蓄熱式バーナ及び加熱炉
【課題】 火炎の方向を切替可能とし、火炎の形状を最適なものとする。
【解決手段】 炉壁の一部としてのバーナタイルに形成されたガス供給孔内に、ガスを前方へ導出するバーナノズル7を配置し、ガス供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材13を備えた吸排気孔9,10を設け、更に、ガス供給孔内に、バーナノズル7を挟んで吸排気孔9,10の前方へ高圧空気を噴出するエアノズル7a,7bを配置する。エアノズル7aから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔10の前方へ導かれ、エアノズル7bから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔9の前方へ導かれる。
【解決手段】 炉壁の一部としてのバーナタイルに形成されたガス供給孔内に、ガスを前方へ導出するバーナノズル7を配置し、ガス供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材13を備えた吸排気孔9,10を設け、更に、ガス供給孔内に、バーナノズル7を挟んで吸排気孔9,10の前方へ高圧空気を噴出するエアノズル7a,7bを配置する。エアノズル7aから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔10の前方へ導かれ、エアノズル7bから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔9の前方へ導かれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式バーナ、及びこれを組み込んだ加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱式バーナとしては、特許文献1に記載のように、炉壁に互いに交差するように設けた二方向に連通孔を有する蓄熱体を備え、炉体内において前記蓄熱体の連通孔にそれぞれ吸排気管を接続すると共に、炉体内に面する蓄熱体の連通孔近傍にバーナノズルを配置し、一方の蓄熱体の連通孔に接続した吸排気管から燃焼空気を炉内に導入すると共に、炉内において前記蓄熱体の連通孔近傍のバーナノズルから燃料を噴出して燃焼させる一方、燃焼ガスを燃焼空間を介して炉内の蓄熱体における他方の蓄熱体の連通孔を連通させて排熱を回収する動作と、他方の蓄熱体の連通孔における吸排気管と他方の蓄熱体の連通孔近傍におけるバーナノズルとによる燃焼動作と共に、前記一方の蓄熱体の連通孔における排熱回収動作を交互に所定時間毎に実行するようにしたツインバーナタイプがある。
【0003】
前記特許文献1に記載のツインバーナタイプは、独立したバーナノズルが二本必要であると共に、それら二本のバーナノズルを交互に切り換える切り換え機構が不可欠である。そこで特許文献2や特許文献3に記載のように、燃料の噴出方向を左右切り換え可能としたバーナノズルの両側に吸排気孔をそれぞれ設けることで、左右に独立して設けていたバーナノズルを中央に集結して一本化した、コンビネーションバーナタイプが提案されている。
【0004】
又、前記特許文献3には、変更例として、バーナノズルの向きを変更することにより燃料噴出方向を切り換える方式のシングルバーナタイプが開示されており、更に、特許文献3には、従来例として、燃料に空気を燃焼前に予混合する構成が開示されている(図4)。又更に、引用文献4には、バーナノズルの先端を二股に分けて左右両方向へ燃料を噴出させる方式のシングルバーナタイプも開示されており、前者のものは燃料の噴出方向を変更可能なバーナがノズル一本で済むし、後者のものは、バーナノズルの向きを変更する必要もない。加えて、特許文献5に記載のように、燃料の噴出方向を真正面に向けたシングルバーナタイプもある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−54667号公報
【特許文献2】特開2002−81868号公報
【特許文献3】特開平8−285266号公報
【特許文献4】特開平9−89242号公報
