説明

蓄熱性ゴム材料

【課題】蓄熱材を内包するマイクロカプセルを練り込んだ蓄熱性ゴム材料で、特に繰り返し使用された際にマイクロカプセル内包物である蓄熱材の漏出に由来する蓄熱機能の低下が小さい蓄熱性ゴム材料を提供することにある。
【解決手段】本発明の方法で作製することにより、蓄熱材を内包するマイクロカプセルを練り込んだ蓄熱性ゴム材料で、蓄熱材の漏出に由来する蓄熱機能低下を小さくしたオレフィン系蓄熱性ゴム材料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルを含有してなる蓄熱性ゴム材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境における快適性や省エネルギー対策が求められるなか、建築・土木材料、空調システム、車両等の内装材、機械機器や電気・電子機器、保冷・保温用品、カーテンやカーペット等のインテリア用品、寝具、衣料用品、日用雑貨用品等において、温度調節機能や定温保持機能を有する潜熱蓄熱材を含有する材料が提案されている。
【0003】
液体−固体間での相変化に伴い潜熱の蓄熱・放熱を行うことができる潜熱蓄熱材は、液体時には潜熱蓄熱材の流出が生じる。これを防ぐために、容器に入れる等の対策を施した上で使用される。その対策の一例が潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルであり、これを含有する蓄熱性樹脂組成物や蓄熱性ゴム材料が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。また、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルを含有した蓄熱性アクリル系樹脂組成物並びにそれを用いた蓄熱性シート状成形体も提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、これらの蓄熱性ゴム材料等は、繰り返し使用されることにより潜熱蓄熱材が漏出(ブリードアウト)したり、ゴム材料の劣化や形状変化が見られるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23229号公報
【特許文献2】特開2003−261716号公報
【特許文献3】特開昭63−178191号公報
【特許文献4】実公平6−25914号公報
【特許文献5】特開2000−314187号公報
【特許文献6】特開2007−31610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルを練り込んだ蓄熱性ゴム材料において、繰り返し使用された際に、マイクロカプセル内包物である潜熱蓄熱材の漏出が少なく、ゴム材料の劣化や形状変化が少ない蓄熱性ゴム材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の発明を見出した。
(1)潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルを含有してなる蓄熱性ゴム材料において、−10℃、10分間保持及び130℃、10分間保持を1サイクルとした熱サイクル試験にて、試験前の蓄熱性ゴム材料の潜熱量に対する500サイクル後の潜熱量再現率が80%以上であることを特徴とする蓄熱性ゴム材料。
(2)潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの潜熱量に対する蓄熱性ゴム材料中の蓄熱成分の潜熱量再現率が90%以上である上記(1)記載の蓄熱性ゴム材料、
(3)ゴム材料が、ニトリルゴム、イソプレンゴムまたはオレフィン系ゴムである上記(1)記載の蓄熱性ゴム材料、
(4)マイクロカプセルの皮膜を構成する樹脂が、尿素ホルマリン樹脂またはメラミンホルマリン樹脂である上記(1)記載の蓄熱性ゴム材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繰り返し使用された際に、マイクロカプセル内包物である潜熱蓄熱材の漏出が少なく、ゴム材料の劣化や形状変化が少ない蓄熱性ゴム材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の蓄熱性ゴム材料は、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルをゴム材料に含有させてなる。ゴム材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム等のイソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のブタジエン系ゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム等のジエン系特殊ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等のオレフィン系ゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム等のポリエーテル系ゴム、多硫化ゴム等のポリスルフィド系ゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム等のポリウレタン系ゴム、フッ化ビニリデン系ゴム、フルオロシリコーン系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、フルオロホスファゼン系ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系ゴム等のフッ素ゴム、ポリジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等のシリコーンゴム等が挙げられる。これらは単独または二種類以上組み合わせて使用しても良い。このうち、繰り返し使用された際に、マイクロカプセル内包物である潜熱蓄熱材の漏出が少なく、ゴム材料の劣化や形状変化が少ない蓄熱性ゴム材料を得るためには、ニトリルゴム、イソプレンゴムまたはオレフィン系ゴムを使用することが好ましい。特に、ポリオレフィン系ゴムのエチレンプロピレンジエンゴムを使用すると、下記で説明する潜熱量再現率Aをより高くすることができるので特に好ましい。
