説明

薄型パネルの再資源化方法

【課題】廃薄型パネルから、少ない労力とエネルギーにて、大がかりな設備を使用せず、安全に素材を分離し、有価物であるインジウムおよび重量の大半を占めるガラスを素材として再生利用することが可能である薄型パネルの再資源化方法を提供する。
【解決手段】薄型パネルを加熱し、パネルガラスから偏光板を剥離する工程を含む、薄型パネルの再資源化方法。このような本発明の薄型パネルの再資源化方法においては、剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を、比重分離により分別する工程をさらに含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型パネルの廃棄物(廃薄型パネル)の再資源化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会における生産・消費活動全般について一般廃棄物や産業廃棄物が増加し、不法投棄や埋立地逼迫などの地球環境問題が注目を集め、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済システムから資源循環型経済システムへの転換が社会的に重要な課題となってきている。
【0003】
前記のような状況を受け、たとえば、2001年4月より家電リサイクル法が施行された。家電リサイクル法においては、2007年4月現在において、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0004】
ところで、近年、表示部品として液晶パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネル、電解放出型ディスプレイパネルなどの薄型パネルを搭載した薄型テレビの需要が、省電力、省スペース、軽量かつデジタル放送の受像に適するといった特性から、近年の地球環境問題への関心の高まり、ならびにテレビ放送のデジタル化と相俟って、急激に増加している。特に、大型の薄型パネルを搭載した大画面薄型テレビの需要が劇的に拡大している。これに伴い、薄型テレビの廃棄量も今後急激に増加していくことが予想され、リサイクル活動などの環境活動において、リサイクル性向上などの要求が高くなってきている。
【0005】
現在、薄型テレビのパネル(薄型パネル)は、比較的新しい製品であること、また、廃棄物の量としては少ないこともあり、廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕された後、プラスチックを多量に含むシュレッダーダストなどと共に、埋立処理あるいは焼却処理されている。
【0006】
本発明に供される薄型パネルの典型的な構造について、説明する。図6は、典型的な一例の薄型パネル1を模式的に示す断面図である。図6には、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた薄型パネル(液晶パネル)1を示している。図6に示す例の薄型パネル1は、たとえば、対向配置された厚み0.4〜1.1mm程度の2枚のパネルガラス(カラーフィルタ側パネルガラス2a、TFT側パネルガラス2b)を備える。これらパネルガラス(ガラス基板)2a,2bは、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体(シール材)3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。また、これらパネルガラス2a,2bとシール樹脂体3とによって密封された領域には、液晶が封入され、厚み4〜6μm程度の液晶層4が形成されている。
【0007】
また、典型的な薄型パネル1では、図6に示すように、各パネルガラス2a,2bの対向配置された側とは反対側(外面側)には、厚み0.2〜0.4mm程度の光学フィルム(薄型パネルが液晶パネルの場合は偏光フィルターおよび位相差フィルムなど)5が粘着剤により貼着されている。さらに、薄型パネルの周縁部には、液晶駆動用のドライバーICが接続され、周縁部の外側がベゼル・プラスチックで覆われている(図示せず)。
【0008】
典型的な薄型パネル1では、図6に示すように、カラーフィルタ側パネルガラス2aの内面側に、カラーフィルタ6、反射防止膜7、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。カラーフィルタ6は有機物を主体とした材料からなる。反射防止膜7は炭素を主成分とした薄膜などからなる。透明導電膜8はインジウムなどを含む薄膜からなる。配向膜9はポリイミドなどの有機物からなる。
【0009】
また、典型的な薄型パネル1では、図6に示すように、TFT側パネルガラス2bの内面側に、画素電極10、バス電極11、絶縁膜12、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。透明導電膜8は、インジウムなどを含む薄膜からなる。画素電極10およびバス電極11はタンタル、モリブデン、アルミニウム、チタンなどの金属を主成分とする薄膜からなる。前記カラーフィルタ6、反射防止膜7、透明導電膜8、配向膜9、画素電極10、バス電極11および絶縁膜12の膜厚は、前記2枚のパネルガラス2a,2bの厚みと比較して、十分に薄い。
【0010】
液晶パネルの製造工場から排出される不良の廃液晶パネルや家電製品および情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置や液晶パネルの処理方法として、たとえば、特開2000−84531号公報(特許文献1)には、液晶パネルの製造工場や廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕後、非鉄精錬炉に投入し珪石の代替材料として処理する方法が開示されており、一部で実施されている。この特許文献1に開示された方法では、有機物は炉内で完全燃焼され、二酸化炭素や水素などに分解される。
【0011】
