蓋付収納装置
【課題】トーションバネなどの付勢部材の組付けを容易に行うことができる蓋付収納装置を提供する。
【解決手段】付勢部材の一端部41を蓋体の支持部23に支持し、蓋体2を本体に組付ける際の蓋体2の移動時に付勢部材の他端部42が本体に形成された係止部16に係止されるようにし、蓋体2を組付ける時に支持部23と係止部16で押圧されることで付勢部材に付勢力が蓄えられるように構成した。
【解決手段】付勢部材の一端部41を蓋体の支持部23に支持し、蓋体2を本体に組付ける際の蓋体2の移動時に付勢部材の他端部42が本体に形成された係止部16に係止されるようにし、蓋体2を組付ける時に支持部23と係止部16で押圧されることで付勢部材に付勢力が蓄えられるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付勢部材の付勢力により自動的に開く蓋体をもつ収納装置に関する。本発明の蓋付収納装置は、自動車などの室内に設けられる小物入れ、灰皿、カップホルダなどに利用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車室内には、小物入れ、灰皿、カップホルダなどの各種収納装置が設けられている。これらの収納装置には、その開口を開閉する蓋体が設けられるのが一般的である。また、トーションバネなどを用いて、蓋体が開口を自動的に開くように構成される場合も多い。
【0003】
例えば特開2004−322708号公報には、回動体の軸部を収納装置本体の側壁に形成された軸受け穴に挿入することで回動体を回動自在に収納装置本体に保持した収納装置が開示されている。この収納装置では、軸受け穴から外方へ突出する軸部にトーションバネの巻回部を挿通し、軸部に形成されたバネ取付け溝にトーションバネの一端部を引っ掛けるとともに、トーションバネの他端部を収納装置の側壁外側表面に形成されたフックに引っ掛けている。
【0004】
また特開2007−090998号公報あるいは特開2007−185992号公報にも、上記公報と同様に、トーションバネを収納装置本体の側壁の外側に配置し、一端部を回動体に引っ掛けるとともに、他端部を収納装置本体の側壁外側表面に引っ掛けた構造が開示されている。
【0005】
しかし上記公報に記載の収納装置では、トーションバネの他端部を収納装置本体の側壁外側表面に引っ掛ける際に、トーションバネを巻く方向へその一端部を押圧して移動させながら引っ掛けなければならず、組付け作業性に難点がある。また回動体を収納装置本体に組付けた後に、トーションバネの一端部を回動体に引っ掛ける、あるいは回動体を収納装置本体に組付けながら一端部を回動体に引っ掛けることもできるが、その際にトーションバネが脱落したり、一端部又は他端部が別の部位に干渉したりするため、組付け作業が容易でないという問題がある。
【0006】
またトーションバネは、収納装置本体に突出形成された軸部にその巻回部が挿通されている。そして蓋体などの回動体が開く時には、トーションバネの巻回部は拡径するとともに軸方向に伸び、回動体が閉じる時には、トーションバネの巻回部は縮径するとともに軸方向に縮む。したがって軸部と巻回部との間には、巻回部の拡径及び縮径の動きを妨げないように所定の隙間が形成されている。ところが回動体の開閉時には、巻回部が軸部に対して径方向に相対移動して巻回部と軸部との間に干渉が生じ、異音が発生したり軸部に摩耗が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−322708号公報
【特許文献2】特開2007−090998号公報
【特許文献3】特開2007−185992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、トーションバネなどの付勢部材の組付けを容易に行うことができる蓋付収納装置とすることを解決すべき課題とする。また本発明のもう一つの目的は、付勢部材の巻回部が挿通される軸部と付勢部材との干渉を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の蓋付収納装置の特徴は、軸受け穴が形成された側壁をもつ本体と、軸受け穴に挿入される軸部をもち軸部を中心に本体に回動可能に保持されて本体の開口を開閉する蓋体と、蓋体に保持され本体の開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢部材と、蓋体が本体の開口を閉じた状態で蓋体を本体に保持する保持手段と、を有する蓋付収納装置であって、
付勢部材は一端部が蓋体に形成された支持部に支持され、蓋体を本体に組付ける際には、本体に形成された係止部に他端部が係止され、軸部を軸受け穴に向かう方向へ蓋体を移動させる時に一端部が支持部に支持されるとともに他端部が係止部で押圧されることで付勢力が蓄えられ、軸部が軸受け穴に挿通された時には、付勢部材に本体の開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢力が蓄えられていることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓋付収納装置によれば、蓋体を収納装置本体に組付ける際には、軸部を軸受け穴に挿入しようとする時の蓋体の移動時に付勢部材に自動的に付勢力が蓄えられ、軸部が軸受け穴に挿入された組付け後には、付勢部材に本体の開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢力が蓄えられている。したがって付勢部材に付勢力を蓄えるための工程を別に行う必要がなく、蓋体を組付ける際に自動的に付勢力が蓄えられるので、組付け工数を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図5】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図6】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係る蓋付収納装置の要部(軸部)の正面図である。
