説明

薬液散布装置

【課題】薬液の散布作業において、各散布ノズルに接続された分岐管路の各分岐管路開閉弁の全部を閉状態とし、全部の散布ノズルからの噴射を停止しても、分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧を除去できる薬液散布装置を提供する。
【解決手段】薬液タンク2または洗浄液タンク16をポンプ30の吸入側に選択的に接続させる五方切替弁21と、ポンプの吐出側に接続された吐出管路44から分岐された複数の分岐管路45,46,47,48,49と、各分岐管路にそれぞれ接続された散布ノズル9と、各分岐管路をそれぞれ開閉する開閉弁23,24,25,26,27と、薬液タンク内を洗浄する洗浄ノズル33,34と、吐出管路と洗浄ノズルとを接続する薬液タンク吐出管路59と、薬液タンク吐出管路を開閉する薬液タンク吐出管路開閉弁28と、を備え、複数の開閉弁がすべて閉状態時にのみ、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液タンク内の薬液を散布ノズルから散布する薬液散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような薬液散布装置として、例えば、特許文献1には、薬液タンクと別個に洗浄液タンクを設け、薬液の散布作業が終了し、薬液タンクが空になると、この洗浄液タンクと薬液タンクとを連通する管路に設けた開閉弁を運転席の切替レバーにより操作して開位置にし、洗浄液タンクの洗浄液を薬液タンクに導入し、この薬液を含んだ洗浄液をポンプにより散布ノズルに圧送して、圃場に散布し、これにより薬液タンクおよび薬液の送液経路を洗浄する薬液散布装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ポンプに洗浄液および薬液タンク(散布液タンク)内の薬液(散布液)を選択的に吸入させる洗浄液導入制御弁を設け、散布液の流れ系統を洗浄するときには、洗浄液をポンプに吸入させて、散布ノズルに圧送する薬液散布装置が記載されている。なお、散布ノズルは液肥ノズルと薬液ノズルの2種類を設け、切替弁(三方弁)により切り替えていずれかの散布ノズルに選択的に液肥、薬液を圧送するように構成されている。
【0004】
また、特許文献3には、薬液を貯留する薬液タンクと洗浄液を貯留する洗浄液タンクとを設け、薬液タンク内における薬液がなくなると、これを薬液検出手段がこれを検出し、この検出信号に基づいて第1の切替弁がポンプの吸入側を薬液タンクから洗浄液タンクへ接続し、そして洗浄タンク内の洗浄液はポンプにより圧送され、第2の切替弁の切替位置に応じて散布ノズル側または薬液タンク側に送られる薬液散布装置が記載されている。洗浄液が散布ノズル側へ送られた場合は、洗浄液は散布ノズルから噴射され、一方洗浄液が薬液タンク側へ送られた場合には、洗浄液は、薬液タンク内へ導入され、排出弁を介して薬液タンクから外部に排出される。洗浄液は、薬液の経路を通過する際、その経路を洗浄する。
【0005】
【特許文献1】特公平7−79595号公報
【特許文献2】実用新案登録第2511004号公報
【特許文献3】実用新案登録第2536011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の薬液散布装置ではいずれも、薬液タンク内の薬液を複数の散布ノズルから散布(噴射)する散布作業の際に、各散布ノズルに接続された分岐管路の各開閉バルブの全部を閉状態とし、全部の散布ノズルからの噴射を停止すると、分岐管路の開閉バルブの上流側の吐出管路内に残圧が生じてしまい、このため、例えば、一定圧力に保つ自動調圧システムにおいて、または、自走式あるいは搭載式の薬液散布装置において精密防除を行う場合に速度連動散布装置などにおいて、圧力センサ等の誤作動を発生させる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、薬液の散布作業において、各散布ノズルに接続された分岐管路の各分岐管路開閉弁の全部を閉状態とし、全部の散布ノズルからの噴射を停止しても、分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧を除去できる薬液散布装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、薬液タンクおよび薬液の送液経路を洗浄できるとともに、薬液の散布作業において、各散布ノズルに接続された分岐管路の各分岐管路開閉弁の全部を閉状態とし、全部の散布ノズルからの噴射を停止しても、分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧を除去できる薬液散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の薬液散布装置は、薬液を貯留する薬液タンク(2)と、ポンプ(30)の吐出側に接続された吐出管路(44)と、前記吐出管路(44)から分岐された複数の分岐管路(45,46,47,48,49)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)にそれぞれ接続された散布ノズル(9)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)をそれぞれ開閉する複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)と、前記吐出管路(44)と前記薬液タンク(2)とを接続する薬液タンク吐出管路(59)と、前記薬液タンク吐出管路(59)を開閉する薬液タンク吐出管路開閉弁(28)と、を備え、前記複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)がすべて閉状態時にのみ、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)が開状態となることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明において、薬液の散布作業をする場合には、分岐管路開閉弁の全部または一部を開状態にする。そうすると、薬液タンク吐出管路開閉弁は閉状態となる。これにより、薬液タンク内の薬液は、ポンプ、吐出管路、分岐管路開閉弁および分岐管路を経て散布ノズルに送られ、この散布ノズルから薬液が噴射される。
この薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となる。これにより、薬液タンク内の薬液は、ポンプ、吐出管路、薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て薬液タンクに送られ、その結果分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧が除去される。
【0010】
請求項1に記載の発明にあっては、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となるので、薬液タンク内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て薬液タンクに戻されるため、分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧を除去することができる。したがって、例えば、一定圧力に保つ自動調圧システムあるいは精密防除を行う場合の速度連動散布装置などにおいて、圧力センサ等の誤作動を防止することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の薬液散布装置は、請求項1に記載の発明において、前記吐出管路(44)には、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)の上流側に、前記ポンプ(30)の吐出側を前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)または前記薬液タンク(2)に選択的に接続させる吐出側切替弁(18)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明においては、薬液の散布作業を行う場合には、吐出側切替弁によりポンプの吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁に接続させる。そして、請求項1の発明の場合と同様にして、薬液の散布作業が行われる。
そして、請求項1に記載の発明と同様に、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となる。これにより、薬液タンク内の薬液は、ポンプ、吐出管路、吐出側切替弁、薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て薬液タンクに送られ、その結果分岐管路開閉弁と吐出側切替弁との間の吐出管路の残圧が除去される。
一方、吐出側切替弁によりポンプの吐出側を薬液タンクに接続させると、吐出管路に圧送された薬液が薬液タンクに流れる。
【0013】
請求項2に記載の発明にあっては、吐出管路の薬液タンク吐出管路開閉弁の上流側に、したがって分岐管路開閉弁の上流側に、ポンプの吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁または薬液タンクに選択的に接続させる吐出側切替弁が設けられているので、薬液の散布作業中に全部の散布ノズルからの噴射を停止したい場合に、複数の分岐管路開閉弁の全部を閉状態にするのに代えて、吐出側切替弁を切り替えてポンプの吐出側を薬液タンクに接続させることによって行うことができる。
【0014】
また、請求項3に記載の薬液散布装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記薬液タンク吐出管路(59)の前記薬液タンク(2)側には、前記薬液タンク(2)内の薬液を攪拌可能なノズル(33,34)が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明においては、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となり、薬液タンク内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経てノズルに送られ、このノズルから薬液タンク内に噴射されて薬液の攪拌を行うので、薬液の攪拌性能を向上させることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の薬液散布装置は、薬液を貯留する薬液タンク(2)と、洗浄液を貯留する洗浄液タンク(16)と、前記薬液タンク(2)または前記洗浄液タンク(16)をポンプ(30)の吸入側に選択的に接続させる吸入側切替弁(21)と、前記ポンプ(30)の吐出側に接続された吐出管路(44)と、前記吐出管路(44)から分岐された複数の分岐管路(45,46,47,48,49)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)にそれぞれ接続された散布ノズル(9)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)をそれぞれ開閉する複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)と、前記薬液タンク内を洗浄する洗浄ノズル(33,34)と、前記吐出管路(44)と前記洗浄ノズル(33,34)とを接続する薬液タンク吐出管路(59)と、前記薬液タンク吐出管路(59)を開閉する薬液タンク吐出管路開閉弁(28)と、を備え、前記複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)がすべて閉状態時にのみ、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)が開状態となることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明において、薬液タンクを洗浄する場合には、吸入側切替弁により洗浄液タンクをポンプの吸入側に接続させるとともに、全部の分岐管路開閉弁を閉状態にする。そうすると、全部の分岐管路開閉弁が閉状態になったために、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となる。これにより、洗浄液タンク内の洗浄液は、吸入側切替弁、ポンプ、吐出管路、薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て洗浄ノズルに送られ、この洗浄ノズルから薬液タンク内に噴射され、薬液タンクが洗浄される。
