説明

蓄電装置、スペーサ

【課題】スペーサの脚部に埃等の異物等が溜まるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】蓄電素子とスペーサとを交互に積層した蓄電装置であって、前記スペーサは、隣接する前記蓄電素子に対向する対向面と、この対向面に沿って流れる冷媒の冷媒通路を形成する複数のリブと、前記冷媒通路の端部側に位置する側面と、該側面から張り出し、該スペーサを支持する脚部とを備え、前記脚部の上面は、前記側面から離れるほど前記脚部の底面に接近する第1の傾斜部を備えることを特徴とする蓄電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する蓄電素子の間に配置されるスペーサの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を意識した車両として、車両走行用の電動モータを搭載した電気自動車、ハイブリッド自動車などが注目され、実用されている。電動モータは、充放電可能な蓄電装置から出力される電力により駆動される。
【0003】
この種の蓄電装置として、複数の電池セルと、隣接する電池セルの間に冷媒通路を形成するためのスペーサとを配置した組電池が知られている。スペーサの側面には、スペーサを支持するための脚部が設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−170870号公報
【特許文献2】特開2007−48750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は従来のスペーサの外観図であり、図6は従来の組電池の側面図である。図5を参照して、脚部上面は水平方向に延びているため、冷却風に含まれる埃や塵等の異物、或いは結露した水が蓄積されやすい。これらの異物等が脚部上面に堆積すると、図6に示すように隣接する電池セルの外缶ケース間で導通する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、スペーサの脚部に埃等の異物等が溜まるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の蓄電装置は、(1)蓄電素子とスペーサとを交互に積層した蓄電装置であって、前記スペーサは、隣接する前記蓄電素子に対向する対向面と、この対向面に沿って流れる冷媒の冷媒通路を形成する複数のリブと、前記冷媒通路の端部側に位置する側面と、該側面から張り出し、該スペーサを支持する脚部とを備え、前記脚部の上面は、前記側面から離れるほど前記脚部の底面に接近する第1の傾斜部を備えることを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記蓄電素子は、発電要素を収容するケースと、ケースの上面側に位置する端子電極とを備え、前記側面における上端部には、突出部が形成されており、前記突出部の上面は、前記側面から離れるほど前記突出部の底面に接近する第2の傾斜部を備える。(2)の構成によれば、側面の上端部に形成された突出部の上面に、埃等の異物、或いは結露した水が溜るのを抑制できる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記第1の傾斜部は、前記対向面よりも摩擦抵抗が低い。(3)の構成によれば、第1の傾斜部に落下した異物などを、容易に滑落させることができる。
【0010】
(4)上記(3)の構成において、摩擦抵抗を低くする方法として、撥水処理を用いることができる。
【0011】
(5)上記(2)の構成において、前記第2の傾斜部は、前記対向面よりも摩擦係数が低い。(5)の構成によれば、第2の傾斜部に落下した異物などを、容易に滑落させることができる。
【0012】
(6)上記(5)の構成において、摩擦抵抗を低くする方法として、撥水処理を用いることができる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るスペーサは、(7)隣接する蓄電素子の間に配置されるスペーサであって、隣接する前記蓄電素子に対向する対向面と、この対向面に沿って流れる冷媒の冷媒通路を形成する複数のリブと、前記冷媒通路の端部側に位置する側面と、該側面から張り出し、該スペーサを支持する脚部とを備え、前記脚部の上面は、前記側面から離れるほど前記脚部の底面に接近する第1の傾斜部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スペーサの脚部に埃等の異物等が溜まるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】蓄電装置の斜視図である。
【図2】蓄電装置の分解斜視図である。
【図3】X軸方向から視たスペーサの外観図である。
【図4】変形例のスペーサの外観図である。
【図5】従来のスペーサの外観図である。
【図6】組電池の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1、図2を参照しながら、本発明の一実施形態である蓄電装置の概略構成を説明する。図1は蓄電装置の斜視図であり、図2は蓄電装置の分解斜視図である。図1における矢印は、吸気方向及び排気方向を示している。図2では、吸気チャンバ、排気チャンバ及び拘束バンドを省略している。
