説明

薄膜塗工装置

【課題】低粘度の塗工液でも液垂れ現象を生じさせず均一に精度良く塗工でき、しかも着脱用載置部に載置させた水平着脱位置でノズル部の着脱搬送作業が行え、例えばCNTやLRなどの低粘度で10μm以上の膜厚が要求される塗工装置の実用化が図れる極めて優れた画期的な薄膜塗工装置を提供すること。
【解決手段】着脱用載置部5に載置した水平着脱位置のノズル部2を、前記支承ロール3の上部で対設する上部位置に移動させこの上部位置でノズル部2を下方に向けて保持して、前記支承ロール3で支承されている前記被塗工体4に塗工液を塗工するノズル移動保持機構6を備えた薄膜塗工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット状の先端吐出孔から塗工液を吐出するノズル部に対して、フィルム状の被塗工体を搬送して表面に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の薄膜塗工装置は、例えば図4に示すように、液供給部から供給された塗工液をスリット状の先端吐出孔から吐出するノズル部2(例えばスロットダイ)をフィルム状の被塗工体4(帯状のフィルムやシート)に対設し、このノズル部2の先端吐出孔から塗工液を吐出しながら、このノズル部2に対向するフィルム状の被塗工体4を搬送させることで、このフィルム状の被塗工体4の表面に塗工液を薄膜状に塗工するように構成している。
【0003】
また、ノズル部を近接させる非接触式の薄膜塗工装置では、例えばフィルム振動が生じないように支承ロール3(バックアップロール)でフィルム状の被塗工体4を支承し、この支承ロール3に前記ノズル部2を対向近接させ、このフィルム状の被塗工体4を搬送しつつ支承ロール3で支承されているこの被塗工体4にノズル部2から塗工液を吐出させて塗工しこれを乾燥装置13で乾燥する構成としている。
【0004】
また、このノズル部2と被塗工体4との近接距離(コーティングギャップ)を微調整できるようにノズル部2を支承ロール3に対して進退移動自在に設けている。
【0005】
具体的には取付台部14に移動ユニット15を進退移動自在に設け、この移動ユニット15の内面及び上面を取付部(上面をノズル部着脱用載置部)としてこれをノズル部2を取り付け、このノズル部2を取り付けた移動ユニット15を進退移動調整してコーティングギャップを微調整している。
【0006】
また一方、被塗工体4が幅広となるほどノズル部2は幅広となり大型化し、幅600mm以上となると重量も例えば100Kgと重くなるため、ノズル部2の前記進退移動調整精度又は交換時やメンテナンス時にノズル部2を取り外して吊り上げるなどの着脱搬送作業が容易となるように、支承ロール3の側方に配置した取付台部14の上部水平部に移動ユニット15を水平方向に退避移動自在となるように構成して、ノズル部2を支承ロール3に対して水平方向に進退移動自在となるように構成している。
【0007】
即ち、例えば被塗工体の幅(サイズ)が異なったり、異なる塗工液に変更したり、メンテナンスのためにノズル部を交換あるいは洗浄するために取り外す場合があるが、重量のあるノズル部を下方に被塗工体や支承ロールなどがあって一切部品もゴミも落とせない状況下で着脱搬送作業を行うことは困難であるため、ノズル部は支承ロールの側方に、即ち支承ロールと水平方向(やや角度を付けても良く略水平方向を含む意味である)から対向近接するようにノズル部を配設し、着脱にあたっては取付部(取付台部あるいは移動ユニット)上で取り外し作業を行ってその上方に吊り上げ搬送させ、装着時も同様に行って着脱搬送作業が容易に行える構成としている。
【0008】
従って、従来の薄膜塗工装置は、大型となればなるほどノズル部は水平方向に配設し、これと対向するフィルム状の被塗工体は支承ロールに支承させて上下方向に配設して、この水平方向から対向近接させたノズル部によって塗工するように構成し、コーティングギャップの移動微調整は取付台部上で移動ユニットを介するなどして水平方向に移動させ、またメンテナンス時の着脱においては上方に吊り上げ搬送できる構成としている。
【0009】
しかしながら、このような従来の薄膜塗工装置では、図5に示すように、フィルム状の被塗工体4が上下方向に配され、これに横方向からノズル部2を近接させて塗工するため、粘度の低い塗工液の場合は、塗工時に重力の影響を受けて塗布直後に液垂れするおそれがあり、低粘度の場合には塗工膜の膜厚精度が十分でなかったり均一化が図れなかったりしてその膜厚に限界があった。
【0010】
例えば、固形分が数%と少なく溶媒がほとんどで、粘度が1〜3cPなどの塗工液を10μm以上のWet膜厚で塗工したい場合には、前記液垂れ現象によってムラが生じ欠陥が発生するおそれがある。
