蓄電装置の搭載構造
【課題】 車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載する構造において、蓄電装置が搭載位置からずれてしまうのを阻止することができる蓄電装置の搭載構造を提供する。
【解決手段】 車両(100)に対して蓄電装置(1)を着脱可能に搭載するための搭載構造であって、蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動するのを阻止するロック位置と、蓄電装置の着脱方向への移動を許容するロック解除位置との間で移動可能なロック部材(8,81)と、着脱方向と直交する面内において蓄電装置(5)を位置決めするための位置決め部材(210)と、を有している。ロック部材は、ロック位置への移動に応じて、蓄電装置を位置決め部材に接触させる方向に変位させる。
【解決手段】 車両(100)に対して蓄電装置(1)を着脱可能に搭載するための搭載構造であって、蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動するのを阻止するロック位置と、蓄電装置の着脱方向への移動を許容するロック解除位置との間で移動可能なロック部材(8,81)と、着脱方向と直交する面内において蓄電装置(5)を位置決めするための位置決め部材(210)と、を有している。ロック部材は、ロック位置への移動に応じて、蓄電装置を位置決め部材に接触させる方向に変位させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を車両に対して着脱可能に搭載するための搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリの電力を用いて走行可能な電動車両が開示されている。この電動車両では、車両本体に一対のレールを配置しておき、このレールに沿ってバッテリを収容位置までスライドさせるようにしている。そして、ピンを用いることにより、バッテリを収容位置で固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−212125号公報
【特許文献2】特開平07−192711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成において、例えば、レールおよびバッテリの間には、バッテリをスライドさせるための隙間が形成されている。このため、車両の振動等によって、バッテリはレールに対して変位してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載する構造において、蓄電装置が搭載位置からずれてしまうのを阻止することができる蓄電装置の搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載するための搭載構造であって、蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動するのを阻止するロック位置と、蓄電装置の着脱方向への移動を許容するロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、着脱方向と直交する面内において蓄電装置を位置決めするための位置決め部材と、を有している。そして、ロック部材は、ロック位置への移動に応じて、蓄電装置を位置決め部材に接触させる方向に変位させる。
【0007】
ここで、ロック部材を蓄電装置に設けておき、ロック位置への移動に伴ってロック部材が蓄電装置の搭載面を押し込むときの反力により、蓄電装置を変位させることができる。また、位置決め部材を着脱方向に延びた形状に形成することができる。これにより、蓄電装置を位置決め部材に沿って移動させることができる。
【0008】
また、蓄電装置に、着脱方向に延びて、位置決め部材と係合可能なレールを設けておき、蓄電装置が搭載位置にあるときに、レールの一部を、ロック部材による蓄電装置の変位方向とは異なる方向において、位置決め部材と接触した状態に保持させることができる。これにより、レールおよび位置決め部材の接触によって、蓄電装置のずれを阻止することができる。
【0009】
位置決め部材は、車両の上下方向および左右方向において、蓄電装置の位置決めを行うことができる。また、車両に対して、蓄電装置を収容可能なハウジングを設けておくことができる。この場合において、位置決め部材は、ハウジングに設けることができる。また、ハウジングのうち蓄電装置の収容口を回転動作によって開閉可能な蓋部材を設けることができる。そして、蓋部材が開き状態にあるときに、蓄電装置を収容口に導くためのガイド部を設けることができる。これにより、蓋部材に蓄電装置を載せるだけで、所定の搭載位置まで蓄電装置を移動させることができる。
【0010】
また、ロック部材を移動させるために回転操作される操作部材を設けることができる。ここで、操作部材には、この操作部材の回転力をロック部材の駆動力に変換するカム部を設けることができる。また、車両と電気的に接続され、車両への電力供給に用いられるコネクタを、着脱方向と直交する面内において、蓄電装置内に配置される蓄電ユニットと並んで配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロック部材をロック位置に移動させることにより、蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動してしまうのを阻止することができる。しかも、ロック部材のロック位置への移動を利用して、蓄電装置を位置決め部材に接触させることにより、位置決め部材に対する蓄電装置のずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1における車両の外観図である。
【図2】実施例1における電池パックの外観図である。
【図3】実施例1におけるハウジングの外観図である。
【図4】実施例1における電池パックの側面図である。
【図5】実施例1において、電池パック内に配置される電池ユニットの外観図である。
【図6】実施例1において、電池モジュールの構成を示す分解図である。
【図7】実施例1において、電池モジュールの側面図である。
【図8】実施例1において、バスバーモジュールの分解斜視図である。
【図9】実施例1において、バスバーモジュールの正面図である。
【図10】図9のA−A断面図である。
【図11】実施例1において、単電池およびバスバーの接触状態を示す図である。
【図12】実施例1において、単電池およびバスバーの接触状態を示す断面図である。
【図13】実施例1において、電池パックのレールとハウジングのレールとの係合状態を示す概略図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】実施例1において、電池パックのレールとハウジングのレールとの位置関係を示す概略図である。
【図16】実施例1の変形例において、電池パックのレールとハウジングのレールとの係合状態を示す概略図である。
【図17】実施例1における電池パックの底面図である。
【図18】実施例1において、電池パックを引き出し位置で停止させるための構成を示す概略図である。
【図19】実施例1において、操作レバーの軸部の構成を示す外観図である。
【図20】実施例1において、ラッチがロック解除位置にあるときのロック機構の概略図である。
【図21】実施例1において、ラッチがロック位置にあるときのロック機構の概略図である。
【図22】実施例1において、電池パックおよびハウジングの位置関係を示す図である。
【図23】実施例1において、蓋部材が閉じ状態にあるときのハウジングの正面図である。
【図24】実施例1において、蓋部材が閉じ状態にあるときのハウジングの側面図である。
【図25】実施例1において、電池パックの回路構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)の搭載構造について説明する。本実施例の電池パックは、図1に示す車両に搭載される。図1は、本実施例の搭載構造を備えた車両を示す外観図である。図1において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、X軸は、車両100の進行方向を示し、Y軸は、車両100の左右方向を示し、Z軸は、車両100の上下方向を示している。
【0015】
車両100は、一人乗り用の車両であり、2つの車輪101を有している。また、乗員が座る座面102の下部には、本実施例の電池パックを収容するためのスペースが設けられている。ここで、外装カバー103を取り外すことにより、車両100に電池パックを装着したり、車両100から電池パックを取り外したりすることができる。なお、本実施例の電池パックが搭載される車両は、図1に示す車両に限るものではない。すなわち、電池パックを着脱可能に装着できる車両であれば、本発明を適用することができる。
【0016】
次に、本実施例における電池パックの搭載構造について、具体的に説明する。本実施例の搭載構造は、図2に示す電池パック1と、図3に示すハウジング200とを有している。ハウジング200には、車両100に固定されており、電池パック1を収容するためのスペースを形成する。
【0017】
まず、電池パック1の構造について説明する。電池パック1は、図4に示すように、パックケース2と、パックケース2内に配置される電池ユニット(蓄電ユニット)3とを有している。図5には、電池ユニット3の外観図を示している。
【0018】
電池ユニット3は、3つの電池スタック30を有している。これらの電池スタック30は、X方向に並んで配置されているとともに、電気的に並列に接続されている。なお、3つの電池スタック30を電気的に直列に接続することもできる。また、図5には、1つの電池スタック30だけが示されている。3つの電池スタック30は、上部ホルダ31aおよび下部ホルダ31bによって、Z方向で挟まれている。
【0019】
