説明

薄板状材料搬送用エアテーブル及び薄板状材料搬送装置

【課題】クリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、薄板状材料の大きな浮上量が得られる薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備えた薄板状材料搬送装置を提供する。
【解決手段】薄板状材料搬送用エアテーブル14は、ガラス基板12の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔16が形成された上面板18と、上面板18の下に上面板18に接して設置された多孔質フィルム20と、多孔質フィルム20を下方から支持するように設置されたメッシュ部材22と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いる大型で薄いガラス基板のような薄板状材料を非接触で支持する薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備える薄板状材料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイのガラス基板は僅かな傷や埃でも品質に大きく影響するため、このようなガラス基板の搬送においてはガラス基板の表面に傷が生じたり異物が付着しないようにガラス基板を平面に近い形状に保持しつつ所定の搬送面に沿って滑らかに搬送することが要求されている。
【0003】
一方、液晶ディスプレイでは、ガラス基板のサイズがますます大型化しており、例えば第8世代においては、W2200mm×L2500mmという大きさに比べて厚さは0.5〜0.7mm程度と非常に薄いため、ガラス基板を水平に搬送する際に、その外周端部のみならず、これよりも内側の部分も支持しなければ中央部が大きく垂れ下がってしまう。
【0004】
そこでガラス基板の搬送装置は、ガラス基板を全面においてできるだけ均等に支持し、平面に近い形状に保持して搬送するように工夫されている。
【0005】
例えば、搬送面の搬送方向及び搬送方向に垂直な幅方向に適宜なピッチで複数のローラを設置し、これら複数のローラでガラス基板を下方から支持して駆動する搬送装置が知られている。
【0006】
しかしながら、複数のローラでガラス基板を下方から支持して駆動する搬送装置は、ガラス基板の大型化に伴ってローラ、軸、軸受等の部品点数や組立工数が増加するため製造コストの増大という問題がある。更に、部品点数の増大によりメンテナンスコストが増大するという問題もある。又、ガラス基板がローラとの接触とローラからの離間とを繰り返すため振動が生じ、これにより騒音や発埃したり、ガラス基板の表面が欠損することがあり、ローラの増加により騒音や埃が一層発生しやすくなるという問題がある。又、軸の長尺化による軸の真直度の低下や撓み量の増大によりローラの回転精度が低下し、この点でも騒音や埃が発生しやすくなったり、ガラス基板の表面が欠損しやすくなるという問題もある。
【0007】
これに対し、上面板に多数の給気孔が形成されたエアテーブルを用いてガラス基板を浮上させつつエアの圧力で駆動して非接触で搬送する搬送装置が知られている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【0008】
又、ガラス基板の幅方向の中央近傍にはエアテーブルを設置してガラス基板の中央部の垂れ下がりを抑制し、ガラス基板における搬送方向に垂直な幅方向の両端近傍をローラで下方から支持してガラス基板を駆動するようにした搬送装置が知られている(例えば特許文献4、5参照)。
【0009】
尚、エアテーブルの上面板としては、低コストで入手が容易なパンチングメタル等が用いられることが多い。
【0010】
しかしながら、パンチングメタルの孔の直径は通常1〜10mm程度であり、このような大きさの給気孔からガラス基板を浮上させるために充分な量の空気を噴射すると、空気の流速が過度に速くなってしまうという問題がある。
【0011】
より詳細に説明すると、ガラス基板の搬送装置はクリーンルーム内で使用されることが多いが、クリーンルームの清浄空気の下降気流の流速が500mm/sec程度であるのに対し、直径が1〜10mm程度の給気孔から噴射する空気の流速は900〜2500mm/sec程度でクリーンルームの清浄空気の下降気流よりも著しく速いため、クリーンルーム内の空気の乱れを生じさせるという問題がある。又、このような空気の乱れにより、却ってガラス基板に埃等の異物が付着しやすくなることもある。尚、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制するためには、エアテーブルから噴射する空気の流速をクリーンルームの清浄空気の下降気流の流速よりも小さく抑制することが好ましい。