【0011】
例えば、タッチパネルなどに使用されITO膜(Indium Tin Oxide)の代替えとして用いられるCNT(Carbon nanotube)や反射防止膜として用いられるLR(Low Reflection)などは、前述のような1〜2cPの低粘度で、しかもWet膜厚で10μm以上の膜厚で塗布する必要があるため、液垂れ現象によりムラが発生する場合があることから、スロットダイでの塗工は困難とされ、高価で製造速度の遅いスパッタリングにより作製せざるを得なかった。
【0012】
また、このようなCNTやLRの塗工の場合、コーティングギャップをできるだけ狭くするように微調整することで液垂れ現象を抑えるようにすることも考えられるが、運転安全性を配慮するとこの微調整にも限界があるし、またこれ程低粘度で且つ膜厚が厚く要求される場合には十分に抑えきれない。また被塗工体の搬送速度を上げて抑えることも考えられるがこれも乾燥工程を考慮するとやはり限界があった。
【0013】
また一方、ノズル部は重量があるため液垂れ現象を防止するために支承ロールの上方にノズル部を配置することは、前述のように下方に支承ロール及び被塗工体がある位置で着脱作業や吊り上げ搬送することが困難であることから、支承ロールの上部にノズル部を設けることはできないとされてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、支承ロールの上部にノズル部を対向近接させることはできないとされてきた固定観念を打破し、前記問題点を解決したもので、上部位置で下方の支承ロールに支承されているフィルム状の被塗工体に塗工する構成とすることで、たとえ低粘度の塗工液でも液垂れ現象を生じさせず均一に精度良く塗工でき、しかも被塗工体や支承ロールの上部でノズル部の着脱作業や吊り上げ搬送作業などの着脱搬送作業を行うのでなく、従来通り支承ロールの側方で着脱用載置部に載置してこの支承ロールと水平方向で対向する水平着脱位置で着脱搬送作業を行え、故に例えばCNTやLRなどの低粘度で10μm以上の膜厚が要求される塗工装置の実用化が図れる極めて優れた画期的な薄膜塗工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0016】
液供給部から供給された塗工液をスリット状の先端吐出孔1から吐出するノズル部2を、支承ロール3に支承されて搬送されるフィルム状の被塗工体4に対設して、この被塗工体4の表面に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置において、前記ノズル部2を着脱自在に設け、このノズル部2が着脱時に載置される着脱用載置部5を前記支承ロール3の側方に設けて、前記ノズル部2を前記支承ロール3と水平方向に対設する位置で着脱自在となるように構成し、この着脱用載置部5に載置して前記支承ロール3と水平方向に対設する水平着脱位置の前記ノズル部2を、前記支承ロール3の上部で対設する上部位置に移動させこの上部位置でノズル部2を下方に向けて保持して、前記支承ロール3で支承されている前記被塗工体4に塗工液を塗工するノズル移動保持機構6を備えたことを特徴とする薄膜塗工装置に係るものである。
【0017】
また、前記水平着脱位置の前記ノズル部2を、前記支承ロール3の上部で対設する前記上部位置まで移動させる際のガイドとなるノズル移動ガイド機構7と、前記上部位置で前記ノズル部2を保持して下方の前記被塗工体4に塗工するノズル保持機構8とを設けて前記ノズル移動保持機構6を構成し、前記ノズル部2を前記上部位置に移動させて塗工でき、交換時若しくはメンテナンス時には前記ノズル部2を前記着脱用載置部5に載置し前記水平着脱位置に戻して着脱するように構成したことを特徴とする請求項1記載の薄膜塗工装置に係るものである。
【0018】
また、前記ノズル移動ガイド機構7は、前記先端吐出孔1を前記支承ロール3に向けた状態を保持したまま前記ノズル部2を支承ロール3の周方向に沿って移動するようにガイドする円弧状ガイド部11を備えた構成としたことを特徴とする請求項2記載の薄膜塗工装置に係るものである。
【0019】
また、前記ノズル保持機構8は、塗工位置となる前記上部位置で前記ノズル部2を保持する位置決め係止部若しくは移動駆動用歯合部若しくは移動駆動用螺着部で構成したことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置に係るものである。
【0020】
また、前記ノズル部2を前記支承ロール3に向かって進退移動自在に設け、この進退移動により前記支承ロール3に支承されている前記被塗工体4との距離を微調整するノズル進退調整機構9を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置に係るものである。
