説明

蓄電池モジュール

【課題】蓄電池モジュールを構成する各蓄電池セルの放熱を確実に行うことが可能な冷却機構を備えた蓄電池モジュールを提供する。
【解決手段】蓄電池モジュール30として、複数列複数段に配列した複数の蓄電池セル10を把持して一体化するための蓄電池把持部20は、各蓄電池セル10の外装部を密着した状態で囲い込むことによって各蓄電池セル10を把持固定する形状を有し、かつ、蓄電池把持部20内に各蓄電池セル10を冷却するための冷却用流体を回流させる流路が形成されたヒートパイプ構造を有する。蓄電池把持部20の形状を、各蓄電池セル10を複数列複数段にあらかじめ定めた間隔ずつ離して配列した際の各蓄電池セル10間の空隙部分の形状に該当する形状とするようにしても良い。なお、蓄電池把持部20内に形成された流路は、各蓄電池セル10の電極部に近接する位置を通過する形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池モジュールに関し、特に、電池モジュールの冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術においては、非特許文献1の宮坂明宏らによる“大型ニッケル水素蓄電池を用いた高信頼性電源システム”(電気化学学会技術委員会新電池構想部会、第61回新電池構想部会講演会、pp1−4)の「Fig3.3 Battery module」にも示されているように、蓄電池モジュールの冷却機構としては、冷却ファンを用いて、蓄電池モジュールの前面から取り入れた空気を背面へと排出する構造であった。
【0003】
つまり、前記非特許文献1に記載の従来の蓄電池モジュールの冷却機構においては、図4に示すように、円筒型電池として円筒型95AhNiMH蓄電池セル(直径φ60mm×長さL170mm)を10本直列に接続して、一つの蓄電池モジュールを構成し、該蓄電池モジュール全体を冷却ファンにより強制空冷するようにしていた。図4は、従来の蓄電池モジュールの実装構造を示す模式図であり、図4(A)は、円筒型電池1を10本直列接続して構成した蓄電池モジュールの様子を示す斜視図であり、図4(B)は、蓄電池モジュールを実装する電池箱の構造を示す斜視図である。
【0004】
図4(A)に示すように、蓄電池モジュール内部においては、各円筒型電池1(各蓄電池セル)の互いの間隔幅を、5mmずつ離して5列2段に配置し、かつ、各円筒型電池1同士を直列接続し易くするために、隣接する円筒型電池1同士は正極2と負極3との位置を互い違いに入れ替えて、隣接する正極2と負極3とが同じ面に向くように配置し、隣接する各円筒型電池1の正極2と負極3との電極間をバスバー(電池接続具)または電力線によって接続するとともに、絶縁性を有する電池把持板5すなわち電池固定板にて把持して固定する構造としている。なお、電池把持板5の各円筒型電池1を把持している部位には、各円筒型電池1を交換する際に、各円筒型電池1の着脱を容易にするために、電池把持板5の一部(上側および下側の板)を取り外すための分割面6が形成されている。
【0005】
さらに、各円筒型電池1を把持する電池把持板5は、図4(B)に示すように、電池箱台座11上に載置されて、その上から電池箱の外箱12を被せることによって、蓄電池モジュールは電池箱内に収納される。
【0006】
ここで、電池箱の外箱12は、収納した10本直列接続の各円筒型電池1の中心線と平行な位置関係になる2つの側板が、それぞれ、通気穴が穿設された対向平面板として形成されており、他方の対向平面板(図4(B)においては、外箱12の奥側の側板)に穿設された通気穴が空気を吸い込む吸い込み口15であり、一方の対向平面板(図4(B)においては、外箱12の手前側の側板)に穿設された通気穴が各円筒型電池1との熱交換を行った空気を排気する排気口を形成している。
【0007】
収納した10本直列接続の各円筒型電池1のうち、最初の円筒型電池1の正極2または負極3と最後の円筒型電池1の負極3または正極2とは、図4(B)に示すように、電池箱の外箱12の他方の対向平面板(図4(B)においては、外箱12の手前側の側板)に取り付けられた電気コネクタ14の出力端子にバスバーまたは電力線によって電気的に接続される。
【0008】
さらに、蓄電池セルの充放電時に温度バラツキが無く、かつ、上限温度を超えないことを目的として、図4(B)に示すように、電池箱の外箱12の一方の対向平面板(図4(B)においては、外箱12の手前側の側板)に箱付冷却ファン13が取り付けられていて、電池箱の外箱12の他方の対向平面板(図4(B)においては、外箱12の奥側の側板)に穿設している吸い込み口15から冷却用の空気を吸い込むことによって、電池箱に収納されている10本の円筒型電池1からなる蓄電池モジュール全体を強制的に冷却している。
