説明

薬剤揮散用器具

【課題】 電池蓋を紛失するおそれのない薬剤揮散用器具を提供する。
【解決手段】 閉蓋状態および開蓋状態のいずれにおいても器具本体10に連結されている常時係止部51と、閉蓋状態においてのみ器具本体に連結される閉蓋時係止部41とによって、電池蓋30を器具本体10に連結する。電池蓋30は、常時係止部51によって、閉蓋状態および開蓋状態のいずれの状態においても器具本体10に連結されている。つまり、いかなる状態においても、電池蓋30が器具本体10から分離してしまうことはなく、したがって、電池蓋30が紛失するということは起こりえない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト等に取り付けて使用する携帯用の薬剤揮散用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト等に取り付けて使用する携帯用の薬剤揮散用器具が従来から知られており、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
そのような薬剤揮散用器具は、防虫成分を含浸させた基体を内部に収容していて、器具本体に設けたフック部を利用してベルトに固定される。器具本体には、乾電池で駆動されるモータが内蔵されていて、これによって基体を回転させ、防虫成分を揮散させる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−197856号公報
【特許文献2】特開2003−102361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の薬剤揮散用器具においては、動力源として乾電池を採用しているため、電池収容室が設けられており、蓋部材を開けて電池の出し入れを行う。そして、何らかの理由でこの蓋部材を紛失してしまうという問題がある。
したがって、本発明は、蓋部材を紛失するおそれのない薬剤揮散用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段、および発明の効果】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、以下の特徴を備えた薬剤揮散用器具を提供する。
本発明の薬剤揮散用器具は、「電池収容室を有する器具本体」と「当該電池収容室を開閉する電池蓋」とを備えている。器具本体内には、防虫成分を含浸させた基体が収容されていて、該基体が電動モータの出力軸に連結されている。電動モータを回転させて防虫成分が外部に揮散される。電池蓋は、「閉蓋状態および開蓋状態のいずれにおいても器具本体に連結されている常時係止部」と「閉蓋状態においてのみ器具本体に連結される閉蓋時係止部」とによって器具本体に連結されている。
【0006】
上記構成を備えた本発明の薬剤揮散用器具においては、電池蓋は、常時係止部によって、閉蓋状態および開蓋状態のいずれの状態においても器具本体に連結されている。すなわち、いかなる状態においても、器具本体から分離してしまうことはなく、したがって、電池蓋が紛失するということは起こりえない。
【0007】
本発明においては、上記電池蓋は、「電池収容室を覆い上記閉蓋時係止部を有する蓋部分」と「蓋部分から延在して先端に上記常時係止部を有するアーム部」と「アーム部から折り返されて蓋部分近傍にまで延在するフック部」とから構成されているのが好ましい。その場合、電池蓋を閉じた時、上記蓋部分およびアーム部が器具の外壁面の一部を為し、当該外壁面と上記フック部との間に固定対象(例えば、使用者が着用するベルト等)を挟持することで、使用者の身体に装着されるように構成することが好ましい。
【0008】
そのような構成した場合、電池交換の際の電池室へのアクセスを容易にするとともに器具壁面のスペースを有効に利用して、扱い易さおよび小型化を両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る薬剤揮散用器具を示す斜視図である。
【0010】
≪薬剤揮散用器具の概要≫
薬剤揮散用器具は、防虫成分を含浸させた基体(不図示)を内部に収容していて、これを電動モータで回転させることで、防虫成分を外部に揮散させる。
