説明

蓄電セル

【課題】蓄電セルにおける電極端子の周囲からの電解液の漏洩を防止すること。
【解決手段】積層された正極集電極2及び負極集電極3を電解液とともに収容するケース10と、正極集電極2及び負極集電極3とにそれぞれ接続され、ケース10の外部に露出する電極端子20とを備え、電極端子20を介して充放電可能な蓄電セル100であって、電極端子20は、その外周に環状に連続して形成されケース10の内周と接合されるシール面25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷を蓄えることが可能な蓄電セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池などの蓄電セルが用いられている。
【0003】
特許文献1には、フィルム材によって形成される容器から引き出される引出電極を備える電気二重層キャパシタセルが開示されている。この電気二重層キャパシタセルでは、引出電極は、容器の開口部を閉塞する樹脂製支持体にインサート成形され、樹脂製支持体が容器に熱溶着されることによって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−153282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の引出電極は、矩形に形成されたアルミニウム板などの導電性の板材である。この引出電極は、矩形に切断されたときの切断面である端面を有する。このような端面を有する引出電極が用いられた場合、引出電極の端面と樹脂製支持体との間が密封できずに、容器内部に充填された電解液が漏出するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、蓄電セルにおける電極端子の周囲からの電解液の漏出を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層された集電極を電解液とともに収容するケースと、前記集電極に接続され、前記ケースの外部に露出する電極端子と、を備え、前記電極端子を介して充放電可能な蓄電セルであって、前記電極端子は、その外周に環状に連続して形成され前記ケースの内周と接合されるシール面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ケースの外部に露出する電極端子は、環状に連続して形成されるシール面を有する。このシール面には、切断面である端面が存在しないため、シール面の周囲における密封性を確保できる。したがって、蓄電セルにおける電極端子の周囲からの電解液の漏出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る蓄電セルの正面の断面図であり、(b)は、図1(a)における左側面図であり、(c)は、図1(a)における右側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電極端子の斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る蓄電セルの正面の断面図であり、(b)は、図3(a)における平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る電極端子の斜視図である。
【図5】従来の蓄電セルにおける電極端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る蓄電セルとしての電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」と称する。)100について説明する。
【0012】
図1(a)に示すように、キャパシタ100は、両端部が開口した略矩形の袋状に形成されるケース10と、ケース10の両端部から外部に引き出されて露出する一対の電極端子20とを備える。
【0013】
図1(b)及び(c)に示すように、ケース10は、対向して設けられる一対のラミネートフィルム11,12を備える。ラミネートフィルム11,12は、同一形状に形成される。ケース10は、ラミネートフィルム11,12の対向する二辺が熱溶着されて、両端に開口部10aを有する袋状に形成される。
【0014】
ラミネートフィルム11,12は、金属の層と、金属の層を被覆する樹脂の層とを備える多層構造のフィルム材である。ラミネートフィルム11,12の表裏面のうち、少なくとも一方の面の層は、熱可塑性樹脂によって形成される。ラミネートフィルム11,12は、熱可塑性樹脂の層が内側になるように互いに突き合わされて袋状に接合される。
【0015】
ケース10の内部には、正極集電極2と、負極集電極3と、正極集電極2と負極集電極3との間に介在して両者を隔離するセパレータ(図示省略)とが積層されて形成された積層体5が収容される。ケース10は、内部に電解液を充填して密封される。つまり、ケース10は、正極集電極2及び負極集電極3を、電解液とともに収容する。キャパシタ100は、正極集電極2と負極集電極3との間の電解液のイオンが電気二重層を構成し、電極端子20を介して充放電可能に電気を蓄えるものである。
