説明

蓄熱性ゲル、その製造方法及びそれを用いた蓄熱材

【課題】成形性、耐候性、耐湿性に優れ、特にオイル等のブリードが起こらず、広範な硬度調整が可能な蓄熱性ゲル、その製造方法及びそれを用いた蓄熱材の提供。
【解決手段】シリコーンゲル90〜10容量%と、シェル内に、好ましくは融点が0〜80℃である潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセル10〜90容量%とを含有することを特徴とする、好ましくはJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250である蓄熱性ゲル、その製造方法及び、それを包材内等に封入した蓄熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱性ゲル、その製造方法及びそれを用いた蓄熱材に関し、詳しくは、シリコーンゲルと潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセルとからなる蓄熱性ゲル、その製造方法及びそれを用いた蓄熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を冷却又は加温状態に保持する蓄熱材、とりわけ身近な蓄熱材としては、相転移に伴う潜熱を利用して、狭い温度域に多量の熱を蓄えたり放出することが可能な化合物である水、脂肪族炭化水素化合物等をマイクロカプセル内に含有させた蓄熱材が知られている。これらの蓄熱材は、建材、衣類などへの利用が検討されている。
例えば、相変化を有する化合物を内包するマイクロカプセルをスチレン−ブタジエン共重合体等のバインダー樹脂で固形化した蓄熱材(例えば、特許文献1参照。)、マイクロカプセル化した潜熱蓄熱剤を水を溶媒とするヒドロゲルやオイルを溶媒とするリポゲルに分散させた保冷材、保温材(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。しかし、これらのバインダー樹脂やゲルからは、水分、油分が滲出する恐れがあったり、蓄熱材の滲出を防ぐために利用の際の封入等で大きな制限を受け成形性に大きな問題を有していた。
【特許文献1】特開平7−133479号公報
【特許文献2】特開2005−255726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、成形性、耐候性、耐湿性に優れ、特にオイル等のブリードが起こらず、広範な硬度調整が可能な蓄熱性ゲル、その製造方法及びそれを用いた蓄熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シリコーンゲルに特定量のシェル内に潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセルを含有させることにより、成形性、耐候性、耐湿性に優れ、特にオイル等のブリードが起こらず、広範な硬度調整が可能な蓄熱性ゲルが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、シリコーンゲル90〜10容量%と、シェル内に潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセル10〜90容量%とを含有することを特徴とする蓄熱性ゲルが提供される。
【0006】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、潜熱蓄熱剤の融点が0〜80℃であることを特徴とする蓄熱性ゲルが提供される。
【0007】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、シリコーンゲルの硬度がJIS K2220(50g荷重)で規定される1/4コーンちょう度が20〜150、またはJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250であることを特徴とする蓄熱性ゲルが提供される。
【0008】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、蓄熱性ゲルのJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250であることを特徴とする蓄熱性ゲルが提供される。
【0009】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、シェル内に潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセルの存在下に、シリコーン化合物の硬化反応によってシリコーンゲルの製造をすることを特徴とする蓄熱性ゲルの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の蓄熱性ゲルを包材内に封入したことを特徴とする蓄熱材が提供される。
【0011】
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明の蓄熱材を用いたことを特徴とする枕が提供される。
【0012】
