説明

薬剤供給管、注入装置、及び注入方法

【課題】 注入材が地盤から漏出した場合に、この漏出を直ちに停止させることが出来、そして漏出停止後に直ちに注入材の再注入が開始できる技術を提供することである。
【解決手段】 注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
薬剤吐出口が構成され、
該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう、薬剤が吐出されない際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞されないよう構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は急硬剤などの地盤への注入技術に関する。更に詳しく述べると、例えば水平又は上向きの注入孔に注入された注入材が漏出した場合において、急硬剤などの薬剤を注入して注入材の硬化を促進させて漏出を直ちに止めることが可能であり、そして注入材の再注入がスムーズに行えるものとなる注入装置・注入方法などの注入技術に関する。
【背景技術】
【0002】
崩壊性の地盤にトンネルを掘削する場合、トンネル切羽周辺の地盤に注入孔を多数削孔し、この注入孔に注入管を挿入し、この挿入された注入管を用いて注入材を注入し、この注入された注入材の硬化によって、トンネル切羽周辺の地盤を補強することが行われている。すなわち、軟弱地盤に注入材を注入し、注入材の硬化により、軟弱地盤の強度を高め、この後でトンネルを掘削することが行われている。
【0003】
上記のようなトンネル切羽周辺の地盤を補強する為に、注入材の注入装置として外管に内管を挿入した二重管で構成された装置が提案されている。すなわち、内管および外管の二重管で構成し、トンネル切羽の天端に薬液注入による補強柱体列を築造する装置であって、外管の周面に設けた複数の吐出孔に跨って被覆するスリーブを装着し、スリーブの両端を外管の周面に固着し、スリーブの前記外管の吐出孔から離れた位置にスリットを形成して逆止弁を構成し、外管の基端部側のスリーブの固着部と、外管の最も基端部に位置する吐出孔から外管の先端部側のスリーブの固着部側へ適宜距離離れた位置までスリットを設けないように構成し、スリットを設けない範囲に薬液を吐出して膨張した場合に、スリーブの膨張部が外管と挿入孔との間を閉塞するように構成した切羽補強装置が提案(特開平7−180466号公報)されている。
【0004】
ところで、トンネル切羽周辺の地盤に注入材を注入する場合、注入孔は、殆どの場合、水平又は上向きの注入孔である。このような水平又は上向きの注入孔に注入材を注入すると、注入孔と注入管との間の隙間とか、注入孔周囲の地盤のクラック、又は注入している注入孔周囲の注入孔から、未硬化の注入材が漏れ出て来ることが有る。従って、このような場合、注入材の漏出を直ちに停止させる必要が有る。
【0005】
このように注入材の漏出停止方法として、特開平7−180466号公報にあっては、装置内で混合する二種類の薬液の混合割合を変化させることでゲルタイムを短くすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、この技術では、装置内が全て硬化してしまうので、注入材の漏出が止まった後、注入材の再注入をスムーズに行うことが出来ず、トンネル切羽周辺の地盤の補強が不充分になる虞が有る。
【特許文献1】特開平7−180466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、前記の問題点を解決することである。すなわち、注入材が地盤から漏出した場合に、この漏出を直ちに停止させることが出来、そして漏出停止後に直ちに注入材の再注入が開始できる技術を提供することである。特に、注入材の漏出停止・注入材の再注入が簡単に、かつ、低廉なコストで実施できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
薬剤吐出口が構成され、
該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0009】
又、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
薬剤吐出口が構成され、
該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう、薬剤が吐出されない際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞されないよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0010】
又、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
該薬剤供給管の外周壁が前記注入材供給管の内周壁に接し得るよう構成され、
かつ、該薬剤供給管の外周壁に溝が構成され、
更に、薬剤吐出口が構成されたものであり、
前記薬剤供給管の外周壁の前記溝以外の位置における該薬剤供給管の外周壁が前記注入材供給管の内周壁に接して該注入材供給管の注入材吐出口が閉塞された状態において、該薬剤供給管の中を送られて来た薬剤が該薬剤供給管の薬剤吐出口および該注入材供給管の薬剤吐出口を介して吐出され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0011】
又、上記薬剤供給管であって、該薬剤供給管は、
円筒状の管であり、
該薬剤供給管の外周壁には、溝が、該管の軸心方向において連通しているよう、かつ、該管の周方向において異なる角度位置に存するよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0012】
