説明

薬液治療流れ制御システムおよび方法

【課題】血液濾過(「HF」)および血液透析濾過法(「HDF」)などの薬液供給システムを改善するためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】前希釈および後希釈のHF浄化モードおよびHDF浄化モードを選択的に実行するためのシステムおよび方法、HFおよびHDF治療前、治療時および/または治療後に、プライムボーラス量およびリンスバック量を提供するためのシステムおよび方法、限外濾過液を患者から除去するための改善されたシステムおよび方法、改善された濾過構成および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システムに関し、特に薬液療法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾病、傷害またはその他の原因によって、ヒトの腎臓系は機能しなくなる可能性がある。何らかの原因の腎不全の場合、生理学的障害がいくつかある。日常の代謝負荷の水分、無機物および排出物の平衡は、腎不全の場合は低下するか、または可能ではなくなる。腎不全が生じた場合、窒素代謝の有毒な最終生成物(たとえば、尿素、クレアチニン、尿酸など)は、血液および組織中に蓄積する可能性がある。
【0003】
腎不全および人機能低下は、透析で治療されてきた。透析は、さもなければ正常に機能する腎臓によって除去されているはずの廃棄物、毒素および過剰な水分を人体から除去する。腎機能に代わる透析治療は、生命を維持させる治療であるため、多くの人々にとって不可欠である。腎機能障害の人は、少なくとも腎臓の濾過機能に代わる方法がなければ、生命を維持することができない。
【0004】
血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)、血液透析濾過法(「HDF」)および腹膜透析(「PD」)は、一般に腎機能の損失を治療するために使用される。腹膜透析は、殺菌透析溶液、つまり「透析液」を使用し、透析液は、患者の腹腔内に注入され、患者の腹膜と接触する。老廃物、毒素および過剰な水分は、患者の血流から腹膜を通り、透析液中に送られる。老廃物、血流から透析液中への毒素および過剰な水分の搬送は、透析液中の浸透物質が膜を横断する浸透勾配を形成するため、一時停止期間における拡散および浸透によって生じる。使用済み透析液は、後に患者の腹腔から排出され、老廃物、毒素および過剰な水分を患者から除去する。
【0005】
血液透析療法は、老廃物、毒素および過剰な水分を直接患者の血液から除去する。患者は、血液透析機械に接続され、患者の血液は機械から揚送される。ニードルまたはカテーテルは、患者の静脈および動脈内に挿入されて、血液透析機械との間に血液流路を形成する。血液は血液透析装置機械内の透析装置を通過するため、透析装置は老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血液から除去し、洗浄された血液を患者に戻す。たとえば約90〜120リットルという多量の透析液は、殆どの血液透析機械が使用しており、1回の血液透析治療時に血液を透析する。使用済み透析液は、廃棄される。血液透析療法は数時間持続し、一般に、治療センターで1週間に約3回行われる。
【0006】
血液濾過は、効果的な対流ベースの血液洗浄技術である。血液に接近するのは、静静脈または動静脈を介して行うことができる。血流は血液濾過器を貫流するため、血液コンパートメントと限外濾過液コンパートメントとの間の膜間圧力差勾配によって、プラズマ水は高度に透過性の膜を横断して濾過される。水は、膜を横断する時、膜を横断する小分子および大分子を対流させて、血液を洗浄する。多量のプラズマ水は、濾過によって排除される。したがって、体内の水分の平衡状態を保つには、流体は、経静脈的に注入される平衡電解質溶液(置換液または補充液)によって連続的に補充されなければならない。補充液は、血液濾過器(前希釈)に至る動脈血液ライン内、または血液濾過器(後希釈)を出る静脈血液ライン内、またはこれらの両方の中に注入することができる。別のタイプの治療法、つまり血液透析濾過法は、血液透析および血液濾過の拡散および対流洗浄モードを結合したものである。
【0007】
血液中の赤血球の割合である患者のヘマトクリットは、約32〜36容量%であり、血液中の流体の量は約64〜68%の範囲である。代表的なHDFおよびHF療法では、血液の流れは毎分約300ミリリットルであり、毎分約100ミリリットルの流体が濾過器を通して除去され、比較的少ない割合の血液が血液濾過器から出て、その後ある量の透析液を受け取る流体として残る。
【0008】
後希釈は、前希釈HFまたはHDFより効率的な血液浄化モードである。場合によっては、後希釈HFまたはHDFは、前希釈HFまたはHDFに比べて50%効果的である可能性がある。しかし、後希釈浄化の場合、血液は人体を出て、体外回路が治療流体または透析液を収容する前に濾過器に入る。血液透析装置または血液濾過器は、液体の良好な部分を患者の血液から除去することができるため、後希釈浄化は血液濾過器を凝縮または凝固させる。一方、前希釈浄化は、新鮮な治療流体を濾過器より先に体外回路内に注入し、血液が血液濾過器または血液透析装置内で凝固するのを少なくとも実質的に減少させる。
【0009】
前希釈HFまたはHDFの場合、透析液は、血液濾過器より先に体外回路に供給される。次に、この流体の一部は、濾過器によって直ちに除去されるため、治療効果は後希釈治療より低い。しかし、濾過器を出る血液は、血液が患者から出て行く時と同じ割合の液体、たとえば64〜68%の液体を有し、血液は非常に高い割合の固体を有するため、血小板が凝固または凝集する可能性は減少する。
【0010】
したがって、前希釈または後希釈浄化モードの両方を実行できる血液濾過および/または血液透析濾過法を提供することが望ましい。
【0011】
また、プライミング機能、ボーラス量(bolus volume)注入機能および/または血液リンスバック機能を提供するHFおよび/またはHDFシステムを提供することが望ましい。システムのプライミングは、患者に供給された場合に有害であるため、空気をラインから除去する治療の開始時に行われる。プライムは、無菌または実質的に無菌の電解質溶液で空気をパージする。
【0012】
HFまたはHDF治療時の一定時間で、ボーラス量または比較的多量の流体を患者に供給する必要がある。治療時に、非常に多くの血液が、過度に迅速に患者から除去される場合がある。患者の脈管性間隙は、5〜6リットルの血液のみを含む。非常に多量の血液を過度に迅速に除去すると、脈管性間隙内の圧力を低下させる可能性がある。患者の心拍は速くなり、脈管系は、血圧の低下を補償しようとして収縮するが、このような手段は、患者が低血圧になるのを防止する点で十分ではない。この場合、ボーラス量または多量の流体を患者に供給することは、脈管系内の血圧を上昇させる上で1つの効果的な手順である。
【0013】
さらに、治療の終了時に、血液リンスバックを行うことが可能なHFまたはHDFシステムを有することが望ましい。治療の終了時点では、一般に、体外回路内に残る血液が存在する。できるだけ多くの血液を患者に返すことが望ましい。そのため、血液治療システムは、血液回路内に残存する血液を患者に押し戻すのに十分な多量の流体を血液回路に通過させることが可能である必要がある。
【0014】
ボーラス量機能およびリンスバック機能は共に、機械メーカーに対して問題を提示する。たとえば、機械が、等量の流体を患者から除去し、各々の量の流体を患者に供給する流体平衡システムまたは適合流量平衡装置を使用する場合、こうした平衡システムは、正の正味流体量を患者に供給できるように考慮しなければならない。第2に、流体は体外回路に直接供給されるため、ボーラス量またはリンスバック流体は、無菌または注入可能な品質でなければならない。
【0015】
限外濾過液(「UF」)を患者から除去することは、治療過程で、特定量の流体を患者から除去する必要がある精密な作業である。したがって、患者から除去される流体の量は、注意深く監視する必要がある。これに関連して、UFの速度または排出される量を制御する1つまたは複数のデバイスが故障すると、たとえばバルブが故障すると、問題が生じる。したがって、故障によって流体流が遮断され、制御されないUF除去が生じないような限外濾過流制御装置を有することが望ましい。
【0016】
特定のHFおよびHDF機械は、治療時に、治療が行われる時点および場所において使用される流体を生成する。こうした機械は、溶液をオンラインで生成および供給するため、「オンライン」マシンと呼ばれる。オンラインマシンは、マイクロフィルタまたは限外濾過器を使用して溶液を殺菌するか、注入可能な品質にした後、溶液を患者の体外回路に供給する。濾過器は、時間が経つにつれて、濾過器内に位置する膜の外側濾過表面に沿って、細菌および菌体内毒素を蓄積する。したがって、オンラインで透析液を生成するために使用される濾過器の膜に沿って蓄積して存在する細菌および菌体内毒素の量を除去するか、または少なくとも減少させる方法および装置を有することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の開示)
本発明は、薬液供給システム、たとえば血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)および血液透析濾過(「HDF」)システムを改善するためのシステムおよび方法を提供する。本発明は、薬液の流れに関連する複数の態様を備える。一態様では、前希釈および後希釈HFおよびHDF浄化モードを選択的に実行するシステムおよび方法を提供する。もう1つの態様では、HFおよびHDF治療時/治療後にプライミング、ボーラス量およびリンスバック流体の容量を提供するためのシステムおよび方法を提供する。さらに他の主な態様では、限外濾過液を患者から除去するための改良されたシステムおよび方法を提供する。本発明は、さらに他の態様では、改良された濾過構成および方法を提供する。
【0018】
本発明の一態様では、前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードをたとえば共に、または同時に実行するHFまたはHDFシステムを提供する。システムは、前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードの両方を実行する流れ構成要素を硬化的に使用する。たとえば、システムは、補充液ライン内に位置する余分なポンプまたは追加のポンプセグメントを必要とせず、このような追加の構成要素は、警報および操作者の設定などに適切に反応するように、機械内に組み込まなければならないであろう。
【0019】
本発明の前/後希釈機能は、システムの補充ラインの出力部に位置する「Y」コネクタを代わりに使用する。「Y」コネクタの第1脚部は、後希釈点滴チャンバに延在する。第1逆止バルブは第1脚部上に配置され、血液が第1脚部または補充液注入ライン内に逆流するのを防止する。「Y」の第2脚部は、前希釈点滴チャンバまたは動脈ラインに接続して、体外回路をプライムするなど、複数の目的に使用することができる。本発明では、第2脚部は、透析液、前置濾過器を血液ラインに供給するために使用される。したがって、第2逆止バルブは第2脚部上に配置され、血液が補充ラインに逆流するのを防止する。