【0018】
また、薬液の送液経路を洗浄する場合には、吸入側切替弁により洗浄液タンクをポンプの吸入側に接続させるとともに、分岐管路開閉弁の全部または一部を開状態にする。そうすると、薬液タンク吐出管路開閉弁は閉状態となる。これにより、洗浄液タンク内の洗浄液は、吸入側切替弁、ポンプ、吐出管路、分岐管路開閉弁および分岐管路を経て散布ノズルに送られ、この散布ノズルから洗浄液が噴射され、その結果薬液の送液経路が洗浄される。
【0019】
一方、薬液の散布作業をする場合には、吸入側切替弁により薬液タンクをポンプの吸入側に接続させるとともに、分岐管路開閉弁の全部または一部を開状態にする。そうすると、薬液タンク吐出管路開閉弁は閉状態となる。これにより、薬液タンク内の薬液は、吸入側切替弁、ポンプ、吐出管路、分岐管路開閉弁および分岐管路を経て散布ノズルに送られ、この散布ノズルから薬液が噴射される。
この薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となる。これにより、薬液タンク内の薬液は、吸入側切替弁、ポンプ、吐出管路、薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て洗浄ノズルに送られ、この洗浄ノズルから薬液タンク内に噴射され、その結果分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧が除去される。
【0020】
請求項4に記載の発明にあっては、吸入側切替弁を切り替えて、全部の分岐管路開閉弁を閉状態にすれば、薬液タンクを洗浄することができ、さらに分岐管路開閉弁の全部または一部を開状態にすれば、薬液の送液経路を洗浄することができる。
また、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となるので、薬液タンク内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て洗浄ノズルに送られ、この洗浄ノズルから薬液タンク内に噴射されるため、分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧を除去することができる。したがって、例えば、一定圧力に保つ自動調圧システムあるいは精密防除を行う場合の速度連動散布装置などにおいて、圧力センサ等の誤作動を防止することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の薬液散布装置は、請求項4に記載の発明において、前記吐出管路(44)には、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)の上流側に、前記ポンプ(30)の吐出側を前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)または前記薬液タンク(2)に選択的に接続させる吐出側切替弁(18)が設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明においては、薬液タンクの洗浄、薬液の送液経路の洗浄および薬液の散布作業のいずれの作業を行う場合も、吐出側切替弁によりポンプの吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁に接続させる。そして、請求項4の発明の場合と同様にして、薬液タンクの洗浄、薬液の送液経路および薬液の散布作業が行われる。
そして、請求項4に記載の発明と同様に、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となる。これにより、薬液タンク内の薬液は、吸入側切替弁、ポンプ、吐出管路、吐出側切替弁、薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て洗浄ノズルに送られ、この洗浄ノズルから薬液タンク内に噴射され、その結果分岐管路開閉弁と吐出側切替弁との間の吐出管路の残圧が除去される。
一方、吐出側切替弁によりポンプの吐出側を薬液タンクに接続させると、吐出管路に圧送された薬液または洗浄液が薬液タンクに流れる。
【0023】
請求項5に記載の発明にあっては、吸入側切替弁および吐出側切替弁を切り替えて、全部の分岐管路開閉弁を閉状態にすれば、薬液タンクを洗浄することができ、さらに分岐管路開閉弁の全部または一部を開状態にすれば、薬液の送液経路を洗浄することができる。
また、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となるので、薬液タンク内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て洗浄ノズルに送られ、この洗浄ノズルから薬液タンク内に噴射されるため、分岐管路開閉弁と吐出側切替弁との間の吐出管路の残圧を除去することができる。
また、吐出管路の薬液タンク吐出管路開閉弁の上流側に、したがって分岐管路開閉弁の上流側に、ポンプの吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁または薬液タンクに選択的に接続させる吐出側切替弁が設けられているので、薬液の散布作業中に全部の散布ノズルからの噴射を停止したい場合に、複数の分岐管路開閉弁の全部を閉状態にするのに代えて、吐出側切替弁を切り替えてポンプの吐出側を薬液タンクに接続させることによって行うことができる。
【0024】
また、請求項6に記載の薬液散布装置は、請求項4または請求項5に記載の発明において、前記洗浄ノズル(33,34)は、前記薬液タンク(2)の薬液の攪拌にも用いられることを特徴とする。
【0025】
