説明

薄膜コンデンサ

【課題】電気伝導度が高いアルミニウムまたは銅を用いて電極を厚く形成することで、ESRが低く、小型薄膜化可能な薄膜コンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】有機物からなる基板2と、基板2の上面に設けられた凹部と、基板2の凹部に形成されたアルミニウムからなる第一の金属端子8と、第一の金属端子8の上に形成された誘電体薄膜3と、誘電体薄膜3の上に形成されたアルミニウムからなる第二の金属端子9と、前記誘電体薄膜3と前記第二の金属端子9とを覆うように設けられた保護層4と、第一および第二の金属端子8、9の夫々とを接続するように保護層4に設けられた第一および第二の外部端子11、12とを有し、第一の金属端子8の表面を化学的機械研磨して基板2の表面を平滑化した構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される薄膜コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・高性能化に伴い、それらに用いられる電子部品にも小型薄膜化・高性能化が要望されている。特にCPU(中央演算処理装置)の高速化などに伴い発生する高周波ノイズの除去にESR(等価直列抵抗)が低く、減衰率の大きい薄膜コンデンサが望まれている。
【0003】
図10はこの種の従来の薄膜コンデンサの構成を示した断面図であり、図10において、100は薄膜コンデンサを示し、この薄膜コンデンサ100は、絶縁体からなる基板101と、この基板101の上に気相成長法により形成されたコンデンサ素子102とからなるものである。
【0004】
このコンデンサ素子102は、基板101の上に第一の金属端子103と誘電体薄膜104と第二の金属端子105とが順に積層されている。
【0005】
そして、このコンデンサ素子102を覆うように絶縁体からなる保護層106が設けられ、第一の金属端子103と接続する第一の外部端子107と、第二の金属端子105と接続する第二の外部端子108がこの保護層106の表面から露出するように設けられている。
【0006】
そして、この第一および第二の外部端子107、108に図示しない端子を接続させるようにしてコンデンサとして用いられるものである。また、この薄膜コンデンサ100を反転させて第一および第二の外部端子107、108を実装基板と接続させるものである。
【0007】
なお、高周波領域において高い減衰率を得るために誘電体薄膜104には比誘電率が高く、かつ、気相成長法により形成可能な金属酸化物や窒化ケイ素などを用いることが知られており、また、この第一の金属端子103は剥離による薄膜コンデンサ100の特性低下を防ぐために、さらに、ESRを低下させるために、基板101および誘電体薄膜104との付着性が高く、抵抗が低いアルミニウムを用いることが知られている。
【0008】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−340999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の薄膜コンデンサ100では、スパッタなどの気相成長法により第一の金属端子103および第二の金属端子105が薄膜で形成されるため、その抵抗が高くなるとともに、薄膜コンデンサ100のESRが高くなるものであった。そこで、それを防止するために、単純にこの第一の金属端子103および第二の金属端子105を基板101の上に気相成長法により厚膜に形成すると、その場合、別の課題が生じるものであった。
【0010】
すなわち、アルミニウムからなる第一の金属端子103を気相成長法により形成すると、その厚みを単純に増すことはできるが、逆にその増加に伴って成膜時の応力が開放されてヒロックと呼ばれる突起が表面に形成されてしまうものであった。
【0011】
そして、この突起が厚みを増すごとに増えてくると、この第一の金属端子103の上に形成される誘電体薄膜104の厚みが不均一になるため、薄膜コンデンサ100の耐電圧が低下するとともに、第一の金属端子103の表面に形成された突起部分に電界集中が起きるため、薄膜コンデンサ100の耐電圧が低下するものであった。
【0012】
さらに、単純に第一の金属端子103を厚く形成すると、その端部に段差が生じてしまうとともに、その高さも増加してしまうため、この上に形成される誘電体薄膜104にクラックが生じやすくなり、薄膜コンデンサ100の特性を低下させるものであった。
【0013】
また、この薄膜コンデンサ100の特性低下を防ぐために誘電体薄膜104を厚く形成すると、誘電体薄膜104を薄膜化して薄膜コンデンサ100を小型大容量化することが困難になるものであった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決し、小型薄型化可能でESRが低い薄膜コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明は、有機物からなる基板と、前記基板の上面に設けられた凹部と、前記基板の凹部に形成されたアルミニウムからなる第一の金属端子と、前記第一の金属端子の上に形成された誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜の上に形成されたアルミニウムからなる第二の金属端子と、前記誘電体薄膜と前記第二の金属端子とを覆うように設けられた保護層と、その一方が前記第一の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第一の外部端子と、その一方が前記第二の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第二の外部端子とを有し、前記基板および保護層が複数層からなるとともに、前記誘電体薄膜を前記第一の金属端子と前記第二の金属端子とで挟むことによりコンデンサ部分を形成するとともに、少なくとも前記第一の金属端子の表面を化学的機械研磨することにより前記基板の表面を平滑化したことを特徴とする薄膜コンデンサとしたものである。
【0016】
