説明

薬剤注入装置

【課題】 二重管削進方式によって軟弱地盤に管を推進するにあたり、容易に地盤改良を行えるようにした薬剤注入装置を提供する。
【解決手段】 立坑(30)内に設置される設置ベース(11)と、設置ベース上にスライド自在に搭載され、ジャッキによって前進・後退するスライダー装置(12)と、設置ベースに着脱可能に固定される架台ベース(21)と、架台ベース上に設けられ、スライダー装置のスライド方向に延びるスライドガイド(24)と、スライドガイドにスライド自在に支持され、薬剤注入管(27)を把持し、スライダー装置によって前進されて薬剤注入管を土中に水平に押し込むチャック装置(25,26)と、薬剤を薬剤注入管内に導入する薬剤導入部(28)と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤注入装置に関し、特に二重管削進方式によって管を推進するにあたり軟弱地盤に凝固剤を円滑に注入できるようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地中に上下水道管などの管を敷設する場合、管を推進させて地中に敷設する管推進工法が採用されることが多くなった。この管推進工法には種々の方式があるが、小口径の管を敷設する場合には二重管削進方式がよく採用されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
二重管削進方式の管推進装置は基本的にはスライドベース、推進機本体、推進ジャッキ、ケーシングロッド(内管)及び推進管(鋼管)から構成され、スライドベースには推進機本体がスライド自在に搭載されるとともに推進ジャッキが設けられ、推進ジャッキによって推進機本体が前進されるようになっている。
【0004】
また、推進機本体の押金には推進管の基部が嵌め込まれ、推進管内にはケーシングロッドが回転自在に組込まれ、ケーシングロッドの基部を推進機本体のスピンドルロッドに取付け、スピンドルロッドを駆動モータで駆動してケーシングロッドを回転させ、ケーシングロッド先端の切削ビットによって前方を掘削し、掘削土砂をケーシングロッド内に取込み、後方に排土するようになっている。
【0005】
推進管の推進が完了すると、ケーシングロッドを抜き取り、塩化ビニル管等を推進管内にセットし、推進管と塩化ビニル管等との間に充填剤等の中込め作業を行ない、2重構造の管を敷設することができる。
【0006】
上述の二重管削進方式は普通土から、玉石、転石混り土、岩盤まで、適用できる土質の範囲が広く、既設マンホールや既設シールドトンネル等へ直接到達させることができ、2重管構造であるので漏水が少ないなどの特徴を有する。
【0007】
しかし、砂地等、軟弱地盤において管の推進作業を行う場合、推進管廻りの土砂が大きく崩れてケーシングロッド内に取込まれてしまい、道路の陥没等が懸念される。
【0008】
これに対し、軟弱地盤に凝固剤を注入して地盤を改良することが行われている(特許文献3、特許文献4)。
【0009】
【特許文献1】特開2006−219920号公報
【特許文献2】特開2003−239685号公報
【特許文献3】特許第3124065号公報
【特許文献4】特公昭57−30959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の二重管削進方式の管推進装置では凝固剤などの薬剤を地盤に注入するのに適した装置がなく、地盤改良が非常に煩わしいという問題があった。
【0011】
本発明はかかる点に鑑み、二重管削進方式によって軟弱地盤に管を推進するにあたり、容易に地盤改良を行えるようにした薬剤注入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明に係る薬剤注入装置は、地盤に水平に薬剤を注入するようにした薬剤注入装置であって、地盤に薬剤を注入するための薬剤注入管と、立坑内に設置される設置ベースと、該設置ベース上にスライド自在に搭載され、ジャッキによって前進・後退するスライダー装置と、上記設置ベースのスライダー装置前方に着脱可能に固定される架台ベースと、該架台ベース上に設けられ、上記スライダー装置のスライド方向に延びるスライドガイドと、該スライドガイドにスライド自在に支持され、水平に延びる上記薬剤注入管を把持し、上記スライダー装置によって前進されることによって上記薬剤注入管を土中に水平に押し込むチャック装置と、圧送されてきた薬剤を上記薬剤注入管内に導入する薬剤導入部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の特徴の1つは立坑内に設置ベースを設置し、設置ベースにスライダー装置とチャック装置をスライド自在に搭載し、チャック装置によって薬剤注入管を把持し、スライダー装置によってチャック装置を前進させて薬剤注入管を地盤に押し込み、薬剤導入部から薬剤注入管に薬剤を導入し、地盤に薬剤を注入できるようにした点にある。これにより、地盤に水平に薬剤を注入できるので、地盤改良を容易に行うことができる。