又、上記薬剤供給管であって、薬剤供給管の外周壁に構成された溝内を通って送られて来た注入材が、注入材供給管に設けられた薬剤吐出口から吐出され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0013】
又、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
その外側に前記注入材供給管の内周壁に接し得る枠体を具備し、該枠体によって該薬剤供給管が該注入材供給管の中において保持されるよう構成され、
かつ、薬剤吐出口が構成され、
更に、前記枠体によって前記注入材供給管の注入材吐出口が閉塞され得るよう構成されてなり、
前記薬剤供給管の枠体によって該注入材供給管の注入材吐出口が閉塞された状態において、該薬剤供給管の中を送られて来た薬剤が該薬剤供給管の薬剤吐出口および該注入材供給管の薬剤吐出口を介して吐出され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0014】
又、上記薬剤供給管であって、薬剤供給管の外周壁と枠体との間を通って送られて来た注入材が、注入材供給管に設けられた薬剤吐出口から吐出され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管によって解決される。
【0015】
又、上記の薬剤供給管と、
前記薬剤供給管が挿入配設される注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管
とを具備することを特徴とする注入装置によって解決される。
【0016】
又、上記注入装置であって、注入材供給管の注入材吐出口は、該管の周方向において異なる角度位置に存するよう設けられてなる
ことを特徴とする注入装置によって解決される。
【0017】
又、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管を地盤中に挿入する注入材供給管挿入ステップと、
前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管を用いて注入材を注入する注入材注入ステップと、
前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管の中に薬剤供給管を挿入する薬剤供給管挿入ステップと、
前記薬剤供給管挿入ステップで挿入された薬剤供給管によって注入材供給管の注入材吐出口が閉塞されていない場合には、該注入材吐出口が閉塞されるよう該薬剤供給管の位置を調整し、該注入材吐出口を閉塞した薬剤供給管を用いて注入材の硬化時間を制御する薬剤を薬剤吐出口から吐出する薬剤吐出ステップ
とを具備することを特徴とする注入方法によって解決される。
【0018】
又、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管を地盤中に挿入する注入材供給管挿入ステップと、
前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管を用いて注入材を注入する注入材注入ステップと、
前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管の中に薬剤供給管を挿入する薬剤供給管挿入ステップと、
前記薬剤供給管挿入ステップで挿入された薬剤供給管によって注入材供給管の注入材吐出口が閉塞されていない場合には、該注入材吐出口が閉塞されるよう該薬剤供給管の位置を調整し、該注入材吐出口を閉塞した薬剤供給管を用いて注入材の硬化時間を制御する薬剤を薬剤吐出口から吐出する薬剤吐出ステップと、
前記薬剤吐出ステップで吐出された薬剤によって注入材が硬化した後、注入材供給管の注入材吐出口の閉塞が解除されるよう薬剤供給管の位置を調整する調整ステップ
とを具備することを特徴とする注入方法によって解決される。
【0019】
又、上記注入方法であって、薬剤供給管として上記の薬剤供給管を用いることを特徴とする注入方法によって解決される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地盤に注入した注入材が漏出した場合、注入材の硬化を促進せしめる硬化剤を、簡単、かつ、スムーズに注入できる。従って、注入材の漏出が効果的に防止される。
【0021】
そして、上記のような特長、即ち、注入材の漏出防止が直ちに行われるようにする前作業は、薬剤供給管を、例えば回動したり、押し込むのみの簡単な作業である。従って、極めて迅速な作業が可能である。
【0022】
又、注入材の早期硬化により漏出が防止された後、注入材の注入が再開される訳であるが、この時の作業としては、前記薬剤供給管の動作とは逆の動作を行えば良く、これ、また、再開の前作業は極めて簡単・迅速に行える。従って、注入材の注入再開が迅速に行われる。
【0023】
そして、注入材を吐出する注入材供給管の注入材吐出口は、硬化剤の吐出に際しては、薬剤供給管によって閉塞されている。従って、注入材吐出口の部分において注入材が早期硬化し、注入材吐出口の部分が閉塞されてしまい、注入材の吐出が不可能になると言った不具合は起き難い。すなわち、注入材の早期硬化を目的として供給した硬化剤によって、注入材の注入再開が阻害されると言った不具合が起き難いものである。
【0024】