【0009】
機械機器や電気・電子機器等の用途では、使用するゴムや樹脂材料由来のアウトガス発生により電気接点障害等が生じることが一般的に嫌われる。このため、これらの用途に蓄熱性ゴム材料が使われる場合には、シリコーンゴム以外のゴム材料を使用することが、アウトガスが発生しにくいため、好ましい。
【0010】
上述のゴム材料に必要があれば、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤、老化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、粘着付与剤、滑剤、しゃく解剤(素練り促進剤)、着色剤、硬化剤、発泡剤、分散剤、溶剤等の他に、綿、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、ガラス、カーボンなどの各種繊維類等を混合しても良い。
【0011】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルは、複合エマルジョン法によるカプセル化法(特開昭62−1452号公報)、蓄熱材粒子の表面に熱可塑性樹脂を噴霧する方法(同62−45680号公報)、蓄熱材粒子の表面に液中で熱可塑性樹脂を形成する方法(同62−149334号公報)、蓄熱材粒子の表面でモノマーを重合させ被覆する方法(同62−225241号公報)、界面重縮合反応によるポリアミド皮膜マイクロカプセルの製法(特開平2−258052号公報)等に記載されている方法を用いて製造することができる。
【0012】
マイクロカプセル皮膜としては、界面重合法、インサイチュー法等の手法で得られるポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、またゼラチンとカルボキシメチルセルロース若しくはアラビアゴムとのコアセルベーション法を利用した合成あるいは天然の樹脂が用いられる。本発明の蓄熱材ゴム材料に適用するためには、耐熱性が必要であり、下記で説明する潜熱量再現率Aをより高くするためには、熱硬化性樹脂皮膜を有するマイクロカプセルが好ましく、特に、インサイチュー法による尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂皮膜を用いたマイクロカプセルが好ましい。
【0013】
潜熱蓄熱材は、使用用途等に応じて適宜選択される。例えば、機械機器や電気・電子機器等の用途で60℃以上に温度上昇することを抑制するのであれば、55〜65℃程度に融点・凝固点を持つ潜熱蓄熱材が選択される。潜熱蓄熱材としては、パラフィン類や、無機共晶物及び無機系水和物、ドコサン酸等の脂肪酸類、ベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オクタデカン酸メチル等のエステル化合物、ベヘニルアルコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類等の化合物が挙げられ、化学的、物理的に安定なものが用いられる。また、融点の異なる潜熱蓄熱材を2種以上混合しても良いし、必要に応じ過冷却防止剤、比重調整剤、劣化防止剤等を添加することができる。
【0014】
本発明に係る潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの平均粒子径は、物理的圧力による破壊を防止するために10μm以下、特に好ましくは5μm以下が好ましい。マイクロカプセルの平均粒子径は、乳化剤の種類と濃度、乳化時の乳化液の温度、乳化比(水相と油相の体積比率)、乳化機、分散機等と称される微粒化装置の運転条件(撹拌回転数、時間等)等を適宜調節して所望の平均粒子径に設定する。この平均粒子径を超えると、マイクロカプセルが外圧で容易に壊れ易くなったり、潜熱蓄熱材の比重が分散媒のそれと大きく差がある場合などに浮遊したり沈降したりし易くなるので好ましくない。
【0015】
なお、本発明での平均粒子径は体積平均粒子径をいう。体積平均粒子径とはマイクロカプセル粒子の体積換算値の平均粒子径を表わすものであり、原理的には一定体積の粒子を小さいものから順に篩分けし、その50%体積に当たる粒子が分別された時点での粒子径を意味する。体積平均粒子径の測定は顕微鏡観察等による実測でも測定可能であるが、市販の電気的、光学的粒子径測定装置を用いることにより自動的に測定可能であり、後述する実施例における分散液の体積平均粒子径は、米国ベックマンコールター社製粒度測定装置コールターマルチサイザーII型を用いて測定したものである。
【0016】
