説明

蓄電装置

【課題】蓄電素子間の温度差を少なくする。
【解決手段】複数の角型電池131を積層したバッテリモジュール11をバッテリケース12に収容する。バッテリケースは、第1の外面と、この第1の外面よりも放熱性が高い第2の外面とを含む。第1の外面に、バッテリケース12よりも熱伝導率が高い放熱層19を形成する。第1の外面は、第2の外面よりもバッテリケース12の空気導入口123から離れた領域に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子を接続した蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電動車両の開発が活発に行われており、電動車両の駆動用又は補助電源として、出力が高い電源装置への要望が高まっている。
この種の電源装置として、複数の蓄電素子を電気的に接続した蓄電装置が知られている。図8を参照しながら、従来の蓄電装置の構成を説明する。図8は、従来の蓄電装置の冷却構造を示した断面図である。
【0003】
蓄電モジュール200は、複数の蓄電素子201を積層することにより構成されている。各蓄電素子201の間には、冷却通路202が形成されている。蓄電モジュール200は、ケース203に収容されている。ケース203と蓄電モジュール200との間には、冷媒流入路204と、冷媒排出路205とが形成されている。
【0004】
冷媒流入路204の終端部は閉塞されている。冷媒流入路204の冷媒流入口204aには、冷媒供給管207が接続されている。冷媒供給管207から冷媒流入路204に対して冷却用の空気が供給される。
【0005】
冷媒流入路204に流入した空気は、蓄電素子201間に形成された冷却通路202に流入する。冷却通路202に流入した空気は、蓄電素子201の外面に沿ってY軸方向に移動する。これにより、各蓄電素子201の発電要素が冷却される。蓄電モジュール200の冷却に用いられた空気は、冷媒排出路205に流入し、冷媒排出路205の排出口205aから排気される。
【0006】
特許文献1は、平板状の陽極と陰極とをセパレータを介して積層した極群を複数個電槽内に収納した電池を、集合ケースに複数個配設した集合電池装置を開示する。陽極、陰極及びセパレータと平行な電槽の外側面に熱伝導性の高いスペーサを介挿させている。スペーサの下端と集合ケースとが接触する面には熱伝導性を良好にするためのシリコングリースのような伝熱グリースが塗布される。
【0007】
特許文献2は、複数の単電池を鉛直方向に積層してなる組電池と、この組電池を収納するケースと、ケースの上部に設けられる蓋部材と、ケースの下部に設けられる底部材と、単電池を置載し、各単電池の間に設けられるトレイとを有する電池パックを開示する。トレイの全体に熱伝導性の良いグリースを塗布することにより、接触熱抵抗が小さくなる。
【特許文献1】特開平10−189062号公報(図1、段落0013参照)
【特許文献2】特開2006−339032号公報(図1、段落0051参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8に図示する構成では、冷媒流入口204aからの距離に応じて、蓄電素子201に供給される空気の風量が異なる。具体的には、冷媒流入口204aから近い領域に位置する蓄電素子201には、より多くの空気が供給される。そのため、蓄電素子201間の温度差が拡大して、蓄電装置が劣化する。
【0009】
そこで、本願発明は、蓄電素子間の温度差を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明の蓄電装置は、一つの観点として、複数の蓄電素子を接続した蓄電モジュールと、前記蓄電モジュールを収容するケースとを有し、前記ケースは、第1の外面と、この第1の外面よりも放熱性が高い第2の外面とを含み、前記第1の外面に、前記ケースよりも熱伝導率が高い第1の放熱層を形成したことを特徴とする。
【0011】
上述の構成によれば、放熱性の悪い第1の外面からの放熱量を増すことができる。これにより、蓄電素子間の温度差をより小さくすることができる。
【0012】
前記第1及び第2の外面は、前記蓄電モジュールの温度分布に応じて設定することができる。
【0013】
前記複数の蓄電素子を積層することにより前記蓄電モジュールは構成されており、前記ケース内に冷却用の空気を導入するための空気導入口と、前記蓄電素子間に形成される冷却通路と、前記空気導入口と前記冷却通路とを接続し、前記蓄電素子の積層方向に延びる空気流入路とを有し、前記第2の外面は、前記第1の外面よりも前記空気導入口に近い領域に位置する。これにより、空気の流入量が不足する放熱性の悪い領域からの放熱量を増すことができる。