または、有機物からなる基板と、前記基板の上面に設けられた凹部と、前記基板の凹部に形成された銅またはアルミニウムからなる第一の金属端子と、前記第一の金属端子の上に形成された下面電極膜と、前記下面電極膜の上に形成された誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜の上に形成された上面電極膜と、前記上面電極膜の上に形成された銅またはアルミニウムからなる第二の金属端子と、前記下面電極膜と前記誘電体薄膜と前記上面電極膜と前記第二の金属端子とを覆うように設けられた保護層と、その一方が前記第一の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第一の外部端子と、その一方が前記第二の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第二の外部端子とを有し、前記基板および保護層が複数層からなるとともに、前記誘電体薄膜を前記下面電極膜と前記上面電極膜とで挟むことによりコンデンサ部分を形成するとともに、少なくとも前記第一の金属端子の表面を化学的機械研磨することにより前記基板の表面を平滑化したことを特徴とする薄膜コンデンサとしたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明による薄膜コンデンサは、有機物からなる基板を用いて、電気伝導度が高く、抵抗が低い金属を用いて第一の金属端子と第二の金属端子とを厚く形成するとともに、第一の金属端子の表面を平坦化することで、第一の金属端子と第二の金属端子の抵抗が下がるとともに、均一な厚みの誘電体薄膜を形成することができるため、ESRが低く、安定した特性の小型薄型化が可能な薄膜コンデンサを実現するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、実施の形態を用いて、本発明に記載の発明について説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態による薄膜コンデンサの構成を示した断面図であり、図1において、1は薄膜コンデンサを示し、この薄膜コンデンサ1は、有機物からなる基板2と、この基板2の上に設けられた誘電体薄膜3と、この誘電体薄膜3の上に設けられた第二の金属端子9と、この誘電体薄膜3と第二の金属端子9とを覆うように基板2の上に設けられた保護層4とから構成されている。
【0020】
この基板2は、第一のレジスト膜5と、この第一のレジスト膜5の上に形成した開口部を有する第二のレジスト膜6と、この開口部により、その表面に設けられた凹部7とから形成されている。
【0021】
そして、この凹部7に第一の金属端子8を形成して、この第一の金属端子8の上に誘電体薄膜3と第二の金属端子9とを順に積層して、上記誘電体薄膜3を介して第一の金属端子8と第二の金属端子9とを接続することでコンデンサ部分10が形成されている。
【0022】
さらに、第一の外部端子11はその一方が前記第一の金属端子8を接続するとともに、他方が保護層4の表面から露出するように設けられている。同様に、第二の外部端子12もその一方が第二の金属端子9を接続するとともに、他方が保護層4の表面から露出するように設けられている。
【0023】
そして、この第一の金属端子8および第二の金属端子9はアルミニウムからなる電気伝導度が高く、抵抗の低い材質を用いて厚膜に形成されている。また、この第一の金属端子8はその表面が化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下CMPと称す)により研磨されており、基板2の上面との平滑化がなされている。
【0024】
なお、このCMPとは、研磨剤などの研磨条件を選択することにより、任意の金属などを選択的に研磨することができる工法であり、現在知られている研磨手段としては最もその金属表面の凹凸を小さくすることができるものである。
【0025】
次に、この誘電体薄膜3は第一の金属端子8より面積が小さく、さらに、第一の金属端子8の内側に位置するように設けられている。
【0026】
また、上記基板2および保護層4は、感光性を有する有機物絶縁体からなるレジスト樹脂から形成した。このレジスト樹脂を所定厚みで塗布して露光、現像することで、このレジスト樹脂は硬化され、所定厚みのレジスト膜が形成されている。
【0027】
さらに、このレジスト樹脂に所定寸法のマスクを用いた露光と現像とからなるパターンニングをすることで、所定寸法の開口部を有するレジスト膜が形成されている。
【0028】
また、第一の金属端子8は、0.5Paの真空中でのDCスパッタにより基板2の上面に設けられた凹部7をアルミニウムで充填させるようにアルミニウム膜を形成して、このアルミニウム膜の表面をCMPで研磨することにより形成した。
【0029】
また、誘電体薄膜3および第二の金属端子9は、まず、0.5Paの真空中でのRFスパッタにより所定厚みの誘電体薄膜を成膜して、この誘電体薄膜の上に0.5Paの真空中でのDCスパッタにより所定厚みのアルミニウム膜を成膜した。
【0030】
次に、このアルミニウム膜の上にマスクレジスト樹脂をこのアルミニウム膜の上に塗布してパターンニングによりマスクレジストを形成して、酢酸およびリン酸などからなるエッチング液を用いて、上記アルミニウム膜をエッチングした後、マスクレジストの剥離と洗浄を行い、第二の金属端子9を形成した。
【0031】
続いて、この第二の金属端子9を覆うマスクレジストを形成して、CF4およびO2ガスを用いて、上記酸化タンタル膜をドライエッチングした後、マスクレジストの剥離と洗浄を行うことにより誘電体薄膜3を形成した。
【0032】
また、誘電体薄膜3と第一および第二の金属端子8、9を形成する酸化タンタル膜とアルミニウム膜は、熱により基板2が変形収縮することを防ぐために、夫々基板温度が300℃以下となるスパッタ法により形成した。
【0033】
また、第一および第二の外部端子11、12は、開口部を形成した保護層4の表面にO2ガスを用いてドライエッチングをした後、無電解メッキおよび電解メッキにより開口部に銅を充填して、この銅がメッキされた保護層4の表面をCMPで研磨することを順次行い形成した。
【0034】