【0012】
これに対し、セラミック等の多孔質材料で上面板を構成したエアテーブルが知られている(例えば特許文献6参照)。
【0013】
又、パンチングメタル等の上面板の下に樹脂、セラミック等の多孔質の板材や布、紙等を設置したエアテーブルが知られている(例えば特許文献7参照)。
【0014】
このように、多孔質の板材や布、紙等を介して空気を噴射することにより、給気孔から噴射される空気は気流の分布が均一化され、気流の乱れが抑制される。
【0015】
【特許文献1】特開平10−139160号公報
【特許文献2】特開平11−268830号公報
【特許文献3】特開平11−268831号公報
【特許文献4】特開2003−63643号公報
【特許文献5】特開2005−29359号公報
【特許文献6】特開2004−307152号公報
【特許文献7】特開2004−345744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、セラミック等の多孔質材料で上面板を構成したエアテーブルやパンチングメタル等の上面板の下に樹脂、セラミック等の多孔質の板材を設置したエアテーブルは、実際には樹脂、セラミック等の多孔質の板材の通気抵抗が大きいため、噴出できる空気の流量が少なく、クリーンルーム内の空気の乱れは抑制されるが浮上量が小さいという問題がある。
【0017】
より詳細には、ガラス基板の浮上量(ガラス基板とエアテ−ブルの上面との隙間)が0.1〜0.5mm程度と小さく、ガラス基板とエアテーブルとの接触を確実に防止することが困難であるという問題がある。又、浮上量が小さいため、複数のエアテーブルを並べて設置する場合、これらの上面の高さをそれだけ高精度で一致させる必要があり、設置作業が煩雑で設置工数が大きいという問題がある。尚、ガラス基板とエアテーブルとの接触を確実に防止するためには浮上量が1mm以上であることが好ましい。
【0018】
又、パンチングメタル等の上面板の下に布、紙等を設置したエアテーブルは、布、紙等の耐久性が問題であると共に、布や紙が新たな発塵の発生源となりうるという問題もある。
【0019】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであってクリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、薄板状材料の大きな浮上量が得られる薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備えた薄板状材料搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、薄板状材料の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔が形成された上面板と、上面板の下に上面板に接して設置された多孔質フィルムと、多孔質フィルムを下方から支持するように設置されたメッシュ部材と、を有する薄板状材料搬送用エアテーブルにより上記目的を達成するものである。
【0021】
又、本発明は、薄板状材料の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔が形成された上面板と、上面板の下に設置された多孔質フィルムと、多孔質フィルム及び上面板の間に挟まれて設置されたメッシュ部材と、を有する薄板状材料搬送用エアテーブルにより上記目的を達成するものである。
【0022】
これらの薄板状材料搬送用エアテーブルは、多孔質フィルムを介して上面板の給気孔から空気が噴射されるので、多孔質の板材を備えるエアテーブルと同様に気流の乱れが抑制されて上面板の給気孔から空気が噴射される。又、薄い多孔質フィルムは多孔質の板材よりも通気抵抗が小さいので、多孔質の板材を用いる場合よりも、給気孔から噴射される空気の流量を増大させることができる。従って、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、大きな浮上量が得られる。更に、多孔質フィルムは発塵の発生源にもならない。
【0023】