【0014】
前記第1の放熱層としては、放熱グリスを用いることができる。放熱グリスを第1の外面に塗布するだけで良いため、簡易な方法で蓄電素子間の温度差を小さくすることができる。
【0015】
前記第2の外面に、前記第1の放熱層よりも熱伝導率の低い第2の放熱層を形成してもよい。これにより、蓄電モジュール全体の放熱性を高めながら、蓄電素子間の温度差を少なくすることができる。
【0016】
本願発明の蓄電装置は、別の観点として、外装部材の内部に発電要素が収容された複数の蓄電素子を接続した蓄電モジュールを有し、前記蓄電モジュールは、第1の外面と、この第1の外面よりも放熱性が高い第2の外面とを有し、前記第1の外面に、前記蓄電素子の前記外装部材よりも熱伝導率が高い第1の放熱層を形成したことを特徴とする。
【0017】
上述の構成によれば、放熱性の悪い第1の外面からの放熱量を増すことができる。これにより、蓄電素子間の温度差をより小さくすることができる。
【0018】
前記第1及び第2の外面は、前記蓄電モジュールの温度分布に応じて設定することができる。
【0019】
前記第1の放熱層としては、放熱グリスを用いることができる。放熱グリスを第1の外面に塗布するだけで良いため、簡易な方法で蓄電素子間の温度差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、蓄電素子間の温度差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
図1は蓄電装置を搭載した車両の斜視図であり、蓄電装置1を破線で図示している。本実施例の蓄電装置1は、トランクルームと後部座席との間に収納されている。本実施例の蓄電装置1は、ハイブリッド自動車の駆動モータに電力を供給するバッテリとして使用される。蓄電装置1は、運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソールボックスや後部座席の下方に形成されるスペースに配置することもできる。
【0022】
図2は蓄電装置の冷却構造の斜視図であり、図3は蓄電装置の冷却構造の断面図であり、図4は蓄電素子間に配置されるスペーサ部材の斜視図である。これらの図において、黒矢印は空気の流れる方向を示している。なお、図3では角型電池131の外形を破線により図示している。
【0023】
これらの図において、バッテリモジュール(蓄電モジュール)11は、バッテリケース(ケース)12に収容されている。バッテリモジュール11は、複数の角型電池131を含む。これらの角型電池131はスペーサ部材132を介して積層されている。本実施例では、角型電池131の個数を10個としている。バッテリモジュール11の両端には、エンドプレート133が取り付けられている。バッテリケース12には、ステンレス、アルミなどの放熱性の高い金属を用いることができる。
【0024】
スペーサ部材132は、X軸方向の一端部が開口している。このスペーサ部材132の開口した部分に、角型電池131が収容されている。スペーサ部材132のX軸方向の他端面には、複数の突起部132aが設けられている。これらの突起部132aは、Y軸方向に延びており、Z軸方向に並設されている。
【0025】
角型電池131には、発電要素が収容されている。発電要素は、電極板(正極板及び負極板)と、セパレータと、電解質とで構成されており、公知の構成を適宜、適用することができる。
【0026】
ここで、正極板としては、アルミニウム等の金属(合金を含む)で形成された集電体の表面に正極層を形成したものを用い、負極板としては、アルミニウム等の金属(合金を含む)で形成された集電体の表面に負極層を形成したものを用いることができる。より具体的には、ニッケル−水素電池では、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlxMnyCoz(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、リチウムイオン電池では、正極層の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層の活物質として、カーボンを用いることができる。
【0027】
