説明

薬剤プレススルーパック包装体と該包装体からの薬剤取出方法

【課題】薬剤プレススルーパック包装体において、服用者が破封せずに包装体ごと飲み込むという誤飲を確実に防止でき、破封容易で薬剤の散逸を生じにくく、包装体を納めるホルダーのような付属部品を必要とせず、製品コストを低減できる手段を提供する。
【解決手段】基材シート1の複数のポケット部2に固形薬剤Mが一個ずつ収容され、ポケット部2が基材シート1の背面側に貼着した蓋フィルム3によって封止されているが、全体を筒状に曲成し、基材シート両側縁部1a,1bを止着することにより、誤飲不能で且つ薬剤取り出しが容易な筒状形態のプレススルーパック包装体として服用者に手渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのポケット部に固形薬剤を一個ずつ収容した薬剤プレススルーパック包装体と、該包装体からの薬剤取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薬剤のプレススルーパック包装体(以下、PTP包装体と略称する)は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる基材シートに設けた多数のポケット部に、錠剤、タブレット剤、カプセル剤等の固形薬剤を一個ずつ収容すると共に、該基材シートの背面側にアルミ箔等からなる蓋フィルムを貼着して封止したものであり、表面側に膨出したポケット部を指先で押し潰すことにより、該ポケット部内の固形薬剤が蓋フィルムを突き破って放出されるようになっている。
【0003】
このような薬剤PTP包装体は、以前には基材シートに設けた縦横の分割線で手折りして1ポケット単位(薬剤1粒単位)に分離できるものであったが、分離したPTP包装体を破封せずに丸ごと服用してしまい、基材シートの角で食道等の消化管を傷つけて出血したり、その傷から重篤な合併症を引き起こしたりする事故が多発していた。このため、近年の薬剤PTP包装体は、サイズ的に誤飲しにくいように、横の分割線のみで2又は3ポケット単位にしか分離できない形になっている。ところが、このように薬剤PTPの分離単位が大きくなっても、特に高齢者の場合にPTP包装体ごと服用することがあり、また1回分ずつの飲み薬に仕分けるために分離したPTP包装体を鋏等で1ポケット単位に切り離し、それを迂闊に飲み込んでしまう事例も少なくない。
【0004】
一方、通常の薬剤PTP包装体では、ポケット部を指先で押し潰して薬剤を取り出す際、蓋フィルムを突き破って飛び出した薬剤が散逸し、床等に落下して汚れて無駄になったり、行方不明になって探すのに時間と労力を費やしたりすることも多く、取扱性の面で不便であった。
【0005】
そこで、従来より、薬剤PTP包装体における誤飲防止や取扱性向上を図る手段が種々提案されている。例えば、特許文献1では、PTP包装体の切り離し線にて区割される複数ポケット単位毎に、蓋フィルムにポケット部との対面部分を通過する引き裂き用の糸状体又は帯状体を設け、この糸状体又は帯状体を引っ張ることで蓋フィルムを破断してポケット部を開封できるようにしたものが提案されている。また、特許文献2,3では、切り離し線のないPTP包装体をブランク板紙からなるケース内に保持し、該ケースの上蓋又は底蓋を開いた状態でPTP包装体のポケット部を指で押圧することにより、ケース側に設けた抜脱部又は孔から薬剤を取り出すようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−25855号公報
【特許文献2】特開2003−237836公報
