説明

蓋体及びその駆動構造

【課題】加飾部の見栄えを長期に維持したり、蓋体の引き込み量を任意に設定可能にしたり、蓋体の曲率に関わらず摺動特性を良好に維持できるようにする。
【解決手段】本発明の蓋体は、収納体4の開口に配置されて駆動装置20の回転体26により駆動される湾曲変形可能な蓋体6において、蓋体6の一方の面に回転体26と係脱自在に係合する係合部17を蓋体摺動方向に連続して形成している。また、本発明の蓋体の駆動構造は、駆動装置20が駆動源21の駆動力を蓋体6に伝達する回転体26をし、蓋体6の一方の面には回転体と係脱自在に係合する係合部17が連続して設けられ、回転体26と係合部17との係合を伴って蓋体6を摺動させることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体のうち、収納体の開口を開閉する摺動式の蓋体及びその駆動構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は特許文献1に開示されているもので、符号4は収納体(箱体)、符号5は蓋体(スライド蓋)である。図9において、蓋体5は、樹脂製であり、厚肉部9同士の間に薄肉部10を介在した状態に形成されて湾曲変形可能になっている。蓋体5には、前側につまみ部11などが設けられ、後側にスリット22が設けられている。収納体4は、蓋体5の摺動を案内する両側のガイドレール6と、蓋体5の閉状態を保持する前側のラッチ機構7と、蓋体5を湾曲状態にして収容する後側の円弧状収容部8と、蓋体5を開方向へ駆動する駆動装置(機構)21とを備えている。駆動装置21は、基端側が回動枢支されたアーム16と、アーム16の下端側に形成された歯車17と、歯車17に噛合してアーム16に回転力を与えるための捻りコイルばね18で回動付勢された中間歯車19と、中間歯車19と噛合しているダンパー20とで構成されている。
【0003】
以上の蓋体5は、収納体4に対し両側がガイドレール6に嵌合され、アーム16がスリット22に係合した状態に組み込まれる。そして、蓋体5は、図9の閉状態でラッチ機構7をロック解除すると、アーム16が中間歯車19及び歯車17を介して捻りコイルばね18の付勢力により時計回りに回動される動きと連動して開方向へ摺動される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−203067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1において、まず、蓋体の駆動構造としては、基端側が枢支されたアームを有し、該アームがその先端を蓋体の後側スリットに係合した状態で、基端側を支点として回動されることにより蓋体を摺動するため、蓋体の引き込み量がアームの長さ寸法などで規制されて任意に設定できない。また、蓋体構造としては、引き込み量の問題に加えて、蓋外面に木目などの加飾処理を施して意匠性の向上を図ることが多いが、蓋全体が一体ものとして形成されているため、厚肉部同士の間に介在された薄肉部を支点として湾曲変形可能にしたとしても、湾曲変形時に受ける応力で外面の加飾部が歪んで見栄えが次第に悪くなる。そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解消し、加飾部の見栄えを長期に維持したり、蓋体の引き込み量を任意に設定可能にしたり、蓋体の曲率に関わらず摺動特性を良好に維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、収納体の開口に摺動可能に配置されるとともに、前記収納体側に設けられた駆動装置の回転体により駆動される湾曲変形可能な蓋体において、前記蓋体の一方の面に前記回転体と係脱自在に係合する係合部を蓋体摺動方向に連続して形成していることを特徴としている。
【0007】
これに対し、請求項6の発明は、収納体の開口に摺動可能に配置された蓋体を駆動装置により駆動する蓋体の駆動構造において、前記駆動装置は、前記収納体側に設けられて駆動源の駆動力を前記蓋体に伝達する回転体を有し、前記蓋体の一方の面には前記回転体と係脱自在に係合する係合部が連続して設けられ、前記回転体と前記係合部との係合を介して前記蓋体を摺動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