また、キャパシタを用いることもできる。キャパシタは、活性炭と電解液との界面に発生する電気二重層を動作原理とした電気二重層キャパシタのことである。固体として活性炭、液体として電解液(希硫酸水溶液)を用いて、これを接触させるとその界面にプラス、マイナスの電極が極めて短い間隔を隔てて相対的に分布する。イオン性溶液中に一対の電極を浸して電気分解が起こらない程度に電圧を負荷させると、それぞれの電極の表面にイオンが吸着され、プラスとマイナスの電気が蓄えられる(充電)。外部に電気を放出すると、正負のイオンが電極から離れて中和状態に戻る。
【0028】
スペーサ部材132の突起部132aは、角型電池131の外面に当接しており、Z軸方向に隣接する突起部132aの間に形成された空間が、冷却通路141となる。この冷却通路141は、各角型電池131の外面に沿ってY軸方向に延びている。
【0029】
スペーサ部材132の突起部132aにより、角型電池131は押圧されている。これにより、角型電池131の内部に収容された発電要素が押圧され、角型電池131の性能低下を抑制できる。
【0030】
スペーサ部材132には、一対の貫通穴部132bが形成されている。これらの貫通穴部132bから角型電池131の端子電極131aが突出している。エンドプレート133はバッテリケース12の内面に固定されている。
【0031】
バッテリモジュール11とバッテリケース12との間には、空気流入路121及び空気排出路122が形成されている。空気流入路121は、バッテリケース12の上側の内面とバッテリモジュール11との間に形成されている。空気流入路121は、X軸方向、つまり、角型電池131の積層方向に延びており、各角型電池131の間に形成された冷却通路141に接続されている。空気流入路121の空気導入口123は、バッテリケース12のX軸方向の端部に形成されている。
【0032】
空気流入路121の空気導入口123は、冷風ダクト16に接続されている。冷風ダクト16は、ファン17に接続されている。ファン17としては、シロッコ式のファン、クロスフロー型のファン、プラペレ式のファンなどを用いることができる。ファン17は、冷却ダクト18に接続されている。冷却ダクト18の空気取り込み口は、後部座席の後方に形成されており、車室内の空間に面している。
【0033】
空気排出路122は、バッテリケース12の下側の内面とバッテリモジュール11との間に形成されている。空気排出路122は、X軸方向、つまり、角型電池131の積層方向に延びている。空気排出路122の空気排出口124は、バッテリケース12のX軸方向の端部に形成されている。
【0034】
上述の構成において、冷却ファン17が作動すると、車室内の空気が冷却ダクト18、冷風ダクト16の順に移動し、バッテリケース12の空気流入路121に流入する。空気流入路121の終端部は、バッテリケース12の内面により閉塞されている。したがって、空気流入路121に流入した空気は、冷却通路141に流入し、角型電池131の外面に沿ってY軸方向に移動する。これにより、角型電池131の内部に収容された発電要素が冷却される。
【0035】
ここで、各冷却通路141に流入する空気の風量は、空気導入口123から冷却通路141までの距離に応じて異なる。具体的には、空気導入口123からより近い領域に位置する冷却通路141には、相対的に多くの空気が流入する。このため、角型電池131間の温度のバラツキが大きくなり、より温度の高い角型電池131の劣化が進行するため、蓄電装置1の寿命が短くなる。そこで、本実施例では、下記の方法により、角型電池131間の温度のバラツキを抑制している。
【0036】
バッテリケース12の外面の一部には、放熱層(第1の放熱層)19が形成されている。本実施例の冷却構造では、図3に図示するように、空気流入路121の終端側から1〜5番目に配列される角型電池131が冷却不足となる。そこで、これらの角型電池131に対応したバッテリケース12の領域に放熱層19を形成している。換言すれば、上述の1〜5番目に配列される角型電池131及び放熱層19のX軸方向における位置が同じとなるように、放熱層19は形成されている。なお、バッテリケース12の外面のうち放熱層19の形成される領域が「第1の外面」となり、空気流入路121の終端側から6〜10番目に配列される角型電池131に対応した領域が「第2の外面」となる。
【0037】
本実施例では、冷却ファン17を作動させた状態でバッテリモジュール11の温度分布を測定し、この測定結果に基づき第1及び第2の外面を設定している。シミュレートにより、バッテリモジュール11の温度分布を推定してもよい。これらの第1及び第2の外面の設定方法は、後述する実施例2及び3にも適用することができる。
