説明

蓄電装置の収容構造

【課題】半割り型ケース(1)による蓄電装置(10)の収容構造に関し、そのケース(1)や蓄電装置(10)に寸法ばらつきがある場合でも、ケース合わせ面のシールに支障を来すことなく、良好な放熱性を確保できるようにする。
【解決手段】ケース(1)は、伝熱性及び電気絶縁性を有する一対の樹脂製のケース部材(2)が合わさって構成された半割り型とする。蓄電装置(10)と各ケース部材(2)の内壁面と間に伝熱性及び電気絶縁性を有する弾性シート(11)を介在させる。ケース部材(2)各々の内壁面には、弾性シート(11)に食い込んで該弾性シート(11)を蓄電装置(10)に押し付ける複数の突起(12)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、蓄電器(キャパシタ)等の蓄電装置の収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蓄電装置は、充放電時に発熱し、高温状態が続くと蓄電装置の劣化を招く。特に、自動車の蓄電装置では瞬時に大電流を流す使い方がなされるため、蓄電装置の温度上昇による劣化が問題になる。
【0003】
この問題に対して、特許文献1には、ハイレート放電(急速放電)を行なう態様で使用されるバッテリパックに関し、バッテリセルの外周面とこれを収容するケース内面との間をゲル状の高熱伝導樹脂体で埋めることが記載されている。バッテリセルで発生した熱をその外周面からゲル状高熱伝導樹脂を介してケースに逃がすというものである。そのケースは、一対のケース部材を合わせることによって構成する半割り型とされている。各半割りケース部材の内部にはバッテリセルをケース内面から離れた状態に保持するリブが設けられている。そして、各半割りケース部材に液状の高熱伝導樹脂を適量充填し、これを加熱してゲル化させ、その状態で両半割りケース部材によってバッテリセルを挟み、そのケース部材同士を結合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−310449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記バッテリパックによれば、バッテリセルなど蓄電装置の放熱をゲル状の高熱伝導樹脂によって図ることができるものの、ゲル化させる液状高熱伝導樹脂の充填量の管理を適切に行なう必要がある。
【0006】
すなわち、液状高熱伝導樹脂の充填量が多少でも多くなると、半割りケース部材同士をしっかり組み合わせることができなくなる。その場合、半割りケース部材間の隙間からケース内に水分が浸入する虞があり、この水分によって蓄電装置が腐食したり、あるいは電気端子のショートを招く虞がある。また、蓄電装置が電解液を用いるものであれば、電解液と水分との反応によって有害ガスを発生する虞もある。一方、液状高熱伝導樹脂の充填量が多少でも少ない場合には、蓄電装置とゲル状高熱伝導樹脂との間に隙間を生じ、放熱性が悪くなる。
【0007】
従って、上記液状高熱伝導樹脂の充填量の管理を適切に行なう必要があるが、上記半割りケース部材を合成樹脂で成形する場合、得られるケース部材同士の寸法に若干のばらつきを生ずることは避けられない。例えば、金型内の樹脂圧力や樹脂温度が均一でないときにはケース部材各部の収縮量が異なるため、ケース部材間の寸法にばらつきを生ずる。或いは多数個取りの場合は、各キャビティの寸法ばらつきのためにケース部材の寸法が若干ばらつくことになる。このような寸法ばらつきは、ケース側だけではなく、通常は蓄電装置側にもみられる。このため、上記液状高熱伝導樹脂の充填量の管理が困難になり、品質を高めることが難しいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、ケースを半割り型とする蓄電装置の収容構造に関し、そのケースや蓄電装置に寸法ばらつきがある場合でも、ケース合わせ面のシールに支障を来すことなく、良好な放熱性を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、伝熱性を有する弾性シートとケース内面の突起とを利用して蓄電装置の放熱を図るようにした。
【0010】
すなわち、ここに提示する蓄電装置の収容構造は、蓄電装置(10)をケース(1)に収容する構造であって、
上記蓄電装置(10)と上記ケース(1)内壁面と間に介在する伝熱性及び電気絶縁性を有する弾性シート(11)を備え、