各電池スタック30は、Z方向に積層された複数の電池モジュール32(後述する図6参照)を有しており、これらの電池モジュール32は、各電池スタック30の一側面に配置されたバスバーモジュール33(図5参照)によって、電気的に直列に接続されている。バスバーモジュール33は、電池スタック30の数だけ設けられており、各電池スタック30に対して複数の締結部33aで固定されている。なお、電池スタック30を構成する電池モジュール32の数は、電池スタック30に持たせる出力に基づいて、適宜設定することができる。
【0020】
次に、電池モジュール32の構造について、図6を用いて説明する。ここで、図6は、電池モジュール32の分解斜視図である。
【0021】
電池モジュール32は、Z方向に積層される2つの単電池321を有しており、これらの単電池321は、電気的に直列に接続される。単電池321は、発電要素321aと、発電要素321aを覆う電池ケース321bとを有している。発電要素321aは、充放電を行う要素であり、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置されるセパレータとを有している。また、電池ケース321bは、ラミネートフィルムで構成されている。
【0022】
なお、本実施例では、単電池321としてリチウムイオン電池を用いているが、これに限るものではなく、ニッケル水素電池といった他の二次電池や、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。また、本実施例では、電池ケース321bとして、ラミネートフィルムを用いているが、これに限るものではなく、いわゆる角形や円筒形といった形状を有する電池ケースを用いることもできる。
【0023】
単電池321の一側辺には、正極タブ(電極タブ)322aおよび負極タブ(電極タブ)322bが設けられている。正極タブ322aは、発電要素321aの正極素子と電気的に接続されており、負極タブ322bは、発電要素321aの負極素子と電気的に接続されている。また、各単電池321の電極タブ322a,322bは、第1支持部材323に固定されている。ここで、Y方向において、2つの単電池321を挟む位置には、第1支持部材323および第2支持部材324が配置されている。第1支持部材323および第2支持部材324によって、2つの単電池321は、Y方向において位置決めされている。
【0024】
第1支持部材323は、第1仕切部323aおよび第2仕切部323bを有している。図7は、組立状態の電池モジュール32を図6の矢印Y1の方向から見たときの図であり、第1支持部材323の構成を示している。第1仕切部323aは、各単電池321における正極タブ322aおよび負極タブ322bを仕切る位置に形成されている。また、第2仕切部323bは、上方に配置される単電池321の負極タブ322bと、下方に配置される単電池321の正極タブ322aとを仕切る位置に形成されている。第1仕切部323aおよび第2仕切部323bは、電極タブ322a,322bが互いに接触してしまうのを阻止する。
【0025】
電池モジュール32の底面には、絶縁シート325が配置されており、絶縁シート325には、接着剤326aによって下方の単電池321が固定されている。また、下方の単電池321には、接着剤326bによって上方の単電池321が固定されている。そして、上方の単電池321の上面には、電池モジュール32の温度を検出するためのサーミスタ327が固定されている。
【0026】
次に、バスバーモジュール33の構成について、具体的に説明する。ここで、図8は、バスバーモジュール33の分解斜視図を示し、図9は、バスバーモジュール33の正面図を示している。
【0027】
バスバーモジュール33は、樹脂といった絶縁性を有する材料で形成された保持プレート331を有している。保持プレート331には、複数の凹部331aが形成されており、各凹部331aには、バスバー332および板バネ333が収容されている。また、図10に示すように、凹部331aの底面には、ピン331bが形成されており、ピン331bは、板バネ333に形成された位置決め穴333bと係合している。これにより、板バネ333は、凹部331a内で固定される。ここで、図10は、図9のA−A断面図である。
【0028】
凹部331aには、バスバー332の抜けを阻止するための突起部331cが形成されている。具体的には、バスバー332の両端部332aが突起部331cに接触することにより、バスバー332が凹部331aから外れてしまうのを阻止している(図10参照)。バスバー332は、一対の腕部332bを有している。また、板バネ333は、一対の腕部333aを有しており、各腕部333aは、バスバー332の各腕部332bと接触している(図10参照)。
【0029】
バスバーモジュール33を電池スタック30に固定すると、図11に示すように、バスバー332における一対の腕部332bは、Z方向で積層された2つの単電池321における電極タブ322a,322bと接触する。これにより、1つの電池スタック30に含まれる複数の単電池321は、電気的に直列に接続されることになる。
【0030】
バスバーモジュール33を電池スタック30に固定すると、バスバー332および板バネ333は、図12に示すように、電極タブ322a,322bによって押し込まれることにより、凹部331aの底面に向かって移動する。ここで、バスバー332は、姿勢を変化させることなく、凹部331aの底面に向かって移動する。一方、板バネ333は、バスバー332の移動に伴って変形する。
【0031】
このとき、バスバー332および板バネ333の頂部が接触する位置は、図10に示す位置P11から図12に示す位置P12に変化する。そして、図12に示す状態において、バスバー332および板バネ333が接触する位置P12は、バスバー332および電極タブ322a(322b)が接触する位置と等しくなっている。このように構成することにより、バスバー332が電極タブ322a(322b)によって押し込まれて移動しても、バスバー332および電極タブ322a(322b)の接触状態を維持することができる。
【0032】
本実施例によれば、複数のバスバー332を備えたバスバーモジュール33を用いることにより、電池スタック30に対してバスバーモジュール33を取り付けるだけで、電池スタック30に含まれる複数の単電池321を電気的に直列に接続することができる。
【0033】
次に、電池パック1のうち、電池ユニット3以外の構成について、図2および図4を用いて説明する。
【0034】
図4に示すように、パックケース2は、上述した電池ユニット3を収容するためのスペースS1と、電子機器4を収容するためのスペースS2を有している。スペースS2は、スペースS1の下方に設けられている。電子機器4は、電池ユニット3(各電池スタック30)の充放電を制御するための電子機器であり、電子機器4には、例えば、電池ユニット3の充放電を許容したり、禁止したりするためのリレーが含まれている。
【0035】
パックケース2の底面21には、一対のレール5が設けられている。各レール5は、車両100に対する電池パック1の着脱時に、電池パック1をスライドさせる方向(X方向)に延びている。また、各レール5は、パックケース2の底面21に沿って形成されたフランジ51を有している。一対のレール5におけるフランジ51は、Y方向に関して、互いに離れる方向に延びている(図13参照)。
【0036】
一方、図3に示すように、ハウジング200の底面201には、電池パック1の各レール5と係合する一対のレール210が設けられている。一対のレール210は、図13に示すように、互いに近づく方向に突出したフランジ211を有している。ここで、電池パック1をハウジング200に収容した状態において、フランジ211は、フランジ51よりも上方に位置するようになっている。そして、フランジ51は、ハウジング200の底面201とフランジ211との間に挟まれている。これにより、電池パック1をZ方向において位置決めすることができる。
【0037】
また、ハウジング200の底面201には、蓋部材220が回転可能な状態で取り付けられている。また、蓋部材220は、一対の連結アーム230を介してハウジング200の側面202に接続されている。各連結アーム230は、2つのアーム部231,232を有している。アーム部231は、一端231aがハウジング200の側面202に対して回転可能に取り付けられ、他端231bがアーム部232の一端232aに対して回転可能に取り付けられている。また、アーム部232の他端232bは、蓋部材220に対して回転可能に取り付けられている。
【0038】
図3では、蓋部材220が開き状態にあり、ハウジング200に対して電池パック1を収容することができるようになっている。また、蓋部材220は、開き状態にあるときに、図1に示す外装カバー103が位置する側に突出するようになっている。図3に示す状態において、各連結アーム230における2つのアーム部231,232を折り畳むことにより、蓋部材220を図3の矢印R1で示す方向に回転させることができる。これにより、蓋部材220は、ハウジング200における電池パック1の収容口を塞いだ状態(閉じ状態)となる。
【0039】
蓋部材220の内壁面220aには、複数(4つ)のガイド部221が設けられている。ここで、X方向に並んで配置された2つのガイド部221は、ハウジング200の底面201に設けられた各レール210の延長線上に配置されている。また、複数のガイド部221は、蓋部材220が閉じ状態にあるときに、ハウジング200に収容された電池パック1と干渉しないように配置されている。
【0040】
蓋部材220にガイド部221を設けることにより、電池パック1をハウジング200内に容易に移動させることができる。すなわち、蓋部材220が開き状態にあるときに、電池パック1のレール5が蓋部材220のガイド部221に沿うように配置すれば、電池パック1をX方向に押し込むだけで、電池パック1をハウジング200内に導くことができる。また、ハウジング200にもレール210が設けられているため、電池パック1のレール5がレール210によって案内されることにより、電池パック1をハウジング200内の所定の搭載位置に移動させることができる。
【0041】