【0017】
蓄電装置1は、複数の電池セル(蓄電素子)11、複数のスペーサ13及びエンドプレート14を含む。電池セル11は、X軸方向の所定の間隔を隔てて配列されており、隣接する電池セル11の間にはスペース13が配置されている。エンドプレート14は、X軸方向の両端部に位置して、複数の電池セル11及びスペーサ13を挟み込んでいる。
【0018】
電池セル11は、いわゆる角型のケース11cを有し、ケース11cの内部には発電要素が収容されている。なお、電池セル11は、リチウムイオン二次電池であってもよい。電池セル11の上端面側には、Y軸方向に並んで正極端子11a及び負極端子11bが設けられている。X軸方向に隣接する電池セル11は、図示しないバスバーを介して直列に接続されている。拘束バンド16は、蓄電装置1の上端面に沿ってX軸方向に延びており、その両端部は下方に折れ曲がっている。この曲げ部をエンドプレート14に固定することにより、一対のエンドプレート14が互いに接近する方向に加圧される。これにより、複数の電池セル11の性能が維持される。
【0019】
蓄電装置1のY軸方向における一端面には、冷媒を蓄電装置1に導入するための吸気チャンバ17が設けられており、他端面には、蓄電装置1に導入された冷却風を排出するための排気チャンバ18が設けられている。
【0020】
次に、図3を参照しながら、スペーサ13の構成について説明する。図3は、スペーサをX軸方向から視たときの外観図である。
【0021】
スペーサ13は、スペーサ対向面(対向面)131、複数のリブ13c、スペーサ側面(側面)132、脚部13a及び上部突出部13bを備える。スペーサ対向面131は、隣接する蓄電素子11に対向しており、Y−Z面方向に延在している。複数のリブ13cは、それぞれが冷媒の流れる方向、つまりY軸方向に延びており、上下方向(Z軸方向)に所定間隔を隔てて形成されている。冷媒は、上下方向に隣接するリブ13cに挟まれた冷媒通路内においてY軸方向に向かって流れる。なお、スペーサ13は、樹脂であってもよい。
【0022】
脚部13aは、スペーサ側面132の下端部に形成されており、スペーサ13を支持する。脚部13aは車両のフロアパネルに固定してもよい。脚部13aの上面には、スペーサ側面132から離れるほど脚部13aの底面に接近する脚部傾斜面13a1が形成されている。ここで、冷媒通路は狭小であるため、吸気チャンバ17を介して導入される空気の中に埃、髪の毛などの異物が含まれている場合には、その一部が冷媒通路に進入することなく、冷媒通路入口の下方に位置する脚部傾斜面13a1に落下するおそれがある。脚部傾斜面13a1に落下した異物は、脚部傾斜面13a1に沿って滑落するため、脚部13a上に異物が堆積するのを抑制できる。これにより、X軸方向に隣接する二つの脚部13a間に異物が堆積し、この堆積した異物を介してX軸方向に隣接する電池セル11のケース11cが導通するのを抑制できる。また、脚部13aが結露した場合には、この結露した水を脚部傾斜面13a1に沿って落下させることができるため、脚部13aの上面に水が溜るのを抑制できる。これにより、X軸方向に隣接する二つの脚部13a間に水が延在することにより、X軸方向に隣接する電池セル11のケース11cが導通するのを抑制できる。
【0023】
また、冷媒通路を通過した冷媒の中に異物が含まれている場合には、その一部が、冷媒通路出口の下方に位置する脚部傾斜面13a1に落下するおそれがある。脚部傾斜面13a1に落下した異物は、脚部傾斜面13a1に沿って落下するため、上述と同様の効果を得ることができる。
【0024】
ここで、脚部13aの上面をフラットな形状から傾斜形状に変更することにより、異物及び水を受ける面積が増加する。したがって、摩擦抵抗の関係で、異物等の一部が落下しなかった場合でも、脚部13a上に異物が延在するまでの時間を長くすることができる。
【0025】
脚部傾斜面13a1に対して、他のスペーサ外面(例えば、スペーサ対向面13d)よりも摩擦抵抗を小さくする低摩擦処理を施しても良い。ここで、低摩擦処理は、フッ素樹脂を脚部傾斜面13a1に塗布する撥水処理であってもよい。脚部傾斜面13a1の摩擦抵抗を小さくすることにより、脚部傾斜面13a1に落下した異物或いは水を容易に滑落させることができる。
【0026】
上部突出部13bは、スペーサ側面132から突出している。上部突出部13bを設けることにより、冷媒通路のシール性が確保される。ここで、図3に図示するように、上部突出部13bの上面に対して、突出部傾斜面13b1を形成してもよい。突出部傾斜面13b1は、スペーサ側面132から離れるほど上部突出部13bの下面に接近する傾斜形状に形成されている。上部突出部13bに落下した異物は、突出部傾斜面13b1に沿って落下するため、上部突出部13bに異物が堆積するのを抑制できる。ここで、上部突出部13bが傾斜面ではなくフラットな形状である場合には、堆積した異物によって、X軸方向に隣接する電池セル11の正極端子11a及び負極端子11b(つまり、隣り合う電池セル11の異極同士)が導通するおそれがある。上部突出部13bの上面を傾斜形状に形成することにより、このような問題を解消することができる。なお、突出部傾斜面13b1に対して上記と同様に低摩擦処理を施しても良い。
