説明

薄板状物加工装置及び薄板状部材の製造方法

【課題】本発明は、装置全体のコスト高を抑えることができるとともに比較的メンテナンスが容易である薄板状物加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この発明の薄板状物加工装置は、第一のレールに沿って走行体が走行し被加工物を搬送及び搬出する搬送搬出ユニット、及び第一のレールに沿って配設され被加工物を加工する複数の加工ユニットを備え、複数の加工ユニットが、被加工物を保持する加工テーブルが加工位置から被加工物の受け渡し位置までの間を移動するよう配設された第二のレールを有し、搬送搬出ユニットが、走行体に取り付けられ、第一のレールの配設方向に沿った軸を中心に回転する回転体、及びこの回転体に設けられ、回転体の回転により上記受け渡し位置の加工テーブルに選択的に対面する少なくとも二箇所に配設された被加工物保持部をさらに備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄板状物加工装置及び薄板状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板状物加工装置としては例えば略方形の薄板状の被加工物の端面研削を行う研削装置が公知であり、この研削装置は、例えば携帯電話などの携帯端末で用いられる薄板ガラスの端面研削を行うのに用いられる。この携帯端末のモニターには薄板ガラス板が用いられることが多い。こうした薄板ガラスは、一般に大形のガラス板から、だいたいのワーク形状で切り出され、その切り出されたガラス板の端面を、研削装置によって正確に研削することで、所定の形状に形成される。特に、この研削の際に、同時に面取り加工も行うことで、薄板ガラスの端面の欠けを防ぐことも行われる。
【0003】
そして、近年、例えば携帯電話などの携帯端末においては、携帯端末の一面全てを、又は一面ほとんどを、表示画面として構成するものが増加している。こうしたものでは、画面がタッチパネル化される場合が多く、一面全てを薄板ガラスで覆われる携帯端末が増えている。
【0004】
本発明者は、上記携帯電話などの携帯端末の表示画面に用いられる薄板ガラス等の被加工物の端面研削を行う研削装置において、カメラの撮影データを利用して研削加工を行うことで、精度よく加工しつつも、被加工物の表面に目印等を設けずに、研削加工を行うことができる研削装置として、特願2009−297944号に係る発明を完成した。
【0005】
この特願2009−297944号において、加工ユニットへ被加工物を搬送及び搬出する搬送搬出ユニットとして、三関節のスカラロボットを用いる具体例を開示した。しかし、この三関節のスカラロボットは高額であり、ひいては薄板状物加工装置全体の高額化を招く。また、上記スカラロボットが故障した場合にはメンテナンスが困難である。
【0006】
なお、研削装置として、特開2002−170797号公報所載のものも公知である。この特開2002−170797号公報所載の研削にあっても、加工ユニットへ被加工物を搬送及び搬出する搬送搬出ユニットとして、搬送ロボットを用いるものであるので、薄板状物加工装置全体の高額化を招き、また搬送ロボットのメンテナンスが困難であるという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−170797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、装置全体のコスト高を抑えることができるとともに比較的メンテナンスが容易である薄板状物加工装置及び薄板状部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の薄板状物加工装置は、
薄板状の被加工物を加工する薄板状物加工装置であって、
第一のレール及び第一のレールに沿って走行し被加工物を搬送及び搬出する走行体を有する搬送搬出ユニット、
上記第一のレールの始端付近の一方側に配設され、上記搬送搬出ユニットに未加工の被加工物を供給する供給ユニット、
上記第一レールの始端付近の他方側に配設され、上記搬送搬出ユニットから加工済みの被加工物を排出する排出ユニット、及び
上記第一のレールに沿って配設され、上記被加工物を加工する複数の加工ユニット
を備え、
上記複数の加工ユニットが、それぞれ
加工する被加工物を保持する加工テーブル、及び
上記第一のレールと交差する方向に、加工テーブルが加工位置から上記搬送排出ユニットと被加工物を受け渡す受け渡し位置までの間を移動するよう配設された第二のレール
を有し、
上記搬送搬出ユニットが、
上記走行体に取り付けられ、第一のレールの配設方向に沿った軸を中心に回転する回転体、及び
この回転体に設けられ、回転体の回転により上記受け渡し位置の加工テーブルに選択的に対面する少なくとも二箇所に配設された被加工物保持部
をさらに備えていることを特徴とする。
【0010】
当該薄板状物加工装置は、被加工物保持部に供給ユニットによって未加工の被加工物を供給し、その後走行体を加工テーブルの受け渡し位置まで走行させ、この被加工物保持部に保持した未加工の加工物を加工テーブルに受け渡すことで、加工テーブルに未加工の被加工物を搬送することができる。また、受け渡し位置の加工テーブルが保持する加工済みの被加工物を被加工物保持部が受け取り、その後走行体を排出ユニットによる排出位置まで走行させ、被加工物保持部が保持する加工済みの被加工物を排出ユニットによって排出することで、加工テーブルの加工済みの被加工物を排出することができる。特に、被加工物保持部が少なくとも二箇所に設けられているので、上記搬送の手順と排出の手順とを略連続して行うことができる。つまり、例えば一方の被加工物保持部に未加工の被加工物を保持し他方の被鉱物保持部に被加工物を保持しない状態で加工テーブルの受け渡し位置まで走行体を走行させ、そして他方の被加工物保持部により加工テーブルから加工済みの被加工物を受け取り、その後、回転体を回転させて上記のように被加工物を受け渡し空となった加工テーブルに上記一方の被加工物保持部を対面させて、この被加工物保持部が保持する未加工の被加工物を上記加工テーブルに受け渡すことができる。
【0011】
また、第一のレールに沿って複数の加工ユニットが配設されているので、一の加工ユニットにおいて上記のような搬送搬出の作業を行っている間に、他の加工ユニットで例えば研削作業等の加工作業を行うことができ、生産性を向上することができる。
【0012】
さらに、第二のレールによって加工テーブルが受け渡し位置から加工位置に移動するので、被加工物の受け渡す領域と加工を行う領域とを区画することができる。
【0013】
さらに、第一のレールに沿って走行体が走行し、第二のレールに沿って加工テーブルが走行するというシンプルな構造であるため、従来の搬送ユニットを採用する場合に比してコスト高を抑制することができるとともに、故障が起こりにくく、またメンテナンスが容易である。
【0014】