請求項6に記載の発明においては、薬液の散布作業中に、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすると、薬液タンク吐出管路開閉弁が開状態となり、薬液タンク内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁および薬液タンク吐出管路を経て洗浄ノズルに送られ、この洗浄ノズルから薬液タンク内に噴射されて薬液の攪拌を行うので、薬液の攪拌性能を向上させることができる。
【0026】
また、請求項7に記載の薬液散布装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の発明において、搭載式または自走式であることを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の発明においては、薬液散布装置が走行するので、薬液の散布作業において、例えば枕地旋回するときなどに、全部の散布ノズルからの噴射を停止するために、分岐管路開閉弁の全部を閉状態にすることがあるが、このような場合に上記のような吐出管路の残圧の除去を行うことができ、したがって精密防除を行う場合に速度連動散布装置などにおいて、圧力センサ等の誤作動を防止することができる。
【0028】
ここで、上記各請求項において、各分岐管路にそれぞれ接続される散布ノズルは、1つの場合、複数の場合あるいはノズル群の場合などを含む。また、散布ノズルから噴射する薬液は、特に限定されず、例えば、薬液、肥料を含む栄養液などを含む。また、吐出管路、分岐管路および薬液タンク吐出管路は、例えば、剛性の管、可撓性のホース、配管継手などにより構成される。
【0029】
なお、上記における括弧内の符号は、図面において対応する要素を便宜的に表記したものであり、したがって、本発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは、「特許請求の範囲」の記載についても同様である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の薬液散布装置によれば、薬液の散布作業において、各散布ノズルに接続された分岐管路の各分岐管路開閉弁の全部を閉状態とし、全部の散布ノズルからの噴射を停止しても、分岐管路開閉弁の上流側の吐出管路の残圧を除去することができ、したがって、例えば、一定圧力に保つ自動調圧システムあるいは精密防除を行う場合の速度連動散布装置などにおいて、圧力センサ等の誤作動を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図12は本発明の実施の形態に係るブームスプレーヤを示す図であって、図1は正面図であり、図2は左側面図であり、図3は右側面図であり、図4は背面図であり、図5は平面図であり、図6は薬液タンクを左右方向に切断し、それを前側から見た図であり、図7は薬液を切断し、それを斜め前方から見た図であり、図8は混合タンク部の背面図であり、図9は図8の一部を切断して示す断面図であり、図10は配管の構成を示す配管系統図であり、図11および図12は開閉弁(分岐開閉弁)と薬液タンク吐出管路開閉弁との関係を説明するための図であって、図11はいずれかの開閉弁のスイッチがON状態の場合を示す回路図であり、図12はすべての開閉弁のスイッチがOFF状態の場合を示す回路図である。なお、図1ないし図5において、左側のブームは図示を省略している。
【0032】
図1ないし図9に示すように、このブームスプレーヤ(薬液散布装置)は、搭載式のブームスプレーヤであってトラクター(図示せず)の後部に搭載され、走行しながら散布作業を行うものである。このブームスプレーヤは、機体フレーム1を備えており、機体フレーム1には、薬液(薬剤)を貯留する薬液タンク2が設けられている。また、機体フレーム1の前部には、3点リンク3が設けられており、この3点リンク3を用いてトラクターに搭載される。また機体フレーム1の下部には、スタンド4が設けられており、トラクターから切り離された場合に、このスタンド4を用いて起立状態にされ、トラクター搭載時にはスタンド4が折り畳まれるようになっている。また、機体フレーム1の後部には、ブームノズル装置5が設置されている。
【0033】
ブームノズル装置5は、機体フレーム1に昇降移動可能に設けられたセンターブーム6と、センターブーム6の両端部に揺動可能に連結された左右のサイドブーム7とを備えている。センターブーム6には、ノズルパイプ8が取り付けられており、ノズルパイプ8には、複数のノズル(散布ノズル)9がほぼ一定間隔で設けられている。サイドブーム7は、スライド式のブームであって、第1ブーム10と、第1ブーム10の外側部に設けられた第2ブーム11とからなる。第2ブーム11は、第1ブーム10に対してその長さ方向に沿ってスライド移動可能であり、このスライド移動によりサイドブーム7全体が伸縮自在となっている。第1ブーム10および第2ブーム11にはそれぞれ、ノズルパイプ12およびノズルパイプ13が取り付けられており、各ノズルパイプ12およびノズルパイプ13にはそれぞれ、複数のノズル(散布ノズル)9がほぼ一定間隔で設けられている。
【0034】
ブームノズル装置5のセンターブーム6のほぼ中央部には、散布用薬液(薬剤)の調合を行うための混合タンク15が設置されている。
また、薬液タンク2の上部の右側には、洗浄液(洗浄水)を貯留する洗浄液タンク16が設けられている。
【0035】
また、薬液タンク2の左側面の中央部には、調圧弁17、メインコック(吐出側切替弁)18、余水切替弁19が設けられ、下部には五方切替弁(吸入側切替弁)21が設けられている。また、薬液タンク2の右側面の下部には、5連分水弁22が設けられている。この5連分水弁22は、5つの開閉弁(分岐管路開閉弁)23,24,25,26,27を備えている。また、薬液タンク2の右側面には、5連分水弁22の下側に、薬液タンク吐出管路開閉弁28が設けられている。
【0036】
また、薬液タンク2の下側には、往復動式のポンプ30が設けられている。このポンプ30の前側には、ギヤ装置31が設けられており、ギヤ装置31の入力軸は前方に突出し、出力軸は後方に突出している。そして、ギヤ装置の入力軸がトラクターの後部のPTO軸に連結されて、回転駆動され、この回転動力がギヤ装置31の出力軸を介してポンプ30に伝達される。