【0020】
「Y」コネクタ脚部の各々の脚部の投入部に1つ、2つの補充ラインピンチクランプが設けられる。一実施態様では、同じ治療の際に前希釈および後希釈が望ましい場合、動脈ラインがプライムされる。患者または看護師が、透析液ラインを透析装置に接続する準備が整った場合、「Y」コネクタの第2脚部は、血液ポンプから上流に位置する動脈点滴チャンバに流体的に接続される。「Y」コネクタの第1脚部は、静脈点滴チャンバに流体的に接続される。電気または空気圧作動補充ラインのピンチクランプは、「Y」コネクタから延在する第1および第2脚部の各々の上に配置され、前希釈および後希釈注入に使用される補充液の量を制御する。
【0021】
一実施態様では、操作者は、患者が受け入れる総目標補充液量を設定する。さらに、操作者は、前希釈率対後希釈率の設定を入力し、そのため、たとえば特定の前希釈容量もしくは流量または後希釈容量もしくは流量を設定するか、あるいは前希釈率対後希釈率を入力する。治療を開始した後、1つの補充ポンプが連続的に作動し、クランプは、所望の前希釈率および後希釈率を交互に達成する。たとえば、総補充流量が毎分150ミリリットル(「ml/分」)であり、50ml/分の補充前希釈流量が望ましい場合、後希釈クランプを閉鎖し、前希釈クランプをたとえば5秒間開放し、次に前希釈クランプを閉鎖し、後希釈クランプを10秒間開放する。結果として、動脈または静脈点滴チャンバの一方に至る流体の連続的に流れる流量が生じ、たとえば、改良された浄化能力で、大部分の時間にわたって後希釈治療が実行され、血液の凝固および低血圧を防止するのに十分な時間にわたって前希釈治療が実行される。
【0022】
このシステムには、警報および保証、たとえば一方または両方のクランプが誤った位置にあり、たとえば両方のクランプが同時に閉鎖するかどうかを感知するセンサなどが設けられる。この場合、機械は、適切な警報を送信し、適切な回避的処置を取る。クランプの位置を感知するための多くの別法による技術が存在し、たとえば、マイクロスイッチ、リードスイッチ、ホール効果スイッチ、光感知、超音波感知、圧力変換気などがある。
【0023】
本発明のもう1つの態様では、プライム、効果的な配列の流体成分を使用するボーラス量機能および血液リンスバックなど、特殊な流体供給機能を実行するHF/HDFシステムを提供する。これらの機能は、たとえば適切なバイオセンサから信号を受信した後、手動または自動的に開始することができる。一実施態様では、2方隔離バルブが、後透析装置治療流体または透析液回路内に配置される。隔離バルブは、機械制御装置によって電気的または空気圧的に制御され、複数の機能の1つを治療時の所望の時点で実行する。
【0024】
一実施例では、隔離バルブは、たとえば、血圧が低い、つまり低血圧の患者を安定させるため、ボーラス量の注入を行うように使用される。ボーラス量は、必要な時に予め決められるか、または入力される。操作者の入力、またはセンサからの適切な信号の後、上流透析液ラインのバイパスバルブは閉鎖または消勢し、その結果、透析装置に対する通常の流れは停止し、限外濾過液流量計の電源が切れる。透析装置の下流に位置する隔離バルブも閉鎖され、透析装置は、バイパスと隔離バルブとの間で隔離される。通常の治療時に動作可能な膜間圧力差(「TMP」)警報の限界は無効になり、透析装置は隔離される。バイパスバルブから上流に位置するパージバルブが開放し、以前に排出管に送られた後透析装置の流体は、パージバルブを通して排出され、平衡チャンバまたは流量平衡装置を貫流する患者に至る流体の流れに対応させることができる。患者に流れる流体の量は、少なくとも1つの濾過器を貫流し、補充ポートから出て、補充ポンプを介して静脈点滴チャンバに揚送され、静脈接近ラインを通って患者に流れる。ボーラス量が供給された後、パージバルブが閉鎖され、患者の血圧が安定する。次に、隔離バルブが開放し、TMP限界がリセットされて、通常の治療が再開する。
【0025】
上記の装置も、治療の終わりに補充液のリンスバックを行い、体外回路に残っている血液を洗浄して患者に戻すのに適する。この場合、操作者は、「リンスバック」ボタンを押して、おそらく「検証」確認入力を押して手順を開始する。ボーラス量などのリンスバック機能は、自動的に開始することができる。リンスバック溶液の量は、予め設定または手順時に設定される。上記のバルブ構成および操作は、バイパスバルブ、隔離バルブ、TMP警報限界、およびパージバルブを用いて繰り返される。補充ポンプは、プログラム化されたリンスバック量を患者に供給する。また、上記の溶液はシステムから引き戻され、適合流量平衡装置を通って患者に流れる流体を平衡させる。この場合、ボーラス量溶液の場合のように、この量を静脈透析装置に供給するのではなく、動脈点滴チャンバの前に動脈接近ラインに供給されるため、できるだけ多くの体外回路が洗浄される。
【0026】
補充ポンプを動脈接近ラインと連絡させるため、操作者は、接近ラインを上記の「Y」コネクタの第2脚部に接続することができる。あるいは、システムを上記のピンチクランプと組み合わせて使用する場合、後希釈クランプは閉鎖し、前希釈クランプが開放し、自動操作が可能になる。
【0027】
この機械は、リンスバックが完了した時点で操作者に警報するように設定される。流体圧力が安定した後、パージバルブが閉鎖し、隔離バルブおよびバイパスバルブが開放し、TMP限界が作動して、通常の手順によって治療が終了する。
【0028】
本発明のさらに他の態様では、この機械は、限外濾過(「UF」)のために、より複雑で、より事故を起こしやすく、より高価なダイアフラムポンプタイプのUF流量計組立体の代わりに、セラミックピストン回転往復運動ポンプを使用する。セラミックポンプの位置は、パージバルブの直接下流の前透析装置である。回転往復運動ピストンポンプは、洗浄および殺菌モードの場合、毎時4〜8リットルなどの適切な高い速度率で作動可能である。治療時、ポンプは、所望の患者UF速度に等しい流量で作動する。
【0029】
補充液の流量および患者のUFに等価な量は、流路の前透析装置から得られ、つまり、新鮮溶液はシステムから除去される。一実施態様では、セラミックポンプは、システムとの間で等量の流体を追加および除去する平衡チャンバで作動する。セラミックピストンポンプがシステムから得る流体、およびHDFまたはHF注入として患者に与えられる補充液は、後流量平衡チャンバによって自動的に患者から除去される。新鮮溶液は、透析液の平衡を無効にしないように、透析液の流路、ひいては平衡チャンバから下流で透析液から除去される。
【0030】
セラミックポンプおよび関連する流動構成を使用する場合、多くの利点がある。回転往復運動セラミックピストンポンプは、平衡チャンバタイプのUF流量計と対照的に、入力部から出力部に直接流れる。平衡チャンバタイプのUFデバイスが故障すると、サイクル半ばで制御されていない流れが生じ、患者の過濾過が生じる可能性がある。一方、本発明のピストンポンプは、その入力ポートはポンプの出口ポートと流体連絡しないため、このタイプの故障の影響を受けない。ポンプは、故障すると閉鎖し、流体流を停止する。このピストンも、パージバルブの誤差によってUFの誤差が生じるのを防止する。
【0031】
ポンプの回転は、リードスイッチ、光センサ、流量計、回転速度計またはその他のタイプのフィードバックデバイスを使用して監視され、ポンプの回転、および除去される対応限外濾過量は、個々の機構によって検査することができる。ポンプは透析装置の前に配置され、ポンプが、透析装置から除去された有機物質で閉塞するのを防止される。しかし、ポンプは、新鮮透析液の浄化を促進するために使用される少なくとも1個の膜濾過器から下流に配置される。この構成は、濾過器の膜の表面に沿って連続的に浄化を行う。この浄化は、膜表面に沿った細菌および菌体内毒素の蓄積の少なくとも一部分を除去する。さらに他の利点として、この構成は、治療時の膜濾過器から空気も除去する。平衡チャンバタイプのUFメータを取り外し、回転往復運動ポンプを追加すると、透析システムの流路が比較的単純化され、機器の安全性および性能が改善される。一実施態様によるセラミックピストンポンプは、上記のリンスバックおよびボーラス量注入機能を実行するために使用される。これらの実施例のポンプは、流れが患者に移動するように、対向方向で作動する。
【0032】
さらに他の態様では、改良された濾過器構成および濾過方法を提供する。この構成は少なくとも2つの濾過器を備え、これらの濾過器は、ポンプまたはその他の油圧的に複雑な流動機構間に直列に配置されている。透析液の流路の濾過器部分は、細菌および菌体内毒素の蓄積を減少させる。また、濾過器の上流に位置するポンプは、濾過器の下流に位置するポンプより高い流量を生成するように作動する。この流量差も、蓄積した細菌および菌体内毒素を、濾過器内に位置する膜表面および濾過器を接続する管類から剥離するのに役立つ。
【0033】
上記の態様の各々は、単独で使用するか、または互いに何らかの組合せで使用することができる。
【0034】
したがって、本発明の利点は、前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードを1つの補充ポンプで実行できる血液濾過(「HF」)または血液透析濾過(「HDF」)システムを提供することである。
【0035】
本発明のもう1つの利点は、プライム、ボーラス量機能およびリンスバック機能など、一定の正の正味流体流動機能を実行するHFまたはHDFシステムを提供することである。
【0036】
本発明のさらに他の利点は、改良された限外濾過液流量計量システムを提供することである。
【0037】
本発明のさらに他の利点は、安全性が改良された特徴を有するHFまたはHDFシステムを提供することである。
【0038】
さらに、本発明の利点は、単純化された流動形態を有するHFまたはHDFシステムを提供することである。
【0039】
さらに、本発明の利点は、性能が改善された特徴を有するHFまたはHDFシステムを提供することである。
【0040】
本発明のさらに他の利点は、改善された濾過システムおよび方法を有するHFまたはHDFシステムを提供することである。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
薬液システムであって、
薬液供給源と、薬液を供給源から体外回路に揚送するように動作可能な第1ポンプと、流体を血液濾過デバイスから揚送するように動作可能な第2ポンプとを有する薬液流路と、
前記第1ポンプから下流に位置する分岐部と、
(i)分岐部と、(ii)前記第1分岐ラインの貫流を選択的に可能にし、遮断するように動作可能な第1クランプデバイスと、(iii)血液濾過デバイスから上流に位置する体外回路内の第1位置とに流体連絡する第1分岐ラインと、
(i)分岐部と、(ii)前記第2分岐ラインの貫流を選択的に可能にし、遮断するように動作可能な第2クランプデバイスと、(iii)血液濾過デバイスから下流に位置する体外回路内の第2位置とに流体連絡する第2分岐ラインと、