又、多孔質フィルムが上面板の下に上面板に接して設置される場合、上面板における給気孔が形成されていない部分と多孔質フィルムとが密着し、多孔質フィルムの開口面積がそれだけ小さくなるため、上面板の給気孔から噴射される空気の流量が抑制されるが、多孔質フィルムの下方における空気の圧力を比較的高くできるので、給気孔から噴射される空気の圧力も比較的高くでき、これにより大きな浮上量が得られる。即ち、この構成は薄板状材料に比較的圧力が高い空気を噴射することで大きな浮上量を得る高圧力型のエアテーブルに適している。
【0024】
又、この構成は、多孔質フィルムを下方から支持するように多孔質フィルムの下にメッシュ部材が設置され、薄い多孔質フィルムがメッシュ部材で補強されているので、多孔質フィルムの耐久性を高めることができる。
【0025】
一方、メッシュ部材が多孔質フィルム及び上面板の間に挟まれて設置される場合は、上面板における給気孔が形成されていない部分と多孔質フィルムとの間に通気路が形成されるので、多孔質フィルムの実質的な開口面積がそれだけ大きい。従って、給気孔から噴射される空気の圧力は小さくなるが、給気孔から噴射される空気の流量を一層増大させることができるので、この場合も大きな浮上量が得られる。即ち、この構成は、薄板状材料に比較的流量が多い空気を噴射することで大きな浮上量を得る大流量型のエアテーブルに適している。
【0026】
又、多孔質フィルムはその上側よりも下側の圧力が高いため、上面板の給気孔内に張り出すように付勢されるが、メッシュ部材が多孔質フィルム及び上面板の間に挟まれて設置されているので、給気孔内への多孔質フィルムの張り出しが抑制される。即ち、この場合も、薄い多孔質フィルムがメッシュ部材で補強されており、多孔質フィルムの耐久性を高めることができる。
【0027】
尚、メッシュ部材が、多孔質フィルムを下方から支持するように該多孔質フィルムの下に設置される下側位置と、多孔質フィルム及び上面板の間に挟まれて設置される上側位置と、の両方の位置に設置可能である構成としてもよい。
【0028】
このようにすることで、上述のような高圧力型のエアテーブルから大流量型のエアテーブルへの構成の変更及びその逆の構成の変更を容易に行うことができる。
【0029】
又、上面板の給気孔に連通する位置に通気孔が形成された支持板が上面板の下に設置され、多孔質フィルムとメッシュ部材とが、上面板と支持板との間に挟まれて設置された構成としてもよい。
【0030】
この構成は簡単であると共に多孔質フィルムとメッシュ部材の設置作業が容易である。又、上記のようにメッシュ部材の設置位置を上側位置から下側位置設置に変更する作業やその逆の作業も容易である。
【0031】
又、本発明は、以上のいずれかに記載の薄板状材料搬送用エアテーブルを備えることを特徴とする薄板状材料搬送装置により、上記目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、薄板状材料の大きな浮上量が得られる薄板状材料搬送用エアテーブル及びこれを備えた薄板状材料搬送装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明の好ましい実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る薄板状材料搬送装置10は、例えば大型のLCD用のガラス基板(薄板状材料)12を、薄板状材料搬送用エアテーブル14で非接触で支持して搬送するものであり、薄板状材料搬送用エアテーブル14の構造に特徴を有している。
【0035】
図2に示されるように、薄板状材料搬送用エアテーブル14は、ガラス基板12の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔16が形成された上面板18と、上面板18の下に上面板18に接して設置された多孔質フィルム20と、多孔質フィルム20を下方から支持するように設置されたメッシュ部材22と、を有している。
【0036】
又、上面板18の下には、上面板18の給気孔16に連通する位置に通気孔24が形成された支持板26が設置され、多孔質フィルム20とメッシュ部材22は、上面板18と支持板26との間に挟まれて設置されている。
【0037】
尚、薄板状材料搬送用エアテーブル14は、ガラス基板12の搬送方向に対して垂直な幅方向に複数(本第1実施形態では4台)備えられている。
【0038】
薄板状材料搬送用エアテーブル14は、略直方体の箱体である。
【0039】
上面板18は、該箱体の上面部を構成している。上面板18は、具体的には、厚さが0.5〜3mmの板材である。面板18の材料としては、ステンレス、アルミ、各種合金等を用いることができる。図3に示されるように、給気孔16は直径が6〜50mmの円形であり、8〜100mmのピッチ(中心間のピッチ)で多数形成されている。
