説明

薄板形状でのガラスセラミック素材の製造方法、それらを含んだ薄板及びそれらの使用方法

パネル材又は床材として建築に使用可能な大寸法のシート形状のガラスセラミック素材が得られる製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック素材、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、一般には酸化物である結晶性化合物を溶融し、次いでその溶融物のかたまりを冷却することによって得られることが知られている。
【0003】
一方で、ガラスセラミック素材を得るには、適切に混合された酸化物を溶融し、このようにして得られた溶融物のかたまりを規定の操作(静的又はローラー圧延、遠心分離、注入、ブロー、押し出し、熱間屈曲)で急速に冷却させ、その後半完成品を、(均質又は不均質な)結晶性核が生じて成長するような適切な熱処理の工程に置かれる。
【0004】
結晶性の相及び特徴的な微細構造の存在は、アモルファスな構造によって決定付けられるものであって、多様な分野で特に有用で、ガラスに類似する特性とは全く異なるすぐれた物理化学的な特性(硬度、光沢、応力及びエッチングへの抵抗性等)を、製造当初のガラスから最終的な素材に付与する。
【0005】
ガラス及びガラスセラミックの処理工程は明らかに全く異なる。それは上述のように製造の第一段階を構成し、様々な規定の操作(静的又はローラー圧延)で迅速に冷却されるような溶融した酸化物全体の連続的な処理が不可能であるためである。
【0006】
一方で、ガラスの製造で用いられる通常の製造工程をガラスセラミック素材の原料を融解したもののかたまりに適用できるということは、工程を簡略化するという点でも非常に有用であるのは明白であるし、所望の寸法をもって極めて容易に最終の素材を得ることができるという点でも有用なのは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願出願人は、ガラスセラミックのために溶融した酸化物のかたまりを、ガラス製造の工程で一般に使用される製造設備と同様のものを使用し、同様の方法をもって、製造することを可能とする方法を発明した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実施例で得られるシートの大きさは、例えば2.00×3.00メートルまでであり、それらは、床材及びパネル材として建築で使用し得るものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[発明の詳細な説明]
本発明は、酸化物の適切な混合物の融解、一般のガラス製造工程(圧延、型どり、ブロー等)による溶融物のかたまりの処理及び結晶化工程で得られる上記素材のその後の処理からなる方法における前述の問題点を克服するものである。
【0010】
本発明によれば、原料となる酸化物の混合物は、本質的にSiO、Al及び LiO、そしておそらくは他の酸化物が存するものからなる。
【0011】
好ましくは、本発明においては、前述の3つの構成要素の百分率(最終の混合物の全重量に対する重量百分率)は、SiO:50%〜80%;Al:5%〜30%;LiO:3%〜20%である。
【0012】
おそらく存在するであろう他の酸化物は、ZnO、P、KO、NaO、CaO、MgO、BaOからなる群から選択される。
【0013】