従って、注入材の漏出を直ちに停止させることが可能で、かつ、この後では注入材の再注入が直ちに行えるので、例えばトンネル切羽周辺の地盤の補強を効果的・効率的に行うことが出来る。よって、トンネルの掘削作業に要する日数が少なくて済み、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明になる薬剤(例えば、急硬剤)供給管は、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設されるものである。そして、薬剤供給管は、薬剤吐出口が構成され、かつ、該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう構成されている。或いは、薬剤供給管は、薬剤吐出口が構成され、かつ、該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう、薬剤が吐出されない際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞されないよう構成されたものである。若しくは、薬剤供給管は、薬剤供給管の外周壁が前記注入材供給管の内周壁に接し得るよう構成され、かつ、該薬剤供給管の外周壁に溝が構成され、更に薬剤吐出口が構成されたものであり、又、前記薬剤供給管の外周壁の前記溝以外の位置における該薬剤供給管の外周壁が前記注入材供給管の内周壁に接して該注入材供給管の注入材吐出口が閉塞された状態において、該薬剤供給管の中を送られて来た薬剤が該薬剤供給管の薬剤吐出口および該注入材供給管の薬剤吐出口を介して吐出され得るよう構成されたものである。薬剤供給管の外周壁に形成された溝が注入材供給管の注入材吐出口に対応する場合には、注入材吐出口は閉塞されない。尚、前記二つの状態は、薬剤供給管を回動させることで得られる。又、薬剤供給管は、例えば円筒状の管であり、該薬剤供給管の外周壁には、溝が、該管の軸心方向において連通しているよう、かつ、該管の周方向において異なる角度位置に存するよう構成されている。前記の溝は、一直線状の凹状溝、螺旋状の凹状溝、或いは所定長さの凹状溝が所定間隔を置いて、かつ、所定の位相差を持って設けられ、その間にあっては凹状溝同士が繋がる凹状連通溝が構成された変形螺旋状凹状溝と言った各種タイプの溝が考えられる。そして、注入材供給管に対して薬剤供給管を回動させることによって、注入材供給管の注入材吐出口が開放されたり、閉塞されたりするように構成されている。又、薬剤供給管は、更に、薬剤供給管の外周壁に構成された溝内を通って送られて来た注入材が、注入材供給管に設けられた薬剤吐出口から吐出され得るよう構成されたものである。又は、薬剤供給管は、その外側に前記注入材供給管の内周壁に接し得る枠体を具備し、該枠体によって該薬剤供給管が該注入材供給管の中において保持されるよう構成され、かつ、薬剤吐出口が構成され、更に前記枠体によって前記注入材供給管の注入材吐出口が閉塞され得るよう構成されていて、前記薬剤供給管の枠体によって該注入材供給管の注入材吐出口が閉塞された状態において、該薬剤供給管の中を送られて来た薬剤が該薬剤供給管の薬剤吐出口および該注入材供給管の薬剤吐出口を介して吐出され得るよう構成されたものである。そして、注入材供給管において薬剤供給管をスライド移動させることによって、注入材供給管の注入材吐出口が開放されたり、閉塞されたりするように構成されている。又、薬剤供給管は、更に、薬剤供給管の外周壁と枠体との間を通って送られて来た注入材が、注入材供給管に設けられた薬剤吐出口から吐出され得るよう構成されたものである。
【0026】
本発明になる注入装置(例えば、注入材や急硬剤の注入装置)は、上記の薬剤供給管と、前記薬剤供給管が挿入配設される注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管とを具備するものである。注入材供給管は、注入材吐出口が一直線上に在るように設けられていても良いが、特に好ましくは、該管の周方向において異なる角度位置に存するよう設けられたものである。こうしておけば、注入材が、四方八方に吐出され易くなるからである。そして、上記のように構成させていると、薬剤供給管を回動もしくはスライドさせる簡単な作業によって、薬剤を吐出させる場合と注入材のみを吐出させる場合との切り替えが簡単に出来る。尚、薬剤は注入材と共に吐出させるようになっていることが好ましい。
【0027】
本発明になる注入方法は、注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管を地盤中に挿入する注入材供給管挿入ステップと、前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管を用いて注入材を注入する注入材注入ステップと、前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管の中に薬剤供給管を挿入する薬剤供給管挿入ステップと、前記薬剤供給管挿入ステップで挿入された薬剤供給管によって注入材供給管の注入材吐出口が閉塞されていない場合には、該注入材吐出口が閉塞されるよう該薬剤供給管の位置を調整し、該注入材吐出口を閉塞した薬剤供給管を用いて注入材の硬化時間を制御する薬剤を薬剤吐出口から吐出する薬剤吐出ステップとを具備する。又、薬剤吐出ステップで吐出された薬剤によって注入材が硬化した後、注入材供給管の注入材吐出口の閉塞が解除されるよう薬剤供給管の位置を調整する調整ステップを更に具備する。本方法においては、好ましくは、薬剤供給管として上記の薬剤供給管が用いられる。又、注入材供給管として上記の注入材供給管が用いられる。
【0028】
以下、具体的な実施形態を挙げて説明する。
【0029】
図1〜図13は本発明になる注入装置の第1実施形態になるもので、図1は急硬剤が吐出されず、注入材のみが吐出される状態での要部断面図、図2〜図7は図1におけるA−A’,B−B’,C−C’,D−D’,E−E’,F−F’線での断面図、図8は急硬剤が吐出される状態(薬剤供給管を90°回転させた状態)での要部断面図、図9〜図12は図8におけるG−G’,H−H’,I−I’,J−J’線での断面図、図13は薬剤供給管の一部を示す斜視図である。
【0030】
