説明

蓋開閉装置

【課題】ダンパー歯車にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸の芯振れを軽減して、蓋体の開閉動作を安定させて良好に制動できる蓋開閉装置を提供する。
【解決手段】楽器ケース1と、この楽器ケース1に支持軸12によって回転可能に取り付けられた鍵盤蓋8と、支持軸12を中心に鍵盤蓋8と共に回転する連動歯車13と、この連動歯車13に噛み合って回転するダンパー歯車17が取り付けられた歯車軸15を有して連動歯車13の回転を制動するダンパー部材14とを備え、このダンパー部材14における歯車軸15の両端部のうち、少なくともダンパー部材14の外部に突出した自由端である外端部を軸支持部材16によって回転可能に支持し、鍵盤蓋8の開閉操作に伴って回転する連動歯車13にダンパー歯車17が噛み合って回転する際に、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸15の芯振れを軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器または音響機器などに用いられる蓋開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓋開閉装置においては、特許文献1に記載されているように、ケースに蓋体を支持軸によって回転可能に取り付け、この蓋体に支持軸を中心に回転する連動歯車を設け、この連動歯車に噛み合って回転するダンパー歯車を有するダンパー部材を連動歯車の外周に沿って移動可能に取り付けた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−33972号公報
【0004】
この種の蓋開閉装置は、蓋体を開閉する際に、その初期状態からダンパー部材が蓋体の回転に伴って連動歯車の外周に沿って移動することにより、ダンパー部材のダンパー機能を不能にし、その後ダンパー部材の移動を阻止して蓋体に対するダンパー機能を発揮させるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の蓋開閉装置では、ダンパー歯車が取り付けられる歯車軸がダンパー部材に片持ち状態で支持され、このダンパー部材の外部に突出した歯車軸の先端部が自由状態であり、この自由状態の歯車軸の先端部にダンパー歯車を取り付けた構成であるから、ダンパー歯車に連動歯車が噛み合って回転する際に、蓋体によってダンパー歯車にラジアル方向の大きな負荷が加わると、歯車軸の先端部が芯振れを起こすため、蓋体の開閉動作が不安定になり、蓋体の開閉動作を安定させて良好に制動することができないという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、ダンパー歯車にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸の芯振れを軽減して、蓋体の開閉動作を安定させて良好に制動することができる蓋開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、ケースと、このケースに支持軸によって回転可能に取り付けられた蓋体と、前記支持軸を中心に前記蓋体と共に回転する連動歯車と、この連動歯車に噛み合って回転するダンパー歯車が取り付けられた歯車軸を有して前記連動歯車の回転を制動するダンパー部材とを備えた蓋開閉装置において、前記ダンパー部材における前記歯車軸の両端部のうち、少なくとも前記ダンパー部材の外部に突出した自由端を回転可能に支持する軸支持部材を備えていることを特徴とする蓋開閉装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記軸支持部材が、前記蓋体と共に回転する前記連動歯車に設けられ、前記ダンパー部材に一端部が回転可能に支持された前記歯車軸の他端部である前記自由端を回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記軸支持部材が、前記歯車軸の前記自由端を前記連動歯車の回転に応じて相対的に移動させるガイド溝を有していることを特徴とする請求項2に記載の蓋開閉装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記ガイド溝が、前記連動歯車の回転中心である前記支持軸を中心とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蓋開閉装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記軸支持部材が、前記ダンパー部材と共に前記ケースに対して固定され、前記ダンパー部材に一端部が回転可能に支持された前記歯車軸の他端部である前記自由端を回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記軸支持部材が、前記ケースに対して固定され、前記ダンパー部材の外部に突出した前記歯車軸の自由端である両端部を回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉装置である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、蓋体の開閉操作に伴う連動歯車にダンパー歯車が噛み合って回転する際に、ダンパー部材の外部に突出した歯車軸の自由端を軸支持部材が回転可能に支持した状態で、歯車軸をダンパー歯車と共に良好に回転させることができる。