また、本発明の第8の発明によれば、第6の発明の蓄熱材を用いたことを特徴とするマットレスが提供される。
【0013】
また、本発明の第9の発明によれば、第6の発明の蓄熱材を用いたことを特徴とするペット用保冷シートが提供される。
【0014】
また、本発明の第10の発明によれば、第6の発明の蓄熱材を用いたことを特徴とする後頚部保冷シートが提供される。
【0015】
また、本発明の第11の発明によれば、第6の発明の蓄熱材を用いたことを特徴とする足裏保冷シートが提供される。
【0016】
また、本発明の第12の発明によれば、第6の発明の蓄熱材を用いたことを特徴とする携帯カイロ用保温シートが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓄熱性ゲルは、成形性、耐候性、耐湿性に優れ、特にオイル等のブリードが起こらず、広範な硬度調整が可能な蓄熱性ゲルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、シリコーンゲルと、シェル内に潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセルとを含有する蓄熱性ゲルである。以下に、蓄熱性ゲルの構成成分、製造方法、用途について詳細に説明する。
【0019】
1.蓄熱性ゲルの構成成分
(i)シリコーンゲル
本発明で用いるシリコーンゲルとしては、従来から知られ、市販されている種々のシリコーン材料として一般的に使用されているケイ素化合物を適宜選択して用いることができる。よって、加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができ、特に2液硬化型シリコーン組成物から得られるシリコーンゲルが好ましい。また、ケイ素原子に結合する基も特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基のほか、これらの基の水素原子が部分的に他の原子又は結合基で置換されたものを挙げることができる。
【0020】
本発明で用いるシリコーンゲルは、硬化後におけるJIS K2220(50g荷重)で規定される1/4コーンちょう度が20〜150、またはJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250であることが好ましく、より好ましくは1/4コーンちょう度が60〜150、針入度が50〜200である。針入度が30未満であると硬すぎて反発力が強く、枕やマットレスに使用した場合、快適な睡眠が得られない。また、1/4コーンちょう度が150を超えると柔らかすぎてゲルの破断が起き、本来の性能が得られない恐れがある。
シリコーンゲルは、上記硬さを備え、温度特性に優れ、溶出の点でも心配がなく、変質せず、耐久性がある等の基本的な諸物性を満たすものであれば、いずれのものも適用できるものである。
ここで、1/4コーンちょう度はJIS K2220(50g荷重)に、また針入度はJIS K2207−1980(50g荷重)にそれぞれ準拠して求める値である。
【0021】
(ii)シェル内に潜熱蓄熱剤が内包されたマイクロカプセル
本発明で用いるシェル内に潜熱蓄熱剤が内包されたマイクロカプセルは、相転移に伴う潜熱を利用して蓄熱することのできる蓄熱剤がマイクロカプセル内に内包されたものである。潜熱蓄熱剤とは、固体−液体の転移のような可逆的な相転移に伴う潜熱の吸収を利用すべく設計された物質で、液体−固体の相転移の際には潜熱の放出を利用する。従って、この物質を熱の吸収材として用いると、一定量の熱エネルギーが相変化物質により吸収されてからその温度が上昇するので、対象物を付加的な熱から保護することができる。相変化物質はまた予熱して寒さに対する障壁として用いることもでき、この場合は相変化物質からより多量の熱が除去された後、その温度が下がり始めるからである。本発明に好ましい潜熱蓄熱剤は、主に可逆的な固体−液体転移を利用するものである。
【0022】
潜熱蓄熱剤としては、融点が0〜80℃であって、融点あるいは凝固点を有する化合物であれば使用可能であるが、例えば、好ましい化合物としては、n−デカン、テトラデカン、ペンタデカン、エイコサン、ドコサンの如き炭素数が10以上の脂肪族炭化水素が好ましい化合物として挙げられる。これらの脂肪族炭化水素化合物は、炭素数の増加とともに融点が上昇するため、目的に応じた融点を有する脂肪族炭化水素化合物を選択したり、2種以上を混合することも可能である。潜熱蓄熱剤の融点が0℃未満であると保温機能を作用させるためには、0℃以上に蓄熱性ゲルを保持したのち、ゲルへの接触物の温度は0℃未満であることが必要である。また潜熱蓄熱剤の融点が80℃を超えると保冷機能を作用させるためには、80℃以下に蓄熱性ゲルを保持したのち、ゲルへの接触物の温度は80℃を超えることが必要である。本発明の蓄熱性ゲルの用途が、主として人またはペット向け保温剤であることを考慮するといずれも非実用的な温度域である。
【0023】