一般的に潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルは分散液状態で得られるが、ゴム材料との練り込みや加熱工程の容易さを考慮し、脱水または乾燥を施して、マイクロカプセルを固形物、粉体、顆粒状にしたものが使い易い。なお、マイクロカプセルの粉体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて体積平均粒子径を測定する。マイクロカプセルの固形物や顆粒状にしたものの平均粒子径は、ノギス等の測定器具で測定した長さ径の平均値で表わす。
【0017】
本発明における熱サイクル試験は、熱衝撃試験機内に蓄熱性ゴム材料をセットし、−10℃、10分間保持及び130℃、10分間保持することを1サイクルとした熱サイクル条件にて、蓄熱性ゴム材料に組み込んだ蓄熱材を内包するマイクロカプセル内部の蓄熱材を、複数サイクル融解と凝固させるものである。そして本熱サイクル試験前後における蓄熱性ゴム材料中の蓄熱性ゴム材料の潜熱量(融解または凝固熱量)を示差走査熱量計(装置名:DSC7、米国PerkinElmer社製)を用いて測定し、試験前に対する500サイクル試験後の潜熱量の比を百分率で示した潜熱量再現率Aが80%以上であると、マイクロカプセル内包物である潜熱蓄熱材の漏出が少なく、ゴム材料の劣化及び形状変化が少なくなる。潜熱量再現率Aは90%以上であることがより好ましい。熱サイクル試験後における蓄熱性ゴム材料の潜熱蓄熱材漏出やゴム材料の劣化及び変形は、目視で確認する。
【0018】
本発明において、蓄熱性ゴム材料についての潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルに対する蓄熱性ゴム材料の潜熱量再現率B(%)は、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルとマイクロカプセルを含有してなる蓄熱性ゴム材料との質量当たりの潜熱量(融解または凝固熱量)を、示差走査熱量計(装置名:DSC7、米国PerkinElmer社製)を用いて測定し、数1の計算式で求める。
【0019】
【数1】

【0020】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの潜熱量に対する蓄熱性ゴム材料中の蓄熱成分の潜熱量再現率Bが90%以上であると、さらに、マイクロカプセル内包物である潜熱蓄熱材の漏出が少なく、ゴム材料の劣化や形状変化が少なくなる。
【0021】
本発明の蓄熱性ゴム材料は、1.潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの調製工程、2.ゴム材料とマイクロカプセルを混合して成型する工程、3.成型品にゴム弾性を与えて物理的強度を高めるために、加熱・架橋(加硫)する工程によって製造することができる。さらに、得られた蓄熱性ゴム材料は、必要に応じて、所望の形状や大きさに切って使用することができる。これらの工程はゴム材料の性質に大きく影響を及ぼすので使用目的に合わせて使用素材と製法が選択される。
【0022】
工程2において、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルとゴム材料の混合には、バンバリーミキサーやニーダー等、一般的に使われているミキサー、混練機等の混合装置が使用できる。
【0023】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルとゴム材料との混合時間は、混合装置や混合具合によって適宜選択されるが、潜熱量再現率Aをより高くするためには、混合時間は20分以内が好ましく、6分以内がより好ましい。
【0024】
混合時の圧力は、混合装置や混合具合を考慮してマイクロカプセルへのダメージが小さくなるように適宜選択される。
【0025】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルとゴム材料の混合物は、型枠や成型機を使用して成型され、加熱・架橋(加硫)する工程がなされる。加熱・架橋(加硫)する工程の温度は、ゴム材料の種類や架橋剤、加硫剤の添加の有無、添加剤の種類によっても異なるが、例えば、硫黄を添加して加硫する場合は、40〜200℃が好ましい。潜熱量再現率Aをより高くするためには、160℃以下に設定することが好ましい。また、潜熱量再現率Aをより高くするための加熱・架橋(加硫)工程の時間は10分以内が好ましく、5分以内がより好ましい。
【0026】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルとゴム材料に溶剤を添加して練り込む場合には、加熱・架橋(加硫)工程を行う前に、必要に応じて溶剤をとばすために乾燥を行う。この溶剤乾燥には、真空乾燥機、防爆型乾燥機等の溶剤乾燥に適した装置を使用する。
【0027】
本発明の蓄熱性ゴム材料中に占めるマイクロカプセル含有比率は10〜90質量%の範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲がより好ましい。90質量%を超えると、ゴム弾性と強度が乏しくなることがあり、10質量%未満になると、蓄熱性能が乏しくなることがある。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明の蓄熱性ゴム材料はこれらの例のみに限定されずに適用できる。また、実施例において、特にことわりのない百分率、部数は質量基準である。
【0029】
実施例1