このため、ダンパー歯車にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、軸支持部材によって歯車軸の芯振れを軽減することができ、これにより蓋体の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材によって蓋体の開閉動作を良好に制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1を示した断面図である。
【図2】図1に示された鍵盤楽器の要部を示した拡大断面図である。
【図3】図2に示された蓋開閉装置のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図2に示された蓋開閉装置における要部を示した拡大正面図である。
【図5】図4に示された蓋開閉装置における連動歯車と軸支持部材とを分解して示した拡大正面図である。
【図6】図2に示された蓋開閉装置におけるダンパー部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はその拡大側面図である。
【図7】図1に示された鍵盤楽器において鍵盤蓋を所定角度に開いた状態を示した断面図である。
【図8】図7に示された鍵盤楽器において鍵盤蓋を完全に開いた状態を示した断面図である。
【図9】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2を示した要部の拡大断面図である。
【図10】図9に示された蓋開閉装置のB−B矢視における拡大断面図である。
【図11】図10に示された蓋開閉装置におけるダンパー部材と軸支持部材とを示し、(a)はその拡大正面図、(b)はそのC−C矢視における拡大断面図である。
【図12】この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態3において蓋開閉装置の要部を示した拡大断面図である。
【図13】図12に示された蓋開閉装置におけるダンパー部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はそのD−D矢視における拡大断面図である。
【図14】図12に示された蓋開閉装置のE−E矢視における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図8を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、脚部を兼ねる一対の側板2と、この一対の側板2間における上部側に設けられた棚板である底板3と、この底板3の前端部(図1では左端部)上に起立して設けられた前板4と、底板3の後端部(図1では右端部)上に起立して設けられた後板5とを備えている。
【0016】
これにより、楽器ケース1は、上部が開放された箱形状に形成されている。この楽器ケース1の内部には、図1に示すように、鍵盤部6が設けられている。この鍵盤部6は、白鍵7aおよび黒鍵7bを備え、これら白鍵7aおよび黒鍵7bを鍵盤シャーシ(図示せず)上に上下方向に回転可能に取り付けた状態で多数配列した構成になっている。
【0017】
また、この楽器ケース1の上部には、図1および図2に示すように、鍵盤部6を開閉自在に覆う鍵盤蓋8が蓋開閉装置10によって開閉可能に設けられている。この鍵盤蓋8は、蓋開閉装置10によって上下方向に回転することにより、楽器ケース1を閉じた際に、楽器ケース1の上部に配置されて鍵盤部6を覆い隠し、図8に示すように、楽器ケース1を開いた際に、楽器ケース1の後方(図8では右側)に少し傾いた状態で起立して、鍵盤部6を楽器ケース1の上方に露出させるように構成されている。
【0018】
この鍵盤蓋8の蓋開閉装置10は、図1〜図3に示すように、鍵盤蓋8の下面に取り付けられたアーム部材11と、このアーム部材11に取り付けられて楽器ケース1内における側板2に回転自在に取り付けられた支持軸12と、このアーム部材11に取り付けられて支持軸12を中心に鍵盤蓋8と共に回転する連動歯車13と、楽器ケース1の側板2の内面に取り付けられて鍵盤蓋8の開閉動作を制動するダンパー部材14と、このダンパー部材14の歯車軸15の自由端である外端部15aを支持する軸支持部材16とを備えている。
【0019】