【0038】
バッテリケース12はフロアパネル5に固定されている。図2及び図3に図示するように、放熱層19は、バッテリケース12のX−Z面とX−Y面とに形成されている。バッテリケース12の外面のうちフロアパネル5に接触する面に放熱層19を形成することにより、第1の外面からの放熱量を増やすことができる。
【0039】
放熱層19は、バッテリケース12よりも熱伝導率の高い材料で構成されている。具体的には、シリコングリースなどからなる放熱グリスをバッテリケース12の外面に塗布することにより放熱層19を形成することができる。放熱層19には、放熱グリスを用いることができる。例えば、シリコングリースに伝熱性の高い金属物質を混合させることにより放熱層19を形成することができる。また、放熱グリスの代わりに放熱シートを用いることもできる。
【0040】
このように、流入する空気の風量が少なく、相対的に放熱性が悪くなる領域に放熱層19を形成することにより、角型電池131間の温度バラツキをより効果的に抑制することができる。これにより、蓄電装置1の特性劣化を抑制できる。
【0041】
また、放熱層19を設けるという簡単な方法で温度のバラツキを抑制できるため、温度調節に関するコストや手間を削減することができる。しかも、冷却風の通風構造については、従来と同様でよいため、大幅な設計変更を不要とすることができる。
【0042】
また、本実施例の構成によれば、バッテリモジュール11に設けられる温度センサ、電流センサを削減することができる。すなわち、蓄電素子間の温度差が大きい蓄電装置では、複数の蓄電素子(例えば、温度差が最大となる二つの蓄電素子)にそれぞれ温度センサを設ける必要がある。本実施例の構成によれば、角型電池131間の温度差を小さくできるため、温度センサの数を削減することができる。
【0043】
空気排出路122の空気排出口124には、排気ダクト21が接続されている。この排気ダクト21の主排気口21Aは車外の空間に面している。排気ダクト21における主排気口21Aよりも上流側には、副排気口21Bが設けられている。この副排気口21Bはトランクルームに設けられている。
【0044】
したがって、バッテリモジュール11の冷却に用いられた空気は、空気排出路122から排気ダクト21に流入する。排気ダクト21に流入した空気は、その一部が主排気口21Aを介して車外に排気され、その残部が副排気口21Bを介してトランクルームに排気される。
【0045】
(変形例)
図3に図示する第2の外面に放熱層19よりも熱伝導率の低い放熱層(第2の放熱層)を形成してもよい。グリスに混合する金属物質の種類を変えることにより、熱伝導率の異なる二つの放熱層を形成することができる。これにより、バッテリモジュール11全体の放熱性を向上させながら、角型電池131間の温度差を小さくすることができる。
【0046】
また、バッテリケース12における第1及び第2の領域は、上記実施例に限定されるものではなく、バッテリモジュール11の構造、バッテリモジュール11の冷却構造などに応じて適宜変更することができる。例えば、図3に図示する構成では、右端部に位置する角型電池131は、外気に近く、他の角型電池131に挟まれていないため、搭載条件によっては放熱性がよくなる。この場合、右端部に位置する角型電池131に対応したバッテリケース12の領域において、放熱層19を省略することができる。
【0047】
(実施例2)
図5及び図6を参照しながら本実施例の蓄電装置について説明する。ここで、図5は蓄電装置の斜視図であり、図6は蓄電装置の分解斜視図である。本実施例では、角型電池の外面に放熱層を形成している。
【0048】
これらの図において、バッテリモジュール30は、第1バッテリモジュール30Aと第2バッテリモジュール30Bとを含む。第1バッテリモジュール30A及び第2バッテリモジュール30Bは、Y軸方向に並設されている。
【0049】
第1バッテリモジュール30Aは、複数(本実施例では28個)の角型電池31を積層することにより構成される。角型電池31の外装部材31aは、中空構造である。角型電池31の外装部材31aには、発電要素が収容されている。発電要素については、実施例1の角型電池131と同様であるため説明を省略する。角型電池31の外装部材31aには、アルミ、銅、鉄などの金属を用いることができる。角型電池31のZ軸方向の一端面には、突状の正極端子31b及び負極端子31cがY軸方向に並設されている。
【0050】