第1および第2クランプデバイスの少なくとも一方をある時点で、適時に選択的に開放するように動作可能な制御スキームとを備える、薬液システム。
(項目2)
分岐部、第1クランプデバイス、および第2クランプデバイスの少なくとも2つが一緒にパッケージ化されている、項目1に記載の薬液システム。
(項目3)
第1分岐ライン内の第1一方向流れデバイス、および第2分岐ライン内の第2一方向流れデバイスの少なくとも一方を備える、項目1に記載の薬液システム。
(項目4)
第1および第2一方向流れデバイスの少なくとも一方が、第1および第2クランプデバイスから上流にそれぞれ位置する、項目3に記載の薬液システム。
(項目5)
第1および第2連絡位置の少なくとも一方が空気分離デバイスを備える、項目1に記載の薬液システム。
(項目6)
第1位置が、薬液が体外回路内における血液濾過デバイスの十分に上流に供給され、血液リンスバック手順を行うように位置する、項目1に記載の薬液システム。
(項目7)
薬液流路が、薬液を濾過するように動作可能な膜濾過器と、濾過器の濾過粒子排出出口から下流に位置する限外濾過液ポンプとを備える、項目1に記載の薬液システム。
(項目8)
第1および第2クランプデバイスが、電子または空気圧信号を介して制御される、項目1に記載の薬液システム。
(項目9)
制御スキームが、第1の指定期間のみ第1クランプデバイスを開放し、その後、第2の指定期間のみ第2クランプデバイスを開放するように動作可能である、項目1に記載の薬液システム。
(項目10)
制御スキームが、第1の割合の時間だけ第1クランプデバイスを開放し、第2の割合の時間だけ第2クランプデバイスを開放するように動作可能である、項目1に記載の薬液システム。
(項目11)
制御スキームが、第1の指定期間のみ第1および第2クランプデバイスの一方を開放し、その後、第2の指定期間だけ第1および第2クランプデバイスの両方を開放するように動作可能である、項目1に記載の薬液システム。
(項目12)
薬液が注入可能な品質の溶液である、項目1に記載の薬液システム。
(項目13)
第1ポンプが、薬液が予め設定された導電性範囲および予め設定された温度範囲の少なくとも一方の範囲外であると感知された場合に停止する、項目1に記載の薬液システム。
(項目14)
薬液システムであって、
薬液供給源と、薬液を供給源から体外回路/血液濾過デバイスに揚送するように動作可能な第1ポンプと、流体を血液濾過デバイスから抜き取るように動作可能な第2ポンプとを有する薬液流路と、
血液濾過デバイスを薬液流路の他の部分から隔離するように動作可能な装置と、
(i)隔離装置が、血液濾過デバイスを隔離し、(ii)第1ポンプが、ある量の流体を体外回路に供給することを選択的かつ同時に命令するように動作可能な制御スキームとを備える、薬液システム。
(項目15)
流体量が、患者の血圧が低下するのを防止するのを促進するために、治療時に供給されるボーラス量である、項目14に記載の薬液システム。
(項目16)
制御スキームが、ボーラス量の供給を開始するための操作者の入力を受信するように動作可能である、項目15に記載の薬液システム。
(項目17)
ボーラス量の量が、ボーラス量の供給を開始する時に操作者によって入力される、項目15に記載の薬液システム。
(項目18)
ボーラス量の量が、治療を開始する前に予め決められる、項目15に記載の薬液システム。
(項目19)
制御スキームが、ボーラス量の供給を開始するためのバイオセンサの入力後に動作可能である、項目15に記載の薬液システム。
(項目20)
バイオセンサが、ヘマトクリットセンサ、血液量センサ、電解質センサ、酸素センサおよびこれらの何らかの組合せから成る群から選択される、項目19に記載の薬液システム。
(項目21)
流体量が、体外回路内の血液を洗浄して患者に戻すために、治療の終わりに供給されるリンスバック量である、項目14に記載の薬液システム。
(項目22)
制御スキームが、リンスバック量の供給を開始するための操作者の入力を受信するように動作可能である、項目21に記載の薬液システム。
(項目23)
制御スキームが、治療の終わりに自動的に、リンスバック量の供給を開始するように動作可能である、項目21に記載の薬液システム。
(項目24)
リンスバック量の量が、リンスバック量の供給を開始する時に、操作者によって入力される、項目21に記載の薬液システム。
(項目25)
リンスバック量の量が、治療開始前に予め決められる、項目21に記載の薬液システム。
(項目26)
制御スキームが、血液の閾値量が体外回路内で感知されなくなるまで、リンスバック量を供給するように動作可能である、項目21に記載の薬液システム。
(項目27)
流体量が、空気を体外回路から除去するために、治療の開始時に供給されるプライムである、項目14に記載の薬液システム。
(項目28)
制御スキームが、プライムの供給を開始するための操作者の入力を受信するように動作可能である、項目27に記載の薬液システム。
(項目29)
制御スキームが、治療の開始時に自動的にプライムの供給を開始するように動作可能である、項目27に記載の薬液システム。
(項目30)
プライムの量が、プライムの供給を開始する時に、操作者によって入力される、項目27に記載の薬液システム。
(項目31)
プライムの量が、治療の開始前に予め決められる、項目27に記載の薬液システム。
(項目32)
制御スキームが、空気が体外回路内で感知されなくなるまで、プライムを供給するように動作可能である、項目27に記載の薬液システム。
(項目33)
システムが、血液透析濾過法を行うように動作可能であり、隔離装置が、血液濾過デバイスの上流および下流に配置された第1および第2バルブを備える、項目14に記載の薬液システム。
(項目34)
システムが、血液濾過を行うように動作可能であり、隔離装置が、血液濾過デバイスの下流に配置されたバルブを備える、項目14に記載の薬液システム。
(項目35)
隔離装置が、新鮮な薬液を薬液流路内の血液濾過デバイス周囲にバイパスするように動作可能なバイパスバルブを備える、項目14に記載の薬液システム。
(項目36)
薬液流路が、血液濾過デバイスの上流または下流の体外回路に薬液を選択的に供給するように構成される、項目14に記載の薬液システム。
(項目37)
薬液流路が、薬液が体外回路に供給される位置から上流で、薬液流路から限外濾過液を除去するように構成される、項目14に記載の薬液システム。
(項目38)
制御スキームが、薬液が、予め設定された導電性範囲および予め設定された温度範囲の少なくとも一方の範囲外で感知された時に、第1ポンプを停止するように動作可能である、項目14に記載の薬液システム。
(項目39)
薬液システムであって、
薬液供給源と、薬液を供給源から体外回路/血液濾過デバイスに揚送するように動作可能な第1ポンプと、流体を血液濾過デバイスから抜き取るように動作可能な第2ポンプとを有する薬液流路と、
薬液が体外回路および血液濾過デバイスに供給される位置から上流で、薬液流路から限外濾過液を除去するように構成および配置された限外濾過液ポンプとを備える薬液システム。
(項目40)
ポンプが、流体を揚送してポンプ内に流入および流出させる時に、ポンプの流体入口と流体出口との間が流体連絡しないように構成される、項目39に記載の薬液システム。
(項目41)
薬液流路が、流体が体外回路/透析装置に達する前に、新鮮な薬液を濾過するように動作可能な少なくとも1つの膜濾過デバイスを備え、限外濾過液ポンプが、膜濾過デバイスの濾過粒子出口ポートの下流に位置する、項目39に記載の薬液システム。
(項目42)
薬液流路が、流体が体外回路/透析装置に達する前に、新鮮な薬液を濾過するように動作可能な少なくとも1つの膜濾過デバイスを備え、限外濾過液ポンプが、濾過デバイスから粒子の少なくとも一部を洗浄するように配置される、項目39に記載の薬液システム。
(項目43)
薬液流路が、流体が体外回路/透析装置に達する前に、新鮮な薬液を濾過するように動作可能な少なくとも1つの膜濾過デバイスを備え、限外濾過液ポンプが、濾過デバイス内に閉じ込められた空気の少なくとも一部をパージするように配置される、項目39に記載の薬液システム。
(項目44)
薬液流路が、血液濾過デバイスの上流または下流で、体外回路に薬液を選択的に供給するように構成される、項目39に記載の薬液システム。
(項目45)
血液濾過デバイスを薬液流路の他の部分から隔離して、正の正味薬液量を患者に供給できるように動作可能な隔離装置を備える、項目39に記載の薬液システム。
(項目46)
薬液システムであって、
順に
薬液供給源と、
第1ポンプと、
第1濾過器と、
第2濾過器と、
第3濾過器と、
第2ポンプと連絡する薬液流路を備え、前記第1ポンプが、濾過器を通して薬液を揚送するように動作可能であり、第2ポンプが、流体を第3濾過器から体外回路内に揚送するように動作可能であり、体外回路が血液濾過デバイスを備える、薬液システム。
(項目47)
第1、第2および第3濾過器の少なくとも1つがマイクロフィルタである、項目46に記載の薬液システム。
(項目48)
第1、第2および第3濾過器の少なくとも1つが限外濾過器である、項目46に記載の薬液システム。
(項目49)
流路が少なくとも1つの流れ構成要素と連絡し、流れ構成要素が、少なくとも1対の第1、第2および第3濾過器間に位置する、項目46に記載の薬液システム。
(項目50)
濾過器が直列に配置される、項目46に記載の薬液システム。
(項目51)
血液濾過デバイスと流体連絡する第3ポンプを備え、前記第3ポンプが、第1ポンプと容量的に一致し、その結果、体外回路に入る実質的に同量の流体が、第3ポンプによって血液濾過デバイスを通して除去される、項目46に記載の薬液システム。
(項目52)
薬液が電解質の流体である、項目46に記載の薬液システム。
(項目53)
薬液流路が、血液濾過デバイスの上流または下流で、薬液を体外回路に選択的に供給するように構成される、項目46に記載の薬液システム。
(項目54)
薬液流路が、薬液が体外回路に供給される位置から上流で、限外濾過液を薬液流路から除去するように構成される、項目46に記載の薬液システム。
(項目55)
第1ポンプが、薬液が予め設定された導電性範囲および予め設定された温度範囲の少なくとも一方の範囲外であると感知された場合に停止する、項目46に記載の薬液システム。
(項目56)
薬液法であって、
患者に対する血液治療の少なくとも3分の2を通して、血液浄化のための主な手段として後希釈浄化モードを使用するステップと、
血液治療の3分の1未満を通して、患者の血液が濃縮するのを防止するのを促進するために、前希釈浄化モードを使用するステップとから成る、薬液方法。
(項目57)
治療時の異なる時間に行われるように前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードを構成するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目58)
治療内で同時に行われるように前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードの少なくとも一部分を構成するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目59)