ここで、電池パック1のレール5とハウジング200のレール210との係合状態について、図14および図15を用いて説明する。図14は、図13のB−B断面を示す概略図であり、ハウジング200の底面201から電池パック1の側を見たときの図である。また、図15は、図14と同一平面における断面図であり、電池パック1をハウジング200に収納する前(又は後)の状態を示す図である。
【0042】
電池パック1がハウジング200内の所定の搭載位置にあるとき、各レール5のフランジ51が、対応するレール210の側壁に接触している。具体的には、レール5の一端部5aがレール210の一端部210aと接触しており、レール5の他端部5bがレール210の他端部210bと接触している。なお、レール5のうち両端部5a,5b以外の領域と、レール210のうち両端部210a,210b以外の領域とは、互いに接触していない。
【0043】
一対のレール5における一端部5aの間隔(D1)は、一対のレール210における一端部210aの間隔(D1)と等しくなっている。これにより、図14に示す状態において、各端部5aは、各端部210aと密接する。また、一対のレール5における他端部5bの間隔(D2)は、一対のレール210における他端部210bの間隔(D2)と等しくなっている。これにより、図14に示す状態において、各端部5bは、各端部210aと密接する。ここで、間隔D2は、間隔D1よりも狭くなっている。
【0044】
上述したレール5,210の構成では、図13に示すように、レール5におけるフランジ51の先端をレール210に接触させることにより、Y方向において電池パック1を位置決めすることができる。また、本実施例では、各レール5の両端部5a,5bをレール210の両端部210a,210bに密接させているため、電池パック1がY方向にずれてしまうのを阻止することができる。
【0045】
さらに、各端部5a,5bは、対応する各端部210a,210bにのみ接触するようになっている。具体的には、電池パック1を搭載位置(図14に示す位置)からX方向にスライドさせると、図15に示すように、各端部5a,5bは、レール210から離れることになる。また、図15に示す状態において、レール5,210の間に形成されたスペースは、レール210に対するレール5(電池パック1)のスライド移動を許容させるためのスペースとなる。これにより、ハウジング200に対する電池パック1の着脱をスムーズに行うことができる。
【0046】
なお、本実施例では、電池パック1が所定の搭載位置にあるときに、レール5の両端部5a,5bをレール210の両端部210a,210bに密接させているが、これに限るものではない。すなわち、電池パック1が搭載位置にあるときに、レール5の少なくとも一部を、レール210の少なくとも一部に接触させることにより、電池パック1がY方向に変位してしまうのを阻止すればよい。例えば、電池パック1のレール5とハウジング200のレール210とを、図16に示すように構成することもできる。図16に示す構成では、レール5,210のうち、互いに向かい合う面を平行に近い傾斜面として構成し、互いに接触させるようにしている。
【0047】
一方、図17に示すように、一対のレール5のうち、互いに向かい合う側面には、突起部52が設けられており、一対の突起部52は、互いに近づく方向に向かって突出している。図17は、電池パック1を下方(底面)から見たときの図である。突起部52は、電池パック1をハウジング200から取り外す際に、蓋部材220の内壁面220aに設けられたストッパ222(図3参照)に突き当たるようになっている。
【0048】
図18には、電池パック1をハウジング200から取り外す場合において、電池パック10の突起部52と、蓋部材220のストッパ222との位置関係を示している。ここで、図18において、矢印は、電池パック1を取り外すときの突起部52の移動方向を示しており、突起部52の移動軌跡を点線で示している。
【0049】
一対の突起部52の間隔D3は、ハウジング200の底面201に設けられた第1ストッパ240の幅W1よりも広くなっている。このため、電池パック1をハウジング200から取り外すときに、突起部52が第1ストッパ240に突き当たることはない。ここで、第1ストッパ240は、後述するように、所定の搭載位置にある電池パック1をX方向において位置決めするために用いられる。
【0050】
また、一対の突起部52の間隔D3は、第2ストッパ222の幅W2よりも狭くなっているため、図18に示すように、突起部52の一部が第2ストッパ222に突き当たるようになっている。これにより、電池パック1をハウジング200から取り出した位置で一次的に停止させることができ、電池パック1を誤って落下させてしまうのを防止することができる。ここで、第1ストッパ240の高さ(Z方向の長さ)は、第2ストッパ222の高さ(Z方向の長さ)と等しくなっている。
【0051】
次に、ハウジング200に収容された電池パック1をX方向(着脱方向)において位置決めするための構造について説明する。
【0052】
図2に示すように、パックケース2の前面22は、第1領域22aおよび第2領域22bを有している。第1領域22aには、取手6が配置されており、取手6は、第1領域22aに固定された支持部61に対して、回転可能に取り付けられている。
【0053】
また、第1領域22aには、充電器(不図示)が接続される充電コネクタ7が取り付けられている。充電コネクタ7に充電器を接続することにより、電池パック1内の電池ユニット3に対して充電を行うことができる。また、パックケース2の前面22は、図1に示す外装カバー103と向かい合っているため、外装カバー103を外せば、電池パック1を車両に搭載したままの状態で、充電器を充電コネクタ7に接続することができる。
【0054】
一方、第2領域22bには、ロック機構8が設けられている。ここで、第2領域22bは、ロック機構8の配置スペースを確保するために、第1領域22aよりもパックケース2の背面23側に位置している(図4参照)。
【0055】
ロック機構8は、所定の搭載位置に配置された電池パック1を、X方向において位置決めするために用いられる。図4に示すように、ロック機構8は、Z方向に移動可能なラッチ81と、ラッチ81を動作させるための操作レバー82とを有している。操作レバー82は、支持部材83によって回転可能に支持されている。なお、図4等において、操作レバー82の回転軸をAXLとして示している。
【0056】
操作レバー82は、図19に示すように、支持部材83によって回転可能に支持される軸部82aを有しており、軸部82aは、回転軸AXLと直交する断面が円形に形成されている。軸部82aにはカム溝82bが形成されており、カム溝82bは、ラッチ81に固定された駆動ピン81aと係合する。図19の矢印R2で示すように、操作レバー82(軸部82a)を回転軸AXLの周りで回転させることにより、カム溝82bは、位置P21,P22の間で駆動ピン81aを移動させることができる。そして、駆動ピン81aを位置P21,22の間で移動させることにより、ラッチ81をZ方向において直進移動させることができる。
【0057】
駆動ピン81aがカム溝82bの位置P21にあるとき、ラッチ81は、図20に示す状態にある。図20に示す状態において、ラッチ81の先端は、ハウジング200の底面201に設けられた第1ストッパ240よりも上方に位置している。このとき、電池パック1をハウジング200のレール210に沿ってスライドさせることができる。
【0058】
一方、駆動ピン81aがカム溝82bに沿って移動して位置P22に到達すると、ラッチ81は、図21に示す状態となる。すなわち、駆動ピン81aが位置P21から位置P22に移動することに応じて、ラッチ81は、パックケース2の底面21から突出する方向に移動する。これにより、ラッチ81が第1ストッパ240の爪部241に接触して、電池パック1が取り出し方向(図21の左側)に移動するのを阻止することができる。言い換えれば、ラッチ81および第1ストッパ240により、X方向において電池パック1を位置決めすることができる。
【0059】
また、図21に示す状態において、ラッチ81の先端は、矢印F1で示す方向において、第1ストッパ240を押し付けている。これにより、電池パック1に対して、矢印F2で示す方向に作用する力(反力)を発生させることができる。ここで、電池パック1を上方に向かって変位させることにより、図13において、電池パック1に設けられたレール5のフランジ51を、ハウジング200に設けられたレール210のフランジ211に接触させることができる。
【0060】
ここで、電池パック1の変位量を、レール210のフランジ211およびレール5のフランジ51の間隔よりも大きくすれば、フランジ51をフランジ211に密接させることができる。すなわち、電池パック1がZ方向において変位してしまうのを阻止することができる。
【0061】
一方、ハウジング200における一方の側面202には、図22に示すように、コネクタ251を備えた電子機器250が取り付けられている。パックケース2は、電子機器250との干渉を避けた形状に形成されており、パックケース2のうち、コネクタ251と対向する領域にはコネクタ9が設けられている。コネクタ9は、Y−Z平面内において、電池ユニット3と並んで配置されている。
【0062】
コネクタ9およびコネクタ251を接続することにより、電子機器250は、電池パック1内の電子機器4(図4参照)との間で通信を行ったり、電池ユニット3からの電力供給を受けたりすることができる。
【0063】
また、ハウジング200の上部には、図23および図24に示すように、DC/DCコンバータ300が配置されている。DC/DCコンバータ300は、ハウジング200における一対の側面202に固定されており、ハウジング200に収容された電池パック1の上方に位置している。また、ハウジング200の側面202には、車両100に固定されるブラケット310が取り付けられており、ブラケット310には、ロッド311が固定されている。ロッド311によって、ハウジング200の強度を向上させることができる。
【0064】