薄型パネルには、通常、透明電極材料として有価物であるインジウムを含むITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。インジウムはITO透明導電膜として液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどに使用されており、近年の薄型テレビの急激な普及により需要が増加し、供給が逼迫しており、原材料の確保が重要となっている。したがって、希少資源有効活用の観点から、インジウムについても、不要となった薄型パネルから高収率で回収することが望まれている。液晶パネルの重量の大半を占めるガラスについても、廃棄物の低減と資源を大切にする観点から、再生利用することが好ましい。また、ITOは微粉末状態で毒性が懸念されており、適切に回収することが望ましい。
【0012】
薄型パネルから資源を回収し、有効に再利用するためには、薄型パネルを部材ごとに分離することが望まれる。また、薄型パネルの重量の大部分を占めるパネルガラスをリサイクルするためには、パネルガラスを適切なサイズに破砕し、カレット化または粉体化することが望まれる。さらに、有価物であるインジウムを回収するためには、パネルガラスを適切なサイズに粉砕し、酸性溶液などを用いて、パネルガラスの内面からITOを溶出することが望ましい。しかしながら、薄型パネルを破砕する際に、パネルガラスの外面に光学フィルムが付着したままであると、パネルガラスの外面に光学フィルムの弾性のため効率よく破砕することができない。したがって、上記観点から、薄型パネルの有効な再資源化のためには、パネルガラスから光学フィルムを剥離することが望まれている。
【0013】
ガラス板をフィルムを介して接着してなる合わせガラスから、ガラスを分離する合わせガラスの分離方法として、たとえば特開2005−95855号公報(特許文献2)には、フィルムが蒸発する温度以上で、かつ、ガラスの軟化点以下の温度に加熱し、フィルムを蒸発させることにより、フィルムをガラスから分離する方法が開示されている。
【0014】
また液晶パネルからの偏光板の剥離方法としては、たとえば特開2002−159955号公報(特許文献3)には、偏光板をパネルに付いたままカットした後、カットした偏光板を粘着テープに粘着させ剥離する方法が開示されている。
【0015】
また、液晶パネルに付着した偏光板、液晶、カラーフィルターなどの樹脂類を除去する方法として、たとえば特開2000−51829号公報(特許文献4)には、液晶表示装置の廃棄物を固体熱媒体が流動している流動層に投入し、樹脂類を酸化する流動化ガスにより加熱流動させることにより、液晶表示装置の廃棄物から純度の高くリサイクル可能なガラスを回収する方法が開示されている。
【0016】
また、偏光板を貼り付けした液晶パネルから偏光板を剥離する方法として、たとえば、特開2002−350837号公報(特許文献5)には、加熱したスライサーを偏光板と液晶パネルとの間に挿入し、スライサーを液晶パネルに対して移動させることにより、偏光板を液晶パネルから剥離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−84531号公報
【特許文献2】特開2005−95855号公報
【特許文献3】特開2002−159955号公報
【特許文献4】特開2000−51829号公報
【特許文献5】特開2002−350837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
液晶パネルなどの薄型パネルは、省電力・省資源に貢献できる表示装置であるので、今後、高度情報化社会の進展に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、薄型パネルの廃棄物(廃薄型パネル)も、数・量ともに急激に増大すると予想される。
【0019】
従来は、適切な薄型パネルの処理方法が確立されておらず、CRT(Cathode Ray Tube)その他の家電製品や部品と比較して技術確立などが遅れているのが実情である。したがって、今後、廃薄型パネルの増加に備えた処理方法の確立が早急に要求される。
【0020】
しかしながら上述した特許文献1に開示された方法は、液晶パネルの製造工場から排出される不良の廃液晶パネルや家電製品および情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置や液晶パネルを、液晶パネルの製造工場や廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕後、非鉄精錬炉に投入し珪石の代替材料として処理する方法である。この特許文献1に開示された方法では、光学フィルムなどの有機物は炉内で完全燃焼され、二酸化炭素や水素などに分解される。また、液晶パネルのガラスはスラグとなりセメント材料として再利用することを意図しているため、ガラス自体として再生利用することはできない。さらに、インジウムはスラグに含まれ、インジウム材料として再生利用することはできない。
【0021】
薄型パネルから有価物であるインジウムやガラスを回収し再資源化するためには、薄型パネルを構成する部材ごとに分離し、それぞれの素材ごとに適切に再資源化することが望ましい。薄型パネルを部材ごとに分離するためには、パネルガラスの外面に接着剤を用いて貼り付けられている偏光板などの光学フィルムを分離する必要がある。光学フィルムは、接着剤により広い面積にわたりパネルガラスに貼り付けられており、手作業などにより引き剥がして分離することは非常に困難である。
【0022】
また、薄型テレビなどの最終製品として使用した薄型パネルの光学フィルムの接着剤は、製品として使用中に熱や光により劣化しており、硬化している。また、光学フィルム自体も熱や光により劣化しており、力を加えた場合に裂けやすくなっている。これにより、最終製品として使用した薄型パネルの光学フィルムを引き剥がしてパネルガラスと分離することは、さらに困難となるとともに、引き剥がし作業が危険となる。
【0023】