【0016】
電極端子20は、ケース10の開口部10aに嵌まる形状に形成され、開口部10aに取り付けられる。電極端子20は、正極集電極2に接合され電気的に接続される正電極端子20Aと、負極集電極3に接合され電気的に接続される負電極端子20Bとを備える。正電極端子20Aと負電極端子20Bとは、袋状のケース10の両端の開口部10aを閉塞するように対向して設けられる。正電極端子20Aと負電極端子20Bとは、同一の構成である。
【0017】
図2に示すように、電極端子20は、アルミニウムなど導電性を有する薄肉の金属である。電極端子20は、板材やブロック材のような裏表のある金属材を成形加工することによって薄肉に成形される。電極端子20は、カップ状に形成される本体部21と、本体部21から延設される外部端子部22と、本体部21の底面から突設される集電極接続部23とを有する。電極端子20を、薄肉鋳造によって造形してもよい。
【0018】
本体部21は、略長円形の開口を有し、深さのある有底のカップ状に形成される。本体部21は、その外周に沿って環状に形成されるシール面25を有する。本体部21は、シール面25の外周に均一な厚さで設けられる熱溶着性樹脂を介して、ケース10における開口部10aの内周に接合される。
【0019】
電極端子20とケース10とを接合する熱溶着性樹脂は、シール面25の外周に環状に連続して薄く形成される。熱溶着性樹脂は、ラミネートフィルム11,12の表面の層の樹脂と同一の樹脂であることが望ましい。シール面25に形成される熱溶着性樹脂層が、ラミネートフィルム11,12の最内層の樹脂と同一である場合、熱溶着が容易であり、熱溶着された後のシール性能も高くなる。
【0020】
従来、キャパシタには、図5に示すようなアルミニウム板などの導電性の板材を矩形に切断して形成された電極端子520が用いられていた。電極端子520は、表面520aと、裏面520bと、板材が矩形に切断されたときの切断面である端面520cとを有する。そのため、端面520cの周囲において、熱溶着性樹脂との間の密封性を確保できず、ケース内部に充填された電解液が、端面520cを伝って漏出するおそれがあった。
【0021】
これに対して、シール面25は、環状に連続して形成される。また、電極端子20は表裏のある金属材の成形加工によって薄肉に成形される。電極端子20における表裏面の境界である端面は、ケース10の外部に露出して設けられる。これにより、シール面25は、金属材の片面のみによって構成される。
【0022】
即ち、金属材の片面が電極端子20の外側の面を形成し、金属材の裏面が電極端子20の内側の面を形成している。よって、シール面25は、金属材が切断されることによって形成される片面から裏面へと続く端面を有さない。
【0023】
したがって、シール面25には、金属材の切断面である端面が存在しないため、シール面25の周囲におけるケース10との間の密封性を確保できる。したがって、電極端子20の周囲からの電解液の漏出を防止することができ、キャパシタ100の信頼性が向上し、寿命を長くすることができる。
【0024】
なお、電極端子20における表裏面の境界である端面が、ケース10の内部に露出して設けられるようにしてもよい。この場合にも、シール面25は、金属材の片面のみによって構成され、端面を有さない。
【0025】
また、電極端子20を薄肉鋳造によって、金属材の成形加工による場合と略同一形状に造形することも可能である。電極端子20が薄肉鋳造によって造形される場合にも、シール面25は造形された金属の片面のみによって形成され、シール面25に端面が存在しない。よって、この場合にもシール面25におけるケース10との間の密封性を確保できる。
【0026】
図1(b)及び(c)に示すように、電極端子20がケース10に取り付けられた状態では、略長円形の本体部21における両端部に曲線状に形成される曲面21a(図2参照)に、ラミネートフィルム11,12の合わせ面が位置する。ラミネートフィルム11,12の合わせ面は、曲面21aに沿って接合されるため、合わせ面が直線状の面に沿ってその端面において接合される場合と比較して、ラミネートフィルム11,12の合わせ面と電極端子20との間の隙間が小さくなる。よって、ラミネートフィルム11,12と電極端子20との間の密封性を確保できる。
【0027】
ここで、一般に、キャパシタは、ケース内部の熱を電極端子を介して放熱する。キャパシタの発熱量は、化学反応を利用する化学電池と比べると小さいものであるが、ケース内部で発生した熱については、外部に排出する必要がある。
【0028】