DC/DCコンバータ300は、インバータ(不図示)と電気的に接続されているとともに、電池パック1をハウジング200に収容したときに、電池パック1と電気的に接続される。これにより、DC/DCコンバータ300は、電池パック1の出力電圧をインバータに供給したり、インバータからの出力電圧を電池パック1に供給したりする。なお、インバータは、車両に搭載されたモータ(三相交流モータ)に接続されており、モータを駆動することにより、車両100の走行エネルギを発生させることができる。
【0065】
一方、ハウジング200の下方には、バッテリ400が配置されており、ハウジング200の底面201には、バッテリ400を固定するためのブラケット410が設けられている。バッテリ400は、予備の電力を確保するために設けられている。
【0066】
本実施例では、ハウジング200に対してDC/DCコンバータ300やバッテリ400を固定することにより、ハウジング200の強度を確保することができる。また、DC/DCコンバータ300を用いて、電池パック1の収容スペースにおける上面を構成することにより、DC/DCコンバータ300およびハウジング200の配置スペースを小型化することができる。
【0067】
ハウジング200の剛性を確保できれば、ハウジング200を、高価な高強度材料から安価な材料に変更することができ、ハウジング200のコストダウンを図ることができる。また、バッテリ400をハウジング200の下方に配置したことにより、電池パック1を着脱する側から、バッテリ400を取り扱うことができる。具体的には、バッテリ400の着脱作業を、蓋部材220を開閉させる側から行うことができ、バッテリ400の着脱作業を容易に行うことができる。
【0068】
なお、本実施例では、ロック機構8を電池パック1に設けるようにしているが、ハウジング200に設けることもできる。この場合には、ロック機構8のラッチ81によって、電池パック1をX方向で位置決めすることができる。また、ラッチ81によって電池パック1を押し上げることにより、電池パック1のレール5をハウジング200のレール210に密接させて、Z方向における電池パック1のずれを阻止することができる。
【0069】
また、本実施例では、操作レバー82の操作(手動)により、ラッチ81を移動させているが、モータ等の動力(電動)を用いてラッチ81を移動させることもできる。さらに、本実施例では、電池パック1を水平面内(X−Y平面内)でスライドさせるようにしているが、重力方向において電池パック1をスライドさせることもできる。この場合であっても、本発明を適用することができる。すなわち、図2〜図24に示したX方向を重力方向に置き換えればよい。
【0070】
さらに、本実施例では、ハウジング200における一対のレール210の内側に、電池パック1における一対のレール5を配置しているが、逆の構成であってもよい。すなわち、一対のレール5の内側に、一対のレール210を配置することもできる。
【0071】
次に、電池パック1を交換するときの動作について説明する。この場合には、車両100の外装カバー103を取り外しておく。
【0072】
まず、蓋部材220のターン223(図23参照)を回転させることにより、蓋部材220のロックを解除する。ここで、ターン223は、蓋部材220に回転可能に取り付けられており、電池パック1と係合するための爪部(不図示)を有している。具体的には、ターン223を回転させることにより、電池パック1に形成された凹部(不図示)にターン223の爪部を進入させたり、退避させたりすることができる。これにより、蓋部材220を電池パック1に固定したり、電池パック1から外したりすることができる。
【0073】
そして、蓋部材220を、閉じ状態(図23,24に示す状態)から開き状態(図3に示す状態)に回転させる。これにより、電池パック1の前面を露出させることができる。そして、ロック機構8の操作レバー82を回転させることにより、ラッチ81をロック位置(図21に示す位置)からロック解除位置(図20に示す位置)に移動させる。これにより、電池パック1をX方向にスライドさせることができる。
【0074】
そして、取手6を引っ張ることにより、電池パック1をハウジング200のレール210や蓋部材220のガイド部221に沿って移動させる。ここで、電池パック1の突起部52が第2ストッパ222に突き当たるまで、電池パック1を引き出すことができる。
【0075】
次に、新しい電池パック1を蓋部材220に載せて、蓋部材220のガイド部221やハウジング200のレール210に沿って電池パック1を移動させる。そして、操作レバー82を回転させることにより、ラッチ81をロック解除位置からロック位置に移動させる。これにより、上述したように、3次元方向において電池パック1を位置決めすることができる。そして、蓋部材220を開き状態から閉じ状態に回転させて、ターン223を回転させることにより、蓋部材220を電池パック1に固定することができる。これにより、電池パック1の交換作業が完了する。
【0076】
次に、電池パック1の回路構成について、図25を用いて説明する。
【0077】
電池ユニット3(各電池スタック30)の総プラス端子には、システムメインリレー511が接続されている。また、各電池スタック30の総マイナス端子には、システムメインリレー512a〜512cが接続されている。システムメインリレー511,512a〜512cは、リレー制御回路500からの制御信号を受けて、オンおよびオフの間で切り替わる。ここで、車両100のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、イグニッションスイッチのオンを示す信号がリレー制御回路500に入力される。これにより、リレー制御回路500は、システムに異常がなければ、システムメインリレー511,512a〜512cをオフからオンに切り替える。これにより、電池ユニット3の電力が車両に供給されることになる。
【0078】
ここで、電池パック1を交換する際にイグニッションスイッチをオフにしておけば、リレー制御回路500の制御によって、システムメインリレー511,512a〜512cがオフになっている。これにより、電池パック1を交換する際の安全性を確保することができる。
【0079】
一方、充電コネクタ7に充電器600を接続すると、電池ユニット3の充電を行うことができる。ここで、充電コネクタ7と各電池スタック30の総プラス端子との間には、ダイオード513が配置されている。ダイオード513を配置することにより、充電コネクタ7を介した電池スタック30の放電を禁止することができ、充電器600を用いて充電を行う際の安全性を確保することができる。
【0080】
また、ロック機構8に、インターロックスイッチを設けることができる。これにより、ラッチ81がロック位置に移動していない状態で、車両100のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わっても、車両100を動作させないようにすることができる。
【符号の説明】
【0081】
100:車両 1:電池パック 2:パックケース
210:レール(位置決め部材) 211:フランジ 220:蓋部材
221:ガイド部 222:第2ストッパ 240:第1ストッパ
3:電池ユニット(蓄電ユニット)
30:電池スタック 32:電池モジュール
321:単電池 322a,322b:電極タブ(正極タブ、負極タブ)
33:バスバーモジュール 332:バスバー 333:板バネ
5:レール 51:フランジ 52:突起部
7:充電コネクタ 8:ロック機構
81:ラッチ(ロック部材) 81a:駆動ピン
82:操作レバー(操作部材) 82b:カム溝
83:支持部材 9:コネクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を車両に対して着脱可能に搭載するための搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリの電力を用いて走行可能な電動車両が開示されている。この電動車両では、車両本体に一対のレールを配置しておき、このレールに沿ってバッテリを収容位置までスライドさせるようにしている。そして、ピンを用いることにより、バッテリを収容位置で固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−212125号公報
【特許文献2】特開平07−192711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成において、例えば、レールおよびバッテリの間には、バッテリをスライドさせるための隙間が形成されている。このため、車両の振動等によって、バッテリはレールに対して変位してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載する構造において、蓄電装置が搭載位置からずれてしまうのを阻止することができる蓄電装置の搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載するための搭載構造であって、蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動するのを阻止するロック位置と、蓄電装置の着脱方向への移動を許容するロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、着脱方向と直交する面内において蓄電装置を位置決めするための位置決め部材と、を有している。そして、ロック部材は、ロック位置への移動に応じて、蓄電装置を位置決め部材に接触させる方向に変位させる。
【0007】
ここで、ロック部材を蓄電装置に設けておき、ロック位置への移動に伴ってロック部材が蓄電装置の搭載面を押し込むときの反力により、蓄電装置を変位させることができる。また、位置決め部材を着脱方向に延びた形状に形成することができる。これにより、蓄電装置を位置決め部材に沿って移動させることができる。
【0008】
また、蓄電装置に、着脱方向に延びて、位置決め部材と係合可能なレールを設けておき、蓄電装置が搭載位置にあるときに、レールの一部を、ロック部材による蓄電装置の変位方向とは異なる方向において、位置決め部材と接触した状態に保持させることができる。これにより、レールおよび位置決め部材の接触によって、蓄電装置のずれを阻止することができる。
【0009】
