説明

蓄熱式バーナの流量測定方法及び流量測定回路

【課題】オリフィスを設置する位置が制限されず、合理的な給排ガス管の配置を実現できる蓄熱式バーナの流量測定方法及びその方法を用い得る給気排ガス装置の提供。
【解決手段】交互燃焼する蓄熱式バーナ1a,1bに各々直結する引出管2a,2bを備え、引出管2a,2bに繋がる給気ブリッジ3及び排ガスブリッジ4を備え、給気ブリッジ3及び排ガスブリッジ4における給気管連結部3J又は排ガス管連結部4Jの両側に各側で交互に開閉する遮断弁7を備え、引出管2a,2bを流通する気体の温度を検出する温度検出器10を設置し、引出管2a,2bに、オリフィス8、及びオリフィス前後の気圧差を検出する差圧検出器9を設置し、オリフィス8の前後に給気時及び排ガス時において旋回流の発生を抑制し得る直管部2Sa,2Sbを備え、差圧情報と温度情報を差圧・温度−流量特性に当て嵌め燃焼空気及び排ガスの流量を導出する蓄熱式バーナの流量測定回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式バーナを交互に燃焼させるリジェネバーナの給気排ガス回路に関し、特に、給気管及び排ガス管における流量測定方法及び流量測定回路に関する。
【背景技術】
【0002】
リジェネバーナは、蓄熱体を内蔵し、排ガスと燃焼空気を交互に流通させることにより、排ガスのもつ熱エネルギーを高い効率で回収し省エネルギーを図るものである。
リジェネバーナの燃焼制御には、排ガスと燃焼空気の流量制御が不可欠であり(例えば、下記特許文献1参照。)、従来、流量の検出は、オリフィスと、その前後に配置した圧力検出器と、温度検出器を用い、管内の温度に基づいて補正を施しつつ、オリフィス前後の差圧から流量を導く手法が採られている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169969号公報
【特許文献2】特開2009−024532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、各蓄熱式バーナから、各々引出管を経ると共に、更に、両蓄熱式バーナが給気経路として共用する管路(以下、給気ブリッジと記す。)、及び両蓄熱式バーナが排ガス経路として共用する管路(以下、排ガスブリッジと記す。)を経て、給気本管及び排ガス本管にそれぞれ一方向の流量を測定するために設置されていた。
【0005】
この様に、オリフィスを用いて一方向の流量を測定する前提では、オリフィスの設置箇所は、前記給気排ガス回路の機能構造上、設置箇所が各蓄熱式バーナの引出管を結ぶ給気ブリッジ又は排ガスブリッジを経た給気又は排ガス専用の配管に限られる。しかも、オリフィスを用いる際は、流速分布の偏りや旋回流を減少させるために所定長の直管部が必要であり、一般的には、流れ方向におけるオリフィスの直前に10D長(D:管の口径)、直後に5D長必要とされる。
【0006】
その結果、各々の直管部は限られた炉側方の配管スペースには収まらず、給気本管又は排ガス本管に設置する場合には、両本管の直管部をスペース上効率良く確保するために、給気管連結部又は排ガス管連結部から各バーナに至る配管にオフセットを与える必要があった。また、比較的高温な炉の天板上に設置することが余儀なくされることが多く、その結果、各種計器が好ましくない環境に置かれる場合が多かった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、流量計測器を設置する位置の制限を取り払い、合理的な給気管及び排ガス管の配置を実現できる蓄熱式バーナの流量測定方法及び流量測定回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為になされた本発明は、対となって交互燃焼する蓄熱式バーナに各々直結する引出管を備え、両蓄熱式バーナの引出管に繋がる給気ブリッジ及び排ガスブリッジを備え、給気ブリッジ及び排ガスブリッジの中間部に繋がる給気本管及び排ガス本管を備え、給気ブリッジ及び排ガスブリッジにおける給気管連結部又は排ガス管連結部の両側に各側で交互に開閉する遮断弁を備える給気排ガス回路に用いる流量測定方法及び流量測定回路である。