薬剤揮散用器具の器具本体10の前面には、多数の揮散用開口11aを有するカバー11が設けられていて、このカバー11を開閉して、防虫成分を含浸させた基体の取付け及び取外しを行う。カバー11は、その下方部分12において、器具本体10に対してヒンジ結合されていて、上方の係止フック14によって器具本体10に係止されている。
【0011】
器具本体10内では、防虫成分を含浸させた上記基体が電動モータの出力軸に連結されている。本体前面のスイッチ部材18をオンすると、上記基体が回転し、防虫成分が揮散用開口11aを通して外部に揮散される。スイッチオンの状態では、ランプ19が点灯する。
【0012】
≪電池収容室および電池蓋の構成≫
図2は、薬剤揮散用器具の背面側から見た斜視図である。図3は、電池蓋30を少し開けた状態を示しており、図4は、さらに電池蓋30を開けた状態を示している。この薬剤揮散用器具は、フック部60を使用者が着用するベルト等(固定対象)に引っ掛けることで身体に装着できる、携帯タイプのものである。また、器具本体10の上部に設けた引っ掛け部13を用いて、木の枝や壁等に吊り下げて使用することもできる。
【0013】
器具本体10の背面側には、モータ駆動用の乾電池を収容する電池収容室20が設けられている。図示の例においては、電池収容室20を開閉させる電池蓋30は、蓋部分40とアーム部50とフック部60とから構成される。
【0014】
蓋部分40は、電池収容室20を直接覆う部分であって、フック係止部(閉蓋時係止部)41を一端縁に備えている。
アーム部50は、蓋部分40から延在する細長い板状部材であって、その先端部には回動軸(常時係止部)51が形成されている。
フック部60は、アーム部50先端の回動軸51が設けられた位置から折り返されて、蓋部分40近傍にまで延在している。
【0015】
図2に示したように電池蓋30を閉じた状態では、蓋部分40およびアーム部50が器具本体10の外壁面10aの一部を構成している。このように構成された外壁面とフック部60との間に、使用者が身に付けているベルト等(固定対象)を挟み込んで挟持することで、この薬剤揮散用器具を身体に装着できる。
【0016】
器具本体10の外壁面10a上には、対向する2つの係止突片15a、15bが設けられていて、各係止突片15a、15bに形成された孔部に、アーム部50先端の回動軸51が嵌入している。このようにして、電池蓋30は器具本体10に連結されていて、回動軸51を中心として回動する。
一方、蓋部分40に設けられたフック係止部41は、閉蓋時には、電池収容室20の一端に形成された係止部21と係合して閉蓋状態を維持するが、開蓋時には、係止部21から離脱する。
【0017】
回動軸51は、本発明における「常時係止部」を構成し、一方、フック係止部41は、本発明における「閉蓋時係止部」を構成している。
すなわち、回動軸51は、電池蓋30を閉じた閉蓋状態においても、電池蓋30を開けた開蓋状態においても、いずれの場合にも器具本体10に連結されていて、分離されることはない。一方、フック係止部41は、閉蓋状態においてのみ器具本体10に連結され、開蓋状態では、器具本体10から分離する。
【0018】
なお、蓋部分40において、フック係止部41の両側位置にスリット43a、43bを設けている。このようなスリット43a、43bを設けると、器具本体10側の係止部21に対する係脱の際、フック係止部41の弾性変位が容易となる。
すなわち、スリット43a、43b間の領域42を指で押圧して容易に撓ませることができるので、係止部21と係合したフック係止部41を簡単に外すことができる。また、電池蓋30を閉じる際、蓋部分40を押してフック係止部41を係止部21に係合させるのに必要な力も小さくて済む。
【0019】
以上のように、電池蓋30は全体として、器具本体10と常時連結されていて分離することがないので、これを紛失することは起こり得ない。
【0020】
≪他の実施形態≫
電池蓋の紛失を防止するという観点では、本発明の薬剤揮散用器具の具体的な形態は、図2〜4に示したものに限定されず、少なくとも「閉蓋状態および開蓋状態のいずれにおいても器具本体10に連結されている常時係止部」と「閉蓋状態においてのみ器具本体10に連結される閉蓋時係止部」とが電池蓋に設けられていれば足りる。
【0021】
例えば、図5に示したように、一枚の板材で電池蓋30’を構成し、当該電池蓋30’の一端部と電池収容室20の一端部とをヒンジ式に連結(図5中、Aで示した連結部)することで「常時係止部」を構成してもよい。この場合、「閉蓋時係止部」は、図2〜4に示した実施形態と同様に、フック係止部41で構成される。すなわち、このフック係止部41は、電池収容室20の一端に形成された係止部21と係合して閉蓋状態を維持する。