これにより、鍵盤蓋8は、図1〜図3に示すように、支持軸12を中心に、アーム部材11と共に上下方向に回転するように構成されている。この場合、アーム部材11は、図2に示すように、鍵盤蓋8の下面における後部(図2では右側部)に取り付けられて、楽器ケース1内の後部に上方から挿入するように構成されている。
【0020】
支持軸12は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1の一対の側板2における後部(図2では右側部)に位置する箇所にそれぞれ楽器ケース1の内部に向けて突出した状態で取り付けられている。この支持軸12は、図3に示すように、楽器ケース1内に挿入されたアーム部材11の下部が回転自在に取り付けられ、これによりアーム部材11が鍵盤蓋8と共に回転するように構成されている。
【0021】
連動歯車13は、図1〜図3に示すように、支持軸12を中心にアーム部材11が鍵盤蓋8と共に回転する際に、鍵盤蓋8の開閉動作をダンパー部材14に伝達するように構成されている。すなわち、この連動歯車13は、図2〜図4に示すように、全体がほぼ扇形状に形成され、その外周面に歯部13aが設けられ、この状態でビス11aによってアーム部材11に取り付けられていることにより、支持軸12を中心にアーム部材11と共に回転するように構成されている。
【0022】
ダンパー部材14は、図1〜図3に示すように、ロータリーダンパーであり、連動歯車13に噛み合うダンパー歯車17と、このダンパー歯車17が取り付けられてダンパー歯車17と共に回転する歯車軸15とを備えている。すなわち、このダンパー部材14は、図6(a)および図6(b)に示すように、ハウジング14a内に歯車軸15が回転可能に設けられ、この歯車軸15にオイルや摩擦部材(いずれも図示せず)によって負荷を加えることにより、ダンパー歯車17の回転を制動する制動機能を有するように構成されている。
【0023】
この場合、ダンパー部材14は、図4に示すように、歯車軸15の端部がハウジング14a内から外部に突出し、この突出した歯車軸15の箇所にダンパー歯車17が取り付けられて歯車軸15と共に回転するように構成されている。また、このダンパー部材14は、図3に示すように、ハウジング14aが楽器ケース1の側板2の内面にビス18によって取り付けられている。
【0024】
ダンパー歯車17は、図3および図4に示すように、連動歯車13の歯部13aに噛み合って歯車軸15を中心に回転するように構成されている。この場合、歯車軸15は、ハウジング14a内に位置する一端部である内端部15bがハウジング14a内に回転可能に支持された片持ち状態に構成されている。これにより、ダンパー部材14は、鍵盤蓋8が支持軸12を中心に回転して開閉する際に、連動歯車13が支持軸12を中心に回転することにより、ダンパー歯車17が連動歯車13の歯部13aに噛み合って回転するように構成されている。
【0025】
また、軸支持部材16は、図3〜図5に示すように、連動歯車13に取り付けられてダンパー部材14の外部に突出した歯車軸15の自由端である外端部15aを回転可能に支持するように構成されている。すなわち、この軸支持部材16は、図3〜図5に示すように、ほぼ円弧状の平板状に形成され、その両端部に設けられた一対の取付突起部16aが連動歯車13の一面、つまり歯車軸15の外端部15aが位置する内面(図3では右側面)にビス19によって取り付けられている。
【0026】
この場合、取付突起部16aは、図3に示すように、軸支持部材16がダンパー部材14のダンパー歯車17に接触しないように、連動歯車13の内面(図3では右側面)から離れる方向に向けて階段状に折り曲げられている。また、この軸支持部材16には、図4および図5に示すように、ダンパー部材14の歯車軸15の自由端である外端部15aを回転可能に支持してガイドするガイド溝20が連動歯車13の歯部13aに沿って設けられている。
【0027】
すなわち、このガイド溝20は、図3〜図5に示すように、連動歯車13の歯部13aから外周側に向けてダンパー歯車17の半径の距離だけ離れた位置において、連動歯車13の回転中心である支持軸12を中心とする円弧状に形成されている。この場合、ガイド溝20は、その円弧方向の長さが連動歯車13の歯部13aとほぼ同じ長さに形成されている。また、このガイド溝20は、その溝幅がダンパー歯車17の歯車軸15とほぼ同じ大きさで形成されている。
【0028】
これにより、ダンパー歯車17は、図3および図4に示すように、歯車軸15の内端部15bがダンパー部材14のハウジング14a内に回転可能に支持された状態で、ハウジング14aの外部に突出した歯車軸15の他端部の自由端である外端部15aが軸支持部材16のガイド溝20内に移動可能に挿入され、この状態で歯車軸15の外端部15aが鍵盤蓋8の開閉動作に応じてガイド溝20内を回転しながら相対的に移動するように構成されている。
【0029】