【0040】
尚、上面板18には、その外周に沿って下方に突出する側壁部28が設けられている。上面板18及び側壁部28は、上方に開口する箱体の基部30の側壁部30Aの外側に上方から嵌合し、側壁部28において側壁部30Aと締結部材32で締結されている。
【0041】
多孔質フィルム20は、厚さが0.1〜3mmである。多孔質フィルム20には、図4に模式的に示されるように、平均孔径が10〜50μmの微細な孔が、気孔率20〜40%で多数形成されている。多孔質フィルム20の材料としては、具体的にはポリエチレン、ポリオレフィン等の各種樹脂を用いることができる。尚、多孔質フィルム20は、外周部において基部30の側壁部30Aの上端と上面板18の外周部との間に挟まれて固定されている。
【0042】
メッシュ部材22は、線径が0.1〜1.5mmの針金状又は糸状の部材が所定のピッチで編まれた構成である。メッシュ部材22のピッチは、具体的には、0.25〜3mmであり、メッシュ部材22の各開口部の幅は多孔質フィルム20の微細孔の平均孔径よりも大きく、給気孔16の直径よりも小さい。メッシュ部材22の材料としては、具体的にはステンレス、アルミ、各種合金等を用いることができる。
【0043】
尚、メッシュ部材22は、基部30の側壁部30Aの内周よりも若干小さい形状であり、支持板26により下方から支持されている。
【0044】
支持板26は、厚さが0.5〜3mmの板材である。通気孔24は上面板の給気孔16と同様に直径が6〜50mmの円形であり、8〜100mmのピッチ(中心間のピッチ)で多数形成されている。支持板26の材料としては、ステンレス、アルミ、各種合金等を用いることができる。
【0045】
尚、支持板26には、その外周に沿って下方に突出する側壁部34が設けられ、側壁部34において基部30の側壁部30Aの内側に嵌合している。又、基部30には側壁部30Aの内周から内側に突出する内周突部30Bが設けられており、この内周突部30Bにより、支持板26の側壁部34は下方から支持されている。
【0046】
又、基部30の底板部30Cの中央近傍には空気を導入するための導入孔30Dが設けられている。導入孔30Dには給気管40を介してブロア又はコンプレッサー等の給気ユニット42及びエアフィルタ44が連結されており、エアフィルタ44で異物が除去された空気が上面板18の給気孔16から上方に噴射されるようになっている。
【0047】
又、薄板状材料搬送装置10は、ガラス基板12を搬送方向に駆動するための駆動ユニット46を備えている。
【0048】
駆動ユニット46は、ガラス基板12の下面に接触してガラス基板12を搬送方向に駆動する複数のローラ48を有している。これらローラ48は、複数並べて設置された薄板状材料搬送用エアテーブル14の幅方向両側に配置され、複数の対のローラ48が搬送方向に適宜なピッチで設置されている。ローラ48は、ガラス基板12の下面に接触するローラ部48A及びこれよりも幅方向外側に設置されたフランジ部48Bを備え、図示しない回転駆動源に連結されている。尚、駆動ユニット46は、ローラ48のローラ部48A上端が薄板状材料搬送用エアテーブル14の上面板18の上面よりも数mm程度高くなるように設置されている。
【0049】
次に、薄板状材料搬送装置10の作用について説明する。
【0050】
薄板状材料搬送装置10の薄板状材料搬送用エアテーブル14は、多孔質フィルム20を介して上面板18の給気孔16から空気が噴射されるので、多孔質の板材を備えるエアテーブルと同様に気流の乱れが抑制されて上面板18の給気孔16から空気が噴射される。
【0051】
又、薄い多孔質フィルム20は多孔質の板材よりも通気抵抗が小さいので、多孔質の板材を用いる場合よりも、上面板18の給気孔16から噴射される空気の流量を増大させることができる。従って、クリーンルーム内の空気の乱れを抑制しつつ、大きな浮上量が得られる。更に、多孔質フィルム20は発塵の発生源にもならない。
【0052】
尚、多孔質フィルム20が上面板18の下に上面板18に接して設置されているため、上面板18における給気孔16が形成されていない部分と多孔質フィルム20とが密着し、多孔質フィルム20の開口面積がそれだけ小さくなっており、上面板18の給気孔16から噴射される空気の流量が抑制されるが、多孔質フィルム20の下方における空気の圧力を比較的高くできるので、上面板18の給気孔16から噴射される空気の圧力も比較的高くでき、これにより大きな浮上量が得られる。即ち、本第1実施形態の薄板状材料搬送用エアテーブル14の構成は、薄板状材料に比較的圧力が高い空気を噴射することで大きな浮上量を得る高圧力型のエアテーブルに適している。