【0037】
また、薬液タンク2内には、底面の中央部から上方に突き出ている洗浄ノズル(ノズル)33と、前面および後面の中央部からそれぞれ薬液タンク2の内側に向かって突き出ている洗浄ノズル(ノズル)34とが設けられている。供給される液体の圧力が所定の圧力以上になると、底面の洗浄ノズル33並びに前面および後面の各洗浄ノズル34はそれぞれ、ほぼ水平方向およびほぼ垂直方向に回転し、360度四方に液体を噴射するもので、旋回式のノズルである。なお、この実施の形態では、洗浄ノズル33,34は合計3つ設けたが、設置する個数は適宜設定すればよい。また、洗浄ノズル33,34は旋回式でなく、例えば、単に噴射するだけの形式など他の形式のものでもよい。
【0038】
次に、図10を参照しつつ、このブームスプレーヤの配管系統を説明する。
ポンプ30の吸入側に接続された吸入管路37には、ストレーナ38を介して手動式の五方切替弁21が接続されている。この五方切替弁21は、薬液吸入管路39により薬液タンク2に接続されているとともに、洗浄液吸入管路40により洗浄液タンク16に接続されている。洗浄液吸入管路40は、途中で薬液タンク2内を通過している。また、五方切替弁21は、外部給水管路41,42によりそれぞれ外部の給水源に接続される。そして、五方切替弁21を切り替えて、薬液吸入管路39と吸入管路37とを接続させることにより薬液タンク2とポンプ30の吸入側とが接続され、また洗浄液吸入管路40と吸入管路37とを接続させることにより洗浄液タンク16とポンプ30の吸入側とが接続され、また外部給水管路41,42と吸入管路37とをそれぞれ接続させることにより外部給水管路41,42とポンプ30の吸入側とがそれぞれ接続される。
【0039】
ポンプ30の吐出側に接続された吐出管路44には、5連分水弁22が接続されている。この5連分水弁22は、5つの電動式の開閉弁23,24,25,26,27を備えており、各開閉弁23,24,25,26,27にはそれぞれ、分岐管路45,46,4748,49が接続されている。分岐管路45,46,4748,49にはそれぞれ、左側のノズルパイプ13、左側のノズルパイプ12、中央のノズルパイプ8、右側のノズルパイプ12、右側のノズルパイプ13が接続されており、各ノズルパイプ13,12,8,12,13はそれぞれ、複数のノズルを備えている。
【0040】
また、吐出管路44には、上流側(ポンプ30側)から順に、電動式の調圧弁17、電動式の三方切替弁からなるメインコック18および差圧式などからなる流量センサ50が設置されている。調圧弁17の余水管路51は、薬液タンク2に接続されており、余水が薬液タンク2に戻される。余水管路51の途中には、手動式の三方切替弁からなる余水切替弁19が設けられており、余水切替弁19は、管路52により洗浄液タンク16に接続されている。管路52は、途中で薬液タンク2内を通過している。
【0041】
メインコック18は、戻り吐出管路53により薬液タンク2に接続されている。戻り吐出管路53は、途中で薬液タンク2内を通過し、その後薬液タンク2の外部に出た後、薬液タンク2に接続されている。この戻り吐出管路53には、上流側から順に、手動式の三方切替弁55およびオリフィス56が設けられている。三方切替弁55は、混合タンク15に接続されている。オリフィス56の下流側には、混合タンク15の下部に設けられた手動式の開閉弁57に接続されている。
【0042】
メインコック18と流量センサ50との間の吐出管路44と、薬液タンク2内の洗浄ノズル33,34とは、薬液タンク吐出管路59により接続されている。この薬液タンク吐出管路59には、電動式の切替弁からなる薬液タンク吐出管路開閉弁28が設けられている。
【0043】
次に、5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27と薬液タンク吐出管路開閉弁28との関係、すなわち複数の開閉弁(分岐管路開閉弁)23,24,25,26,27がすべて閉状態時にのみ、薬液タンク吐出管路開閉弁28が開状態となるための手段について説明する。
図11および図12において、スイッチ63,64,65,66,67はそれぞれ、5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27の各モータ73,74,75,76,77を動作させるためのスイッチである。また、リレー68は、薬液タンク吐出管路開閉弁28のモータ78を動作させるためのリレーである。また、スイッチ69は、メインコック18のモータ79を動作させるためのスイッチである。
【0044】
図11に示すように、スイッチ63,64,65,66,67のうち1つのスイッチ63をON状態にすると、矢印(1)で示すように12Vの直流電源(電源)60からスイッチ63に供給された電流が、矢印(2)および矢印(3)で示すように分けられて流れる。そして、矢印(2)の電流はリレー68の接点をON状態にするので、矢印(4)で示すように直流電源60から電流が薬液タンク吐出管路開閉弁28のモータ78に供給され、モータ78が薬液タンク吐出管路開閉弁28を閉状態にする。一方、矢印(3)の電流が開閉弁23のモータ73に供給されると、このモータ73が開閉弁23を開状態にする。他の4つのスイッチ64,65,66,67はOFF状態であるので、開閉弁24,25,26,27は閉状態になる。また、スイッチ69はON状態であるから、メインコック18のモータ79がメインコック18を切り替えて、ポンプ30の吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁28に接続させる。
このように、スイッチ63,64,65,66,67のうちの少なくとも1つをON状態にすると、リレー68の接点がON状態になるので、矢印(4)で示すように直流電源60から電流が薬液タンク吐出管路開閉弁28のモータ78に供給され、モータ78が薬液タンク吐出管路開閉弁28を閉状態にする。
【0045】