【図11】本発明の第3の実施例に係る蓋付収納装置に形成したリブ群を展開して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の蓋付収納装置は、収納装置本体と、蓋体と、付勢部材と、保持手段と、を少なくとも有している。本体は収納装置の収納部を構成するものであり、収納物を出入するための開口をもつ容器状のものである。その開口方向は特に制限されず、カップホルダなどの水平開口形態、グラブボックスなどの垂直開口形態など種々の態様とすることができる。本体の側壁には軸受け穴が形成されている。軸受け穴は、側壁を貫通していてもよいし、側壁を貫通しない軸受け穴とすることもできる。本体には、後述する係止部が形成されている。
【0013】
蓋体は、本体の軸受け穴に挿入される軸部をもち、軸部を中心に回動することで本体の開口を開閉する。この蓋体には予め付勢手段が保持され、蓋体を本体に組付ける際に軸部を軸受け穴に向かうように蓋体を押圧する力によって、付勢手段には自動的に付勢力が蓄えられるように構成されている。付勢手段に付勢力を蓄えることを可能にするため、蓋体には付勢部材の一端部を支持する支持部が形成されている。
【0014】
付勢手段としては、トーションバネ、コイルスプリング、板バネ、線バネなどが例示される。いずれも一端部と他端部とをもち、一端部と他端部との間の部位の弾性変形によって弾性反力としての付勢力が蓄えられ、その付勢力によって蓋体は本体の開口を開く方向に付勢されている。
【0015】
蓋体に付勢手段を保持するには、軸部に巻き付ける方法、蓋体に形成された溝に配置する方法などがある。付勢部材がトーションバネであれば、巻回部に軸部を挿通して保持するだけで組付け時に脱落するのを効果的に防止することができる。蓋体の組付け時には付勢部材の一端部が支持部に支持されるのであるが、一端部が支持部に固定されるように構成してもよいし、組付け時に一端部が支持部に確実に当接可能であれば組付け前には一端部から支持部から離れていてもよい。
【0016】
蓋体を本体に組付ける際には、軸部を軸受け穴に挿入するために蓋体を本体に向かって押圧することになる。このとき蓋体の移動に伴って付勢部材も移動し、付勢部材の他端部が本体の係止部に係止されるように構成する。付勢部材の他端部が係止部に係止された後は、蓋体の移動に伴って付勢部材の一端部と他端部の間の部位に付勢力が蓄えられるように、付勢部材の向きあるいは位置が決められている。そして軸部が軸受け穴に挿入されると、付勢部材は蓄えられた付勢力によって一端部が支持部に圧接され、他端部が係止部に圧接されるので、付勢部材は脱落することがなく、蓋体は付勢部材によって本体の開口を開く方向へ付勢されている。
【0017】
蓋体を本体に組付ける際には、蓋体が本体の開口を開いた姿勢で組付けることが望ましい。こうすることで、組付け時に付勢部材に蓄えられる付勢力を必要最小限とすることができ、付勢部材による反力が低減されるため組付け作業性が向上する。そして、蓋体が本体の開口を閉じる方向へ回動する時には他端部が係止部に支持されるとともに一端部が支持部から押圧されることで、付勢部材にさらに付勢力が蓄えられるので、蓋体を開くための付勢力を十分に確保することができる。
【0018】
なお軸受け穴は、本体の左右側壁にそれぞれ設けられ、軸部も左右に一対設けられるのが一般的である。付勢部材は、左右にそれぞれ設けてもよいし、左右の一方にのみ設けることもできる。一方にのみ付勢部材を設け、他方にダンパ装置を設けることも好ましい。
【0019】
保持手段は、蓋体が本体の開口を閉じた状態で蓋体を本体に保持する手段であり、公知の各種ロック機構を用いることができる。ハートカム装置など、プッシュロックオープン機構を採用することが望ましい。
【0020】
ところで付勢部材がトーションバネの場合には、蓋体が開く時には、トーションバネの巻回部は拡径するとともに軸方向に伸び、蓋体が閉じる時には、トーションバネの巻回部は縮径するとともに軸方向に縮む。したがって軸部と巻回部との間には、巻回部の拡径及び縮径の動きを妨げないように所定の隙間が形成されている。ところが蓋体の開閉時には、巻回部が軸部に対して径方向に相対移動して巻回部と軸部との間に干渉が生じ、異音が発生したり軸部に摩耗が生じる場合がある。
【0021】
そこで軸部の周囲には、蓋体から突出して巻回部の端面に当接する凸部を設けることが好ましい。このような凸部を形成することで、巻回部が径方向に移動するのを規制することができる。しかし突起などの凸部を一部に形成しただけでは、巻回部が傾いて蓋体の回動の動きが不安定になる場合がある。
【0022】
そこで凸部の形状を、巻回部の端面形状に対応して徐々に高さが変化するように形成することが望ましい。巻回部は螺旋形状でありその端面は巻回部の中心軸に対して直交する平面ではなく傾斜した三次元形状である。したがって巻回部の端面形状に対応して徐々に高さが変化する端面をもつ凸部とすれば、凸部の先端は巻回部の端面と全面で当接する。したがって軸部に対する巻回部の径方向の相対移動を確実に規制できるので、異音の発生や軸部の摩耗を確実に防止することができる。
【0023】
なお凸部の先端と巻回部との接触面積が大きいと、摩擦抵抗によって巻回部の縮径及び拡径の動きに支障が生じる場合がある。そこで凸部の先端と巻回部端面とは、線接触あるいは点接触するように構成することが望ましい。このようにするには、例えば、巻回部の端面の線材と周方向で間隔を隔てて接触する複数の凸部を形成することができる。
【0024】
