)0.4%塩酸、 4)純水(リファレンス)、の4種を各10mlずつ用意し、これらの各薬品液に、この蓄光性ビーズを4gずつ浸漬し、このあと2日間浸漬した状態を保ったのちに取り出て、それぞれの外観性状、照射後の輝度とその時間変化、および再帰反射輝度を調べた。その結果、いずれの場合にも、浸漬前と比較して、有意の変化はみられず、これらの薬品に対し、耐薬品性を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、耐水性を有し蓄光性と再帰反射性を有する蓄光ビーズが得られ、屋外で使用でき、暗い場所や暗い時でも認識できる標示物の形成に使用できるようになった。こうした蓄光ビーズは、道路用標示の素材として有用であるほか、建築用標示やその他の装飾用標示にも用いることができるので、その産業上の利用可能性は大きいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る蓄光ビーズの一実施形態を示した模式的断面図である。
【図2】本発明に係る蓄光ビーズを用いた標示物の一例を示した図である。
【図3】本発明の実施例において、蓄光性と再帰反射性の測定及び水中浸漬によるこれらの変化の測定に用いた試料の模式的断面図である。
【図4】実施例の各試料に対して光を照射後の発光輝度の経過時間による変化を示した図である。
【図5】実施例の各試料を水に浸漬した後の浸漬時間による光輝度の変化を示した図である。
【符号の説明】
【0038】
10‥‥蓄光ビーズ、12‥‥ガラスビーズ、14‥‥蓄光顔料、16‥‥耐水性透光樹脂、20‥‥標示物、22‥‥ベース、24‥‥塗膜、30‥‥試料、32‥‥蓄光ビーズ、34‥‥試料ボード、36‥‥塗料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスビーズと、
前記ガラスビーズの周囲に配置された蓄光顔料と、
前記ガラスビーズと前記蓄光顔料とを被覆する耐水性透明性樹脂と
を備えた蓄光ビーズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−209294(P2009−209294A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55207(P2008−55207)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(501490704)ポッターズ・バロティーニ株式会社 (2)
【出願人】(597089989)有限会社北斗産業 (1)
【Fターム(参考)】