説明

薬剤で増強される癒着防止

【課題】例えば腹腔、胸部および脊椎手術後の癒着形成は、主要な術後罹病および死亡原因となる。トラニラストが癒着防止剤として研究されているが、癒着の抑制または防止へのトラニラストの全身投与の効果に関する研究の価値および妥当性は疑わしい。
【解決手段】本発明は、手術に供した体腔の組織表面間の体内術後癒着形成の抑制法であって、当該表面での癒着形成を抑制するのに有効な量および条件での、直接的な、体腔の組織表面へのトラニラストまたはその類似体の投与を含む抑制法、ならびに、身体への薬剤の局所非全身投与、および手術に供した体腔内の組織への直接的な薬剤の局所非全身投与での使用に適した送達ビヒクルおよび組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本出願は、2003年11月17日提出の、係属中の米国特許出願 S/N 10/714, 719の一部継続出願である。
【0002】
〔発明の技術分野〕
本発明は、体腔中の組織表面間の術後癒着形成を抑制または防止するためのトラニラストおよびその類似体、また、術後癒着の抑制または防止を目的とする身体へのトラニラストまたはその類似体の局所的非全身投与のためのトラニラストまたはその類似体を含有する組成物または薬剤送達用具に関する。
【0003】
〔発明の背景〕
特に、例えば腹腔、胸部および脊椎手術後の癒着形成は、術後罹病および死亡の主要な原因となる。例えば虫垂切除術および婦人科手術は、臨床的に重大な癒着形成にかかわる最も多い手術である。最も重症の腹腔内癒着合併症は、腸閉塞である。さらに、癒着は、女性における慢性または再発性骨盤痛および不妊、脊柱の神経圧迫および疼痛、胸部手術の術後合併症、および、再建術後の手の可動性喪失に関連する。
【0004】
癒着形成の病原は、複雑であり、完全には理解されていない。第一段階は、過剰のフィブリン沈着による足場の形成を含むと考えられる。その後、線維芽細胞などの細胞を含む細胞要素によるフィブリン足場の組織化が続く。
【0005】
各種の癒着形成防止法が、活発に探究されている(ジゼレガ, G.S. およびロドガーズ, K.E.(diZerega, G.S. & Rodgers, K.E.)編集「ザ・ペラタニーム」("The Peritoneum")中のジゼレガ, G.S. およびロドガーズ, K.E.(diZerega, G.S. & Rodgers, K.E.)著「プリベンション・オブ・ポストオペラティブ・アドヒージョン」("Prevention of Postoperative Adhesion")、p.307〜p.369、ニューヨーク、シュプリンガー・フェアラーク(Springer-Verlag)出版、1992年)。一般に、治療は、いくつかのカテゴリーのいずれかに分類される。即ち、組織接合(tissue apposition)の制限、局所組織炎症の軽減、フィブリン沈着の防止およびフィブリン沈着物の除去、線維芽細胞などの細胞の増殖低減、および、コラーゲン阻害である。
【0006】
例えば、重要な治癒期間中の組織接合を制限し、それによって、組織表面間のフィブリンマトリックスの発生を最小限に抑えることによって癒着形成を防止する試みとして、物理的バリアが使用されている。利用されているバリア剤は、機械的バリアと粘性溶液の両方を含む。ポリ(テトラフルオロエチレン)(poly (tetrafluoroethylene))などのフィルムバリアを使って、複合効果結果が得られている。当該膜も、所定の位置に縫合しなければならず、非吸収性であるので、理想的とはいえない。吸収性バリアが好ましいと思われるが、一部の研究は、当該バリアの効果が癒着防止において理想的とはいえないことを実証している。癒着防止での使用に、液体バリアも検討されている。例えば、硫酸コンドロイチンおよびカルボキシメチルセルロースが、共に、動物モデルで、ある程度有望であると認められている。
【0007】
術後癒着形成に対する作用について、抗炎症剤が評価されている。当該薬剤が、手術部位の炎症に応答した線維素性滲出液の放出を制限することができるからである。これらの薬剤の2つの一般的クラスが検討されている。即ち、コルチコステロイドと非ステロイド抗炎症剤である。動物試験におけるコルチコステロイド使用の結果は、総じて、有望なものではなく、コルチコステロイドの臨床使用は、他の薬理学的性状によって制約を受ける。非ステロイド抗炎症剤は、術後癒着形成の抑制に有望である(ジゼレガ, G.S.(diZerega, G.S.)ら編集「トリートメント・オブ・ポストサージカル・アドヒージョン」("Treatment of Post-Surgical Adhesions")中のロドガーズ, K.E.(Rodgers, K.E.)著「ノンステロイダル・アンチ‐インフラマトリー・ドラッグズ(NSAIDs)・イン・ザ・トリートメント・オブ・ポストサージカル・アドヒージョン」("Nonsteroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs) in the treatment of Postsurgical adhesion,")p.119〜p.129、ニューヨーク、ウィリー‐リス(Wiley-Liss)出版、1990年)。
【0008】
探究された別の方法は、フィブリン沈着物の除去に関する。タンパク分解酵素(例、ペプシン、トリプシンおよびパパイン)は、理論的には、局所線溶系を増強し、癒着形成を制限するはずであるが、これらの酵素は、腹腔滲出液によって急速に中和され、これが、事実上、癒着予防にとって当該酵素を無益にする。各種線溶剤、例えばフィブリノリジン、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼが提唱されているが、術後療法におけるこれらの酵素の臨床使用に対して考え得る合併症は、当該酵素の投与から起こる過剰出血である。
【0009】
最後に、コラーゲン阻害剤が評価された。コラーゲンの生合成は、独特のプロ-アルファ鎖の翻訳後改質に関係する。コラーゲン形成の主要段階であるプロリルおよびリシル残基のヒドロキシル化は、正常な三本鎖らせん形成および分子間架橋にとって重要である。翻訳後プロセッシングが阻害されると、非らせんプロコラーゲンが生じ、その後、これが、細胞内プロテアーゼによって分解され、非機能性タンパクとして低速で細胞外マトリックスに分泌される。プロリン類似体、例えばシス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(cHyp)の新生プロ-アルファ鎖への取り込みは、コラーゲンの細胞外蓄積を低減することが立証されている。当該物質は、一般に、コラーゲン合成を阻害し、それによって、アテローム動脈硬化症や高血圧などの線維症の特定の病理生理学的後遺症を回避することによって、さらに強く作用すると考えられる。結合角の歪みによって、また、ポリペプチド鎖間の立体障害から、cHypは、プロ-アルファ鎖が折りたたまれて安定な三本鎖らせん構造になるのを阻害する。シス-4-フルオロプロリン、シス-4-ブロモプロリンおよび3,4-デヒドロプロリンなどの他のプロリン類似体は、同様の作用を有するが、他の翻訳後段階を阻害することもできる。化合物3,4-デヒドロプロリンは、他の翻訳後段階を阻害することもできるプロリン類似体の一例である。例えば、3,4-デヒドロプロリンは、プロリルヒドロキシラーゼ活性を阻害する。不運なことに、cHypは、不適切に使用すると、特に長期使用で、創傷治癒を抑制し、それによって、臨床有用性を制限してしまう、ということが認識されている。
【0010】
トラニラストとして一般に知られている化合物N-(3,4-ジメトキシシンナモイル)アントラニール酸も、ラットにおける癒着防止剤として検討されている(シンヤ, A.(Shinya, A.)ら著、(1999年),「ザ・プリベンション・オブ・ポストオペラティブ・イントラペリトニール・アドヒージョン・バイ・トラニラスト・N-(3,4-ジメトキシシンナモイル)・アントラニール・アシッド」("The Prevention of Postoperative Intraperitoneal Adhesion by Tranilast: N-(3,4-dimethoxycinnamoyl) Anthranilic Acid,")ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・サージャリー(Jpn J Surg.)29: 51-54)。この研究では、Shinyaらは、ラット腹腔内癒着モデルにおいて、術前、術後の両方で経口全身投与を使用した。しかし、非常に注目すべき点として、この研究に使用されたモデルでは、手術部位の擦過傷による虚血は実施されなかった。そのため、ヒトにおいて血流の喪失を惹起し、臨床状況をより正確に模倣するのに必要な外傷のタイプは、存在しなかったと考えられる。組織プラスミノーゲン活性低下、フィブリン沈着および癒着形成に大きくに寄与するのが、このような血流喪失である。従って、癒着の抑制または防止へのトラニラストの全身投与の効果に関する当該研究の価値および妥当性は、疑わしいと考えられる。
【0011】
術後癒着の形成を抑制または防止する改良治療法、ならびに、当該治療法に使用される組成物または送達用具を提供するのが有利であると思われる。本発明は、単独で、あるいは、薬剤送達組成物または用具によって、直接手術部位にトラニラストを送達し、当該癒着の形成を抑制または防止できるような改良を驚くべき発見によって提供する。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明は、
手術に供した体腔の組織表面間の体内術後癒着形成の抑制法であって、当該表面での癒着形成を抑制するのに有効な量および条件での、直接的な、体腔の組織表面へのトラニラストまたはその類似体の投与を含む抑制法、
ならびに、
手術に供した体腔内の組織への直接的な薬剤の非全身投与での使用に適した送達ビヒクルおよび組成物であって、トラニラストを体腔の術後癒着の抑制を提供するのに有効な条件下で当該組織に投与する際に当該ビヒクルまたは組成物が、術後癒着形成を抑制するのに有効な量のトラニラストを含むビヒクルまたは組成物