【0009】
さらに説明すれば、次の通りである。従来の蓄電池モジュールにおいては、電池箱内の複数の円筒型電池1は、電池箱台座11上に電池把持板5を介して載置されて、側板として互いに対向する位置に通気穴が穿設された2枚の対向平面板を有し、かつ、一方の対向平面板には箱付冷却ファン13や電気コネクタ14が取り付けられている外箱12に覆われた電池箱内に収納されている。電池箱台座11上に載置された各円筒型電池1は、多段構成とされ、それぞれの中心軸は水平(電池箱台座11の底面と平行な位置関係)であり、かつ、各円筒型電池1の中心軸は外箱12の対向平面板に対しても平行になるように配置されている。
【0010】
さらに、箱付冷却ファン13は、対向平面板に穿設された通気穴の吸い込み口15から取り込んだ外気(空気)によって複数の円筒型電池1からの発熱を排熱するために駆動されるように構成されている。
【0011】
つまり、蓄電池モジュール内の複数の円筒型電池1が、前述のごとく配置されているので、一方の対向平面板に取り付けられた箱付冷却ファン13の駆動により、対向する他方の対向平面板に吸い込み口15として穿設された通気穴から取り込まれた外気は、該通気穴に最も近い円筒型電池1の側面に当たってその背面に回り込み、次に、隣接する円筒型電池1の側面に当たってその背面に回り込むということを繰り返すことによって、発熱体である複数の各円筒型電池1と熱交換して、一方の対向平面板に排気口として穿設された通気穴から排気されることによって排熱される。
【0012】
この時、電池箱内の蓄電池モジュールを構成する各円筒型電池1(蓄電池セル)の電池形状は円筒形状であるため、導入した外気の不要な乱流は抑制され、さらには、各円筒型電池1の中心軸を水平、かつ、対向平面板に平行になるように電池箱内に配置されているので、通風抵抗を小さくすることができる。その結果、電池箱からの排熱は、対向平面板が互いに向き合う方向に効率的に行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】宮坂 明宏、正代 尊久;“大型ニッケル水素蓄電池を用いた高信頼性電源システム”,電気化学学会技術委員会新電池構想部会、第61回新電池構想部会講演会、pp1−4。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記非特許文献1に記載のような従来の蓄電池モジュールの冷却機構においては、放電電流が2.5C〜3C(C:蓄電池モジュールの定格容量(Capacity))程度にも及ぶ高率の放電となるような場合が発生すると、従来の電池メーカが一般的に使用している放電レート(放電電流)0.2〜0.3Cの場合における充放電動作と比較して、100倍もの熱量が発生する事態が発生し、かかる高温の発熱には対応することができないという課題があった。
【0015】
特に、図5の円筒型電池1の発熱個所4に示すように、各円筒型電池1(各蓄電池セル)の正極2および負極3のセル接続部(つまり電極部)においては、バスバーや電力線とともに、接触抵抗による大量の熱が発生するため、各円筒型電池1(各蓄電池セル)のセル接続部(つまり電極部)の冷却または発熱防止対策が必要不可欠となっている。ここで、図5は、図4(A)に示す蓄電池モジュールの発熱個所を説明するための説明図である。
【0016】
しかし、従来の技術においては、各円筒型電池1(各蓄電池セル)の正極2および負極3のセル接続部(つまり電極部)には大電流が流れるので、危険防止のために、断熱性と絶縁性とを有する電池把持板5によって、該セル接続部(つまり電極部)への人間の不用意な接触を防ぐように保護がなされていて、図4(B)のような箱付冷却ファン13を用いていても、冷却用の空気すなわち冷却風をセル接続部(つまり電極部)へ通すことができず、正極2および負極3のセル接続部(つまり電極部)からの排熱が殆ど不可能になっているという問題があった。さらには、蓄電池モジュールのコンタクト部分(例えば図1(B)の電気コネクタ14)においては、接触抵抗により温度が急上昇することがあるという問題があった。
【0017】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、放電電流が2.5C〜3Cにも及ぶ場合であるか否かに関わらず、蓄電池モジュールを構成する各蓄電池セルの放熱を確実に行うことが可能な冷却機構を備えた蓄電池モジュールを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前述の課題を解決するために、以下のごとき各技術手段から構成されている。