(1)請求項1の発明では、蓋体が蓋摺動方向に連続して形成させている係合部を有しているため、例えば、該係合部をラックとし、駆動装置の回転体をピニオンとして構成、つまりラック・ピニオン方式により蓋体の長さに制約されず蓋体の引き込み量を任意に設定できるようにする。
(2)請求項2の発明では、蓋体が互いに回動可能に連結された複数の連結体で構成されているため、例えば、同一形状の連結体を必要数だけ連結して目的の蓋体を簡単に形成可能にしたり、湾曲変形時に受ける蓋体の応力を連結体同士の連結部で吸収して従来の加飾部が歪むという問題を解消したり、上記した収納体側の円弧状収容部へ摺動するような場合、収容部の曲率に関わらず蓋体の摺動特性を良好に維持できる。
【0009】
(3)請求項3の発明では、前記係合部として凹凸が等間隔で形成、つまりラック形状になっている点を明瞭化したことに意義がある。
(4)請求項4の発明では、前記係合部が連結体の幅方向の略中間部に設けられているため、上記したようにラック・ピニオン方式を採用したときに左右の負荷を中間部でバランスよく支持して蓋体の摺動特性を良好にできる。
(5)請求項5の発明では、各連結体が軸部及び凹部の嵌合により連結されるが、その場合に凹部を区画している上縁部分が下縁部分より張り出して凹部に嵌合した軸部の嵌合部分を目視不能に覆うため外観見栄えを向上できる。
【0010】
(6)請求項6の発明では、請求項1の蓋体と同様、例えば、該係合部をラックとし、駆動装置の回転体をピニオンとして構成、つまりラック・ピニオン方式の採用により蓋体の長さに影響されず蓋体の引き込み量を任意に設定でき、蓋体を常に良好に駆動できる。
(7)請求項7の発明では、請求項3の蓋体と同様、回転体が凹凸を有するギアで、前記係合部が前記凹凸に対応したラックになっている点を明瞭化したことに意義がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の形態を添付図面を参照して説明する。図1(a)と(b)は車室内のセンターコンソール近傍を示し、図2と図3は収納体と蓋体の構成を示し、図4と図5は駆動装置の構成を示し、図6と図7は蓋体の細部構成を示している。図8は駆動装置を構成している回転体の変形例を図5に対応して示している。以下の説明では、全体の概要、収納体、蓋体、駆動装置、主作動、変形例の順に詳述する。
【0012】
(全体の概要)図1において、車室内の前側には、不図示の運転席と助手席との間にセンターコンソール1が配設されている。センターコンソール1上には、シフトレバー2が前側に設けられ、その後方に可倒式のスイッチ3と、上開口した収納体4と、更に後方に位置して一段高くなったアームレスト5とが設けられている。ここで、収納体4は、図1(a)の蓋閉状態でその上開口が摺動式の蓋体6によって塞がれてセンターコンソールの外観を保っている。また、収納体4は、図1(b)の蓋開状態に示されるようにスイッチ3をオン側に倒すと、蓋体6が後述する駆動装置20を介して自動的に開き方向に摺動される。蓋開状態では、収納体4の内部が露出され、乗員が各種物品や容器類を内部に区画されている空間8や9に出し入れ可能となる。
【0013】
(収納体)この収納部4は、図2及び図3に示されるように、垂直面である前壁4a、略U形の湾曲面である後壁4b、両側壁4c及び底壁4dにて前後に長い概略矩形立体として区画形成されている。内部は、区画壁4eにより前空間8及び後空間9に区画されるとともに、後壁4bの下側に駆動装置用のメカ室10を区画形成している。後壁4bには、湾曲上側に窓12が設けられている。この窓12は左右中間に位置して略矩形穴となっている。メカ室10は、窓12から上へ開口されているとともに側面も開口されており、駆動装置20がその側面の開口から内部に配設される。また、各側壁4c及び後壁4bの両縁にはガイド溝11が対向した状態に設けられている。両ガイド溝11は、断面略凹状で、前壁4a側から後壁4bの手前までが略直線部11aとして延び、続いて後壁4bに沿って下向きに略渦巻き状ないしは略円弧状に形成された湾曲部11bとなっている。
【0014】