また、排出ユニットが供給ユニットと第一のレールを挟んだ位置に配設されているので、排出ユニットによって被加工物保持部の被加工物を排出する走行体の位置で、被加工物保持部に供給ユニットによって被加工物を供給することができる。さらに、回転体が第一のレールの配設方向に沿った軸を中心に回転するので、第一レールを挟んだ位置に設けられた供給ユニット及び排出ユニットとの被加工物の受け渡しに適した位置(角度)に被加工物保持部を位置させることができる。
【0015】
また、供給ユニット及び排出ユニットがレールの始端付近に設けられているので、薄板状物加工装置の一側面(第一のレールの始端側の側面)に被加工物の供給部分及び排出部分を配置することができる。
【0016】
当該薄板状物加工装置にあっては、回転体が、走行体に、受け渡し位置の加工テーブル側に接近・離反可能に取り付けられる構成を採用することが好ましい。つまり、被加工物の受け渡しのために加工テーブルと被加工物保持部とが接近・離反することを要するが、例えば加工テーブルを上下動させると構造が複雑化するおそれがあり、このため上記のように回転体が走行体に接近・離反可能に取り付けられることにより、構造がシンプルとなり、装置のコスト高を防ぎつつ、故障等が生じ難く、またメンテナンスも容易である。
【0017】
また、当該薄板状物加工装置にあっては、搬送搬出手段が、走行体に取り付けられたカメラをさらに備える構成を採用することが好ましい。これにより、加工テーブルに保持された未加工の被加工物をカメラによって撮影し、その撮影データを利用して加工作業を的確に行うことができる。つまり、例えばカメラの撮影データに基づいて正確な研削経路での研削作業を行うことができる。なお、カメラを複数台設置し、加工テーブルごとにカメラを配設することも考えられるが、上記のようにカメラを走行体に取り付ける構成を採用することで、カメラを複数台設置することを要せず、装置のコスト高を抑制することができる。
【0018】
さらに、上記のようにカメラを備える場合には、カメラが、回転体よりも受け渡し位置の加工テーブルの反対側において走行体に取り付けられ、回転体に、所定の回転角においてカメラから受け渡し位置の加工テーブルが視認できる視認可能領域が形成されている構成を採用することが好ましい。これにより、未加工の被加工物を加工テーブルに受け渡した後に、走行体を移動させることなく、カメラによって加工テーブルに保持された被加工物を撮影することができる。特に、カメラが回転体よりも受け渡し位置の加工テーブルの反対側に位置するので、カメラと被加工物との距離を長くすることができ、これにより被加工物全体をピント良く撮影することができる。さらに、回転体には視認可能領域が形成されているので、未加工の被加工物を加工テーブルに受け渡した後に回転体を回転させることにより、カメラから加工テーブルの被加工物が視認でき、的確に被加工物を撮影することかできる。
【0019】
また、当該薄板状物加工装置にあっては、回転体が、対向する一対の対向壁を有し、この対向壁に、それぞれ外側に向けて上記被加工物保持部が設けられている構成を採用することが好ましい。これにより、一方の被加工物保持部が供給ユニット側に向けて位置する際に、他方の被加工物保持部が供給ユニットと第一のレールを挟んだ位置の排出ユニットに向けて位置することになる。このため、供給ユニットによる未加工の被加工物の供給と、排出ユニットによる加工済みの被加工物の排出とを同時に行いやすく、被加工物の搬送搬出時間の短縮を図ることができ、生産性を向上させることができる。
【0020】
さらに、当該薄板状物加工装置にあっては、加工テーブルが、被加工物をそれぞれ保持可能な複数の保持手段を有し、上記少なくとも二箇所の被加工物保持部のそれぞれが、上記保持手段に対応した複数の被加工物保持手段を有する構成を採用することが好ましい。これにより、被加工物保持部に形成された複数の被加工物保持手段によって複数の被加工物を保持し、この複数の被加工物を複数の保持手段に供給することができ、さらに各加工テーブルにおいて加工された複数の被加工物を複数の被加工物保持手段によって受け取ることができる。このように、一度の搬送搬出作業によって複数の被加工物を搬送搬出でき、またその複数の被加工物を加工テーブルで加工することができるので、生産性の向上をより図ることができる。
【0021】
また、当該薄板状物加工装置にあっては、複数の加工ユニットの全てが、加工位置が第一のレールに対して同一側に位置するよう配設されている構成を採用することが好ましい。これにより、加工ユニットの加工位置が設けられない側において、装置の側面に上記第一のレールを配設することができ、搬送ユニットの修理や点検等が容易に行い得るという利点を有する。
【0022】
さらに、当該薄板状物加工装置にあっては、上記走行体及び回転体の動作を制御する制御手段をさらに備え、この制御手段が、少なくとも二箇所の被加工物保持部のうち一方に、供給ユニットを介して未加工の被加工物を供給するステップ、被加工物保持部において未加工の被加工物を保持した走行体を、加工テーブルの受け渡し位置まで走行せしめるステップ、受け渡し位置の加工テーブルが保持する加工済みの被加工物を、上記少なくとも二箇所の被加工物保持部のうち他方が受け取るステップ、回転体を回転させて、上記加工済みの被加工物を受け渡した加工テーブルに上記一方の被加工物保持部が保持する未加工の加工物を受け渡すステップ、被加工物保持部において加工済みの被加工物を保持した走行体を、排出ユニットによる排出位置まで走行せしめるステップ、及び上記他方の被加工物保持部が保持する加工済みの被加工物を排出ユニットを介して排出するステップを行うよう制御する構成を採用することが好ましい。このような制御手段の制御によって、搬送の手順と排出の手順とを的確に略連続して行うことができ、生産性の向上を的確に図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、当該発明にあっては、第一のレール及び第二のレールそれぞれに沿って搬送搬出ユニット及び複数の加工ユニットが移動可能に設けられた構成であり、シンプルな構造であるため、従来の搬送ユニットを採用する場合に比してコスト高を抑制することができるとともに、故障がしにくく、またメンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る薄板状物加工装置の第一実施形態の研削装置を説明するための概略的平面図である。
【図2】図1の研削装置の搬送搬出ユニットの一部切欠きを含む側面図である。
【図3】図1の研削装置の搬送搬出ユニットの正面図である(但し回転体の図示は省略している)。
【図4】図1の研削装置の搬送搬出ユニットの平面図である。
【図5】図1の研削装置の回転体の平面図である。
【図6】図1の研削装置の回転体の側面図である。
【図7】図1の研削装置の回転体の正面図である。
【図8】図1の研削装置の搬送搬出ユニットによる加工テーブルとのワークの受け渡しを模式的に表わした模式的斜視図である。
【図9】図1の研削装置の搬送搬出ユニットにおけるワークの供給及び排出の状態を模式的に表わした模式的斜視図である。
【図10】図1の研削装置の第一の吸着台が設置された加工テーブルの平面図である。
【図11】図1の研削装置の第二の吸着台が設置された加工テーブルの平面図である。
【図12】図1の研削装置の第三の吸着台が設置された加工テーブルの平面図である。
【図13】図1の研削装置の第一の保持基台の正面図である。