より好ましくは、前述の酸化物は、混合物中に、それぞれ以下の範囲からなる重量百分率で表されるものが存在してもよい;ZnO:0.1〜3%;P:0.1〜5%;KO:1〜5%、NaO:0.1〜6%、CaO:0.1〜6%;MgO:0.1〜6%、BaO:0.1〜5%;ZrO:0.1〜4%。
【0014】
上述の酸化物の混合物は融点が1500℃から1550℃であって、そのため、ガラスを溶融させる通常のガス窯で融解でき、未融解の塊や気泡がなく、そこから更なる成形の工程を可能とするための粘度を有する溶融された素材を可能とする。
【0015】
成形の工程とそれに続く焼き鈍しは、ガラスの成形で用いられている通常の処理条件で行われる。
【0016】
例えば、融解された素材は、圧延システムを通過すると同時に所望の厚さまで打ち延ばされ、次工程に送られる。
【0017】
続く工程では、そのようにして成形された連続したシートが、圧延による成形の工程でガラスにおそらくは生じたであろう機械的な応力を取り除くため、焼き鈍し窯と呼ばれる温度管理された窯に入れられる。
【0018】
焼き鈍し窯から取り出された後、シートのヘリは切除され、まっすぐに矯正され、適切な大きさとなるように切断される。この工程では、例えば、大寸法のシートを連続的に生産することが可能となる。
【0019】
又、溶融物のかたまりは、約logη=4の粘度で処理されることが好ましい。
【0020】
一般に、圧縮工程で融解した素材のかたまりは、粘度がlogη=13となるまで急冷され、蓄積された応力はおよそ1時間で散逸する。
【0021】
更に、混合物の組成において、本発明に係る方法では、熱的な結晶化工程も重要である。
【0022】
前述の熱的な工程は、温度は550℃から920℃、時間にして2時間から6時間行われなければならず、全工程は12時間から25時間継続されることになる。
【0023】
時間と温度とを前述の範囲内で変化させることにより、それぞれ、素材の外観的な特徴を変化させることも可能である。
【0024】
例えば、550℃から開始して20℃毎に段階的に温度を増加させるように変化させると、チンダル現象による青化効果を経て、半透過性から完全に不透明な白色を呈するまでの範囲での素材が得られる。
【0025】
本発明によるガラスセラミック素材の処方を以下にいくつか示す。
【0026】
[実施例1]
酸化物の混合物は以下の組成を有する。
酸化物 重量%
SiO 78.61
Al 5.35
ZnO 0.52
LiO 11.23
1.95
O 2.34。
【0027】
酸化物の混合物は、温度が1450℃のガス炉(酸素−メタン)で融解される。およそ36時間後、溶融された素材は完全に精製された態様を呈し、処理温度(logη=4)において既知のガラス製造技術によって、所望の形状及び寸法に成形される。この場合、溶融されたかたまりは、圧縮工程で、logη=13となる温度まで急冷され、蓄積された応力を散逸するために、およそ1時間その状態が維持される。
【0028】
結晶化工程は、シートが1時間、820℃に維持されることによって行われ、その後、外界温度に達するまで12時間をかけて、継続的に温度が下げ続けられる。
【0029】
820℃で130分間の結晶化の後、回折による分析は以下の様相を呈する:ベータ石英[11−0252]及び珪酸リチウムLiSi[40−0376](JCPDS(粉末の回折における共同委員会の標準)の数値)。
【0030】
機械的な特徴:
微細硬度:740Hv(負荷=100g)。
【0031】
その他の特徴:
【表1】