【特許文献5】特開平6−46138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ツインバーナタイプやコンビネーションバーナタイプは、二本のバーナノズルを交互に利用するための切り換え機構が、又、バーナノズルの向きを変更することにより燃料噴出方向を切り換えるシングルバーナタイプでは、燃料噴出方向を変更するための切り換え機構がそれぞれ必要であるのに対し、バーナノズルの先端を二股に分けて左右両方向へ燃料を噴出させる方式のシングルバーナタイプでは、切り換えは不要であるが、燃焼空気を導入する吸排気孔側に噴出された燃料は完全燃焼されるものの、燃焼排ガスが導出される吸排気孔側に噴出された燃料は、吸排気孔内へ瞬時に吸い込まれ、不完全燃焼のまま排気されてしまう。又、特許文献5のシングルバーナタイプは、火炎が真正面に向かって広がるので、環状燃焼室内で火炎を右或いは左回りさせる加熱炉には不向きである。
【0007】
そして、特許文献3の従来例においては、燃料に空気を予混合しているが、燃料に対する空気の最適な比率は炉圧、空気圧、燃料圧に応じて変化し、炉圧、空気圧は炉温により大きく変化するから、最適な予混合を常に行うことは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、蓄熱式バーナにあって、炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、更に、燃料供給孔内に、バーナノズルを挟んで吸排気孔の前方へ高圧空気を噴出するエアノズルを配置し、エアノズルから噴出された高圧空気は、バーナノズルから導出された燃料を吸排気孔前方へ導くことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記発明にあって、吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、蓄熱式バーナにあって、炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、加熱炉にあって、上記蓄熱式バーナを組み込んだことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、高圧空気の作用により、火炎の方向を切替可能とし、火炎の形状を最適なものにすることができる、という効果を奏する。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、更に壁の設置をすることにより、上記効果に加えて、いわゆるショートパスを防いで燃焼効率を極めて良好にする、という効果を奏する。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、壁の設置をすることにより、ショートパスを防いで燃焼効率を極めて良好にする、という効果を奏する。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、上記効果を奏する加熱炉を提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る蓄熱式バーナを備えた加熱炉につき、適宜図面に基づいて説明する。図1は当該加熱炉1の縦断面図であり、図2は加熱炉1の横断面図である。加熱炉1の炉内中央には、るつぼ2が置かれている。又、加熱炉1の側壁には、ガスバーナユニット3を組み込んだバーナタイル4が装備されており、バーナタイル4が炉壁の一部となっている。
【0017】
加熱炉1は、横断面を円形とした上面開放の炉内空間を有し、その炉内空間に、断面U字状のるつぼ2が、上縁に設けられたフランジ部2aにてフローティング支持されていて、炉内空間の炉壁とるつぼ2の周面との間に環状燃焼室5が形成されている。なお、炉内空間の底面中央には台座6が設置されていて、その台座6上にるつぼを直接載せることもできる。
【0018】
ガスバーナユニット3は、1本のバーナノズル7と、その両脇に配置されたエアノズル7a,7bとを、突出状態で有している。バーナノズル7及びエアノズル7a,7bは、図3及び図4にも示すように、バーナタイル4の中央において貫かれた燃料供給孔としてのガス供給孔8内に配置されており、バーナノズル7及びエアノズル7a,7bの先端は、炉内空間に臨んでガス供給孔8の開口部より手前に位置決めされ、エアノズル7a,7bの先端は、バーナノズル7の先端と揃えるか、これより炉側に位置決めされている。又、ガス供給孔8内には、バーナノズル7から導出されるガスに点火するためのパイロットバーナ(図示せず)が組み込まれている。
【0019】