【図14】図1の研削装置の制御方法を示したフローチャートである。
【図15】図1の研削装置において撮影したデータの処理及び演算方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る薄板状物加工装置の一実施の形態としての研削装置を図1〜図15を参酌しつつ以下説明する。なお、本明細書において、「研削」とは、寸法精度を目的としてワークの端面を削る場合のみならず、所望の表面粗さを得るためにワークの端面を僅かに削る(以下、研磨ということもある)場合をも含む意味で用いる。
【0026】
まず、研削装置Mの全体構成について図1〜図15を参照しつつ説明する。なお、各図において、具体的には描いていないが、この研削装置Mでも、周知のように、作業者の安全性を確保するため、周囲にガード板(図示省略)を設けている。
【0027】
この研削装置Mは、携帯電話用の薄板ガラスであるワークW(被加工物)を研削する複数(4つ)の研削ユニット100(加工ユニット)と、この研削ユニット100にワークWを搬送搬出する搬送搬出ユニット10と、この搬送搬出ユニット10にワークWを供給する供給ユニット60と、搬送搬出ユニット10からワークWを排出する排出ユニット70とを備えている。
【0028】
搬送搬出ユニット10は、図1に示すように、直線的に配設された第一のレール11と、この第一のレール11に沿って走行する走行体13とを備えている。前記複数の研削ユニット100は全て第一のレール11の一方(図示上右側)に設けられている。この複数の研削ユニット100は、第一のレール11と直交する方向に配設された第二のレール101と、この第二のレール101に沿って走行する加工テーブル103と、加工テーブルに載置されたワークWを加工する加工機104とを有し、加工テーブル103は、搬送搬出ユニット10の走行体13の真下であるワークWの受け渡し位置と、その外側(右側)の加工位置とを移動するよう設けられている。
【0029】
搬送搬出ユニット10は、図2に示すように、走行体13に回転可能に且つ上下動可能に搭載された回転体25と、この回転体25の二箇所に設けられた被加工物保持部27とをさらに備えている。
【0030】
上記回転体25は略直方体状に設けられており、上記二箇所の被加工物保持部27は、図4に示すように、回転体25の対向する側壁において外側に向けて設けられている。なお、本実施形態においては、一対の被加工物保持部27が側方に位置する状態を正常状態として説明し、特に言及しない場合にはこの正常状態で上下左右等の用語を用いるものとする。
【0031】
各被加工物保持部27は、第一のレール11の配設方向に複数(3つ)の被加工物保持部材29(被加工物保持手段)を有しており、ワークWを同時に複数(3つ)保持できる。各被加工物保持部材29は、回転体25の側壁に固定された台座31に、外側に向けて突出するよう取り付けられている。回転体25の側壁には、第一のレール11の配設方向に複数(3つ)の台座31が配設されている。各台座31には、図5に示すように、内部に上下方向に沿って吸気路31aが形成されている。また、各台座31には、吸気路31aに連通するように上記被加工物保持部材29が取り付けられる複数の取付孔部が形成されている。この複数の取付孔部のうちの一つに前記被加工物保持部材29が取り付けられており、他の取付孔部にはキャップ33が付設され、閉塞されている。
【0032】
上記回転体25は、図5に示すように、上壁及び底壁に切欠き窓25aが形成されており、この切欠き窓25aを通して回転体25の上方から下方にかけて視認できるよう設けられている。つまり、この切欠き窓25aによって、上方から下方にかけて視認できる視認可能領域が形成されている。なお、回転体25に、加工テーブル103上のワークWを照明するための照明手段を設けることも可能である。具体的には、上記回転体25の底壁の切欠き窓25aに、LED等の光源を枠状に配設した照明枠を設けて、カメラ23撮影時にワークWを照明するよう構成することも可能である。
【0033】
上記回転体25は、第一のレール11の配設方向と平行な軸37を中心に回転及び反転可能に設けられており、一方向(例えば時計まわり)に90°、他方向(例えば反時計まわり)に90°(以下、「−90°」とマイナス標記する場合がある)回転(反転)可能に設けられている。具体的には、上記二箇所の被加工物保持部27が下方に向くよう回転体25が回転するよう設けられている。さらに、回転体25は、上下動可能に設けられ、受け渡し位置において加工テーブル103に接近・離反可能に設けられており、上記のように被加工物保持部27が下方に向いた状態で回転体25が下方に移動することにより、被加工物保持部27と加工テーブル103との間でワークWが受け渡しされる。
【0034】
上記回転体25は、上下回転機構35を介して上記走行体13に取り付けられている。この上下回転機構35は、図2及び図3に示すように、上記回転体25が固定される軸37と、この軸37を回転自在に軸支する軸受け部材39と、走行体13に上下方向に沿って固定された一対のシャフト41と、一対のシャフト41にスライド可能なブッシュハウジング(図示省略)を両端に有し上記軸受け部材39が固着された上下案内部材43と、走行体13に固定され上下案内部材43を上下動させるシリンダ45とを有している。ここで、上記軸受け部材39、一対のシャフト41、上下案内部材43及びシリンダ45は、軸37の両端側にそれぞれ設けられている。また、上記シリンダ45と上下案内部材43とは、L字部材47を介して連結固定されている。さらに、上記シリンダ45はエアシリンダから構成されている。また、上記上下案内部材43には、軸37を回転させるためのアクチュエータ(図示省略)が固定されている。図2及び図3において、51は第一のレール11を走行する車輪であり、走行体13の四隅部下部にそれぞれ四つの車輪51が回転自在に取り付けられている。
【0035】
上記走行体13は、上記回転体25が内部に配設される下部フレーム体15と、この下部フレーム体15の上部に固定された上部フレーム体17とを有している。
【0036】
上記搬送搬出ユニット10は、走行体13の上部に取り付けられたカメラ23をさらに有している。上記走行体13には、その上部フレーム体17に立設フレーム19が上方に向けて立設固定され、この立設フレーム19の上部に走行体13の中央側に向けて突出するようカメラブラケット21が固定され、このカメラブラケット21に上記カメラ23が撮影方向を下向きにして固着されている。なお、走行体13には、上部フレーム体17の上壁に切欠き窓17aが形成され、この切欠き窓17aの下方には他の部材が存在しないよう設けられている。これにより、走行体13には、カメラ23から回転体25の下方に位置する加工テーブル103まで視認できる視認可能領域が形成されている。
【0037】
上記供給ユニット60及び排出ユニット70は、第一のレール11の始端に配設されており、上記複数の研削ユニット100は、第一のレール11の終端側にかけて順次配設されている。また、この供給ユニット60と排出ユニット70とは、第一のレール11を挟んで対向するよう配設されている(図9参照)。なお、本実施形態においては、複数の研削ユニット100は、第一のレール11に対して排出ユニット70側(右側)に配設されている。