位置決め部材は、車両の上下方向および左右方向において、蓄電装置の位置決めを行うことができる。また、車両に対して、蓄電装置を収容可能なハウジングを設けておくことができる。この場合において、位置決め部材は、ハウジングに設けることができる。また、ハウジングのうち蓄電装置の収容口を回転動作によって開閉可能な蓋部材を設けることができる。そして、蓋部材が開き状態にあるときに、蓄電装置を収容口に導くためのガイド部を設けることができる。これにより、蓋部材に蓄電装置を載せるだけで、所定の搭載位置まで蓄電装置を移動させることができる。
【0010】
また、ロック部材を移動させるために回転操作される操作部材を設けることができる。ここで、操作部材には、この操作部材の回転力をロック部材の駆動力に変換するカム部を設けることができる。また、車両と電気的に接続され、車両への電力供給に用いられるコネクタを、着脱方向と直交する面内において、蓄電装置内に配置される蓄電ユニットと並んで配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロック部材をロック位置に移動させることにより、蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動してしまうのを阻止することができる。しかも、ロック部材のロック位置への移動を利用して、蓄電装置を位置決め部材に接触させることにより、位置決め部材に対する蓄電装置のずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1における車両の外観図である。
【図2】実施例1における電池パックの外観図である。
【図3】実施例1におけるハウジングの外観図である。
【図4】実施例1における電池パックの側面図である。
【図5】実施例1において、電池パック内に配置される電池ユニットの外観図である。
【図6】実施例1において、電池モジュールの構成を示す分解図である。
【図7】実施例1において、電池モジュールの側面図である。
【図8】実施例1において、バスバーモジュールの分解斜視図である。
【図9】実施例1において、バスバーモジュールの正面図である。
【図10】図9のA−A断面図である。
【図11】実施例1において、単電池およびバスバーの接触状態を示す図である。
【図12】実施例1において、単電池およびバスバーの接触状態を示す断面図である。
【図13】実施例1において、電池パックのレールとハウジングのレールとの係合状態を示す概略図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】実施例1において、電池パックのレールとハウジングのレールとの位置関係を示す概略図である。
【図16】実施例1の変形例において、電池パックのレールとハウジングのレールとの係合状態を示す概略図である。
【図17】実施例1における電池パックの底面図である。
【図18】実施例1において、電池パックを引き出し位置で停止させるための構成を示す概略図である。
【図19】実施例1において、操作レバーの軸部の構成を示す外観図である。
【図20】実施例1において、ラッチがロック解除位置にあるときのロック機構の概略図である。
【図21】実施例1において、ラッチがロック位置にあるときのロック機構の概略図である。
【図22】実施例1において、電池パックおよびハウジングの位置関係を示す図である。
【図23】実施例1において、蓋部材が閉じ状態にあるときのハウジングの正面図である。
【図24】実施例1において、蓋部材が閉じ状態にあるときのハウジングの側面図である。
【図25】実施例1において、電池パックの回路構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)の搭載構造について説明する。本実施例の電池パックは、図1に示す車両に搭載される。図1は、本実施例の搭載構造を備えた車両を示す外観図である。図1において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、X軸は、車両100の進行方向を示し、Y軸は、車両100の左右方向を示し、Z軸は、車両100の上下方向を示している。
【0015】
車両100は、一人乗り用の車両であり、2つの車輪101を有している。また、乗員が座る座面102の下部には、本実施例の電池パックを収容するためのスペースが設けられている。ここで、外装カバー103を取り外すことにより、車両100に電池パックを装着したり、車両100から電池パックを取り外したりすることができる。なお、本実施例の電池パックが搭載される車両は、図1に示す車両に限るものではない。すなわち、電池パックを着脱可能に装着できる車両であれば、本発明を適用することができる。
【0016】
次に、本実施例における電池パックの搭載構造について、具体的に説明する。本実施例の搭載構造は、図2に示す電池パック1と、図3に示すハウジング200とを有している。ハウジング200には、車両100に固定されており、電池パック1を収容するためのスペースを形成する。
【0017】
まず、電池パック1の構造について説明する。電池パック1は、図4に示すように、パックケース2と、パックケース2内に配置される電池ユニット(蓄電ユニット)3とを有している。図5には、電池ユニット3の外観図を示している。
【0018】
電池ユニット3は、3つの電池スタック30を有している。これらの電池スタック30は、X方向に並んで配置されているとともに、電気的に並列に接続されている。なお、3つの電池スタック30を電気的に直列に接続することもできる。また、図5には、1つの電池スタック30だけが示されている。3つの電池スタック30は、上部ホルダ31aおよび下部ホルダ31bによって、Z方向で挟まれている。
【0019】
各電池スタック30は、Z方向に積層された複数の電池モジュール32(後述する図6参照)を有しており、これらの電池モジュール32は、各電池スタック30の一側面に配置されたバスバーモジュール33(図5参照)によって、電気的に直列に接続されている。バスバーモジュール33は、電池スタック30の数だけ設けられており、各電池スタック30に対して複数の締結部33aで固定されている。なお、電池スタック30を構成する電池モジュール32の数は、電池スタック30に持たせる出力に基づいて、適宜設定することができる。
【0020】
次に、電池モジュール32の構造について、図6を用いて説明する。ここで、図6は、電池モジュール32の分解斜視図である。
【0021】
電池モジュール32は、Z方向に積層される2つの単電池321を有しており、これらの単電池321は、電気的に直列に接続される。単電池321は、発電要素321aと、発電要素321aを覆う電池ケース321bとを有している。発電要素321aは、充放電を行う要素であり、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置されるセパレータとを有している。また、電池ケース321bは、ラミネートフィルムで構成されている。
【0022】
なお、本実施例では、単電池321としてリチウムイオン電池を用いているが、これに限るものではなく、ニッケル水素電池といった他の二次電池や、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。また、本実施例では、電池ケース321bとして、ラミネートフィルムを用いているが、これに限るものではなく、いわゆる角形や円筒形といった形状を有する電池ケースを用いることもできる。
【0023】
単電池321の一側辺には、正極タブ(電極タブ)322aおよび負極タブ(電極タブ)322bが設けられている。正極タブ322aは、発電要素321aの正極素子と電気的に接続されており、負極タブ322bは、発電要素321aの負極素子と電気的に接続されている。また、各単電池321の電極タブ322a,322bは、第1支持部材323に固定されている。ここで、Y方向において、2つの単電池321を挟む位置には、第1支持部材323および第2支持部材324が配置されている。第1支持部材323および第2支持部材324によって、2つの単電池321は、Y方向において位置決めされている。
【0024】
第1支持部材323は、第1仕切部323aおよび第2仕切部323bを有している。図7は、組立状態の電池モジュール32を図6の矢印Y1の方向から見たときの図であり、第1支持部材323の構成を示している。第1仕切部323aは、各単電池321における正極タブ322aおよび負極タブ322bを仕切る位置に形成されている。また、第2仕切部323bは、上方に配置される単電池321の負極タブ322bと、下方に配置される単電池321の正極タブ322aとを仕切る位置に形成されている。第1仕切部323aおよび第2仕切部323bは、電極タブ322a,322bが互いに接触してしまうのを阻止する。
【0025】
電池モジュール32の底面には、絶縁シート325が配置されており、絶縁シート325には、接着剤326aによって下方の単電池321が固定されている。また、下方の単電池321には、接着剤326bによって上方の単電池321が固定されている。そして、上方の単電池321の上面には、電池モジュール32の温度を検出するためのサーミスタ327が固定されている。
【0026】
次に、バスバーモジュール33の構成について、具体的に説明する。ここで、図8は、バスバーモジュール33の分解斜視図を示し、図9は、バスバーモジュール33の正面図を示している。
【0027】
バスバーモジュール33は、樹脂といった絶縁性を有する材料で形成された保持プレート331を有している。保持プレート331には、複数の凹部331aが形成されており、各凹部331aには、バスバー332および板バネ333が収容されている。また、図10に示すように、凹部331aの底面には、ピン331bが形成されており、ピン331bは、板バネ333に形成された位置決め穴333bと係合している。これにより、板バネ333は、凹部331a内で固定される。ここで、図10は、図9のA−A断面図である。
【0028】