電極端子20は、ケース10の開口部10aを閉塞する形状であるため、開口部10aの開口面積と同じ大きさに形成される。よって、電極端子20は、開口面積全体から放熱できるため、外部と熱交換しやすい。したがって、ケース内部の熱を効率的に外部に排出することができる。
【0029】
また、ラミネートフィルム11,12は、開口部10aの開口面積と同じ大きさに形成されるシール面25の外周に沿って接合されるため、接合の際にシワが生じることを防止できる。このとき、電極端子20は、シール面25の外周に薄く均一に設けられる熱溶着性樹脂を介して、ケース10における開口部10aの内周に接合される。よって、熱溶着性樹脂の量を減らすことができ、コストが抑制される。なお、シール面25の外周に熱溶着性樹脂を設けずに、ラミネートフィルム11,12の表面の層の樹脂によって電極端子20を直接接合してもよい。
【0030】
外部端子部22は、矩形の平板状に形成される。外部端子部22は、ケース10の外部に引き出され、隣接して設けられる他のキャパシタ100の外部端子部22と接続される。
【0031】
従来、矩形に形成されたアルミニウム板などの導電性の板材が電極端子として用いられていたため、電極端子を樹脂で固定する付け根部分に応力が集中し、振動などに起因する金属疲労によって電極端子が破損するおそれがあった。
【0032】
外部端子部22は、電極端子20の本体部21から延設されて本体部21と一体に形成される。外部端子部22は、本体部21の内側が樹脂で固定されていないため、その付け根部分への応力集中が緩和される。よって、電極端子20の耐久性が向上するため、キャパシタ100の信頼性が向上し、寿命を長くすることができる。
【0033】
集電極接続部23は、本体部21をはさんで外部端子部22と対向するように形成される。電極端子20がケース10に取り付けられた状態では、集電極接続部23は、ケース10の内部に突出する。集電極接続部23は、略矩形に形成される平面である接合面23aを表裏両面に有する。集電極接続部23には、接合面23aを介して正極集電極2と負極集電極3とがそれぞれ接続される。
【0034】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0035】
ケース10の外部に露出する電極端子20は、環状に連続して形成されるシール面25を有する。電極端子20は、表裏のある金属材の成形加工によって成形されるため、シール面25は、金属材の片面のみによって構成される。よって、シール面25には、切断面である端面が存在しない。そのため、シール面25と周囲の熱溶着性樹脂との密着性が向上し、シール面25の周囲における密封性を確保できる。
【0036】
したがって、キャパシタ100における電極端子20の周囲からの電解液の漏出を防止することができ、キャパシタ100の信頼性が向上し、寿命を長くすることができる。
【0037】
また、電極端子20が薄肉鋳造によって造形される場合にも同様に、シール面25は、造形された金属の片面のみによって形成される。よって、シール面25には端面が存在しないこととなる。
【0038】
なお、本実施の形態では、蓄電セルとしてキャパシタ100を用いているが、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池など他の蓄電セルであってもよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
以下、図3及び図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る蓄電セルとしてのキャパシタ200について説明する。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0040】
第2の実施の形態では、ケース210の一端面に一対の電極端子220が設けられる点で、第1の実施の形態とは相違する。
【0041】
図3(a)に示すように、キャパシタ200は、箱型に形成されるケース210と、ケース210の一端面から外部に引き出されて露出する一対の電極端子220とを備える。
【0042】
図3(b)に示すように、ケース210は、対向して設けられる第1ケース211と第2ケース212とを備える。第1ケース211及び第2ケース212は、同一形状に形成される。ケース210は、第1ケース211と第2ケース12とが対向して突き合わされ、外周の四辺のうち三辺が接合されて形成される。ケース210の接合されなかった残りの一辺には、一対の開口部210aが形成される。なお、第1の実施の形態と同様に、ケース210をラミネートフィルムによって形成してもよい。
【0043】
一対の開口部210aの間には、ケース210の一部が形成される。これにより、開口部210aにそれぞれ取り付けられる電極端子220の相互間が絶縁される。
【0044】