【0021】
また、前記ノズル進退調整機構9を備えて前記ノズル部2を前記支承ロール3に対して進退移動調整自在に構成したノズルユニット10を、前記ノズル移動保持機構6により前記水平着脱位置から前記上部位置にスライド移動切替自在に設け、前記ノズルユニット10を前記着脱用載置部5に載置した前記水平着脱位置でこのノズルユニット10を着脱若しくはこのノズルユニット10から前記ノズル部2を着脱して前記ノズル部2を着脱するように構成したことを特徴とする請求項5記載の薄膜塗工装置に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したから、上部位置で下方の支承ロールに支承されているフィルム状の被塗工体に塗工できるため、たとえ低粘度の塗工液でも液垂れ現象を生じさせず均一に精度良く塗工でき、しかも被塗工体や支承ロールの上部でノズル部の着脱作業や吊り上げ搬送作業などの着脱搬送作業を行うのでなく、従来通り支承ロールの側方で着脱用載置部に載置してこの支承ロールと水平方向で対向する水平着脱位置で着脱搬送作業を行え、故に例えばCNTやLRなどの低粘度で10μm以上の膜厚が要求される塗工装置の実用化が図れる極めて優れた画期的な薄膜塗工装置となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明においては、着脱搬送作業を行う水平着脱位置と、塗工する上部位置との切替移動が容易に行える一層優れた薄膜塗工装置となる。
【0024】
また、請求項3,4記載の発明においては、一層簡易な構成で容易に実現できる一層実用性に優れた薄膜塗工装置となる。
【0025】
また、請求項5記載の発明においては、コーティングギャップの微調整を行うこともでき、特に請求項6記載の発明においては、このコーティングギャップの調整を上部位置でも行うことが可能となったり、またこの上部位置又は水平着脱位置あるいはその他の位置でこのコーティングギャップを調整した後、これを再調整しなくてもノズル部をこのまま移動できたり、又は移動した後上部位置で再度微調整を行うことも可能となるなど極めて優れた薄膜塗工装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例の概略構成斜視図である。
【図2】本実施例の説明正面図である。
【図3】本実施例の塗工時の拡大説明正断面図である。
【図4】従来例の説明正面図である。
【図5】従来例の塗工時の拡大説明正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0028】
支承ロール3(バックアップロール)に支承されて搬送されるフィルム状の被塗工体4に近接させて塗工するノズル部2は、塗工時は支承ロール3の上方に移動させ、この塗工位置となる上部位置(真上のみでなく角度を有する場合など下方に支承ロール3が位置する範囲を含む)で、ノズル部2を下方に向けて保持し下方のフィルム状の被塗工体4に近接させて塗工する。
【0029】
これにより塗工時に重力が働きにくく液垂れ現象が生じにくくなる。特にノズル部2を垂直方向下向きとし、フィルム状の被塗工体4と相対するようにして、支承ロール3の頂部真上にこのノズル部2の先端吐出孔1を近接させれば、液垂れ現象はほとんど生じない。
【0030】
このように上部位置で塗工するが、交換時やメンテナンス時あるいは不使用時には、この上部位置から支承ロール3の側方に設けた着脱用載置部5に載置して、ノズル部2をこの支承ロール3と水平方向(少し角度を有する略水平方向を含む意味であり、支承ロール3から後退させることでその上方には支承ロール3はなく、これに干渉するおそれなく容易に吊り上げ搬送できる範囲を含む)で対向する水平着脱位置へ移動し、この下方に支承ロール3や被塗工体4がなく載置した状態で着脱作業や着脱のための吊り上げ搬送作業が行え、従来通りこの着脱搬送作業が容易に行えることとなる。
【0031】
即ち、支承ロール3の上部位置で塗工するため液垂れ現象を抑制でき、例えば1〜3cPなど粘度の低い塗工液を10μm以上の膜厚で塗工する場合でもムラなく均一に精度良く塗工でき、しかも着脱搬送作業も容易に行えることとなる。
【0032】
また、この上部位置で塗工する必要のない場合に水平着脱位置でも従来通り塗工できるように構成しても良いし、また移動途中で保持することで所望の位置や予め設定したノズル角度位置で塗工できるように構成することも可能となる。
【0033】