に向けたものである。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本発明に従った組成物、その投与法および当該組成物の身体組織への非全身投与での使用に適した送達ビヒクルは、最も多い共通原因が以前に行なった外科手術である、組織および/または臓器表面間の癒着形成、を抑制または防止する上で有用である。術後の癒着形成の防止は好ましいと思われるが、癒着形成度または範囲が、本明細書に記述するものなど、癒着形成に関わる重大問題を起こさないように小さくなるように、当該癒着の形成を抑制するのが申し分ない。
【0014】
本発明の方法および組成物は、術後の腹腔での癒着形成の抑制に特に有効であることが立証されている。さらに、本発明では、他の状況、例えば心臓血管、整形外科、胸部、眼科、CNS(中枢神経系)の手術、手などの再建術、および、癒着形成が非常に懸念される他の用途での有用性が認められている。さらに、化学療法剤の腹腔内投与中の癒着形成または薬剤被包化の抑制、あるいは、モルヒネなどの鎮痛剤の投与中の癒着形成または薬剤被包化の抑制も望ましい。化学療法剤または他の治療薬を含有する組成物とのトラニラストの配合物は、当該治療薬が求める治療効果を提供するだけでなく、当該組成物の投与結果として形成の可能性のある癒着形成を抑制することを目的とするが、これも、本発明の範囲に包含される。
【0015】
本発明は、N-(3,4-ジメトキシシンナモイル)アントラニール酸としても知られるトラニラストまたは、炎症、アレルギーおよび喘息の治療に周知の化合物であるその類似体は、術後癒着の形成を抑制するのに有効な量および条件下で、組織および体腔に直接投与した場合、術後の体腔内の組織表面間の癒着形成の軽減または防止に有用である、という発見に基づいている。
【0016】
癒着形成に関与するプロセスは、炎症応答、細胞増殖および分化、血管形成、細胞外マトリックス交替、組織改造およびアポトーシス(チェギニ, N(Chegini, N)著、 (2002年)、「ペリトニール・モレキュラー・エンバイロンメント,アドヒージョン・フォーメーション・アンド・クリニカル・インプリケーション」("Peritoneal Molecular Environment, Adhesion Formation and Clinical Implication,")フロンティアズ・イン・バイオサイエンス7(Frontiers in Bioscience 7,) e91-115, 2002年4月1日)を含むが、それらに制約されない。
【0017】
しかし、技術上認識されているように、トラニラストまたはその類似体のこれらの、可能な作用メカニズムは、それ自体、これらの化合物が癒着形成の軽減に有用であるか否かを予測できるには十分ではないようだと思われる。事実、トラニラストのいくつかの性質が、この化合物は癒着形成の軽減または抑制に無効の可能性があると示唆している。例えば、トラニラストは、現在まで検討された細胞アッセイのいずれにおいても、特に癒着形成に重要なプロセス、例えばTGF-β分泌、コラーゲン合成または細胞増殖において、強力なIC50値を発揮していない。
【0018】
本明細書に開示された具体的実施態様は、トラニラストを術後癒着形成の抑制または防止に有用な化合物として例証しているが、当然、トラニラストの類似体および誘導体も、本発明での使用に適していると考えられることを理解されたい。トラニラストの適切な類似体および誘導体は、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)(4-((フェニルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)ホルムアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-2-(4-((フェニルアミノ)-カルボニルアミノ)フェニル)エタンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((フェニルアミノ)-カルボニルアミノ)フェニル)プロプ-2-エンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((フェニルアミノ)-カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-((フェニルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)ブタンアミド、N-(2-アセチル4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((フェニルカルボニルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(2-フェニルアセチルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(フェノキシカルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((2-ニトロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((3-ニトロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-ニトロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((2-アミノフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((3-アミノフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-アミノフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-フルオロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-アセチルフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-メチルフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-メトキシフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-ピリジル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((ベンジルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((ブチルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、および、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((シクロヘキシルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミドを含むが、それらに制約されない。当然、トラニラスト類似体は、トラニラスト塩も含み、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含むが、それらに制約されないことも理解されたい。
【0019】
好ましいトラニラスト類似体および誘導体は、局所、全身の両レベルで、毒性をほとんど、または、まったく示さず、ヒトを含む動物での使用に適した化合物である。いったん、本開示の恩恵を受けると、当業者は、それらの類似体を容易に識別できることになる。
【0020】
本発明に従って、トラニラストまたはその類似体は、予想される癒着形成部位で、癒着形成を防止するのに十分な期間中、有効濃度で投与、維持される。トラニラストまたはその類似体は、典型的には、術後の所与の期間に亘って、創傷部位が完全治癒するまで、体腔に投与される。一部の実施態様では、本明細書に記述するとおりに、トラニラストは、単回投与で送達され、体腔で組織と接触維持されることができる。他の実施態様では、トラニラストは、時間を調節して一連の用量で送達され、癒着形成を抑制するのに十分な時間に亘って、即ち徐放によって、投与を持続することができる。
【0021】
トラニラストまたはその類似体の治療有効濃度は、体腔組織に適用すると、手術を受けた体腔の組織表面間の術後癒着形成を抑制または防止する濃度である。投与可能なトラニラストまたはその類似体の最小量は、本明細書で述べるように、術後癒着の形成を抑制するのに有効でなければならない。投与可能なトラニラストまたはその類似体の最大量は、当該化合物の毒性によって制限される。一般に、体内に投与されるトラニラストの濃度範囲は、体重1 kg当りトラニラスト約0.01 mg〜体重1 kg当りトラニラスト約3,000 mgになる。好ましくは、トラニラストまたはその類似体の範囲は、約0.1 mg/kg〜約1,000 mg/kgとする。トラニラストの投与は、液体またはバリア送達ビヒクルによることができ、または、以下にさらに詳細に述べる別の方法で行なうことができる。
【0022】
本発明の方法に従って、トラニラストは、術後部位での癒着形成を軽減または抑制または防止することを目的に、身体組織への薬剤の非全身投与に適した送達ビヒクル、例えばポリ(エチレングリコール)/カルボキシメチルセルロースナトリウム水性ゲル(poly (ethylene glycol) /sodium carboxymethylcellulose aqueous gel)、と合わせて、当該部位に実施した手術後に対象負傷部位に、直接投与される。好ましくは、トラニラストは、術後の皮膚縫合前に、前記部位の治癒過程での癒着形成を防止するのに十分な期間に亘って当該化合物の必要な有効濃度を維持できる送達ビヒクルを使って、単回投与で投与される。適切な送達ビヒクル自体は、基本的に、非炎症性、非免疫原性であり、所望の期間に亘ってトラニラストの有効レベルを維持するようにトラニラストを放出することが可能である。
【0023】