この薄膜コンデンサ1は具体的には次の通り作成した。まず、支持基材として表面を平坦化したシリコン基板に感光性を有する有機物絶縁体からなるレジスト樹脂を用いて、厚さ58μmの第一のレジスト膜5を形成して、この第一のレジスト膜5の上に340μm×600μmの開口部を有する厚さ2μmの第二のレジスト膜6を形成することで、その表面に凹部7を設けた有機物からなる基板2を形成した。
【0035】
次にこの基板2の上に厚さ3μmのアルミニウム膜を形成して、この基板2の凹部7にアルミニウムを充填して、この基板2の表面をCMP研磨により平坦化することでアルミニウムからなる第一の金属端子8を形成した。
【0036】
次に基板2の上に厚さ400nmの酸化タンタル膜を形成して、この酸化タンタル膜の上に2μmのアルミニウム膜を形成して、このアルミニウム膜と酸化タンタル膜を順次エッチングすることで、この第一の金属端子8の上に280μm×240μmの誘電体薄膜3および270μm×230μmの第二の金属端子9を形成した。
【0037】
さらに、この基板2の上にレジスト樹脂を塗布して、第一の金属端子8と接続する200μm×60μmの開口部と、第二の金属端子9と接続する200μm×60μmの開口部とを有する厚さ40μmのレジスト膜からなる保護層4を形成した。
【0038】
この保護層4に設けられた開口部をメッキして、この保護層4の表面をCMPで研磨することにより第一の外部端子11および第二の外部端子12を形成した。
【0039】
そして、支持基材の上に形成された積層物を所定の寸法に切断して、支持基材から分離することにより、薄膜コンデンサ1を得た(コンデンサ寸法:400×1000×100(μm)、静電容量:33(pF))。
【0040】
以上のように本実施の形態では、コンデンサ部分を形成する第一の金属端子8および第二の金属端子9として電気伝導度が高いアルミニウムを用い、さらにこの第一の金属端子8および第二の金属端子9を厚膜で形成できるため、抵抗が低くなるとともに、ESRが低い薄膜コンデンサ1を得ることが可能になるものである。
【0041】
また、スパッタによりアルミニウムからなる第一の金属端子8を厚膜に形成しても、CMPによりその表面を平滑化するため、従来表面に発生していた突起を除去することができ、これにより、第一の金属端子8はその表面の凹凸を非常に小さくすることができる。そのため、この第一の金属端子8を含む基板2の上に形成される誘電体薄膜3を均一な厚みで形成することができ、薄膜コンデンサ1の特性を安定なものにすることができる。
【0042】
さらに、CMPにより基板2の表面を平坦化しているため、基板2と第一の金属端子8との表面段差も小さくすることができる。そのため、誘電体薄膜3を均一な厚みで形成することができ、薄膜コンデンサ1の特性を安定なものにすることができる。また、誘電体薄膜3を薄膜化しても、誘電体薄膜3を均一な厚みで形成することができるため、薄型で特性が安定した薄膜コンデンサ1を得ることができる。
【0043】
また、基板2にポリイミドやレジスト樹脂などの有機物を用いているため、基板2に柔軟性を持たせることができ、第一の金属端子8を厚膜に形成するために基板2に深い凹部7を形成しても基板2に割れが生じる恐れがなく、また基板2の薄膜化も可能なため、薄膜コンデンサ1の低ESR化および薄型化することが可能になるものである。
【0044】
さらに、誘電体薄膜3を第一の金属端子8の面積より小さくするとともに、第一の金属端子8の内側に位置するよう形成したので、使用環境の温度変化により、第一の金属端子8と基板2との界面に応力が加わり、その界面の上にクラックが発生しても、その界面の上にコンデンサ部分10はなく、コンデンサ部分10に亀裂が生じないため信頼性も向上するものである。
【0045】
なお、第一の金属端子8および第二の金属端子9はアルミニウムから形成したが、目的に応じて、アルミニウム合金などから形成するようにしてもよい。
【0046】
また、誘電体薄膜3には酸化タンタルを用いたが、これ以外にも基板2が熱によって変形収縮することを防ぐために300℃以下の低温形成ができるとともに、高周波特性に優れた、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸ストロンチウムなどを用いても良い。
【0047】
さらに、薄膜コンデンサ1の別の形成方法として、基板2を形成して、第一の金属端子8を基板2に設けられた凹部7に形成して、この第一の金属端子8の上に誘電体薄膜3を形成した後、この誘電体薄膜3の上に第二の金属端子9を形成するための凹部を有するレジスト膜(図示せず)を形成して、この凹部にアルミニウムを充填するようにこのレジスト膜の上にアルミニウム膜を形成し、そのアルミニウム膜の表面をCMP研磨して第二の金属端子9を形成するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施の形態では、保護層4の表面から第一および第二の外部端子11、12が露出するように構成したが、基板2の底面に第一および第二の外部端子11、12を露出させるように基板2を形成するとともに、基板2の上面に第一の金属端子8と第三の金属端子(図示せず)を設け、この基板2の上に形成した第二の金属端子9とこの第三の金属端子を接続させるように薄膜コンデンサを構成しても同様の効果が得られるものである。
【0049】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。
【0050】
実施の形態2は実施の形態1の誘電体薄膜を挟んで接続する下面電極膜と上面電極膜とを設けるとともに、この上面電極膜の周縁部にバリア層を設けた構成に変更したところに特徴を有しており、その他の点は実施の形態1と同様の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0051】
そこで、本実施の形態の特徴構成について図2を用いて説明すると、図2において、13は薄膜コンデンサを示し、この薄膜コンデンサ13は、有機物からなる基板14と、この基板14の上に設けられたコンデンサ部分15と、このコンデンサ部分15の上に形成された第二の金属端子24と、このコンデンサ部分15と第二の金属端子24を覆うように基板14の上に設けられた保護層16とから構成されている。
【0052】