【特許文献3】特開2003−321075公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の引き裂き用の糸状体又は帯状体を設けた薬剤PTP包装体では、その糸状体や帯状体を引っ張るという破封方法を服用者(患者)が認識する必要があるが、2又は3ポケット単位の分離状態でもPTP包装体ごと飲み込む心配があるような服用者に対して該破封方法を周知徹底させることは困難である上、PTP包装体そのものが切り離し線によって2ポケット単位程度に分割できるため、確実な誤飲防止を果たせないという問題がある。また、PTP包装体を前記ブランク板紙からなるケースの如きホルダーに納める構成では、誤飲防止は確実に行えるが、そのホルダーの付属によってPTP包装体製品としての材料コストが著しく増大することに加え、PTP包装体を収めた該ホルダーを組み立てるのに非常に手間がかかるという難点があり、更に破封手順を服用者に認知させることが容易でないし、破封時の薬剤の散逸防止には有効ではない。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて、薬剤PTP包装体において、服用者がPTP包装体ごと飲み込むという誤飲を確実に防止できると共に、破封容易で薬剤の散逸を生じにくく、またPTP包装体を納めるホルダーのような余分な付属部品を必要とせず、製品コストを低減できる手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る薬剤PTP包装体は、基材シート1の表面側へ膨出する複数のポケット部2に固形薬剤Mが一個ずつ収容され、これらポケット部2が該基材シート1の背面側に貼着した蓋フィルム3であって、ポケット部2を外側から押し潰すことにより破封可能な蓋フィルム3によって封止されると共に、基材シート両側縁部1a,1bの止着によって全体がポケット部2を外側へ膨出した筒状形態をなすものとしている。
【0010】
請求項2の発明は、前記請求項1の薬剤PTP包装体において、基材シート両側縁部1a,1bがヒートシール7によって止着されてなるものとしている。
【0011】
請求項3の発明に係る薬剤PTP包装体からの薬剤取出方法は、前記請求項1又は2に記載の筒状形態T0,T4の薬剤PTP包装体P1,P2を用い、この包装体P1,P2における所要のポケット部2を外側から押し潰すことにより、蓋フィルム3を突き破って該ポケット部2内の固形薬剤を筒状形態T0,T4の内側へ放出させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る薬剤PTP包装体P1,P2では、それを1ポケット単位や2,3ポケット単位に分離できない上、薬剤服用時には該PTP包装体P1,P2の全体が筒状形態T0,T4になっているため、薬剤Mを取り出すには各ポケット部2を指で押し潰して破封するしかなく、服用者が破封せずに包装体ごと飲み込む可能性は皆無である。しかして、服用者が各ポケット部2を指で押し潰して破封した際、蓋フィルム3を突き破った薬剤Mは、角筒形態T0,T4の内側に放出され、不用意に飛び出して周辺に散逸することがないから、例えば広口の浅い容器R等に受けることで、床等に落下して汚れたり行方不明になったりするのを抑止できる。また、薬剤PTP包装体P1,P2はそれ自体で筒状形態T0,T4となっており、該PTP包装体を納めるホルダーのような余分な付属部品が不要であるから、該付属部品によるコスト上昇を回避できる。
【0013】
又、本発明に係る薬剤PTP包装体では、予め基材シート両側縁部1a,1bが止着されて筒状形態T0,T4になっているから、薬剤Mを服用する際に該筒状形態T0,T4の所要のポケット部2を破封すればよく、薬局において角筒形態T0,T4に組み立てる手間も不要となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、前記の予め筒状形態T0,T4とする場合の基材シート両側縁部1a,1bの止着をヒートシール7にて行うから、該筒状形態T0,T4の組立形成を非常に能率よく容易に短時間で行える。
【0015】
請求項3の発明に係る薬剤PTP包装体からの薬剤取出方法では、薬剤PTP包装体P1,P2が予め筒状形態T0,T4になっているから、服用者(患者)はその所要のポケット部2を外側から指で押し潰すだけで簡単に固形薬剤Mを取り出せ、操作的に極めて簡易であり、破封せずに飲み込む懸念がなく、各別な破封方法を覚える必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係る薬剤PTP包装体の製造途中を示す平坦形態の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る薬剤PTP包装体の角筒形態の横断面図である。