【0053】
又、本第1実施形態のエアテーブル14の構成は、多孔質フィルム20を下方から支持するように多孔質フィルム20の下にメッシュ部材22が設置され、薄い多孔質フィルム20がメッシュ部材22で補強されているので、多孔質フィルム20の耐久性が高められている。
【0054】
又、薄板状材料搬送装置10は、駆動ユニット46の複数のローラ48がガラス基板12の下面に接触してガラス基板12を搬送方向に駆動するが、薄板状材料搬送用エアテーブル14が非接触でガラス基板12を支持しているので、ローラ48との接触部においてガラス基板12に作用する力が小さく、ローラ48との接触による表面の欠損や異物の付着が抑制される。
【0055】
又、空気の圧力で駆動力を付与する搬送装置と比較すると、ガラス基板12を支持するだけの空気を供給するのみで足りるので、装置の製造コストの低減に寄与すると共に空気の噴射量が少なくて足りるのでクリーンルーム内の空気の乱れが抑制される。更に、エアの複雑な制御が不要であるので、構造が簡単である。
【0056】
このように、薄板状材料搬送装置10は、薄板状材料搬送用エアテーブル14によりガラス基板12を大きな浮上量で非接触で支持するので、ガラス基板12と薄板状材料搬送用エアテーブル14との接触を防止でき、更に、クリーンルーム内の空気の乱れが抑制されるので、ガラス基板12の表面に傷が生じたり異物が付着しにくく、信頼性が高い搬送を実現できる。
【0057】
又、ガラス基板12の大きな浮上量が得られるので、複数の薄板状材料搬送用エアテーブル14を並べて設置する際に、これらの上面板18の高さのずれの許容値がそれだけ広く、設置工数の低減に寄与する。
【0058】
又、薄板状材料搬送用エアテーブル14は、上面板18の給気孔16に連通する位置に通気孔24が形成された支持板26が上面板18の下に設置され、多孔質フィルム20とメッシュ部材22とが、上面板18と支持板26との間に挟まれた簡単な構成で多孔質フィルム20とメッシュ部材22を確実に固定設置でき、設置作業も容易である。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0060】
前記第1実施形態の薄板状材料搬送用エアテーブル14は、メッシュ部材22が、多孔質フィルム20を下方から支持するように多孔質フィルム20の下に設置される下側位置と、多孔質フィルム20及び上面板18の間に挟まれて設置される上側位置と、の両方の位置に設置可能となっている。前記第1実施形態において、多孔質フィルム20は上面板18の下に上面板18に接して設置され、メッシュ部材22は多孔質フィルム20を下方から支持するように下側位置に設置されている。
【0061】
これに対し、本第2実施形態は、図5に示されるように、メッシュ部材22が、多孔質フィルム20及び上面板18の間に挟まれて上側位置に設置されたことを特徴としている。他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、同様の構成については説明を適宜省略する。
【0062】
このように、メッシュ部材22が多孔質フィルム20及び上面板18の間に挟まれて設置されているので、図6に模式的に示されるように、上面板18における給気孔16が形成されていない部分と多孔質フィルム20との間に通気路が形成される。従って、多孔質フィルム20の実質的な開口面積が前記第1実施形態よりも大きい。これにより、上面板18の給気孔16から噴射される空気の圧力は小さくなるが、給気孔16から噴射される空気の流量を前記第1実施形態よりも更に増大させることができるので、本第2実施形態も前記第1実施形態と同様に大きな浮上量が得られる。即ち、本第2実施形態の薄板状材料搬送用エアテーブル14の構成は、薄板状材料に比較的流量が多い空気を噴射することで大きな浮上量を得る大流量型のエアテーブルに適している。
【0063】
又、多孔質フィルム20はその上側よりも下側の圧力が高いため、上面板18の給気孔16内に張り出すように付勢されるが、メッシュ部材22が多孔質フィルム20及び上面板18の間に挟まれて設置されているので、給気孔16内への多孔質フィルム20の張り出しが抑制される。即ち、本第2実施形態でも薄い多孔質フィルム20がメッシュ部材22で補強されており、多孔質フィルム20の耐久性が高められている。
【0064】
尚、上記第1及び第2実施形態において、薄板状材料搬送用エアテーブル14からガラス基板12の下面に供給する気体は空気であるが、例えば、窒素ガス、希ガス等の他の気体をガラス基板12の下面に供給してもよい。