メラミン粉末12質量部に37質量%ホルムアルデヒド水溶液15.4質量部と水40質量部を加え、pHを8に調整した後、70℃まで加熱してメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整した10質量%スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100質量部を70℃に加温した中に、潜熱蓄熱材として、70℃に加温したステアリン酸ステアリル(商品名:エキセパールSS、花王(株)製、融点56〜66℃)80質量部を激しく撹拌しながら添加し、平均粒子径が3.0μmになるまで乳化を行い、乳化液を得た。得られた乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加して70℃で2時間撹拌を施した後、pHを9まで上げて水を添加して乾燥固形分濃度40%の潜熱蓄熱材を内包したマイクロカプセル分散液1を得た。
【0030】
このマイクロカプセル分散液1をスプレードライヤーで水分含有率3質量%以下まで乾燥し、平均粒子径50μmのマイクロカプセル粉体1を得た。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度160℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは92%、潜熱量再現率Bは91%であった。
【0031】
なお、潜熱量再現率Aは、蓄熱性ゴム材料(5cm×5cm)を熱衝撃試験機(装置名:小型冷熱衝撃装置TSE−11、エスペック(株)製)内にセットし、−10℃、10分間保持、130℃、10分間保持することを1サイクルとした熱サイクル条件にて、500サイクル運転し、示差走査熱量計(装置名:DSC7、米国PerkinElmer社製)でその前後の潜熱量を測定して求めた。
【0032】
実施例2
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とイソプレンゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。加熱温度160℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは92%、潜熱量再現率Bは93%であった。
【0033】
実施例3
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度160℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは95%、潜熱量再現率Bは97%であった。
【0034】
実施例4
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とブチルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度160℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは90%、潜熱量再現率Bは90%であった。
【0035】
実施例5
pHを3.0に調整した5質量%のエチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液125質量部に尿素7.5質量部を添加し、70℃に加温する。その中に潜熱蓄熱材として70℃に加温したステアリン酸ステアリル(商品名:エキセパールSS、花王(株)製、融点56〜66℃)80質量部を激しく撹拌しながら添加し、平均粒子径が3.0μmになるまで乳化を行い、乳化液を得た。この乳化液に37%ホルムアルデヒド水溶液19部と水25部を添加し、70℃で2時間加熱撹拌を施してカプセル化反応を行った後、この分散液のpHを9に調整し、水を添加して乾燥固形分濃度40%の潜熱蓄熱材を内包したマイクロカプセル分散液2を得た。
【0036】
このマイクロカプセル分散液2をスプレードライヤーで水分含有率3質量%以下まで乾燥し、平均粒子径50μmのマイクロカプセル粉体2を得た。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度160℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは91%、潜熱量再現率Bは92%であった。
【0037】
実施例6
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体100質量部とポリオール(商品名:アクトコールMN−3050:三井化学ポリウレタン(株)製)100質量部、触媒としてオクチル酸錫1質量部を密閉式混練機で3分間混練りした後、トリレンジイソシアネート(トルエン−2,4−ジイソシアネート/トルエン−2,6−ジイソシアネート=80/20)50質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度90℃でプレス加熱5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは80%、潜熱量再現率Bは84%であった。
【0038】
実施例7
潜熱蓄熱材として70℃に加温したステアリン酸ステアリル(商品名:エキセパールSS、花王(株)製、融点56〜66℃)34質量部に、メタクリル酸メチル6質量部とジビニルベンゼン0.1質量部を溶解した。次いで過酸化ベンゾイル0.2質量部を添加し、70℃に加温した部分ケン化ポリ酢酸ビニル0.5質量%水溶液中に入れ、激しく撹拌しながら平均粒子径が3.0μmになるまで乳化を行い、乳化液を得た。本乳化液を重合容器内に入れ、窒素雰囲気下で80℃、7時間重合反応を行った後、重合容器内を室温まで冷却し、水を添加して乾燥固形分濃度30%の潜熱蓄熱材を内包したマイクロカプセル分散液3を得た。