以下、実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に本実施例の蓋付収納装置を蓋体の閉状態で示す斜視図を、図2にその分解斜視図を示す。この蓋付収納装置は、樹脂製の本体1と、樹脂製の蓋体2と、樹脂製の容器3と、トーションバネ4と、ハートカム装置と、から主として構成されている。本体1は上方に開口100を有し、左右一対の側壁10,11にそれぞれ軸受け穴12,13が形成されている。一方の側壁10には、ダンパ装置5が固定されている。また他方の側壁11には、ハートカム装置の一部を構成するピン部材6が揺動可能に保持されている。容器3は本体1に固定されている。
【0026】
一対の側壁10,11には、開口100を構成する先端面から軸受け穴12,13へ向かって延びる案内溝14がそれぞれ形成されている。そして他方の側壁11の内側には、上面に略U字形状の切欠き15をもつリブ16(係止部)が形成されている。
【0027】
蓋体2の左右両側にはそれぞれ脚部20,21が垂下され、それぞれの脚部20,21からは左右外側へそれぞれ突出する軸部22が形成されている。一方の脚部21には板状の支持部23が形成され、支持部23の下方にはハートカム24が脚部21と一体に形成されている。また他方の脚部20には、隠れて図示されていないが、ダンパ装置5と歯合する歯車が形成されている。
【0028】
トーションバネ4は、複数回巻回されてなる巻回部40と、巻回部40の一端から延びる一端部41と、巻回部40の他端から延びる他端部42とを有し、他端部42の先端はフック状に曲折されている。このトーションバネ4は、一方の脚部21から突出する軸部22に巻回部40が挿通されて保持され、一端部41が支持部23に支持され、他端部42がリブ16の切欠き15に引っ掛けられている。そして巻回部40には、蓋体2を開く方向の付勢力が蓄えられている。
【0029】
本実施例の蓋付収納装置を組み立てるには、先ずトーションバネ4の巻回部40を蓋体2の一方の脚部21から突出する軸部22に挿通して、トーションバネ4を蓋体2に保持する。このとき図3に示すように、一端部41が支持部23に支持されるように配置され、他端部42はフリーの状態となっている。
【0030】
次に本体1に対して蓋体2が開位置となる姿勢とし、両端の軸部22を本体1の左右の案内溝13にそれぞれ係合させ、本体1の左右側壁を互いに離れる方向へ弾性変形させながら、蓋体2を本体1に挿入する。このとき図4に示すように、挿入初期にはトーションバネ4の他端部42はフリーの状態であり、本体1のリブ16とは干渉していない。
【0031】
蓋体2を本体1にさらに挿入すると、トーションバネ4の他端部42が本体1のリブ16と干渉し、他端部42はリブ16によって押圧されることで、一端部41と他端部42とのなす角度が狭められ巻回部40に付勢力が蓄えられる。この状態では、その付勢力によってトーションバネ4は一端部41が支持部23に圧接され、他端部42がリブ16に圧接されているので、トーションバネ4が軸部22から外れたり、他の部位と干渉したりするような不具合がない。そして両端の軸部22が左右の軸受け穴12,13に挿入されると、図5に示すように、トーションバネ4は他端部42の先端がリブ16の切欠き15に引っ掛かった状態で係止される。したがってトーションバネ4に蓋体2を開く方向の付勢力が蓄えられた状態で、蓋体2が本体1に回動可能に保持される。これにより蓋体2の本体1への組付けが完了する。
【0032】
次に、図3に示すように容器3が本体1に固定され、ダンパ装置5及びピン部材6を取付けることで、本実施例の蓋付収納装置が組み立てられる。そして図5に示すように開状態にある蓋体2を本体1の開口100に向かって回動させると、トーションバネ4は他端部42がリブ16に支持され、一端部41が支持部23によって押圧されることになる。そのため蓋体2の閉じる方向への回動に伴って巻回部40には付勢力がさらに蓄えられる。そしてピン部材6のピンがハートカム24に係合したロック状態では、図6に示すように蓋体2が本体1の開口100を閉じ、トーションバネ4は一端部41と他端部42とのなす角度が鋭角となった大きな付勢力が蓄えられた状態で保持されている。
【0033】
上記のように構成された本実施例の蓋付収納装置は、図1に示す閉状態から蓋体2の先端を容器3に向かって指で押すと、ピン部材6の先端に形成されているピンがハートカム24から外れてロックが解除される。そして指による押圧を解除すると、トーションバネ4の付勢によって蓋体2は軸部22を中心として回動して開口100を開く。このときの回動速度は、ダンパ装置5からの抵抗によってゆっくりとしたものとなる。開口100が開いた開状態で、容器3に物を出入することができる。
【0034】
そして図4に示す開状態から蓋体2を閉じる際には、蓋体2の回動に伴ってトーションバネ4には再び付勢力が蓄えられ、ハートカム装置によって蓋体2は図6に示す閉位置でロックされる。なお、トーションバネ4によって付勢される側の側壁21にハートカム24が一体に形成されているので、ハートカム24とピン部材6との係合が安定し、プッシュ・ロック・オープン機構の作動精度が向上するという効果も発現される。
【0035】
したがって本実施例の蓋付収納装置によれば、蓋体2を本体1に挿入する際にトーションバネ4を自動的に巻いて付勢力を蓄えることができるので、トーションバネ4の組付けをきわめて容易に行うことができ作業性が著しく向上する。
【実施例2】
【0036】
本実施例に係る蓋付収納装置の模式図を図7〜9に示す。本実施例は、トーションバネに代えてコイルスプリング7を用いたこと以外は、実施例1とほぼ同様の構成であるので、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
コイルスプリング7は、一端部70と他端部71とを有し、一端部70の先端にはリング部72が形成され、他端部71の先端にはフック部73が形成されている。蓋体2の一方の脚部21には、支持部23に代えて外側へ突出する突起25が形成され、突起25の近傍には互いに間隔を隔てて平行に延びる一対の円弧状のリブ26が形成されている。
【0038】