各図中、1は、円筒状の注入材供給管である。この注入材供給管1の先端部には円錐状のコーン2が差し込まれていて、注入材供給管1を地盤中に挿入し易い構造になっている。尚、注入材供給管は、例えば鋼製である。そして、穿孔する時のロッドを兼ねることも出来る。
【0031】
3は、注入材供給管1の先端側に形成された薬剤吐出口(孔)である。この薬剤吐出口3は、図1及び図2から判る通り、二箇所、例えば90°(図1では、上端)の位置と270°(図1では、下端)の位置とに設けられている。
【0032】
4,5,6,7は、薬剤吐出口3よりも基部側の位置の注入材供給管1に形成された注入材吐出口(孔)である。注入材吐出口4は、図1及び図3から判る通り、二箇所、例えば0°(図1では、紙面の向側)の位置と180°(図1では、紙面の手前側)の位置とに設けられている。注入材吐出口5は、図1及び図4から判る通り、二箇所、例えば90°の位置と270°の位置とに設けられている。注入材吐出口6は、二箇所、例えば0°の位置と180°の位置とに設けられている。注入材吐出口7は、図1から判る通り、二箇所、例えば90°の位置と270°の位置とに設けられている。
【0033】
注入材供給管1の基端部にはスイベル8を介してボールバルブ9が設けられている。ボールバルブ9には注入材Aと注入材Bとが混合部10を介して混合・供給されるように構成されている。従って、ボールバルブ9を開口すると、注入材A+Bが、注入材供給管1内に送り込まれ、先端側に形成されている注入材吐出口4,5,6,7から吐出されるようになる。又、薬剤吐出口3からも注入材A+Bが吐出されるようになる。
【0034】
11は、例えば鋼製または樹脂製の薬剤供給管である。この薬剤供給管11は、図13からも判る通り、円筒状のものである。尚、この円筒形をした薬剤供給管11の外径は円筒形をした注入材供給管1の内径に等しい。すなわち、薬剤供給管11を注入材供給管1の中に挿入した場合、薬剤供給管11の外周壁が注入材供給管1の内周壁に隙間無く密着し得るようになっている。勿論、注入材供給管1の中に薬剤供給管11を挿入した状態において、薬剤供給管11を回動させることが可能な程度にはクリアランスが有るように設定されている。
【0035】
12,13,14,15,16は薬剤供給管11の表面に形成された凹状溝である。凹状溝12は、図1,2,8,9からも判る通り、二箇所、例えば0°の位置を中心とした位置と180°の位置を中心とした位置とに設けられている。又、この凹状溝12は、薬剤供給管11を注入材供給管1の中に完全に挿入した状態において、注入材供給管1の薬剤吐出口3の位置に対応する位置に設けられている。従って、図1に示される状態においては、注入材供給管1の薬剤吐出口3は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されているものの、図8に示される如く、薬剤供給管11が90°回転させられた状態にあっては、薬剤供給管11の凹状溝12が注入材供給管1の薬剤吐出口3に対向しており、薬剤吐出口3は閉塞されないようになっている。尚、薬剤供給管11の先端部は、その周囲一周に亘ってぐるりと凹状溝が形成されていて、この凹状溝に繋がって凹状溝12が設けられている。
【0036】
凹状溝13は、図1,3,8,10,13からも判る通り、二箇所、例えば0°の位置を中心とした位置と180°の位置を中心とした位置とに設けられている。又、この凹状溝13は、薬剤供給管11を注入材供給管1の中に完全に挿入した状態において、注入材供給管1の注入材吐出口4の位置に対応する位置に設けられている。従って、図1に示される状態においては、薬剤供給管11の凹状溝13が注入材供給管1の注入材吐出口4に対向しており、注入材供給管1の注入材吐出口4は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されていないものの、図8に示される如く、薬剤供給管11が90°回転させられた状態にあっては、薬剤供給管11の凹状溝13が注入材供給管1の注入材吐出口4に対向しておらず、注入材吐出口4は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されるようになっている。
【0037】
凹状溝14は、図1,4,8,11,13からも判る通り、二箇所、例えば90°の位置を中心とした位置と270°の位置を中心とした位置とに設けられている。又、この凹状溝14は、薬剤供給管11を注入材供給管1の中に完全に挿入した状態において、注入材供給管1の注入材吐出口5の位置に対応する位置に設けられている。従って、図1に示される状態においては、薬剤供給管11の凹状溝14が注入材供給管1の注入材吐出口5に対向しており、注入材供給管1の注入材吐出口5は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されていないものの、図8に示される如く、薬剤供給管11が90°回転させられた状態にあっては、薬剤供給管11の凹状溝14が注入材供給管1の注入材吐出口5に対向しておらず、注入材吐出口5は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されるようになっている。
【0038】
凹状溝15は、図1,6,8,13からも判る通り、二箇所、例えば0°の位置を中心とした位置と180°の位置を中心とした位置とに設けられている。又、この凹状溝15は、薬剤供給管11を注入材供給管1の中に完全に挿入した状態において、注入材供給管1の注入材吐出口6の位置に対応する位置に設けられている。従って、図1に示される状態においては、薬剤供給管11の凹状溝15が注入材供給管1の注入材吐出口6に対向しており、注入材供給管1の注入材吐出口6は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されていないものの、図8に示される如く、薬剤供給管11が90°回転させられた状態にあっては、薬剤供給管11の凹状溝15が注入材供給管1の注入材吐出口6に対向しておらず、注入材吐出口6は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されるようになっている。