凹部331aには、バスバー332の抜けを阻止するための突起部331cが形成されている。具体的には、バスバー332の両端部332aが突起部331cに接触することにより、バスバー332が凹部331aから外れてしまうのを阻止している(図10参照)。バスバー332は、一対の腕部332bを有している。また、板バネ333は、一対の腕部333aを有しており、各腕部333aは、バスバー332の各腕部332bと接触している(図10参照)。
【0029】
バスバーモジュール33を電池スタック30に固定すると、図11に示すように、バスバー332における一対の腕部332bは、Z方向で積層された2つの単電池321における電極タブ322a,322bと接触する。これにより、1つの電池スタック30に含まれる複数の単電池321は、電気的に直列に接続されることになる。
【0030】
バスバーモジュール33を電池スタック30に固定すると、バスバー332および板バネ333は、図12に示すように、電極タブ322a,322bによって押し込まれることにより、凹部331aの底面に向かって移動する。ここで、バスバー332は、姿勢を変化させることなく、凹部331aの底面に向かって移動する。一方、板バネ333は、バスバー332の移動に伴って変形する。
【0031】
このとき、バスバー332および板バネ333の頂部が接触する位置は、図10に示す位置P11から図12に示す位置P12に変化する。そして、図12に示す状態において、バスバー332および板バネ333が接触する位置P12は、バスバー332および電極タブ322a(322b)が接触する位置と等しくなっている。このように構成することにより、バスバー332が電極タブ322a(322b)によって押し込まれて移動しても、バスバー332および電極タブ322a(322b)の接触状態を維持することができる。
【0032】
本実施例によれば、複数のバスバー332を備えたバスバーモジュール33を用いることにより、電池スタック30に対してバスバーモジュール33を取り付けるだけで、電池スタック30に含まれる複数の単電池321を電気的に直列に接続することができる。
【0033】
次に、電池パック1のうち、電池ユニット3以外の構成について、図2および図4を用いて説明する。
【0034】
図4に示すように、パックケース2は、上述した電池ユニット3を収容するためのスペースS1と、電子機器4を収容するためのスペースS2を有している。スペースS2は、スペースS1の下方に設けられている。電子機器4は、電池ユニット3(各電池スタック30)の充放電を制御するための電子機器であり、電子機器4には、例えば、電池ユニット3の充放電を許容したり、禁止したりするためのリレーが含まれている。
【0035】
パックケース2の底面21には、一対のレール5が設けられている。各レール5は、車両100に対する電池パック1の着脱時に、電池パック1をスライドさせる方向(X方向)に延びている。また、各レール5は、パックケース2の底面21に沿って形成されたフランジ51を有している。一対のレール5におけるフランジ51は、Y方向に関して、互いに離れる方向に延びている(図13参照)。
【0036】
一方、図3に示すように、ハウジング200の底面201には、電池パック1の各レール5と係合する一対のレール210が設けられている。一対のレール210は、図13に示すように、互いに近づく方向に突出したフランジ211を有している。ここで、電池パック1をハウジング200に収容した状態において、フランジ211は、フランジ51よりも上方に位置するようになっている。そして、フランジ51は、ハウジング200の底面201とフランジ211との間に挟まれている。これにより、電池パック1をZ方向において位置決めすることができる。
【0037】
また、ハウジング200の底面201には、蓋部材220が回転可能な状態で取り付けられている。また、蓋部材220は、一対の連結アーム230を介してハウジング200の側面202に接続されている。各連結アーム230は、2つのアーム部231,232を有している。アーム部231は、一端231aがハウジング200の側面202に対して回転可能に取り付けられ、他端231bがアーム部232の一端232aに対して回転可能に取り付けられている。また、アーム部232の他端232bは、蓋部材220に対して回転可能に取り付けられている。
【0038】
図3では、蓋部材220が開き状態にあり、ハウジング200に対して電池パック1を収容することができるようになっている。また、蓋部材220は、開き状態にあるときに、図1に示す外装カバー103が位置する側に突出するようになっている。図3に示す状態において、各連結アーム230における2つのアーム部231,232を折り畳むことにより、蓋部材220を図3の矢印R1で示す方向に回転させることができる。これにより、蓋部材220は、ハウジング200における電池パック1の収容口を塞いだ状態(閉じ状態)となる。
【0039】
蓋部材220の内壁面220aには、複数(4つ)のガイド部221が設けられている。ここで、X方向に並んで配置された2つのガイド部221は、ハウジング200の底面201に設けられた各レール210の延長線上に配置されている。また、複数のガイド部221は、蓋部材220が閉じ状態にあるときに、ハウジング200に収容された電池パック1と干渉しないように配置されている。
【0040】
蓋部材220にガイド部221を設けることにより、電池パック1をハウジング200内に容易に移動させることができる。すなわち、蓋部材220が開き状態にあるときに、電池パック1のレール5が蓋部材220のガイド部221に沿うように配置すれば、電池パック1をX方向に押し込むだけで、電池パック1をハウジング200内に導くことができる。また、ハウジング200にもレール210が設けられているため、電池パック1のレール5がレール210によって案内されることにより、電池パック1をハウジング200内の所定の搭載位置に移動させることができる。
【0041】
ここで、電池パック1のレール5とハウジング200のレール210との係合状態について、図14および図15を用いて説明する。図14は、図13のB−B断面を示す概略図であり、ハウジング200の底面201から電池パック1の側を見たときの図である。また、図15は、図14と同一平面における断面図であり、電池パック1をハウジング200に収納する前(又は後)の状態を示す図である。
【0042】
電池パック1がハウジング200内の所定の搭載位置にあるとき、各レール5のフランジ51が、対応するレール210の側壁に接触している。具体的には、レール5の一端部5aがレール210の一端部210aと接触しており、レール5の他端部5bがレール210の他端部210bと接触している。なお、レール5のうち両端部5a,5b以外の領域と、レール210のうち両端部210a,210b以外の領域とは、互いに接触していない。
【0043】
一対のレール5における一端部5aの間隔(D1)は、一対のレール210における一端部210aの間隔(D1)と等しくなっている。これにより、図14に示す状態において、各端部5aは、各端部210aと密接する。また、一対のレール5における他端部5bの間隔(D2)は、一対のレール210における他端部210bの間隔(D2)と等しくなっている。これにより、図14に示す状態において、各端部5bは、各端部210aと密接する。ここで、間隔D2は、間隔D1よりも狭くなっている。
【0044】
上述したレール5,210の構成では、図13に示すように、レール5におけるフランジ51の先端をレール210に接触させることにより、Y方向において電池パック1を位置決めすることができる。また、本実施例では、各レール5の両端部5a,5bをレール210の両端部210a,210bに密接させているため、電池パック1がY方向にずれてしまうのを阻止することができる。
【0045】
さらに、各端部5a,5bは、対応する各端部210a,210bにのみ接触するようになっている。具体的には、電池パック1を搭載位置(図14に示す位置)からX方向にスライドさせると、図15に示すように、各端部5a,5bは、レール210から離れることになる。また、図15に示す状態において、レール5,210の間に形成されたスペースは、レール210に対するレール5(電池パック1)のスライド移動を許容させるためのスペースとなる。これにより、ハウジング200に対する電池パック1の着脱をスムーズに行うことができる。
【0046】
なお、本実施例では、電池パック1が所定の搭載位置にあるときに、レール5の両端部5a,5bをレール210の両端部210a,210bに密接させているが、これに限るものではない。すなわち、電池パック1が搭載位置にあるときに、レール5の少なくとも一部を、レール210の少なくとも一部に接触させることにより、電池パック1がY方向に変位してしまうのを阻止すればよい。例えば、電池パック1のレール5とハウジング200のレール210とを、図16に示すように構成することもできる。図16に示す構成では、レール5,210のうち、互いに向かい合う面を平行に近い傾斜面として構成し、互いに接触させるようにしている。
【0047】
一方、図17に示すように、一対のレール5のうち、互いに向かい合う側面には、突起部52が設けられており、一対の突起部52は、互いに近づく方向に向かって突出している。図17は、電池パック1を下方(底面)から見たときの図である。突起部52は、電池パック1をハウジング200から取り外す際に、蓋部材220の内壁面220aに設けられたストッパ222(図3参照)に突き当たるようになっている。
【0048】
図18には、電池パック1をハウジング200から取り外す場合において、電池パック10の突起部52と、蓋部材220のストッパ222との位置関係を示している。ここで、図18において、矢印は、電池パック1を取り外すときの突起部52の移動方向を示しており、突起部52の移動軌跡を点線で示している。
【0049】
一対の突起部52の間隔D3は、ハウジング200の底面201に設けられた第1ストッパ240の幅W1よりも広くなっている。このため、電池パック1をハウジング200から取り外すときに、突起部52が第1ストッパ240に突き当たることはない。ここで、第1ストッパ240は、後述するように、所定の搭載位置にある電池パック1をX方向において位置決めするために用いられる。