蓋体2を本体1に組付ける際には、先ずコイルスプリング7のリング部72を突起25に挿通し、コイルスプリング7を一対のリブ26の間に配置する。そして実施例1と同様に本体1に対して蓋体2が開位置となる姿勢とし、両端の軸部22を本体1の左右の案内溝13にそれぞれ係合させ、本体1の左右側壁を互いに離れる方向へ弾性変形させながら、蓋体2を本体1に挿入する。このとき図7に示すように、挿入初期にはコイルスプリング7の他端部72はフリーの状態でリブ16の上方に位置している。
【0039】
蓋体2を本体1にさらに挿入すると、コイルスプリング7の他端部71が本体1のリブ16と干渉し、フック部73がリブ16の切欠き15と係合する。したがって蓋体2の挿入に伴って、コイルスプリング7が伸び付勢力が蓄えられる。この状態では、その付勢力によってコイルスプリング7は一端部70のリング部72が突起25(支持部)に圧接され、他端部71のフック部がリブ16(係止部)に圧接されているので、コイルスプリング7が外れたりするような不具合がない。
【0040】
蓋体2の両端の軸部22が左右の軸受け穴12,13に挿入されると、図8に示すように、コイルスプリング7は伸びた状態で保持され、蓋体2を開く方向の付勢力が蓄えられた状態で、蓋体2が本体1に回動可能に保持される。これにより蓋体2の本体1への組付けが完了する。
【0041】
そして図8に示すように開姿勢にある蓋体2を本体1の開口100に向かって回動させると、コイルスプリング7は他端部71がリブ16に支持され、一端部70が突起25によって引っ張られることになる。そのため蓋体2の閉じる方向への回動に伴ってコイルスプリング7はさらに伸び、付勢力がさらに蓄えられる。そしてピン部材6のピンがハートカム24に係合したロック状態では、図9に示すように蓋体2が本体1の開口100を閉じ、コイルスプリング7は十分に伸びて大きな付勢力が蓄えられた状態で保持されている。したがって閉状態にある蓋体2のロックが解除されると、蓋体2はコイルスプリング7の付勢によって自動的に回動し開口100を開く。
【実施例3】
【0042】
ところで実施例1の蓋付収納装置では、蓋体2が開く時には、トーションバネ4の巻回部40は拡径するとともに軸方向に伸び、蓋体2が閉じる時には、巻回部40は縮径するとともに軸方向に縮む。したがって軸部22と巻回部40との間には、巻回部40の拡径及び縮径の動きを妨げないように所定の隙間が形成されている。ところが蓋体2の開閉時には、巻回部40が軸部22に対して径方向に相対移動して巻回部40と軸部22との間に干渉が生じ、異音が発生したり軸部22に摩耗が生じる場合がある。
【0043】
そこで本実施例では、図10に示すように、軸部22の周囲に軸部22から放射状に延びる複数のリブ群27a〜27hを形成している。巻回部40は螺旋形状であり、その端面は巻回部40の中心軸に対して直交する平面ではなく傾斜した三次元形状である。リブ群27a〜27hは、その三次元形状の端面に対応して徐々に高さが変化するように形成されている。
【0044】
図11に展開して示すように、トーションバネ4の巻回部40から延出する一端部41に対向するリブ27aが最も高さが低く、半時計回りの進行方向に向かうにつれて高さが徐々に高くなり、リブ27hが最も高くなるように形成されている。すなわちリブ群27a〜27hの先端は、巻回部40の端面と周方向で間隔を隔てて全周で当接している。したがって軸部22に対する巻回部40の径方向の相対移動を確実に規制できるので、異音の発生や軸部22の摩耗を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の蓋付収納装置は、回動によって蓋体が開閉する種々の収納装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:本体 2:蓋体 4:トーションバネ(付勢部材)
13:軸受け穴 16:リブ(係止部) 22:軸部
23:支持部 24:ハートカム(保持手段) 27a〜27h:リブ群(凸部)
40:巻回部 41:一端部 42:他端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、付勢部材の付勢力により自動的に開く蓋体をもつ収納装置に関する。本発明の蓋付収納装置は、自動車などの室内に設けられる小物入れ、灰皿、カップホルダなどに利用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車室内には、小物入れ、灰皿、カップホルダなどの各種収納装置が設けられている。これらの収納装置には、その開口を開閉する蓋体が設けられるのが一般的である。また、トーションバネなどを用いて、蓋体が開口を自動的に開くように構成される場合も多い。
【0003】
例えば特開2004−322708号公報には、回動体の軸部を収納装置本体の側壁に形成された軸受け穴に挿入することで回動体を回動自在に収納装置本体に保持した収納装置が開示されている。この収納装置では、軸受け穴から外方へ突出する軸部にトーションバネの巻回部を挿通し、軸部に形成されたバネ取付け溝にトーションバネの一端部を引っ掛けるとともに、トーションバネの他端部を収納装置の側壁外側表面に形成されたフックに引っ掛けている。
【0004】
また特開2007−090998号公報あるいは特開2007−185992号公報にも、上記公報と同様に、トーションバネを収納装置本体の側壁の外側に配置し、一端部を回動体に引っ掛けるとともに、他端部を収納装置本体の側壁外側表面に引っ掛けた構造が開示されている。
【0005】
しかし上記公報に記載の収納装置では、トーションバネの他端部を収納装置本体の側壁外側表面に引っ掛ける際に、トーションバネを巻く方向へその一端部を押圧して移動させながら引っ掛けなければならず、組付け作業性に難点がある。また回動体を収納装置本体に組付けた後に、トーションバネの一端部を回動体に引っ掛ける、あるいは回動体を収納装置本体に組付けながら一端部を回動体に引っ掛けることもできるが、その際にトーションバネが脱落したり、一端部又は他端部が別の部位に干渉したりするため、組付け作業が容易でないという問題がある。