本発明で用いられるマイクロカプセルは、皮膜の内側に潜熱蓄熱剤を内包した微少な粒子である。一般に蓄熱剤をマイクロカプセル化する方法としては、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱剤粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(同62−45680号公報)、蓄熱剤粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(同62−149334号公報)、蓄熱剤粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(同62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等に記載されている方法を用いることができる。
【0024】
マイクロカプセル膜材としては、界面重合法、インサイチュー法等の手法で得られる、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、またゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられるが、高温で樹脂と混合されるため熱的に安定な熱硬化性樹脂皮膜を有するマイクロカプセルが好ましく、特に脂肪族系炭化水素化合物でも良好な品質のマイクロカプセルが得られるインサイチュー法による尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂皮膜を用いたマイクロカプセルが好ましい。
【0025】
付加型シリコーン化合物を用いる場合、マイクロカプセル膜材に燐、硫黄、アミン等の化合物が含まれていれば付加型シリコーン化合物の硬化反応を阻害する。従って、これらの硬化阻害物質を含まない膜材を用いるのが好ましい。硬化阻害物質を含む膜材の使用が避けられない場合、硬化阻害物質を含まない他の膜材でマイクロカプセル表面を覆う再被膜処理を行なうのが好ましい。
マイクロカプセル膜材に軟化点の高い硬質樹脂材を用いれば、温度変化により潜熱蓄熱材が相変化を起こしても蓄熱性ゲルの硬度は変わらず、枕、マットレス等の蓄熱材用途には好ましい。
【0026】
本発明に用いるマイクロカプセルの粒子径は、加工過程で物理的圧力による破壊を防止するために10μm以下、特に好ましくは5μm以下が好ましい。マイクロカプセルの粒子径は、カプセル作製時に用いる乳化剤の種類と濃度、乳化時の乳化液の温度、乳化比(水相と油相の体積比率)、乳化機、分散機等と称される微粒化装置の運転条件(攪拌回転数、時間等)等を適宜調節して所望の粒子径に設定する。この粒子径以上になるとマイクロカプセルが外圧で容易に壊れやすくなったり、蓄熱剤の比重が分散媒のそれと大きく差がある場合など、浮遊したり沈降したりし易くなるので好ましくない。
【0027】
(iii)シリコーンゲルとマイクロカプセルの量比
本発明の蓄熱性ゲルにおいて、シリコーンゲルとマイクロカプセルの量比は、シリコーンゲルが、90〜10容量%、好ましくは60〜30容量%であり、マイクロカプセルが、10〜90容量%、好ましくは40〜70容量%である。シリコーンゲルの量が90容量%を超え、マイクロカプセルの量が10容量%未満であると蓄熱性ゲルの硬度が極端に低く、また蓄熱マイクロカプセルの配合量が低く、蓄熱効果を発揮できない。シリコーンゲルの量が10容量%未満で、マイクロカプセルの量が90容量%を超えると蓄熱性ゲルの硬度が高くなり加工が困難である。
【0028】
(iv)その他の成分
本発明の蓄熱性ゲルは、シリコーンゲルと潜熱蓄熱剤を内包したマイクロカプセルとからなるが、これらの成分に加え、必要に応じて、熱伝導性充填材、老化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、有機顔料、無機顔料、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、分散剤、防カビ剤、帯電防止剤、難燃化剤、粘着付与剤、硬化剤、発泡剤、合成繊維、合成樹脂類、ガラス繊維、金属繊維、断熱材、VOC除去材、活性炭、吸放湿剤などを添加することが可能である。
【0029】
2.蓄熱性ゲルの製造
本発明の蓄熱性ゲルは、上記シリコーンゲルに上記シェル内に潜熱蓄熱剤が内包されたマイクロカプセルを分散させて得られ、その製造方法としては、特に限定されず、シリコーンゲルとマイクロカプセル、及び他の添加剤等を、単軸、2軸などの押出機のような溶融混練機にて溶融混練する方法、ケイ素化合物のゲル化時にマイクロカプセルを存在させてゲル化させる方法等がある。これらの方法の中では、マイクロカプセルの存在下に2種類のケイ素化合物の硬化反応によりシリコーンゲルを生成させる方法が、マイクロカプセルのシリコーンゲル中での分散を効率的に行なえることから好ましい。
【0030】
3.蓄熱性ゲル
本発明の蓄熱性ゲルは、JIS K2207−1980(50g荷重)の針入度が30〜250であることが好ましく、より好ましくは60〜200である。針入度が30未満であると硬すぎて身体が接触した際に快適なフィット感が得られなく、250を超えると柔らかすぎて身体が接触した際に適度なホールド性が得られないためである。