【0009】
当該方法及び給気排ガス回路は、各蓄熱式バーナの引出管を流通する気体の温度を検出する温度検出器を設置し、各蓄熱式バーナの引出管に、オリフィス、及びオリフィス前後の気圧差を検出する差圧検出器を設置し、引出管におけるオリフィスの前後に給気時及び排ガス時において旋回流の発生を抑制し得る長さの直管部を設け、演算手段により、差圧検出器から得た差圧情報と温度検出器から得た温度情報を、引出管の差圧・温度−流量特性に当て嵌め、燃焼空気及び排ガスの流量を導出することを特徴とする。
【0010】
各蓄熱式バーナの引出管を流通する気体の温度は、当該気体の流通経路のいずれで検出しても良いが、より精度の高い気温を検出するには、温度検出器をオリフィスが設置された引出管に設置することが望ましい。前記直管部の長さは、オリフィスの前後各々について、各管の口径の10倍以上必要であり、設置スペースや他の配管との組み合わせの関係より適宜設定することとなる。口径の11倍や12倍など、10倍を超える長さとしても、直管部を設ける目的上の不都合は無いが、長くしたからと言って当該目的上、顕著な利益が得られるものでもない。
【発明の効果】
【0011】
引出管におけるオリフィスの前後に給気時及び排ガス時において旋回流の発生を抑制し得る長さの直管部を設けることによって、各蓄熱式バーナの引出管にオリフィス、差圧検出器、及び温度検出器を設置できる。
引出管にオリフィスを設置できる結果、給気管連結部又は排ガス管連結部から各バーナに至る配管にオフセットを与えなければならない様な制限がなく、両バーナの配管を対称的に設置し、或いは計器の設置環境を考慮するなど、与えられた設置スペースに応じて合理的に設計することが可能となる(図5参照)。
また、運転状況は温度検出で把握でき、給気運転又は排ガス運転のいずれにあっても、差圧検出器から得た差圧情報及び温度検出器から得た温度情報を旋回流の影響が少ない引出管の差圧・温度−流量特性に当て嵌め、比較的正確な燃焼空気及び排ガスの流量を導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による蓄熱式バーナの流量測定回路及び蓄熱式バーナの一例を示す説明図である。
【図2】本発明による蓄熱式バーナの流量測定回路及び蓄熱式バーナの一例を示す説明図である。
【図3】本発明による蓄熱式バーナの流量測定回路が備える引出管の一例を示す説明図である。
【図4】本発明による蓄熱式バーナの流量測定回路及び蓄熱式バーナの制御網の一例を示す説明図である。
【図5】本発明による蓄熱式バーナの流量測定回路の実施態様例を示す側面図である。
【図6】従来の蓄熱式バーナの流量測定回路の実施態様例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による蓄熱式バーナの流量測定方法及び流量測定回路の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0014】
図1は、炉Xに装備された一対の蓄熱式バーナ(以下、バーナと記す)1a,1bと、両バーナ1a,1bについて、それらが交互に燃焼し交互に蓄熱する形態を採る際に採用される給気排ガス回路の一例を示したものである。
【0015】
図に示す給気排ガス回路は、両バーナ1a,1bに各々直結する引出管2a,2bと、両引出管2a,2bを通じて両バーナ1a,1bに繋がる給気ブリッジ3及び排ガスブリッジ4と、給気ブリッジ3及び排ガスブリッジ4の中間部に繋がる給気本管5及び排ガス本管6を備える。
【0016】
当該給気排ガス回路は、給気ブリッジ3及び排ガスブリッジ4における給気管連結部3J又は排ガス管連結部4Jの両側に各々遮断弁7,7を備え、給気本管5及び排ガス本管6に空気流量制御弁11及び排ガス流量制御弁12を備える。