【0006】
またトーションバネは、収納装置本体に突出形成された軸部にその巻回部が挿通されている。そして蓋体などの回動体が開く時には、トーションバネの巻回部は拡径するとともに軸方向に伸び、回動体が閉じる時には、トーションバネの巻回部は縮径するとともに軸方向に縮む。したがって軸部と巻回部との間には、巻回部の拡径及び縮径の動きを妨げないように所定の隙間が形成されている。ところが回動体の開閉時には、巻回部が軸部に対して径方向に相対移動して巻回部と軸部との間に干渉が生じ、異音が発生したり軸部に摩耗が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−322708号公報
【特許文献2】特開2007−090998号公報
【特許文献3】特開2007−185992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、トーションバネなどの付勢部材の組付けを容易に行うことができる蓋付収納装置とすることを解決すべき課題とする。また本発明のもう一つの目的は、付勢部材の巻回部が挿通される軸部と付勢部材との干渉を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の蓋付収納装置の特徴は、軸受け穴が形成された側壁をもつ本体と、軸受け穴に挿入される軸部をもち軸部を中心に本体に回動可能に保持されて本体の開口を開閉する蓋体と、蓋体に保持され本体の開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢部材と、蓋体が本体の開口を閉じた状態で蓋体を本体に保持する保持手段と、を有する蓋付収納装置であって、
付勢部材は一端部が蓋体に形成された支持部に支持され、蓋体を本体に組付ける際には、本体に形成された係止部に他端部が係止され、軸部を軸受け穴に向かう方向へ蓋体を移動させる時に一端部が支持部に支持されるとともに他端部が係止部で押圧されることで付勢力が蓄えられ、軸部が軸受け穴に挿通された時には、付勢部材に本体の開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢力が蓄えられていることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓋付収納装置によれば、蓋体を収納装置本体に組付ける際には、軸部を軸受け穴に挿入しようとする時の蓋体の移動時に付勢部材に自動的に付勢力が蓄えられ、軸部が軸受け穴に挿入された組付け後には、付勢部材に本体の開口を開く方向へ蓋体を付勢する付勢力が蓄えられている。したがって付勢部材に付勢力を蓄えるための工程を別に行う必要がなく、蓋体を組付ける際に自動的に付勢力が蓄えられるので、組付け工数を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図5】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図6】本発明の一実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る蓋付収納装置の組付け方法を説明する模式的な説明図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係る蓋付収納装置の要部(軸部)の正面図である。
【図11】本発明の第3の実施例に係る蓋付収納装置に形成したリブ群を展開して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の蓋付収納装置は、収納装置本体と、蓋体と、付勢部材と、保持手段と、を少なくとも有している。本体は収納装置の収納部を構成するものであり、収納物を出入するための開口をもつ容器状のものである。その開口方向は特に制限されず、カップホルダなどの水平開口形態、グラブボックスなどの垂直開口形態など種々の態様とすることができる。本体の側壁には軸受け穴が形成されている。軸受け穴は、側壁を貫通していてもよいし、側壁を貫通しない軸受け穴とすることもできる。本体には、後述する係止部が形成されている。
【0013】
蓋体は、本体の軸受け穴に挿入される軸部をもち、軸部を中心に回動することで本体の開口を開閉する。この蓋体には予め付勢手段が保持され、蓋体を本体に組付ける際に軸部を軸受け穴に向かうように蓋体を押圧する力によって、付勢手段には自動的に付勢力が蓄えられるように構成されている。付勢手段に付勢力を蓄えることを可能にするため、蓋体には付勢部材の一端部を支持する支持部が形成されている。
【0014】
付勢手段としては、トーションバネ、コイルスプリング、板バネ、線バネなどが例示される。いずれも一端部と他端部とをもち、一端部と他端部との間の部位の弾性変形によって弾性反力としての付勢力が蓄えられ、その付勢力によって蓋体は本体の開口を開く方向に付勢されている。
【0015】
蓋体に付勢手段を保持するには、軸部に巻き付ける方法、蓋体に形成された溝に配置する方法などがある。付勢部材がトーションバネであれば、巻回部に軸部を挿通して保持するだけで組付け時に脱落するのを効果的に防止することができる。蓋体の組付け時には付勢部材の一端部が支持部に支持されるのであるが、一端部が支持部に固定されるように構成してもよいし、組付け時に一端部が支持部に確実に当接可能であれば組付け前には一端部から支持部から離れていてもよい。
【0016】
蓋体を本体に組付ける際には、軸部を軸受け穴に挿入するために蓋体を本体に向かって押圧することになる。このとき蓋体の移動に伴って付勢部材も移動し、付勢部材の他端部が本体の係止部に係止されるように構成する。付勢部材の他端部が係止部に係止された後は、蓋体の移動に伴って付勢部材の一端部と他端部の間の部位に付勢力が蓄えられるように、付勢部材の向きあるいは位置が決められている。そして軸部が軸受け穴に挿入されると、付勢部材は蓄えられた付勢力によって一端部が支持部に圧接され、他端部が係止部に圧接されるので、付勢部材は脱落することがなく、蓋体は付勢部材によって本体の開口を開く方向へ付勢されている。