一方、各エアノズル7a,7bは、先端をバーナノズル7側へ向けられ、曲げられており、その先端から高圧空気を噴出可能である。ここで、高圧空気は、大気圧を上回り炉内に供給可能な限界圧力を下回るものであるが、後述の作用効果を顕著に得るための好適な圧力範囲は50kPa(キロパスカル)〜0.5MPa(メガパスカル)である。エアノズル7aから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔10の前方へ導かれ、エアノズル7bから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔9の前方へ導かれる。なお、ガスバーナユニット3におけるバルブを始めとするコントローラは、炉外に露出している。
【0020】
ガス供給孔8の左右には、吸排気孔9,10が設けられており、吸排気孔9,10は、切替弁11,12を介して、互いに吸気路と排気路に対し切替接続されるようになっている。又、吸排気孔9,10内には、通気可能な蓄熱材が充填されている。各吸排気孔9,10は、断面が上下に長い長方形状であり、炉内への開口部分に外側(及び上下)へ広がる傾斜面が形成されている。吸排気孔9,10内には、通気可能な蓄熱材13が充填されている。なお、吸気路の先にはブロアが接続され、排気路の先には煙突が接続される。
【0021】
そして、バーナタイル4の中央、より詳しくは吸排気孔9,10の間であって、ガス供給孔8の開口部の上下外方には、炉内へ突出する壁14,14が設けられている。
【0022】
次に、この加熱炉1の運転形態を説明する。右側の吸排気孔9が吸気路に接続され、左側の吸排気路10が排気路に接続された状態では、左側のエアノズル7bから高圧空気が噴出される一方、バーナノズル8の先端から噴出されたガスはパイロットバーナで着火され、ガス供給孔8から環状燃焼室5内に放出される。放出されたガスは、高圧空気により右側へ向けられ、右側の吸排気孔9から導入された燃焼空気及び高圧空気と混ざって火炎を形成し、その火炎は、燃焼空気と高圧空気の作用により、右側へ広がって流れる。
【0023】
火炎は、炉壁とるつぼとの間に形成された環状燃焼室5内を一巡する間、暖められた空気が上昇する自然法則に従って、るつぼ2の周面に沿ってスパイラル状に流れ、左側の吸排気孔9の正面あるいはその上方に到達した火炎ないし燃焼排ガスは、左側の吸排気孔10へと吸い込まれる。
【0024】
ここで、炉内に突出する壁14は、燃焼空気やガス、高圧空気を遮るので、燃焼空気等がすぐさま吸排気孔10に吸引されるいわゆるショートパスを防止することができ、不完全燃焼を防止して効率の良い燃焼に寄与する。
【0025】
又、高圧空気の噴射により、火炎の形状や方向を、環状燃焼室5に沿った適切なものとすることができる。更に、エアノズルをバーナノズルの両脇に設け、高圧空気を左又は右に切り替えて噴射することで、火炎の方向を左右に切り替えることができる。加えて、高圧空気の噴出により、燃焼空気とガスとの混合を促進することもでき、ガスに対する空気の予混合が不要となって構成をシンプルにすることができる。又、高圧であるため、炉圧の変動の影響をほとんど受けずに燃焼空気と共にガスと混合させることができ、高圧空気の供給圧を一定として簡易な動作で最適な燃焼を維持することができる。
【0026】
左側の吸排気孔10から導出された燃焼排ガスは、蓄熱材13を通過する際に熱交換され、煙突から放出される。蓄熱材の蓄熱量が一定値を超えた時点で、切替弁11,12を操作してそれまで吸気路と接続されていた吸排気孔9を排気路との接続に変更すると共に、排気路と接続されていた吸排気孔10を吸気路との接続に変更し、更に高圧空気の噴射元をエアバルブ7aに変更すると、火炎及び燃焼排ガスは前記と逆の方向に流れて炉内を一巡する。
【0027】
このとき、前記排気路に接続されていた吸排気孔10内の蓄熱材13に蓄積されていた熱エネルギは、吸気路に接続が切り替えられた吸排気孔10内において、吸入された空気との間で熱交換が行われ、それによって燃焼空気が予熱される。
【0028】
このように吸排気孔9,10を吸気路及び排気路に対して交互に切り替えることで、燃焼排ガスに含まれている熱エネルギが、燃焼空気の予熱に効率良く利用される。
【0029】
なお、主に上記実施形態を変更して成る、本発明の他の実施形態を例示する。一基の加熱炉に対して複数の蓄熱式バーナを設ける。バーナノズルを液体燃料用とする。吸排気孔の断面形状や経路、本数、蓄熱材の配置や個数、エアノズルの配置や本数等を他のものとする。
【0030】
又、燃焼ガスを燃焼空気側へ導くように高圧空気を噴出するエアノズルを、二台で一組となるツイン式蓄熱バーナにそれぞれ組み込む。すなわち、一台毎に吸排気孔と、燃料供給孔と、エアノズルとを設け、これを組み合わせる。
【0031】