トラニラストまたはその類似体の投与のための様々な代わりとなる徐放送達ビヒクルも、治療有効量のトラニラストを含有する場合、本発明の範囲内と考えられる。適切な送達ビヒクルは、マイクロカプセルまたはマイクロスフィア(微小球);リポソームおよび他の脂質主体放出系;吸収性および/または生分解性機械的バリア;ポリマー送達材、制約されない例として、ポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイドブロックコポリマー(即ち、ポロキサマー)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水物)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メタクリルアミド)、陰イオン炭水化物ポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、および、ポリアセタールを含むが、それらに制約されない。最も好ましくは、最も望ましいトラニラスト放出プロファイル、ニアシュードゼロオーダー (near pseudo zero order、擬ゼロ次近似)を達成するのに適切な配合物は、生分解性ポリマーから調製される注射用マイクロカプセルまたはマイクロスフィアを含み、当該生分解性ポリマーは、ポリ(l-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(l-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(アルキレンジグリコレート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、グリセリド、および、それらのコポリマーおよび混合物であるが、それらに制約されない。ゼロ次徐放(zero-order sustained release)が後に続く、トラニラストの初期急激放出を生じるプロファイルなどの他の望ましい放出プロファイルは、封入薬剤と非封入薬剤を混合して配合物とすることによって得ることができる。
【0024】
本発明に従って使用可能なグリセリド、長鎖カルボン酸エステルは、モノステアリン酸グリセリル;モノパルミチン酸グリセリル;モノステアリン酸グリセリルおよびモノパルミチン酸グリセリルの混合物(Myvaplex 600、ニューヨーク州ロチェスターのイーストマン・ファイン・ケミカル・カンパニー(Eastman Fine Chemical Company)から販売);モノリノール酸グリセリル;モノオレイン酸グリセリル;モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルおよびモノリノール酸グリセリルの混合物(Myverol、イーストマン・ファイン・ケミカル・カンパニー(Eastman Fine Chemical Company));モノリノレン酸グリセリル;モノガドレン酸グリセリル;モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルおよびモノリノール酸グリセリル、モノリノレン酸グリセリルおよびモノガドレン酸グリセリルの混合物(Myverol 18-99、イーストマン・ファイン・ケミカル・カンパニー(Eastman Fine Chemical Company));蒸留アセチル化モノグリセリド(Myvacet 5-07、7-07および9-45、イーストマン・ファイン・ケミカル・カンパニー(Eastman Fine Chemical Company))などのアセチル化グリセリド;プロピレングリコールモノエステル、蒸留モノグリセリド、ステアロイル乳酸ナトリウムおよび二酸化ケイ素の混合物(Myvatex TL、イーストマン・ファイン・ケミカル・カンパニー(Eastman Fine Chemical Company));d-アルファ-トコフェロール-ポリエチレングリコール1000コハク酸塩(Vitamin E TPGS、イーストマン・ファイン・ケミカル・カンパニー(Eastman Fine Chemical Company));モノ‐およびジ-グリセリドエステル混合物;ステアロイル乳酸カルシウム;エトキシル化モノ‐およびジ-グリセリド;乳酸モノおよびジ-グリセリド;グリセロールおよびプロピレングリコールの乳酸カルボン酸エステル;長鎖カルボン酸のラクチルエステル(lactylic esters);長鎖カルボン酸のポリグリセロールエステル;長鎖カルボン酸のプロピレングリコールモノ‐およびジ-エステル;ステアロイル乳酸ナトリウム;モノステアリン酸ソルビタン;モノオレイン酸ソルビタン;長鎖カルボン酸の他のソルビタンエステル;サクシニル化モノグリセリド、クエン酸ステアリルモノグリセリル;ヘプタン酸ステアリル;ワックスのセチルエステル;オクタン酸ステアリル;C10〜C30コレステロウラボステロールエステル(cholesteroulavosterol esters);スクロース長鎖カルボン酸エステルを含むが、それらに制約されない。
【0025】
これらのグリセリドは、単独でも、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、ジドコサン酸グリセリル(glyceryl didocosanoate)、トリドコサン酸グリセリル、モノドコサン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、ジカプリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、モノデケン酸グリセリル(glyceryl monodecenoate)、ジデケン酸グリセリルおよびトリデケン酸グリセリルなどのトリグリセリルエステルを含むがそれらに制約されない他のグリセリドと配合しても使用できる。
【0026】
約1〜約1,000マイクロメートルの大きさの直径のマイクロカプセルまたはマイクロスフィアを含む注射可能な系は、他の送達系よりも有利である。それは、当該系が、本質的にマイクロカプセルサイズ、薬剤充填および投与量を選択することによって個々の薬剤放出の時間および速度を自在にデザインできるからである。さらに、当該マイクロカプセルは、γ線照射またはエチレンオキサイドなどの手段によって滅菌に成功することができる。
【0027】
マイクロスフィアおよびマイクロカプセルは、ビヒクル、あるいは液体または固体コアを封入するポリマー壁を含む系である。マイクロスフィア壁は、通常、コア材と反応しないが、高いコア対壁容積比を可能にするだけの十分な薄さである一方、破裂させずに普通に扱えるだけの十分な強度を提供するようにデザインされている。スフィア/カプセル内容物は、拡散、または、当該スフィア/カプセル内に含有される材料を溶解し、融解し、破壊し、破裂させ、あるいは、排除する他の手段によって放出されるまで、当該壁内に残留する。好ましくは、当該スフィア/カプセル壁は、適切な環境で崩壊および分解するように作ることができ、よって、コア材をカプセル壁を通って拡散させ、ゆっくりとした、持続的送達を提供することができる。
【0028】
生分解性マイクロスフィアの放出メカニズムは、薬剤拡散とポリマー生分解の組み合わせである。そのため、放出の速度および時間は、マイクロスフィアの大きさ、薬剤の含量と質、および、ポリマーパラメーター、例えば結晶度、分子量および組成など、によって決定される。特に、放出される薬剤の量の調整は、一般に、壁の厚さの変更、直径の変更、またはその両方によって達成される。
【0029】
さらに、生分解性ポリマーに基づき、かつ、本発明に従った使用に適した別の送達系、例えば活性剤を含むファイバー、フィルム、フォーム(泡)、またはフィラメントなども、有効量のトラニラストまたはその類似体を含有する場合、本発明の範囲内であると考えられる。
【0030】
トラニラストの単回投与送達の代替法は、上記のものなどの生分解性ポリマーの、フィルム状態での使用を含む。当該フィルムは、適切なキャリア中の生体ポリマーおよびトラニラストを含有する分散液滴の、対象部位への加圧容器からの噴霧または排出によって生成できる。
【0031】
当該フィルム、ファイバー、フォームおよび粒子は、当業者に周知の多様なプロセスによって調製できる。当該プロセスは、スピニングディスク、溶解/沈殿プロセス、圧縮成形、射出成形、押出、および、超臨界流体プロセスを含むが、それらに制約されない。
【0032】
本発明に従ったトラニラストの単回投与送達の別法は、リポソームおよび、多重膜ベシクル(即ち、リポソーム)中に活性剤を封入するための脂質主体送達系の使用を含む。典型的な手法では、リポソーム形成粉末脂質混合物を、所望量の水溶液(例、リン酸緩衝生理食塩水)中活性剤に添加し、懸濁液を形成する。適切な水和時間後、次に、水和懸濁液をオートクレーブにかけ、リポソーム-活性剤調製液を提供する。
【0033】
リポソーム組成物は、通常ステロイド、特にコレステロールと配合したリン脂質配合物、特に高相転移温度リン脂質配合物を含むことができる。他のリン脂質または他の脂質も使用できる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および、二価陽イオンの存在に依存する。リポソーム生成に有用な脂質の例は、フォスファチジル化合物、例えばフォスファチジルグリセロール、フォスファチジルコリン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、スフィンゴリピド、セレブロシドおよびガングリオシドを含む。特に有用なのは、脂質部分が炭素原子14〜18個、特に16〜18個を含有し、飽和状態であるジアシルフォスファチジルグリセロールである。具体的リン脂質は、卵黄フォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリンおよび卵黄フォスファチジルコリンを含む。
【0034】
リポソームの形成に適した脂質混合物は、クロロホルムに溶解されたL-アルファ-ジステアロイルフォスファチジルコリンとコレステロールから調製でき、これに、アルファ-トコフェロールを添加する。リポソーム形成用の他の組成物および方法も、この目的上、有用であり、いったん本開示の恩恵を受けると、当業者に明らかになる。
【0035】
他の脂質主体送達系も、本発明での使用に考慮される。ある有用な系は、例えばDEPOFOAM(カリフォルニア州サンディエゴのSkyPharama, Inc.)の商品名で販売されているものなどの脂質フォームを含み、これは、それぞれ活性成分を封入した多数の非同心水性チャンバーを含有する単一二重層脂質膜によって境界を画した球状粒子を含む徐放性製剤である。当該脂質粒子は、細胞膜中に検出されるものと同一の無毒脂質から作られている。
【0036】