本発明の蓄熱性ゲルは、上記のような硬度を有しているため、成形性に優れ、また、シリコーン樹脂を基材としているため、耐候性、耐湿性に優れる。さらに、オイル等で硬度調整を行う必要がないため、ゲルからのオイル等のブリードが起こらない特徴を有している。さらに、繰り返し利用した後でも潜熱蓄熱剤の滲み出しがなく、蓄熱量の低下が起こらないため、繰り返し利用した後でも高い蓄熱性能が維持される特徴を有する。
【0031】
4.蓄熱性ゲルの用途
本発明の蓄熱性ゲルは、相変化を有する潜熱蓄熱剤を内包したマイクロカプセルを含有するシリコーンゲル組成物であるので、対象物の温度が上がりにくい、下がりにくいという効果を付与することができるため、保冷あるいは保温材として利用可能である。対象物を冷却又は加温状態に保持する蓄熱材として、枕、マットレス、ペット用保冷シート、後頸部保冷シート、足裏保冷シート、携帯カイロ用保温シート等の用途に用いることができる。
特に、蓄熱性ゲルをシート等に成形した後、包材内に封入、密閉して用いると強度が向上し、対象物に不要に密着したり、汚れ等が付着することがなく使用できる。例えば、枕等への使用に際しては、本発明の蓄熱性ゲルをシート化し、ポリウレタン等のフィルムで覆って熱融着して蓄熱材とし、その蓄熱材を枕と枕カバーの間、あるいはマットレスとカバーの間に挿入して使用することができる。また、フィルムで覆った上記蓄熱材を不織布やポリエステル製の袋に入れて首に巻くことにより後頸部保冷シートとして、さらに医療用粘着テープ等で蓄熱材を足裏へ貼付することにより足裏保冷シートとして使用することができる。
また、蓄熱性ゲルを熱伝導性ゲルとの積層状態で用いれば熱伝導率が向上し吸熱、放熱効果が向上する。
【実施例】
【0032】
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれら実施例によって制約を受けるものではない。
【0033】
(実施例1)
25℃における粘度が300mPa.s(A液)と290mPa.s(B液)である2液硬化型シリコーン組成物(信越化学工業(株)製SIG−1000−A/B)各300gずつ、及び融点が31℃である蓄熱性マイクロカプセルフィラー(三菱製紙(株)製FP−31M)400gを15分間混合後、室温下10分間真空脱泡した。70℃で1時間、さらに100℃で3時間加熱し硬化物(蓄熱性ゲル)を1000g得た。得られた硬化物の25℃における針入度は216であり、比重から算出した蓄熱性マイクロカプセルフィラーの含有量は43容量%であった。
一方、上記真空脱泡後の混合物を、加熱硬化前に縦×横×厚さ=130mm×175mm×2.5mmの金型3個に注入後、70℃1時間、さらに100℃で3時間加熱してゲルシート3枚を得た。この3枚のシートを密着して並べ、厚さ100μmのポリウレタンフィルムで覆い熱融着して蓄熱材を得た。得られた蓄熱材を低反発のウレタンフォームからなる枕基材と枕カバーの間に載せ、人が寝て枕に頭を載せる際に後頸部にあたるようにした。室温27〜28℃、湿度55〜65%に設定した室内で、20分間寝た際の後頸部が当たる枕の温度変化をウエーブサーモ(キーエンス社製)を用い、n=3で測定した。上昇した温度を表1に示す。
【0034】
(実施例2)
25℃における粘度が300mPa.s(A液)と290mPa.s(B液)である2液硬化型シリコーン組成物(信越化学工業(株)製SIG−1000−A/B)各250gずつ、及び融点が31℃である蓄熱性マイクロカプセルフィラー(三菱製紙(株)製FP−31M)500gを15分間混合後、室温下10分間真空脱泡した。70℃で1時間、さらに100℃で3時間加熱し硬化物(蓄熱性ゲル)を1000g得た。得られた硬化物の25℃における針入度は180であり、比重から算出した蓄熱性マイクロカプセルフィラーの含有量は53容量%であった。
また、実施例1と同様にして蓄熱材を得、得られた蓄熱材を用いた枕の温度変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
(実施例3)
25℃における粘度が300mPa.s(A液)と290mPa.s(B液)である2液硬化型シリコーン組成物(信越化学工業(株)製SIG−1000−A/B)各225gずつ、及び融点が31℃である蓄熱性マイクロカプセルフィラー(三菱製紙(株)製FP−31M)550gを15分間混合後、室温下10分間真空脱泡した。70℃で1時間、さらに100℃で3時間加熱し硬化物(蓄熱性ゲル)を1000g得た。得られた硬化物の25℃における針入度は157であり、比重から算出した蓄熱性マイクロカプセルフィラーの含有量は58容量%であった。
また、実施例1と同様にして蓄熱材を得、得られた蓄熱材を用いた枕の温度変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
(実施例4)
25℃における粘度が3500mPa.s(A液)と2900mPa.s(B液)である2液硬化型シリコーン組成物(東レ・ダウコーニング(株)製CF5057−A/B)をA液393gとB液321g、及び融点が25℃である蓄熱性マイクロカプセルフィラー(三菱製紙(株)製)286gを15分間混合後、室温下10分間真空脱泡した。70℃で1時間、さらに100℃で3時間加熱し硬化物(蓄熱性ゲル)を1000g得た。得られた硬化物の25℃における針入度は83であり、比重から算出した蓄熱性マイクロカプセルフィラーの含有量は30容量%であった。
