説明

薬物動態が改善された鼻腔内用薬学的組成物

所望の薬物動態プロファイルおよびパラメータを有する吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤の設計のための方法を提供する。改良された薬物動態を有する組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2009年5月15日出願の米国仮出願第61/178,900号に対する35U.S.C.第119条(e)に基づく優先権の恩典を主張し、該出願の全体が、全ての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
吸入は、薬物の効果発現の遅さおよび初回通過代謝等の経口投与の欠点の多くを克服する、治療剤のための便利な投与経路であり、さらに、吐き気、嘔吐、または嚥下障害を患う患者で使用することができる。治療剤の塩形態の吸入は通常、迅速な全身吸収を生じ、これは血漿濃度における早期の高ピークによって例示され、その後時間と共に急激に低下する。多くの場合、かかる薬物動態プロファイルは望ましいが、他の場合では、異なる薬学的プロファイルが臨床的必要性により良好に合致するであろう。例えば、片頭痛患者の場合、理想的な薬学的組成物は、血漿濃度における早期の高ピークをもたらすことによって、症状の迅速な初期緩和を提供し、それはさらに、再発を予防するために、経時的に比較的高い血漿濃度を維持する。この薬物動態プロファイルを有する薬学的組成物は、片頭痛の治療に対する重要な治療的進歩を示すであろう。同様に、嘔吐等の他の適応症は、吸入可能な治療剤の薬物動態プロファイルを調整する能力によって利益を得るであろう。
【0003】
薬物動態プロファイルが臨床的必要条件により緊密に一致するように、吸入可能な薬学的製剤を設計することが可能である必要性がある。吸入可能な粒子の化学的および物理的特性の厳選に基づいて薬物動態プロファイルを設計することができるという発見は、この必要性を満たす。
【0004】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての出版物、特許、および特許出願は、それぞれ個々の出版物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されたのと同様に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を含む組成物、製剤を作製する方法、および製剤を使用する方法を提供する。本明細書に開示する1つの製剤は、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、治療剤は、約5マイクロメートル〜約250マイクロメートルの間の粒度分布を有する粒子を含む。製剤は、治療剤の塩形態をさらに含むことができる。治療剤の粒度分布は、約15マイクロメートル〜約200マイクロメートルの間、約20マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間、または約53マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間であってもよい。場合によっては、組成物は、担体をさらに含み、担体は、実質的に水溶性または実質的に水不溶性であってもよい。担体の例としては、多糖類、糖類、塩類、高分子、ゴム、タンパク質、および糖質が挙げられる。場合によっては、担体は、生体接着剤である。多糖類担体は、天然型、誘導体化型、および/または修飾型の多糖類を含むことができる。多糖類は、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋デンプン、アミロース、アミロペクチン、またはペクチン等のデンプンであってもよい。多糖類はまた、結晶セルロース、セルロース、α−セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースであってもよい。有用な結晶セルロースは、約5〜250マイクロメートルの粒径範囲、0.60g/cm未満のかさ密度、および/または約20〜約250の平均重合度を有することができる。本明細書に開示する製剤はまた、追加的治療剤を含むことができ、それは、薬剤の塩、薬剤の遊離塩基、またはそれらの混合物であってもよい。本明細書に開示する製剤で使用される糖類は、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、メレジトース、ミオイノシトール、パラチニット、ラフィノース、スタキオース、スクロース、トレハロース、キシリトール、それらの水和物、またはそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書に開示する組成物はまた、滑沢剤、界面活性剤、酸性化剤、アルカリ化剤、抗菌性保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、錯化剤、可溶化剤、保水剤、または湿潤剤を含むことができる。流動化剤の一例は、第三リン酸カルシウムである。
【0006】
また、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を本明細書に開示し、その少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、製剤は、約0〜約5の間の水−オクタノールLogD7.4を有する。場合によっては、本明細書に開示する製剤の水−オクタノールLogD7.4は、約1〜約4の間、または約2〜約4の間である。さらに他の製剤は、約2〜約4の間の水−オクタノールLogD7.4を有し、治療剤の塩形態および遊離塩基形態は個別に、2未満の、または4を超える水−オクタノールLogD7.4を含む。
【0007】
本明細書に開示するさらに他の製剤は、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であり、薬剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、製剤は、約0〜約5の間、約1〜約4の間、または約2〜約4の間の水−オクタノールLogPを有する。さらに他の製剤は、約2〜約4の間の水−オクタノールLogPを有し、治療剤の塩形態および遊離塩基形態は個別に、2未満の、または4を超える水−オクタノールLogPを含む。
【0008】
本明細書に開示するさらに別の製剤は、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であり、治療剤は、モル基準で1:2以上、モル基準で1:5以上、またはモル基準で1:10以上である、塩形態対遊離塩基形態の比で存在する。製剤は、約5マイクロメートル〜約250マイクロメートルの間、約15マイクロメートル〜約200マイクロメートルの間、約20マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間、または約53マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の粒度分布を有する、治療剤の遊離塩基形態を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療剤の遊離塩基形態は、約100マイクロメートルを超える粒度分布を有する。
【0009】
本明細書に開示するさらに別の製剤は、治療剤を含む薬学的製剤であり、治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、ヒトへの鼻腔内投与の後の味プロファイルは、治療剤が同一モル量で塩形態として存在しかつ他の点では同一である薬学的製剤の味プロファイルと比較して、苦味または不快感が実質的に少ない。
【0010】
また、本明細書に開示する製剤のいずれかの単位投与量も本明細書に提供する。かかる投与量は、カプセル(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル)等の任意の形態であってもよい。単位投与量はまた、鼻腔内投与デバイスの形態であってもよい。デバイスは、使い捨て式であってもよい。
【0011】
さらに、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を本明細書に提供し、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該薬学的製剤中の該治療剤の最大血中治療濃度(Cmax)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤と比較して、少なくとも60%のCmaxである。場合によっては、該製剤は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤のCmaxと比較して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも125%、または少なくとも150%であるCmaxを有する。