本発明に従ったトラニラストの単回投与送達のための別の適切な方法は、晶質およびいわゆる粘性点滴(viscous instillate)の使用に関する。晶質は、半透膜を通過拡散できる水溶性結晶性物質、例えばNaClとして技術上周知である。生理食塩水などの晶質溶液は、晶質、晶質液または晶質点滴として周知である。晶質点滴は、乳酸加リンゲル液、生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水を含むが、それらに制約されない。粘性点滴の場合、活性剤との混合剤に使用される高分子量キャリアは、デキストランおよびシクロデキストラン;ヒドロゲル;粘弾性物質および架橋粘弾性物質を含む架橋粘性材;カルボキシメチルセルロース;ポリ(サッカライド);ヒアルロン酸;架橋ヒアルロン酸およびオルトエステルと調合したヒアルロン酸を含むが、それらに制約されない。
【0037】
本発明の別の好ましい実施態様では、バリアの形態の送達ビヒクルおよびトラニラストは、手術時または術前に他剤と配合する場合、さらに高い効果を示すことができる。例えば、RETAVASE(インディアナ州インディアナポリスのBoehringer Mannheim Corp.)の商品名で販売されている遺伝子組換えプラスミノーゲンアクチベーター化合物などの抗線維症剤を、手術時、部位に送達し、その後、バリア/コラーゲン合成阻害剤(トラニラストなど)を部位上に配置する。手術部位の血液凝固を制限するプラスミノーゲンアクチベーター化合物、組織表面の接合を制限するバリア、および、コラーゲン合成を阻害するトラニラストの併用効果は、癒着を劇的に軽減できる。術後の局所非全身投与と合わせて、追加治療薬を、様々な手段で、術前、術中または術後に全身投与することもできる。さらに、驚くべき発見のとおり、また、下記のように、トラニラストは、トラニラストの局所非全身投与と合わせて、全身投与することができる。
【0038】
トラニラストと配合して用いることができる治療薬は、抗血小板薬、抗線維症薬、抗炎症剤、抗増殖剤および/またはコラーゲン合成阻害剤の一般的クラスに分類できる。これらは、ウロキナーゼ、RETAVASE(インディアナ州インディアナポリスのBoehringer Mannheim Corp.)の商品名で販売されている組織プラスミノーゲンアクチベーターの非グリコシル化欠失変異タンパク、REOPRO(インディアナ州インディアナポリスのEli Lilly and Company)の商品名で販売されている、循環器系疾患の予防および治療用アブシキシマブ含有製剤、PLAVIX(フランス パリのSanofi-Synthelabo,)の商品名で販売されている硫酸クロピドグレル、GLEEVEC(スイス バーゼルのNovartis AG, Basel)の商品名で販売されている腫瘍分野で使用するイマチニブメシレート含有製剤、トリアムシノロンアセトニド、テポキサリン、ピルフェニドン、コラゲナーゼ、抗-CTGF、チロシンキナーゼ阻害剤、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、リスリオキシダーゼ阻害剤(lysly oxidase inhibitors)、C-プロテイナーゼ阻害剤、N-プロテイナーゼ阻害剤、タモキシフェンなどのTGFβ阻害剤、ロバスタチンなどのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤、COX-1および/またはCOX-2阻害剤、例えばイブプロフェン、ニメスリド、VIOXX(ニュージャージー州ホワイトハウスステーションのMerck & Co., Inc.)の商品名で販売されている関節炎治療用ボフェコキシブ含有製剤(pharmaceutical preparation containing vofecoxib)、CELEBREX (イリノイ州スコーキーのG.D.Searle & Co.) の商品名で販売されているセレコキシブ含有抗炎症鎮痛剤の性質の製剤、BEXTRA(ニュージャージー州North PeapacknのPharmacia & Upjohn Co.)の商品名で販売されているバルデコキシブ含有製剤、高血圧の治療に使用される、アムロジピンなどのカルシウムイオン阻害剤、ニフェジピン、ベラパミルなどの製剤、DESFERAL(スイス バーゼルのNovartis AG)の商品名で販売されているデフェロキサミンなどの鉄キレート剤、クラリスロマイシンおよびシプロフロキシン(Ciprofloxin)などの抗生物質、トレチノインおよびレチノイン酸などのレチノイド、キマーゼ阻害剤、ペミロラストとして知られる9-メチル-3-(1H-テトラゾール-5-イル)-4H-ピリド[1,2-α]ピリミジン-4-オンカリウム、および、それらの類似体を含むが、それらに制約されない。トラニラストと配合して使用する場合、治療薬、または、薬剤は、当該治療薬の投与によって目的とする治療効果を提供するのに有効な量で存在する。
【0039】
本発明のある実施態様では、トラニラストは、物理的バリアと併用される。適切な物理的バリアとトラニラストの併用に対して、予想外の相乗作用を生じることができ、トラニラスト、バリアのそれぞれの単独使用よりも良好な結果が得られる、と考えられる。例えば、ポリエチレングリコールを含むバリアは、表面に抗血栓形成作用があり、そのため、血小板付着を防ぎ、一部のフィブリン凝固の発生を防止できると思われる。同時に、癒着連鎖の後発事象、例えばコラーゲン合成、に影響を与えるトラニラストまたはその類似体を長時間かけて、対象部位に送達することができる。よって、トラニラスト/バリア配合は、1回以上の癒着生成事象に影響を与えることによって、トラニラストとバリアの和よりも高い効果を発揮することになる。他のバリアも、トラニラストとの配合で当該作用を発揮できる。
【0040】
別の例として、ヒアルロン酸は、細胞増殖を減少させ(抗-増殖性)、優れたコーティング剤であり、接合する組織表面間に滑らかな表面を提供することが提案されている。身体は、まさにこのような目的で、即ち、表面-関節の接合にヒアルロン酸を排泄する。当該バリアは、例えば、親水性のポリマーカルボキシメチルセルロースゲルであることができ、これが、部位組織に付着し、また、優れた生体適合性を有するので、コラーゲン合成を誘発できる炎症応答を惹起しない。ヒアルロン酸バリアは、トラニラストと併用することによって、トラニラスト、ヒアルロン酸それぞれよりも有効であることができる。
【0041】
他のバリアは、各種のヒアルロン酸誘導体(鉄、ナトリウムなどの塩;ベンジルなどのエステル);セルロース誘導体(酸化再生;メチル;エチル;ヒドロキシプロピル);コラーゲン;ポリエチレングリコール(in-situ(原位置)架橋を含む);プルロニック;キチン、キトサン;デキストラン;グルコース;炭水化物;ゼラチン;グリコサミノグリカン;ポリアクリルアミド;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリメチアクリル物(polymethyacrylics);アリギネート(aliginates);デンプン;ポリペプチド;および他の水溶性ポリマーおよびそれらの混合物を含むが、それらに制約されない。当該ポリマーは、加水分解性、もしくは、酵素分解性のポリマー、例えばポリラクトン、ポリオキサエステル、ポリアルキレンジグリコレート、およびグリセリド含有ポリマー、およびそれらのコポリマーおよび混合物と共重合または混合することもできる。バリアは、ポリテトラフルオロエチレンなどの非吸収性バリアであることもできる。本発明のトラニラストおよび/または他の治療薬は、当該バリアに共有結合または非共有結合(例、イオン結合)することもでき、あるいは、単にバリア内に分散することもできる。
【0042】
本明細書に述べる送達ビヒクルは、薬剤を局所に送達するゲルなどのバリアを含むだけでなく、浸透圧ポンプなどの他の局所投与法による薬剤送達を含むこともできる点も、知っておく必要がある。
【0043】
本発明は、添付の実施例を参照することによって、さらに良好に理解できるが、これらの実施例は、例示にすぎないことを意図するもので、決して、以下の添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲を制限すると見なしてはならない。
【0044】
〔例〕
腹膜手術後の癒着形成の軽減または抑制におけるトラニラストの効果を確認する複数の試験を、側壁癒着モデルを使って実施した。
【0045】
腹膜側壁モデルでは、ウサギをアセチルプロマジン1.2 mg/kgで前麻酔し、塩酸ケタミン55 mg/kgおよびキシラジン5 mg/kgの混合物の筋肉内注射で麻酔した。無菌手術の準備後、正中開腹術を実施した。3 cm x 5 cmの面積の腹膜および腹横筋を右側腹壁で除去した。盲腸を外置し、指圧を加え、盲腸表面全体に漿膜下出血(外傷および血流喪失)を生じた。次に、盲腸を正常な解剖構造位置に戻した。下記のとおりの送達ビヒクル中に含有されるトラニラストをAlzet(登録商標)ミニ浸透圧ポンプ(カリフォルニア州パロアルトのAlza Corporation)中に入れ、術後期間中、当該分子を持続放出させた。Alzetミニ浸透圧ポンプを皮下腔に配置し、送達チューブが当該ポンプを側壁の負傷部位と連結した。対照ウサギのポンプには、送達ビヒクルのみを入れた。腹壁と皮膚を標準化法で閉鎖した。
【0046】
21日後、ウサギを屠殺し、癒着が起こった側壁損傷面積%を決定した。さらに、形成された癒着の強度を、以下のとおりの方式を使って採点した:
0=癒着なし;1=軽度、容易に切離可能な癒着;2=中等度癒着;切離不能、臓器断裂なし;3=緻密癒着;切離不能、排除時に断裂。側壁モデルによって、全癒着範囲を表す初回スコアを示す(0〜3)。
【0047】
各種臓器への癒着を起こした側壁表面%を下表に示し、総合癒着スコアを定量する。癒着の面積および強度の減少は、有益、かつ、有効と考えられる。
【0048】
〔実施例1〕
トラニラストの側壁モデル評価:1週間投与
送達ビヒクル1 mL当りのトラニラストの3段階のmg用量(0.625 mg/mL、6.25 mg/mL、または、62.5 mg/mL)のいずれか、もしくは、プラセボー対照(70%ポリエチレングリコール400、20%Tween80、10%N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC))を満たしたシングルポンプを使って、癒着形成の抑制におけるトラニラストの効果を評価した。薬剤をAlzetミニ浸透圧ポンプに入れ、10 μL/時の速度で7日間に亘って送達した。21日後にウサギを屠殺した。