各角型電池31の間にはスペーサ部材32が設けられている。スペーサ部材32のX軸方向の端面には、Y軸方向に延びる複数の突起部32aが設けられている。これらの突起部32aは、Z軸方向に並設されている。これらの突起部32aは、角型電池31の外面に当接している。これらの突起部32aが角型電池31に当接することにより、Z軸方向に隣接する突起部32aの間に冷却通路32bが形成される。
【0051】
第1バッテリモジュール30Aの両端には、エンドプレート34が設けられている。エンドプレート34には拘束バンド35が取り付けられている。拘束バンド35は、第1バッテリモジュール30Aの外面のうち端子31b、31cが位置する側の面に沿って、X軸方向に延びている。拘束バンド35は、第1バッテリモジュール30AのY軸方向の両縁にそれぞれ設けられている。
【0052】
第2バッテリモジュール30Bは、第1バッテリモジュール30Aと同じ構成であるため、説明を省略する。
【0053】
バッテリモジュール30の外面のうち端子31b、31cが位置する側の面に対して隣接する面、すなわち、バッテリモジュール30のY軸方向の両端面にはそれぞれ、流入ダクト38及び排気ダクト39が取り付けられている。流入ダクト38及び排気ダクト39の終端部(X軸方向の一端部)は閉塞されている。したがって、流入ダクト38の内部を流れる空気は、隣接する角型電池31の間に形成された冷却通路32bに流入する。
【0054】
冷却通路32bを流れる空気は、角型電池31の外面に沿ってY軸方向に進む。これにより、各角型電池31が冷却される。バッテリモジュール30の冷却に用いられた空気は、排気ダクト39から排気される。
【0055】
ここで、各冷却通路32bに流入する空気の風量は、冷却通路32bの位置に応じて異なる。例えば、流入ダクト38の終端部に近い領域に位置する冷却通路32bほど流入する空気の風量が少なくなる。このため、バッテリモジュール30における温度バラツキが大きくなり、蓄電装置の劣化が進行する。そこで、本実施例では、下記の方法により温度バラツキを抑制している。
【0056】
図6に図示するように、流入ダクト38の終端側から1〜14番目に位置する角型電池31の外面に放熱層(第1の放熱層)41が形成されている。これらの角型電池31の外面は、請求項5に記載の「第1の外面」に相当する。放熱層41は、角型電池31の外装部材31aよりも熱伝導率の高い材料で構成されている。具体的には、実施例1の放熱層19と同じ材料を用いることができる。
【0057】
このように、相対的に放熱性が低い角型電池31の外面に放熱層41を形成することにより、より効果的にバッテリモジュール30の温度バラツキを抑制することができる。さらに、実施例1で説明した他の効果も得ることができる。
【0058】
放熱層41が形成されていない他の角型電池31の外面に、放熱層41よりも熱伝導率の低い放熱層を形成してもよい。これにより、バッテリモジュール30全体の放熱性を向上させながら、角型電池31間の温度差を少なくすることができる。
【0059】
(実施例3)
図7を参照しながら、本実施例の蓄電装置について説明する。図7は本実施例の蓄電装置の断面図である。複数の円筒型電池51がマトリクス状に配列されている。これらの円筒型電池51は、直列に接続されている。円筒型電池51として、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池を用いることができる。
【0060】
収容容器(ケース)52の内部には液状の熱交換媒体53が収容されている。熱交換媒体53としては、比熱、熱伝導性と沸点が高く、空気酸化、電気分解などを受けにくい物質が適している。さらに、電極端子間の短絡を防止するために、電気的絶縁性の液体が望ましい。例えば、フッ素系不活性液体を使用することができる。フッ素系不活性液体としては、スリーエム社製フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230を用いることができる。
【0061】
複数の円筒型電池51は、熱交換媒体53の中に浸漬されている。液状の熱交換媒体53は、空気よりも冷却能力が高く、高出力の蓄電装置の冷却に適している。収容容器51は、助手席の下側に配置されており、フロアパネル54に固定されている。
【0062】
上述の構成において、収容容器52の内部に収容された円筒型電池51は、より外気に近づくほど冷却されやすくなる。すなわち、収容容器52のより内部に位置する円筒型電池51ほど、放熱性が悪くなる。そのため、各円筒型電池51の温度差が大きくなり、蓄電装置が劣化する。
【0063】