上記ケース(1)は、伝熱性及び電気絶縁性を有する一対のシェル状の樹脂製ケース部材(2)が合わされてなる半割り型であり、
上記ケース部材(2)各々の内壁面には、上記弾性シート(11)に食い込んで該弾性シート(11)を上記蓄電装置(10)に押し付ける複数の突起(12)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記ケース(1)の外壁面には複数の放熱フィン(7)を設けることが好ましい。その場合、上記ケース(1)内壁面に上記突起としてケース(1)内方に突出した複数の突条(12)を設け、且つ該ケース(1)内壁面の複数の突条(12)各々と上記ケース(1)外壁面の複数の放熱フィン(7)各々とを内外で対応するように配置することが好ましい。
【0012】
さらに、高伝熱性の針状フィラー(15)を含有する合成樹脂によって上記ケース(1)を形成することが好ましい。その場合、上記ケース(1)の少なくとも上記放熱フィン(7)の部分では、上記針状フィラー(15)の少なくとも一部が該フィン(7)の突出方向に配向されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄電装置(10)で発生する熱は、伝熱性を有する弾性シート(11)を介してケース(1)の突起(12)に伝わり、該ケース(1)外壁面から逃がされる。ここに、ケース(1)の突起(12)が弾性シート(11)に食い込んでいるから、弾性シート(11)とケース(1)との接触面積(伝熱面積)を広くすることができ、蓄電装置(10)の放熱に有利になる。しかも、突起(12)が弾性シート(11)を蓄電装置(10)に押し付けた状態になるから、該蓄電装置(10)はケース(1)内においてずれ動くことなく確実に保持され、振動に対する耐久性も高くなる。
【0014】
そうして、ケース(1)に寸法のばらつきがあっても、そのばらつきは弾性シート(11)の弾性変形によって吸収されるため、ケース部材(2)同士の組み立てには支障を来さない。すなわち、上記寸法ばらつきがあっても、弾性シート(11)に対する突起(12)の食い込み量が多少変わる程度で、放熱性には殆ど影響を来すことなく、ケース部材(2)同士の合わせ面を確実にシールすることができる。
【0015】
上記ケース(1)の外壁面に放熱フィン(7)を設けると、蓄電装置(10)からの放熱性向上に有利になる。特に、上記ケース(1)内壁面に上記突起として複数の突条(12)を設け、この突条(12)各々と上記ケース(1)外壁面の複数の放熱フィン(7)各々とを内外で対応するように配置した場合には、突条(12)と放熱フィン(7)とがより近接し伝熱距離が短くなる為、蓄電装置(10)から突条(12)に伝わる熱が放熱フィン(7)に伝わり易くなり、効率が良く放熱される。さらに、高伝熱性の針状フィラー(15)を含有する合成樹脂によってケース(1)を形成し、針状フィラー(15)の少なくとも一部が放熱フィン(7)において該フィン(7)の突出方向に配向されている場合には、この針状フィラー(15)によって突条(12)から放熱フィン(7)への伝熱が効率良く行なわれ、放熱性がさらに高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る蓄電装置を収納したケースを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る蓄電装置の収納構造を示す分解斜視図である。
【図3】同収納構造の縦断面図である。
【図4】同収納構造の一部を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
図1において、1は蓄電装置収容ケースである。この収容ケース1は、半割り型であって、互いに合わせられて両端が閉じた筒状の収容部を形成する一対のシェル状ケース部材2よりなる。両ケース部材2は、伝熱性(熱伝導性)及び電気絶縁性を有する合成樹脂によって成形されていて、シール用パッキン5を介して締結されている。すなわち、両ケース部材2は、半円筒状収容部3の周縁に外側へ張り出したフランジ4を備え、互いのフランジ4同士がパッキン5を挟んでねじ部材6によって締結されている。半円筒状収容部3の外壁面には筒周方向に延びる複数の放熱フィン7が筒軸方向に間隔をおいて設けられている。図1において、8は収容ケース1に収容された蓄電装置より延設されたケーブルである。
【0019】