この基板14は、第一のレジスト膜17と、この第一のレジスト膜17の上に形成した開口部を有する第二のレジスト膜18と、この第二のレジスト膜18に設けられた開口部により基板14の上面に設けられた凹部19とから形成されている。
【0053】
この凹部19に第一の金属端子20を形成して、この第一の金属端子20の上に下面電極膜21と誘電体薄膜22と上面電極膜23とを順に積層することにより、上記誘電体薄膜22を介して下面電極膜21と上面電極膜23とでコンデンサ部分15を形成している。
【0054】
そして、このコンデンサ部分15の上に、上面電極膜23と接続する開口部を有する第三のレジスト膜27を形成して、この開口部に第二の金属端子24を形成することで、コンデンサ部分15を介して第一の金属端子20と第二の金属端子24とを接続している。
【0055】
また、このコンデンサ部分15と第二の金属端子24を覆う保護層16は、第三のレジスト膜25と、この第三のレジスト膜25の上に形成された第四のレジスト膜26とから形成されている。
【0056】
さらに、第一の外部端子27はその一方が前記第一の金属端子20を接続するとともに、他方が保護層16の表面から露出するように設けられている。同様に、第二の外部端子28もその一方が第二の金属端子24を接続するとともに、他方が保護層16の表面から露出するように設けられている。また、第一の外部端子27は、第一の外部端子27aと第一の外部端子27bから形成されている。
【0057】
そして、この第一の金属端子20および第二の金属端子24は銅またはアルミニウムからなる電気伝導度が高く、抵抗の低い材質を用いて厚膜に形成されている。また、この第一の金属端子20はその表面がCMPにより研磨されており、基板14の上面との平滑化がなされている。
【0058】
さらに、この誘電体薄膜22は、その面積が第一の金属端子20より小さく、第一の金属端子20の内側に位置するように設けられている。また、第二の金属端子24の周縁部にある上面電極膜23と保護層16の境界には、この上面電極膜23の周縁部を覆うように無機物からなるバリア層29が設けられている。
【0059】
また、第一の金属端子20および第二の金属端子24は、開口部を形成した第二および第三のレジスト膜18、25の表面にO2ガスを用いてドライエッチングをした後、無電解メッキおよび電解メッキにより開口部に銅を充填して、レジスト膜の表面をCMPで研磨することにより平坦化することを順次行うことにより形成した。
【0060】
また、このバリア層29は、0.5Paの真空中でのRFスパッタによりコンデンサ部分15を形成した基板14の上に所定厚みの酸化ケイ素膜を成膜して、この酸化ケイ素膜が上面電極膜23の周縁部に密着させるようにして、この酸化ケイ素膜の上に上面電極膜23の周縁部が残るようにマスクレジストを形成して、CF4およびO2ガスを用いて、上記酸化ケイ素膜をドライエッチングした後、マスクレジストの剥離と洗浄を行うことにより形成した。
【0061】
この薄膜コンデンサ13は具体的には次の通り作成した。
【0062】
まず、支持基材として表面を平坦化したシリコン板に感光性を有する有機物絶縁体からなるレジスト樹脂を用いて、厚さ30μmの第一のレジスト膜17を形成して、この第一のレジスト膜17の上に340μm×600μmの開口部を有する厚さ20μmの第二のレジスト膜18を形成することで、その表面に凹部19を設けた有機物からなる基板16を形成した。
【0063】
そして、この基板16の表面を銅でメッキして、凹部19に銅を充填した後、この基板14の表面をCMPにより平坦化して、銅からなる第一の金属端子20を形成した。
【0064】
次に、基板14の上に厚さ100nmのアルミニウム膜を形成して、このアルミニウム膜の上にマスクレジストを形成して、このアルミニウム膜をエッチングすることにより、この第一の金属端子20の上に300μm×250μmの下面電極膜21を形成した。
【0065】
さらに、この下面電極膜21の上に厚さ400nmの酸化タンタル膜を形成して、この酸化タンタル膜の上に100nmのアルミニウム膜を形成して、このアルミニウム膜の上にマスクレジストを形成して、このアルミニウム膜をエッチングすることにより、酸化タンタル膜の上に270μm×230μmの上面電極膜23を形成した。
【0066】
次に、この上面電極膜23を覆うようにマスクレジストを形成して、酸化タンタル膜をエッチングすることで、上面電極膜23と下面電極膜21との間に280μm×240μmの誘電体薄膜22を形成した。これにより、下面電極膜21と誘電体薄膜22と上面電極膜23が順に積層されてなるコンデンサ部分15を形成した。
【0067】
さらに、このコンデンサ部分15が形成された基板14の上に厚さ100nmの酸化ケイ素膜を形成し、この酸化ケイ素膜の上にレジストマスクを形成して、エッチングにより酸化ケイ素膜を除去することで上面電極膜23の周縁部に酸化ケイ素からなるバリア層29を形成した。
【0068】
さらに、この基板14の上にレジスト樹脂を塗布して、第一の金属端子20と接続する200μm×60μmの開口部と、上面電極膜23と接続する280μm×240μmの開口部とを有する厚さ20μmの第三のレジスト膜25を形成して、この第三のレジスト膜25に設けられた開口部をメッキして、この第三のレジスト膜25の表面をCMPで研磨することにより第一の外部端子27aおよび第二の金属端子24を形成した。
【0069】
次に、第三のレジスト膜25の上にレジスト樹脂を塗布して、第一の外部端子27aと接続する200μm×60μmの開口部と、第二の金属端子24と接続する200μm×60μmの開口部とを有する厚さ30μmの第四のレジスト膜26を形成した。
【0070】
この第四のレジスト膜26に設けられた開口部をメッキして、この第四のレジスト膜26の表面をCMPで研磨することにより第一の外部端子27bおよび第二の外部端子28を形成した。
【0071】
そして、支持基材の上に形成された積層物を所定の寸法に切断して、支持基材から分離することにより、薄膜コンデンサ13を得た(コンデンサ寸法:400×1000×100(μm)、静電容量:33(pF))。
【0072】