【図3】同第二実施形態に係る円筒状形態の薬剤PTP包装体の横断面図である。
【図4】本発明の薬剤PTP包装体からの薬剤取出操作を例示する斜視図である。
【図5】本発明に係る薬剤PTP包装体製品を納めた包装箱を開放状態で示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1で示す第一実施形態の薬剤PTP包装体P1は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる矩形の透明な基材シート1に、その表面側へ円形に膨出した多数(図では16)の多数のポケット部2が縦横に配列して形成され、各ポケット部2に丸い糖衣錠タイプの固形薬剤Mを一個ずつ収容した状態で、該基材シート1の背面側にアルミ箔等からなる蓋フィルム3を貼着することにより、各ポケット部2が密封されている。しかして、各ポケット部2内の薬剤Mは、該ポケット部2を膨出した表面側から指先で押し潰すことにより、蓋フィルム3を突き破って放出されるようになっている。
【0018】
この薬剤PTP包装体P1の基材シート1には、図1における左下−右上方向を縦方向として、ポケット部2群を1縦列毎に区切る3本の折り目4が平行に等間隔で形成されると共に、シート両端の折り目5を介して設けた基材シート両側縁部1a,1bはヒートシール可能な溶着部6が形成される。
【0019】
図2及び図3で示す第一及び第二実施形態の薬剤PTP包装体P1,2は共に、基材シート両側縁部1a,1bの溶着部6をヒートシール7によって溶着することにより、予め全体を筒状形態、つまり包装体P1では四角筒状形態、包装体P2では円筒状形態にしたものである。無論、この予め形成する筒状形態は、四角筒状以外の多角筒状形態や楕円筒状形態でもよい。
【0020】
これら第一及び第二実施形態の四角筒状形態T4とした薬剤PTP包装体P1ならびに第二実施形態の如く円筒状形態T0とした薬剤PTP包装体P2によれば、患者が破封せずに包装体ごと飲み込む可能性は皆無であると共に、所要のポケット部2を指で押し潰して破封すると、蓋フィルム3を突き破った薬剤Mが筒状形態T4,T0の内側に放出されることになる。従って、これら薬剤PTP包装体P1,P2によれば、確実な誤飲防止を果たせると共に、破封時の薬剤Mの散逸を防止できる。
【0021】
上述した第一〜第二実施形態の薬剤PTP包装体P1,P2によれば、予め薬剤メーカー等の製造者側で筒状形態として供給されるため、輸送や保管時に嵩張るものの、該調剤部や薬局等で筒状形態に組み立てる手間が省けるという大きな利点がある。また、このように製造者側で筒状形態とする場合は、ヒートシール7によって基材シート両側縁部1a,1bを直接に融着できる上、薬剤PTP包装体の連続製造ラインにおける蓋フィルム3の貼着工程の後に、筒状形態への曲成工程とヒートシール工程を組み込んで自動化し、高い生産効率を達成することが可能となる。
【0022】
この四角筒状形態T4とした薬剤PTP包装体P1では、元来より基材シート1に切り離し線がないので1,2ポケットの小さい単位に手で分離することはできないが、その立体構造からして鋏等で小さい単位に切り離すことも想定できない。従って、患者が薬剤Maを取り出して服用するには、ポケット部2を指で押し潰して破封するしかなく、破封せずに包装体ごと飲み込む可能性は皆無である。そして、患者がポケット部2を指で押し潰して破封すると、図2で示すように蓋フィルム3を突き破った薬剤Mが四角筒状形態T4の内側に放出されるから、該薬剤Mが不用意に飛び出して周辺に散逸することはない。従って、薬剤Mが床等に落下して汚れて無駄になったり、行方不明になって探すのに時間と労力を費やしたりするのを回避できる。尤もヒートシールに限定されることはなく、周知の接着剤によって基材シート両側縁部1a,1bを互いに接着するようにしてもよいことは勿論である。
【0023】
なお、本発明の薬剤PTP包装体では筒状形態で破封して薬剤Mを取り出すことから、該筒状形態の一端側開口部を下向きにして破封し、落下する薬剤Mを空いた掌で受け取ることも容易であるが、例えば図4に示すように広口の浅い容器Rで受けるようにすれば、該薬剤Mの散逸をより確実に防止できると共に、PTP包装体に収容した複数種の薬剤を同時に服用する場合に順次同様にして同じ容器Rに受け取り、これら薬剤を一括して服用できるので便利である。