次に、この鍵盤蓋8の蓋開閉装置10の作用について説明する。
鍵盤蓋8を開いた状態から閉じる場合には、図8に示すように、鍵盤蓋8の先端部(図8では上端部)を手前側(図8では左側)に引き寄せる。すると、図7に示すように、鍵盤蓋8がアーム部材11の支持軸12を中心に反時計回りに回転し、アーム部材11に設けられた連動歯車13も、鍵盤蓋8と共に支持軸12を中心に反時計回りに回転する。
【0030】
このときには、連動歯車13の歯部13aがダンパー部材14のダンパー歯車17に噛み合っているため、連動歯車13の回転に伴ってダンパー部材14のダンパー歯車17が歯車軸15と共に時計回りに回転する。このようにダンパー歯車17が回転するときには、ダンパー部材14によって連動歯車13に負荷が加わることにより、連動歯車13の回転が制動される。このため、鍵盤蓋8が閉じる方向に急激に回転することがなく、ゆっくり回転する。
【0031】
また、このようにダンパー歯車17が歯車軸15と共に回転するときには、図7に示すように、歯車軸15の外端部15aが連動歯車13に取り付けられた軸支持部材16によって支持された状態で、軸支持部材16のガイド溝20内を相対的に移動する。すなわち、ダンパー歯車17が連動歯車13の歯部13aに噛み合って回転する際には、連動歯車13の回転に伴って軸支持部材16が支持軸12を中心に回転することにより、軸支持部材16のガイド溝20が反時計回りに上側から下側に向けて回転移動する。
【0032】
このときには、歯車軸15は、その内端部15bがダンパー部材14に回転可能に支持された状態で、楽器ケース1に対して固定されている。このため、図7および図8に示すように、歯車軸15は移動せずに、ダンパー部材14から外部に突出した歯車軸15の自由端である外端部15aが軸支持部材16のガイド溝20内に支持された状態で、ガイド溝20内を相対的に下側から上側に向けて移動する。
【0033】
これにより、ダンパー歯車17の歯車軸15は、その一端部である内端部15bがダンパー部材14に回転可能に支持され、他端部の自由端である外端部15aが軸支持部材16によって回転移動可能に支持され、この状態でダンパー歯車17と共に回転するので、鍵盤蓋8を閉じる際に、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸15の芯振れが軽減される。このため、鍵盤蓋8の開閉動作が安定すると共に、ダンパー部材14によって鍵盤蓋8の開閉動作が良好に制動される。
【0034】
そして、鍵盤蓋8が更に回転して開くと、図1および図2に示すように、アーム部材11が支持軸12を中心に更に反時計回りに回転し、これに伴って連動歯車13および軸支持部材16が、支持軸12を中心に反時計回りに回転する。これにより、ダンパー部材14のダンパー歯車17が歯車軸15を中心に回転するので、ダンパー部材14によって連動歯車13に負荷が加わり、連動歯車13の回転が制動されると共に、鍵盤蓋8の閉じる方向への動作が制動される。
【0035】
このときにも、歯車軸15は移動せずに、軸支持部材16の反時計回り方向の回転に伴ってガイド溝20が上側から下側に向けて回転移動するので、歯車軸15の外端部15aが連動歯車13と共に軸支持部材16のガイド溝20内に支持された状態で、ガイド溝20内を相対的に下側から上側に向けて移動し、図1および図2に示すように、ガイド溝20の上端部に位置する。これにより、鍵盤蓋8は急激に閉じることがなく、楽器ケース1の上部にゆっくり配置されて鍵盤部6を良好に覆う。
【0036】
また、このように閉じた鍵盤蓋8を開く場合には、蓋開閉装置10が上述した動作と逆の動作を行って、図8に示すように、鍵盤蓋8が楽器ケース1の後方に少し傾いた状態で起立する。このときには、アーム部材11が支持軸12を中心に時計回りに回転し、これに伴って連動歯車13および軸支持部材16が、支持軸12を中心に時計回りに回転する。
【0037】
これにより、ダンパー部材14のダンパー歯車17が歯車軸15を中心に反時計回りに回転するので、ダンパー部材14によって連動歯車13に負荷が加わり、連動歯車13の回転が制動されると共に、鍵盤蓋8の開く方向への動作が制動される。このため、鍵盤蓋8が開く方向にゆっくり回転する。
【0038】
このときにも、歯車軸15は移動せずに、軸支持部材16の回転に伴ってガイド溝20が回転移動するので、ダンパー部材14から外部に突出した歯車軸15の自由端である外端部15aが連動歯車13と共に軸支持部材16のガイド溝20内に支持された状態で、ガイド溝20内を相対的に上側から下側に向けて移動し、図7および図8に示すように、ガイド溝20の下端部に位置する。これにより、鍵盤蓋8は楽器ケース1の後方に少し傾いた状態で起立し、鍵盤部6を開放する。
【0039】