【0050】
また、一対の突起部52の間隔D3は、第2ストッパ222の幅W2よりも狭くなっているため、図18に示すように、突起部52の一部が第2ストッパ222に突き当たるようになっている。これにより、電池パック1をハウジング200から取り出した位置で一次的に停止させることができ、電池パック1を誤って落下させてしまうのを防止することができる。ここで、第1ストッパ240の高さ(Z方向の長さ)は、第2ストッパ222の高さ(Z方向の長さ)と等しくなっている。
【0051】
次に、ハウジング200に収容された電池パック1をX方向(着脱方向)において位置決めするための構造について説明する。
【0052】
図2に示すように、パックケース2の前面22は、第1領域22aおよび第2領域22bを有している。第1領域22aには、取手6が配置されており、取手6は、第1領域22aに固定された支持部61に対して、回転可能に取り付けられている。
【0053】
また、第1領域22aには、充電器(不図示)が接続される充電コネクタ7が取り付けられている。充電コネクタ7に充電器を接続することにより、電池パック1内の電池ユニット3に対して充電を行うことができる。また、パックケース2の前面22は、図1に示す外装カバー103と向かい合っているため、外装カバー103を外せば、電池パック1を車両に搭載したままの状態で、充電器を充電コネクタ7に接続することができる。
【0054】
一方、第2領域22bには、ロック機構8が設けられている。ここで、第2領域22bは、ロック機構8の配置スペースを確保するために、第1領域22aよりもパックケース2の背面23側に位置している(図4参照)。
【0055】
ロック機構8は、所定の搭載位置に配置された電池パック1を、X方向において位置決めするために用いられる。図4に示すように、ロック機構8は、Z方向に移動可能なラッチ81と、ラッチ81を動作させるための操作レバー82とを有している。操作レバー82は、支持部材83によって回転可能に支持されている。なお、図4等において、操作レバー82の回転軸をAXLとして示している。
【0056】
操作レバー82は、図19に示すように、支持部材83によって回転可能に支持される軸部82aを有しており、軸部82aは、回転軸AXLと直交する断面が円形に形成されている。軸部82aにはカム溝82bが形成されており、カム溝82bは、ラッチ81に固定された駆動ピン81aと係合する。図19の矢印R2で示すように、操作レバー82(軸部82a)を回転軸AXLの周りで回転させることにより、カム溝82bは、位置P21,P22の間で駆動ピン81aを移動させることができる。そして、駆動ピン81aを位置P21,22の間で移動させることにより、ラッチ81をZ方向において直進移動させることができる。
【0057】
駆動ピン81aがカム溝82bの位置P21にあるとき、ラッチ81は、図20に示す状態にある。図20に示す状態において、ラッチ81の先端は、ハウジング200の底面201に設けられた第1ストッパ240よりも上方に位置している。このとき、電池パック1をハウジング200のレール210に沿ってスライドさせることができる。
【0058】
一方、駆動ピン81aがカム溝82bに沿って移動して位置P22に到達すると、ラッチ81は、図21に示す状態となる。すなわち、駆動ピン81aが位置P21から位置P22に移動することに応じて、ラッチ81は、パックケース2の底面21から突出する方向に移動する。これにより、ラッチ81が第1ストッパ240の爪部241に接触して、電池パック1が取り出し方向(図21の左側)に移動するのを阻止することができる。言い換えれば、ラッチ81および第1ストッパ240により、X方向において電池パック1を位置決めすることができる。
【0059】
また、図21に示す状態において、ラッチ81の先端は、矢印F1で示す方向において、第1ストッパ240を押し付けている。これにより、電池パック1に対して、矢印F2で示す方向に作用する力(反力)を発生させることができる。ここで、電池パック1を上方に向かって変位させることにより、図13において、電池パック1に設けられたレール5のフランジ51を、ハウジング200に設けられたレール210のフランジ211に接触させることができる。
【0060】
ここで、電池パック1の変位量を、レール210のフランジ211およびレール5のフランジ51の間隔よりも大きくすれば、フランジ51をフランジ211に密接させることができる。すなわち、電池パック1がZ方向において変位してしまうのを阻止することができる。
【0061】
一方、ハウジング200における一方の側面202には、図22に示すように、コネクタ251を備えた電子機器250が取り付けられている。パックケース2は、電子機器250との干渉を避けた形状に形成されており、パックケース2のうち、コネクタ251と対向する領域にはコネクタ9が設けられている。コネクタ9は、Y−Z平面内において、電池ユニット3と並んで配置されている。
【0062】
コネクタ9およびコネクタ251を接続することにより、電子機器250は、電池パック1内の電子機器4(図4参照)との間で通信を行ったり、電池ユニット3からの電力供給を受けたりすることができる。
【0063】
また、ハウジング200の上部には、図23および図24に示すように、DC/DCコンバータ300が配置されている。DC/DCコンバータ300は、ハウジング200における一対の側面202に固定されており、ハウジング200に収容された電池パック1の上方に位置している。また、ハウジング200の側面202には、車両100に固定されるブラケット310が取り付けられており、ブラケット310には、ロッド311が固定されている。ロッド311によって、ハウジング200の強度を向上させることができる。
【0064】
DC/DCコンバータ300は、インバータ(不図示)と電気的に接続されているとともに、電池パック1をハウジング200に収容したときに、電池パック1と電気的に接続される。これにより、DC/DCコンバータ300は、電池パック1の出力電圧をインバータに供給したり、インバータからの出力電圧を電池パック1に供給したりする。なお、インバータは、車両に搭載されたモータ(三相交流モータ)に接続されており、モータを駆動することにより、車両100の走行エネルギを発生させることができる。
【0065】
一方、ハウジング200の下方には、バッテリ400が配置されており、ハウジング200の底面201には、バッテリ400を固定するためのブラケット410が設けられている。バッテリ400は、予備の電力を確保するために設けられている。
【0066】
本実施例では、ハウジング200に対してDC/DCコンバータ300やバッテリ400を固定することにより、ハウジング200の強度を確保することができる。また、DC/DCコンバータ300を用いて、電池パック1の収容スペースにおける上面を構成することにより、DC/DCコンバータ300およびハウジング200の配置スペースを小型化することができる。
【0067】
ハウジング200の剛性を確保できれば、ハウジング200を、高価な高強度材料から安価な材料に変更することができ、ハウジング200のコストダウンを図ることができる。また、バッテリ400をハウジング200の下方に配置したことにより、電池パック1を着脱する側から、バッテリ400を取り扱うことができる。具体的には、バッテリ400の着脱作業を、蓋部材220を開閉させる側から行うことができ、バッテリ400の着脱作業を容易に行うことができる。
【0068】
なお、本実施例では、ロック機構8を電池パック1に設けるようにしているが、ハウジング200に設けることもできる。この場合には、ロック機構8のラッチ81によって、電池パック1をX方向で位置決めすることができる。また、ラッチ81によって電池パック1を押し上げることにより、電池パック1のレール5をハウジング200のレール210に密接させて、Z方向における電池パック1のずれを阻止することができる。
【0069】
また、本実施例では、操作レバー82の操作(手動)により、ラッチ81を移動させているが、モータ等の動力(電動)を用いてラッチ81を移動させることもできる。さらに、本実施例では、電池パック1を水平面内(X−Y平面内)でスライドさせるようにしているが、重力方向において電池パック1をスライドさせることもできる。この場合であっても、本発明を適用することができる。すなわち、図2〜図24に示したX方向を重力方向に置き換えればよい。
【0070】
さらに、本実施例では、ハウジング200における一対のレール210の内側に、電池パック1における一対のレール5を配置しているが、逆の構成であってもよい。すなわち、一対のレール5の内側に、一対のレール210を配置することもできる。
【0071】
次に、電池パック1を交換するときの動作について説明する。この場合には、車両100の外装カバー103を取り外しておく。
【0072】
まず、蓋部材220のターン223(図23参照)を回転させることにより、蓋部材220のロックを解除する。ここで、ターン223は、蓋部材220に回転可能に取り付けられており、電池パック1と係合するための爪部(不図示)を有している。具体的には、ターン223を回転させることにより、電池パック1に形成された凹部(不図示)にターン223の爪部を進入させたり、退避させたりすることができる。これにより、蓋部材220を電池パック1に固定したり、電池パック1から外したりすることができる。
【0073】
そして、蓋部材220を、閉じ状態(図23,24に示す状態)から開き状態(図3に示す状態)に回転させる。これにより、電池パック1の前面を露出させることができる。そして、ロック機構8の操作レバー82を回転させることにより、ラッチ81をロック位置(図21に示す位置)からロック解除位置(図20に示す位置)に移動させる。これにより、電池パック1をX方向にスライドさせることができる。
【0074】
そして、取手6を引っ張ることにより、電池パック1をハウジング200のレール210や蓋部材220のガイド部221に沿って移動させる。ここで、電池パック1の突起部52が第2ストッパ222に突き当たるまで、電池パック1を引き出すことができる。
【0075】