【0039】
凹状溝16は、図1,8,13からも判る通り、二箇所、例えば90°の位置を中心とした位置と270°の位置を中心とした位置とに設けられている。又、この凹状溝16は、薬剤供給管11を注入材供給管1の中に完全に挿入した状態において、注入材供給管1の注入材吐出口7の位置に対応する位置に設けられている。従って、図1に示される状態においては、薬剤供給管11の凹状溝16が注入材供給管1の注入材吐出口7に対向しており、注入材供給管1の注入材吐出口7は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されていないものの、図8に示される如く、薬剤供給管11が90°回転させられた状態にあっては、薬剤供給管11の凹状溝16が注入材供給管1の注入材吐出口7に対向しておらず、注入材吐出口7は薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されるようになっている。
【0040】
又、図1,8等から判る通り、凹状溝12と凹状溝13とは、その間の薬剤供給管11の外径を小さくすることにより、互いに繋がるように構成されている。又、凹状溝13と凹状溝14とは、その間の薬剤供給管11の外径を小さくすることにより、互いに繋がるように構成されている。凹状溝14と凹状溝15とは、その間の薬剤供給管11の外径を小さくすることにより、互いに繋がるように構成されている。凹状溝15と凹状溝16とは、その間の薬剤供給管11の外径を小さくすることにより、互いに繋がるように構成されている。更に、凹状溝16よりも基部側にあっては、薬剤供給管11の外径が小さく構成されている。従って、薬剤供給管11が注入材供給管1の中に完全に挿入配設された図1に示される状態において、注入材供給管1内に注入材が送り込まれて来ると、この注入材は薬剤供給管11の外周壁表面(凹状溝16,15,14,13,12の表面及び外径が小さな小径部の表面)と注入材供給管1の内周壁表面との間の隙間を介して注入材供給管1の先端側まで流れて行くようになっている。従って、注入材は、注入材吐出口7,6,5,4及び薬剤吐出口3から外部に吐出されるようになっている。
【0041】
17は薬剤供給管11の先端部に配設された弾撥材(例えば、バネ)、18は薬剤供給管11の孔19を塞ぐ為のボールであり、弾撥材17とボール18とによって薬剤供給管11の薬剤吐出口に対する逆止弁が構成されている。尚、逆止弁としては、薬剤供給管11の内外を連通する箇所に設けられるものであれば、如何なる構造のものでも良い。例えば、連通口(孔)をシート、板、キャップ等でバネやゴム等の弾性体の弾力を利用して塞ぎ、開口圧力が弾性体の弾力を上回ると、連通口を塞いでいる閉鎖部材を開く構造のものであれば良い。又、逆止弁の位置は、特に限定されないが、薬剤供給管11の先端又は先端近傍であると、注入材が地盤から漏れ出した時に、注入材の硬化又は水和の促進により注入材の漏出を止め、その後に、再度、注入材を注入し易くなる。逆止弁の数は、幾つ有っても良いが、1個でも充分である。
【0042】
20は、薬剤供給管11の基端部に接続されたボールバルブである。すなわち、ボールバルブ20を開口すると、急硬剤が薬剤供給管11内に送り込まれるようになる。従って、図8に示される状態で、ボールバルブ20が開口されると、急硬剤は孔19を経由して薬剤供給管11の先端部にまで送り込まれる。この圧力によって、逆止弁であるボール18が先端側に押し遣られ、凹状溝12の部分に形成された薬剤吐出口(孔)21から薬剤供給管11の外部に吐き出される。そして、この吐き出された急硬剤は、注入材と共に、薬剤吐出口3から注入材供給管1の外部に吐き出される。
【0043】
尚、薬剤供給管11は、その先端側にあっては、その外径が注入材供給管1の内径に等しい箇所が在るので、当該箇所において支持されている。しかしながら、薬剤供給管11の基端部側では、前記の如きの支持機構が構成されていない。従って、前記の如きの支持機構が構成されていない場合には、スイベル8に支持機構22を設けるようにしても良い。そして、この支持機構22の箇所に薬剤供給管11の回転を制御する為の固定ボルト23を設けるようにしても良い。
【0044】
上記のように構成させた注入装置を用いての注入方法について説明する。
【0045】
先ず、注入材供給管1を地盤中に挿入する。この後、注入材供給管1の中に薬剤供給管11を挿入する。そして、両者の関係は、図1に示される如きの姿勢に調整する。すなわち、薬剤供給管11によって、注入材供給管1の薬剤吐出口3及び注入材吐出口4,5,6,7が閉塞されないように調整する。
【0046】
この後、ボールバルブ9を開き、注入材A+Bを注入材供給管1内に送り込む。これによって、注入材A+Bは、注入材供給管1の内周壁と薬剤供給管11の外周壁との間に形成されている凹状溝などの隙間を通って先端側まで送り込まれ、薬剤吐出口3及び注入材吐出口4,5,6,7を介して注入材供給管1の外部に吐出され、地盤中に浸透して行き、硬化により地盤が強化される。
【0047】
この時、注入材A+Bの硬化に時間が掛かり過ぎて、注入材が外部に漏れ出るような事態が起きることも有る。このような場合が発見されると、固定ボルト23を緩め、薬剤供給管11を所定角度だけ回転させ、図8に示される状態のものとする。すなわち、注入材供給管1の注入材吐出口4,5,6,7が薬剤供給管11の外周壁によって閉塞されるように調整する。この調整が終わると、固定ボルト23を締め、薬剤供給管11を固定する。
【0048】