一方、図12に示すように、全部のスイッチ63,64,65,66,67をOFF状態にすると、例えば、矢印(1)で示すように12Vの直流電源(電源)60からスイッチ63に供給された電流が、矢印(2)で示すように流れて、開閉弁23のモータ73に供給され、モータ73が開閉弁23を閉状態にする。他のスイッチ64,65,66,67の場合も同様にモータ74,75,76,77が開閉弁24,25,26,27を閉状態にする。そして、リレー68のコイルにはどこからも電流が供給されず、接点がOFF状態であるので、矢印(3)で示すように直流電源60から電流が薬液タンク吐出管路開閉弁28のモータ78に供給され、モータ78が薬液タンク吐出管路開閉弁28を開状態にして、吐出管路44を薬液タンク吐出管路59に接続させる。なお、スイッチ69はON状態であるから、メインコック18のモータ79がメインコック18を切り替えて、ポンプ30の吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁28に接続させる。
【0046】
次に、図10を参照しつつ、上記のブームスプレーヤの作用を説明する。
このブームスプレーヤにおいて、薬液タンク2を洗浄する場合には、五方切替弁21を切り替えて洗浄液タンク16をポンプ30の吸入側に接続させる。また、メインコック18動作用のスイッチ69はON状態にして、メインコック18を切り替え、ポンプ30の吐出側を5連分水弁22側に接続させる(図12も参照)。また、5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27動作用の各スイッチ63,64,65,66,67を全部OFF状態にして、全部の開閉弁23,24,25,26,27を閉状態にする。そうすると、薬液タンク吐出管路開閉弁28動作用のリレー68のコイルにどこからも電流が供給されず、接点がOFF状態であるので、モータ78が薬液タンク吐出管路開閉弁28を開状態にして、吐出管路44を薬液タンク吐出管路59に接続させる(図12も参照)。これにより、洗浄液タンク16内の洗浄液は、五方切替弁21、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、薬液タンク吐出管路開閉弁28および薬液タンク吐出管路59を経て洗浄ノズル33,34に送られ、この洗浄ノズル33,34から薬液タンク2内に噴射され、薬液タンク2が洗浄される。
【0047】
また、薬液の送液経路を洗浄する場合には、五方切替弁21を切り替えて洗浄液タンク16をポンプ30の吸入側に接続させる。また、メインコック18動作用のスイッチ69はON状態にして、メインコック18を切り替え、ポンプ30の吐出側を5連分水弁22側に接続させる(図11も参照)。また、5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27動作用の各スイッチ63,64,65,66,67の全部または一部をON状態にして、開閉弁23,24,25,26,27の全部または一部を開状態にする(図11も参照;図11ではスイッチ63のみON状態)。そうすると、リレー68の接点をON状態にするので、モータ78が薬液タンク吐出管路開閉弁28を閉状態にする。これにより、開状態になった開閉弁23,24,25,26,27の分岐管路45,46,47,48,49に接続されたノズル9から洗浄液が噴射(噴霧)され、このノズル9までの薬液の送液管路が洗浄される。例えば、図11の場合には、洗浄液タンク16内の洗浄液は、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、流量センサ50、開閉弁23、分岐管路45およびノズルパイプ13を経てノズル9に送られ、このノズル9から洗浄液が噴射され、その結果このノズル9までの薬液の送液経路が洗浄される。
【0048】
一方、薬液の散布作業をする場合には、五方切替弁21を切り替えて薬液タンク2をポンプ30の吸入側に接続させる。以下は、前述の薬液の送液経路を洗浄する場合と同様である。すなわち、前述と同様にして、メインコック18を切り替え、ポンプ30の吐出側を5連分水弁22側に接続させる(吐出管路44のままにする)。また、前述と同様にして、5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27の全部または一部を開状態にする。そうすると、前述と同様に、薬液タンク吐出管路開閉弁28が閉状態となる。これにより、薬液タンク2内の薬液は、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、流量センサ50、開状態になった開閉弁23,24,25,26,27に対応する分岐管路45,46,47,48,49およびノズルパイプ13,12,8,12,13を経てノズル9に送られ、このノズル9から薬液が噴射(噴霧)される。
【0049】
そして、この薬液の散布作業中に、例えば、枕地旋回する際などに、全部のノズル9からの噴射を停止するために、5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27の全部を閉状態にすると、前述の薬液タンク2を洗浄する場合と同様にして、薬液タンク吐出管路開閉弁28が開状態となる。これにより、薬液タンク2内の薬液は、五方切替弁21、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、薬液タンク吐出管路開閉弁28および薬液タンク吐出管路59を経て洗浄ノズル33,34に送られ、この洗浄ノズル33,34から薬液タンク2内に噴射され、その結果開閉弁23,24,25,26,27の上流側の吐出管路の残圧が除去される。また、薬液タンク2内の薬液中に洗浄ノズル33,34から薬液が噴射され、これにより薬液タンク2内の薬液が攪拌される。
【0050】
また、散布用薬液の調合を行うため場合には、五方切替弁21を切り替えて、外部の給水源に接続された外部給水管路41を、ポンプ30の吸入側に接続させる。また、メインコック18動作用のスイッチ69はOFF状態にして、メインコック18を切り替え、ポンプ30の吐出側を戻り吐出管路53に接続させる。