次に、新しい電池パック1を蓋部材220に載せて、蓋部材220のガイド部221やハウジング200のレール210に沿って電池パック1を移動させる。そして、操作レバー82を回転させることにより、ラッチ81をロック解除位置からロック位置に移動させる。これにより、上述したように、3次元方向において電池パック1を位置決めすることができる。そして、蓋部材220を開き状態から閉じ状態に回転させて、ターン223を回転させることにより、蓋部材220を電池パック1に固定することができる。これにより、電池パック1の交換作業が完了する。
【0076】
次に、電池パック1の回路構成について、図25を用いて説明する。
【0077】
電池ユニット3(各電池スタック30)の総プラス端子には、システムメインリレー511が接続されている。また、各電池スタック30の総マイナス端子には、システムメインリレー512a〜512cが接続されている。システムメインリレー511,512a〜512cは、リレー制御回路500からの制御信号を受けて、オンおよびオフの間で切り替わる。ここで、車両100のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、イグニッションスイッチのオンを示す信号がリレー制御回路500に入力される。これにより、リレー制御回路500は、システムに異常がなければ、システムメインリレー511,512a〜512cをオフからオンに切り替える。これにより、電池ユニット3の電力が車両に供給されることになる。
【0078】
ここで、電池パック1を交換する際にイグニッションスイッチをオフにしておけば、リレー制御回路500の制御によって、システムメインリレー511,512a〜512cがオフになっている。これにより、電池パック1を交換する際の安全性を確保することができる。
【0079】
一方、充電コネクタ7に充電器600を接続すると、電池ユニット3の充電を行うことができる。ここで、充電コネクタ7と各電池スタック30の総プラス端子との間には、ダイオード513が配置されている。ダイオード513を配置することにより、充電コネクタ7を介した電池スタック30の放電を禁止することができ、充電器600を用いて充電を行う際の安全性を確保することができる。
【0080】
また、ロック機構8に、インターロックスイッチを設けることができる。これにより、ラッチ81がロック位置に移動していない状態で、車両100のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わっても、車両100を動作させないようにすることができる。
【符号の説明】
【0081】
100:車両 1:電池パック 2:パックケース
210:レール(位置決め部材) 211:フランジ 220:蓋部材
221:ガイド部 222:第2ストッパ 240:第1ストッパ
3:電池ユニット(蓄電ユニット)
30:電池スタック 32:電池モジュール
321:単電池 322a,322b:電極タブ(正極タブ、負極タブ)
33:バスバーモジュール 332:バスバー 333:板バネ
5:レール 51:フランジ 52:突起部
7:充電コネクタ 8:ロック機構
81:ラッチ(ロック部材) 81a:駆動ピン
82:操作レバー(操作部材) 82b:カム溝
83:支持部材 9:コネクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載するための搭載構造であって、
前記蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動するのを阻止するロック位置と、前記蓄電装置の着脱方向への移動を許容するロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、
前記着脱方向と直交する面内において前記蓄電装置を位置決めするための位置決め部材と、を有し、
前記ロック部材は、前記ロック位置への移動に応じて、前記蓄電装置を前記位置決め部材に接触させる方向に変位させることを特徴とする蓄電装置の搭載構造。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記蓄電装置に設けられており、前記ロック位置への移動に伴って前記蓄電装置の搭載面を押し込むときの反力により、前記蓄電装置を変位させることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記着脱方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項4】
前記蓄電装置は、前記着脱方向に延びて、前記位置決め部材と係合可能なレールを有しており、
前記蓄電装置が前記搭載位置にあるときに、前記レールの一部は、前記ロック部材による前記蓄電装置の変位方向とは異なる方向において、前記位置決め部材と接触した状態に保持されることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記車両の上下方向および左右方向において、前記蓄電装置の位置決めを行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項6】
前記位置決め部材を備え、前記蓄電装置を収容可能なハウジングを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記蓄電装置の収容口を回転動作によって開閉可能な蓋部材を有しており、
前記蓋部材は、開き状態にあるときに、前記蓄電装置を前記収容口に導くためのガイド部を有することを特徴とする請求項6に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項8】
前記ロック部材を移動させるために回転操作される操作部材を有しており、
前記操作部材は、この操作部材の回転力を前記ロック部材の駆動力に変換するカム部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項9】
前記蓄電装置は、前記車両と電気的に接続され、車両への電力供給に用いられるコネクタを有しており、
前記コネクタは、前記着脱方向と直交する面内において、前記蓄電装置内に配置される蓄電ユニットと並んで配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造を用いた蓄電装置の搭載方法であって、
前記蓄電装置を、前記位置決め部材によって位置決めされる位置に移動させた後に、前記ロック部材を前記ロック解除位置から前記ロック位置に移動させることを特徴とする蓄電装置の搭載方法。
【請求項1】
車両に対して蓄電装置を着脱可能に搭載するための搭載構造であって、
前記蓄電装置が搭載位置から着脱方向に移動するのを阻止するロック位置と、前記蓄電装置の着脱方向への移動を許容するロック解除位置との間で移動可能なロック部材と、
前記着脱方向と直交する面内において前記蓄電装置を位置決めするための位置決め部材と、を有し、
前記ロック部材は、前記ロック位置への移動に応じて、前記蓄電装置を前記位置決め部材に接触させる方向に変位させることを特徴とする蓄電装置の搭載構造。
【請求項2】
前記ロック部材は、前記蓄電装置に設けられており、前記ロック位置への移動に伴って前記蓄電装置の搭載面を押し込むときの反力により、前記蓄電装置を変位させることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記着脱方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項4】
前記蓄電装置は、前記着脱方向に延びて、前記位置決め部材と係合可能なレールを有しており、
前記蓄電装置が前記搭載位置にあるときに、前記レールの一部は、前記ロック部材による前記蓄電装置の変位方向とは異なる方向において、前記位置決め部材と接触した状態に保持されることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記車両の上下方向および左右方向において、前記蓄電装置の位置決めを行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項6】
前記位置決め部材を備え、前記蓄電装置を収容可能なハウジングを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記蓄電装置の収容口を回転動作によって開閉可能な蓋部材を有しており、
前記蓋部材は、開き状態にあるときに、前記蓄電装置を前記収容口に導くためのガイド部を有することを特徴とする請求項6に記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項8】
前記ロック部材を移動させるために回転操作される操作部材を有しており、
前記操作部材は、この操作部材の回転力を前記ロック部材の駆動力に変換するカム部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項9】
前記蓄電装置は、前記車両と電気的に接続され、車両への電力供給に用いられるコネクタを有しており、
前記コネクタは、前記着脱方向と直交する面内において、前記蓄電装置内に配置される蓄電ユニットと並んで配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の蓄電装置の搭載構造を用いた蓄電装置の搭載方法であって、
前記蓄電装置を、前記位置決め部材によって位置決めされる位置に移動させた後に、前記ロック部材を前記ロック解除位置から前記ロック位置に移動させることを特徴とする蓄電装置の搭載方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−913(P2011−913A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143654(P2009−143654)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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