補充ポンプから揚送される薬液を方向付けて、前希釈浄化または後希釈浄化の何れかを行うステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目60)
最初に行われ、補充ポンプによって揚送される薬液が、治療内の第2の時点で前希釈浄化および後希釈浄化の両方を行うことを可能にするステップをさらに含む、項目56に記載の薬液法。
(項目61)
血液リンスバック量の薬液を供給するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目62)
治療時にボーラス量の薬液を供給するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目63)
血液治療に使用される前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードの少なくとも一方の間に、患者から限外濾過液を除去するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目64)
薬液が、前希釈モードまたは後希釈モードの一方の間に、患者の体外回路に供給される位置から上流で、限外濾過液を除去するステップを含む、項目63に記載の薬液法。
(項目65)
血液治療に使用される前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードの少なくとも一方で、薬液をさらに血液濾過デバイス内に注入するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目66)
薬液が、導電性範囲および温度範囲の少なくとも一方の範囲外であると感知された場合に、薬液の流れを中断するステップを含む、項目56に記載の薬液法。
(項目67)
薬液法であって、
体外回路/血液濾過デバイス内に薬液を注入するステップと、
正味流体量が患者から除去されるように、流体を血液濾過デバイスから除去するステップと、
流体を血液濾過デバイスから除去するように動作可能なポンプから血液濾過デバイスを隔離するステップと、
ある量の新鮮な薬液を患者に供給するステップとを含む薬液法。
(項目68)
血液濾過デバイスをポンプから隔離するステップが、隔離ステップの第1部分であり、隔離ステップが、流体が血液濾過デバイスに入らないように、薬液をバイパスさせるステップをさらに含む、項目67に記載の薬液法。
(項目69)
当該量が供給された後、注入および除去ステップを再開するステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目70)
治療の終わりに当該量の新鮮な薬液を患者に供給して、患者に戻す血液を洗浄するステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目71)
供給時点付近で、当該量を選択することを可能にするステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目72)
当該量を予め選択することを可能にするステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目73)
センサからの入力を受信するまで、当該量を供給することによって、当該量を自動的に制御することを可能にするステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目74)
注入および除去ステップが、前希釈注入、後希釈注入またはこの両方を同時に選択的に行うことを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目75)
注入ステップおよび除去ステップの少なくとも一方の間で、薬液が体外回路/血液濾過デバイスに供給される位置から上流で、限外濾過液を除去するステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目76)
薬液が、導電性範囲および温度範囲の少なくとも一方の範囲外であることが感知された場合に、薬液の流れを中断するステップを含む、項目67に記載の薬液法。
(項目77)
バイオセンサからの入力を受信した後、当該量を自動的に供給するステップを含み、バイオセンサが、ヘマトクリットセンサ、血液量センサ、電解質センサ、酸素センサおよびこれらの何らかの組合せから成る群から選択される、項目67に記載の薬液法。
(項目78)
薬液法であって、
供給源から第1の量の新鮮な薬液を体外回路/血液濾過デバイス内に注入するステップと、
第2の量の流体を血液濾過デバイスから除去するステップと、
第3の量の新鮮な薬液を供給源から除去し、第3の量が第1の量と共に体外回路/血液濾過デバイスに供給されないようにするステップとを含み、第2の量が、第1の量と第3の量とを合せた量に実質的に等しい薬液法。
(項目79)
少なくとも1つの薬液膜濾過デバイスから下流で、第3の量を除去するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目80)
注入/排出行程時に、ポンプの流体入口と限外濾過液ポンプの流体出口とを隔離するように動作可能な限外濾過液ポンプを介して、第3の量を除去するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目81)
新鮮な薬液を空気に暴露するように動作可能なポンプを介して、第3の流体量を除去するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目82)
第3の流体量を使用して、少なくとも1つの再使用可能な薬液濾過器から粒子を洗浄するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目83)
第3の流体量を使用して、少なくとも1つの再使用可能な薬液濾過器から空気をパージするステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目84)
第3の量が、患者の所定の限外濾過液除去量に一致するように制御可能であるように、第3の量の除去を監視するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目85)
第1の量の注入が、前希釈注入、後希釈注入またはこの両方を同時に選択的に行うことを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目86)
血液リンスバック量の薬液を体外回路に供給するステップをさらに含む、項目78に記載の薬液法。
(項目87)
治療時に、ボーラス量の薬液を体外回路に供給するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目88)
供給源の流体とともに注入される第3の量の少なくとも一部分を再循環させるステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目89)
当該部分が供給源の流体と合わさる前に、再循環部分から空気を除去するステップを含む、項目88に記載の薬液法。
(項目90)
薬液が、導電性範囲および温度範囲の少なくとも一方の範囲外であることが感知された場合に、薬液の流れを中断するステップを含む、項目78に記載の薬液法。
(項目91)
薬液法であって、
第1ポンプが、薬液を順に第1濾過器、第2濾過器、第3濾過器を通して揚送するように流路を構成し、前記濾過器が、薬液供給源から菌体内毒素を除去するように動作可能であるステップと、
流体を第3濾過器から体外回路内に揚送するように第2ポンプを作動させるステップとを含む、薬液法。
(項目92)
細菌を医療用供給源から濾過するステップを含む、項目91に記載の薬液法。
(項目93)
前希釈注入、後希釈注入またはこの両方を同時に選択的に行うように、体外回路を構成するステップを含む、項目91に記載の薬液法。
(項目94)
薬液が体外回路に供給される位置から上流で、限外濾過液を除去するステップを含む、項目91に記載の薬液法。
(項目95)
薬液が、導電性範囲および温度範囲の少なくとも一方の範囲外であることが感知された場合に、薬液の流れを中断するステップを含む、項目91に記載の薬液法。
(項目96)
薬液法であって、
少なくとも1つの濾過器が上流の第1ポンプと、下流の第2ポンプとの間に配置されるように薬液治療流路を構成し、第2ポンプより速い流速で揚送して、濾過器内で流体が停滞する領域を防止するのを促進するように、第1ポンプを作動させるステップを含む、薬液法。
(項目97)
濾過器を再使用可能な濾過器として構成するステップを含む、項目96に記載の薬液法。
(項目98)
濾過された薬液を体外回路に供給することを含む、項目96に記載の薬液法。
【0041】
本発明のさらに他の特徴および利点は、以下の「発明の詳細な説明」および図面に説明されており、これらから明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(発明の詳細な説明)
本発明は、薬液供給システム、たとえば血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)および血液透析濾過(「HDF」)システムを改善するためのシステムおよび方法を提供する。様々な実施態様で、前希釈および後希釈HFおよびHDF浄化モードを選択的に実行するためのシステムおよび方法を提供する。その他の実施態様では、ボーラス量、プライムおよびリンスバック流体の量をHD、HFおよびHDF治療時に提供するためのシステムおよび方法を提供する。さらに他の実施態様では、限外濾過液を患者から除去するためのシステムおよび方法を提供する。さらに、本発明は、改善された濾過構成および方法を提供する。
【0043】
(前希釈/後希釈HDFおよびHF)
次に、図面、特に図1を参照すると、HFおよび/またはHDFシステム10が示されている。一実施態様のシステム10は、医師または看護師が選択するHD、HFまたはHDFを実行できる機械の一部である。この機械は、一般に治療センターで使用され、一実施態様では、生成ユニット12によって透析溶液を生成する。システム10の1つの適切な透析液生成ユニット12は、BaxterのSystem1000(登録商標)治療機械用の保守説明書に記載されている。しかし、本明細書の開示事項から、本発明は透析液供給システム、またはセンター内システムに限られず、むしろ適切な薬液療法の治療に適用される。
【0044】
システム10は、HFまたはHDFモードで作動するかどうかに関わらず、透析液の流路20および体外または血液回路70を備える。透析液流路20内では、生成ユニット12によって生成された流体は、供給ポンプ14を介して供給調整器16を通して揚送され、供給調整器16は、流路内の透析液の最大圧力を設定する。透析液流路20は、所望の量の流体を供給して患者から除去することを確実にする多くの流量制御デバイスを使用する(本願と同一の所有権者による米国特許第5,486,286号に記載されており、この特許の示唆するところは、引用することにより本明細書に援用する)。特に、透析液流路20は、流量平衡装置または平衡チャンバ30および限外濾過液流量計50を備える。流量平衡装置30は、1対の固定容量チャンバ32および34を備え、各々のチャンバは、内部に可撓性の膜を有し、4つの可変キャビティC1、C2、C3およびC4を有する。固定チャンバ32の場合、可変キャビティC1内の容量は、可変キャビティC2内の容量に逆比例する。同様に、固定チャンバ34の場合、可変キャビティC3内の容量は、可変キャビティC4内の容量に逆比例する。