図2において、10は円筒状の蓄電装置である。蓄電装置10は、一対の伝熱性及び電気絶縁性を有する弾性シート11と共に、収容ケース1に収容されている。ケース部材2は、上述の如く半円筒状収納部3の外壁面に放熱フィン7が設けられているだけでなく、その収納部3の内壁面に、ケース内方に突出した複数の突条12が設けられている。本例の突条12は、山形であり、放熱フィン7と同じく筒周方向に延びており、且つ筒軸方向に並設されている。
【0020】
そうして、図3に示すように、複数の放熱フィン7と複数の突条12とは、互いに内外に対応するように配置されている。また、各弾性シート11は、半円筒状に撓められて各ケース部材2の収容部3に嵌められている。収容ケース1内では、両弾性シート11が蓄電装置10を全周面にわたって包んだ状態になっている。また、各ケース部材2の突条12が、ケース部材2の少なくとも相隣る突条12間(谷間)の部位と弾性シート11との間に空所16を残して弾性シート11に食い込み、該弾性シート11を蓄電装置10に押し付けた状態になっている。各ケース部材2の収容部3における筒軸方向両端の壁には、蓄電装置10の筒軸方向のずれを阻止する、ケース内方に突出した位置決めリブ13が設けられている。蓄電装置10のケーブル8は、一方のケース部材2の端面板に形成された貫通孔を通して外部に延設されており、その貫通孔にはシール14が設けられている。なお、一対のケース部材2は、貫通孔及びシール14を除けば、対称形に構成されている。
【0021】
図4に示すように、ケース部材2は高伝熱性の針状フィラー15を含有する合成樹脂によって形成されている。そして、突条12の部分では、一部の針状フィラー15が放熱フィン7の基端部に向かって配向され、放熱フィン7の部分では、針状フィラー15の少なくとも一部が突条12から該放熱フィン7の突出方向に配向されている。このような針状フィラー15の配向は、該針状フィラー15を含有する合成樹脂をケース部材成形用金型に注入する際の樹脂流動方向を調整することによって得ることができる。
【0022】
例えば、金型のキャビティにおける放熱フィン7を成形する部分の先端位置に該フィン全長にわたってガス抜き部を設けておき、針状フィラー含有樹脂が、当該キャビティにおける収容部3の半円筒状壁を成形する部分の一端側から他端側に向かって(図4の矢符Aの方向に)流れるように、ランナー及びゲートを構成すればよい。これにより、当該樹脂はその一部が各突条12を成形する部分から放熱フィン7を成形する部分に流動し、その流動によって針状フィラー15が図4に示すように配向される。
【0023】
収容ケース1のケース部材2を形成する伝熱性及び電気絶縁性を有する合成樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、ポリエステル、ポリプロピレン等を採用することができる。タルクやグラスファイバーを混入したポリプロピレンも好ましく採用することができる。また、針状フィラー15は、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)等の、上記合成樹脂よりも伝熱性が良い高伝熱性材によって形成する。
【0024】
弾性シート11は、例えば伝熱性及び電気絶縁性を有するシリコーンゴムによって形成することが好ましく、特に、収容ケース1と同じく、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)等の高伝熱性充填材を混入したものを好ましく用いることができる。弾性シート11の材料は、シリコーンゴムに限らず、例えばエチレンプロピレン系ポリマー等に上記熱伝導性充填材を混入したものであってもよい。
【0025】
上記蓄電装置10の収容構造によれば、蓄電装置10で発生する熱は、弾性シート11を介して収容ケース1の突条12に伝わり、さらに放熱フィン7に伝わって外部に放熱される。
【0026】
本実施形態の場合、2つの弾性シート11が蓄電装置10の全周面を包んだ状態になっているから、蓄電装置10から弾性シート11への伝熱性が良い。そして、突条12が弾性シート11に食い込んで、収容ケース1と弾性シート11との接触面積が広くなっているから、弾性シート11から突条12への伝熱性が良い。さらに、突条12と放熱フィン7とが内外に対応するように配置されているから、突条12と放熱フィン7とが近接し伝熱距離が短くなる為、突条12から放熱フィン7への伝熱が効率良く行なわれる。しかも、収容ケース1には高伝熱性の針状フィラー15が混入され、その針状フィラー15の一部が突条12側から放熱フィン7の先端に向かうように配向されているから、突条12から放熱フィン7への伝熱効率が良くなる。