また、例えばノズル進退調整機構9を備えたノズルユニット10をノズル移動保持機構6のノズル移動ガイド機構7により移動自在に設けることで、塗工位置となる上部位置でコーティングギャップを微調整できるし、これを予め行った後、これを再調整することなく水平着脱位置と上部位置とを移動切替自在に構成することも可能となる。
【0034】
また、例えば着脱用載置部5に載置した水平着脱位置でこのノズルユニット10からノズル部2を着脱自在となるように構成すれば、一層簡易な構成で移動操作も着脱搬送作業も容易に行える。
【0035】
従って、本発明によればCNTやLRなど10μm以上のWet膜厚が要求される低粘度の塗工液も、スパッタリングでなくスロットダイ式で塗工できることとなり、極めて実用性に優れた画期的な薄膜塗工装置を実現できる。
【実施例】
【0036】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0037】
本実施例では、液供給部から供給管12を介して供給された塗工液をスリット状の先端吐出孔1から吐出するノズル部2を、支承ロール3に支承されて搬送されるフィルム状の被塗工体4に対設して、この被塗工体4の表面に塗工液を薄膜状に塗工するように構成している。
【0038】
ノズル部2は、スロットダイと称されるもので、間隙を介して対向部材を組み付けてこの間隙を液供給路とし、この液供給路に外部の液供給部から供給管12を介して供給され先端吐出孔1から吐出させるもので、この液供給路には液溜め部19を設けるなどして先端吐出孔1から塗工液が均一に吐出する構成としている。
【0039】
また、フィルム状の被塗工体4は、巻出ロールから巻き出され、ロールなどを介してノズル部2と対向する支承ロール3(バックアップロール)を通り、塗工膜を乾燥させる乾燥装置13を通って搬送されるもので、ノズル部2の先端部が接触して傷付けたりノズル部2の先端部が摩耗して不純物が膜に混入したりすることなく、均一な塗工膜を形成させるために、ノズル部2を非接触にして近接させる構成としているが、乾燥工程などによるフィルム振動を抑えて均一に塗工できるように支承ロール3で反対面を支承させた状態(支承ロール3に当接した支持状態)でこの支承ロール3にノズル部2を対向近接して塗工する構成としている。
【0040】
本実施例では、この支承ロール3の側方に従来通り取付台部14を配置し、この取付台部14上の水平上面にガイド部を介して移動ユニット15を水平方向に支承ロール3に向けて進退移動自在に構成している。
【0041】
この移動ユニット15に設けたナット部を前記取付台部14上に水平架設したボールネジ16に螺着し、このボールネジ16をμmオーダーで回動駆動制御する進退駆動装置17を設けてこの移動ユニット15を高精度に進退駆動できるように構成している。
【0042】
この移動ユニット15の台部の上面を着脱時に戻し移動させて載置する着脱用載置部5とし、これに本実施例では後述するノズルユニット10を載置してこのノズルユニット10からノズル部2を着脱し、上方に吊り上げて着脱搬送自在に設けている。
【0043】
従来は、この進退駆動装置17を前述のようにμmオーダーで駆動制御できるようにして、この進退駆動機構が、コーティングギャップの調整機構と、着脱時の後退移動機構とを兼ねるものとしていたが、本実施例では、この進退駆動機構は着脱時に支承ロール3から後退させるためのもので、コーティングギャップの調整は別途設ける後述のノズルユニット10に備えるノズル進退調整機構9により行う構成としている。
【0044】
また本実施例では、このようにノズル進退調整機構9を備えたノズル部2をノズルユニット10として設けて、これをノズル移動保持機構6のノズル移動ガイド機構7により移動する構成とし、着脱時には上部位置からこの着脱用載置部5上に戻し載置し、この載置状態で上方に吊り上げスペースが確保された状態でノズル部2を着脱できるように構成している。
【0045】
更に説明すると、本実施例は、このようにノズル部2を着脱用載置部5に載置して前記支承ロール3と水平方向に対設する位置で従来通り着脱自在となるように設けている。即ち、前述したとおり取付台部14上の移動ユニット15の上面を着脱用載置部5として、この着脱用載置部5に載置した状態で着脱作業が行え、この取り外したノズル部2を支承ロール3と干渉することなく吊り上げ搬送できる水平着脱位置で着脱搬送自在に設けている。
【0046】
また、この着脱用載置部5に載置して前記支承ロール3と水平方向に対設した水平着脱位置の前記ノズル部2を、前記支承ロール3の上部で対設する上部位置に移動させこの上部位置でノズル部2を下方に向けて保持して、前記支承ロール3で支承されている被塗工体4に塗工液を塗工するノズル移動保持機構6を備えている。