【0024】
一方、例えば風邪薬、解熱鎮痛剤、トローチ等として市販される平坦形態の薬剤PTP包装体製品については、製造者側で平坦形態から筒状形態に組み立て、例えば図2で例示するような四角筒状形態T4や図3の円筒状形態T0とした薬剤PTP包装体Pの複数本を図5に示すように包装箱Bに装填して製品化することが推奨される。
【0025】
また、特に予め筒状形態とする薬剤PTP包装体とするため、基材シート1のポケット部2を千鳥状配置にすれば、包装箱Bへの装填時に相互のポケット部2による膨出部分がずれて噛み合うことで空間効率を高めることができる。更に、本発明の薬剤PTP包装体では、基材シート1の一端側に筒状形態の開口部に対応する形状の蓋板部を一体形成しておき、筒状形態にした際の一方側の開口部に該蓋板部を折り付けて嵌合させることにより、該筒状形態での保形強度を高め、もってポケット部2の押圧による破封を容易にし、反対側の開口部から薬剤Mを取り出すようにしてもよい。
【0026】
上記の各実施形態では基材シート1のポケット部2が丸い糖衣錠タイプの固形薬剤Mに対応した丸い形になっているが、該ポケット部の形は収容する薬剤形状に応じて種々設定でき,例えば細長いカプセル剤には細長いポケット部を採用すればよい。また、実施形態では角筒状形態の各側面sに一縦列のポケット部2が配置する構成を例示したが、薬剤Mが小さい場合等で各側面sに二縦列以上のポケット部2が配置する構成でもよい。更に、基材シート1の折り目4についても、例示した線状の薄肉部によって形成する以外に、ごく浅い切り込み、間隔の大きい大きいミシン目、形状記憶技術による癖付け等、折り曲げ容易で断裂しにくくできる種々の形成手段を採用できる。その他、本発明においては、平坦形態における基材シート1の縦横寸法、各縦列のポケット部2の数と配置間隔、角状形態で接合する基材シート両側縁部1a,1bの止着手段としての係着部の構造等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 基材シート
1a,1b 側縁部
2 ポケット部
3 蓋フィルム
4 折り目
6 ヒートシール用溶着部
7 ヒートシール
M 固形薬剤
P,P8,P9 薬剤PTP包装体
T0 円筒状形態
T4 四角筒状形態
s 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面側へ膨出する複数のポケット部に固形薬剤が一個ずつ収容され、これらポケット部が該基材シートの背面側に貼着した蓋フィルムであって、ポケット部を外側から押し潰すことにより破封可能な蓋フィルムによって封止されると共に、基材シート両側縁部の止着によって全体が前記ポケット部を外側へ膨出した筒状形態をなす薬剤プレススルーパック包装体。
【請求項2】
前記基材シート両側縁部がヒートシールによって止着されてなる請求項1に記載の薬剤プレススルーパック包装体。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の筒状形態の薬剤プレススルーパック包装体を用い、この包装体における所要の前記ポケット部を外側から押し潰すことにより、蓋フィルムを突き破って該ポケット部内の固形薬剤を筒状形態の内側へ放出させることを特徴とする薬剤プレススルーパック包装体からの薬剤取出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−26003(P2011−26003A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106293(P2010−106293)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2009−170428(P2009−170428)の分割
【原出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(599163849)株式会社 ヤマシタワークス (16)
【出願人】(509205674)有限会社チタン (4)
【Fターム(参考)】