【0027】
また、突条12が弾性シート11を蓄電装置10に押し付けた状態になっているから、該蓄電装置10は収容ケース1内においてずれ動くことなく確実に保持され、振動に対する耐久性も高くなる。そうして、収容ケース1や蓄電装置10の寸法にばらつきがあっても、そのばらつきは弾性シートの弾性変形によって吸収される。すなわち、ケース部材2の相隣る突条12間の空所16が、弾性シート11が弾性変形した際に入り込む逃げ部となる。従って、上記寸法のばらつきがあっても、その空所16の容積が変化するだけ(弾性シート(11)に対する突条(12)の食い込み量が多少変わるだけ)で、ケース部材2同士の組み立てには支障を来さない。そのため、ケース部材2同士の合わせ面がシール不良になることが避けられる。よって、収容ケース1内への水分の浸入をパッキン5で確実に止めることができ、蓄電装置10の腐食防止、電気端子のショート防止、或いは蓄電装置10の電解液と水分との反応防止(有害ガスの発生防止)に有利になる。
【0028】
なお、上記実施形態の蓄電装置10は円筒状であるが、角筒状、その他の形状であってもよい。収容ケース1も蓄電装置10の形状に対応する角筒状、その他の形状にすることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、弾性シート11が蓄電装置10の周面のみを覆うようになっているが、蓄電装置10の両端面を覆う弾性シートをさらに配置してもよい。
【0030】
上記実施形態では、一対の弾性シート11にて蓄電装置10を全周面にわたって包んでいるが、一枚の弾性シートにて包んでもよい。
【0031】
上記実施形態では、突条12が筒状収容ケース1の筒周方向に延びているが、筒軸方向に延びる縦突条であってもよい。その場合、放熱フィン7も縦突条に対応させて筒軸方向に延びるようにすることができる。また、突条に代えて、多数の突起を散点状に設けてもよい。
【0032】
上記実施形態では、両ケース部材2は、ねじ部材6による締結にて結合されているが、接着剤、溶融樹脂等により結合してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 収容ケース
2 ケース部材
3 収容部
4 フランジ
5 パッキン
6 ねじ部材
7 放熱フィン
8 ケーブル
10 蓄電装置
11 弾性シート
12 突条
13 リブ
14 シール
15 フィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置(10)をケース(1)に収容する構造であって、
上記蓄電装置(10)と上記ケース(1)内壁面と間に介在する伝熱性及び電気絶縁性を有する弾性シート(11)を備え、
上記ケース(1)は、伝熱性及び電気絶縁性を有する一対のシェル状の樹脂製ケース部材(2)が合わされてなる半割り型であり、
上記ケース部材(2)各々の内壁面には、上記弾性シート(11)に食い込んで該弾性シート(11)を上記蓄電装置(10)に押し付ける複数の突起(12)が設けられていることを特徴とする蓄電装置の収容構造。
【請求項2】
請求項1において、
上記ケース(1)の外壁面には複数の放熱フィン(7)が設けられていることを特徴とする蓄電装置の収容構造。
【請求項3】
請求項2において、
上記ケース(1)の内壁面には、上記突起として、ケース(1)内方に突出した複数の突条(12)が設けられ、且つ該ケース(1)内壁面の複数の突条(12)各々と上記ケース(1)外壁面の複数の放熱フィン(7)各々とが内外で対応するように配置されていることを特徴とする蓄電装置の収容構造。
【請求項4】
請求項3において、
上記ケース(1)は、高伝熱性の針状フィラー(15)を含有する合成樹脂によって形成されていて、
上記ケース(1)の少なくとも上記放熱フィン(7)の部分では、上記針状フィラー(15)の少なくとも一部が該フィン(7)の突出方向に配向されていることを特徴とする蓄電装置の収容構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−104284(P2012−104284A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250140(P2010−250140)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】