このように、この鍵盤蓋8の蓋開閉装置10によれば、楽器ケース1と、この楽器ケース1に支持軸12によって回転可能に取り付けられた鍵盤蓋8と、支持軸12を中心に鍵盤蓋8と共に回転する連動歯車13と、この連動歯車13に噛み合って回転するダンパー歯車17が取り付けられた歯車軸15を有して連動歯車13の回転を制動するダンパー部材14とを備え、このダンパー部材14における歯車軸15の両端部のうち、ダンパー部材14の外部に突出した自由端である外端部15aを軸支持部材16によって回転可能に支持しているので、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸15の芯振れを軽減することができる。
【0040】
すなわち、この鍵盤蓋8の蓋開閉装置10では、鍵盤蓋8の開閉操作に伴う連動歯車13にダンパー歯車17が噛み合って回転する際に、軸支持部材16によって歯車軸15の自由端である外端部15aが回転可能に支持されているので、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸15の芯振れを軽減することができる。このため、ダンパー歯車17を歯車軸15によって良好に回転させることができるので、鍵盤蓋8の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材14によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。これにより、鍵盤蓋8を開閉する際に、安全に鍵盤蓋8を開閉することができる。
【0041】
この場合、軸支持部材16は、鍵盤蓋8と共に回転する連動歯車13に設けられ、ダンパー部材14に一端部である内端部15bが回転可能に支持された歯車軸15の自由端である他端部の外端部15aを回転可能に支持しているので、連動歯車13の歯部13aにダンパー歯車17が噛み合った状態で、連動歯車13が鍵盤蓋8と共に支持軸12を中心に回転する際に、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、軸支持部材16によって歯車軸15の芯振れを良好に軽減することができ、これにより鍵盤蓋8の開閉動作を安定させて確実に且つ良好に制動することができる。
【0042】
また、この軸支持部材16は、歯車軸15の自由端である外端部15aが連動歯車13の回転に応じて相対的に移動するガイド溝20を有していることにより、ダンパー歯車17が連動歯車13の歯部13aに噛み合って回転する際に、連動歯車13の回転に伴って軸支持部材16が支持軸12を中心に回転しても、歯車軸15の外端部15aを軸支持部材16のガイド溝20内で回転可能に支持した状態で相対的に移動させることができ、これにより鍵盤蓋8を開閉する際に、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、軸支持部材16によって歯車軸15の芯振れを軽減することができる。
【0043】
さらに、このガイド溝20は、連動歯車13の回転中心である支持軸12を中心とする円弧状に形成されていることにより、ダンパー歯車17が連動歯車13の歯部13aに噛み合って回転する際に、連動歯車13の回転に伴って軸支持部材16が支持軸12を中心に回転しても、軸支持部材16のガイド溝20によって歯車軸15の外端部15aを常に一定の状態で支持することができる。
【0044】
これにより、鍵盤蓋8を開閉する際に、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、軸支持部材16のガイド溝20によって歯車軸15の芯振れを良好に軽減することができるので、鍵盤蓋8の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材14によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0045】
なお、上述した実施形態1では、ダンパー部材14を連動歯車13の側方、つまり支持軸12に対してほぼ水平な方向に並列に配置して、連動歯車13に対するほぼ垂直な接線方向において、連動歯車13の歯部13aとダンパー部材14のダンパー歯車17とを噛み合わせた構成である場合について述べたが、これに限らず、例えばダンパー部材14を連動歯車13の下側、つまり支持軸12に対してほぼ垂直な方向に縦列に配置した構成でも良い。
【0046】
このように構成すれば、連動歯車13に対するほぼ水平な接線方向において、連動歯車13の歯部13aとダンパー部材14のダンパー歯車17とを噛み合わせることができる。このため、鍵盤蓋8によってダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、実施形態1よりも、軸支持部材16のガイド溝20によって歯車軸15の芯振れを、より一層、確実に軽減することができる。
【0047】
(実施形態2)