【0038】
上記供給ユニット60は、未加工のワークWを立設保持するワークカートリッジ61の載置台(図示省略)と、このワークカートリッジ61のワークWを保持(吸着)する供給保持部材63と、この供給保持部材63を上下動且つ水平方向(第一のレール11に対して直交方向の水平方向)に移動させる移動機構(図示省略)を有している。この供給ユニット60は、ワークカートリッジ61に立設された未加工のワークWを供給保持部材63が保持し、そして移動機構によって供給保持部材63が上下水平方向に移動し、供給ユニット60及び排出ユニット70間に存在する搬送搬出ユニット10の被加工物保持部27に供給するよう設けられている。
【0039】
また、上記排出ユニット70は、上記供給ユニット60と同様に、加工済みのワークWを立設保持するワークカートリッジ71の載置台(図示省略)と、このワークカートリッジ71へ受け渡すワークWを保持(吸着)する排出保持部材73と、この排出保持部材73を上下動且つ水平方向(第一のレール11に対して直交方向の水平方向)に移動させる移動機構(図示省略)を有している。この排出ユニット70は、供給ユニット60及び排出ユニット70間に存在する搬送搬出ユニット10の被加工物保持部27のワークWを保持し、移動機構によって排出保持部材73が上下水平方向に移動し、ワークカートリッジ71にワークWを受け渡すよう設けられている。なお、図示例では、ワークカートリッジ61,71は、供給ユニット60及び排出ユニット70のそれぞれに二つずつ設けたものを図示しているが、このワークカートリッジ61,71の個数は、適宜設計変更可能である。なお、ワークカートリッジ61,71は種々の形態ものものを採用可能であるが、例えば左右方向に三列でワークWが立設するように、樹脂壁で仕切って構成することができる。
【0040】
なお、上記ワークカートリッジ61,71の投入及び取出しに関しては、種々の形態のものが採用できるが、例えばワークカートリッジ61,71がそれぞれ引き出し状構造部材(図示省略)に載置され、この引き出し状構造部材がワークカートリッジ61,71の収納位置(装置M内部)とワークカートリッジ61,71の投入・取出し位置(装置M外部)との間を水平方向にスライド移動可能に装置Mに取り付けられている。なお、この引き出し状構造部材のスライドは、作業者によって手動でできるよう設けることが可能であるが、供給ユニット60又は排出ユニット70の作業時にはスライド不能となるよう後述する制御手段によって制御されていることが好ましい。
【0041】
上記加工テーブル103は、第二のレール101にスライド可能に載置されたステージ基台105と、このステージ基台105上に着脱可能に取り付けられる保持基台107とを備えている。この保持基台107には、ワークWを保持する吸着台108(保持台)が載置固定されている。本実施形態においては、搬送搬出ユニット10の被加工物保持部材29の個数に対応して三個の吸着台108が載置固定されている。
【0042】
なお、上記ステージ基台105には、複数種(三種)の保持基台107が着脱可能に取り付けられるように設けられている。具体的には、上記ステージ基台105には、図10に示すように小型のワークWをそれぞれ保持する三つの第一の吸着台108が立設固定された第一の保持基台107、図11に示すように一つの大型のワークWを保持する一つの第二の吸着台108が立設固定された第二の保持基台107、及び図12に示すように中型のワークWをそれぞれ保持する二つの第三の吸着台108が立設固定された第三の保持基台107の三つの保持基台107のうち一つを選択的に取り付けられるように設けられている。すなわち、加工テーブル103は、小型のワークWをそれぞれ保持する複数の第一の吸着台108と、大型のワークWを保持する第二の吸着台108と、中型のワークWをそれぞれ保持する第三の吸着台108との何れか一つを選択して設置できるよう設けられている。
【0043】
上記第一の保持基台107、第二の保持基台107及び第三の保持基台107と、上記ステージ基台105とには、取り付け位置を位置決めするための位置決め手段が設けられている。具体的には、保持基台107は、各保持基台107において略同一形状である基台プレート109を下部に有しており、各基台プレート109には、両側付近に一対の位置決め孔部111が穿設されている。そして、前記ステージ基台105には、この位置決め孔部111に挿通可能な位置決めピン113が突設されている。このため、上記位置決め孔部111に位置決めピン113が挿通されることにより、ステージ基台105に各保持基台107が位置決めされて載置されることになる。
【0044】
さらに、上記第一の保持基台107、第二の保持基台107及び第三の保持基台107と、上記ステージ基台105とには、両者を固定するための固定手段が設けられている。具体的には、各保持基台107の基台プレート109には、複数のボルト挿通孔部(図示省略)が穿設されており、前記ステージ基台105には、このボルト挿通孔部に対応する位置にボルト115が螺着される雌ネジ117が形成されている。このため、上記ステージ基台105上に位置決めされて載置された保持基台107を、ボルト115によって固定することができる。なお、ボルト115を離脱することにより、ステージ基台105から保持基台107を離脱することができる。
【0045】
上記ステージ基台105には、研削加工の際の機械原点を算出するための複数の基準ピン116(基準部位)が、カメラ23側(上側)を向くように立設されている。この基準ピン116は、図10〜図12に示すように、加工テーブル103に設置された吸着台108の上面(受け面)よりも外側に位置するように配置され、この吸着台108に保持されるワークWの外形よりも外側に配置されている。なお、上記吸着台108の上面は、ワークWの外形と略同様の形状で且つワークWの外形よりも若干が小さい外形に設けられている。
【0046】
また、基準ピン116は、上記ステージ基台105のみならず、小型のワークWが保持される第一の保持基台107にも形成されている。この第一の保持基台107には、二つの基準ピン116が立設されている。この二つの基準ピン116は、中央の吸着台108の両側に配置されており、一方の基準ピン116が前方側に、他方の基準ピン116が後方側に配置されている。
【0047】
なお、上述した各基準ピン116は、第一実施形態と同様に、被撮影ポイントである先端部の高さ(上下方向の位置)が、吸着台108の上面の高さと同じ高さになるように設定されている。
【0048】
また、各保持基台107の吸着台108(保持台)には、上面に吸気口(図示省略)が設けられており、この吸気口を負圧にするための負圧接続口123が設けられている。なお、第一の保持基台107に設けられた三つの吸着台108、及び第三の保持基台107に設けられた二つの吸着台108を、その上面がそれぞれ異なる大きさに設けることも可能である。これにより、多種の形状のワークWを同一の保持基台107において保持することができる。なお、第一の保持基台107に設けられた三つの吸着台108の上面を同一形状として、各吸着台108が同一形状の複数のワークWを保持できるように設けることも適宜設計変更可能な事項である。なお、薄板ガラスであるワークWの表面に傷が生じないようにするため、吸着台108の上面には、平滑加工を施している。