更に、当該給気排ガス回路は、各蓄熱式バーナ1a,1bの引出管2a,2bに、流通方向で差圧−流量特性の異なるオリフィス8及び差圧検出器9を備え、各オリフィス8の近傍(当該例では、各バーナの蓄熱器とオリフィス8の間の配管)にそれぞれ温度検出器10を備えて流量測定回路を構成する(図1乃至図3参照)。
【0017】
当該流量測定回路の引出管2a,2bは、オリフィス8の前後に給気時及び排ガス時において旋回流の発生を抑制し得る長さの直管部2Sa,2Sbを備える。当該例の直管部2Sa,2Sbの長さは、オリフィス8の前後各々について、各引出管2a,2bの口径の10倍に設定されている。
【0018】
旋回流の発生を抑制するには、オリフィス8に対して流れの上流に当たる側に、直管部2Sa,2Sbの口径Dの10倍以上の長さの直管部2Sa(2Sb)を備え、且つ下流に当たる側に直管部2Sa,2Sbの口径Dの5倍以上の長さの直管部2Sb(2Sa)があれば良いが、当該例ではオリフィス8は双方向に用いるので、オリフィス8の前後各々に直管部2Sa,2Sbの口径Dの10倍以上の長さが必要となる。尚、炉Xの周囲の限られたスペースを無駄にしない為には、必要最低限の長さで足り、精々10数倍となる様に設計することが望ましい。
【0019】
遮断弁7は、給気管連結部3J又は排ガス管連結部4Jの各バーナ1a,1b側で交互に開閉し、且つ一方のバーナ1aが排ガス本管6側に通じれば他方のバーナ1bが給気本管5側に通じる様に互い違いに開閉する様に制御する(図1及び図2参照)。空気流量制御弁11及び排ガス流量制御弁12は、炉X内や引出管2a,2bの温度検出器10から温度情報を得ると共に、両バーナ1a,1bにおける引出管2a,2b内の流量情報を得て、炉X内における適正な燃焼状態が維持できる開閉量となる様に(例えば、炉X内が負圧とならない様に、或いは炉X内の温度が低下しない開閉量となる様に)制御する。
【0020】
これら遮断弁7並びに空気流量制御弁11及び排ガス流量制御弁12の制御は、炉Xの燃焼制御部13によって行われる(図4参照)。
炉の燃焼制御部13は、演算手段14を備え、当該例の演算手段は、前記流量測定回路の引出管2a,2bに設置した各オリフィスについて、温度補正を伴った、給気時と排ガス時における固有の差圧・温度−流量特性をそれぞれ保持し(当該例では、給気時と排ガス時における特性は異なるが、給気時と排ガス時の特性を等しくする場合もある)、差圧検出器9から得た差圧情報と温度検出器10から得た温度情報を、温度補正を伴うオリフィス8の前後に生じる差圧・温度−流量特性(数式又はテーブル)に当て嵌め、給気時及び排ガス時の流量を導出する。
【0021】
引出管2a,2bの中間部に入れたオリフィス8の前後に生じる圧力差を差圧検出器9で測定し、オリフィス8の前後に生じる差圧をベルヌーイの定理により開平し、差圧を流量に変換するリニアな差圧−流量特性を得る。ここで、流通方向で差圧−流量特性が異なるとは、この様にリニアな特性を導いた場合において、差圧−流量特性の傾きが、オリフィス8を給気時に通過する時と排ガス時に通過する時とで異なること等をいう。差圧−流量特性をリニアな特性に変換しない構成として差圧情報を当て嵌めることもできる。
【0022】
また、気体は温度と圧力によって体積が大きく変化することに鑑み、温度検出器10から得た温度情報に基づいて給気時及び排ガス時の流量を補正する。補正は、例えば、前記流量測定回路のオリフィス8に関する給気時及び排ガス時における固有の差圧・温度−流量特性から導いた値を、標準状態(例えば、20℃、一気圧)における体積流量(立米/h)に換算して保持する。
【0023】
給気時と排ガス時等の運転状況は、給気時の管内温度と排ガス時の管内温度との格差に基づき、温度検出器10から得た温度情報より判別し、当該判別結果から流量導出の際に当て嵌めるべき差圧・温度−流量特性を決定する。