あるいは、ガス供給孔の斜め左右上方に一方の一対の吸排気孔を設けると共に、前記ガス供給孔の斜め左右下方に他方の一対の吸排気孔を設け、更に高圧空気をバーナノズル先端の下方又は上方から、上方又は下方へ噴射可能な(一対の)エアノズルを設け、吸排気孔、バーナノズル、エアノズルの外側前方を共通に囲むチューブを設ける等といった構成を有するシングルエンドガスバーナ(チューブ内で燃焼する浸漬バーナ)とする。
【0032】
このような本発明を適用したチューブバーナにあっては、上記作用効果を奏する他、高圧空気により火炎をチューブ先端に持っていくことができ、高圧空気が供給されないことで火炎がチューブ先端に達せず吸排気孔からすぐさま排出される場合と比べて、極めて効率の良い燃焼を提供することができる、という作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナを備えた加熱炉の縦断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナを備えた加熱炉の横断面説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナの正面説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナの横断面説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 加熱炉
2 るつぼ
2a フランジ
3 バーナユニット
4 バーナタイル
5 環状燃焼室
6 台座
7 バーナノズル
7a,7b エアノズル
8 ガス供給孔
9,10 吸排気孔
11,12 切替弁
13 蓄熱材
14 壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式バーナ、及びこれを組み込んだ加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱式バーナとしては、特許文献1に記載のように、炉壁に互いに交差するように設けた二方向に連通孔を有する蓄熱体を備え、炉体内において前記蓄熱体の連通孔にそれぞれ吸排気管を接続すると共に、炉体内に面する蓄熱体の連通孔近傍にバーナノズルを配置し、一方の蓄熱体の連通孔に接続した吸排気管から燃焼空気を炉内に導入すると共に、炉内において前記蓄熱体の連通孔近傍のバーナノズルから燃料を噴出して燃焼させる一方、燃焼ガスを燃焼空間を介して炉内の蓄熱体における他方の蓄熱体の連通孔を連通させて排熱を回収する動作と、他方の蓄熱体の連通孔における吸排気管と他方の蓄熱体の連通孔近傍におけるバーナノズルとによる燃焼動作と共に、前記一方の蓄熱体の連通孔における排熱回収動作を交互に所定時間毎に実行するようにしたツインバーナタイプがある。
【0003】
前記特許文献1に記載のツインバーナタイプは、独立したバーナノズルが二本必要であると共に、それら二本のバーナノズルを交互に切り換える切り換え機構が不可欠である。そこで特許文献2や特許文献3に記載のように、燃料の噴出方向を左右切り換え可能としたバーナノズルの両側に吸排気孔をそれぞれ設けることで、左右に独立して設けていたバーナノズルを中央に集結して一本化した、コンビネーションバーナタイプが提案されている。
【0004】
又、前記特許文献3には、変更例として、バーナノズルの向きを変更することにより燃料噴出方向を切り換える方式のシングルバーナタイプが開示されており、更に、特許文献3には、従来例として、燃料に空気を燃焼前に予混合する構成が開示されている(図4)。又更に、引用文献4には、バーナノズルの先端を二股に分けて左右両方向へ燃料を噴出させる方式のシングルバーナタイプも開示されており、前者のものは燃料の噴出方向を変更可能なバーナがノズル一本で済むし、後者のものは、バーナノズルの向きを変更する必要もない。加えて、特許文献5に記載のように、燃料の噴出方向を真正面に向けたシングルバーナタイプもある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−54667号公報
【特許文献2】特開2002−81868号公報
【特許文献3】特開平8−285266号公報
【特許文献4】特開平9−89242号公報
【特許文献5】特開平6−46138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ツインバーナタイプやコンビネーションバーナタイプは、二本のバーナノズルを交互に利用するための切り換え機構が、又、バーナノズルの向きを変更することにより燃料噴出方向を切り換えるシングルバーナタイプでは、燃料噴出方向を変更するための切り換え機構がそれぞれ必要であるのに対し、バーナノズルの先端を二股に分けて左右両方向へ燃料を噴出させる方式のシングルバーナタイプでは、切り換えは不要であるが、燃焼空気を導入する吸排気孔側に噴出された燃料は完全燃焼されるものの、燃焼排ガスが導出される吸排気孔側に噴出された燃料は、吸排気孔内へ瞬時に吸い込まれ、不完全燃焼のまま排気されてしまう。又、特許文献5のシングルバーナタイプは、火炎が真正面に向かって広がるので、環状燃焼室内で火炎を右或いは左回りさせる加熱炉には不向きである。