また、一度最終製品として使用され不要となった液晶パネルや製造工程で排出される不良品などの薄型パネルの中には、パネルガラスが破損しているものがある。そのため、不要となった薄型パネルの再資源化のためには、パネルガラスが破損した状態の薄型パネルから光学フィルムを分離することも望まれている。
【0024】
上述のように、薄型パネルから光学フィルムを分離することにより、インジウムやガラスを資源として有効に利用することができるようになる。また、パネルガラスが破損した薄型パネルから光学フィルムを分離することにより、製造工程で排出されるパネルガラスが破損した不良品などの液晶パネルを再資源化することが可能となる。
【0025】
ここで、上述した特許文献2に開示された方法は、フィルムが蒸発する温度以上で、かつ、ガラスの軟化点以下の温度に加熱し、フィルムを蒸発させることにより、フィルムをガラスから分離する方法である。しかしながらこのような特許文献2に開示された方法は、フィルムを蒸発温度以上に加熱するため、高温にする必要があり、エネルギーを消費する。また、フィルムの分解ガスを無害化するための設備が必要であり、設備コストが高くなる。
【0026】
また上述した特許文献3に開示された方法は、液晶パネルに貼り付けられた光学フィルムをパネルガラスに付いたままカットした後、カットした光学フィルムを粘着テープに粘着させ剥離する方法である。しかしながらこのような特許文献3に開示された方法は、光学フィルムをパネルガラスに付いたままカットするため、パネルガラスが破損した液晶パネルに適用することは困難である。さらに、最終製品として使用した液晶パネルに適用した場合、偏光板の劣化により、剥離中に光学フィルムが裂けてしまうなどの危険がある。また、液晶パネルを1枚毎に処理する必要があり、一度に多くの液晶パネルを処理できないためにコスト面での課題がある。
【0027】
また、上述した特許文献4に開示された方法は、液晶表示装置の廃棄物を固体熱媒体が流動している流動層に投入し、樹脂類を酸化する流動化ガスにより加熱流動させることにより、液晶表示装置の廃棄物から純度の高くリサイクル可能なガラスを回収する方法である。しかしながらこのような特許文献4に開示された方法は、光学フィルムなどの樹脂類が熱分解または酸化する温度まで熱媒体を加熱するため、多大なエネルギーを消費する。また、安全面からリサイクルプラントなどでの運用は困難である。
【0028】
さらに、上述した特許文献5には、加熱したスライサーを光学フィルムと液晶パネルとの間に挿入し、スライサーを液晶パネルに対して移動させることにより、光学フィルムを液晶パネルから剥離する方法が開示されている。しかしながらこのような特許文献5に開示された方法は、光学フィルムと液晶パネルとの間にスライサーを挿入するため、破損した液晶パネルに適用することは困難である。また、液晶パネルを1枚毎に処理する必要があり、コスト面での課題がある。
【0029】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、廃薄型パネルから、少ない労力とエネルギーにて、大がかりな設備を使用せず、安全に素材を分離し、有価物であるインジウムおよび重量の大半を占めるガラスを素材として再生利用することが可能である薄型パネルの再資源化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の薄型パネルの再資源化方法は、薄型パネルを加熱し、パネルガラスから偏光板を剥離する工程を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明における前記薄型パネルが液晶パネルであることが好ましい。
本発明の薄型パネルの再資源化方法は、薄型パネルを加熱し、偏光板とパネルガラスとの間に応力を付加することによりパネルガラスから偏光板を剥離することが好ましい。
【0032】
本発明の薄型パネルの再資源化方法において、薄型パネルの加熱温度は40℃〜150℃であることが好ましい。
【0033】
本発明の薄型パネルの再資源化方法は、加熱した液体中に前記薄型パネルを浸漬することによって前記薄型パネルを加熱することが好ましい。この場合、前記液体は水であることが好ましい。
【0034】
また本発明の薄型パネルの再資源化方法は、過熱水蒸気を用いることによって前記薄型パネルを加熱するようにしてもよい。
【0035】
本発明の薄型パネルの再資源化方法は、破砕した前記薄型パネルを容器に投入し、撹拌することによって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加することが好ましい。この場合、容器中に収容された液体中で破砕した前記薄型パネルを攪拌することがより好ましく、前記液体は水であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の薄型パネルの再資源化方法は、前記薄型パネルを回転する複数のロールに接触させることによって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加することが好ましい。
【0037】
また本発明の薄型パネルの再資源化方法は、前記薄型パネルをハンマーで打撃することよって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加することが好ましい。
【0038】
本発明の薄型パネルの再資源化方法はまた、剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を、比重分離により分別する工程をさらに含むことが好ましい。
【0039】
本発明の薄型パネルの再資源化方法においては、サイクロンを用いることによって剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を比重分離することが好ましい。
【0040】