次に、図9〜図11を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図8に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図9および図10に示すように、蓋開閉装置30の軸支持部材31が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0048】
この軸支持部材31は、図9および図10に示すように、楽器ケース1の側板2の内面に固定された状態で、ダンパー部材14の外部に突出した歯車軸15の自由端である外端部15aを回転可能に支持するように構成されている。この場合、軸支持部材31は、金属板からなり、図10および図11に示すように、階段状に折り曲げられた構成になっている。
【0049】
すなわち、この軸支持部材31は、図11(a)および図11(b)に示すように、楽器ケース1の側板2にビス33によって取り付けられる取付片31aと、この取付片31aの端部からダンパー部材14の上方に向けて立ち上がる起立片31bと、この起立片31bの上端部からダンパー部材14の上方に沿って延びた支持片31cとを有し、これらが階段状に折り曲げられた構成になっている。
【0050】
この場合、支持片31cには、図11(a)および図11(b)に示すように、ダンパー部材14の外部に突出した歯車軸15の自由端である外端部15aを回転可能に支持する軸受け孔32が設けられている。これにより、ダンパー部材14の歯車軸15は、その一端部である内端部15bがダンパー部材14のハウジング14a内に回転可能に支持され、その他端部の自由端である外端部15aが楽器ケース1の側板2に固定された軸支持部材31によって回転可能に支持された構成になっている。
【0051】
このような鍵盤蓋8の蓋開閉装置30によれば、軸支持部材31が、ダンパー部材14に一端部である内端部15bが回転可能に支持された歯車軸15の自由端である他端部の外端部15aを回転可能に支持しているので、実施形態1と同様、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸15の芯振れを防いで、鍵盤蓋8の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材14によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0052】
すなわち、この蓋開閉装置30においては、鍵盤蓋8の開閉操作に伴う連動歯車13にダンパー歯車17が噛み合って回転する際に、ダンパー部材14によって歯車軸15の一端部である内端部15bが回転可能に支持され、軸支持部材32によって歯車軸15の他端部の自由端である外端部15aが回転可能に支持されているので、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸15の芯振れを確実に防ぐことができる。
【0053】
このため、ダンパー歯車17を歯車軸15によって確実に且つ良好に回転させることができるので、鍵盤蓋8の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材14によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。これにより、鍵盤蓋8を開閉する際に、安全に鍵盤蓋8を開閉することができる。
【0054】
この場合、軸支持部材31は、楽器ケース1の側板2に固定された状態で、歯車軸15の自由端である外端部15aを回転可能に支持しているので、簡単な構造で、歯車軸15の自由端である外端部15aを確実に支持することができ、これにより歯車軸15の芯振れを確実に防ぐことができる。
【0055】
このため、連動歯車13が鍵盤蓋8と共に支持軸12を中心に回転する際に、この連動歯車13の歯部13aにダンパー歯車17を確実に且つ良好に噛み合わせて、鍵盤蓋8の開閉動作に伴う連動歯車13の回転を確実にダンパー歯車17に伝達させることができると共に、鍵盤蓋8の開閉動作を、実施形態1よりも、安定した状態で確実に且つ良好に制動することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態2では、軸支持部材31を楽器ケース1の側板2に直接取り付けた場合について述べたが、これに限らず、例えば軸支持部材31をダンパー部材14に取り付け、この状態でダンパー部材14を軸支持部材31と共に楽器ケース1の側板2に取り付けるように構成しても良い。このように構成しても、実施形態2と同様の作用効果があるほか、組立作業性の向上を図ることができる。
【0057】
(実施形態3)
次に、図12〜図14を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図8に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、図12に示すように、蓋開閉装置35のダンパー部材36と軸支持部材37が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0058】