【0007】
そして、特許文献3の従来例においては、燃料に空気を予混合しているが、燃料に対する空気の最適な比率は炉圧、空気圧、燃料圧に応じて変化し、炉圧、空気圧は炉温により大きく変化するから、最適な予混合を常に行うことは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、蓄熱式バーナにあって、炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、更に、燃料供給孔内に、バーナノズルを挟んで吸排気孔の前方へ高圧空気を噴出するエアノズルを配置し、エアノズルから噴出された高圧空気は、バーナノズルから導出された燃料を吸排気孔前方へ導くことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記発明にあって、吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、蓄熱式バーナにあって、炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、加熱炉にあって、上記蓄熱式バーナを組み込んだことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、高圧空気の作用により、火炎の方向を切替可能とし、火炎の形状を最適なものにすることができる、という効果を奏する。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、更に壁の設置をすることにより、上記効果に加えて、いわゆるショートパスを防いで燃焼効率を極めて良好にする、という効果を奏する。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、壁の設置をすることにより、ショートパスを防いで燃焼効率を極めて良好にする、という効果を奏する。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、上記効果を奏する加熱炉を提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る蓄熱式バーナを備えた加熱炉につき、適宜図面に基づいて説明する。図1は当該加熱炉1の縦断面図であり、図2は加熱炉1の横断面図である。加熱炉1の炉内中央には、るつぼ2が置かれている。又、加熱炉1の側壁には、ガスバーナユニット3を組み込んだバーナタイル4が装備されており、バーナタイル4が炉壁の一部となっている。
【0017】
加熱炉1は、横断面を円形とした上面開放の炉内空間を有し、その炉内空間に、断面U字状のるつぼ2が、上縁に設けられたフランジ部2aにてフローティング支持されていて、炉内空間の炉壁とるつぼ2の周面との間に環状燃焼室5が形成されている。なお、炉内空間の底面中央には台座6が設置されていて、その台座6上にるつぼを直接載せることもできる。
【0018】
ガスバーナユニット3は、1本のバーナノズル7と、その両脇に配置されたエアノズル7a,7bとを、突出状態で有している。バーナノズル7及びエアノズル7a,7bは、図3及び図4にも示すように、バーナタイル4の中央において貫かれた燃料供給孔としてのガス供給孔8内に配置されており、バーナノズル7及びエアノズル7a,7bの先端は、炉内空間に臨んでガス供給孔8の開口部より手前に位置決めされ、エアノズル7a,7bの先端は、バーナノズル7の先端と揃えるか、これより炉側に位置決めされている。又、ガス供給孔8内には、バーナノズル7から導出されるガスに点火するためのパイロットバーナ(図示せず)が組み込まれている。
【0019】
一方、各エアノズル7a,7bは、先端をバーナノズル7側へ向けられ、曲げられており、その先端から高圧空気を噴出可能である。ここで、高圧空気は、大気圧を上回り炉内に供給可能な限界圧力を下回るものであるが、後述の作用効果を顕著に得るための好適な圧力範囲は50kPa(キロパスカル)〜0.5MPa(メガパスカル)である。エアノズル7aから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔10の前方へ導かれ、エアノズル7bから噴出された高圧空気は、バーナノズル7を挟んで吸排気孔9の前方へ導かれる。なお、ガスバーナユニット3におけるバルブを始めとするコントローラは、炉外に露出している。