本発明の薄型パネルの再資源化方法においては、また、薄流選別を用いることによって剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を比重分離することが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、多大なエネルギーを消費せず、破損した薄型パネルにも適用可能な、薄型パネルを素材ごとに分離することが可能となり、有価物であるインジウムおよび重量の大半を占めるガラスなど、それぞれの素材を再生利用することが可能となる薄型パネルの処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の薄型パネルの再資源化方法の好ましい一例を模式的に示すフローチャートである。
【図2】本発明における応力付加工程に好適に用いられる攪拌装置21を模式的に示す図である。
【図3】本発明における応力付加工程に好適に用いられるロール31を模式的に示す図である。
【図4】本発明における比重分離工程に好適に採用されうる薄流選別法を模式的に示す図である。
【図5】本発明における比重分離工程に好適に用いられるサイクロン式分離装置51を示す図であり、図5(a)は模式上面図、図5(b)は模式断面図である。
【図6】典型的な一例の薄型パネル1を模式的に示す断面図である。
【図7】薄型パネルの温度と偏光板の180℃引き剥がし強度との関係を測定した結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の薄型パネルの再資源化方法の好ましい一例を模式的に示すフローチャートである。本発明の薄型パネルの再資源化方法は、薄型パネルの廃棄物(廃薄型パネル)を加熱した後、パネルガラスから偏光板を剥離する工程を含むことを特徴とする。このような本発明の薄型パネルの再資源化方法によれば、薄型パネルの部材を素材ごとに分離することが可能となり、資源として有効に利用できる処理方法を提供することができる。
【0044】
本発明の薄型パネルの再資源化方法には、上述した図6に示したTFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた薄型パネル(液晶パネル)1のような従来公知の適宜の構造の薄型パネルを特に制限されることなく供することができ、図6に示した例の他にも、TN(Twisted Nematic)液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)液晶パネルなどのデューティ液晶パネルも勿論適用可能である。また、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネルも適用可能である。以下、図6に示した構造の薄型パネルを供する場合を例に挙げて、本発明の薄型パネルの再資源化方法の各工程について図1を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
本発明の薄型パネルの再資源化方法は、図1に示す例のように、廃薄型パネルを加熱する加熱工程(ステップS3)と、加熱した薄型パネルの光学フィルムとパネルガラスの間に応力を付加し、光学フィルムとパネルガラスを分離する応力付加工程(ステップS4)を基本的に含むことが好ましい。また本発明の薄型パネルの再資源化方法は、図1に示す例のように、剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を、比重分離により分別する比重分離工程(ステップS5)をさらに含むことが好ましい。また、図1に示す例のように、加熱工程(ステップS3)の前に、薄型パネルをパネルガラスの品種ごとに選別するガラス品種選別工程(ステップS1)とパネルガラスを粗破砕する粗破砕工程(ステップS2)とをさらに含むことが好ましい。
【0046】
〔1〕ガラス品種選別工程
図1に示す例では、まず、ガラス品種選別工程として、使用しているパネルガラスの種類(品種)別に、薄型パネルを選別する(ステップS1)。パネルガラスは、ガラスメーカによって、あるいはガラス品種、品番などによって組成が異なる。したがって、回収したガラスをたとえばパネルガラス用の材料として再利用するためには、多種多様なガラスを品種別に選別することが必要となる。また、回収したガラスをたとえば一般ガラス用の材料として再利用する場合にも、ある程度、ガラスを品種別に選別することが要求される場合がある。
【0047】
本発明においては、蛍光X線装置を用いて、薄型パネルのパネルガラスを品種別に選別するようにしてもよい。この場合、具体的には、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用い薄型パネルに軟X線を直接照射する。これにより、薄型パネルのパネルガラスに含まれるそれぞれの元素に特有なエネルギーをもった蛍光X線が発せられる。この蛍光X線を蛍光X線センサにてエネルギーごとにカウントすることで、薄型パネルのパネルガラスにどのような元素がどのような割合で含まれているかを測定(分析)する。パネルガラスの化学組成を品種ごとに予め調べておき、それらの値と薄型パネルのパネルガラスでの測定値とを比較することにより、パネルガラスをガラス品種ごとに短時間で、確実に、かつ経済的に選別することができる。また、薄型パネルのパネルガラスにガラス品種の表示を予め設けておくようにしてもよい。
【0048】
なお、複数の品種のパネルガラスが混合していても問題ない用途に、パネルガラスを再生利用する場合には、当該ガラス品種選別工程は省略してもよい。
【0049】
〔2〕粗破砕工程
図1に示す例では、続く粗破砕工程において、薄型パネルを粗破砕する(ステップS2)。図1に示す例のようにガラス品種選別工程(ステップS1)の後に当該粗破砕工程を行う場合には、上述したようにして選別された単一の品種のパネルガラスを使用している薄型パネルごとに行う。光学フィルムを有したままのカラーフィルタ側パネルガラスおよびTFT側パネルガラスについてそれぞれ破砕を行う。
【0050】