このダンパー部材36は、図12〜図14に示すように、ロータリーダンパーであり、連動歯車13の歯部13aに噛み合って回転するダンパー歯車17と、このダンパー歯車17が取り付けられてダンパー歯車17と共に回転する歯車軸38と、この歯車軸38を収容する一対のハウジング36aとを備えている。このダンパー部材36は、歯車軸38にばねや弾性部材などの摩擦抵抗を付与する摩擦部材(図示せず)によって負荷を加えることにより、ダンパー歯車17の回転を制動するように構成されている。
【0059】
この場合、ダンパー歯車17は、図12〜図14に示すように、歯車軸38に一体的に設けられている。このダンパー歯車17は、その外周部の一部が一対のハウジング36aから外部に突出し、この突出した部分が連動歯車13の歯部13aに噛み合って回転するように構成されている。また、一対のハウジング36aは、ダンパー歯車17の外周側に突出した突出部36cが軸支持部材37に後述するねじ部材45によって取り付けられるように構成されている。
【0060】
この一対のハウジング36aには、図12〜図14に示すように、ダンパー部材36の外部に突出した歯車軸38の自由端である両端部38aが挿入する軸挿入孔36bがそれぞれ設けられている。また、一対のハウジング36aにおけるダンパー歯車17の外周側に突出した突出部36cには、ねじ部材45が挿入する取付孔36dがそれぞれ設けられている。
【0061】
一方、軸支持部材37は、図12〜図14に示すように、ダンパー部材36と共に楽器ケース1に対して固定されるように構成されている。すなわち、この軸支持部材37は、図12および図14に示すように、一対の取付板39、40からなり、この一対の取付板39、40間にダンパー部材36がねじ部材45によって取り付けられるように構成されている。
【0062】
この一対の取付板39、40は、図12および図14に示すように、それぞれ楽器ケース1の側板2にビス41によって取り付けられる取付片39a、40aと、この取付片39a、40aの端部からダンパー部材36の下部と上部とに向けて立ち上がる起立片39b、40bと、この起立片39b、40bの上端部からダンパー部材36の下部と上部とに沿って延びた支持片39c、40cとを有し、これらがそれぞれ階段状に折り曲げられた構成になっている。
【0063】
この一対の取付板39、40における各支持片39c、40cの互いに対向する箇所には、図14に示すように、ダンパー部材36における歯車軸38の自由端である両端部38aをそれぞれ回転可能に支持する軸受け孔42a、42bがそれぞれ設けられている。また、この一対の取付板39、40における各支持片39c、40cには、ねじ部材45が挿入するねじ挿入孔43a、43bが、ダンパー歯車17の外周側に突出したハウジング36aの突出部36cの各取付孔36dにそれぞれ対応して設けられている。
【0064】
この場合、ねじ部材45は、図14に示すように、ダンパー部材36におけるダンパー歯車17の外周側に突出したハウジング36aの突出部36cに設けられた取付孔36dに挿入し、この状態でナット45aによって一対のハウジング36aを締め付けることにより、ダンパー部材36が取り付けられるように構成されている。
【0065】
また、このねじ部材45は、図14に示すように、その両端部を一対の取付板39、40の各ねじ挿入孔43a、43bに挿入させて、一対の取付板39、40間にダンパー部材36を配置し、この状態でナット45aによって一対の取付板39、40を外側から締め付けることにより、一対の取付板39、40間にダンパー部材36を取り付けるように構成されている。
【0066】
このような鍵盤蓋8の蓋開閉装置35によれば、ダンパー歯車17が取り付けられてダンパー部材36の外部に突出した歯車軸38の自由端である両端部38aを回転可能に支持する軸支持部材37を備えているので、実施形態1と同様、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、歯車軸38の芯振れを防いで、鍵盤蓋8の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材36によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0067】
すなわち、この蓋開閉装置35においては、鍵盤蓋8の開閉操作に伴う連動歯車13にダンパー歯車17が噛み合って回転する際に、ダンパー部材36によって歯車軸38の自由端である両端部38aが軸支持部材37によって回転可能に支持されているので、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、軸支持部材37によって歯車軸38の芯振れを確実に防ぐことができる。これにより、ダンパー歯車17を歯車軸38によって良好に回転させることができるので、鍵盤蓋8の開閉動作を安定させることができると共に、ダンパー部材36によって鍵盤蓋8の開閉動作を良好に制動することができる。