【0019】
第1の技術手段は、複数列複数段に配列した複数の蓄電池セルを蓄電池把持部によって把持固定することにより一体化した状態で電池箱に収納した構造からなる蓄電池モジュールであって、前記蓄電池把持部は、各前記蓄電池セルの外装部を密着した状態で囲い込むことによって各前記蓄電池セルを把持固定する形状を有し、かつ、当該蓄電池把持部内に各前記蓄電池セルを冷却するための冷却用流体を回流させる流路が形成されたヒートパイプ構造を有することを特徴とする。
【0020】
第2の技術手段は、前記第1の技術手段に記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部の形状は、各前記蓄電池セルを複数列複数段にあらかじめ定めた間隔ずつ離して配列した際の各前記蓄電池セル間の空隙部分の形状に該当する形状とすることを特徴とする。
【0021】
第3の技術手段は、前記第1または第2の技術手段に記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部内に形成された前記流路は、各前記蓄電池セルの電極部に近接する位置を通過する形状とすることを特徴とする。
【0022】
第4の技術手段は、前記第1ないし第3の技術手段のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、前記電池箱に取り付けられたコネクタ部は、前記蓄電池セルの電極部に接続したバスバーまたは電力線と接続するための電力線接続部と、前記冷却用流体を回流させる冷却水接続部とを少なくとも備え、該冷却水接続部は、前記蓄電池把持部内に形成された前記流路に連通していることを特徴とする。
【0023】
第5の技術手段は、前記第1ないし第4の技術手段のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、外部に設置された冷却水タンクから前記蓄電池把持部内に形成された前記流路に前記冷却用流体を回流させるための冷却水弁が、前記蓄電池把持部の端面に配設されていることを特徴とする。
【0024】
第6の技術手段は、前記第1ないし第5の技術手段のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部は、熱伝導性が高い金属によって形成されていることを特徴とする。
【0025】
第7の技術手段は、前記第6の技術手段に記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部と前記蓄電池セルの電極部との間に絶縁部材を配置することを特徴とする。
【0026】
第8の技術手段は、前記第1ないし第7の技術手段のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、各前記蓄電池セルは、円筒型の形状からなる円筒型電池であることを特徴とする。
【0027】
第9の技術手段は、前記第1ないし第8の技術手段のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、隣接する各前記蓄電池セルの電極間を直列接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0029】
すなわち、蓄電池モジュールを構成する各蓄電池セルを把持固定する蓄電池把持部を各蓄電池セルに密着したヒートシンク構造としているので、各蓄電池セルを直接冷却することができ、冷却ファンによる強制空冷だけでは、蓄電池モジュール内の各蓄電池セルからの排熱が追いつかない状況であっても、十分な冷却を行い、各蓄電池セルからの排熱を確実に行うことができる。而して、2C、3C(定格電流容量の2倍、3倍)といった高率放電を行うことも可能となる。
【0030】
さらには、蓄電池モジュール内で最も高熱となる、各蓄電池セルのセル接続部(つまり電極部)やバスバーや電力線の熱を近接した位置に配置された蓄電池把持部(ヒートシンク)により排熱して確実に冷却することができ、かつ、各蓄電池セルごとの温度のバラツキも抑制して、蓄電池モジュール内部の温度分布を均一にすることができ、各蓄電池セルや蓄電池モジュールの寿命を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る蓄電池モジュールの構成の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示す蓄電池モジュールを複数搭載した電源架の構成例を示す概略図である。