薄型パネルの破砕には市販の各種方式の破砕機を用いることができ、破砕機の種類は特に制限されるものではないが、塵の発生が少なく容易に破砕することができ、環境に悪影響を及ぼさず、かつ、ランニングコストが安価であるなどの観点から、2軸剪断方式の破砕機がより好ましい。また2軸剪断方式の破砕機は、サイズの揃った破砕片が得られやすいこと、微粉末の発生比率が小さく、破砕片をガラスカレットとして最終的に再利用しやすいことなどの利点も有している。破砕片の大きさは特に制限されるものではないが、後述の応力付加工程(ステップS4)での効率の観点から、1〜100mmが好ましい。
【0051】
なお、図1に示すフローチャートでは、この粗破砕工程(ステップS2)の前にガラス品種選別工程(ステップS1)を行う場合を例示しているが、この順序に限定されるものではなく、粗破砕工程を行った後にガラス品種選別工程を行うようにしてもよいし、ガラス品種選別工程を行わずに粗破砕工程を行うようにしても勿論よい。
【0052】
〔3〕加熱工程
図1に示す例では、続く加熱工程において、薄型パネルを加熱する(ステップS3)。薄型パネル表面には、図6に示したように光学フィルムが貼り付けられているため、本発明の薄型パネルの再資源化方法では、当該加熱工程で、まず光学フィルムとパネルガラスの接着力を弱め、後述の応力付加工程で効率的に分離する。光学フィルムをパネルガラスから分離することにより、光学フィルムとパネルガラスを素材ごとに分離回収することが可能となる。また、パネルガラスから弾性のある光学フィルムを分離することにより、パネルガラスを再生利用する際に、容易に粉砕することが可能となる。
【0053】
光学フィルムは、パネルガラス表面に、たとえば、アクリル系の接着剤を用いて貼り付けられている。アクリル系の接着剤を40〜150℃に加熱することにより、光学フィルムを軟化し接着力を弱めることができ、光学フィルムとパネルガラスの分離を容易にすることができるようになる。
【0054】
具体的な加熱の方法としては、たとえば、薄型パネルを液体中に浸漬する。液体の温度としては、40〜150℃が好ましく、70〜120℃がより好ましい。加熱温度が40℃未満の場合には、接着剤の軟化が充分に得られない虞がある。加熱温度が150℃を超える場合には、光学フィルムの耐熱温度近くに達してしまい光学フィルムの強度が劣化し、後述の応力付加工程(ステップS4)および比重分離工程(ステップS5)で、光学フィルムが破損してしまい充分に分離効果が得られなくなってしまう虞がある。
【0055】
薄型パネルを加熱のために浸漬させる前記液体としては特に制限されるものではなく、たとえば水、炭化水素系の有機溶媒、アルコール系の有機溶媒などを挙げることができるが、安全に作業環境上の問題を生じず加熱することか可能となることから、水を用いることが好ましい。
【0056】
加熱時間としては、10秒間から600秒間であることが好ましく、60秒間から300秒間であることがより好ましい。加熱時間が10秒間未満である場合には、充分な加熱効果が得られない虞があり、また加熱時間が600秒間を超える場合には、時間に対し効果が少なくなる傾向にある。熱湯に浸漬することで、時間を要さずに加熱することが可能となる。
【0057】
また、当該加熱工程(ステップS3)では、他の加熱方法として、たとえば、過熱水蒸気を吹き付ける方法を採用してもよい。この場合、吹き付ける過熱水蒸気の温度としては、150℃以下が好ましく、100〜120℃の範囲内であることがより好ましい。吹き付ける過熱水蒸気の温度が150℃を超える場合には、光学フィルムの耐熱温度近くに達してしまうため光学フィルムの強度が劣化し、後述の応力付加工程(ステップS4)および比重分離工程(ステップS5)で、光学フィルムが破損してしまい充分に分離効果が得られなくなってしまう虞がある。加熱時間としては、1秒間から600秒間であることが好ましく、5秒間から30秒間であることがより好ましい。具体的には、加熱水蒸気発生機構を備えたオーブンなどに薄型パネルを投入し、過熱水蒸気を発生させた状態で静置する方法が挙げられる。過熱水蒸気を用いることにより、熱伝導が促進され、すばやく加熱することが可能となる。
【0058】
このように、薄型パネルを加熱することで、光学フィルムとパネルガラスを貼り合せている接着剤の強度が、熱エネルギーによって低下する。パネルガラスおよび光学フィルム基材は、150℃ではほとんど強度が低下しないため、接着部分のみの強度が低下することになり、光学フィルムとパネルガラスとはそのままで、後述の応力付加工程で容易に分離が可能となる。
【0059】
なお、本発明においては、当該加熱工程(ステップS3)を独立した工程として行わずに、後述する応力付加工程(ステップS4)で加熱すると同時に応力付加するようにすることも勿論可能である。たとえば、後述するように、熱湯中で撹拌することにより偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加しつつ、加熱することができる。その際、上述したように、加熱温度は40〜150℃が好ましく、加熱時間は、10秒間から600秒間であるのが好ましい。また、当該加熱工程では、加熱温度を40〜150℃の好適な範囲内とすることができるのであれば、ボイラーの廃熱などを利用するようにしてもよい。
【0060】
なお、図1に示すフローチャートでは、この加熱工程(ステップS3)を応力付加工程(ステップS4)の前に行う場合を例示しているが、この順序に限定されるものではない。また、薄型パネルを破砕するとき、同時に、加熱することも可能である。
【0061】
〔4〕応力付加工程
図1に示す例では、続く応力付加工程において、光学フィルムとパネルガラスの間に応力を付加し、光学フィルムとガラスを分離する(ステップS4)。本発明の薄型パネルの再資源化方法では、破砕した前記薄型パネルを容器に投入し、撹拌することによって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加するようにすることが好ましい。
【0062】