【0047】
本実施例のこのノズル移動保持機構6は、水平着脱位置の前記ノズル部2を、前記上部位置まで移動させる際のガイドとなるノズル移動ガイド機構7と、前記上部位置で前記ノズル部2を保持して下方の前記被塗工体4に塗工するノズル保持機構8とを設けた構成とし、前記ノズル部2を前記上部位置に(本実施例では液垂れをほとんど生じない真上位置まで)移動させて塗工でき、交換時若しくはメンテナンス時には前記着脱用載置部5に載置させた水平着脱位置に戻して着脱するように構成している。
【0048】
また、このノズル移動保持機構6のノズル移動ガイド機構7は、前記先端吐出孔1を前記支承ロール3に向けた状態を保持したまま前記ノズル部2を支承ロール3の周方向に沿って移動するようにガイドする円弧状ガイド部11を備えた構成としている。
【0049】
この円弧状ガイド部11は半円弧状とし、これを前記着脱用載置部5を設けた取付台部14(この上に設けた移動ユニット15)上に二本並設状態に左右に立設し、各一方をガイドレールとし各他方には例えばラック歯20を設け、このラック歯20に歯合するピニオンを前記ノズルユニット10の両端部に前記円弧状ガイド部11に沿って移動する移動ブロック21に内装し、このピニオンを回動駆動する移動駆動部18を設けてノズル移動ガイド機構7を構成すると共に、このラック歯20とピニオンとが常に歯合しているこの駆動用歯合部を有する構成とすることで前記移動位置が保持されるノズル保持機構8を構成し、このノズル保持機構8とノズル移動ガイド機構7とによって前記ノズル移動保持機構6を構成している。
【0050】
本実施例では、ノズル保持機構8を移動駆動用歯合部で構成したが、このような歯合部や移動駆動用螺着部などでなく、あるいはこれに加えて、ノズル部2を保持する位置決め係止部、例えば上部位置で受孔と合致するピン孔にピンを差し入れたり、あるいは別途ロック機構を設けてノズル保持機構8を構成しても良い。
【0051】
また、本実施例では、水平着脱位置でも従来通り塗工でき、またこの水平着脱位置と上部位置の途中でノズル移動ガイド機構7により移動するノズル部2を止めて保持し塗工することができるように構成している。
【0052】
従って、本実施例では、支承ロール3に対して水平対向位置から真上位置までの範囲でノズル部2を所望の角度となるように移動させて保持し任意の角度で塗工できる構成としている。
【0053】
また、本実施例では、前述のように前記ノズル部2を前記支承ロール3に向かって進退移動自在に設け、この進退移動により前記支承ロール3に支承されている前記被塗工体4との距離を微調整するノズル進退調整機構9を備えているが、本実施例では、このノズル進退調整機構9を備えて前記ノズル部2を前記支承ロール3に対して進退移動調整自在に構成したノズルユニット10を、前記ノズル移動ガイド機構7により前記ノズル部2の着脱位置であり前記支承ロール3と水平方向に対向する前記着脱用載置部5に載置させた水平着脱位置から、前記支承ロール3の上方で対向する前記上部位置にスライド移動切替自在に設けている。
【0054】
従って、上部位置でコーティングギャップを微調整したり、またこの調整を変更せずにこのまま位置を移動できたり、またその位置で再調整することもできることとなる。
【0055】
また本実施例のノズルユニット10は、例えば以下のように構成する。
【0056】
前記ノズル移動ガイド機構7の左右に夫々二本並設状態に立設した前記円弧状ガイド部11にスライド自在に係合する左右一対の移動ブロック21を設け、この移動ブロック21に前記円弧状ガイド部11に設けた前記ラック歯20に歯合するピニオンを内装すると共に、このピニオンを駆動する移動駆動部18を設けている。
【0057】
この移動ブロック21の対向内側に支承ロール3に向けての進退移動をガイドする進退移動ガイド部22(例えば凹溝)を設け、この進退移動ガイド部22にスライド自在に係合する進退駆動用係合部23をノズル部2の両端部に設けて、ノズル部2をどの位置でも支承ロール3に向けて進退駆動自在にしてノズル移動ガイド機構7の円弧状の円弧状ガイド部11間にスライド移動自在に架設した構成としている。
【0058】
またこの進退駆動用係合部23はノズル部2の両端部に着脱用ボルト25により着脱自在に取り付けられL板状又はコ字状板に係合部を設ける構成とするなどして、ノズル部2をノズルユニット10(左右のノズル進退調整機構9、即ち移動ブロック21及びこの進退駆動用係合部23)から着脱用ボルト25を外して着脱できるように構成すると共に、前記移動ユニット15に載置した水平着脱位置でこの着脱用ボルト25を着脱操作し易く、外したノズル部2をこの着脱用載置部5から載置した状態からそのまま上方に吊り上げられるように上方に吊り上げスペースが確保される構成としている。