[実施例2]
酸化物の混合物は以下の組成を有する。
酸化物 重量%
SiO 74.61
Al 9.35
ZnO 0.52
LiO 11.23
1.95
O 2.34。
【0032】
酸化物の混合物は、温度が1450℃のガス炉(酸素−メタン)で融解される。およそ36時間後、溶融された素材は完全に精製された態様を呈し、処理温度(logη=4)においてガラス製造技術によって、所望の形状及び寸法に成形される。この場合、溶融されたかたまりは、圧縮工程で、logη=13となる温度まで急冷され、蓄積された応力を散逸するために、およそ1時間その状態が維持される。
【0033】
結晶化工程は、シートが1時間、900℃に維持されることによって行われ、その後、外界温度に達するまで12時間をかけて、継続的に温度が下げ続けられる。
【0034】
900℃で60分間の結晶化の後、回折による分析は以下の様相を呈する:珪酸リチウムアルミニウム[35−0794]及び珪酸リチウムLiSi[40−0376]。
【0035】
機械的な特徴:
微細硬度:832Hv(負荷=100g)。
【0036】
その他の特徴:
【表2】

[実施例3]
酸化物の混合物は以下の組成を有する。
酸化物 重量%
SiO 75.60
Al 8.35
ZnO 0.50
LiO 9.75
1.95
O 2.35
NaO 1.00
CaO 0.50。
【0037】
酸化物の混合物は、温度が1450℃のガス炉(酸素−メタン)で融解される。およそ36時間後、溶融された素材は完全に精製された態様を呈し、処理温度(logη=4)においてガラス製造技術によって、所望の形状及び寸法に成形される。この場合、溶融されたかたまりは、圧縮工程で、logη=13となる温度まで急冷され、蓄積された応力を散逸するために、およそ1時間その状態が維持される。
【0038】
結晶化工程は、およそ4時間かけて820℃まで温度を上げて実行され、そのまま4時間維持し、その後、外界温度に達するまで12時間をかけて、継続的に温度が下げ続けられる。
【0039】
820℃で4時間の結晶化の後、回折による分析は以下の様相を呈する:珪酸リチウムアルミニウム[21−0503]及び珪酸リチウムLiSi[40−0376]。
【0040】
機械的な特徴:
微細硬度:830Hv(負荷=100g)。
【0041】
その他の特徴:
【表3】

前述の実施例と同様に、以下の酸化物の混合物を用いて、同様の結果が得られる。
【0042】
【表4】

実施例における先例で得られるシートの考えられる大きさは、例えば2.00×3.00メートルまでであり、それらは、上述の特異な長所によって、床材及びパネル材として建築で使用し得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミック素材の製造のために酸化物の混合物を融解し、
こうした得られたガラス質のかたまりを、ガラスの処理及び製造で一般に用いられている操作と設備を用いて処理し、
こうして得られた素材を熱的な結晶化工程で処理することによるシート形状のガラスセラミック素材の製造方法。
【請求項2】
ガラスセラミック素材のための前記酸化物は、SiO、Al及びLiOからなる酸化物の混合物からなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合物は、SiO:50%〜80%;Al:5%〜30%;LiO:3%〜20%からなり、おそらくは他の酸化物が存在する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記他の酸化物は、ZnO、P、KO、NaO、CaO、MgO、BaOからなる群から選択される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記酸化物は、その混合物中に、それぞれ以下の範囲からなる重量百分率で表されるものが存在してもよい、請求項4に記載の製造方法。
ZnO:0.1〜3%;P:0.1〜5%;KO:1〜5%、NaO:0.1〜6%、CaO:0.1〜6%;MgO:0.1〜6%、BaO:0.1〜5%;ZrO:0.1〜4%。
【請求項6】
熱的な結晶化工程は、最終的な冷却前であり、製造方法の最後の段階であって、温度は550℃から920℃、時間にして2時間から6時間、全工程は12時間から25時間行われる、請求項1乃至6に記載の製造方法。
【請求項7】
結晶化工程は、550℃から開始して20℃毎に段階的に温度を増加させるように変化させて行われる、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
以下の組成を有する、請求項1乃至7に記載の製造方法のための酸化物の混合物。
a)SiO 78.57
Al 5.35
ZnO 0.52
LiO 11.23
1.95
O 2.34;
b)SiO74.47
Al 9.35
ZnO 0.52
LiO 11.23
1.95
O 2.34
c)SiO 75.50
Al 8.35
ZnO 0.50
LiO 9.75
1.95
O 2.35
NaO 1.00
CaO 0.50
d)SiO 77.51
Al 5.35
ZnO 1.52
LiO 10.23
2.95
O 2.34
e)SiO 78.46
Al 5.35
ZnO 4.52
LiO 7.23
1.95
MgO 1.00
f)SiO78.59
Al 5.36
ZnO 0.52
LiO 11.24
1.95
MgO 3.00
O 2.34
g)SiO 75.13
Al 8.31
ZnO 0.52
LiO 9.68
1.94
O 2.33
BaO 0.93
ZrO 0.93
【請求項9】
2.00×3.00メートルまでの寸法を有するガラスセラミック素材のシート。

【公表番号】特表2010−503601(P2010−503601A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527843(P2009−527843)
【出願日】平成19年9月17日(2007.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059787
【国際公開番号】WO2008/034797
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(507185118)コロロッビア イタリア ソシエタ ペル アチオニ (7)
【Fターム(参考)】