【0049】
表1〜4は、全被験群の全ウサギについての癒着面積%および癒着強度を示す。当該表は、対照に比較して、トラニラスト投与が、全用量で、この側壁モデルの癒着形成面積を減少させたことを示す。全用量で癒着形成の軽減が認められたが、その変化は、中間量で顕著に有意であった(p<0.001、表3)。
【0050】
平均癒着面積%は、プラセボー対照:100±0(表1);0.625 mg/mLトラニラスト:82.9±8.1(p=0.078、表2);6.25 mg/mLトラニラスト;67.1±7.1(p<0.001、表3);62.5 mg/mLトラニラスト:78.6±9.6(p=0.065、表4)であった。全薬剤量で、形成された癒着強度の有意な減少も認められた(順位による分散分析使用)。
【0051】
最後に、剖検時、トラニラスト投与に伴う臨床徴候は認められなかった。さらに、投与部位に炎症、肉芽腫は、認められなかった。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0052】
〔実施例2〕
トラニラスト側壁モデル評価:2および3週間投与
実施例1に述べる手順の実施後、トラニラストの3段階の用量(0.625、6.25、または、62.5 mgトラニラスト/mLビヒクル)のいずれか、および、プラセボー対照(70%ポリエチレングリコール400、20%Tween80、10%N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC))を、10 μL/時の速度で7日間に亘って送達した。
【0053】
7日後、ウサギを麻酔し、無菌手術の準備後、皮膚に小切開を加えた。次に、ポンプを新しいポンプと取替え、薬剤またはプラセボーを、2回目の7日間期間に亘って10 μL/時の速度で送達した。
【0054】
さらに7日後、ウサギ数羽を麻酔し、無菌手術の準備後、皮膚に2回目の小切開を加えた。やはり、ポンプを別の新しいポンプと取替え、薬剤またはプラセボーを、3回目の7日期間に亘って10 μL/時の速度で送達した。
【0055】
21日後、全ウサギを屠殺した。よって、投与群は次のとおりであった:
第1群:プラセボー対照、7日目と14日目にポンプ取替え
第2群:トラニラスト0.625 mg/mL、7日目にポンプ取替え
第3群:トラニラスト6.25 mg/mL、7日目にポンプ取替え
第4群:トラニラスト62.5 mg/mL、7日目にポンプ取替え
第5群:トラニラスト0.625 mg/mL、7日目と14日目にポンプ取替え
第6群:トラニラスト6.25 mg/mL、7日目と14日目にポンプ取替え
第7群:トラニラスト62.5 mg/mL、7日目と14日目にポンプ取替え
【0056】
剖検時、トラニラスト投与に伴う臨床徴候は認められなかった。さらに、過半数のウサギの投与部位に炎症、肉芽腫は、肉眼で認められなかった。癒着強度を(*)で記したウサギは、肉芽腫が存在する軽度の炎症を有した。結果の変動性は、全ウサギの限局性炎症によると思われ、その限局性炎症は、選択したウサギだけに認められた。ビヒクル投与ウサギに炎症応答が存在したので、当該炎症応答は、このビヒクルの長期投与によるものであると思われる。そのため、効果の結果は、予想される長期炎症反応の存在を考慮して過小評価されたのであろう。
【0057】
表5〜11は、全被験群の全ウサギの癒着面積%および癒着強度を示す。全薬剤量および両時点で癒着形成が減少したが、その変化は、2週間の高用量と3週間の全用量で有意であったことが、これらの表が示している。
【0058】
平均癒着面積%は、次のとおりであった。即ち、プラセボー対照は100±0(表5);トラニラスト0.625 mg/mLの2週間投与は75.1±14.5(表6);トラニラスト6.25 mg/mLの2週間投与は78.8±12.0(表7);トラニラスト62.5 mg/mLの2週間投与は72.5±9.8(表8);トラニラスト0.625 mg/mLの3週間投与は48.6±8.8(表9);トラニラスト6.25 mg/mLの3週間投与は77.1±12.1(表10);トラニラスト62.5 mg/mLの3週間投与は64.3±10.9(表11)であった。全薬剤量で、形成された癒着強度の有意な減少も認められた(順位による分散分析による)。
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【0059】
〔実施例3〕
トラニラスト側壁モデル評価:経口全身投与対局所送達
ウサギ群に、トラニラストまたはプラセボー対照の経口投与または局所送達を実施した。局所送達を受けたウサギでは、プラセボー対照(70%ポリエチレングリコール400、20%Tween80、10%N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC))またはトラニラスト6.25 mg/mLを充填し、手術当日から7日期間に亘って10 μL/時の速度で送る、シングルポンプを皮下腔に配置した。数羽が経口投与(約60mg/kg)を受けた。経口投与は、術前(1日1回、手術日まで5日間、最終投与は、手術の2時間前)、または、1群に対して、術前、術後(術後2日目から21日目まで)に実施した。投与群を以下に示し、さらに明らかにする。
【表12】

【0060】
剖検時、トラニラスト投与に伴う臨床徴候は認められなかった。さらに、投与部位に炎症、肉芽腫は認められなかった。
【0061】
この試験の結果を表12〜16に示す。トラニラストの局所送達を受けた全群で、癒着形成面積が減少した(表13および16)。トラニラスト単独の経口投与は、癒着形成面積を減少させなかった(表14および15)。
【0062】
平均癒着面積%は、プラセボー対照が100±0(表12)、トラニラスト6.25 mg/mLが72.9±11.7(p=0.039、表13)、術前および術後トラニラストが100±0(表14)、術前トラニラスト+局所プラセボーが100±0(表15)および術前トラニラスト+局所トラニラスト6.25 mg/mLが46.7±14.1(p=0.002、表16)であった。
【0063】
トラニラスト単独経口投与は、投与が術前であっても、術前および術後であっても、癒着形成を抑制しなかったという事実にもかかわらず、驚くべきことに、トラニラストの局所投与と併用したトラニラストの術前投与は、癒着形成を抑制した。以下の点に拘束されることを意図するものではないが、血中でのトラニラストの全身性の存在は、それ自体が癒着形成抑制に無効であるが、トラニラストの局所投与と併用して投与すると、癒着防止の抑制の寄与因子になると思われる。トラニラストを受けた全動物群において、形成された癒着強度の有意な減少も認められた(順位による分散分析)。癒着の面積、強度の両方の減少だけが有効と見なされる。
【0064】
死亡した2羽のウサギは、経口投薬の逆流のために手術から回復しなかった。
【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【0065】
実施例で述べるように、トラニラストは、局所投与経路で対象部位に送達すると、有効であることが認められた。全身経路で送達すると、効果が見られなかった。よって、術後癒着を軽減するには、局所送達のみが有効である。
【0066】
〔実施例4〕
トラニラストの脊椎モデル評価
脊椎手術後の癒着形成の軽減におけるトラニラストの効果を確認する追加試験を、ウサギ脊椎椎弓切除術癒着モデルを使って実施する。
【0067】
ウサギ脊柱椎弓切除術モデルにおいて、L5およびL3位で、2段階椎弓切除術を実施する。各ウサギを、フェースマスクからの吸入麻酔(イソフルラン、5.0%)を使って、鎮静化する。次に、腰仙領域を除毛し、ベタジンスクラブおよび70%イソプロピルアルコール溶液で手術準備する。その後、ウサギを手術台上で腹臥位とし、腹部下に配置した水バッグでわずかな腰部屈曲を起こす。腰仙部をベタジン溶液で覆い、無菌的にドレープをかける。L6位からL2位まで正中切開を加える。皮膚を、下位の腰仙筋膜から分離する。当該筋膜を切開し、皮下組織を露出する。皮下組織切開後、筋肉を骨膜下で椎骨突起から切離し、薄層と黄色靭帯を露出する。留置開創器で筋肉を牽引する。表在出血を圧迫して抑える。所定の部位で、棘突起を除去して椎弓全摘を実施し、慎重に薄層を乳頭突起底まで両側で切除する。全ウサギで、黄色靭帯および硬膜外脂肪も除去し、各椎弓全摘出用に、清浄な硬膜を露出する。いったん椎弓切除部位に手術準備すると、圧迫して、あるいは、骨ろうを使用して骨出血を抑える。椎弓切除術で、約5 x 10-mm部分を欠損させる。硬膜の背側表面を、10 cm x 10 cmの滅菌ガーゼ「ボール」(1組の止血鉗子で挟む)で2分間軽く擦って傷をつけ、骨欠損部位に擦過傷を作る。次に、被験材料を当該欠損部に配置する。対照ウサギは、手術のみを受ける。その後、当該創傷部を、洗浄を追加せずに層縫合する。椎弓切除術部位直上の筋肉に単一3-0絹縫合糸を配し、マーカーとして使用する。断続0 Vicryl(登録商標)縫合糸を使用し、腰仙筋膜を近づけ、最後の筋膜閉鎖に4-0Vicrylの連続止め縫いを用いる。皮下組織を断続4-0Vicryl縫合糸で閉鎖する。皮膚の閉鎖には、断続4-0Prolene(登録商標)縫合糸または皮膚ステープルを使用する。
【0068】
術後28日目、ウサギをEutha-6で安楽死させる。周囲組織の外観、手術部位の血液量、手術部位に再生した骨量に基づいて、前記欠損部を検討する。欠損部の両端から脊椎を切断し、溶液に2週間静置し、脱灰を実施し、組織学的評価のために組織を送付する。
【0069】
次に、スライドを準備し、線維症の有無、線維症密度、線維症部位の血管分布、および、異物応答の有無について顕微鏡検査する。40倍の倍率で、その倍率での損傷部位で線維材料を含有した区域数を推定することによって、線維症面積を評価する。線維症密度および異物反応レベルを評価し、点数で表す。
【0070】
〔実施例5〕
回転ディスク(スピニングディスク)プロセスを利用して、トラニラストを封入したポリ(ラクチド)マイクロスフィアを形成した。ポリ(D,L-ラクチド)、即ち、PDLLAを最初に塩化メチレンに溶解した。次に、粉砕したトラニラスト(5〜10 μm)をポリマー溶液に添加し、懸濁液とした。次に、当該懸濁液を急速回転ディスク上に置き、遠心力でポリ(ラクチド)封入トラニラストの液滴(マイクロスフィア)を形成(凝結)し、収集した(コーン上)。この操作を数回実施した。 トラニラスト/ポリマー比、ディスクパラメーターおよびポリマー性状を以下に述べる。マイクロスフィアは、サイズが5〜400μmの範囲であった。