【0059】
具体的には、前記進退駆動用係合部23をL状板又はコ字状板で構成することで、着脱用載置部5に載置した際にこの板が立設状態となってこれにより外すノズル部2を上方に吊り上げ易いように構成している。
【0060】
また、本実施例では、この着脱用載置部5を設けた移動ユニット15を後退させてから着脱できるから一層着脱搬送作業が容易となる。
【0061】
従って、このように本実施例のノズルユニット10を水平着脱位置から上部位置(本実施例では真上位置)まで移動して、更に進退移動してコーティングギャップを微調整でき、そして水平着脱位置に戻して着脱用載置部5に載置した状態で着脱搬送作業が容易に行えることになる。
【0062】
また、このノズル進退調整機構9による進退移動制御は、例えば進退駆動部24により回動するボールネジに螺合するナット部を前記進退駆動用係合部23の係合部に設け、この進退駆動部24をμmオーダーの精度の高いサーボモータとすることでコーティングギャップを微調整できるように構成することができる。
【0063】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0064】
1 先端吐出孔
2 ノズル部
3 支承ロール
4 被塗工体
5 着脱用載置部
6 ノズル移動保持機構
7 ノズル移動ガイド機構
8 ノズル保持機構
9 ノズル進退調整機構
10 ノズルユニット
11 円弧状ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液供給部から供給された塗工液をスリット状の先端吐出孔から吐出するノズル部を、支承ロールに支承されて搬送されるフィルム状の被塗工体に対設して、この被塗工体の表面に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置において、前記ノズル部を着脱自在に設け、このノズル部が着脱時に載置される着脱用載置部を前記支承ロールの側方に設けて、前記ノズル部を前記支承ロールと水平方向に対設する位置で着脱自在となるように構成し、この着脱用載置部に載置して前記支承ロールと水平方向に対設する水平着脱位置の前記ノズル部を、前記支承ロールの上部で対設する上部位置に移動させこの上部位置でノズル部を下方に向けて保持して、前記支承ロールで支承されている前記被塗工体に塗工液を塗工するノズル移動保持機構を備えたことを特徴とする薄膜塗工装置。
【請求項2】
前記水平着脱位置の前記ノズル部を、前記支承ロールの上部で対設する前記上部位置まで移動させる際のガイドとなるノズル移動ガイド機構と、前記上部位置で前記ノズル部を保持して下方の前記被塗工体に塗工するノズル保持機構とを設けて前記ノズル移動保持機構を構成し、前記ノズル部を前記上部位置に移動させて塗工でき、交換時若しくはメンテナンス時には前記ノズル部を前記着脱用載置部に載置し前記水平着脱位置に戻して着脱するように構成したことを特徴とする請求項1記載の薄膜塗工装置。
【請求項3】
前記ノズル移動ガイド機構は、前記先端吐出孔を前記支承ロールに向けた状態を保持したまま前記ノズル部を支承ロールの周方向に沿って移動するようにガイドする円弧状ガイド部を備えた構成としたことを特徴とする請求項2記載の薄膜塗工装置。
【請求項4】
前記ノズル保持機構は、塗工位置となる前記上部位置で前記ノズル部を保持する位置決め係止部若しくは移動駆動用歯合部若しくは移動駆動用螺着部で構成したことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置。
【請求項5】
前記ノズル部を前記支承ロールに向かって進退移動自在に設け、この進退移動により前記支承ロールに支承されている前記被塗工体との距離を微調整するノズル進退調整機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置。
【請求項6】
前記ノズル進退調整機構を備えて前記ノズル部を前記支承ロールに対して進退移動調整自在に構成したノズルユニットを、前記ノズル移動保持機構により前記水平着脱位置から前記上部位置にスライド移動切替自在に設け、前記ノズルユニットを前記着脱用載置部に載置した前記水平着脱位置でこのノズルユニットを着脱若しくはこのノズルユニットから前記ノズル部を着脱して前記ノズル部を着脱するように構成したことを特徴とする請求項5記載の薄膜塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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