【0068】
この場合、軸支持部材37は、楽器ケース1に対して固定された状態で、歯車軸38の自由端である両端部38aを回転可能に支持しているので、連動歯車13が鍵盤蓋8と共に支持軸12を中心に回転する際に、歯車軸38の芯振れを確実に防ぐことができる。このため、連動歯車13の歯部13aにダンパー歯車17を確実に且つ良好に噛み合わせて、鍵盤蓋8の開閉動作に伴う連動歯車13の回転を確実にダンパー歯車17に伝達させることができると共に、軸支持部材37によって鍵盤蓋8の開閉動作を、実施形態1よりも、安定した状態で確実に且つ良好に制動することができる。
【0069】
すなわち、軸支持部材37は、楽器ケース1の側板2に固定される一対の取付板39、40を備え、この一対の取付板39、40における互いに対向する箇所にそれぞれ設けられた軸受け孔42a、42bによって、ダンパー部材36の歯車軸38の自由端である両端部38aをそれぞれ回転可能に支持する構成であるから、簡単な構造で、歯車軸38の自由端である両端部38aを確実に且つ強固に支持することができる。
【0070】
このため、ダンパー歯車17にラジアル方向の大きな負荷が加わっても、一対の取付板39、40によって歯車軸38の芯振れを確実に防ぐことができる。これにより、連動歯車13の歯部13aにダンパー歯車17を確実に且つ良好に噛み合わせて、鍵盤蓋8の開閉動作に伴う連動歯車13の回転を確実にダンパー歯車17に伝達させることができると共に、鍵盤蓋8の開閉動作を安定した状態で確実に且つ良好に制動することができる。
【0071】
なお、上述した実施形態1、2では、鍵盤楽器の鍵盤蓋8に適用した場合について述べたが、必ずしも鍵盤楽器の鍵盤蓋8である必要はなく、例えば音響機器などの各種の電子機器の蓋体にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 楽器ケース
2 側板
3 底板
5 背面板
6 鍵盤部
8 鍵盤蓋
10、30、35 蓋開閉装置
11 アーム部材
12 支持軸
13 連動歯車
13a 連動歯車の歯部
14、36 ダンパー部材
15、38 歯車軸
15a 歯車軸の自由端である外端部
15b 歯車軸の内端部
16、31、37 軸支持部材
17 ダンパー歯車
20 ガイド溝
38a 歯車軸の両端部
39、40 一対の取付板
42a、42b 軸受け孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケースに支持軸によって回転可能に取り付けられた蓋体と、前記支持軸を中心に前記蓋体と共に回転する連動歯車と、この連動歯車に噛み合って回転するダンパー歯車が取り付けられた歯車軸を有して前記連動歯車の回転を制動するダンパー部材とを備えた蓋開閉装置において、
前記ダンパー部材における前記歯車軸の両端部のうち、少なくとも前記ダンパー部材の外部に突出した自由端を回転可能に支持する軸支持部材を備えていることを特徴とする蓋開閉装置。
【請求項2】
前記軸支持部材は、前記蓋体と共に回転する前記連動歯車に設けられ、前記ダンパー部材に一端部が回転可能に支持された前記歯車軸の他端部である前記自由端を回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉装置。
【請求項3】
前記軸支持部材は、前記歯車軸の前記自由端が前記連動歯車の回転に応じて相対的に移動するガイド溝を有していることを特徴とする請求項2に記載の蓋開閉装置。
【請求項4】
前記ガイド溝は、前記連動歯車の回転中心である前記支持軸を中心とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蓋開閉装置。
【請求項5】
前記軸支持部材は、前記ダンパー部材と共に前記ケースに対して固定され、前記ダンパー部材に一端部が回転可能に支持された前記歯車軸の他端部である前記自由端を回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉装置。
【請求項6】
前記軸支持部材は、前記ケースに対して固定され、前記ダンパー部材の外部に突出した前記歯車軸の前記自由端である両端部を回転可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の蓋開閉装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−78713(P2012−78713A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225865(P2010−225865)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】