【符号の説明】
【0024】
1a,1b 蓄熱式バーナ,
2a,2b 引出管,2Sa,2Sb 直管部,
3 給気ブリッジ,3J 給気管連結部,
4 排ガスブリッジ,4J 排ガス管連結部,
5 給気本管,6 排ガス本管,
7 遮断弁,8 オリフィス,9 差圧検出器,10 温度検出器,
11 空気流量制御弁,12 排ガス流量制御弁,
13 燃焼制御部,14 演算手段,
X 炉,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となって交互燃焼する蓄熱式バーナ(1a,1b)に各々直結する引出管(2a,2b)を備え、
両蓄熱式バーナ(1a,1b)の引出管(2a,2b)に繋がるに繋がる給気ブリッジ(3)及び排ガスブリッジ(4)を備え、
給気ブリッジ(3)及び排ガスブリッジ(4)の中間部に繋がる給気本管(5)及び排ガス本管(6)を備え、
給気ブリッジ(3)及び排ガスブリッジ(4)における給気管連結部(3J)又は排ガス管連結部(4J)の両側に各側で交互に開閉する遮断弁(7)を備える給気排ガス回路に用いる流量測定方法であって、
各蓄熱式バーナ(1a,1b)の引出管(2a,2b)を流通する気体の温度を検出する温度検出器(10)を設置し、
各蓄熱式バーナ(1a,1b)の引出管(2a,2b)に、オリフィス(8)、及びオリフィス前後の気圧差を検出する差圧検出器(9)を設置し、
引出管(2a,2b)におけるオリフィス(8)の前後に給気時及び排ガス時において旋回流の発生を抑制し得る長さの直管部(2Sa,2Sb)を設け、
差圧検出器(9)から得た差圧情報と温度検出器(10)から得た温度情報を、引出管(2a,2b)の差圧・温度−流量特性に当て嵌め、燃焼空気及び排ガスの流量を導出する蓄熱式バーナの流量測定方法。
【請求項2】
前記直管部(2Sa,2Sb)の長さは、オリフィスの前後各々について、各引出管(2a,2b)の口径(D)の約10倍である前記請求項1に記載の蓄熱式バーナの流量測定方法。
【請求項3】
対となって交互燃焼する蓄熱式バーナ(1a,1b)に各々直結する引出管(2a,2b)を備え、
両蓄熱式バーナ(1a,1b)の引出管(2a,2b)に繋がる給気ブリッジ(3)及び排ガスブリッジ(4)を備え、
給気ブリッジ(3)及び排ガスブリッジ(4)の中間部に繋がる給気本管(5)及び排ガス本管(6)を備え、
給気ブリッジ(3)及び排ガスブリッジ(4)における給気管連結部(3J)又は排ガス管連結部(4J)の両側に各側で交互に開閉する遮断弁(7)を備え、
各蓄熱式バーナ(1a,1b)の引出管(2a,2b)を流通する気体の温度を検出する温度検出器(10)を備え、
各蓄熱式バーナ(1a,1b)の引出管(2a,2b)に、オリフィス(8)、及びオリフィス前後の気圧差を検出する差圧検出器(9)を備え、
引出管(2a,2b)におけるオリフィス(8)の前後に給気時及び排ガス時において旋回流の発生を抑制し得る長さの直管部(2Sa,2Sb)を備え、
差圧検出器(9)から得た差圧情報と温度検出器(10)から得た温度情報を、引出管(2a,2b)の差圧・温度−流量特性に当て嵌め、燃焼空気及び排ガスの流量を導出する演算手段を備えた蓄熱式バーナの流量測定回路。
【請求項4】
前記直管部(2Sa,2Sb)の長さは、オリフィス(8)の前後各々について、各引出管(2a,2b)の口径(D)の約10倍である前記請求項3に記載の蓄熱式バーナの流量測定回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−13152(P2011−13152A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158992(P2009−158992)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000141808)株式会社宮本工業所 (22)
【Fターム(参考)】