【0049】
上記研削ユニット100の加工機104は、加工テーブル103上のワークW(薄板ガラス)の端面を研削等の加工を行う加工ツール130が着脱可能に設けられている。この加工ツール130は、例えば回転することにより接触するワークWの端面を研削するものである。また、加工ツール130としては、ワークWと当接して穴あけ加工を行うものも採用可能である。また、上記加工テーブル103上には、複数種類の加工ツール130が載置されており、目的に応じた加工ツール130を加工機104に取付けることができるよう設けられている。具体的には、例えば大径円柱状の砥石からなる加工ツールを用いることで、研削加工時に加工ツールが安定して研削がなされるため、加工精度を高めることができ、また、加工ツールが大径であるため、ツールの工具寿命も長くすることができ、ワークWを大量に連続して研削できる。一方、小径円柱状の砥石からなる加工ツールを用いることで、ワークWの穴部内に差し込んで、穴部の内形研削や面取り加工を行うことができる。
【0050】
また、加工機104は、先端に加工ツール130を着脱可能に取り付ける加工スピンドル(図示省略)を有している。加工スピンドルは、加工を行う際の回転駆動力を発生する電動モータ(図示省略)と、電動モータのスピンドル軸に加工ツールを取付けるチャックとを備えている。
【0051】
上記加工スピンドル(加工機104)は、第一のレール11の配設方向に沿って移動可能に設けられている。このため、加工テーブル103及び加工スピンドルを移動させることで、加工ツールは、加工テーブル103上のワークWに対して相対的に水平方向(前後左右方向)に移動可能に設けられている。なお、加工スピンドルは、上下方向にも移動するよう設けられている。
【0052】
なお、研削ユニット100は、加工スピンドルに取り付けられた加工ツール130に向けて研削液を噴射する研削液噴射手段(図示省略)をさらに備えることが好ましい。また、研削ユニット100は、この研削に際して飛散する研削液を、受け渡し位置等に侵入させないようジャバラカバー(図示省略)等が設けられている。また、詳細には図示しないが、ワークWに噴射された研削液を回収するためのキャッチパン(図示省略)が設けられていることが好ましい。
【0053】
当該研削装置Mは、各種の動作を制御する制御手段を有している。ここで、制御手段としては、例えば電子制御ユニットから構成することができる。
【0054】
制御手段は、未加工のワークWを搬送搬出ユニット10によって加工テーブル103に供給し、加工済みのワークWを加工テーブル103から搬出するよう制御するものであるが、以下、この搬送搬出方法について説明する。
【0055】
まず、研削作業を開始する際には搬送搬出ユニット10は第一のレール11の始端側に位置している。そして、ワークカートリッジ61から供給ユニット60が未加工のワークWを受け取り、この未加工のワークWを供給ユニット60が搬送搬出ユニット10の一方側の被加工物保持部27に受け渡す。なお、この受け渡しに際しては、搬送搬出ユニット10の被加工物保持部27及び供給ユニット60の吸着部の吸引及び停止が制御される。後述するワークWの受け渡しに際してもこのような吸引及び停止が制御されるものであり、以下その詳細な説明は省略する。
【0056】
未加工のワークWを受け取った搬送搬出ユニット10は、複数の研削ユニット100のうち一つの研削ユニット100の受け渡し位置まで移動する。なお、この際、この研削ユニット100の加工テーブル103も受け渡し位置まで移動する。
【0057】
そして、回転体25が90°回転し、ワークWを保持している被加工物保持部27を下方側にして、ワークWと加工テーブル103とを対面させる。そして、回転体25が下降してワークWを加工テーブル103に受け渡す。
【0058】
その後、回転体25が−90°回転(反転)し、カメラ23によって加工テーブル103上のワークWを撮影する。
【0059】
この撮影後、加工テーブル103は加工位置に移動して、研削作業が開始されるとともに、搬送搬出ユニット10は第一のレール11の始点側に移動する。
【0060】
上記のような搬送作業が研削ユニット100ごとに行われ、各研削ユニット100にワークWが供給される。
【0061】
そして、上記研削ユニット100において研削作業が完了すると、加工テーブル103は受け渡し位置まで移動する。また、搬送搬出ユニット10は、一方側の被加工物保持部27に未加工のワークWを保持した状態で、上記受け渡し位置まで移動する。なお、この際、他方側の被加工物保持部27にはワークWが保持されない空の状態とされている。
【0062】
その後、回転体25が−90°回転(反転)し、ワークWを保持していない上記他方側の被加工物保持部27を下方側にして、ワークWと加工テーブル103とを対面させる。そして、回転体25が下降して加工テーブル103から加工済みのワークWを受け取る。
【0063】
そして、回転体25が180°回転し、ワークWを保持している被加工物保持部27を下方側にして、ワークWと加工テーブル103とを対面させる。そして、回転体25が下降してワークWを加工テーブル103に受け渡す。
【0064】
その後、回転体25が−90°回転(反転)し、カメラ23によって加工テーブル103上のワークWを撮影する。
【0065】
この撮影後、加工テーブル103が加工位置に移動して、研削作業が開始されるとともに、搬送搬出ユニット10が第一のレール11の始点側に移動する。
【0066】
そして、第一のレール11の始点側に移動した後に、搬送搬出ユニット10の他方側の被加工物保持部27から排出ユニット70が加工済みのワークWを受け取り、その加工済みワークWを加工済みワークWのワークカートリッジ61に収容するとともに、未加工ワークWのワークカートリッジ61から供給ユニット60が未加工のワークWを受け取り、この未加工のワークWを供給ユニット60が搬送搬出ユニット10の一方側の被加工物保持部27に受け渡す。
【0067】
このように未加工のワークWを受け取った搬送搬出ユニット10は、研削作業が終了した別の研削ユニット100の受け渡し位置まで移動し、上記のような搬送搬出作業が繰り返し行われることになる。
【0068】
また、制御手段は、カメラ23によって撮影されたデータに基づいて、ワークWの研削経路を演算するが、この演算の際の制御方法を図14〜図15で説明する。
【0069】
図14のフローチャートに示すように、スタート後、まず初めに、S1で、ワークWのモデルデータ(外形、穴部等)を電子制御ユニットに入力(インストール)する(入力工程)。この入力作業では、例えば、正確に加工されたワークWoの設計データ(CADデータ)を、一旦別のソフトウェアに取り込んで、研削経路等の研削データに変換した上で、電子制御ユニットに入力(インストール)する。
【0070】
こうした入力作業が終了した後、次に、S2で、実際のワークWi(以下、実ワークW)を加工テーブル103に載置(搬入)して、吸着台108にワークWiを保持させる(保持工程)。