ここで、図2は、本発明における応力付加工程に好適に用いられる攪拌装置21を模式的に示す図である。図2に示す例の攪拌装置21は、容器22と、容器22内に設置された回転体23とを備える。薄型パネルをこのような攪拌装置21に投入すると、薄型パネルは、撹拌装置21内で回転体23により応力を受け、容器22内を移動し、互いに衝突し合う。薄型パネル同士が衝突する際、光学フィルムとパネルガラスの間にも応力が加わり、接着力が弱まった接着部で光学フィルムとパネルガラスが剥離する。この方法によれば、薄型パネルどうしの衝突で応力を付加するため、刃の磨耗や容器の磨耗劣化などが生じにくいといった利点がある。
【0063】
薄型パネルは、製品から取り出したままの状態で撹拌装置21に投入してもよく、また、製品から取り出したものを粗破砕してから攪拌装置21に投入してもよい。製品から取り出したままの状態で薄型パネルを撹拌装置21に投入した場合には、薄型パネルは撹拌装置21内で破砕されると同時に光学フィルムとパネルガラス間に応力が働くため、光学フィルムとパネルガラスが分離される。
【0064】
また、製品から取り出したものを粗破砕してから攪拌装置21に投入した場合は、破砕にエネルギーが消費されずに、光学フィルム剥離にエネルギーが消費されるため、効率は良くなる。この場合、粗破砕のサイズとしては、上述したように1〜100mmが好ましい。薄型パネルを50mm以下のサイズに粗破砕することにより、撹拌装置21に投入しやすくなるとともに撹拌によるせん断応力を加えやすくなる。また、薄型パネルを1mm以下に粗破砕すると、薄型パネルの衝突時に生じる光学フィルムとパネルガラスの応力が小さくなり、光学フィルムとパネルガラスが剥離しにくくなる。
【0065】
撹拌装置21の回転体23の回転数としては、20000rpm以下が好ましい。20000rpm以上の回転速度となると、エネルギー消費に対して効率が低くなる。また、応力を十分に付加し、短時間で処理するためには、回転体23の回転数は1000rpm以上が好ましい。
【0066】
また本発明では、容器中に収容された液体中で破砕した前記薄型パネルを攪拌するようにしてもよい。これにより、微粉が、飛散することがなくなり、作業環境を悪化させることがなくなる。また、液晶パネルに材料として使用されているITOの微粉末は毒性が懸念されており、液体中で撹拌することにより液晶パネルの微粉の飛散を防ぐことができる。また、容器中に加熱した液体を収容し、その中で薄型パネルを撹拌することにより、接着剤の粘着力を弱めながら撹拌され、光学フィルターの分離効率が向上する。なお、液体としては特に制限されないが、攪拌作業が安全であり、使用後の処理が容易であるため、水が好適に用いられる。
【0067】
また、図3は、本発明における応力付加工程に好適に用いられるロール31を模式的に示す図である。本発明における応力付加工程では、前記薄型パネルを回転する複数のロールに接触させることによって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加するようにしてもよい。この場合には、上述した図2に示したような攪拌装置21に代えて、図3に示すような回転する複数のロール31の隙間に薄型パネル1を通すようにする。このような複数のロール31を用いる場合、回転する複数のロール31の回転速度がそれぞれ異なることがより好ましい。これにより、薄型パネルにせん断応力が加わり、光学フィルムとパネルガラスとが分離される。ロール31の回転数としては、10〜1000rpmが好ましい。ロール31の回転数が10rpm未満である場合には、処理時間が長くなる傾向にあるためであり、また、ロール31の回転数が1000rpmを超える場合には、ロール間の通過時間が短くなり十分な応力が付加されないという傾向にあるためである。
【0068】
応力付加工程に図3に示すようなロール31を用いる場合、薄型パネルは、製品から取り出したままの状態でロール31の隙間に投入することが好ましい。これにより、ロール31と薄型パネルとの接触面積が大きくなり、せん断応力が大きくなる。なお、破損した状態の薄型パネル、粗破砕した薄型パネルをロール31の隙間に投入するようにしても勿論よい。
【0069】
ロール31は、表面に突起32が形成されたものを用いることが好ましい。ロール表面に突起32が形成されていることで、薄型パネルとの摩擦力が大きくなり、光学フィルムとパネルガラスとの間に加わるせん断応力を大きくすることができる。
【0070】
また本発明における応力付加工程では、上述した攪拌装置21(図2)、複数のロール31を用いずに、前記薄型パネルをハンマーで打撃することよって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加するようにしてもよい。この場合には、短時間で大きな応力を付加できるという利点がある。ハンマーとしては従来公知の適宜のものを特に制限なく用いることができる。この場合には、作業者がハンマーで薄型パネルを打撃するようにしてもよいし、ハンマーを備える市販の装置を用いるようにしてもよい。
【0071】
応力付加工程を経た後、薄型パネルからは、光学フィルムとパネルガラスとの混合物が得られる。パネルガラスの外面からは光学フィルムが分離されており、光学フィルムが貼り付けられた液晶パネルのように、光学フィルムの弾性で破砕が阻害されることがないため、ガラスも粉砕されている。したがって後述のパネルガラス処理工程(ステップS6)で、インジウムを塩酸などで溶出する際に、塩酸が浸透しやすく高い溶出効率が得られる。また、破砕片サイズに応じて分級し、粒径に応じて、種々のガラスのリサイクル用途に再生利用することができる。たとえば、粒径の比較的大きな破砕片は、そのまま溶融窯に投入することができ、ガラスを再溶融する用途などに用いることができる。また、微粉はセメント材料および建材などに再生利用することができる。
【0072】
得られた光学フィルターと薄型パネルガラスの混合物は、後述する比重分離工程(ステップS5)で光学フィルムとパネルガラスに分離され、素材ごとに回収し、それぞれの素材ごとに適切に再生利用することができる。
【0073】
〔5〕比重分離工程