(蓋体)この蓋体6は、図3及び図4から分かるように、1個の先端側連結体7Aと、それ以外の多数の連結体7とで構成され、収納体4の上開口を覆う長さとなっている。このうち、各連結体7は、ABS等の硬質樹脂成形品であり、図6及び図7に示されているように、収納体4の両側壁4c間に対応した横に長い片状をなしている。また、各連結体7は、前端7aの両側に突設された軸部15と、後端7bの両側部分に設けられて軸部15と嵌合可能な凹部16と、裏面側で左右中間部に設けられている凹凸17aを等間隔に形成したラック部17とを一体に有している。軸部15は、前端7aの両内側より両側端へ向けて突出されている。凹部16は、凹部を区画している上縁部分16aが下縁部分16bより張り出すよう形成され、図7(b)や(c)のごとく相手側の軸部15を嵌合した状態で該軸部15の嵌合部分を上縁部分16aの張り出し部で目視不能に覆うよう工夫されている。
【0015】
また、この構造では、上縁部分16が連結体7同士を平面状から外側へ不用意に回動されないよう規制する。このため、連結体7同士は、図7(b)の平面状から図7(c)の内側つまりハ形方向にのみ回動可能となる。また、この例では、連結体7同士が一方連結体側ラック部17の外側凸17aと他方連結体側ラック部17の外側凸17aとの角度設定により角度θ=約30度だけ回動されるよう設定されている。
【0016】
これに対し、連結体7Aは、ABS等の硬質樹脂成形品であり、図3及び図4から推察されるように、連結体7と同様に横に長い片状をなし、連結体7に比べて、軸部15及びラック部17を欠如し、後端の両側部分に設けられている凹部16と、上面に設けられた凹状の引手7cとを一体に有している。以上の連結体7及び連結体7Aには、必要に応じて木目等の加飾処理が上面に施される。
【0017】
(駆動装置)この駆動装置20は、図2〜図5に示されるように、メカ室10に配設されており、上述したスイッチ3によりオン−オフされるDCモータ21と、モータ21で回動されるウオームギア22と、ウオームギア22に噛み合うギア23と、ギア23と同軸に枢支されて一体に回動されるギア24と、ギア24と噛み合うギア25と、ギア25と同軸に枢支されて一体に回動されるギア26とを備えている。各ギア22〜25は、モータ21の回動力を減速したり最終のギア26まで伝達する動力伝達機構を構成している。ギア26は、本発明の回転体に相当しており、収納体側の後壁4bに設けた上側の窓12を介して蓋体6(連結体7)側のラック部17と噛み合うよう枢支されている。なお、図面上は、各ギア23〜26を枢支する部材などを省略している。また、量産時には、モータ及び各ギアをユニット化した状態でメカ室10に組み込まれる。それらは必要に応じて設計される。
【0018】
(主作動)以上の蓋体の駆動構造では、蓋閉状態で、スイッチ3を一方側に倒すと、蓋体6が図1(b)のごとく駆動装置20を介して自動的に開き方向、つまり両ガイド溝11の直線部11aから湾曲部11bへ摺動されて蓋開状態となる。蓋開状態では、収納体4の内部が露出され、乗員が各種物品や容器類を内部に区画されている空間8や9に出し入れ可能となる。また、蓋体6は、蓋開状態で、スイッチ3を他方側に倒すと、図1(a)のごとく駆動装置20を介して自動的に閉じ方向、つまり両ガイド溝11の湾曲部11bから直線部11aへ摺動されて蓋閉状態となる。このような駆動構造では、例えば、スイッチ3が中立である起立位置にあるとき、回転体であるギア26がアイドル状態に切り替えられ、蓋体6が先端側連結体7Aの凹状の引手7cを利用して、人手によっても開閉操作可能になるよう構成される。
【0019】
そして、この駆動構造では、蓋体6が蓋摺動方向に連続して形成させているラック部17を有し、該ラック部17と回転体としてのギア26と、つまりラック・ピニオン方式により開閉されるため、蓋体6の引き込み量を任意に設定できるとともに、蓋体6の引き出し及び引き込みを常に良好に自動で行える。同時に、蓋構造としては、蓋体6が互いに回動可能に連結された複数の連結体7,7Aで構成されているため、例えば、同一形状の連結体7を必要数だけ連結して目的の蓋体を簡単に形成できる。また、湾曲変形時に受ける蓋体6の応力を連結体7,7同士の連結部、つまり軸部15と凹部16との嵌合部で充分吸収でき、その結果、従来のごとく外面の加飾部が歪むというような虞を解消でき、しかも蓋体6のガイド溝11に沿った摺動特性としては湾曲部11bの曲率に関わらず、軸部15と凹部16との嵌合部で湾曲部通過時の摩擦抵抗を吸収したり減じて常に良好に維持できる。
【0020】