ケース210は、熱溶着性樹脂によって形成される。電極端子220のシール面25は、熱溶着性樹脂が熱溶着されることによって、ケース210における開口部210aの内周に接合される。ケース210の全体を熱溶着性樹脂によって形成するのではなく、開口部210aの内周面のみを熱溶着性樹脂によって形成してもよい。このように、ケース210は、少なくともシール面25と当接する面が熱溶着性樹脂によって形成される。
【0045】
電極端子220は、ケース210の開口部210aに対応する形状に形成され、開口部210aに取り付けられる。電極端子220は、正極集電極2に接合され電気的に接続される正電極端子220Aと、負極集電極3に接合され電気的に接続される負電極端子220Bとを備える。正電極端子220Aと負電極端子220Bとは、同一の構成である。
【0046】
図4に示すように、電極端子220は、アルミニウムなど導電性を有する薄肉の金属である。電極端子220は、板材やブロック材のような裏表のある金属材を成形加工することによって、又は薄肉鋳造によって薄肉に成形される。電極端子20は、カップ状に形成される本体部21と、本体部21から延設される外部端子部22と、本体部21の底面から突設される集電極接続部23とを有する。電極端子220は、キャパシタ100における電極端子20と同様の構成であるため、ここでは具体的な構成についての説明は省略する。
【0047】
以上の実施の形態によれば、ケース210の一端面から一対の電極端子220を引き出した場合にも、キャパシタ200における電極端子220の周囲からの電解液の漏出を防止することができ、キャパシタ200の信頼性が向上し、寿命を長くすることができる。
【0048】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0049】
100 電気二重層キャパシタ(キャパシタ)
2 正極集電極(集電極)
3 負極集電極(集電極)
5 積層体
10 ケース
10a 開口部
11 ラミネートフィルム
20 電極端子
20A 正電極端子
20B 負電極端子
21 本体部
22 外部端子部
23 集電極接続部
25 シール面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された集電極を電解液とともに収容するケースと、
前記集電極に接続され、前記ケースの外部に露出する電極端子と、を備え、前記電極端子を介して充放電可能な蓄電セルであって、
前記電極端子は、その外周に環状に連続して形成され前記ケースの内周と接合されるシール面を有することを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記電極端子は、薄肉の金属で形成され、当該金属における表裏面の境界である端面を有し、
前記端面は、前記ケースの外部又は内部のいずれか一方に露出して設けられることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記電極端子は、表裏のある金属材を成形加工することによって成形され、
前記シール面は、前記金属材の片面のみで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記電極端子は、金属の薄肉鋳造によって造形され、
前記シール面は、造形された金属の片面のみで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記シール面は、その外周に均一な厚さで設けられる熱溶着性樹脂によって前記ケースの内周と接合されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記ケースは、少なくとも前記シール面と当接する面が熱溶着性樹脂で形成され、
前記シール面は、前記熱溶着性樹脂によって前記ケースの内周と接合されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記ケースは、熱溶着性樹脂で形成され、
前記シール面は、前記熱溶着性樹脂によって前記ケースの内周と接合されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記電極端子は、
略長円形の開口を有し、有底のカップ状に形成される本体部と、
前記本体部から延設され、前記ケースの外部に引き出される外部端子部と、
前記本体部の底面から前記ケースの内部に突設され、前記集電極と接続される集電極接続部と、を備え、
前記シール面は、前記本体部の外周に沿って環状に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の蓄電セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74548(P2012−74548A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218378(P2010−218378)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】