【0020】
ガス供給孔8の左右には、吸排気孔9,10が設けられており、吸排気孔9,10は、切替弁11,12を介して、互いに吸気路と排気路に対し切替接続されるようになっている。又、吸排気孔9,10内には、通気可能な蓄熱材が充填されている。各吸排気孔9,10は、断面が上下に長い長方形状であり、炉内への開口部分に外側(及び上下)へ広がる傾斜面が形成されている。吸排気孔9,10内には、通気可能な蓄熱材13が充填されている。なお、吸気路の先にはブロアが接続され、排気路の先には煙突が接続される。
【0021】
そして、バーナタイル4の中央、より詳しくは吸排気孔9,10の間であって、ガス供給孔8の開口部の上下外方には、炉内へ突出する壁14,14が設けられている。
【0022】
次に、この加熱炉1の運転形態を説明する。右側の吸排気孔9が吸気路に接続され、左側の吸排気路10が排気路に接続された状態では、左側のエアノズル7bから高圧空気が噴出される一方、バーナノズル8の先端から噴出されたガスはパイロットバーナで着火され、ガス供給孔8から環状燃焼室5内に放出される。放出されたガスは、高圧空気により右側へ向けられ、右側の吸排気孔9から導入された燃焼空気及び高圧空気と混ざって火炎を形成し、その火炎は、燃焼空気と高圧空気の作用により、右側へ広がって流れる。
【0023】
火炎は、炉壁とるつぼとの間に形成された環状燃焼室5内を一巡する間、暖められた空気が上昇する自然法則に従って、るつぼ2の周面に沿ってスパイラル状に流れ、左側の吸排気孔9の正面あるいはその上方に到達した火炎ないし燃焼排ガスは、左側の吸排気孔10へと吸い込まれる。
【0024】
ここで、炉内に突出する壁14は、燃焼空気やガス、高圧空気を遮るので、燃焼空気等がすぐさま吸排気孔10に吸引されるいわゆるショートパスを防止することができ、不完全燃焼を防止して効率の良い燃焼に寄与する。
【0025】
又、高圧空気の噴射により、火炎の形状や方向を、環状燃焼室5に沿った適切なものとすることができる。更に、エアノズルをバーナノズルの両脇に設け、高圧空気を左又は右に切り替えて噴射することで、火炎の方向を左右に切り替えることができる。加えて、高圧空気の噴出により、燃焼空気とガスとの混合を促進することもでき、ガスに対する空気の予混合が不要となって構成をシンプルにすることができる。又、高圧であるため、炉圧の変動の影響をほとんど受けずに燃焼空気と共にガスと混合させることができ、高圧空気の供給圧を一定として簡易な動作で最適な燃焼を維持することができる。
【0026】
左側の吸排気孔10から導出された燃焼排ガスは、蓄熱材13を通過する際に熱交換され、煙突から放出される。蓄熱材の蓄熱量が一定値を超えた時点で、切替弁11,12を操作してそれまで吸気路と接続されていた吸排気孔9を排気路との接続に変更すると共に、排気路と接続されていた吸排気孔10を吸気路との接続に変更し、更に高圧空気の噴射元をエアバルブ7aに変更すると、火炎及び燃焼排ガスは前記と逆の方向に流れて炉内を一巡する。
【0027】
このとき、前記排気路に接続されていた吸排気孔10内の蓄熱材13に蓄積されていた熱エネルギは、吸気路に接続が切り替えられた吸排気孔10内において、吸入された空気との間で熱交換が行われ、それによって燃焼空気が予熱される。
【0028】
このように吸排気孔9,10を吸気路及び排気路に対して交互に切り替えることで、燃焼排ガスに含まれている熱エネルギが、燃焼空気の予熱に効率良く利用される。
【0029】
なお、主に上記実施形態を変更して成る、本発明の他の実施形態を例示する。一基の加熱炉に対して複数の蓄熱式バーナを設ける。バーナノズルを液体燃料用とする。吸排気孔の断面形状や経路、本数、蓄熱材の配置や個数、エアノズルの配置や本数等を他のものとする。
【0030】
又、燃焼ガスを燃焼空気側へ導くように高圧空気を噴出するエアノズルを、二台で一組となるツイン式蓄熱バーナにそれぞれ組み込む。すなわち、一台毎に吸排気孔と、燃料供給孔と、エアノズルとを設け、これを組み合わせる。
【0031】
あるいは、ガス供給孔の斜め左右上方に一方の一対の吸排気孔を設けると共に、前記ガス供給孔の斜め左右下方に他方の一対の吸排気孔を設け、更に高圧空気をバーナノズル先端の下方又は上方から、上方又は下方へ噴射可能な(一対の)エアノズルを設け、吸排気孔、バーナノズル、エアノズルの外側前方を共通に囲むチューブを設ける等といった構成を有するシングルエンドガスバーナ(チューブ内で燃焼する浸漬バーナ)とする。