【0071】
その後、S3で、カメラ23によって、実ワークWiと基準ピン116,116との画像を取り込む(撮影工程)。具体的にはカメラ23によって、加工テーブル103のワークWiと基準ピン116,116とを撮影する。このように上方の離れた位置から加工テーブル103を撮影することで、取り込むワークWiや基準ピン116,116の画像データの歪みをできるだけ少なくすることができる。
【0072】
このようにして取り込んだ画像データの例が、図15(a)に示した図である。ワークWiと二つの基準ピン116,116を、画像データとして取り込み、各々の位置データを算出するようにしている。
【0073】
そして、S4で、基準ピン116,116の位置から加工テーブル103の機械原点Cを算出する(機械原点算出工程)。ここで、機械原点Cとは、研削加工を行うための機械座標の基準であり、この機械原点Cを規定することで、正確な研削加工を行うことができる。
【0074】
機械原点Cは、図15(b)に示すように、二つの基準ピン116,116を結んだ線Lの中点によって定めるようにしている。なお、他の例として、破線で示すように、さらに二つの基準ピンを116´,116´追加して、この追加した二つの基準ピン116´,116´を結んだ線Nと上記二つの基準ピン116,116を結んだ線Lとの交点を、機械原点Cとして規定しても良い。
【0075】
そして、S5で、取り込んだ実ワークWiのデータから、実ワークWiの外形Waの重心位置Pと、穴部Wbの重心位置Qとを算出する(重心位置算出工程)。ここで、重心位置とは、図形の重心の位置であり、ワークWの外形形状や穴部形状によって決まるものである。図15(b)に示す黒丸P、Qが、それぞれ実ワークWの外形Waの重心位置と穴部Wbとの重心位置である。
【0076】
その後S6で、実ワークWiの重心位置(外形の重心位置P及び穴部の重心位置Q)とモデルWmの重心位置(外形の重心位置Pm及び穴部の重心位置Qm)とを一致させる。実ワークWの重心位置P、QとモデルWmの重心位置Pm、Qmとを一致させることで、実ワークWiとモデルWmとの差(位置データの差)を明確にしている。図15(c)に示す状態が実ワークWiとモデルWm(一点鎖線)の重心位置P、Q、Pm、Qmとを一致させた状態である。このように重心位置P、Q、Pm、Qmを一致させることで、実ワークWiとモデルWmとの差を明らかにできる。
【0077】
そして、S7で、加工テーブル103の機械原点Cと実ワークWiの重心位置Pとを比較して、機械原点Cと実ワークWiの重心位置Pとのズレ量(横方向のズレ量X、縦方向のズレ量Y、回転方向のズレ量θ)を演算する(ズレ量演算工程)。また、実ワークWiとモデルWmとを比較して、外形差により削り込み量Δwも演算する。こうして、実ワークWiの研削量等を明確にできる。
【0078】
図15(d)が、それぞれのズレ量や削り込み量を示したものである。加工テーブル103の機械原点Cからの実ワークWiの重心位置Pのズレ量は、例えば、この図に示すように、左側にX、上側にY、ズレており、さらに、右側にθ、傾くように傾斜している。
【0079】
そして、削り込み量は、幅方向の削り込み量Δw1が、実ワークWiの幅寸法r1からモデルの幅寸法T1を引いて2で割ることで算出され、長さ方向の削り込み量Δw2を、実ワークWiの長さ寸法r2からモデルの長さ寸法T2を引いて2で割ることで算出される。
【0080】
こうして、幅方向と長さ方向との削り込み量Δw1、Δw2を求めた後、このうち大きな値を最終的な削り込み量Δwとして決定する。このように決定するのは、研削加工を行う際、モデル形状に相似した軌跡であり、ワークW全周を一定の削り込み量で削り込みするため、大きな値に決定しておくことで、削り込みを確実に生じさせて、モデル形状により近い形に研削できるからである。
【0081】
そして、S8で、X、Y、θのズレ量及び削り込み量Δwに応じて、ワークWiの研削経路を算出する(研削経路演算工程)。この研削経路は、実ワークWiの形状や、実ワークWiの載置位置の変動によって変化するもので、各々のワークWで異なるものである。
【0082】
その後、S9で、算出した研削経路で実ワークWiを研削する(研削工程)。この研削作業は、研削スピンドル131と加工テーブル103とをそれぞれ移動することで行う。このワークWの研削作業では、上述の大径の加工ツール130Aや小径の加工ツール130Bを用いて研削部位に応じて行う。
【0083】
最後に、S10で、実ワークWiを加工テーブル103から既述のように取出す(搬出工程)。
【0084】
そして、次に、S11で作業が終了するか否かの判断を行い、作業が継続する場合(NO判断の場合)には、次のワークWを加工するために上記S2に再度移行する。一方、作業が終了する場合(YES判断の場合:電源オフの場合)には、そのままエンドに移行する。
【0085】
以上のように、当該研削装置Mによって上記制御手段の制御のもとワークWの端面を研削して、端面が研削された薄板状部材を製造することができる。
【0086】
当該研削装置Mは、被加工物保持部27が二箇所に設けられており、一台の搬送搬出ユニット10によって排出手順と搬送手順とを略連続して行うことができ、生産効率を向上できる。
【0087】
特に複数の研削ユニット100を有するので、一の研削ユニット100において上記のような搬送搬出の作業を行っている間に、他の研削ユニット100で研削作業を行うことができ、生産性をより向上することができる。
【0088】
しかも、供給ユニット60と排出ユニット70とが第一のレール11を挟んだ位置に配設され、回転体25の対向壁にそれぞれ被加工物保持部27が設けられ、これにより上述のように供給ユニット60による未加工のワークWの供給と、排出ユニット70による加工済みのワークWの排出とを同時に行うことができ、ワークWの搬送搬出時間の短縮化が図られ、より生産性を向上させることができる。
【0089】
さらに、当該研削装置Mにあっては、加工テーブル103にはワークWをそれぞれ保持可能な複数の吸着台108を有するため、一度の加工作業により複数のワークWの研削を行うことができる。しかも、二箇所の被加工物保持部27のそれぞれが、上記加工テーブル103の吸着台108に対応して複数の被加工物保持部材29を有するので、一度の搬送搬出作業によって複数のワークWを搬送搬出できる。このため、生産性の向上をより図ることができる。特に、例えば一度の加工作業に際して、複数種類の加工ツールによる加工を行う場合にあっては、一の加工ツールを取り付けた後に複数のワークWについてその一の加工ツールによる同種の加工処理を行うことができ、その後、上記一の加工ツールを離脱し他の加工ツールを取り付けて、この他の加工ツールによる同種の加工処理を上記複数のワークWに対して行うことができる。つまり、一度の加工ツールの着脱により複数のワークの加工処理がなされるため、加工ツールの着脱に要する時間を短縮することができ、作業効率の向上を図ることできる。
【0090】