【0014】
薬剤注入装置の構造のうち、設置ベース及びスライダー装置は二重管削進方式の管推進装置におけるスライドベース及び推進機本体を利用して構成することができる。その場合には薬剤注入装置を立坑内に設置し、薬剤を注入した後、架台ベースとチャック装置を取外し、ケーシングロッド及び推進管をセットすることによって管の推進作業を行うことができる。
【0015】
架台ベースは設置ベースに固定でき、しかもスライドガイドを設けることができれば特に形状は限定されず、下記の実施形態に示されるようにプレート状の架台ベースを採用することができる。
【0016】
スライドガイドはチャック装置をスライド自在に支持できればよく、チャック装置の車輪が嵌まり込む凹溝に形成してもよく、又チャック装置のガイドローラが摺接するガイドレールの方式とすることもできる。
【0017】
チャック装置は薬剤注入管を把持できればどのような機構でもよく、例えば複数のチャック爪を前進させて薬剤注入管を把持する一般的な機構を採用することができる。
【0018】
薬剤導入部は圧送されてきた薬剤を薬剤注入管内に導入することができれば特に構造は限定されず、例えば下記の実施形態に示されるように、薬剤注入管の後端が嵌合する嵌合部と薬剤注入管内に薬剤を導入する導入部とから構成されることができる。この場合、チャック機構には薬剤注入管の途中を把持させる。
【0019】
二重管削進方式の管推進装置におけるスライドベース、推進機本体、推進ジャッキ及び推進管については従来公知の推進装置と同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係る薬剤注入装置の好ましい実施形態が搭載される二重管削進方式の管推進装置の1例を示す。管推進装置10ではスライドベース11上に推進機本体(スライダー装置)12が前後スライド自在に搭載され、該推進機本体12は推進ジャッキによってスライドベース(設置ベース)11上を前進され後退されるようになっている。
【0021】
また、推進機本体12には駆動モータ13が搭載されるとともに、スピンドルロッド(図示せず)が設けられ、該スピンドルロッドと駆動モータ13との間にはギア伝達機構が設けられ、又スピンドルロッドにはケーシングロッド14の基部が取付けられるようになっている。
【0022】
さらに、推進機本体12には押金15が取付けられ、該押金15には推進管16の基部が嵌め込まれるようになっている。この推進管16内にはケーシングロッド14が回転自在に組込まれ、両者の間には周方向に延びるローラベアリング(図示せず)が介設されてケーシングロッド14の円滑な回転及び真直性を保証するようになっている。
【0023】
ケーシングロッド14の先端には切削ビット17が取付けられ、該切削ビット17の先端面には複数の切削刃17Aが周方向に所定の等角度間隔をあけて取付けられている。
【0024】
以上のような構成の管推進装置10において、スライドベース11の両側部11Aの間にはベースプレート(架台ベース)21が搭載され、ベースプレート21はボルト22とブラケット23によってスライドベース11の両側部11Aに抱きつくようにして取外し可能に固定されている。
【0025】
このベースプレート21上には左右のガイドレール(スライドガイド)24が前後方向に延びて固定され、ガイドレール24上には台車25がスライド自在に支持され、台車25上にはチャック機構26が搭載され、チャック機構26は駆動モータ26Aによって薬剤注入管27の途中を把持し解放し得るように構成され、台車25とチャック機構26とによってチャック装置が構成されている。
【0026】
台車25は推進機本体12の連結部12Aとロッド29によって連結され、推進ジャッキによって前進され後退されるようになっている。また、推進機本体12には薬剤導入パイプ(薬剤導入部)28が設けられ、薬剤導入パイプ28の先端には薬剤注入管27の後端を受ける受け部28Aが形成され、薬剤導入パイプ28は外部から圧送されてきた薬剤を薬剤注入管27に導入して前方の地盤に注入させるようになっており、以上のようにして薬剤注入装置20が構成されている。
【0027】
推進管16を推進するにあたり、地盤、例えば軟弱地盤を改良する場合、管推進装置10のスライドベース11に薬剤注入装置20をセットする。即ち、スライドベース11上にチャック機構26及び台車25が搭載されたベースプレート21を搭載し、ボルト22とブラケット23とによってベースプレート21をスライドベース11の両側部11Aに固定する。
【0028】
次に、この管推進装置10を立坑30内に降ろし、管を推進させるべき方向に向けて設置し、移動しないように固定する。その後、薬剤注入管27をチャック機構26に通し、薬剤注入管27の後端を薬剤導入パイプ28の受け部28Aに当接させ、駆動モータ26Aによってチャック機構26を作動させて薬剤注入管27を把持させる。