以上のように本実施の形態では、誘電体薄膜22を下面電極膜21と上面電極膜23とで挟むようにしてコンデンサ部分15を形成したことで、この下面電極膜21と上面電極膜23との付着性が高く、かつ、電気伝導度が高い銅を用いて第一の金属端子20および第二の金属端子24を厚膜で形成することができる。これにより、第一の金属端子20および第二の金属端子24と下面電極膜21および上面電極膜23との剥離を防ぐことができるとともに、第一の金属端子20および第二の金属端子24の抵抗を下げることができるため、特性の安定したESRが低い薄膜コンデンサ13を得ることができる。
【0073】
また、上面電極膜23と保護層16との境界である上面電極膜23の周縁部を覆うように無機物からなる防湿性の高いバリア層29を設けているため、水分や酸素がアルミニウムからなる上面電極膜23に浸入して、この上面電極膜23が酸化して抵抗が増えることを防ぐことができるとともに、薄膜コンデンサ13のESRを安定化することができる。
【0074】
特に、凹部19を充填するようにメッキすることで第一の金属端子20を形成するため、凹部19を深く形成して、第一の金属端子20を厚膜に形成する場合でも、その生産性が高いため、薄膜コンデンサ13の生産性を向上させることができる。また、基板14への熱影響が少ないために薄膜コンデンサ13の特性を安定させることができる。
【0075】
さらに、誘電体薄膜22を介して下面電極膜21と上面電極膜23を接続することでコンデンサ部分15を形成して、このコンデンサ部分15を介して第一の金属端子20および第二の金属端子24を接続させるため、下面電極膜21および上面電極膜23に誘電体薄膜22と第一の金属端子20および第二の金属端子24との付着性が高い材料を用いれば、第一の金属端子20および第二の金属端子24とコンデンサ部分15との剥離を防ぎ、薄膜コンデンサ13の特性を安定させることが可能になるものである。
【0076】
また、本実施の形態では、第一の金属端子20および第二の金属端子24を銅から形成したが、アルミニウムから形成してもよく、さらに、有機物からなる基板14ならびに下面電極膜21および上面電極膜23との付着性が高く、電気伝導度が高く、抵抗が低いものであれば、銅合金やアルミニウム合金などの材料を用いるようにしてもよい。
【0077】
なお、図2では下面電極膜21の存在を明らかにするために厚みをもって表しているが、その表面が平滑化された基板14の上に従来と同じ厚みの薄膜で形成するため、この下面電極膜21の上に形成される誘電体薄膜22には下面電極膜21の端部での段差の問題は生じないものである。
【0078】
さらに、図3に示すように、第四のレジスト膜26の上に第一および第二の外部端子27、28の露出面積より大きい開口部を有するレジスト膜を形成して、この開口部に金属を充填し、第一および第二の外部端子27、28の露出面積を増やすことで、他の端子との接続を容易にすることができる。
【0079】
また、図3に示すように、第一の金属端子20を第二のレジスト膜18より厚く形成するようにしてもよい。また、この場合は基板14に設けられた凹部19と基板14の表面がメッキされるように金属層を形成して、基板14の表面が露出しないようにこの金属層の表面をCMPにより平滑化した後、エッチングにより基板14の表面の金属層を除去することで所定の寸法に形成することができる。
【0080】
このような処理が必要となるのは以下の理由からである。
【0081】
すなわち、第一の金属端子20の面積を大きくした場合に、材料の異なる第一の金属端子20と基板14との段差がないように基板14の表面をCMP研磨して平坦化すると、この第一の金属端子20の表面に、通常ディッシングと呼ばれる緩やかな円弧を有する凹部が形成され、この第一の金属端子20の厚みが減少するとともに、ESRが上昇し、さらにばらつきが発生してしまうために、減衰率が安定しない恐れがあったからである。
【0082】
また、レジスト樹脂をパターンニングする際の露光時に、この緩やかな円弧を有する凹部がレンズのように作用することで露光ばらつきが生じ、解像度が低下するとともに、パターン精度が低下することでも、薄膜コンデンサ13の容量にばらつきが生じてしまい、減衰率が安定しない恐れもあったからである。
【0083】
本実施の形態では、金属層の表面のみをCMPで研磨して、エッチングにより形成することで、表面のディッシングがなくなり、より平滑な第一の金属端子が得られるとともに、薄膜コンデンサの特性を安定化させることが可能になるものである。
【0084】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
【0085】
実施の形態3は実施の形態2の保護層にコイル部を設けた構成に変更したところに特徴を有しており、その他の点は実施の形態2と同様の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0086】
そこで、この特徴構成について図4〜図6を用いて説明する。図4は本発明の実施の形態による薄膜コンデンサの構成を示した断面図であり、図5(a)〜(d)はこの薄膜コンデンサの保護層を構成する各層の上面図である。また、図6はこの薄膜コンデンサの構成により得られる回路図である。
【0087】
図4において、30は薄膜コンデンサを示し、この薄膜コンデンサ30は、有機物からなる基板31と、この基板31の上に設けられたコンデンサ部分32と、このコンデンサ部分32の上に形成された第二の金属端子41と、このコンデンサ部分32と第二の金属端子41とを覆うように基板31の上に設けられた保護層33とから構成されている。
【0088】
この基板31は、第一のレジスト膜34と、この第一のレジスト膜34の上に形成した第二のレジスト膜35からなり、また、この第二のレジスト膜35に設けられた開口部により基板31の上面に設けられた凹部36が形成されている。
【0089】
この凹部36に第一の金属端子37を形成して、この第一の金属端子37の上に下面電極膜38と誘電体薄膜39と上面電極膜40とを順に積層することにより、上記誘電体薄膜39を介して下面電極膜38と上面電極膜40とを接続させることでコンデンサ部分32が形成されている。
【0090】
そして、このコンデンサ部分32の上に、上面電極膜40と接続する開口部を有する第三のレジスト膜42を形成して、この開口部に第二の金属端子41を形成することで、コンデンサ部分32を介して第一の金属端子37と第二の金属端子41とが接続されている。