【表18】

【0071】
操作No.1、No.2およびNo.3で25/75、操作No.4およびNo.5で40/60の薬剤/ポリマー比(重量/重量)を使用した。
【0072】
25℃の塩化メチレン中で測定した場合、PDLLAの固有粘度(IV)は、次のとおりである:低IV-50/50 PDLLA−0.48 dL/g、高IV-50/50 PDLLA−0.76 dL/g、および、高IV-75/25 PDLLA−0.76 dL/g
【0073】
いったん調製し、マイクロスフィアを水性ゲルと混合し、例えば脊柱の術後癒着に有用な注射用癒着防止材を形成した。この材料を使って、内部に取り込むトラニラスト徐放マイクロスフィアを有する水性ゲルを含む物理的バリアを形成した。
【0074】
例えば、ガラスバイアル中で、緩衝生理食塩水100 mLに300 kDa乾燥カルボキシメチルセルロースナトリウム粉末3gを高剪断下で混合して、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の3%(重量/容積)水性緩衝化ゲルを調製した。10分間混合した後、均質ゲルが得られた。その後、標準技術を使って、当該ゲルをオートクレーブにかけ、滅菌カルボキシセルロースナトリウムを生じた。操作No.1からのマイクロスフィア(1 g)は、標準ガンマ線照射技術も使って滅菌した。次に、マイクロスフィア1 gを無菌条件下で当該ゲルに混合し、滅菌注射用癒着防止材を形成した。その後、注射用カルボキシメチルセルロースナトリウムゲルおよび封入トラニラストPDLLGAマイクロスフィア 0.5 mLずつ7個を、無菌条件下で1 mLシリンジ7本に移し、包装し、無菌手術用製剤とした。次に、当該材料の効果を証明するために、7本のシリンジの内容物をそれぞれ、実施例4の記述とおりの椎弓切除モデルの7羽のウサギに埋め込んだ。
【0075】
本発明の基本的な新規の特徴を立証し、記述したが、当然、本発明の精神を逸脱することなく、例示された形態および詳細の各種省略、置換および変更を当業者によって加えられることができる。そのため、以下の特許請求の範囲に規定される場合のみ制約されるのが意図するところである。
【0076】
〔実施の態様〕
(1) 手術に供した体腔の組織表面間の体内術後癒着形成の抑制法において、
前記体腔の前記組織表面に、当該組織表面での癒着形成を抑制するのに有効な量および条件下で、トラニラストまたはその類似体を、直接投与する工程、
を含む、抑制法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラストまたはその類似体は、前記身体への治療薬の局所的非全身投与に適した送達ビヒクルと協働して投与される、方法。
(3) 実施態様2に記載の方法において、
前記送達ビヒクルは、マイクロカプセル、マイクロスフィア、バリア、リポソーム、脂質フォーム、溶液、組成物、浸透圧ポンプ、ファイバー、フィラメント、ゲル、フォーム(泡)、およびフィルムからなる群から選択する、方法。
(4) 実施態様3に記載の方法において、
前記バリアは、吸収性である、方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラストは、治療薬と共に投与され、前記治療薬は、前記治療薬の投与により意図する治療効果を提供するのに有効な量で投与される、方法。
【0077】
(6) 実施態様5に記載の方法において、
前記治療薬は、抗血小板薬、抗線維症薬、抗炎症剤、抗増殖剤、およびコラーゲン合成阻害剤からなる群から選択される、方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラスト類似体は、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)(4-((フェニルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)ホルムアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-2-(4-((フェニルアミノ)-カルボニルアミノ)フェニル)エタンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((フェニルアミノ)-カルボニルアミノ)フェニル)プロプ-2-エンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((フェニルアミノ)-カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-((フェニルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)ブタンアミド、N-(2-アセチル‐4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(フェニルカルボニルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(2-フェニルアセチルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(フェノキシカルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((2-ニトロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((3-ニトロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-ニトロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((2-アミノフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((3-アミノフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-アミノフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-フルオロフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-アセチルフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-メチルフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-メトキシフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-(((4-ピリジル)アミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((ベンジルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((ブチルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミド、および、N-(2-アセチル-4,5-ジメトキシフェニル)-3-(4-((シクロヘキシルアミノ)カルボニルアミノ)フェニル)プロパンアミドからなる群から選択される、方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラストまたはその類似体は、単回投与で投与される、方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラストまたはその類似体は、徐放によって投与される、方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラストまたはその類似体は、急激放出/徐放によって投与される、方法。
【0078】
(11) 実施態様1に記載の方法において、
前記トラニラストまたはその類似体は、前記身体の体重1kg当たり0.01mg〜3,000mgのレベルで投与される、方法。
(12) 実施態様1に記載の方法において、
前記手術の前に、前記身体にトラニラストを全身投与する工程、をさらに含む、方法。
(13) 実施態様1に記載の方法において、
トラニラストは、全身投与なしで前記身体の前記体腔の前記組織表面にトラニラストを直接投与するのと比較した場合に、前記身体内での癒着形成抑制を増加するのに効果的な量および時間で、前記手術の前に前記身体に全身投与される、方法。
(14) 身体への薬剤の局所非全身投与に適した送達ビヒクル、および手術に供した体腔内の組織への薬剤の直接的な局所非全身投与に適した送達ビヒクルにおいて、
前記ビヒクルが、トラニラストまたはその類似体を、前記トラニラストの前記組織への局所非全身投与時に術後癒着の形成を抑制するのに有効な量で含む、
送達ビヒクル。
(15) 実施態様14に記載の送達ビヒクルにおいて、
マイクロカプセル、マイクロスフィア、バリア、リポソーム、脂質フォーム、溶液、組成物、浸透圧ポンプ、ファイバー、フィラメント、ゲル、フォーム、およびフィルムから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
【0079】
(16) 実施態様15に記載の送達ビヒクルにおいて、
ポロキサマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水物)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メタクリルアミド)、陰イオン炭水化物ポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリアセタール、ポリ(l-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(l-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(アルキレンジグリコレート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、およびグリセリドポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、