【0029】
こうして準備ができると、推進ジャッキによって推進機本体12を前進させると、台車25が前進して薬剤注入管27を前方の地盤に押し込む。台車25が所定の距離だけ進むと、チャック機構26による把持を解放し、台車25を後退させ、次の薬剤注入管27を立坑30内に降ろし、チャック機構26を通し、後端を薬剤導入パイプ28の受け部28Aに当接させるととに、先端を地盤に押し込んだ薬剤注入管27の後端に連結し、その状態で薬剤注入管27を把持し、上記と同様にして薬剤注入管27を前方の地盤に押し込む。このような作業を繰り返し、薬剤注入管27を地盤中に押し込んだ後、薬剤、例えば公知の凝固剤を薬剤注入管27内に導入し、地盤に注入して地盤の改良を行う。
【0030】
地盤の改良が済むと、チャック機構26によって薬剤注入管27を把持したまま推進ジャッキによって台車25を後退させ、薬剤注入管27を抜き出した後、薬剤注入装置20をスライドベース11から外して立坑30外に吊り上げ、後は推進機本体12にケーシングロッド14及び推進管16をセットし、推進管16を推進させることができる。
【0031】
発進立坑30と到達立坑との間に距離がある場合にはケーシングロッド14及び推進管16を残して推進機本体12を後退させ、後続のケーシングロッド14及び推進管16を推進機本体12にセットし、同様にして推進を継続する。
【0032】
推進管16の推進が済むと、ケーシングロッド14を推進管16から抜き取り、スライドベース11及び推進機本体12を発進立坑30から引き上げ、残った推進管16内に塩化ビニルパイプ等を挿入し、中込め作業を行うと、二重管を地中に敷設することができる。
【0033】
なお、上記の例では二重管削進方式の管推進装置を利用して薬剤注入装置を構成したが、専用の薬剤注入装置として構成し、地盤への薬剤の注入が済むと、立坑から吊り上げ、管推進装置を立坑内に設置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る薬剤注入装置が搭載される二重管削進方式の管推進装置の例を示す全体概略斜視図である。
【図2】上記薬剤注入装置の好ましい実施形態をを示す側面図である。
【図3】上記実施形態を示す正面図である。
【図4】上記実施形態の使用状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 二重管削進方式の管推進装置
11 スライドベース(設置ベース)
12 推進機本体(スライダー装置)
14 ケーシングロッド14
16 推進管
20 薬剤注入装置
21 ベースプレート(架台ベース)
24 ガイドレール(スライドガイド)
25 台車(チャック装置)
26 チャック機構(チャック装置)
27 薬剤注入管
28 薬剤導入パイプ
28A 受け部
30 立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に水平に薬剤を注入するようにした薬剤注入装置であって、
地盤に薬剤を注入するための薬剤注入管と、
立坑内に設置される設置ベースと、
該設置ベース上にスライド自在に搭載され、ジャッキによって前進・後退するスライダー装置と、
上記設置ベースのスライダー装置前方に着脱可能に固定される架台ベースと、 該架台ベース上に設けられ、上記スライダー装置のスライド方向に延びるスライドガイドと、
該スライドガイドにスライド自在に支持され、水平に延びる上記薬剤注入管を把持し、上記スライダー装置によって前進されることによって上記薬剤注入管を土中に水平に押し込むチャック装置と、
圧送されてきた薬剤を上記薬剤注入管内に導入する薬剤導入部と、
を備えたことを特徴とする薬剤注入装置。
【請求項2】
上記設置ベースは、ケーシングロッドを推進機本体によって回転させながら推進ジャッキによって前進させケーシングロッド先端の切削ビットによって土砂類を掘削しながら推進管を推進させるようにした二重管削進方式の管推進装置における上記推進機本体をスライド自在に支持するスライドベースであり、
上記スライダー装置が上記推進機本体であり、
上記管推進装置のケーシングロッド及び推進管に代えて上記管推進装置に搭載可能に構成されている請求項1記載の薬剤注入装置。
【請求項3】
上記チャック装置が上記薬剤注入管の途中を把持する一方、上記薬剤導入部が上記スライダー装置に設けられ、上記薬剤注入管の後端を受けるようになっている請求項1記載の薬剤注入装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−150915(P2008−150915A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342125(P2006−342125)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(500246108)株式会社近畿開発 (7)
【Fターム(参考)】