さらに、第二のレール101によって加工テーブル103が受け渡し位置から加工位置に移動するので、ワークWを受け渡す領域と加工を行う領域とを区画することができ、加工位置が研削液によりウェットな状態となるが、このウェットな状態から受け渡し位置を区分けすることができる。また、二つの被加工物保持部27のうち一方がドライな未加工のワークWばかり保持し、他方がウェットな加工済みワークWばかりを保持することになり、各被加工物保持部27のドライ・ウェット状態を区分けすることができる。
【0091】
さらに、第一のレール11に沿って走行体13が走行し、第二のレール101に沿って加工テーブル103が走行するというシンプルな構造であるため、従来のスカラロボットを採用する場合に比してコスト高を抑制することができるとともに、故障が起こりにくく、またメンテナンスが容易である。
【0092】
また、回転体25が、走行体13に上下動して、加工テーブル103側に接近・離反する構成であるので、構造が比較的シンプルであり、装置のコスト高を防ぎつつ、故障等が生じ難く、またメンテナンスも容易である。
【0093】
また、当該研削装置Mにあっては、複数の研削ユニット100の全てが、加工位置が第一のレール11に対して同一側に位置するよう配設されているので、研削ユニット100の加工位置が設けられない側において、装置の側面に上記第一のレール11を配設することができ、搬送ユニットの修理や点検等が容易に行い得るという利点を有する。
【0094】
また、供給ユニット60及び排出ユニット70が第一のレール11の始端付近に設けられているので、研削装置Mの一側面(第一のレール11の始端側の側面)にワークWの供給部分及び排出部分を配置することができる。このため、ワークカートリッジ61,71の投入・取入を一人の作業者が一方側から行うことができる。
【0095】
また、走行体13にカメラ23が取り付けられ、加工テーブル103上のワークWを撮影し、その撮影データに基づいて正確な研削経路での研削作業を行うことができる。
【0096】
特に、ワークWのモデルのデータを予めインストールし、カメラ23で取り込んだ基準ピン116の撮影データから、加工テーブル103の機械原点を算出し、カメラ23で取り込んだワークWの撮影データから、ワークWの重心位置を求め、加工テーブル103の機械原点とワークWの重心位置Pとを比較してワークWのズレ量を算出し、このズレ量に応じて研削経路を演算するため、正確にワークWを研削することができる。特に、ワークW自体に「基準となるマーク(印)」等を形成しなくても、加工テーブル103に設けた基準ピンによって「機械原点」を求め、ワークWのズレ量を把握することができるので、携帯電話などの携帯端末の表示画面に用いられる薄板ガラス(ワークW)であっても、的確に研削加工を行うことができる。
【0097】
なお、カメラ23を複数台設置し、加工テーブル103ごとにカメラ23を配設することも考えられるが、上記のようにカメラ23を走行体13に取り付ける構成を採用することで、カメラ23を複数台設置することを要せず、装置のコスト高を抑制することができる。
【0098】
さらに、カメラ23が走行体13の上方に位置するので、カメラ23と撮影対象であるワークWとの距離を長くすることができ、これによりワークW全体をピント良く撮影することができる。
【0099】
また、加工テーブル103に複数種類の吸着台108を選択して設置することができるので、研削対象であるワークWの大きさに応じて、適切な吸着台を選択して的確に研削作業を行うことできる。さらに、第一又は第三の保持基台107を載置固定した場合には、加工テーブル103に複数の吸着台108を設置できる。これにより、保持基台107を変更することなくワークWの大きさに応じたより適切な吸着台108を選択して研削作業を行うことができる。
【0100】
また、複数の基準ピン116を有し、この複数の基準ピン116が、吸着台108に保持される各ワークWの外形の外側にそれぞれ配置されているので、ワークWに近接した位置に基準ピン116が位置することになり、このため、「機械原点」がワークWの重心位置に近くなり、ズレ量の演算の際の誤差を少なくできる。さらに、上記基準ピン116は、各ワークWを挟んだ両側位置に位置しているので、ワークWの両側の基準ピン116を結んだ線上に形成される点を「機械原点」とすることができ、これによりワークWの重心位置に近い位置を機械原点とすることができる。しかも、ワークWを挟んで対向する少なくとも二対の基準ピン116が配置されているので、各対の基準ピン116を結んだ線の交点を「機械原点」とすることによって、この機械原点とワークWの重心位置とをより近接させることができる。このため、より正確に、ワークWのズレ量を演算することができる。
【0101】
さらに、上記基台プレート109に立設した基準ピン116は、吸着台108に保持されたワークWの外形よりも外側に位置するため、基準ピン116がワークWに隠されることがなく、このため、第一、第二及び第三の吸着台108の何れに変更して設置しても、この基準ピン116を取り換え等する必要がなく、的確に撮影作業を行うことができる。このため、加工テーブル103の構造をシンプルにすることができる。
【0102】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0103】
上述の実施形態の研削装置Mでは、被加工物としてのワークWを携帯電話用の薄板ガラスとしているが、例えば、携帯音響機器用の薄板ガラスであってもよいし、また、携帯ゲーム機用の薄板ガラスであってもよい。さらに、携帯ナビ用の薄板ガラス、携帯TVの薄板ガラス等であっても良い。
【0104】
また、研削装置Mの全体構成についても、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、研削ユニットが一つであるものや、逆に、さらに五つや六つなど、多くの研削ユニットを有するものも、本発明の意図する範囲内である。
【0105】
さらに、上記実施形態においては、研削ユニットのみが設けられ、各研削ユニットにおいて同種の研削作業がなされるものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各加工ユニットにおいて異なる加工処理がなされるものを採用可能である。つまり、例えば、上記実施形態のように寸法精度を目的としてワークの端面を削る研削ユニットのみならず、ワークの端面を所望の表面粗さとするために僅かに削る研磨ユニットと、ワークと当接して穴あけ加工を行う穴あけ加工ユニットとを備える研削装置であっても本発明の意図する範囲内である。
【0106】
なお、この研削装置の場合、例えば、制御手段が、
1.少なくとも二箇所の被加工物保持部のうち一方に、供給ユニットを介して未加工の被加工物を供給するステップ、
2.被加工物保持部において未加工の被加工物を保持した走行体を、穴あけ加工ユニットの加工テーブルの受け渡し位置まで走行せしめるステップ、
3.受け渡し位置の穴あけ加工ユニットの加工テーブルが保持する穴あけ加工済みの被加工物を、上記少なくとも二箇所の被加工物保持部のうち他方が受け取るステップ、
4.回転体を回転させて、上記穴あけ加工済みの被加工物を受け渡した加工テーブルに上記一方の被加工物保持部が保持する未加工の加工物を受け渡すステップ、