この後、ボールバルブ20を開口すると、急硬剤が薬剤供給管11内の先端部にまで送り込まれ、ボール18は先端側に押し遣られ、凹状溝12の部分に形成されている薬剤吐出口21から薬剤供給管11の外部に吐き出される。そして、この吐き出された急硬剤は、注入材と共に、薬剤吐出口3から注入材供給管1の外部に吐き出される。従って、注入材が迅速に硬化するので、注入材の漏出が防止される。尚、急硬剤+注入材の硬化により出来たものが、恰も、栓の役割をなし、注入材をより多く地盤に注入できるので、注入された地盤はより強固となる。
【0049】
急硬剤による迅速な硬化によって注入材の漏出が止まったことが確認されると、それ以上の急硬剤の供給は不要である。従って、ボールバルブ20を閉じると共に、固定ボルト23を緩め、薬剤供給管11を所定角度だけ回転させ、図8から図1に示される状態のものとする。すなわち、薬剤供給管11の外周壁による注入材供給管1の注入材吐出口4,5,6,7の閉塞を解除し、オープンなものとなるように調整する。この調整が終わると、固定ボルト23を締め、薬剤供給管11を固定する。これによって、注入材A+Bが、注入材供給管1の内周壁と薬剤供給管11の外周壁との間に形成されている凹状溝などの隙間を通って先端側まで送り込まれ、薬剤吐出口3及び注入材吐出口4,5,6,7を介して注入材供給管1の外部に吐出されるようになる。
【0050】
尚、上記実施形態にあっては、図8に示される状態において、薬剤剤供給管11の外周壁によって注入材吐出口4,5,6,7の全てが閉塞されるように構成されている場合を説明したが、一部の注入材吐出口が閉塞されないようにしていても良い。例えば、薬剤吐出口3から遠い位置のものは、該箇所にまで急硬剤が到達する恐れは少なく、従って急硬剤によって注入材吐出口7が閉塞される恐れは少ないので、斯かる位置に在る注入材吐出口が閉塞されないようにしていても良い。
【0051】
本発明で用いられる地盤に注入する注入材としては、地盤注入に用いる市販のセメント系地盤注入材や市販の樹脂系地盤注入材が挙げられる。これらの中で、注入材の構成材料の含有割合を増減すること、又は別途薬剤を添加することで、注入材の硬化や水和を促進でき得るものが好ましい。そして、用いる注入材の硬化主材、即ち、市販のセメント系地盤注入材の場合はセメント又はセメント組成物のスラリー、市販の樹脂系地盤注入材の場合は樹脂のモノマー、オリゴマー等を含有する注入材の構成材料が好ましい。尚、この時、流動性が外管経路内で極度に低下しない範囲であれば、急硬剤を含んでいても良い。
【0052】
本発明で用いられる地盤に注入する薬剤としては、硬化時間調整剤、ゲルタイム調整剤等の注入材の硬化や水和等を促進又は遅延させる材料を主成分とするものが好ましく、更に急硬剤、急結剤、促進剤、硬化剤等の注入材の硬化や水和等を促進させる材料を主成分とするものが好ましい。例えば、薬剤(急硬剤)を添加しない注入材のみの場合のゲルタイムが90秒〜60分であるのに対して、薬剤(急硬剤)を添加した場合にはゲルタイムが3〜60秒となるようなものであれば良い。
【0053】
又、上記実施形態では、薬剤として急硬剤を用いた場合で説明した。しかしながら、薬剤として遅延剤を用いる場合にも適用できる。すなわち、地盤から注入材の漏出が無い場合、図1の状態にて、薬剤供給管11に遅延剤を送り込む。そうすると、遅延剤が注入材に添加・混合されて外部に吐出されるようになる。従って、この場合には、ゲルタイム又は硬化時間が長い注入材が作製されて吐出されるようになる。そして、この時、地盤から注入材が漏れ出た場合には、薬剤供給管11への遅延剤の供給を停止し、ゲルタイム又は硬化時間が短いものとすれば良い。
【0054】
図14〜図22は本発明になる注入装置の第2実施形態になるもので、図14は急硬剤が吐出されず、注入材のみが吐出される状態での要部断面図、図15〜図17は図14におけるA−A’,B−B’,C−C’線での断面図、図18は急硬剤が吐出される状態(前端にスライドさせた状態)での要部断面図、図19〜図22は図18におけるD−D’,E−E’,F−F’,G−G’線での断面図である。
【0055】
各図中、51は、円筒状(又は角筒状:前記実施形態の場合と異なり、円筒状である必要は無い。)の注入材供給管である。この注入材供給管51の先端部には円錐状のコーン52が差し込まれていて、注入材供給管51を地盤中に挿入し易い構造になっている。尚、注入材供給管51は、例えば鋼製である。そして、穿孔する時のロッドを兼ねることも出来る。
【0056】
53は、注入材供給管51の先端側に形成された薬剤吐出口(孔)である。この薬剤吐出口53は、図14からも判る通り、二箇所、例えば90°(図14では、上端)の位置と270°(図14では、下端)の位置とに設けられている。
【0057】
54,55,56,57,58は、薬剤吐出口53よりも基部側の位置の注入材供給管51に形成された注入材吐出口(孔)である。注入材吐出口54は、図14から判る通り、二箇所、例えば90°の位置と270°の位置とに設けられている。注入材吐出口55は、図14から判る通り、二箇所、例えば0°(図14では、紙面の向側)の位置と180°(図14では、紙面の手前側)の位置とに設けられている。注入材吐出口56は、図14及び図15から判る通り、二箇所、例えば90°の位置と270°の位置とに設けられている。注入材吐出口57は、図14及び図16から判る通り、二箇所、例えば0°の位置と180°の位置とに設けられている。注入材吐出口58は、図14から判る通り、二箇所、例えば90°の位置と270°の位置とに設けられている。
【0058】
注入材供給管51の基端部にはスイベル59を介してボールバルブ60が設けられている。ボールバルブ60には注入材Aと注入材Bとが混合部を介して混合・供給されるように構成されている。従って、ボールバルブ60を開口すると、注入材A+Bが、注入材供給管51内に送り込まれ、先端側に形成されている注入材吐出口54,55,56,57,58から吐出されるようになる。又、薬剤吐出口53からも注入材A+Bが吐出されるようになる。