次いで、三方切替弁55を切り替えて戻り吐出管路53を混合タンク15に接続する。そして、ポンプ30を作動させて、外部の給水源から、外部給水管路41、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、戻り吐出管路53、三方切替弁55を経て混合タンク15に所定量の希釈用液体(水)を注入する。また、その後、混合タンク15に所定量の薬液(原液)を投入する。
【0051】
次いで、三方切替弁55を切り替えて戻り吐出管路53を薬液タンク2に接続する。そして、ポンプ30を作動させて、外部の給水源から、外部給水管路41、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、戻り吐出管路53、三方切替弁55を経て薬液タンク2に所定量の希釈用液体(水)を注入する。
次いで、五方切替弁21を切り替えて、薬液タンク2をポンプ30の吸入側に接続させる。そして、ポンプ30を作動させて、薬液タンク2内の希釈用液体(水)を、ポンプ30、吐出管路44、調圧弁17、メインコック18、戻り吐出管路53、三方切替弁55を経て薬剤タンク2に戻し、循環させる。この薬液タンク2内の希釈用液体(水)の循環中に、混合タンク15の下部の開閉弁57を開状態にする。そうすると、戻り吐出管路53のオリフィス56を通過する薬液タンク2の希釈用液体(水)が混合タンク15の薬液を吸い込み、この薬液が薬液タンク2に送り込まれる。
【0052】
このように構成されたブームスプレーヤにあっては、五方切替弁21を切り替えて、5連分水弁22の全部の開閉弁23,24,25,26,27を閉状態にすれば、薬液タンク2を洗浄することができ、さらに開閉弁23,24,25,26,27の全部または一部を開状態にすれば、薬液の送液経路を洗浄することができる。
【0053】
また、薬液の散布作業中、例えば枕地旋回する際などに、全部のノズル9からの噴射を停止するために、5連分水弁22の全部の開閉弁23,24,25,26,27を閉状態にすれば、薬液タンク吐出管路開閉弁28が開状態となるので、薬液タンク2内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁28および薬液タンク吐出管路59を経て洗浄ノズル33,34に送られ、この洗浄ノズル33,34から薬液タンク2内に噴射されるため、5連分水弁22(開閉弁23,24,25,26,27)とメインコック18との間の吐出管路44の残圧を除去することができる。したがって、例えば、一定圧力に保つ自動調圧システムあるいは精密防除を行う場合の速度連動散布装置などにおいて、流量センサ50や圧力センサ等の誤作動を防止することができる。
【0054】
また、薬液の散布作業中に、全部のノズル9からの噴射を停止するために、5連分水弁22の全部の開閉弁23,24,25,26,27を閉状態にすれば、薬液タンク吐出管路開閉弁28が開状態となるので、薬液タンク2内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁28および薬液タンク吐出管路59を経て洗浄ノズル33,34に送られ、この洗浄ノズル33,34から薬液タンク2内に噴射されて薬液の攪拌を行うので、薬液の攪拌性能を向上させることができる。洗浄ノズル33,34を旋回式の洗浄ノズルであれば、攪拌性能はさらに高まる。なお、通常、機械式などの攪拌装置が別途薬液タンク2内に設けられている。
【0055】
また、吐出管路44の薬液タンク吐出管路開閉弁28の上流側、したがって5連分水弁22の開閉弁23,24,25,26,27の上流側に、ポンプ30の吐出側を薬液タンク吐出管路開閉弁28または薬液タンク2に選択的に接続させるメインコック18が設けられているので、薬液の散布作業中に全部のノズル9からの噴射を停止したい場合に、開閉弁23,24,25,26,27の全部を閉状態にするのに代えて、メインコック18を切り替えてポンプ30の吐出側を薬液タンク2に接続させることによって行うことができる。
【0056】
また、機体フレーム1に昇降移動可能に設けられたブームノズル装置5のほぼ中央部に、散布用薬液(薬剤)の調合を行うための混合タンク15を設置したので、ブームノズル装置5を昇降することにより、混合タンク15の高さを変えることができるため、混合タンク15に薬液(原液)を投入する場合、作業者の作業し易い位置を選んで作業をすることができる。また、混合タンク15がノズル9よりも上方に設置されているので、混合タンク15が薬液を被ることがないため、薬液(原液)を再投入する際に、作業者が混合タンク15のタンク表面から薬液に触れることがなくなる。
【0057】
なお、前述の実施の形態では、洗浄液タンク16および洗浄のための管路を設けたが、これらを設けない場合でも、薬液の散布作業中、例えば枕地旋回する際などに、全部のノズル9からの噴射を停止するために、5連分水弁22の全部の開閉弁23,24,25,26,27を閉状態にすれば、薬液タンク吐出管路開閉弁28が開状態となるので、薬液タンク2内の薬液が薬液タンク吐出管路開閉弁28および薬液タンク吐出管路59を経て洗浄ノズル33,34に送られ、この洗浄ノズル33,34から薬液タンク2内に噴射されるため、5連分水弁22(開閉弁23,24,25,26,27)とメインコック18との間の吐出管路44の残圧を除去することができる。したがって、例えば、一定圧力に保つ自動調圧システムあるいは精密防除を行う場合の速度連動散布装置などにおいて、流量センサ50や圧力センサ等の誤作動を防止することができる。
この場合には、洗浄ノズル33,34を設けないで、単に薬液タンク2内に薬液を送るようにしてもよいが、薬液タンク2内の攪拌を行うためにノズルを設けるようにしてもよい。
また、前述の実施の形態では、混合タンク15およびこれに関連する管路を設けたが、これを省略するようにしてもよい、
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、トラクターなどに搭載される搭載式のほかに、自走式などの種々のブームスプレーヤに適用することができ、さらにはブームスプレーヤとしての機能のほかに、粒剤散布機能などの他の機能を付加したものにも適用可能であり、また水田や圃場で使用するブームスプレーヤのほかに、ゴルフ場などで使用するブームスプレーヤにも適用可能である。さらには、ブームノズル以外の他のノズルを備えた薬液散布装置に適用することができる。また、走行可能な薬液散布装置のほかに、走行しない定置式などの薬液散布装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係るブームスプレーヤを示す図であって、正面図である。