【図3】図1に示す蓄電池モジュールの電池箱に取り付けたコネクタ部の構造の一例を示す概略図である。
【図4】従来の蓄電池モジュールの実装構造を示す模式図である。
【図5】図4(A)に示す蓄電池モジュールの発熱個所を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る蓄電池モジュールの好適な実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴について、その概要をまず説明する。本発明は、蓄電池モジュール(複数の例えば10本の各蓄電池セルを収納してパッケージ化したもの)を構成する各蓄電池セルを把持固定する構造物として、従来のような各蓄電池セルの電極部を把持するものではなく、各蓄電池セルの外装部(例えば、円筒型電池の場合は円筒状の側面部)に密着する形で外装部全体を囲い込むようにして各蓄電池セルを把持固定する構造とするとともに、各蓄電池セルの排熱を効果的に行うために、各蓄電池セルを把持する蓄電池把持部の内部構造を、冷却用流体を回流させるための流路を形成したヒートシンク構造としていることを特徴としている。
【0034】
而して、各蓄電池セルのセル接続部(つまり電極部)を含め各蓄電池セルの発熱を効率良く排熱して、蓄電池モジュール全体を直接冷却することができるとともに、蓄電池把持部からなるヒートシンク構造物として熱容量を大きくすることができるので、蓄電池モジュールが短時間で温度上昇しそうな事態が発生する場合であっても、充分に対応して冷却することができる。
【0035】
(実施形態の構成例)
次に、本発明に係る蓄電池モジュールの構成例について、その一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る蓄電池モジュールの構成の一例を示す概略図である。
【0036】
なお、本実施形態において蓄電池モジュール30を構成する各蓄電池セル10は、図1に示すように、図4に示す従来の蓄電池モジュールの場合と同様に、円筒型形状からなる円筒型電池を用いている場合について説明するが、本発明は、かかる形状のみに限るものではなく、蓄電池モジュールを構成する各蓄電池セルを把持固定するために蓄電池把持部を各蓄電池セルの外装部に密着させることができる構造のものであれば、如何なる形状の蓄電池セルであっても構わない。また、蓄電池モジュールを構成する蓄電池セルは、図4に示す従来の蓄電池モジュールの場合と同様、10個の蓄電池セルを5列2段に配列して構成する場合について説明するが、本発明は、かかる場合に限るものではなく、10個に限らず任意の個数(複数)の蓄電池セルを複数列複数段にあらかじめ定めた間隔ずつ離して配列して構成する場合であっても良い。
【0037】
次に、図1(A)、図1(B)の実装構造について説明する。図1に示すように、本実施形態における蓄電池モジュール30の内部においては、蓄電池モジュール30を構成する各蓄電池セル10を把持・固定するための構造物が、図4の従来の蓄電池モジュールの場合とは異なるものの、それ以外は、図4の従来の蓄電池モジュールの場合と同様である。なお、蓄電池モジュール30を構成する各蓄電池セル10を把持する構造物として、図4の従来の蓄電池モジュールの場合における電池把持板5とは異なる本発明に特有の構造を有する蓄電池把持部20(各蓄電池セル10を把持固定するための絶縁性を有する構造物)の詳細については後述する。
【0038】
図1(A)に示すように、本発明に係る蓄電池モジュール30の内部においては、図4(A)の場合と同様、円筒型形状からなる各蓄電池セル10の互いの間隔幅を、あらかじめ定めた適当な間隔(例えば5mm)ずつ離して5列2段に配置し、かつ、各蓄電池セル10同士を直列接続し易くするために、隣接する各蓄電池セル10同士は正極2と負極3との位置を互い違いに入れ替えて、隣接する正極2と負極3とが同じ面に向くように配置し、隣接する各蓄電池セル10の正極2と負極3との電極間をバスバー(電池接続具)または電力線によって接続するが、各蓄電池セル10を把持固定する構造については、図4(A)の場合とは異なり、各蓄電池セル10の外装部(側面部)に密着する形状を有する蓄電池把持部20にて各蓄電池セル10の外装部(側面部)を囲い込むようにして、各蓄電池セル10を把持して固定する構造としている。
【0039】