【0059】
尚、本実施形態の注入材供給管51と前記実施形態の注入材供給管1とは、注入材吐出口の数が異なるのみで、基本的な構造は同じである。
【0060】
61は、例えば鋼製または樹脂製の薬剤供給管である。この薬剤供給管61は円筒状(又は角筒状)のものである。尚、前記実施形態にあっては、薬剤供給管11の外径が注入材供給管1の内径に等しいものであったが、本実施形態にあっては、(薬剤供給管61の外径)<(注入材供給管51の内径)であるように構成されている。すなわち、薬剤供給管61と注入材供給管51との間には十分な隙間(注入材流動通路)が構成されるようになっている。
【0061】
さて、(薬剤供給管61の外径)<(注入材供給管51の内径)であるように構成させたが故に、注入材供給管51の中に薬剤供給管61を挿入した際、その位置がグラツクことなく、例えば同心状に保持されるようにする必要が有る。そこで、注入材供給管51の内周壁に内接する円筒状(又は角筒状)の枠体62を設け、この枠体62に対して薬剤供給管61が中心に位置されるよう保持部材63で保持されるようにした。すなわち、薬剤供給管61の先端部と後端部とにおいて、薬剤供給管61と枠体62との間に120°毎に保持部材63を設け、これによって薬剤供給管61を保持するようにした。
【0062】
64は、薬剤供給管61の基端部に接続されたボールバルブである。すなわち、ボールバルブ64を開口すると、急硬剤が薬剤供給管61内に送り込まれるようになる。従って、図18に示される状態で、ボールバルブ64が開口されると、急硬剤は薬剤供給管61内を通って薬剤供給管61の先端部にまで送り込まれる。この圧力によって、先端部に形成された薬剤吐出口(孔)65から急硬剤が押し出され、この押出圧力によって逆止弁である筒状ゴム体66が押し拡げられる。そして、この時に出来た隙間から急硬剤が薬剤供給管61の外部に吐出され、注入材供給管51の薬剤吐出口53から外部(地盤中)に吐出されるようになる。尚、この図18に示される状態においては、注入材吐出口54,55,56,57,58は円筒状の枠体62によって閉塞されているから、注入材が注入材吐出口54,55,56,57,58から吐出されることは無い。かつ、注入材と急硬剤とが混ざったものが注入材吐出口54,55,56,57,58から内部に入り込むようなことは無く、注入材吐出口54,55,56,57,58が硬化したもので塞がれるようになることも無い。尚、図18の状態において、薬剤吐出口53は塞がれておらず、又、該箇所とボールバルブ63との間には注入材の流路が形成されているから、薬剤吐出口53からは注入材と急硬剤とが吐出されるようになっている。
【0063】
上記のように構成させた注入装置を用いての注入方法について説明する。
【0064】
先ず、注入材供給管51を地盤中に挿入する。この後、注入材供給管51の中に枠体62付きの薬剤供給管61を挿入する。そして、両者の関係は、図14に示される如きの姿勢に調整する。すなわち、枠体62によって、注入材供給管51の薬剤吐出口53及び注入材吐出口54,55,56,57,58が閉塞されないように調整する。
【0065】
この後、ボールバルブ60を開き、注入材A+Bを注入材供給管51内に送り込む。これによって、注入材A+Bは、注入材供給管51(枠体62)の内周壁と薬剤供給管61の外周壁との間に形成されている隙間(流路)を通って先端側まで送り込まれ、薬剤吐出口53及び注入材吐出口54,55,56,57,58を介して注入材供給管51の外部に吐出され、地盤中に浸透して行き、硬化により地盤が強化される。
【0066】
この時、注入材A+Bの硬化に時間が掛かり過ぎて、注入材が外部に漏れ出るような事態が起きることも有る。このような場合が発見されると、固定ボルト67を緩め、薬剤供給管61を先端までスライドさせ、図18に示される状態のものとする。すなわち、注入材供給管51の注入材吐出口54,55,56,57,58が枠体62の外周壁によって閉塞されるように調整する。この調整が終わると、固定ボルト67を締め、薬剤供給管61を固定する。
【0067】
この後、ボールバルブ64を開口すると、急硬剤が薬剤供給管61内の先端部にまで送り込まれ、筒状ゴム体66が押し拡げられ、この時に出来た隙間から急硬剤が薬剤供給管61の外部に吐出され、注入材供給管51の薬剤吐出口53から急硬剤が注入材と共に外部(地盤中)に吐出されるようになる。
【0068】
急硬剤による迅速な硬化によって注入材の漏出が止まったことが確認されると、それ以上の急硬剤の供給は不要である。従って、ボールバルブ64を閉じると共に、固定ボルト67を緩め、薬剤供給管61を後退させ、図18から図14に示される状態のものとする。すなわち、枠体62の外周壁による注入材供給管51の注入材吐出口54,55,56,57,58の閉塞を解除し、オープンなものとなるように調整する。この調整が終わると、固定ボルト67を締め、薬剤供給管61を固定する。これによって、注入材A+Bが、注入材供給管51(枠体62)の内周壁と薬剤供給管61の外周壁との間に形成されている隙間を通って先端側まで送り込まれ、薬剤吐出口53及び注入材吐出口54,55,56,57,58を介して注入材供給管51の外部に吐出されるようになる。
【0069】
尚、前記実施形態のものに比べて、本実施形態のものは、薬剤供給管61の位置調整の作業性に劣るものの、構造が簡単であるから、低廉なコストで製作できる。
【0070】
又、本実施形態に用いられる注入材および薬剤は前記実施形態のものと同様のものが用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】注入材のみが吐出状態での本発明になる注入装置の要部断面図