【図2】同、左側面図である。
【図3】同、右側面図である。
【図4】同、背面図である。
【図5】同、平面図である。
【図6】同、薬液タンクを左右方向に切断し、それを前側から見た図である。
【図7】同、薬液を切断し、それを斜め前方から見た図である。
【図8】同、混合タンク部の背面図である。
【図9】同、図8の一部を切断して示す断面図である。
【図10】同、配管の構成を示す配管系統図である。
【図11】同、開閉弁(分岐開閉弁)と薬液タンク吐出管路開閉弁との関係を説明するための図であって、いずれかの開閉弁のスイッチがON状態の場合を示す回路図である。
【図12】同、開閉弁(分岐開閉弁)と薬液タンク吐出管路開閉弁との関係を説明するための図であって、すべての開閉弁のスイッチがOFF状態の場合を示す回路図である。
【符号の説明】
【0060】
2 液体タンク
9 ノズル(散布ノズル)
18 メインコック(吐出側切替弁)
21 五方切替弁(吸入側切替弁)
23,24,25,26,27 開閉弁(分岐管路開閉弁)
16 洗浄液タンク
28 薬液タンク吐出管路開閉弁
30 ポンプ
33,34 洗浄ノズル(ノズル)
44 吐出管路
45,46,47,48,49 分岐管路
59 薬液タンク吐出管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留する薬液タンク(2)と、ポンプ(30)の吐出側に接続された吐出管路(44)と、前記吐出管路(44)から分岐された複数の分岐管路(45,46,47,48,49)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)にそれぞれ接続された散布ノズル(9)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)をそれぞれ開閉する複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)と、前記吐出管路(44)と前記薬液タンク(2)とを接続する薬液タンク吐出管路(59)と、前記薬液タンク吐出管路(59)を開閉する薬液タンク吐出管路開閉弁(28)と、を備え、前記複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)がすべて閉状態時にのみ、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)が開状態となることを特徴とする薬液散布装置。
【請求項2】
前記吐出管路(44)には、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)の上流側に、前記ポンプ(30)の吐出側を前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)または前記薬液タンク(2)に選択的に接続させる吐出側切替弁(18)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の薬液散布装置。
【請求項3】
前記薬液タンク吐出管路(59)の前記薬液タンク(2)側には、前記薬液タンク(2)内の薬液を攪拌可能なノズル(33,34)が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬液散布装置。
【請求項4】
薬液を貯留する薬液タンク(2)と、洗浄液を貯留する洗浄液タンク(16)と、前記薬液タンク(2)または前記洗浄液タンク(16)をポンプ(30)の吸入側に選択的に接続させる吸入側切替弁(21)と、前記ポンプ(30)の吐出側に接続された吐出管路(44)と、前記吐出管路(44)から分岐された複数の分岐管路(45,46,47,48,49)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)にそれぞれ接続された散布ノズル(9)と、前記各分岐管路(45,46,47,48,49)をそれぞれ開閉する複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)と、前記薬液タンク内を洗浄する洗浄ノズル(33,34)と、前記吐出管路(44)と前記洗浄ノズル(33,34)とを接続する薬液タンク吐出管路(59)と、前記薬液タンク吐出管路(59)を開閉する薬液タンク吐出管路開閉弁(28)と、を備え、前記複数の分岐管路開閉弁(23,24,25,26,27)がすべて閉状態時にのみ、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)が開状態となることを特徴とする薬液散布装置。
【請求項5】
前記吐出管路(44)には、前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)の上流側に、前記ポンプ(30)の吐出側を前記薬液タンク吐出管路開閉弁(28)または前記薬液タンク(2)に選択的に接続させる吐出側切替弁(18)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の薬液散布装置。
【請求項6】
前記洗浄ノズル(33,34)は、前記薬液タンク(2)の薬液の攪拌にも用いられることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の薬液散布装置。
【請求項7】
搭載式または自走式であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の薬液散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−12486(P2008−12486A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188615(P2006−188615)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】