(変形例)図8の変形例は、図4との対比より明らかなように、上記した回転体としてのギア26として、つまり蓋体6のラック部17と噛み合うギア27,28を複数個で構成しするとともに、各ギア27,28を共通のギヤ26Aで回動するようにした例である。この場合は、例えば、蓋体6がラック部17と噛み合う複数のギア27,28で駆動されることで、より良好な状態で摺動されるようにしたり、ギア比の選定で駆動速度を速くすることができる。このように本発明は、請求項で特定される要件を除いて種々変更可能なものである。一例としては、収納体及び蓋体の大きさや形状、駆動装置の配置及びギア構成などについては必要に応じ設計されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用したセンターコンソール付近の概略説明図である。
【図2】図1のセンターコンソールに装着された収納体を示す概略外観図である。
【図3】図2の収納体から蓋体を開状態にした概略外観図である。
【図4】上記蓋体と収納体側の回転体との関係を示す模式断面図である。
【図5】上記蓋体を回転体を介して駆動する駆動装置を示す模式図である。
【図6】上記蓋体を構成している連結体を示し、(a)は裏面図、(b)と(c)は(a)のA矢視図とB矢視図、(d)は(a)のC−C線断面図である。
【図7】上記連結体同士の連結構造を示し、(a)は外観図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)は(b)の状態から湾曲変形した断面図である。
【図8】上記駆動装置の変形例を図5に対応して示す模式断面図である。
【図9】特許文献1に開示されているものを示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1…センターコンソール(3はスイッチ、5はアームレスト)
4…収納体(4aは前壁、4bは後壁、4cは側壁、10は空間、12は窓)
6…摺動式蓋体
7,7A…連結体(7aは前端、7bは後端)
11…ガイド溝(11aは直線部、11bは湾曲部)
15…軸部
16…凹部(16aは上縁部分、16bは下縁部分)
17…ラック部(係合部に相当し、17aは凹凸)
20…駆動装置(22はウオームギア、23〜25はギア、27と28はギア)
21…モータ(駆動源)
26,26A…ギア(26aは凹凸)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納体の開口に摺動可能に組み込まれて駆動装置により駆動される湾曲変形可能な蓋体において、前記蓋体の一方の面には前記駆動装置の回転体に係脱自在に係合する係合部が蓋摺動方向に連続して形成されていることを特徴とする蓋体。
【請求項2】
前記蓋体は互いに回動可能に連結された複数の連結体からなることを特徴とする請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記連結体の一方の面には前記係合部として凹凸が等間隔で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記係合部は前記連結体の幅方向の略中間部に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の蓋体。
【請求項5】
前記各連結体は、前後端面の一方側に軸部及び他方側に凹部を有し、前記軸部と凹部との嵌合を介して互いに連結されているとともに、前記凹部を区画している上縁部分が下縁部分より張り出して前記凹部に嵌合した前記軸部の嵌合部分を目視不能に覆っていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の蓋体。
【請求項6】
収納体の開口に摺動可能に組み込まれた湾曲変形可能な蓋体を駆動装置により駆動する蓋体の駆動構造において、前記駆動装置は、駆動源の駆動力を前記蓋体に伝達する回転体を有し、前記蓋体の一方の面には前記回転体と係脱自在に係合する係合部が連続して設けられ、前記回転体と前記係合部との係合を伴って前記蓋体を摺動させることを特徴とする蓋体の駆動構造。
【請求項7】
前記回転体は外周に凹凸を有するギアであり、前記蓋体の係合部を前記凹凸に対応したラックによって形成していることを特徴とする請求項6に記載の蓋体の駆動構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−261300(P2007−261300A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85378(P2006−85378)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】