また、実施例1と同様にして蓄熱材を得、得られた蓄熱材を用いた枕の温度変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
25℃における粘度が300mPa.s(A液)と290mPa.s(B液)である2液硬化型シリコーン組成物(信越化学工業(株)製SIG−1000−A/B)をA液270gとB液202g、及び水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製HS−341)1580gを15分間混合後、室温下10分間真空脱泡した。70℃で1時間、さらに100℃で3時間加熱し硬化物(蓄熱性ゲル)を2000g得た。得られた硬化物の25℃における針入度は100であり、比重から算出した水酸化アルミニウムの含有量は60容量%であった。
また、実施例1と同様にして蓄熱材を得、得られた蓄熱材を用いた枕の温度変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
(比較例2)
25℃における粘度が3500mPa.s(A液)と2900mPa.s(B液)である2液硬化型シリコーン組成物(東レ・ダウコーニング(株)製CF5057−A/B)のA液520gとB液480gを15分間混合後、室温下10分間真空脱泡した。70℃で1時間、さらに100℃で3時間加熱し硬化物を1000g得た。得られた硬化物の25℃における針入度は134だった。得られたシリコーンゲルを用いた枕の温度変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から明らかなように、蓄熱材を含む枕に20分間寝た場合の後頸部の温度変化は、0.5〜0.6℃と小さかった(実施例1〜4)が、蓄熱材を含まない枕では温度変化が2.0〜2.5℃と5倍から5倍大きかった(比較例1〜2)。すなわち、蓄熱材が冷却感の持続に有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の蓄熱性ゲルは、成形性、耐候性、耐湿性に優れ、特にオイル等のブリードが起こらず、広範な硬度調整が可能な蓄熱性ゲルであり、保冷あるいは保温材として利用可能である。対象物を冷却又は加温状態に保持する蓄熱材として、枕、マットレス、ペット用保冷シート、後頸部保冷シート、足裏保冷シート、携帯カイロ用保温シート等の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゲル90〜10容量%と、シェル内に潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセル10〜90容量%とを含有することを特徴とする蓄熱性ゲル。
【請求項2】
潜熱蓄熱剤の融点が0〜80℃であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱性ゲル。
【請求項3】
シリコーンゲルの硬度がJIS K2220(50g荷重)で規定される1/4コーンちょう度が20〜150、またはJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱性ゲル。
【請求項4】
蓄熱性ゲルのJIS K2207−1980(50g荷重)で規定される針入度が30〜250であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄熱性ゲル。
【請求項5】
シェル内に潜熱蓄熱剤を含有するマイクロカプセルの存在下に、シリコーン化合物の硬化反応を行ってシリコーンゲルの製造をすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱性ゲルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱性ゲルを包材内に封入したことを特徴とする蓄熱材。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄熱材を用いたことを特徴とする枕。
【請求項8】
請求項6に記載の蓄熱材を用いたことを特徴とするマットレス。
【請求項9】
請求項6に記載の蓄熱材を用いたことを特徴とするペット用保冷シート。
【請求項10】
請求項6に記載の蓄熱材を用いたことを特徴とする後頸部保冷シート。
【請求項11】
請求項6に記載の蓄熱材を用いたことを特徴とする足裏保冷シート。
【請求項12】
請求項6に記載の蓄熱材を用いたことを特徴とする携帯カイロ用保温シート。

【公開番号】特開2007−145915(P2007−145915A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339597(P2005−339597)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【出願人】(306011034)株式会社ジェルテック (11)
【Fターム(参考)】