【0091】
また、このコンデンサ部分32と第二の金属端子41を覆う保護層33は、図5(a)〜(d)に示すように第三のレジスト膜42と第四のレジスト膜43と第五のレジスト膜44と第六のレジスト膜45とが順に積層されて形成されている。
【0092】
また、保護層33にはその一方が第一の金属端子37と接続するとともに、他方が保護層33の表面から露出する第一の外部端子46と、その一方が第二の金属端子41と接続するとともに、他方が保護層33の表面から露出する第二の外部端子47と、その一方が第二の金属端子41と接続するとともに、他方が保護層33の表面から露出する第三の外部端子48とが設けられている。
【0093】
この第一の外部端子46は第一の外部端子46a〜46dとで形成されるとともに、この第二の外部端子47は第二の外部端子47b〜47dとで形成されており、さらに、この第三の外部端子48は第三の外部端子48b〜48dとで形成されている。
【0094】
この第三のレジスト膜42は図5(a)に示すように第一の金属端子37と接続する第一の外部端子46aと、第二の金属端子41が設けられている。また、第四のレジスト膜43は図5(b)に示す如く、上記第一の外部端子46aと接続する第一の外部端子46bと、上記第二の金属端子41と接続する第二の外部端子47bと第三の外部端子48bとが設けられている。
【0095】
そして、第五のレジスト膜44には図5(c)に示す如く、上記第一の外部端子46bと上記第二の外部端子47bと上記第三の外部端子48bの夫々と接続する第一の外部端子46cと第二の外部端子47cと第三の外部端子48cとが設けられている。上記第三の外部端子48cは面に対して渦状のコイル部として形成されており、このコイル部の一方は第三の外部端子48bと接続しており、他方は第三の外部端子48dと接続している。
【0096】
さらに、第六のレジスト膜45には図5(d)に示す如く、上記第一の外部端子46cと上記第二の外部端子47cと上記第三の外部端子48cの夫々と接続する第一の外部端子46dと第二の外部端子47dと第三の外部端子48dとが設けられている。
【0097】
そして、この第一の金属端子37および第二の金属端子41は銅またはアルミニウムからなる電気伝導度が高く、抵抗の低い金属を用いて厚膜に形成されている。また、この第一の金属端子37はその表面がCMPにより平滑化されるとともに、基板31の上面との平坦化がなされている。
【0098】
また、この第三〜第六のレジスト膜42〜45は、レジスト樹脂にパターンニングをして開口部を設けた所定厚みのレジスト膜を形成して、この開口部にメッキをして、レジスト膜の表面をCMPにより平坦化して積層することを順次行い形成した。
【0099】
具体的にこの保護層33を次の通り形成して、薄膜コンデンサ30を作成した。
【0100】
基板31の表面に設けられた第一の金属端子37の上に、下面電極膜38と誘電体薄膜39と上面電極膜40を順に積層したコンデンサ部分32を形成した後、図5(a)に示す如く、この基板31の上に280μm×240μmの第二の金属端子41および200μm×60μmの第一の外部端子46aを有する厚さ20μmの第三のレジスト膜42を形成した。
【0101】
次に、図5(b)に示す如く、上記第三のレジスト膜42の上に200μm×60μmの第一の外部端子46bと200μm×60μmの第二の外部端子47bと30μm×60μmの第三の外部端子48bとを有する厚さ10μmの第四のレジスト膜43を形成した。
【0102】
次に、図5(c)に示す如く、上記第四のレジスト膜43の上に200μm×60μmの第一の外部端子46cと200μm×60μmの第二の外部端子47cと幅30μm、全長1000μmの渦状のコイル部である第三の外部端子48cとを有する厚さ5μmの第五のレジスト膜44を形成した。
【0103】
次に、図5(d)に示す如く、上記第五のレジスト膜44の上に200μm×60μmの第一の外部端子46dと200μm×60μmの第二の外部端子47dと30μm×60μmの第三の外部端子48dとを有する厚さ25μmの第六のレジスト膜45を形成した。
【0104】
そして、支持基材の上に形成された積層物を所定の寸法に切断して、支持基材から分離することにより、薄膜コンデンサ30を得た(コンデンサ寸法:400×1000×120(μm)、静電容量:33(pF))。
【0105】
そして、このように保護層33が複数からなるとともに、この保護層33のうち少なくとも一層に図5(c)に示すような渦状のコイル部を形成して、このコイル部からなる第三の外部端子48を保護層33に設け、この第三の外部端子48の一方を第二の金属端子41と接続させるとともに、他方を保護層33の表面から露出させることにより、コイルを有する薄膜コンデンサ30が得られる。
【0106】
以上のように本実施の形態では、コイルを有する薄膜コンデンサ30は図6に示すような第一の外部端子46をグランド端子、第二の外部端子47を出力端子、第三の外部端子48を入力端子とするローパスフィルターを構成することが可能になるとともに、さらにノイズ除去能力を向上させることが可能になる。また、コンデンサとコイルの積層化によりさらなる小型薄型化が可能となるものである。
【0107】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。
【0108】
実施の形態4は実施の形態2の保護層に抵抗部を設けた構成に変更したところに特徴を有しており、その他の点は実施の形態2と同様の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0109】
そこで、この特徴構成について図7〜図9を用いて説明すると、図7は本発明の実施の形態による薄膜コンデンサの構成を示した断面図であり、図8(a)〜(c)はこの薄膜コンデンサの保護層を構成する各層の上面図である。また、図9はこの薄膜コンデンサにより得られるフィルタ回路の回路図である。
【0110】
図7において、49は薄膜コンデンサを示し、この薄膜コンデンサ49は、有機物からなる基板50と、この基板50の上に設けられたコンデンサ部分51と、このコンデンサ部分51の上に形成された第二の金属端子60と、このコンデンサ部分51と第二の金属端子60を覆うように基板50の上に設けられた保護層52とから構成されている。