【図2】図1におけるA−A’線での断面図
【図3】図1におけるB−B’線での断面図
【図4】図1におけるC−C’線での断面図
【図5】図1におけるD−D’線での断面図
【図6】図1におけるE−E’線での断面図
【図7】図1におけるF−F’線での断面図
【図8】急硬剤吐出状態での本発明になる注入装置の要部断面図
【図9】図8におけるG−G’線での断面図
【図10】図8におけるH−H’線での断面図
【図11】図8におけるI−I’線での断面図
【図12】図8におけるJ−J’線での断面図
【図13】本発明になる薬剤供給管の一部を示す斜視図
【図14】注入材のみが吐出状態での本発明になる注入装置の要部断面図
【図15】図14におけるA−A’線での断面図
【図16】図14におけるB−B’線での断面図
【図17】図14におけるC−C’線での断面図
【図18】急硬剤吐出状態での本発明になる注入装置の要部断面図
【図19】図18におけるD−D’線での断面図
【図20】図18におけるE−E’線での断面図
【図21】図18におけるF−F’線での断面図
【図22】図18におけるG−G’線での断面図
【符号の説明】
【0072】
1,51 注入材供給管
3,53 薬剤吐出口
4,5,6,7,54,55,56,57,58 注入材吐出口
11,61 薬剤供給管
12,13,14,15,16 凹状溝
17 弾撥材
18 ボール
62 枠体

特許出願人 太平洋マテリアル株式会社
代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
薬剤吐出口が構成され、
該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管。
【請求項2】
注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
薬剤吐出口が構成され、
該薬剤供給管の薬剤吐出口および前記注入材供給管の薬剤吐出口を介して薬剤が吐出される際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞され得るよう、薬剤が吐出されない際には、前記注入材供給管に設けられた注入材吐出口が該薬剤供給管によって閉塞されないよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管。
【請求項3】
注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
該薬剤供給管の外周壁が前記注入材供給管の内周壁に接し得るよう構成され、
かつ、該薬剤供給管の外周壁に溝が構成され、
更に、薬剤吐出口が構成されたものであり、
前記薬剤供給管の外周壁の前記溝以外の位置における該薬剤供給管の外周壁が前記注入材供給管の内周壁に接して該注入材供給管の注入材吐出口が閉塞された状態において、該薬剤供給管の中を送られて来た薬剤が該薬剤供給管の薬剤吐出口および該注入材供給管の薬剤吐出口を介して吐出され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管。
【請求項4】
注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管の中に挿入配設される薬剤供給用の薬剤供給管であって、
前記薬剤供給管は、
その外側に前記注入材供給管の内周壁に接し得る枠体を具備し、該枠体によって該薬剤供給管が該注入材供給管の中において保持されるよう構成され、
かつ、薬剤吐出口が構成され、
更に、前記枠体によって前記注入材供給管の注入材吐出口が閉塞され得るよう構成されてなり、
前記薬剤供給管の枠体によって該注入材供給管の注入材吐出口が閉塞された状態において、該薬剤供給管の中を送られて来た薬剤が該薬剤供給管の薬剤吐出口および該注入材供給管の薬剤吐出口を介して吐出され得るよう構成されてなる
ことを特徴とする薬剤供給管。
【請求項5】
請求項1〜請求項4いずれかの薬剤供給管と、
前記薬剤供給管が挿入配設される注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管
とを具備することを特徴とする注入装置。
【請求項6】
注入材吐出口および薬剤吐出口が設けられた注入材供給管を地盤中に挿入する注入材供給管挿入ステップと、
前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管を用いて注入材を注入する注入材注入ステップと、
前記注入材供給管挿入ステップで挿入された注入材供給管の中に薬剤供給管を挿入する薬剤供給管挿入ステップと、
前記薬剤供給管挿入ステップで挿入された薬剤供給管によって注入材供給管の注入材吐出口が閉塞されていない場合には、該注入材吐出口が閉塞されるよう該薬剤供給管の位置を調整し、該注入材吐出口を閉塞した薬剤供給管を用いて注入材の硬化時間を制御する薬剤を薬剤吐出口から吐出する薬剤吐出ステップ
とを具備することを特徴とする注入方法。
【請求項7】
薬剤吐出ステップで吐出された薬剤によって注入材が硬化した後、注入材供給管の注入材吐出口の閉塞が解除されるよう薬剤供給管の位置を調整する調整ステップ
を具備することを特徴とする請求項6の注入方法。
【請求項8】
薬剤供給管として請求項1〜請求項4いずれかの薬剤供給管を用いることを特徴とする請求項6又は請求項7の注入方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−177536(P2007−177536A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378059(P2005−378059)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】