さらに、各蓄電池セル10を把持する蓄電池把持部20は、図1(B)に示すように、図4(B)の場合と同様、電池箱台座41上に載置されて、その上から電池箱の外箱42を被せることによって、蓄電池モジュール30は電池箱内に収納される。
【0040】
ここで、電池箱の外箱42は、図4(B)の場合と同様、収納した10本直列接続の各蓄電池セル10の中心線と平行な位置関係になる2つの側板が、それぞれ、通気穴が穿設された対向平面板として形成されており、他方の対向平面板(図1(B)においては、外箱42の奥側の側板)に穿設された通気穴が空気を吸い込む吸い込み口44であり、一方の対向平面板(図1(B)においては、外箱42の手前側の側板)に穿設された通気穴が各蓄電池セル10との熱交換を行った空気を排気する排気口を形成している。
【0041】
収納した10本直列接続の各蓄電池セル10のうち、最初の蓄電池セル10の正極2または負極3と最後の蓄電池セル10の負極3または正極2とは、図1(B)に示すように、電池箱の外箱42の他方の対向平面板(図1(B)においては、外箱42の手前側の側板)に取り付けられたコネクタ部50の出力端子にバスバーまたは電力線によって電気的に接続される。
【0042】
また、各蓄電池セル10の充放電時に温度バラツキが無く、かつ、上限温度を超えないことを目的として、図4(B)の場合と同様、図1(B)に示すように、電池箱の外箱42の一方の対向平面板(図1(B)においては、外箱42の手前側の側板)に冷却ファン43が取り付けられていて、電池箱の外箱42の他方の対向平面板(図1(B)においては、外箱42の奥側の側板)に穿設している吸い込み口44から冷却用の空気を吸い込むことによって、電池箱に収納されている10本の蓄電池セル10からなる蓄電池モジュール全体を強制的に冷却するように構成されている。
【0043】
ここで、図1に示す蓄電池モジュール30においては、各蓄電池セル10を把持固定する構造物である蓄電池把持部20は、前述したように、図4の従来の蓄電池モジュールの場合における電池把持板5とは異なり、従来のような各蓄電池セル10の電極部を把持するのではなく、各蓄電池セルの外装部(例えば、蓄電池セル10が円筒型形状の場合は円筒状の側面部)全体に密着する形で囲い込むようにして各蓄電池セル10を把持固定する構造を有している。
【0044】
つまり、蓄電池把持部20は、複数列複数段にあらかじめ定めた間隔ずつ離して配列された各蓄電池セル10(例えば図4(A)の従来の蓄電池モジュールにおいては5列2段に5mmずつ離して配列された各円筒型電池1)の間に形成されている空隙部分の形状に該当するような形状を有しており、図1(A)に示すように、図4(A)の従来の蓄電池モジュールの場合と同様の配列状態にある蓄電池セル10を、そのまま維持して、各蓄電池セル10の外装部(側面部)全体を密着させた状態で囲い込むようにして固定することができる。
【0045】
さらに、各蓄電池セル10を把持するための蓄電池把持部20には、図1(A)に示すように、従来の蓄電池モジュールの課題となっていた各蓄電池セル10の発熱を効果的に排熱し、冷却するための蓄電池モジュール30の冷却機構が、本発明に特有の構造として、合わせて備えられている。
【0046】
次に、図1(A)を用いて、本発明に特有の蓄電池把持部20の冷却機構について説明する。
【0047】
蓄電池把持部20は、中身が刳り抜かれた中空構造であり、いわゆる、ヒートシンク構造とされていて、内部には冷却用流体(例えば冷却水などの液状冷媒)の流路が形成されている。つまり、蓄電池モジュール30の冷却機構においては、蓄電池モジュール30の外部に備えられたポンプ等によって、図1(A)に示す蓄電池把持部20の端面に配設した冷却水弁21を介して送られてくる冷却用流体を蓄電池把持部20内の流路に回流させた後、冷却水弁21を介して蓄電池把持部20の外部へ排出することによって、発熱体である各蓄電池セル10の発熱を排熱させて冷却することを可能としている。すなわち、蓄電池把持部20の流路内を回流している冷却用流体は、発熱体である各蓄電池セル10との間でヒートシンク構造の蓄電池把持部20を介して熱交換を行った後、蓄電池把持部20の外部へ排出されることによって、各蓄電池セル10の熱を排熱することになる。
【0048】
なお、ヒートシンクを形成する蓄電池把持部20の材料については、熱伝導性が高い金属や熱伝導性のみならず加工性等をも含めて考慮した材料などを適宜選択するようにすれば良い。熱伝導性が高い金属を用いる場合は、蓄電池セル10の電極部やバスバーや電力線との接触を避けるような構造とするか、もしくは、蓄電池セル10の電極部やバスバーや電力線との間に絶縁部材をさらに付加した構造とすることが望ましい。