【0045】
2つのチャンバの対32および34は、1つの固定容量チャンバ32または34が流体を濾過器/透析装置に揚送し、同時に、第2固定容量チャンバ32または34が等量の流体を濾過器/透析装置から揚送するように設けられる。したがって、適合流量平衡装置または平衡チャンバ30によって、平衡装置30を通して入って来る流体は順に平衡装置30から確実に除去され、患者に対する正味流体増加または損失はゼロになる。キャビティ32および34は、各々の行程で、流体が患者との間で揚送され、安定している、つまり拍動しない流動プロファイルが生じるように交互に配置される。
【0046】
キャビティ32および34は、入口バルブ36および出口バルブ38で作動し、これらのバルブは、上記の流動均等化を行うために交互に配置される。特に、これらのバルブは、チャンバの対32または34の一方が、調整器16からライン18を通って流れる透析液を収容し、キャビティC2またはC4の一方を充填するように構成される。この充填作用によって、キャビティC1またはC3の対応する1つは容量が減少し、前の行程でキャビティC1またはC3を充填する使用後透析液または使用済み透析液を、ライン22から出力圧力平衡装置24、血液漏れ検出器26および流量抵抗28を通して、ライン40に排水する。この動作が生じると、透析液圧力ポンプ42は、使用済み透析液を濾過器/透析装置44から抜き取り、圧力調整再循環ループ46を通して他の流動チャンバの対32または34に、その使用済み透析液を押し出す。ポンプ42は、流体を可変使用済み透析液キャビティC1またはC3の1つの内部に押し入れる。
【0047】
可変チャンバ内の使用済み透析液の量が増加すると、前の行程で可変キャビティC2またはC4を充填する同様の量の新鮮透析液が必然的に減少し、この新鮮透析液を患者の方向に押す。新鮮透析液は、ライン48から出力圧力平衡装置24、第1限外濾過器52、濾過ライン88の一部分、第2限外濾過器54、および透析液監視多岐管56を通して押し出す。適切な限外濾過器の銘柄を以下に記載する。多岐管56から、新鮮な濾過流体は、3方バイパスバルブ58を通り、バイパスバルブからライン60を通って濾過器/透析装置44内に流れるか、または補充ポート86を出て、濾過ライン88の残りの部分を通って血液回路70に流れる。
【0048】
図示のとおり、バイパスライン62の第2出口は、バイパスバルブ58から延在し、後透析装置のライン64内に延在し、圧力調整再循環ループ46に通じるか、または別法によると、洗浄ライン66内に延在し、洗浄バルブ68を通って排出口40に通じる。バイパスライン62、洗浄ライン66および洗浄バルブ68は、様々なシステム構成要素を治療の開始前に洗浄または浄化することを可能にする。
【0049】
血液回路70は、動脈接近ライン72および静脈接近ライン74を備える。動脈接近ライン72は、以下に記載する透析液入力ラインに接続するY接続部76を備える。動脈ライン72は、血液を患者78から動脈点滴チャンバ80に搬送する。血液は、蠕動血液ポンプ82によって体外回路70を通って搬送される。ポンプ82は、血液を動脈ラインから点滴チャンバ80を通して、透析装置44の血液入口に揚送する。血液は、透析装置内に含まれる膜の内部を通って揚送され、毒素および老廃物が血液から拡散搬送され、透析装置44の出力部から静脈点滴チャンバ84内に搬送され、静脈接近ライン74を通って患者78に逆に搬送される。
【0050】
前透析装置透析液ライン60、透析装置44、後透析装置ライン64および透析液流路20の他の部分は、回路70内の血液の圧力より低い圧力に維持され、その結果、老廃物が透析装置44内の膜から対流搬送され、老廃物およびその他の望ましくない物質が患者の血液から搬送される。システム10は、血液濾過を付加的に、または代わりに行うことができ、この場合、溶液は濾過ライン88に沿って、補充ポート86、マイクロフィルタ/限外濾過器90、後濾過器ライン92、補充液ポンプ94および前/後希釈流体多岐管100を通って、血液回路70に直接流れる。
【0051】
さらに、図1に関連して図2を参照すると、前/後希釈多岐管100が詳細に示されている。一実施態様による濾過器90は、マイクロフィルタである。1つの適切なマイクロフィルタは、Pall(登録商標)Gelman(登録商標)使い捨て式0.22μm濾過器である。もう1つの実施態様では、濾過器90は限外濾過器である。1つの適切な再使用可能限外濾過器は、Medica(登録商標)Diapure(登録商標)28濾過器である。1つの適切な使い捨て限外濾過器は、Medica(登録商標)150濾過器である。一般に、マイクロフィルタは、小さい粒子を除去する様々な濾過器の能力の点で、限外濾過器とは異なる。一般に、限外濾過器は、マイクロフィルタに比べて比較的小さい粒子を除去することができる。本発明の目的上、「マイクロフィルタ」という用語は、膜の微細孔または膜の開口部のサイズが約1000〜約10オングストローム(「Å」)である濾過器を含み、このような濾過器は、赤血球、酵母菌、菌類、細菌およびある種のタンパク質などの粒子を効果的に濾過する。本明細書で使用する「限外濾過器」という用語は、膜の微細孔または膜の開口部の直径または長さが約10〜約1000Åである濾過器を含み、このような濾過器は、菌体内毒素(発熱物質)、ウィルスおよびタンパク質を効果的に濾過する。好ましい一実施態様では、本発明に使用する限外濾過器は、約10〜約40Åという微細孔サイズの範囲を有する。
【0052】
濾過器90は、無菌または注入可能な品質の流体が補充ポンプ94を介して揚送され、Y接続部102を通って後希釈ライン104または前希釈ライン106に入るように、限外濾過器52および54で作動する。流体はポンプ94を介してY接続部102を通り、後希釈ライン104または前希釈ライン106内に揚送される。キャップ108は、ライン106のピグテール126の端部に位置する継手109から取り外した状態で示されている。別法による実施態様の多岐管100は、後希釈ライン104およびピグテール126のみを形成し、ライン106の残りの部分は取り外され、Y−コネクタ102からの対応する出力部はキャップ108によって終端する。これで、ライン106の残りの部分は、キャップ108を取り外すことによってピグテール126に選択的に追加することができる。前希釈ライン106が完全に接続されると、システム10は、必要に応じて前/後希釈HFおよびHDFの何れかを実行することができる。
【0053】
図1に示すように、後希釈ライン104は静脈点滴チャンバ84に延在する。前希釈ライン106は、一実施態様では、ポンプ82と点滴チャンバ80との間に位置するランク3のY−コネクタまたはT−コネクタ76に延在する。別法による実施態様では、ライン106(想像線で示す)は、ソレノイドバルブ77(想像線で示す)を介して、動脈接近ライン72内に位置する第2Y−コネクタまたはT−コネクタ79に延在し、動脈接近ライン72は後ポンプライン73内に供給する。別法による実施態様は、以下で述べるリンスバック機能に使用される。以下に詳細に説明するとおり、システム10が、以下に説明するボーラス量、プライムおよびリンスバック機能と関連する場合、コネクタ79を介して前希釈ライン106を動脈接近ライン72に接続すると有利である。しかし、前希釈療法は、同様にコネクタ79を介して動脈接近ライン72に接続し、コネクタ76を介してライン73に接続した状態で作動することを評価するべきである。
【0054】
逆止バルブ110は後希釈ライン104内に配置され、流体がポンプ94から血液回路70の方向にのみ流れることを可能にし、血液がライン92および88から濾過器52および54、または透析液流路20のその他の部分内に逆流するのを防止する。同様に、逆止バルブ112は前希釈ライン106内に配置され、血液が、前希釈ライン106から透析液流路20内に逆流するのを防止する。
【0055】
後希釈ライン104はピンチクランプ114を備える。前希釈ライン106は、同様にピンチクランプ116を備える。システム10用の適切なピンチクランプは、たとえばMedica(登録商標)モデルM03122によって提供される。クランプ114および116は電気作動するか、空気圧作動するか、さもなければシステム10のマイクロプロセッサによって制御され、治療ごとに指定されるとおりに選択的に開閉する。システム10の多岐管100は、(i)治療全体でバルブ114を開放し、バルブ116を閉鎖することによってのみ、後希釈浄化を介して、(ii)治療全体でバルブ116を開放し、バルブ114を閉鎖することによってのみ、前希釈浄化を介して、(iii)バルブ116が閉鎖している間にバルブ114を順次開放し、次に、この状態を逆にして、バルブ114が閉鎖している間にバルブ116を開放することにより、前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードを介して、または(iv)バルブ114および116を同時に開放することにより、前希釈浄化モードおよび後希釈浄化モードを介してHFまたはHDF療法を行うことを可能にする。
【0056】
図示しないが、前希釈および後希釈治療を同時に行う場合、可変流量制限器をそれぞれ前希釈および/または後希釈ライン106および104に配置し、ライン104および106を通る透析液の流量率を区切ることができる(たとえば、80%の流量が後希釈ライン104を貫流し、残りの20%が前希釈ライン106を貫流する)。そのため、バルブ114および116は、代わりに、所望の割合がライン104および106を通過することを選択的に可能にする穿刺タイプのバルブで良い。あるいは、このような穿刺バルブは、前希釈および/または後希釈浄化モードの両方にバルブによる流量制限の設定、およびオン/オフ制御が行われるように、オン/オフバルブ114および116と組み合わせて配置することができる。
【0057】
一実施態様では、操作者は、システム10を使用する機械内への全体的な目標補充量を設定する。次に、操作者は、前希釈対後希釈流体流の速度率または容量率を入力する。1つの補充ポンプ94は連続的に作動する。クランプ114および116は、前希釈および後希釈浄化率を達成するように、交互に配置される。一実施例では、所望の率の内訳が後希釈3分の2、前希釈3分の1であり、総流量が150ml/分である場合、後希釈クランプは5秒間閉鎖し、前希釈クランプ116は開放する。その後、この状態は逆転し、前希釈クランプ116が閉鎖し、後希釈クランプ114が次の10秒間開放する。このシーケンスは、治療全体で、または少なくとも対流浄化を含む治療部分で繰り返される。別法によると、流量制限手段はライン104および106に配置され、所望の後希釈3分の2および前希釈3分の1というプロファイルを形成し、バルブ114および116は、治療の対流浄化部分全体で開放する。
【0058】