【0039】
このマイクロカプセル分散液3をスプレードライヤーで水分含有率3質量%以下まで乾燥し、平均粒子径50μmのマイクロカプセル粉体3を得た。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度150℃でプレス加硫3分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは80%、潜熱量再現率Bは85%であった。
【0040】
実施例8
マイクロカプセル粉体は実施例7と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体100質量部とポリオール(商品名:アクトコールMN−3050、三井化学ポリウレタン(株)製)100質量部、触媒としてオクチル酸錫1質量部を密閉式混練機で1分間混練りした後、トリレンジイソシアネート(トルエン−2,4−ジイソシアネート/トルエン−2,6−ジイソシアネート=80/20)50質量部を添加して、同様に1分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度90℃でプレス加熱3分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは80%、潜熱量再現率Bは90%であった。
【0041】
実施例9
マイクロカプセル粉体を実施例5と同じものを使用すること以外は、実施例8と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは83%、潜熱量再現率Bは91%であった。
【0042】
実施例10
マイクロカプセル粉体は実施例7と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で1分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に1分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度150℃でプレス加硫1分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは80%、潜熱量再現率Bは91%であった。
【0043】
実施例11
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で10分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度160℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは89%、潜熱量再現率Bは90%であった。
【0044】
実施例12
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で10分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度160℃でプレス加硫15分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは85%、潜熱量再現率Bは87%であった。
【0045】
実施例13
プレス加硫時の加熱温度を190℃に設定すること以外は実施例2と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは87%、潜熱量再現率Bは89%であった。
【0046】
実施例14
プレス加硫時の加熱時間を15分行うこと以外は実施例2と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは85%、潜熱量再現率Bは88%であった。
【0047】
実施例15
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で10分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度190℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは83%、潜熱量再現率Bは88%であった。
【0048】
実施例16
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で3分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に3分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度190℃でプレス加硫15分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは87%、潜熱量再現率Bは87%であった。
【0049】
実施例17
プレス加硫時の加熱温度を165℃に設定すること以外は実施例4と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは88%、潜熱量再現率Bは88%であった。
【0050】
実施例18
密閉式混練機での混練り時間をそれぞれ11分間行うこと以外は実施例4と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは88%、潜熱量再現率Bは89%であった。
【0051】
実施例19