【0017】
蓋体を本体に組付ける際には、蓋体が本体の開口を開いた姿勢で組付けることが望ましい。こうすることで、組付け時に付勢部材に蓄えられる付勢力を必要最小限とすることができ、付勢部材による反力が低減されるため組付け作業性が向上する。そして、蓋体が本体の開口を閉じる方向へ回動する時には他端部が係止部に支持されるとともに一端部が支持部から押圧されることで、付勢部材にさらに付勢力が蓄えられるので、蓋体を開くための付勢力を十分に確保することができる。
【0018】
なお軸受け穴は、本体の左右側壁にそれぞれ設けられ、軸部も左右に一対設けられるのが一般的である。付勢部材は、左右にそれぞれ設けてもよいし、左右の一方にのみ設けることもできる。一方にのみ付勢部材を設け、他方にダンパ装置を設けることも好ましい。
【0019】
保持手段は、蓋体が本体の開口を閉じた状態で蓋体を本体に保持する手段であり、公知の各種ロック機構を用いることができる。ハートカム装置など、プッシュロックオープン機構を採用することが望ましい。
【0020】
ところで付勢部材がトーションバネの場合には、蓋体が開く時には、トーションバネの巻回部は拡径するとともに軸方向に伸び、蓋体が閉じる時には、トーションバネの巻回部は縮径するとともに軸方向に縮む。したがって軸部と巻回部との間には、巻回部の拡径及び縮径の動きを妨げないように所定の隙間が形成されている。ところが蓋体の開閉時には、巻回部が軸部に対して径方向に相対移動して巻回部と軸部との間に干渉が生じ、異音が発生したり軸部に摩耗が生じる場合がある。
【0021】
そこで軸部の周囲には、蓋体から突出して巻回部の端面に当接する凸部を設けることが好ましい。このような凸部を形成することで、巻回部が径方向に移動するのを規制することができる。しかし突起などの凸部を一部に形成しただけでは、巻回部が傾いて蓋体の回動の動きが不安定になる場合がある。
【0022】
そこで凸部の形状を、巻回部の端面形状に対応して徐々に高さが変化するように形成することが望ましい。巻回部は螺旋形状でありその端面は巻回部の中心軸に対して直交する平面ではなく傾斜した三次元形状である。したがって巻回部の端面形状に対応して徐々に高さが変化する端面をもつ凸部とすれば、凸部の先端は巻回部の端面と全面で当接する。したがって軸部に対する巻回部の径方向の相対移動を確実に規制できるので、異音の発生や軸部の摩耗を確実に防止することができる。
【0023】
なお凸部の先端と巻回部との接触面積が大きいと、摩擦抵抗によって巻回部の縮径及び拡径の動きに支障が生じる場合がある。そこで凸部の先端と巻回部端面とは、線接触あるいは点接触するように構成することが望ましい。このようにするには、例えば、巻回部の端面の線材と周方向で間隔を隔てて接触する複数の凸部を形成することができる。
【0024】
以下、実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1に本実施例の蓋付収納装置を蓋体の閉状態で示す斜視図を、図2にその分解斜視図を示す。この蓋付収納装置は、樹脂製の本体1と、樹脂製の蓋体2と、樹脂製の容器3と、トーションバネ4と、ハートカム装置と、から主として構成されている。本体1は上方に開口100を有し、左右一対の側壁10,11にそれぞれ軸受け穴12,13が形成されている。一方の側壁10には、ダンパ装置5が固定されている。また他方の側壁11には、ハートカム装置の一部を構成するピン部材6が揺動可能に保持されている。容器3は本体1に固定されている。
【0026】
一対の側壁10,11には、開口100を構成する先端面から軸受け穴12,13へ向かって延びる案内溝14がそれぞれ形成されている。そして他方の側壁11の内側には、上面に略U字形状の切欠き15をもつリブ16(係止部)が形成されている。
【0027】
蓋体2の左右両側にはそれぞれ脚部20,21が垂下され、それぞれの脚部20,21からは左右外側へそれぞれ突出する軸部22が形成されている。一方の脚部21には板状の支持部23が形成され、支持部23の下方にはハートカム24が脚部21と一体に形成されている。また他方の脚部20には、隠れて図示されていないが、ダンパ装置5と歯合する歯車が形成されている。
【0028】
トーションバネ4は、複数回巻回されてなる巻回部40と、巻回部40の一端から延びる一端部41と、巻回部40の他端から延びる他端部42とを有し、他端部42の先端はフック状に曲折されている。このトーションバネ4は、一方の脚部21から突出する軸部22に巻回部40が挿通されて保持され、一端部41が支持部23に支持され、他端部42がリブ16の切欠き15に引っ掛けられている。そして巻回部40には、蓋体2を開く方向の付勢力が蓄えられている。
【0029】
本実施例の蓋付収納装置を組み立てるには、先ずトーションバネ4の巻回部40を蓋体2の一方の脚部21から突出する軸部22に挿通して、トーションバネ4を蓋体2に保持する。このとき図3に示すように、一端部41が支持部23に支持されるように配置され、他端部42はフリーの状態となっている。
【0030】
次に本体1に対して蓋体2が開位置となる姿勢とし、両端の軸部22を本体1の左右の案内溝13にそれぞれ係合させ、本体1の左右側壁を互いに離れる方向へ弾性変形させながら、蓋体2を本体1に挿入する。このとき図4に示すように、挿入初期にはトーションバネ4の他端部42はフリーの状態であり、本体1のリブ16とは干渉していない。
【0031】