送達ビヒクル。
(17) 実施態様15に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記リポソームが、L-アルファ-ジステアロイルフォスファチジルコリン、フォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、および卵黄フォスファチジルコリンから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
(18) 実施態様15に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記溶液が、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、および乳酸加リンゲル溶液から成る群から選択される晶質点滴(crystalloid instillate)を含む、
送達ビヒクル。
(19) 実施態様15に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記溶液が、デキストラン、シクロデキストラン、ヒドロゲル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(サッカライド)、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、および硫酸コンドロイチンから成る群から選択されるキャリアを含む粘性点滴を含む、
送達ビヒクル。
(20) 実施態様15に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記バリアが吸収性である、
送達ビヒクル。
【0080】
(21) 実施態様19に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記吸収性バリアが、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、コラーゲン、ポリエチレングリコール、プルロニック(pluronics)、キチン、キトサン、デキストラン、グルコース、炭水化物、ゼラチン、グリコサミノグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル化合物、アリギネート(aliginates)、デンプン、およびポリペプチドから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
(22) 実施態様14に記載の送達ビヒクルにおいて、
さらに、治療薬を、前記治療薬の投与によって意図する治療効果を提供するのに有効な量で含む、
送達ビヒクル。
(23) 実施態様22に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記治療薬が、抗血小板薬、抗線維症薬、抗炎症剤、抗増殖剤、およびコラーゲン合成阻害剤から成る群から選択される、
送達ビヒクル。
(24) 実施態様14に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記ビヒクルが、前記トラニラストまたはその類似体の単回投与(single dose administration)を提供する、
送達ビヒクル。
(25) 実施態様14に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記ビヒクルが、前記トラニラストまたはその類似体の徐放を提供する、
送達ビヒクル。
【0081】
(26) 実施態様14に記載の方法において、
前記ビヒクルが、前記トラニラストまたはその類似体の急激放出/徐放を提供する、
方法。
(27) 実施態様14に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記身体の体重1 kg当り0.01 mg〜3,000 mgのトラニラストまたはその類似体を含む、
送達ビヒクル。
(28) 身体への薬剤の局所非全身投与に適した組成物、および手術に供した体腔内の組織への薬剤の直接的な局所非全身投与に適した組成物において、
前記組成物の前記組織への局所非全身投与時に術後癒着の形成を抑制するのに有効な量のトラニラストまたはその類似体と、
前記トラニラストまたはその類似体の局所非全身投与に適したキャリアと、
を含む、組成物。
(29) 実施態様27に記載の組成物において、
前記キャリアが、マイクロカプセル、マイクロスフィア、バリア、リポソーム、脂質フォーム、溶液、組成物、浸透圧ポンプ、ファイバー、フィラメント、ゲル、フォーム、およびフィルムから成る群から選択される、
組成物。
(30) 実施態様29に記載の組成物において、
前記キャリアが、ポロキサマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水物)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メタクリルアミド)、陰イオン炭水化物ポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリアセタール、ポリ(l-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(l-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(アルキレンジグリコレート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、およびグリセリドポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、
組成物。
【0082】
(31) 実施態様28に記載の組成物において、
前記組成物が、前記トラニラストまたはその類似体の単回投与を提供する、
組成物。
(32) 実施態様28に記載の組成物において、
前記組成物が、前記トラニラストまたはその類似体の徐放を提供する、
組成物。
(33) 実施態様28に記載の組成物において、
前記組成物が、前記トラニラストまたはその類似体の急激放出/徐放を提供する、
組成物。
(34) 実施態様28に記載の組成物において、
前記身体の体重1 kg当り0.01 mg〜3,000 mgのトラニラストまたはその類似体を含む、
組成物。
(35) 実施態様29に記載の組成物において、
前記リポソームが、L-アルファ-ジステアロイルフォスファチジルコリン、フォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、および卵黄フォスファチジルコリンから成る群から選択される、
組成物。
【0083】
(36) 実施態様29に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記溶液が、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、および乳酸加リンゲル溶液から成る群から選択される晶質点滴を含む、
送達ビヒクル。
(37) 実施態様29に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記溶液が、デキストラン、シクロデキストラン、ヒドロゲル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(サッカライド)、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、および硫酸コンドロイチンから成る群から選択されるキャリアを含む粘性点滴を含む、
送達ビヒクル。
(38) 実施態様29に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記バリアが吸収性である、
送達ビヒクル。
(39) 実施態様38に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記吸収性バリアが、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、コラーゲン、ポリエチレングリコール、プルロニック、キチン、キトサン、デキストラン、グルコース、炭水化物、ゼラチン、グリコサミノグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル化合物、アリギネート、デンプン、およびポリペプチドから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
(40) 実施態様28に記載の送達ビヒクルにおいて、
さらに、治療薬を、前記治療薬の投与によって意図する治療効果を提供するのに有効な量で含む、
送達ビヒクル。
【0084】
(41) 実施態様39に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記治療薬が、抗血小板薬、抗線維症薬、抗炎症剤、抗増殖剤、およびコラーゲン合成阻害剤から成る群から選択される、
送達ビヒクル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術に供した体腔の組織表面間の体内術後癒着形成の抑制法において、
前記体腔の前記組織表面に、当該組織表面での癒着形成を抑制するのに有効な量および条件下で、トラニラストまたはその類似体を直接投与する工程、
を含む、抑制法。
【請求項2】
身体への薬剤の局所非全身投与に適した送達ビヒクル、および手術に供した体腔内の組織への薬剤の直接的な局所非全身投与に適した送達ビヒクルにおいて、
前記ビヒクルが、トラニラストまたはその類似体を、前記トラニラストの前記組織への局所非全身投与時に術後癒着の形成を抑制するのに有効な量で含む、
送達ビヒクル。
【請求項3】
請求項2に記載の送達ビヒクルにおいて、
マイクロカプセル、マイクロスフィア、バリア、リポソーム、脂質フォーム、溶液、組成物、浸透圧ポンプ、ファイバー、フィラメント、ゲル、フォーム、およびフィルムから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
【請求項4】
請求項3に記載の送達ビヒクルにおいて、
ポロキサマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水物)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メタクリルアミド)、陰イオン炭水化物ポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリアセタール、ポリ(l-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(l-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(アルキレンジグリコレート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、およびグリセリドポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、
送達ビヒクル。
【請求項5】
請求項3に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記リポソームが、L-アルファ-ジステアロイルフォスファチジルコリン、フォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、および卵黄フォスファチジルコリンから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
【請求項6】
請求項3に記載の送達ビヒクルであって、
前記溶液が、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、および乳酸加リンゲル溶液から成る群から選択される晶質点滴(crystalloid instillate)を含む、
送達ビヒクル。
【請求項7】
請求項3に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記溶液が、デキストラン、シクロデキストラン、ヒドロゲル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(サッカライド)、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、および硫酸コンドロイチンから成る群から選択されるキャリアを含む粘性点滴を含む、
送達ビヒクル。
【請求項8】
請求項3に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記バリアが吸収性である、
送達ビヒクル。
【請求項9】
請求項7に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記吸収性バリアが、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、コラーゲン、ポリエチレングリコール、プルロニック(pluronics)、キチン、キトサン、デキストラン、グルコース、炭水化物、ゼラチン、グリコサミノグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル化合物、アリギネート(aliginates)、デンプン、およびポリペプチドから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
【請求項10】
請求項2に記載の送達ビヒクルにおいて、
さらに、治療薬を、前記治療薬の投与によって意図する治療効果を提供するのに有効な量で含む、
送達ビヒクル。
【請求項11】
請求項10に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記治療薬が、抗血小板薬、抗線維症薬、抗炎症剤、抗増殖剤、およびコラーゲン合成阻害剤から成る群から選択される、
送達ビヒクル。
【請求項12】
請求項2に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記ビヒクルが、前記トラニラストまたはその類似体の単回投与を提供する、
送達ビヒクル。
【請求項13】
請求項2に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記ビヒクルが、前記トラニラストまたはその類似体の徐放を提供する、
送達ビヒクル。
【請求項14】
請求項2に記載の方法において、
前記ビヒクルが、前記トラニラストまたはその類似体の急激放出/徐放を提供する、
方法。
【請求項15】
請求項2に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記身体の体重1 kg当り0.01 mg〜3,000 mgのトラニラストまたはその類似体を含む、
送達ビヒクル。
【請求項16】
身体への薬剤の局所非全身投与に適した組成物、および手術に供した体腔内の組織への薬剤の直接的な局所非全身投与に適した組成物において、
前記組成物の前記組織への局所非全身投与時に術後癒着の形成を抑制するのに有効な量のトラニラストまたはその類似体と、
前記トラニラストまたはその類似体の局所非全身投与に適したキャリアと、
を含む、組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物において、
前記キャリアが、マイクロカプセル、マイクロスフィア、バリア、リポソーム、脂質フォーム、溶液、組成物、浸透圧ポンプ、ファイバー、フィラメント、ゲル、フォーム、およびフィルムから成る群から選択される、
組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物において、
前記キャリアが、ポロキサマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水物)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メタクリルアミド)、陰イオン炭水化物ポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリアセタール、ポリ(l-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド)、ポリ(dl-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(l-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(アルキレンジグリコレート)、ポリ(オキサエステル)、ポリ(オキサアミド)、およびグリセリドポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、
組成物。
【請求項19】
請求項16に記載の組成物において、
前記組成物が、前記トラニラストまたはその類似体の単回投与を提供する、
組成物。
【請求項20】
請求項16に記載の組成物において、
前記組成物が、前記トラニラストまたはその類似体の徐放を提供する、
組成物。
【請求項21】
請求項16に記載の組成物において、
前記組成物が、前記トラニラストまたはその類似体の急激放出/徐放を提供する、
組成物。
【請求項22】
請求項16に記載の組成物において、
前記身体の体重1 kg当り0.01 mg〜3,000 mgのトラニラストまたはその類似体を含む、
組成物。
【請求項23】
請求項17に記載の組成物において、
前記リポソームが、L-アルファ-ジステアロイルフォスファチジルコリン、フォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、および卵黄フォスファチジルコリンから成る群から選択される、
組成物。
【請求項24】
請求項17に記載の送達ビヒクルにおいて、であって、
前記溶液が、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、および乳酸加リンゲル溶液から成る群から選択される晶質点滴を含む、
送達ビヒクル。
【請求項25】
請求項17に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記溶液が、デキストラン、シクロデキストラン、ヒドロゲル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(サッカライド)、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、および硫酸コンドロイチンから成る群から選択されるキャリアを含む粘性点滴を含む、
送達ビヒクル。
【請求項26】
請求項17に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記バリアが吸収性である、
送達ビヒクル。
【請求項27】
請求項26に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記吸収性バリアが、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、コラーゲン、ポリエチレングリコール、プルロニック、キチン、キトサン、デキストラン、グルコース、炭水化物、ゼラチン、グリコサミノグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル化合物、アリギネート、デンプン、およびポリペプチドから成る群から選択される、
送達ビヒクル。
【請求項28】
請求項16に記載の送達ビヒクルにおいて、
さらに、治療薬を、前記治療薬の投与によって意図する治療効果を提供するのに有効な量で含む、
送達ビヒクル。
【請求項29】
請求項27に記載の送達ビヒクルにおいて、
前記治療薬が、抗血小板薬、抗線維症薬、抗炎症剤、抗増殖剤、およびコラーゲン合成阻害剤から成る群から選択される、
送達ビヒクル。

【公表番号】特表2007−528391(P2007−528391A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502823(P2007−502823)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/004807
【国際公開番号】WO2005/092264
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】