そこで、収容容器52の外面の一部の領域、すなわち、収容容器52の外面のうち放熱性の悪い円筒型電池51に対応した領域に放熱層55を形成している。上述の構成によれば、実施例1及び2と同様に、各円筒型電池51の温度差が小さくなり、蓄電装置の劣化の進行を抑制することができる。また、実施例1で記載した他の効果も得ることができる。
【0064】
放熱層55は、収容容器52のY−Z面以外の面に形成されている。収容容器52のX−Z面のうちフロアパネル54に接触する面に放熱層55を形成することにより、フロアパネル54を介してより効果的に放熱させることができる。これにより、各円筒型電池51の温度差をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】蓄電装置を搭載した車両の斜視図である。
【図2】蓄電装置の冷却構造の斜視図である。
【図3】蓄電装置の冷却構造の断面図である。
【図4】隣接する角型電池の間に配置されるスペーサ部材の斜視図である。
【図5】実施例2の蓄電装置の斜視図である。
【図6】実施例2の蓄電装置の分解斜視図である。
【図7】実施例3の蓄電装置の断面図である。
【図8】従来の蓄電装置の冷却構造の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
11 30 バッテリモジュール
12 バッテリケース
19 41 55 放熱層
31 131 角型電池
51 円筒型電池
52 収容容器
123 空気導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子を接続した蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールを収容するケースとを有し、
前記ケースは、第1の外面と、この第1の外面よりも放熱性が高い第2の外面とを含み、
前記第1の外面に、前記ケースよりも熱伝導率が高い第1の放熱層を形成したことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電モジュールの温度分布に応じて、前記第1及び第2の外面を設定したことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記複数の蓄電素子を積層することにより前記蓄電モジュールは構成されており、
前記ケース内に冷却用の空気を導入するための空気導入口と、
前記蓄電素子間に形成される冷却通路と、
前記空気導入口と前記冷却通路とを接続し、前記蓄電素子の積層方向に延びる空気流入路とを有し、
前記第2の外面は、前記第1の外面よりも前記空気導入口に近い領域に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第1の放熱層は、放熱グリスにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第2の外面に、前記第1の放熱層よりも熱伝導率の低い第2の放熱層を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項5】
外装部材の内部に発電要素が収容された蓄電素子を複数接続した蓄電モジュールを有し、
前記蓄電モジュールは、第1の外面と、この第1の外面よりも放熱性が高い第2の外面とを有し、
前記第1の外面に、前記蓄電素子の前記外装部材よりも熱伝導率が高い第1の放熱層を形成したことを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電モジュールの温度分布に応じて、前記第1及び第2の外面を設定したことを特徴とする請求項5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第1の放熱層は、放熱グリスにより形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の蓄電装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載の蓄電装置を搭載した車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−266773(P2009−266773A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118303(P2008−118303)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】