【0111】
この基板50は、第一のレジスト膜53と、この第一のレジスト膜53の上に形成した第二のレジスト膜54とからなり、また、この第二のレジスト膜54に設けられた開口部により基板50の上面に設けられた凹部55が形成されている。
【0112】
この凹部55に第一の金属端子56を形成して、この第一の金属端子56の上に下面電極膜57と誘電体薄膜58と上面電極膜59とを順に形成し積層して、上記誘電体薄膜58を介して下面電極膜57と上面電極膜59とを接続させることでコンデンサ部分51が形成されている。
【0113】
そして、このコンデンサ部分51の上に、上面電極膜59と接続する開口部を有する第三のレジスト膜61を形成して、この開口部に第二の金属端子60を形成することで、コンデンサ部分51を介して第一の金属端子56と第二の金属端子60とが接続されている。
【0114】
また、保護層52にはその一方が第一の金属端子56と接続するとともに、他方が保護層52の表面から露出する第一の外部端子64と、その一方が第二の金属端子60と接続するとともに、他方が保護層52の表面から露出する第二の外部端子65と、その一方が第二の金属端子60と接続するとともに、他方が保護層52の表面から露出する第三の外部端子66とが設けられている。
【0115】
この第一の外部端子64は第一の外部端子64a〜64cとで形成されており、この第二の外部端子65は第二の外部端子65bと65cとで形成されており、この第三の外部端子66は第三の外部端子66a〜66cとで形成されている。
【0116】
そして、この第一の金属端子56および第二の金属端子60は銅またはアルミニウムからなる電気伝導度が高く、抵抗の低い金属を用いて厚膜に形成されている。また、この第一の金属端子56はその表面がCMPにより平滑化されるとともに、基板50の上面との平坦化がなされている。
【0117】
また、このコンデンサ部分51と第二の金属端子60を覆う保護層52は、図8(a)〜(c)に示すように第三のレジスト膜61と第四のレジスト膜62と第五のレジスト膜63とが順に積層されて形成されている。
【0118】
この第三のレジスト膜61は図8(a)に示すように第一の金属端子56と接続する第一の外部端子64aと、第二の金属端子60が設けられている。また、第四のレジスト膜62は図8(b)に示す如く、上記第一の外部端子64aと接続する第一の外部端子64bと、上記第二の金属端子60と接続する第二の外部端子65bおよび第三の外部端子66aとが設けられている。
【0119】
そして、図7および図8(b)に示す如く、この第四のレジスト膜62の上に第三の外部端子66bが抵抗部として形成されており、この第三の外部端子66bの一方は第三の外部端子66aと接続され、他方は第三の外部端子66cと接続されている。
【0120】
さらに、この第三の外部端子66bを覆うように設けられた第五のレジスト膜63には図8(c)に示す如く、上記第一の外部端子64bと上記第二の外部端子65bと上記第三の外部端子66bの夫々と接続する第一の外部端子64cと第二の外部端子65cと第三の外部端子66cとが設けられている。
【0121】
この抵抗部となる第三の外部端子66bは、0.5Paの真空中でDCスパッタ法により、上記第四のレジスト膜62の上に厚さ15nmのニッケル−クロミウム−鉄−マンガン合金膜を形成し、上記ニッケル−クロミウム−鉄−マンガン膜の上に所定形状のレジストマスクを形成して、ウェットエッチングをすることにより形成した。
【0122】
また、この第三〜第五のレジスト膜61〜63は、レジスト樹脂にパターンニングをして開口部を設けた所定厚みのレジスト膜を形成して、この開口部にメッキをして、レジスト膜の表面をCMPにより平坦化することを順次行い形成した。
【0123】
具体的にこの保護層52を次の通り形成して、薄膜コンデンサ49を作成した。
【0124】
基板50の表面に設けられた第一の金属端子56の上に、下面電極膜57と誘電体薄膜58と上面電極膜59を順に積層したコンデンサ部分51を形成して、このコンデンサ部分51の側部にバリア層を形成した後、図8(a)に示す如く、この基板50の上に280μm×240μmの第二の金属端子60および200μm×60μmの第一の外部端子64aを有する厚さ20μmの第三のレジスト膜61を形成した。
【0125】
次に、図8(b)に示す如く、上記第三のレジスト膜61の上に200μm×60μmの第一の外部端子64bと200μm×60μmの第二の外部端子65bと30μm×60μmの第三の外部端子66aとを有する厚さ25μmの第四のレジスト膜62を形成した。
【0126】
さらに、この第四のレジスト膜62の上に幅30μm、全長1000μmの抵抗部である厚さ100nmの第三の外部端子66bを形成した。
【0127】
次に、図8(c)に示す如く、上記第三の外部端子66bを覆うとともに、上記第四のレジスト膜62の上に200μm×60μmの第一の外部端子64cと、200μm×60μmの第二の外部端子65cと、30μm×60μmの第三の外部端子66cとを有する厚さ25μmの第五のレジスト膜63を形成した。
【0128】
そして、支持基材の上に形成された積層物を所定の寸法に切断して、支持基材から分離することにより、薄膜コンデンサ49を得た(コンデンサ寸法:400×1000×120(μm)、静電容量:33(pF))。
【0129】
そして、このように保護層52が複数からなるとともに、この保護層52のうち少なくとも一層に抵抗が高い材料を用いて図8(b)に示すような抵抗部を形成して、この抵抗部からなる第三の外部端子66bを保護層52に設け、この第三の外部端子66bの一方を第二の金属端子60と接続させるとともに、他方を保護層52の表面から露出させることにより、第二の金属端子60と第三の外部端子66bとの間に抵抗を有する薄膜コンデンサ49が得られる。
【0130】
以上のように本実施の形態では、抵抗を有する薄膜コンデンサ49は図9に示すような第一の外部端子64をグランド端子、第二の外部端子65を出力端子、第三の外部端子66を入力端子とするローパスフィルターを構成することが可能になるとともに、さらにノイズ除去能力を向上させることが可能になる。また、コンデンサと抵抗の積層化によりさらなる小型薄型化が可能となるものである。