図1に示す例では、続く比重分離工程において、応力付加工程(ステップS4)で得られた光学フィルムとパネルガラスとの混合物から、比重分離により、光学フィルムとパネルガラスに分離する(ステップS5)。光学フィルムは、基材がTACなどからなり、比重は1.2〜1.4である。したがって、パネルガラスの比重2.3〜2.6と比較し小さいため、比重差を用いることで、光学フィルムとパネルガラスとに分離することができる。比重分離の具体的な方法としては、たとえば、サイクロン、浮遊選別など従来公知の技術を挙げることができる。
【0074】
図4は、本発明における比重分離工程に好適に採用されうる薄流選別法を模式的に示す図である。比重差を利用した分離方法として、たとえば、薄流選別法を利用することができる。傾斜した振動テーブル41上をテーブル面に沿って流れる水の中に、光学フィルムとパネルガラスとの混合物を投入する方法が挙げられる。このような方法において、軽比重粒子、すなわち光学フィルムは、薄流に乗ってより遠くまで流れるため、重比重粒子すなわちパネルガラスと分離することが可能となる。振動テーブルに複数の桟42が平行に設けられた、図4に示すようなウィルフレーテーブルを用いることで、重比重粒子が桟の隙間に沈降するようにした方法を使用することもできる。
【0075】
図4に示す例のようにウィルフレーテーブルを用いて薄流選別を行う場合、テーブル41は、そのテーブル面(上面)が、図4の右側から左側へ向かうにつれて上方から下方へと3〜5°傾斜しており、上方から供給された水が下方へと流れるように構成されている。また、テーブルには、低い複数の桟42が水平方向に並んで設けられており、また、テーブルの図4右側の部分の上方に、光学フィルムとパネルガラスとの混合物を供給するための供給口43が設けられている。
【0076】
このようなウィルフレーテーブルを用いて薄流選別において、供給された光学フィルムとパネルガラスとの混合物のうち、パネルガラスは桟の隙間へと沈降する。桟の隙間に沈降したパネルガラスは、テーブル41の左右の揺動速度が、左へ速く動き、右へゆっくりと動くため、慣性力により左側へと移動する。それに対し光学フィルムは、沈降せず薄流に乗って水とともに下方へと流れる。このようにして、テーブルの図4の左方にパネルガラス、下方に光学フィルムと分離される。
【0077】
また、本発明における比重分離工程では、図4に示した薄流選別法に代えて、サイクロンを用いてもよい。ここで、図5は、本発明における比重分離工程に好適に用いられるサイクロン式分離装置51を示す図であり、図5(a)は模式上面図、図5(b)は模式断面図である。図5に示すように、粉末導入口51から導入された光学フィルムとパネルガラスとの混合物を含む気流は、装置内面の側面に沿って旋回しながら下方へと流れ、装置下部の円錐部で加速される。加速された気流は、装置下端に達し反転上昇する。上昇した気流は、中央部を同一方向に旋回し、排出口52から排出される。このとき、比重の大きいパネルガラスは、遠心力によって分離され、側面に沿って落下し、沈降する。沈降したパネルガラスは、排出口52から排出される。比重の小さい光学フィルムは、気流とともに上昇し、排気口53から排出される。
【0078】
また本発明における比重分離工程では、比重差を利用した分離方法として、たとえばジグ選別機、エアーテーブルなどを利用してもよい。
【0079】
このようにして、応力付加工程(ステップS4)で得られた光学フィルムとパネルガラスとの混合物を、比重差を利用した分離方法によって、光学フィルムとパネルガラスとに分けることができる。分離された光学フィルムは素材ごとに分別して再生利用することができる。また、光学フィルムは熱回収することもできる。パネルガラスは後述のパネルガラス処理工程で希少金属を回収、ガラスを回収することができる。
【0080】
〔6〕パネルガラス処理工程
図1には、上述した比重分離工程(ステップS5)で分離回収されたパネルガラスを処理し、パネルガラスからインジウムを分離回収するパネルガラス処理工程(ステップS6)をさらに含む例が示されている。比重分離工程(ステップS5)で分離回収されたパネルガラスには、透明電極として希少金属であるインジウムを含むインジウムスズ酸化物(ITO)が付着している。このため、たとえば塩酸に浸漬してITOを溶解し、インジウム含有塩酸溶液を中和することで、水酸化インジウムとして回収することができる。インジウム含有塩酸溶液を得ることにより、アニオン交換樹脂を用いた方法などによりインジウムを濃縮し回収することが可能となる。
【0081】
インジウムを回収した後のパネルガラスは、上述したガラス品種選別工程(ステップS1)を行っている場合には、当該工程において既にガラス品種別に選別されている。このため、回収されたパネルガラスは、単一の品種のガラスであり、パネルガラスを原料ガラスに添加混合することにより、または、原料ガラスに置き換えて、再使用(マテリアルリサイクル)することができる。すなわち、破砕片サイズに応じて分級し、粒径に応じて種々のガラスのリサイクル用途に再生利用することができる。たとえば、粒径の比較的大きな破砕片は、そのまま溶融窯に投入することができ、ガラスを再溶融し板ガラスなどの用途に用いることができる。また、微粉はセメント材料および建材などに再生利用することができる。
【0082】
この方法によれば、燃焼などのように多大なエネルギーを消費せず、強酸や強アルカリなどの処理困難な薬液も使用しないため、低環境負荷の方法であり、家電リサイクルプラントなどにおいて実施可能であり、効率的な分離が可能となる。また、有価物であるインジウムやガラスなどを効率的に回収することができ、資源有効利用が可能となる。
【0083】
なお、本発明の薄型パネルの再資源化方法は、上述したように加熱工程(ステップS3)(好ましくは加熱工程(ステップS3)および応力付加工程(ステップS4))を少なくとも含んでいればよく、図1のフローチャートに示した手順に限定されるものではなく、図1に示したステップの一部が削除または置換されていてもよく、また、図1に示されていないステップが必要により付加されてもよい。
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