【0032】
このような本発明を適用したチューブバーナにあっては、上記作用効果を奏する他、高圧空気により火炎をチューブ先端に持っていくことができ、高圧空気が供給されないことで火炎がチューブ先端に達せず吸排気孔からすぐさま排出される場合と比べて、極めて効率の良い燃焼を提供することができる、という作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナを備えた加熱炉の縦断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナを備えた加熱炉の横断面説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナの正面説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る蓄熱式バーナの横断面説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 加熱炉
2 るつぼ
2a フランジ
3 バーナユニット
4 バーナタイル
5 環状燃焼室
6 台座
7 バーナノズル
7a,7b エアノズル
8 ガス供給孔
9,10 吸排気孔
11,12 切替弁
13 蓄熱材
14 壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、
燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、
更に、燃料供給孔内に、バーナノズルを挟んで吸排気孔の前方へ高圧空気を噴出するエアノズルを配置し、
エアノズルから噴出された高圧空気は、バーナノズルから導出された燃料を吸排気孔前方へ導く
ことを特徴とする蓄熱式バーナ。
【請求項2】
吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱式バーナ。
【請求項3】
炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、
燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、
吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けた
ことを特徴とする蓄熱式バーナ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の蓄熱式バーナを組み込んだ
ことを特徴とする加熱炉。
【請求項1】
炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、
燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、
更に、燃料供給孔内に、バーナノズルを挟んで吸排気孔の前方へ高圧空気を噴出するエアノズルを配置し、
エアノズルから噴出された高圧空気は、バーナノズルから導出された燃料を吸排気孔前方へ導く
ことを特徴とする蓄熱式バーナ。
【請求項2】
吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱式バーナ。
【請求項3】
炉壁に形成された燃料供給孔内に、燃料を前方へ導出するバーナノズルを配置し、
燃料供給孔を挟んだ両脇に、通気可能な蓄熱材を備えた吸排気孔を設け、
吸排気孔の間に、炉内へ突出する壁を設けた
ことを特徴とする蓄熱式バーナ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の蓄熱式バーナを組み込んだ
ことを特徴とする加熱炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−278670(P2007−278670A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109084(P2006−109084)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000140362)株式会社横井機械工作所 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000140362)株式会社横井機械工作所 (9)
【Fターム(参考)】
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