5.被加工物保持部において穴あけ加工済みの被加工物を保持した走行体を、研削ユニットの加工テーブルの受け渡し位置まで走行せしめるステップ、
6.受け渡し位置の研削ユニットの加工テーブルが保持する研削済みの被加工物を、上記一方の被加工物保持部が受け取るステップ、
7.回転体を回転させて、上記研削済みの被加工物を受け渡した加工テーブルに上記他方の被加工物保持部が保持する穴あけ加工済みの加工物を受け渡すステップ、
8.被加工物保持部において研削済みの被加工物を保持した走行体を、研磨ユニットの加工テーブルの受け渡し位置まで走行せしめるステップ、
9.受け渡し位置の研磨ユニットの加工テーブルが保持する研磨済みの被加工物を、上記他方の被加工物保持部が受け取るステップ、
10.回転体を回転させて、上記研磨済みの被加工物を受け渡した加工テーブルに上記一方の被加工物保持部が保持する研削済みの加工物を受け渡すステップ、
11.被加工物保持部において研磨済みの被加工物を保持した走行体を、排出ユニットによる排出位置まで走行せしめるステップ、及び
12.上記他方の被加工物保持部が保持する研磨済みの被加工物を排出ユニットを介して排出するステップ
を行うよう制御するものも採用可能である。
【0107】
さらに、回転体25として略直方体状のものについて説明したが、例えば回転軸37から見て略六角形状や略八角形状の回転体25を採用することも可能である。また、被加工物保持部も二箇所に設けるものに限定されるものではなく、三箇所以上の被加工物保持部を設けることも適宜設計変更可能な事項である。
【0108】
また、上記実施形態では回転体25を回転及び反転できるよう設けたものについて説明したが、一方向にのみ回転可能(他方向に回転不能)な回転体であっても、本発明の意図する範囲内である。但し、上記実施形態のように、回転及び反転できる回転体を採用することが好ましく、これにより回転体に付設するケーブル等の捩じれを防止する手段が特に必要でなく、構造がシンプルとなる利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上のように、本発明の薄板状物加工装置は、例えば携帯電話などの携帯端末で用いられる薄板ガラスなどの略方形の薄板状の被加工物の端面研削を、低コストで且つ迅速に行うことができる。
【符号の説明】
【0110】
10 搬送搬出ユニット
11 レール
13 走行体
23 カメラ
25 回転体
25a 窓
27 被加工物保持部
29 被加工物保持部材
35 上下回転機構
60 供給ユニット
61 ワークカートリッジ
63 供給保持部材
70 排出ユニット
71 ワークカートリッジ
73 排出保持部材
100 研削ユニット(加工ユニット)
101 レール
103 加工テーブル
130 加工ツール
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の被加工物を加工する薄板状物加工装置であって、
第一のレール及び第一のレールに沿って走行し被加工物を搬送及び搬出する走行体を有する搬送搬出ユニット、
上記第一のレールの始端付近の一方側に配設され、上記搬送搬出ユニットに未加工の被加工物を供給する供給ユニット、
上記第一レールの始端付近の他方側に配設され、上記搬送搬出ユニットから加工済みの被加工物を排出する排出ユニット、及び
上記第一のレールに沿って配設され、上記被加工物を加工する複数の加工ユニット
を備え、
上記複数の加工ユニットが、それぞれ
加工する被加工物を保持する加工テーブル、及び
上記第一のレールと交差する方向に、加工テーブルが加工位置から上記搬送排出ユニットと被加工物を受け渡す受け渡し位置までの間を移動するよう配設された第二のレール
を有し、
上記搬送搬出ユニットが、
上記走行体に取り付けられ、第一のレールの配設方向に沿った軸を中心に回転する回転体、及び
この回転体に設けられ、回転体の回転により上記受け渡し位置の加工テーブルに選択的に対面する少なくとも二箇所に配設された被加工物保持部
をさらに備えていることを特徴とする薄板状物加工装置。
【請求項2】
上記回転体が、上記走行体に、受け渡し位置の加工テーブル側に接近・離反可能に取付けられている請求項1に記載の薄板状物加工装置。
【請求項3】
上記搬送搬出手段が、走行体に取り付けられたカメラをさらに備える請求項1又は請求項2に記載の薄板状物加工装置。
【請求項4】
上記カメラが、上記回転体よりも受け渡し位置の加工テーブルの反対側において上記走行体に取り付けられ、
上記回転体に、所定の回転角においてカメラから受け渡し位置の加工テーブルが視認できる視認可能領域が形成されている請求項3に記載の薄板状物加工装置。
【請求項5】
上記回転体が、対向する一対の対向壁を有し、
この対向壁に、それぞれ外側に向けて上記被加工物保持部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の薄板状物加工装置。
【請求項6】
上記加工テーブルが、被加工物をそれぞれ保持可能な複数の保持手段を有し、
上記少なくとも二箇所の被加工物保持部のそれぞれが、上記保持手段に対応した複数の被加工物保持手段を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の薄板状物加工装置。
【請求項7】
上記複数の加工ユニットの全てが、加工位置が第一のレールに対して同一側に位置するよう配設されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の薄板状物加工装置。
【請求項8】
上記走行体及び回転体の動作を制御する制御手段をさらに備え、
この制御手段が、
少なくとも二箇所の被加工物保持部のうち一方に、供給ユニットを介して未加工の被加工物を供給するステップ、
被加工物保持部において未加工の被加工物を保持した走行体を、加工テーブルの受け渡し位置まで走行せしめるステップ、
受け渡し位置の加工テーブルが保持する加工済みの被加工物を、上記少なくとも二箇所の被加工物保持部のうち他方が受け取るステップ、
回転体を回転させて、上記加工済みの被加工物を受け渡した加工テーブルに上記一方の被加工物保持部が保持する未加工の加工物を受け渡すステップ、
被加工物保持部において加工済みの被加工物を保持した走行体を、排出ユニットによる排出位置まで走行せしめるステップ、及び
上記他方の被加工物保持部が保持する加工済みの被加工物を排出ユニットを介して排出するステップ
を行うよう制御する請求項1から請求項7にいずれか1項に記載の薄板状物加工装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8にいずれか1項に記載の薄板状物加工装置により加工する工程を備える薄板状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−213842(P2012−213842A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81965(P2011−81965)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(302031502)株式会社 ハリーズ (16)
【Fターム(参考)】