<実施例1>
薄型パネルの偏光板剥離強度の温度依存性を測定した。市販の液晶テレビから取り出した液晶パネルを、カラーフィルタ側パネルガラスとTFT側パネルガラスに分離し、カラーフィルタ側パネルガラスを10mm×50mmのサイズに切断したものをサンプルとした。サンプル温度が20℃、60℃、80℃のときの偏光板の剥離強度を、島津製作所製オートグラフAG−Iを用いて、180℃引き剥がし試験にて評価した。180℃引き剥がし試験はJIS Z0237に従って行った。剥離速度は0.2mm/minとした。
【0086】
図7は、偏光板剥離強度の温度依存性の測定結果を示すグラフであり、薄型パネルの温度と偏光板の180℃引き剥がし強度との関係を測定した結果の一例を示している。20℃の時の剥離強度を基準とすると、保持率は60℃のときの強度保持率は57%、80℃のときの強度保持率は43%となり、加熱により、偏光板の剥離強度が小さくなり、偏光板とパネルガラスの分離が容易となることを確認した。
【0087】
<実施例2>
薄型パネルを50mmに粗破砕し、表1に示す温度の熱湯に60秒間浸漬し加熱した。その後、図2に示したような回転体を備えた撹拌装置を用いて薄型パネル撹拌した。撹拌装置の容器容量は200mLとした。撹拌装置の回転数は2000〜10000rpmの間で変動させた。また撹拌時間は、60秒間とした。このときの光学フィルム上のパネルガラスの残存率(%)を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1 薄型パネル、2a カラーフィルタ側パネルガラス、2b TFT側パネルガラス、3 シール樹脂体、4 液晶層、5 光学フィルム、6 カラーフィルタ、7 反射防止膜、8 透明導電膜、9 配向膜、10 画素電極、11 バス電極、12 絶縁膜、21 撹拌装置、22 容器、23 回転体、31 ロール、32 突起、41 テーブル、42 桟、43 供給口、51 サイクロン式分離装置、52 排出口、53 排気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型パネルを加熱し、パネルガラスから偏光板を剥離する工程を含む、薄型パネルの再資源化方法。
【請求項2】
前記薄型パネルが液晶パネルであることを特徴とする請求項1に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項3】
薄型パネルを加熱し、偏光板とパネルガラスとの間に応力を付加することによりパネルガラスから偏光板を剥離することを特徴とする請求項1または2に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項4】
薄型パネルの加熱温度が40〜150℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項5】
加熱した液体中に前記薄型パネルを浸漬することによって前記薄型パネルを加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項6】
前記液体が水であることを特徴とする請求項5に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項7】
過熱水蒸気を用いることによって前記薄型パネルを加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項8】
破砕した前記薄型パネルを容器に投入し、撹拌することによって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加することを特徴とする請求項3に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項9】
容器中に収容された液体中で破砕した前記薄型パネルを攪拌することを特徴とする請求項8に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項10】
前記液体が水であることを特徴とする請求項9に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項11】
前記薄型パネルを回転する複数のロールに接触させることによって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加することを特徴とする請求項3に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項12】
前記薄型パネルをハンマーで打撃することよって、前記偏光板と前記パネルガラスとの間に応力を付加することを特徴とする請求項3に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項13】
剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を、比重分離により分別する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項14】
サイクロンを用いることによって剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を比重分離することを特徴とする請求項13に記載の薄型パネルの再資源化方法。
【請求項15】
薄流選別を用いることによって剥離した偏光板とパネルガラスの混合物を比重分離することを特徴とする請求項13に記載の薄型パネルの再資源化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−167661(P2011−167661A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35896(P2010−35896)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】