後希釈から前希釈に至る対流の一部をバイパスさせるという目標は、主に後希釈療法を行う際に血液濃縮を防止する。そのため、バルブは、このような状態が生じないように、過度に長時間にわたって循環させないことが望ましい。一方、磨耗および保守の目的上、過度に頻繁にバルブを循環させないことも望ましい。バルブに望ましいサイクル時間は、これらの要素の両方に適合するように選択する。
【0059】
(ボーラス量およびリンスバック機能)
さらに図1を参照すると、本発明の第2の主要実施態様は、プライミングシーケンスを行うだけではなく、必要に応じてボーラス量の流体を患者に提供し、治療の終わりに血液リンスバックを行うためのシステム10の能力を含む。ボーラス量機能および血液リンスバック機能について、以下で順に説明する。
【0060】
(ボーラス量の注入)
たとえば、患者が患者の脈管系から過度に多くの液体を失った時に、あるボーラス量または流体量を患者に提供するには、バイパスバルブ58は、透析液の流量がさらに前透析装置ライン60を貫流せず、むしろ濾過器/透析装置44およびライン60をバイパスして、代わりにバイパスライン62を貫流するように設定される。洗浄バルブ68は閉鎖し、ライン62を貫流する透析液は透析液戻りライン64にT状に接続し、適合流量平衡装置30を通る流体を排出口40にシャントする。バイパスバルブ58構成は、透析液の流量が濾過器/透析装置44をバイパスするように、透析液流路20を修正する効果を有する。上記のとおり、ライン64を通って戻る透析液は、透析液ポンプ42を介して圧力調整循環ループ46を通って循環する。再循環ループ46は、流量平衡装置30の入口で圧力を制御するのに役立つ。特に、再循環ループ46は、入力圧力平衡装置118および供給調整器16で作動する。供給ポンプ14は、ライン18に沿った圧力を設定する。ライン18内の圧力は、入力圧力平衡装置118内のダイアフラムを前後に移動させ、ループ46内に圧力を形成するオリフィスを制限するか、またはループ内の圧力を低下させるオリフィスを開放し、その結果、ある程度の流体をループ46内で循環させる。
【0061】
バイパスバルブ58を消勢して、透析液がバイパスライン62を貫流させ、流量計50を停止するほか、後透析装置ライン64内に配置された隔離バルブ120を閉鎖する。バルブ58および120は、濾過器/透析装置44を透析液流路20の残りの部分から完全に隔離する。濾過器/透析装置44を隔離した状態でボーラス量を生成するため、パージバルブ122を開放して排出する。同時に、流量平衡装置30からバイパスバルブ58に流れる流体の一部分は、濾過ライン88を貫流して補充ポート86を出て、濾過器90、後濾過器ライン92を通り、補充ポンプ94および後希釈ライン104(または前希釈ライン106)を介して静脈点滴チャンバ84を通って揚送され、静脈点滴チャンバ84は、溶液から空気をパージし、注入可能な品質のボーラス量または流体量が静脈接近ライン74を介して患者78に流れることを可能にする。バルブ122は開放流体源に接続され、つまり流量平衡装置のキャビティC1およびC3を介して揚送される流体から、流量制限器28、ライン125およびライン126(双方向を指示する矢印で示す)を通って開放流体源に接続されるため、ポンプ94によって体外(extracoropeal)回路70に揚送される流体等量の流体は、平衡装置30の前および後流量平衡装置の間でシステム内に注入することができる。流体流は、バルブ122を通った後、濾過器52、54および90を通り、導電性および温度が適切であるかどうかを監視される。ポンプ94は、これらの測定値の何れかが正しい範囲外にある場合は停止する。
【0062】
システム10の制御スキームは、ボーラス量を手動または自動的に開始するように操作できる。一実施態様では、この制御スキームは、血液センサ、血液量センサ、電解質センサ、酸素センサ、これらの任意の組合せなどのバイオセンサから適切な信号を受信した後、ボーラス量機能を自動的に開始する。
【0063】
膜間圧力差(「TMP」)警報限界は、隔離バルブが閉鎖している時には無効または開放しなければならない点に注目することは重要である。TMP警報は、通常の作動時には、血液回路70から透析装置44を通って透析液流路20まで、正圧力差が存在することを確定し、その結果、液体の正味流量は血流から透析液流路20までである。さらに、TMPは、問題を指示する場合がある圧力変化を検出するために監視される。隔離バルブ120が閉鎖すると、バルブ120とバイパスバルブ58との間で隔離された透析装置44内のTMPは、均等化する傾向がある。しかし、透析はこの時点で行われるため、このような均等化は問題ではなく、警報は不要である。
【0064】
流量平衡装置30は、容量が再循環ループ46から平衡装置30に流れる時に、等量の流体がライン18から平衡装置に流れるように要求する。ある量の流体が患者に供給されるため、透析装置44を隔離した状態で、流体を患者から抜き取ることはできず、源12から流量平衡装置30に供給される新鮮流体の量に比べて、ライン62を通って流量平衡装置30に戻る流体は少ないことを評価するべきである。したがって、流体の補充源が必要である。たとえば、供給ポンプ14が、300ml/分を流量平衡装置30に供給し、100ml/分が補充ポート86から患者に抜き取られる場合、200ml/分のみがバイパスライン62、後透析装置ライン64、再循環ループ46を通して流量平衡装置30に戻る。戻る流体は、源12を介して広範囲に供給される300ml/分に対して、100ml/分不足しており、このような不足によって、流量平衡装置30は不適切に作動することになる。
【0065】
追加の流体を供給するため、上記のようにボーラス量を注入する時に、限外濾過器52で作動するパージバルブ122を開放する。パージバルブ122および124は、通常、それぞれ限外濾過器52および54で作動し、治療前に濾過器を洗浄することができる。パージバルブ122を開放すると、追加で必要な流体、たとえば追加の100ml/分をライン125および126から透析液流路20に引き込むことができる。排出ライン126から抜き取られる液体は、以前は透析装置44を通って流れ、流量平衡装置30を通過した後、排出口40に揚送された。したがって、ライン126から引き込まれた追加の流体は殺菌されて、注入可能な品質でなければならない。濾過器52および54、並びに濾過ライン88内の追加の使い捨て濾過器90はこの要件に達する。つまり、パージバルブ122を通ってシステム20に入る流体は、限外濾過器52および54を貫流した後に補充ポート86を出て、第3限外濾過器またはマイクロフィルタ90を通り、最終的に患者78に至る。濾過器52および54は、一実施態様では、表面積が大きい使い捨て濾過器である。使い捨て濾過器90は限外濾過器またはマイクロフィルタで良い。3つの濾過器を直列に配置すると、システム10は、通常の動作時のボーラス量注入の場合、3重に冗長である。
【0066】
特別な安全策として、何らかの理由で、排出ライン126から引き込まれ、濾過器52および54の両方を通過する補充流体が注入可能な品質の溶液を生成しない場合、透析液導電性プローブ、温度センサ、流量センサおよび透析液圧力変換器を含む透析液監視多岐管56は、補充ポンプ94の電源を切った後、警報を作動させる。警報が作動し、補充ポンプ94が停止する場合、蠕動ポンプ94の構成は、回転ヘッドが、ポンプヘッド周囲を巻く管類に沿ったある位置を外れて管類をクランプし、その位置における流体の流れを効果的に停止させる構成である。
【0067】
ボーラス量を供給するため、補充ポンプ94は、後希釈ライン104の逆止バルブ110などの逆止バルブを通してボーラス量を静脈点滴チャンバ84内に揚送する。前希釈および後希釈多岐管100は、必ずしも本発明のボーラス量溶液機能を実施する必要はないことは評価するべきである。しかし、ボーラス量溶液の量は、上記の前希釈および後希釈多岐管100を介して実施することができる。そのため、ピンチクランプ114を開放して、ボーラス量が逆止バルブ110を貫通してクランプ114を通過し、ライン104を介して点滴チャンバ84に移動するようにするか、またはピンチクランプ116を開放して、ボーラス量が逆止バルブ112を貫通してクランプ116を通過し、ライン106を介して点滴チャンバ80に移動するようにする。点滴チャンバ80または84から、ボーラス量は静脈接近ライン74を介して患者78に移動する。
【0068】
ボーラス量は予め決められるか、またはボーラス量機能を開始した後に、操作者が、たとえばタッチスクリーン制御装置を介して設定する。一実施態様では、ボーラス量は、タッチスクリーン上のキーパッドを介して、システム10を使用する機械内に設定される。ボーラス量は、たとえば、補充ポンプ94の回転数を監視するか、または上記のバイオセンサの1つで、所望の設定が得られるまで揚送することによって、制御することができる。ボーラス量が患者に供給された後、隔離バルブ120が開放し、パージバルブ122が閉鎖し、バイパスバルブ58が付勢されて、透析液は、ライン62ではなく、前透析装置ライン60を貫流することができる。バルブ120および58を開放すると、透析装置44との流体連絡が再確立する。それに応じて、TMP限界がリセットまたは再開される。隔離バルブ120が開放する前に、UF流量計50が1行程移動し、隔離バルブ120が開放した時に、正膜間圧力差の生成を促進することができる。この手順は、患者に対して設定されたUF目標を達成するのに役立つ。
【0069】
(血液リンスバック)
本発明の血液リンスバック機能は、上記のボーラス量注入機能に類似する方法で作動する。血液リンスバック量は、手順を開始する時点で設定するか、または処方または治療計画に従って予め設定することができる。また、キーパッドを有するタッチスクリーンを使用して、リンスバック量を設定することができる。リンスバック機能は、一実施態様では手動で開始することができるが、本発明は、治療の終了時にリンスバック機能を自動的に開始することも意図している。さらに、血液リンスバック手順は、流体の設定量を入力することによって制御することができるが、静脈接近ライン74の患者端部付近に配置された血液検出器を介してこの機能を制御することができ、血液検出器は、血液回路70内に血液がもう存在しないかどうかを検出し、それに応じて自動的に補充ポンプ94を停止させる。
【0070】
ボーラス量注入手順を実行するための上記の主なステップの各々は、血液リンスバック手順についても実行することができる。明らかに、様々な目的で様々な手順があるため、この手順は治療時の異なる時点で行われる。上記のボーラス量機能は、手動で開始するか、または患者の血圧が低下したと思われるか、または低下しつつある場合に自動的に開始される。血液リンスバックは、治療の終了時点で行われ、システム内に残っている血液を患者78に押し戻す。それにも関わらず、両方の手順は、隔離バルブ120およびバイパスバルブ58を使用して、透析装置44を透析液流路20の他の部分から隔離することを含む。また、パージバルブ122が開放すると、患者78に供給された等量の流体を、排出ライン126、濾過器52、54および90を通して透析液流路20内に引き込むことができ、その結果、流量平衡装置30は適切に作動する。