プレス加硫時のプレス時間を11分間行うこと以外は実施例4と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは88%、潜熱量再現率Bは88%であった。
【0052】
実施例20
プレス加硫時のプレス時間を10分間行うこと以外は実施例4と同じ方法で蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは88%、潜熱量再現率Bは90%であった
【0053】
比較例1
マイクロカプセル粉体は実施例1と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体100質量部とポリオール(商品名:アクトコールMN−3050、三井化学ポリウレタン(株)製)100質量部、触媒としてオクチル酸錫1質量部を密閉式混練機で10分間混練りした後、トリレンジイソシアネート(トルエン−2,4−ジイソシアネート/トルエン−2,6−ジイソシアネート=80/20)50質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度100℃でプレス加熱15分間を行い、厚さ1mmのウレタン蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは75%、潜熱量再現率Bは86%であった。
【0054】
比較例2
マイクロカプセル粉体は実施例5と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で10分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度190℃でプレス加硫15分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは73%、潜熱量再現率Bは85%であった。
【0055】
比較例3
マイクロカプセル粉体は実施例7と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体105質量部とニトリルゴム原料100質量部、粉末硫黄1質量部、トルエン100質量部を、密閉式混練機で10分間混練りした後、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)3質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度190℃でプレス加硫5分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは77%、潜熱量再現率Bは85%であった。
【0056】
比較例4
マイクロカプセル粉体は実施例7と同じものを使用した。このマイクロカプセル粉体100質量部とポリオール(商品名:アクトコールMN−3050:三井化学ポリウレタン(株)製)100質量部、触媒としてオクチル酸錫1質量部を密閉式混練機で10分間混練りした後、トリレンジイソシアネート(トルエン−2,4−ジイソシアネート/トルエン−2,6−ジイソシアネート=80/20)50質量部を添加して、同様に10分間混練りして混練り物を得た。得られた混練り物を20cm×20cmの型にセットし、真空乾燥機で60℃、12時間乾燥を行い、トルエンを完全に除去した。次いで加熱温度90℃でプレス加熱3分間を行い、厚さ1mmの蓄熱性ゴム材料を得た。本蓄熱性ゴム材料について、潜熱量再現率Aは78%、潜熱量再現率Bは90%であった。
【0057】
潜熱量再現率A、B及び熱サイクル試験後の蓄熱性ゴム材料の蓄熱材の漏出と形状変化等を目視にて確認した結果を表1に示す。表1の蓄熱材の漏出の項目において、漏出が無いものを◎印、極少量漏出するものを○印、少量漏出するものを△印、多量に漏出するものを×印で示した。また、蓄熱性ゴム材料の変形、劣化の項目において、変形や劣化が無いものを◎印、極少々あるものを○印、少々あるものを△印、大きくあるものを×印で示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1より、潜熱量再現率Aが80%以上である実施例の蓄熱性ゴム材料は、蓄熱材の漏出、形状変形等が無く良好であった。これに対し、潜熱量再現率Aが80%未満である比較例の蓄熱性ゴム材料は、蓄熱材の漏出や蓄熱性ゴム材料の変形や劣化が実施例よりも多く確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルを含有してなる蓄熱性ゴム材料において、−10℃、10分間保持及び130℃、10分間保持を1サイクルとした熱サイクル試験にて、試験前の蓄熱性ゴム材料の潜熱量に対する500サイクル後の潜熱量再現率が80%以上であることを特徴とする蓄熱性ゴム材料。
【請求項2】
潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルの潜熱量に対する蓄熱性ゴム材料中の蓄熱成分の潜熱量再現率が90%以上である請求項1記載の蓄熱性ゴム材料。
【請求項3】
ゴム材料が、ニトリルゴム、イソプレンゴムまたはオレフィン系ゴムである請求項1記載の蓄熱性ゴム材料。
【請求項4】
マイクロカプセルの皮膜を構成する樹脂が、尿素ホルマリン樹脂またはメラミンホルマリン樹脂である請求項1記載の蓄熱性ゴム材料。

【公開番号】特開2010−184981(P2010−184981A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28967(P2009−28967)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】