蓋体2を本体1にさらに挿入すると、トーションバネ4の他端部42が本体1のリブ16と干渉し、他端部42はリブ16によって押圧されることで、一端部41と他端部42とのなす角度が狭められ巻回部40に付勢力が蓄えられる。この状態では、その付勢力によってトーションバネ4は一端部41が支持部23に圧接され、他端部42がリブ16に圧接されているので、トーションバネ4が軸部22から外れたり、他の部位と干渉したりするような不具合がない。そして両端の軸部22が左右の軸受け穴12,13に挿入されると、図5に示すように、トーションバネ4は他端部42の先端がリブ16の切欠き15に引っ掛かった状態で係止される。したがってトーションバネ4に蓋体2を開く方向の付勢力が蓄えられた状態で、蓋体2が本体1に回動可能に保持される。これにより蓋体2の本体1への組付けが完了する。
【0032】
次に、図3に示すように容器3が本体1に固定され、ダンパ装置5及びピン部材6を取付けることで、本実施例の蓋付収納装置が組み立てられる。そして図5に示すように開状態にある蓋体2を本体1の開口100に向かって回動させると、トーションバネ4は他端部42がリブ16に支持され、一端部41が支持部23によって押圧されることになる。そのため蓋体2の閉じる方向への回動に伴って巻回部40には付勢力がさらに蓄えられる。そしてピン部材6のピンがハートカム24に係合したロック状態では、図6に示すように蓋体2が本体1の開口100を閉じ、トーションバネ4は一端部41と他端部42とのなす角度が鋭角となった大きな付勢力が蓄えられた状態で保持されている。
【0033】
上記のように構成された本実施例の蓋付収納装置は、図1に示す閉状態から蓋体2の先端を容器3に向かって指で押すと、ピン部材6の先端に形成されているピンがハートカム24から外れてロックが解除される。そして指による押圧を解除すると、トーションバネ4の付勢によって蓋体2は軸部22を中心として回動して開口100を開く。このときの回動速度は、ダンパ装置5からの抵抗によってゆっくりとしたものとなる。開口100が開いた開状態で、容器3に物を出入することができる。
【0034】
そして図4に示す開状態から蓋体2を閉じる際には、蓋体2の回動に伴ってトーションバネ4には再び付勢力が蓄えられ、ハートカム装置によって蓋体2は図6に示す閉位置でロックされる。なお、トーションバネ4によって付勢される側の側壁21にハートカム24が一体に形成されているので、ハートカム24とピン部材6との係合が安定し、プッシュ・ロック・オープン機構の作動精度が向上するという効果も発現される。
【0035】
したがって本実施例の蓋付収納装置によれば、蓋体2を本体1に挿入する際にトーションバネ4を自動的に巻いて付勢力を蓄えることができるので、トーションバネ4の組付けをきわめて容易に行うことができ作業性が著しく向上する。
【実施例2】
【0036】
本実施例に係る蓋付収納装置の模式図を図7〜9に示す。本実施例は、トーションバネに代えてコイルスプリング7を用いたこと以外は、実施例1とほぼ同様の構成であるので、実施例1と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
コイルスプリング7は、一端部70と他端部71とを有し、一端部70の先端にはリング部72が形成され、他端部71の先端にはフック部73が形成されている。蓋体2の一方の脚部21には、支持部23に代えて外側へ突出する突起25が形成され、突起25の近傍には互いに間隔を隔てて平行に延びる一対の円弧状のリブ26が形成されている。
【0038】
蓋体2を本体1に組付ける際には、先ずコイルスプリング7のリング部72を突起25に挿通し、コイルスプリング7を一対のリブ26の間に配置する。そして実施例1と同様に本体1に対して蓋体2が開位置となる姿勢とし、両端の軸部22を本体1の左右の案内溝13にそれぞれ係合させ、本体1の左右側壁を互いに離れる方向へ弾性変形させながら、蓋体2を本体1に挿入する。このとき図7に示すように、挿入初期にはコイルスプリング7の他端部72はフリーの状態でリブ16の上方に位置している。
【0039】
蓋体2を本体1にさらに挿入すると、コイルスプリング7の他端部71が本体1のリブ16と干渉し、フック部73がリブ16の切欠き15と係合する。したがって蓋体2の挿入に伴って、コイルスプリング7が伸び付勢力が蓄えられる。この状態では、その付勢力によってコイルスプリング7は一端部70のリング部72が突起25(支持部)に圧接され、他端部71のフック部がリブ16(係止部)に圧接されているので、コイルスプリング7が外れたりするような不具合がない。
【0040】
蓋体2の両端の軸部22が左右の軸受け穴12,13に挿入されると、図8に示すように、コイルスプリング7は伸びた状態で保持され、蓋体2を開く方向の付勢力が蓄えられた状態で、蓋体2が本体1に回動可能に保持される。これにより蓋体2の本体1への組付けが完了する。
【0041】
そして図8に示すように開姿勢にある蓋体2を本体1の開口100に向かって回動させると、コイルスプリング7は他端部71がリブ16に支持され、一端部70が突起25によって引っ張られることになる。そのため蓋体2の閉じる方向への回動に伴ってコイルスプリング7はさらに伸び、付勢力がさらに蓄えられる。そしてピン部材6のピンがハートカム24に係合したロック状態では、図9に示すように蓋体2が本体1の開口100を閉じ、コイルスプリング7は十分に伸びて大きな付勢力が蓄えられた状態で保持されている。したがって閉状態にある蓋体2のロックが解除されると、蓋体2はコイルスプリング7の付勢によって自動的に回動し開口100を開く。
【実施例3】
【0042】
ところで実施例1の蓋付収納装置では、蓋体2が開く時には、トーションバネ4の巻回部40は拡径するとともに軸方向に伸び、蓋体2が閉じる時には、巻回部40は縮径するとともに軸方向に縮む。したがって軸部22と巻回部40との間には、巻回部40の拡径及び縮径の動きを妨げないように所定の隙間が形成されている。ところが蓋体2の開閉時には、巻回部40が軸部22に対して径方向に相対移動して巻回部40と軸部22との間に干渉が生じ、異音が発生したり軸部22に摩耗が生じる場合がある。
【0043】
そこで本実施例では、図10に示すように、軸部22の周囲に軸部22から放射状に延びる複数のリブ群27a〜27hを形成している。巻回部40は螺旋形状であり、その端面は巻回部40の中心軸に対して直交する平面ではなく傾斜した三次元形状である。リブ群27a〜27hは、その三次元形状の端面に対応して徐々に高さが変化するように形成されている。