【0071】
ボーラス量機能と血液リンスバック手順との1つの相違は、血液リンスバック量が体外回路70に供給される位置である。上記のとおり、ボーラス量は、静脈点滴チャンバ84に供給することができる。一方、リンスバック量は、Y−コネクタまたはT−コネクタ79によってマークされた動脈接近ライン72の端部に供給されるか、または動脈接近ライン72のある位置であって、ポンプ82、動脈点滴チャンバ80、透析装置44、静脈点滴チャンバ84および最終的に静脈接近ライン74を通って患者78に至る動脈ライン72内の血液を浄化するのに適する位置に供給される。コネクタ79は、ソレノイドバルブ77を介して前希釈ライン106に接続され、リンスバック機能の自動制御を可能にする。したがって、システム10のリンスバック機能と組み合わせて前希釈および後希釈多岐管100を使用して、リンスバック量を補充ポンプ94からY−コネクタ102を通り、逆止バルブ112およびピンチバルブ116を含む前希釈ライン106、ライン106およびソレノイド77を通って、コネクタ79において動脈接近ライン72に供給することを意図する。
【0072】
しかし、多岐管100は、必ずしも本発明のリンスバック量を供給する必要はないことを評価するべきである。たとえば、流体接続は、操作者または看護師が手動で行うことができる。図1および図2は、ピグテール126の終わりに位置する継手109に接続するキャップ108を示す。リンスバック量が必要な場合、既存の前希釈ライン106を使用する代わりに、キャップ108をピグテール126の継手109から取り外し、補充ライン(図示しない)を患者から取り外した後に手動でピグテール126の終わりおよびライン72のコネクタ79に結合するか、またはたとえばキャップを接続部76から取り外すことによって、ライン73内に位置するコネクタ76に結合する。好ましい実施態様では、この補充ラインは、その端部に一方向バルブまたは逆止バルブ、たとえば逆止バルブ112を備えるであろう。
【0073】
補充ラインを手動でコネクタ76または79に結合するため、血液ポンプ82の電源を切り、キャップをコネクタ79から取り外すか、または患者78に挿入されるカテーテルの動脈接近ライン72を動脈ニードルから分離する。クランプは、動脈ニードルの終わりで閉鎖されるため、血液は患者から失われない。次に、コネクタ76または79を補充ラインに接続し、補充ラインはピグテール126の終わりにも接続される。さらに他の別法による実施態様では、回転ハブを有するルーアコネクタは、一実施態様において動脈接近ライン72の終わりに設けられ、このラインをピグテール126から延在する補充ラインに直接結合する。この接続を形成した後、リンスバック量は上記のとおりに供給される。
【0074】
リンスバックを行う公知の方法は、動脈接近ライン72を動脈ニードルから分離した後、生理食塩水バッグを動脈接近ライン72に接続することである。その後、生理食塩水は生理食塩水バッグから動脈接近ライン72を貫流し、生理食塩水のリンスバックまたは洗浄を行う。上記の手動および自動作動実施態様は共に、システム10が、別個の生理食塩水または注入可能な溶液供給源の必要性を排除し、血液リンスバックを提供することを可能にする。
【0075】
(プライム)
本発明のプライム機能は、治療前に体外回路70をプライムするためのボーラス量およびリンスバック機能に関して、図1に関連して上記で述べた装置を使用して作動する。プライムは、治療の開始時に供給され、空気を体外回路から除去するある量の流体、たとえば透析液を含む。プライム機能は、あるシステム内で使用されるか、またはプライムの供給を開始するための操作者の入力を受信するように作動可能なシステム制御装置と共に使用される。別法によると、システムまたは制御装置は、治療の開始時にプライムの供給を自動的に開始するように作動可能である。一実施態様では、プライムの量または容量は、プライムの供給を開始する時に、操作者が入力する。量または容量は、治療開始前に予め決定することができる。別法によると、量または容量は、体外回路内で空気が感知されなくなるまで供給される。
【0076】
(UF流量計)
次に、図3〜図7を参照すると、本発明のもう1つの主な実施態様が示されている。図3および図4は、それぞれシステム150および160を示し、これらのシステムは、図1および図2に関連して上記で説明したものと同じ構成要素を多く含む。これらの構成要素は、図1および図2と同じ参照符号で指示されている。図1および図2に関連して上記で説明した各々の代替物を含むこれらの要素の説明は、図3および図4の同様の参照符号に等しく適用される。
【0077】
図3および図4のシステム150および160と比較した場合、図1および図2に記載する実施態様間の主な相違の1つは、図3および図4ではUF流量計50が取り外されていることである。図1および図2に示すUF流量計の機能は、患者の最後の治療と現在の治療との間で時間が経過するにつれて、患者の体内に蓄積した流体を患者78から除去することである。腎不全に関して生じる問題の1つは、患者が、多くの場合、排尿機能の一部または全部を失うことである。さもなければ排尿によって患者から除去されるはずの流体は、患者の血液および周囲の組織に蓄えられる。したがって、透析装置、および患者78に対する清潔な溶液の注入は、老廃物およびその他の望ましくない物質を患者78から除去するように作用するが、UF流量計50は、患者が治療間に得る流体の量と等価な追加の流体量を患者から除去するように動作する。
【0078】
UF流量計50は、流量平衡装置30のチャンバの対32および34の一方と類似する方法で動作する。UF流量計50は、ダイアフラムによって2つの交互の可変容量キャビティC5およびC6に分離されている固定容量チャンバ132を画定する。固定容量チャンバ132は、適合する容量チャンバ32および34に対する所望の関係のサイズで形成される。UF流量計50の入口バルブ136および138は、流量平衡装置30の入口バルブ36および出口バルブ38と循環させることができる。この方法の場合、流体の既知の量は、各々の行程またはバルブサイクルで除去される。バルブ136および138は、キャビティC6が、前にキャビティC5に引き込まれた流体を出口バルブ138の1つに押し通すように交互に入れ替わり、その後、バルブは、キャビティC5が、以前に充填された容量をキャビティC6内に充填し、他の出口バルブ138に押し通すように切り替わる。
【0079】
UF流量計50は、効果的だが比較的複雑なデバイスである。また、バルブ136または138の一方が故障すると、ダイアフラムのサイクル半ばで制御されていない流れが生じ、その結果、患者の過濾過が生じる。
【0080】
図1に示すシステム10に関するもう1つの問題は、空気が限外濾過器52および54内に閉じ込められる可能性があることである。しかし、空気は、使い捨て式濾過器90内に閉じ込められる可能性もあり、これは、空気が再使用可能な濾過器52および54に入る場合より可能性が大きい。システム10に関するもう1つの問題は、透析液ポンプ42がUF除去ライン134の前面に直接配置され、UF流量計50に通じることである。この構成は、UFメータ50の閉塞の原因になる可能性がある。また、パージバルブ122および124は、システム10における通常の治療時に閉鎖され、その結果、これらの濾過器の膜の外側を横断する流れはなくなる(濾過器を通る操作上の流れは、濾過器の入口から限外濾過器内部の膜の外側に通じ、膜の壁部、限外濾過器の出口の外側の膜の内側を通る)。濾過器52および54内で濾過される物質は、治療後に、パージバルブ122および124が開放されて洗浄サイクルが行われるまで、濾過器内に残る。つまり、限外濾過器52および54内の膜によって濾過された最近および菌体内毒素は、治療期間全体にわたって、このような濾過器内部に残る。
【0081】
図1のシステム10のもう1つの潜在的な問題は、パージバルブ122および124の一方が正しく機能しない場合に、検出する唯一の方法は、TMPの増加または減少を検出することである点である。操作者によって適切に検査および診断されないTMP誤差は、患者のUFに誤差を生じる可能性がある。
【0082】
次に、図3および図4を参照すると、上記の問題は、UF流量計50を取り外して、透析液流路20内のセラミックUPポンプ140と置き換えることで解決される。オンラインHFおよびオンラインHDF治療のための超高純度透析液は、セラミックポンプ140を、図3のシステム150の場合、単一パージバルブ122から下流に、図4のシステム160の場合、二重パージバルブ122および124の下流に配置することによって可能である。何れの場合も、パージバルブは、限外濾過器52または54の一方の洗浄出口142から下流に位置する。したがって、ポンプ140に達する流体は、排出ライン126に沿って除去される。以下で述べるとおり、ポンプ140は、一実施態様では、セラミック回転往復運動ピストンポンプであり、これは、ポンプの入口と出口との間に流体連絡を確立しない点で有利である。このポンプ構成はフェイルセーフを可能にし、制御されていない流体流は生じない。
【0083】
セラミックポンプ140をパージバルブ122および124の下流に配置する場合、さらに有利である。つまり、ポンプの入口および出口を隔離し、それによって構成要素の故障によるUFの誤差の可能性をなくすほかに、ポンプ140を前透析装置に配置すると、UFポンプが有機物質で閉塞または破損する可能性が減少する。つまり、ポンプ140から除去されて排出されるUFは、生成ユニット12からの清潔または無菌溶液である。したがって、UF除去デバイス内に蓄積する菌体内毒素および細菌によってUFが誤差を生じる可能性は、本発明のシステム150および160では実質的に減少する。
【0084】
また、ポンプ140は、濾過器52および54の洗浄出口142から流体を抜き取るため、システム150および160は、これらの濾過器内の膜の外側に沿って連続的に洗浄を行う。図4のシステム160の場合、パージバルブ122および124は、たとえば各々のバルブについて50%循環するため、両方の濾過器52および54は、治療が行われる時に洗浄および浄化される。濾過器52および54の膜の外面に沿った洗浄は、治療時に連続的または半連続的に、濾過器から空気も除去する。ポンプ140は新鮮透析液をUFとして除去するが、透析装置44は上記のように機能し、老廃物を患者の血液から拡散させる。老廃物は、血液を体外回路70に直接注入することによって生じる対流搬送によっても除去される。次に、この老廃物は、透析液ポンプ42を介して、平衡チャンバ30を通って排出口に揚送される。ポンプ140による新鮮透析液のUF揚送は、システム150および160の治療効果を変化させない。
【0085】
上記のとおり、セラミック回転往復運動ピストンポンプ140を使用する1つの主な利点は、UFポンプ140の入口と出口との間に流体連絡が存在しないことである。図5〜図7は、回転および往復運動ピストンポンプであるUFポンプ140の一実施態様を示す。図5〜図7は、3つの状態、つまり図5の流体流入状態、図6の一時停止状態、および図7の流出状態における回転往復運動ピストンポンプ140を示す。1つの適切な回転往復運動ピストンポンプは、スイス、エンブラフのDiener Precision Pumpsが供給している。