【0022】
しかし、図2〜4に示した実施形態は、図5の実施形態に比べて、次のような利点がある。
【0023】
≪図2〜4に示した実施形態の利点1≫
電池蓋30を全開させた場合に、電池収容室20に対して360°どの方向からでもアクセスが可能となるため、電池交換作業が容易である。図5の例では、電池蓋30’自体が邪魔になって、図中上方からのアクセスが制限される。
【0024】
≪図2〜4に示した実施形態の利点2≫
身体への装着のためのフック部60が電池蓋30と一体的に構成されているので、器具本体10自体を小型に保ったまま、大きなフック部60を採用でき、その結果、身体への装着作業が容易となるだけでなく、しっかりとした装着が可能となる。
仮に、図5の例において、電池蓋30’と別部材のフック部であって、図2〜4に示したものと同じ大きさのものを採用しようとすると、その分だけ、電池蓋30’の上方側の壁面10a’を大面積に確保しなければならず、その分だけ、器具が大型化してしまう。
図2〜4に示した例では、蓋部分40とフック部60を一体化してなる電池蓋30を採用することで、そのような不都合を防いでいる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散用器具を示す前方斜視図。
【図2】図1の薬剤揮散用器具の後方斜視図。
【図3】図2の状態から電池蓋を少し開けた状態を示す後方斜視図。
【図4】図3の状態から電池蓋をさらに開けた状態を示す後方斜視図。
【図5】本発明の別の実施形態に係る薬剤揮散用器具を説明する後方斜視図。
【符号の説明】
【0026】
10 薬剤揮散用器具の本体
11 前カバー
11a 揮散用開口
13 引っ掛け部
14 係止フック
15a、15b 係止突片
18 スイッチ部材
19 ランプ
20 電池収容室
21 係止部
30、30’ 電池蓋
40 蓋部分
41 フック係止部(閉蓋時係止部)
42 スリット間の領域
43a、43b スリット
50 アーム部
51 回動軸(常時係止部)
60 フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池収容室(20)を有する器具本体(10)と、当該電池収容室を開閉する電池蓋(30)とを備え、防虫成分を含浸させた基体が内部に収容され、該基体が電動モータの出力軸に連結され電動モータを回転させて防虫成分を外部に揮散させる薬剤揮散用器具であって、
電池蓋(30)は、閉蓋状態および開蓋状態のいずれにおいても器具本体(10)に連結されている常時係止部と、閉蓋状態においてのみ器具本体(10)に連結される閉蓋時係止部と、によって器具本体(10)に連結されていることを特徴とする、薬剤揮散用器具。
【請求項2】
上記常時係止部は、電池蓋の一端部と電池収容室の一端部とに設けたヒンジ式連結部(A)であることを特徴とする、請求項1記載の薬剤揮散用器具。
【請求項3】
上記電池蓋(30)は、電池収容室(20)を覆い上記閉蓋時係止部(41)を有する蓋部分(40)と、蓋部分(40)から延在して先端に上記常時係止部(51)を有するアーム部(50)と、アーム部(50)から折り返されて蓋部分(40)近傍にまで延在するフック部(60)と、から構成されていて、
電池蓋(30)を閉じたとき、上記蓋部分(40)およびアーム部(50)が器具の外壁面の一部を構成し、当該外壁面と上記フック部(60)との間に固定対象を挟持することで、使用者の身体に装着されることを特徴とする、請求項1記載の薬剤揮散用器具。
【請求項4】
上記閉蓋時係止部(41)の係脱の際の弾性変位を容易にするスリット(43a、43b)を、当該閉蓋時係止部(41)の両側位置に設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の薬剤揮散用器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−230242(P2006−230242A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47449(P2005−47449)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】