【0027】
(変形例1)
上述の実施形態では、脚部傾斜面13a1の形状を下斜方向に延びる平面としたが、本発明はこれに限られるものではく、異物或いは水を落下させることができれば他の形状であってもよい。当該他の形状は、図4に図示するように、曲面形状であってもよい。また、当該他の形状は、図4に図示する曲面形状における凸方向を反対方向にした形状であってもよい。
【0028】
(変形例2)
上述の実施形態では、上部突出部13bに対して突出部傾斜面13b1を形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、突出部傾斜面13b1を省略することもできる。埃などの異物は、より下側に堆積しやすいため、冷却通路の設計上、上部突出部13bに異物が溜り難い場合には、突出部傾斜面13b1を省略することができる。この場合、上部突出部13bの上面は、水平方向に延びるフラットな形状であってもよい。
【0029】
(変形例3)
上述の実施形態では、脚部13aの上面全体を傾斜形状に形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、上面の一部を傾斜形状に形成してもよい。
【0030】
(変形例4)
上述の実施形態では、吸気チャンバ17による吸気方向と排気チャンバ18による排気方向とが反対方向になるように冷媒通路を形成したが、本発明はこれに限られるものではなく、吸気及び排気方向を同じにしてもよい。
【0031】
(変形例5)
上述の実施形態では、脚部傾斜面13a1(突出部傾斜面13b1)に対して低摩擦処理を施す方法として、フッ素樹脂を塗布する方法を用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、他の方法であっても。当該他の方法は、脚部傾斜面13a1(突出部傾斜面13b1)を研磨する方法であってもよい。
【0032】
(変形例6)
上述の実施形態では、発電要素を一つ備える電池セル11を用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、複数の発電要素をケース内において接続した電池モジュール(蓄電素子)であってもよい。
【0033】
(参考例)
脚部13aの側面に脚部13a或いは、上部突出部13b以外の張り出し形状部がある場合には、この張り出し形状部の上面に傾斜部を設けることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 蓄電装置 11 電池セル 11a 正極端子 11b 負極端子
13 スペーサ 13a 脚部 13a1 脚部傾斜面 13b 上部突出部
13b1 突出部傾斜面 13c リブ 14 エンドプレート
16 拘束バンド 17 吸気チャンバ 18 排気チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子とスペーサとを交互に積層した蓄電装置であって、
前記スペーサは、隣接する前記蓄電素子に対向する対向面と、この対向面に沿って流れる冷媒の冷媒通路を形成する複数のリブと、前記冷媒通路の端部側に位置する側面と、該側面から張り出し、該スペーサを支持する脚部とを備え、
前記脚部の上面は、前記側面から離れるほど前記脚部の底面に接近する第1の傾斜部を備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電素子は、発電要素を収容するケースと、ケースの上面側に位置する端子電極とを備え、
前記側面における上端部には、突出部が形成されており、前記突出部の上面は、前記側面から離れるほど前記突出部の底面に接近する第2の傾斜部を備えることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第1の傾斜部は、前記対向面よりも摩擦抵抗が低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第1の傾斜部には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第2の傾斜部は、前記対向面よりも摩擦抵抗が低いことを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第2の傾斜部には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
隣接する蓄電素子の間に配置されるスペーサであって、
隣接する前記蓄電素子に対向する対向面と、この対向面に沿って流れる冷媒の冷媒通路を形成する複数のリブと、前記冷媒通路の端部側に位置する側面と、該側面から張り出し、該スペーサを支持する脚部とを備え、
前記脚部の上面は、前記側面から離れるほど前記脚部の底面に接近する第1の傾斜部を備えることを特徴とするスペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−41708(P2013−41708A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176698(P2011−176698)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】