【0086】
図5〜図7では、バルブ140は回転チャンバ142を備え、これは、回転および往復運動ピストン146の端部を収容する開口部144を画定する。ピストン146の端部は、ボールベアリングタイプのヘッド152を有するアーム148を備え、このヘッド152は、開口部144と流体連絡する結合開口154内に摺動的に収容される。チャンバ142は、実質的に垂直な軸を有するシャフト156を介して回転するので、ヘッド152は結合開口154の外壁によって支持され、その結果、アーム148およびシャフト146を回転させる。実質的に垂直なシャフト156に対するシャフト146の角度により、ヘッド152、アーム148およびシャフト146も、チャンバ142の回転時に、結合開口154の回転位置に応じてシャフト146の角度方向に前後に平行移動する。図5に示すように、流入状態では、ピストンヘッド152は、図7のポンプ140の流出状態におけるピストンヘッド152と本体158との間の垂直距離に比べて、ポンプ本体158から引っ張られてさらに離れる。ピストンヘッド152は、それに応じて、図6に示すポンプ140の一時停止状態における本体158から離れて、中間の相対的位置にある。したがって、駆動シャフト156の回転によって、固定本体158に対するシャフト146の回転運動および平行移動運動が生じる。
【0087】
本体158は、水などの潤滑剤が、シャフト146と本体158の内側ボアとの間の摺動係合部を潤滑することを可能にするポート開口部162を画定する。本体158は、入口および出口ポート164および166もそれぞれ画定する。シャフト146の下端は、ノッチ168を画定する。ポンプ140の流入状態におけるノッチ168は、流体が入口ポート164を介してポンプチャンバ170内に入ることを可能にする。重要なことに、流入状態では、ポンプチャンバ170と出口ポート166との間は流体連絡しない。図6のポンプ140の一時停止状態では、シャフト146は、ノッチ168がポート164または166に対向または流体連絡しない位置に回転しており、ポンプチャンバ170とポート164および166の開口部との間は流体連絡しない。図7のポンプ140の流出状態では、シャフト146は、ノッチ168が、ポンプチャンバ170と出口ポート166との間の流体連絡を可能にする位置に回転している。重要なことに、流出状態では、ポンプチャンバ170と入口ポート164との間は流体連絡しない。
【0088】
動作時、シャフトが流出状態(図7)から流入状態(図5)に移動すると、ポンプチャンバ170内の容量が増加して真空が生じ、流体がチャンバ170内に引き込まれる。一時停止状態(図6)では、ポンプチャンバ170内の容量は、流入状態(図5)における容量から減少し、チャンバ170内に正圧が生じる。シャフト146が一時停止状態(図6)から流出状態(図7)に移動すると、チャンバ170内の容量はさらに減少し、流体を出口ポート166から押し出す。
【0089】
入口ポート164は出口ポート166と流体連絡していないため、ポンプ140は、故障または電源喪失時でも、制御されていないUF流を流すことができず、先行技術の流量計50およびこの流量計50自体のバルブ136および138に固有の誤差と比較して、パージバルブ122および124の一方の障害から生じる可能性がある潜在的なUF誤差と同様、固有の誤差の可能性が著しく減少する。
【0090】
上記に暗に示したとおり、患者から除去される限外濾過液の量は、一実施態様では、シャフト146の回転数を監視することによって制御される。回転往復運動ピストンポンプ140は、本質的に正確である。しかし、必要な場合、流量測定デバイスを排出ライン126内に配置して、ポンプ140の出口を監視することができる。
【0091】
ポンプ140は、図1および図2に関連して上記で述べた実施態様であって、前希釈および後希釈機能、ボーラス量機能およびリンスバックパージを含む実施態様の各々に使用される。特に、図3および図4は、図1に関連する上記の多岐管100を使用することができるが、分かりやすくするために図示しない。ボーラス量およびリンスバックの量を注入するため、ポンプ140は対向方向に回転して、上記と同様に図3および図4に双方向矢印で示すライン126から流体を引き込む。
【0092】
(濾過構成)
図1および図4の本発明は、改善された濾過構成を示す。患者78に適する置換液を生成するため、透析液などの電解質溶液を限外濾過器および/またはマイクロフィルタによって濾過し、注入可能な品質の生産物を生成する。本発明は、3つの濾過器を直列で使用し、濾過器間に配置されて介在するポンプは存在しない。各々の濾過器は、細菌および菌体内毒素の連続的な対数減少を追加する。ポンプは、濾過器間に配置された場合、システムの電源が切れた時などの停止時間中に、細菌および菌体内毒素が蓄積する場所になる。したがって、本発明は、直列濾過器間にポンプを配置する必要性を排除する。しかし、ポンプのほかに、センサおよびその他の流れ構成要素を、直列濾過器間に配置することは意図されている点を評価するべきである。
【0093】
細菌および菌体内毒素をできるだけ除去しようと試みて、図1および図4に示す本発明のシステムは、直列の3つの濾過器、つまり濾過器52、54および90を使用する。これらの濾過器は、細菌および菌体内毒素の連続的な対数減少を提供することにより、溶液の品質を確実にするのを促進する。濾過器52、54および90は、使い捨てまたは再使用可能な限外濾過器、マイクロフィルタまたはその他の菌体内毒素/細菌減少デバイス、たとえばclarigenダイヤルガードコラムなどの組合せで良い。一実施態様では、濾過器52および54は再使用可能であり、油圧経路88は、システム内の第1濾過器の後に、ポンプなどの複雑な油圧機能を備えないように構成され、その結果、溶液が最初に濾過された後、細菌およびバイオフィルムが成長する危険性が減少する。一実施態様では、濾過器90は使い捨てのマイクロフィルタである。
【0094】
適切な対数減少に関しては、細菌が成長し、それに続いて菌体内毒素が生成される可能性を低下させることが重要である。そのため、図1および図4の濾過構成は、濾過器52、54または90間にポンプを使用しない。濾過器52および54からの薬液の流れは、無菌管類(そして、おそらくその他の流れ構成要素)を通過して、次の濾過器の入口に達する。流れ構成要素のより複雑な内腔表面はバイオフィルムが形成される可能性がより大きいため、管類のみが、一実施態様で濾過器52と54との間に設けられ、単一透析液監視多岐管56は濾過器54と90との間に配置される。濾過器間の構成要素を単純な管類(そして、おそらくセンサ構成要素)のみに制限することは、複雑な表面上に細菌が増殖するのを防止し、消毒の有効性を確保するのに役立つ。
【0095】
本発明の薬液システムの調製段階におけるパージ機能も、機械を最後に使用してから成長した細菌または菌体内毒素を除去するのに役立つ。しかし、濾過器52、54および90間の単純化された経路では、殆ど成長しない。
【0096】
濾過器52、54および90の前後にポンプを配置すると、たとえば透析液ポンプ42を介して濾過器を通して揚送される流体の流量は、たとえば輸液ポンプ94を介して患者78に揚送される流量より多くすることが可能である。したがって、図1および図4のシステムは、患者78に流れる薬液が、濾過器から流出する総流量のごく一部分(にも関わらず、潜在的に大部分)であるように設定することができる。たとえば、システムを血液濾過に使用し、患者78に対する置換液を250ml/分の流量に設定する場合、濾過器52、54および90から流出する流量は300ml/分で良い。このような過剰な流量の目的は、再使用可能な濾過器内で、濾過器と濾過ライン88との接続部において停滞する領域を防止することであり、これは、停止時間中に、細菌が、デバイス54または濾過ライン88内の濾過器52と54との間、または濾過器54の後に増殖しないようにするのに役立つ。
【0097】
上記の方法で濾過器を使用することにより、濾過器は大体において、入って来る医療溶液から汚れを濾過するだけで良いため、濾過器の結合対数減少によって置換液の品質を確保することができる。さらに、濾過器の1つが故障した場合、それにも関わらず、残りの濾過器の結果として得られる対数減少は、殆どの場合、医療グレードの溶液を提供するのに十分である。さらに、濾過器間の滑らかで清潔な表面は、容易かつ効果的に殺菌され、停止期間における成長を防止する。本明細書に記載する濾過構成は特に、図1および図4のシステムに特に良く適しているが、この構成は、これらの図面に記載されているその他の機能および発明に使用することに明示的に限定されず、当然、多くの異なるタイプの注入流体流動形態および構成に適用することができることを評価するべきである。
【0098】
本明細書に記載する現在好ましい実施態様に対する様々な変化および修正は、当業者にとっては明らかであることを評価するべきである。このような変化および修正は、本発明の精神および範囲を逸脱せず、意図する利益を減少することなく行うことができる。したがって、このような変化および修正は、添付の請求の範囲に含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、前希釈および/または後希釈HF/HDF浄化モード、患者に対するボーラス量、患者に対するプライムおよび/または患者に対する血液リンスバック量を提供するための本発明によるシステムおよび方法を示す。
【図2】図2は、図1に示すシステムおよび方法に使用される治療流体供給多岐管の一実施態様を示す。
【図3】図3および図4は、限外濾過液を患者から除去し、医療用治療流体を濾過するための本発明によるシステムおよび方法を示す。
【図4】図3および図4は、限外濾過液を患者から除去し、医療用治療流体を濾過するための本発明によるシステムおよび方法を示す。
【図5】図5〜図7は、図3および図4に示すシステムおよび方法に使用される限外濾過液ポンプの一実施態様を示す。
【図6】図5〜図7は、図3および図4に示すシステムおよび方法に使用される限外濾過液ポンプの一実施態様を示す。
【図7】図5〜図7は、図3および図4に示すシステムおよび方法に使用される限外濾過液ポンプの一実施態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載される薬液治療流れ制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−62089(P2008−62089A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305113(P2007−305113)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【分割の表示】特願2006−545695(P2006−545695)の分割
【原出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(504375581)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (26)
【Fターム(参考)】