【0065】
又、上記第1及び第2実施形態において、薄板状材料搬送装置10は、薄板状材料搬送用エアテーブル14を幅方向に4台備えているが、ガラス基板12の幅等に応じて3台以下の薄板状材料搬送用エアテーブルを備える構成としてもよく、5台以上の薄板状材料搬送用エアテーブルを備える構成としてよい。
【0066】
又、上記第1及び第2実施形態において、薄板状材料搬送装置10は、複数のローラ48を有する駆動ユニット46を備えているが、駆動用のベルトを有する駆動ユニットを備える構成としてもよい。又、駆動用のローラとベルトとが並設された駆動ユニットを備える構成としてもよい。又、駆動ユニットを省略し、搬送方向に空気を噴射するようにエアテーブルの給気孔を傾斜させて上面板に形成し、エアテーブルが噴射する空気で被搬送物を駆動するようにしてもよい。
【0067】
又、上記第1及び第2実施形態は、ガラス基板12を搬送するためのものであるが、面積に比較して板厚の薄い、いわゆる薄板状材料であれば、他の材料の搬送にも本発明は適用可能である。例えば、金属薄板状材料、樹脂の薄板状材料等の撓みを生じ易い材料の搬送の場合に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いる大型で薄いガラス基板のような薄板状材料の搬送に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薄板状材料搬送装置を示す一部ブロック図を含む前面図
【図2】同薄板状材料搬送装置の薄板状材料搬送用エアテーブルの構造を示す断面図
【図3】同平面図
【図4】同薄板状材料搬送用エアテーブルの多孔質フィルムの周辺の構造を拡大して示す断面図
【図5】本発明の第2実施形態に係る薄板状材料搬送用エアテーブルの構造を示す断面図
【図6】同薄板状材料搬送用エアテーブルの多孔質フィルムの周辺の構造を拡大して示す断面図
【符号の説明】
【0070】
10…薄板状材料搬送装置
12…ガラス基板(薄板状材料)
14…薄板状材料搬送用エアテーブル
16…給気孔
18…上面板
20…多孔質フィルム
22…メッシュ部材
24…通気孔
26…支持板
28、30A、34…側壁部
30…基部
32…締結部材
46…駆動ユニット
48…ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状材料の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔が形成された上面板と、該上面板の下に該上面板に接して設置された多孔質フィルムと、該多孔質フィルムを下方から支持するように設置されたメッシュ部材と、を有することを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項2】
薄板状材料の下面に対して気体を供給するための複数の給気孔が形成された上面板と、該上面板の下に設置された多孔質フィルムと、該多孔質フィルム及び前記上面板の間に挟まれて設置されたメッシュ部材と、を有することを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記メッシュ部材が、前記多孔質フィルムを下方から支持するように該多孔質フィルムの下に設置される下側位置と、前記多孔質フィルム及び前記上面板の間に挟まれて設置される上側位置と、の両方の位置に設置可能であることを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記上面板の給気孔に連通する位置に通気孔が形成された支持板が前記上面板の下に設置され、前記多孔質フィルムと前記メッシュ部材とが、前記上面板と前記支持板との間に挟まれて設置されたことを特徴とする薄板状材料搬送用エアテーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の薄板状材料搬送用エアテーブルを備えることを特徴とする薄板状材料搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−41989(P2008−41989A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215557(P2006−215557)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(592053778)株式会社日本設計工業 (18)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】