【0131】
なお、抵抗部となる第三の外部端子66bにはニッケル−クロミウム−鉄−マンガン合金を用いたが、これ以外にも基板50および保護層52が熱によって変形収縮することを防ぐために300℃以下の低温形成ができるとともに、比抵抗が高いニッケル−クロミウム合金、タンタルナイトライドなどを用いても良い。
【0132】
さらに、第三の外部端子66bの幅は5〜50μmが好ましく、狭いほど高い抵抗が形成できるが、5μmより狭いと断線の恐れがあり、50μmより広いと抵抗が下がり、高い抵抗を得ることが困難になるためである。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明による薄膜コンデンサは、有機物からなる基板を用いて、電気伝導度が高く、抵抗が低い金属を用いて第一の金属端子と第二の金属端子とを厚く形成するとともに、第一の金属端子の表面を平坦化することで、第一の金属端子と第二の金属端子の抵抗が下がるとともに、均一な厚みの誘電体薄膜が形成されることにより、ESRが低く、安定した特性の小型薄型化が可能な薄膜コンデンサを実現するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施の形態1における薄膜コンデンサの構成を示した断面図
【図2】同実施の形態2における薄膜コンデンサの構成を示した断面図
【図3】同実施の形態2における薄膜コンデンサの別の構成を示した断面図
【図4】同実施の形態3における薄膜コンデンサの構成を示した断面図
【図5】(a)は同薄膜コンデンサの保護層における第三のレジスト膜の構成を示した上面図、(b)は同第四のレジスト膜の構成を示した上面図、(c)は同第五のレジスト膜の構成を示した上面図、(d)は同第六のレジスト膜の構成を示した上面図
【図6】同薄膜コンデンサの構成による回路図
【図7】同実施の形態4における薄膜コンデンサの構成を示した断面図
【図8】(a)は同薄膜コンデンサの保護層における第三のレジスト膜の構成を示した上面図、(b)は同第四のレジスト膜の構成を示した上面図、(c)は同第五のレジスト膜の構成を示した上面図
【図9】同薄膜コンデンサの構成による回路図
【図10】従来の薄膜コンデンサの構成を示した断面図
【符号の説明】
【0135】
1、13、30、49 薄膜コンデンサ
2、14、31、50 基板
3、22、39、58 誘電体薄膜
4、16、33、52 保護層
7、19、36、55 凹部
8、20、37、56 第一の金属端子
9、24、41、60 第二の金属端子
10、15、32、51 コンデンサ部分
11、27、46、64 第一の外部端子
12、28、47、65 第二の外部端子
21、38、57 下面電極膜
23、40、59 上面電極膜
29 バリア層
48、66 第三の外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物からなる基板と、前記基板の上面に設けられた凹部と、前記基板の凹部に形成されたアルミニウムからなる第一の金属端子と、前記第一の金属端子の上に形成された誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜の上に形成されたアルミニウムからなる第二の金属端子と、前記誘電体薄膜と前記第二の金属端子とを覆うように設けられた保護層と、その一方が前記第一の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第一の外部端子と、その一方が前記第二の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第二の外部端子とを有し、前記誘電体薄膜を前記第一の金属端子と前記第二の金属端子とで挟むことによりコンデンサ部分を形成するとともに、少なくとも前記第一の金属端子の表面を化学的機械研磨することにより前記基板の表面を平滑化したことを特徴とする薄膜コンデンサ。
【請求項2】
有機物からなる基板と、前記基板の上面に設けられた凹部と、前記基板の凹部に形成された銅またはアルミニウムからなる第一の金属端子と、前記第一の金属端子の上に形成された下面電極膜と、前記下面電極膜の上に形成された誘電体薄膜と、前記誘電体薄膜の上に形成された上面電極膜と、前記上面電極膜の上に形成された銅またはアルミニウムからなる第二の金属端子と、前記下面電極膜と前記誘電体薄膜と前記上面電極膜と前記第二の金属端子とを覆うように設けられた保護層と、その一方が前記第一の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第一の外部端子と、その一方が前記第二の金属端子と接続するとともに、他方が前記保護層の表面から露出するように設けられた第二の外部端子とを有し、前記誘電体薄膜を前記下面電極膜と前記上面電極膜とで挟むことによりコンデンサ部分を形成するとともに、少なくとも前記第一の金属端子の表面を化学的機械研磨することにより前記基板の表面を平滑化したことを特徴とする薄膜コンデンサ。
【請求項3】
誘電体薄膜が第一の金属端子の内側に位置する請求項1または請求項2に記載の薄膜コンデンサ。
【請求項4】
アルミニウムからなる上面電極膜の周縁部に無機物からなるバリア層を設けた請求項2に記載の薄膜コンデンサ。
【請求項5】
保護層が複数からなるとともに、前記保護層の少なくともひとつはコイル部または抵抗部を有し、前記コイル部または抵抗部からなる第三の外部端子を前記保護層に設け、前記第三の外部端子は前記コイル部または抵抗部の一方を第二の金属端子と接続させるとともに、他方を前記保護層の表面から露出させるようにした請求項1または請求項2に記載の薄膜コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−281278(P2007−281278A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107363(P2006−107363)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】