【0049】
ヒートシンクの内部構造として形成された蓄電池把持部20内の流路の形状は、冷却用流体を回流させた場合の排熱速度等を勘案して、適宜形成することができるが、熱交換の効率をより向上させるためには、各蓄電池セル10の高温部となる電極部付近を冷却用流体が回流するように、該電極部に近接した位置を通過する流路を形成することが望ましい。
【0050】
また、冷却用流体を蓄電池把持部20内の流路に回流させるために、蓄電池把持部20の外部に備えるポンプは、蓄電池モジュール30の冷却性能を維持するために、無停電電源で駆動することが望ましい。
【0051】
ヒートシンクを形成する蓄電池把持部20は、図1(A)に示したように、各蓄電池セル10の外装部(側面部)全体を覆うように密着して各蓄電池セル10を把持する構造となっているので、蓄電池把持部20のヒートシンク構造の表面積が広がって、該蓄電池把持部20内の流路を流れる冷却用流体によって各蓄電池セル10の発熱に対して高効率の熱放射を行うことが可能となり、冷却速度の向上を図ることができるとともに、各蓄電池セル10間の温度差を減少させて、温度のバラツキを抑制することもできる。
【0052】
さらには、各蓄電池セル10を把持する蓄電池把持部20の熱容量は大きいので、ヒートシンク構造としての冷却性能を高めることができ、高率の放電動作を行った時の急激な温度上昇を防止することもできる。
【0053】
而して、各蓄電池セル10および蓄電池モジュール30の寿命を改善することができる。
【0054】
かくのごときヒートシンク構造を有する蓄電池把持部20の形状として、例えば、図4(A)に示すような従来の蓄電池モジュールにおける円筒型電池1(図1においては各蓄電池セル10)それぞれの間に形成されている空隙部分の形状に該当するような形状を採用しているので、蓄電池モジュール30の体積を従来の蓄電池モジュールから変化しないように構成することができ、各蓄電池セル10をより確実に冷却することができる冷却機構を備えた蓄電池モジュール30を、従来の蓄電池モジュールの構成を変更することなく実現することができる。
【0055】
次に、図1に示す蓄電池モジュール30を複数積層搭載した電源架の構成例について、図2を用いて説明する。図2は、図1に示す蓄電池モジュール30を複数搭載した電源架(蓄電池モジュール架)の構成例を示す概念図であり、図1(B)に示したような電池箱に収納した蓄電池モジュール30を複数段に亘って架設した場合の電源架全体の冷却機構について、その一例を示している。
【0056】
図2に示すように、蓄電池モジュール架を構成する電源架35は、二重床下構造の床面上に立架されていて、床下には、各蓄電池モジュール30を冷却するための冷却用流体(例えば冷却水などの液状冷媒)を蓄える冷却水タンク31と、該冷却水タンク31から冷却水パイプ33を介して各蓄電池モジュール30内に存在するヒートシンク構造の蓄電池把持部20の流路に対して冷却用流体を回流させるためのポンプ32とが配設されている。
【0057】
なお、二重床下構造の床面上に設置されている空調機40からの冷却風を床下にも循環させることによって、床下に配設されている冷却水タンク31に蓄えられている冷却用流体(例えば冷却水などの液状冷媒)を冷却するようにしている。
【0058】
図2に示すような電源架35は、当該電源架35の各蓄電池モジュール30を冷却する冷却機構を組み込んだ状態であっても、従来の蓄電池モジュールを複数搭載した電源架の場合の体積を増加させることが不要であり、従来の電源架をそのまま用いることが可能である。かくのごとき冷却機構を組み込むことによって、電源架35を構成する各蓄電池セル10および各蓄電池モジュール30を効果的に冷却することが可能であり、また、各蓄電池セル10間さらには各蓄電池モジュール30間の温度差を減少させて、電源架35全体の温度の均一化を図ることができ、而して、各蓄電池セル10および各蓄電池モジュール30の寿命をより改善することができる。
【0059】
また、図3に示すように、コネクタ部50にも冷却用流体の流路を形成するようにしても良い。図3は、図1に示す蓄電池モジュール30の電池箱に取り付けたコネクタ部50の構造の一例を示す概略図であり、コネクタ部50に冷却用流体を回流させるための流路を有しているコネクタ部50を拡大した拡大図も合わせて示している。
【0060】