【0044】
図11に展開して示すように、トーションバネ4の巻回部40から延出する一端部41に対向するリブ27aが最も高さが低く、半時計回りの進行方向に向かうにつれて高さが徐々に高くなり、リブ27hが最も高くなるように形成されている。すなわちリブ群27a〜27hの先端は、巻回部40の端面と周方向で間隔を隔てて全周で当接している。したがって軸部22に対する巻回部40の径方向の相対移動を確実に規制できるので、異音の発生や軸部22の摩耗を確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の蓋付収納装置は、回動によって蓋体が開閉する種々の収納装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:本体 2:蓋体 4:トーションバネ(付勢部材)
13:軸受け穴 16:リブ(係止部) 22:軸部
23:支持部 24:ハートカム(保持手段) 27a〜27h:リブ群(凸部)
40:巻回部 41:一端部 42:他端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受け穴が形成された側壁をもつ本体と、
該軸受け穴に挿入される軸部をもち該軸部を中心に該本体に回動可能に保持されて該本体の開口を開閉する蓋体と、
該蓋体に保持され該本体の開口を開く方向へ該蓋体を付勢する付勢部材と、
該蓋体が該本体の開口を閉じた状態で該蓋体を該本体に保持する保持手段と、を有する蓋付収納装置であって、
該付勢部材は一端部が該蓋体に形成された支持部に支持され、該蓋体を該本体に組付ける際には、該本体に形成された係止部に該他端部が係止され、該軸部を該軸受け穴に向かう方向へ該蓋体を移動させた時に該一端部が該支持部に支持されるとともに該他端部が該係止部で押圧されることで付勢力が蓄えられ、
該軸部が該軸受け穴に挿通された時には、該付勢部材に該本体の開口を開く方向へ該蓋体を付勢する付勢力が蓄えられていることを特徴とする蓋付収納装置。
【請求項2】
前記付勢部材は一端部及び他端部と該一端部と該他端部との間に形成された巻回部とよりなるトーションバネであり、該巻回部が前記軸部に挿通されることで前記蓋部材に保持されている請求項1に記載の蓋付収納装置。
【請求項3】
前記蓋体を前記本体に組付ける際には、前記蓋体は前記本体の開口を開いた姿勢で組付けられ、前記蓋体が前記本体の開口を閉じる方向へ回動する時には前記他端部が前記係止部に支持されるとともに前記一端部が前記支持部で押圧されることで前記付勢部材にさらに付勢力が蓄えられる請求項1又は請求項2に記載の蓋付収納装置。
【請求項4】
前記保持手段はハートカム装置であり、前記トーションバネにより付勢される側の前記蓋体の側壁にハートカムが一体に形成されている請求項2又は請求項3に記載の蓋付収納装置。
【請求項5】
前記軸部の周囲には、前記蓋体から突出し前記巻回部の端面に当接する凸部が形成されている請求項2〜4のいずれかに記載の蓋付収納装置。
【請求項6】
前記凸部は前記巻回部の端面形状に対応して徐々に高さが変化し、前記巻回部の端面が当接することで前記巻回部が径方向に移動するのを規制する請求項5に記載の蓋付収納装置。
【請求項1】
軸受け穴が形成された側壁をもつ本体と、
該軸受け穴に挿入される軸部をもち該軸部を中心に該本体に回動可能に保持されて該本体の開口を開閉する蓋体と、
該蓋体に保持され該本体の開口を開く方向へ該蓋体を付勢する付勢部材と、
該蓋体が該本体の開口を閉じた状態で該蓋体を該本体に保持する保持手段と、を有する蓋付収納装置であって、
該付勢部材は一端部が該蓋体に形成された支持部に支持され、該蓋体を該本体に組付ける際には、該本体に形成された係止部に該他端部が係止され、該軸部を該軸受け穴に向かう方向へ該蓋体を移動させた時に該一端部が該支持部に支持されるとともに該他端部が該係止部で押圧されることで付勢力が蓄えられ、
該軸部が該軸受け穴に挿通された時には、該付勢部材に該本体の開口を開く方向へ該蓋体を付勢する付勢力が蓄えられていることを特徴とする蓋付収納装置。
【請求項2】
前記付勢部材は一端部及び他端部と該一端部と該他端部との間に形成された巻回部とよりなるトーションバネであり、該巻回部が前記軸部に挿通されることで前記蓋部材に保持されている請求項1に記載の蓋付収納装置。
【請求項3】
前記蓋体を前記本体に組付ける際には、前記蓋体は前記本体の開口を開いた姿勢で組付けられ、前記蓋体が前記本体の開口を閉じる方向へ回動する時には前記他端部が前記係止部に支持されるとともに前記一端部が前記支持部で押圧されることで前記付勢部材にさらに付勢力が蓄えられる請求項1又は請求項2に記載の蓋付収納装置。
【請求項4】
前記保持手段はハートカム装置であり、前記トーションバネにより付勢される側の前記蓋体の側壁にハートカムが一体に形成されている請求項2又は請求項3に記載の蓋付収納装置。
【請求項5】
前記軸部の周囲には、前記蓋体から突出し前記巻回部の端面に当接する凸部が形成されている請求項2〜4のいずれかに記載の蓋付収納装置。
【請求項6】
前記凸部は前記巻回部の端面形状に対応して徐々に高さが変化し、前記巻回部の端面が当接することで前記巻回部が径方向に移動するのを規制する請求項5に記載の蓋付収納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−81943(P2012−81943A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38287(P2011−38287)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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