つまり、図3のコネクタ部50の拡大図に示すように、コネクタ部50には、蓄電池モジュール30の蓄電池セル10の電極部と電気的に接続されているバスバーまたは電力線を接続するための電力線接続部51、警報情報を出力するための警報線を接続するための警報線接続部53の他に、さらに、高温になる可能性があるコネクタ部50を冷却するための冷却用流体(冷却水等からなる液状冷媒)を流す流路を形成する冷却水接続部52が備えられている。冷却水接続部52は、発熱体となる電力線接続部51に近接する位置に設けられており、冷却水接続部52内を回流している冷却用流体によって、電力線接続部51の発熱を効果的に排熱するようにしている。
【0061】
なお、コネクタ部50の冷却水接続部52をヒートシンク構造の蓄電池把持部20内の冷却用流体の流路と連通するように構成すれば、各蓄電池セル10の発熱とコネクタ部50の発熱とを、同一の冷却用流体によって効率良く排熱することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…円筒型電池、2…正極、3…負極、4…発熱個所、5…電池把持板、6…分割面、10…蓄電池セル、11…電池箱台座、12…外箱、13…箱付冷却ファン、14…電気コネクタ、15…吸い込み口、20…蓄電池把持部、21…冷却水弁、30…蓄電池モジュール、31…冷却水タンク、32…ポンプ、33…冷却水パイプ、35…電源架、40…空調機、41…電池箱台座、42…外箱、43…冷却ファン、44…吸い込み口、50…コネクタ部、51…電力線接続部、52…冷却水接続部、53…警報線接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列複数段に配列した複数の蓄電池セルを蓄電池把持部によって把持固定することにより一体化した状態で電池箱に収納した構造からなる蓄電池モジュールであって、前記蓄電池把持部は、各前記蓄電池セルの外装部を密着した状態で囲い込むことによって各前記蓄電池セルを把持固定する形状を有し、かつ、当該蓄電池把持部内に各前記蓄電池セルを冷却するための冷却用流体を回流させる流路が形成されたヒートパイプ構造を有することを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部の形状は、各前記蓄電池セルを複数列複数段にあらかじめ定めた間隔ずつ離して配列した際の各前記蓄電池セル間の空隙部分の形状に該当する形状とすることを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部内に形成された前記流路は、各前記蓄電池セルの電極部に近接する位置を通過する形状とすることを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、前記電池箱に取り付けられたコネクタ部は、前記蓄電池セルの電極部に接続したバスバーまたは電力線と接続するための電力線接続部と、前記冷却用流体を回流させる冷却水接続部とを少なくとも備え、該冷却水接続部は、前記蓄電池把持部内に形成された前記流路に連通していることを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、外部に設置された冷却水タンクから前記蓄電池把持部内に形成された前記流路に前記冷却用流体を回流させるための冷却水弁が、前記蓄電池把持部の端面に配設されていることを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部は、熱伝導性が高い金属によって形成されていることを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電池モジュールにおいて、前記蓄電池把持部と前記蓄電池セルの電極部との間に絶縁部材を配置することを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、各前記蓄電池セルは、円筒型の形状からなる円筒型電池であることを特徴とする蓄電池モジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の蓄電池モジュールにおいて、隣接する各前記蓄電池セルの電極間を直列接続していることを特徴とする蓄電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249225(P2011−249225A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123047(P2010−123047)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】