【0012】
本明細書に提供する別の製剤は、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であり、治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、薬学的製剤中の治療剤のCmaxの1/2の血中濃度に到達する時間(T1/2)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤と比較して、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも125%、または少なくとも150%のT1/2である。
【0013】
本明細書に提供するさらに別の製剤は、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であり、治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、薬学的製剤中の治療剤の血中濃度Cmaxに到達する時間(Tmax)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤と比較して、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも125%、または少なくとも150%のTmaxである。
【0014】
また、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を本明細書に提供し、治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、薬学的製剤中の治療剤のバイオアベイラビリティ(BA)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤と比較して、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも125%、または少なくとも150%のBAである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の特徴および利点のよりよい理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態、および添付の図面を説明する以下の発明を実施するための形態を参照することにより得られる。
【図1】乾燥粉末製剤溶解速度の測定で使用される代表的な装置である。
【図2】サルにおけるコハク酸スマトリプタンの薬物動態プロファイルに対する投与経路および製剤の種類の効果を示す。
【図3】サルにおけるコハク酸スマトリプタンの薬物動態プロファイルに対する投与経路および製剤の効果を示す。
【図4】サルにおいて鼻腔内投与されたコハク酸スマトリプタンおよびスマトリプタン遊離塩基製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図5】それらの粒度分布範囲のみが異なる、鼻腔内投与された遊離塩基スマトリプタン製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図6】鼻腔内投与されたコハク酸スマトリプタン、遊離塩基スマトリプタン、ならびにコハク酸スマトリプタンおよびスマトリプタン遊離塩基製剤の50:50混合物の薬物動態プロファイルを示す。異なるスマトリプタン製剤の粒度分布範囲は、同じ<15マイクロメートルである。
【図7】それらの粒度分布範囲のみが異なる、鼻腔内投与されたコハク酸スマトリプタン製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図8】それらの粒度分布範囲のみが異なる、鼻腔内投与されたスマトリプタン遊離塩基製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図9】それらの粒度分布範囲のみが異なる、鼻腔内投与されたスマトリプタン遊離塩基製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図10】同一の粒度分布範囲を有するが、コハク酸塩対遊離塩基の比が異なる、鼻腔内投与されたスマトリプタン製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図11】CmaxおよびC120に対する粒度および化学形態(塩/遊離塩基)の効果の要約を示す。
【図12】鼻腔内投与されたゾルミトリプタン製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【図13】それらの粒度分布範囲のみが異なる、鼻腔内投与されたゾルミトリプタン遊離塩基製剤の薬物動態プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
遊離塩基形態、塩形態、または2つの形態の組み合わせであってもよい治療剤を含む、薬学的組成物を本開示に提供する。薬学的組成物は、典型的には、吸入のために十分な粒度範囲を有する吸入可能な乾燥粉末である。場合によっては、担体、糖類、多糖類、流動性剤、および他の構成成分等の他の構成成分である。治療剤の粒度は、1つ以上の治療剤、および担体、糖類、流動性剤等の混合物の粒度と異なり得る。加えて、かかる組成物は、所望の薬物動態学的結果を達成するように構成することができる。例えば、片頭痛の治療は、片頭痛の症状の迅速な治療(例えば、疼痛緩和)、ならびに片頭痛の症状の長期治療および/または予防を提供する、単位用量の生成を包含することができる。改良された薬物動態を可能にする組成物および組成物を生成する方法を本明細書に開示する。
【0017】
定義
本発明の理解を促進するために、以下の用語を以下に定義する。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、添付の特許請求の範囲に記載された事項が属する分野で一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書の用語に対して複数の定義が存在する場合は、本項の定義が優先される。
【0018】
本明細書の値の範囲の記述は、該範囲内の値のうちのいくつかが明示的に記述されているかどうかにかかわらず、本明細書に個々に記述されたのと同様に、該範囲内に入るそれぞれ別々の値に個々に言及する。本明細書で採用される特定の値は、本発明の範囲を制限するものではなく、例示的なものとして理解される。
【0019】
開示された技術および手順は、概して、従来の方法を用いて、かつ本明細書全体にわたって引用および考察される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように、実施される。
【0020】
本明細書に記載する方法および組成物は、本明細書に記載する特定の方法、プロトコル、細胞株、治療剤、および試薬に限定されず、それらは、異なってもよいことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することが目的であり、本明細書に記載する方法、化合物、組成物の範囲を制限することを目的としないことを理解されたい。
【0021】
本明細書で使用される項の見出しは、構成上の目的のみのためであり、記載される事項を限定するものと解釈されるものではない。
【0022】
上記の概要および以下の詳細な説明は、例示的および説明的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲に記載されるいかなる事項も制限するものではないことを理解されたい。本願において、単数形の使用は、特に明記されていない限り、複数形を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「一つの(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、そうではないことを文脈が明白に示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本願において、「または」の使用は、特に指定のない限り、「および/または」を意味する。さらに、「含むこと(including)」という用語、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」等の他の形態の使用は、限定的ではない。
【0023】
「キット」および「製造物品」という用語は、同義語であってもよい。
【0024】
「対象」または「患者」という用語は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、哺乳綱の任意のメンバー:ヒト、チンパンジー、ならびに他の類人猿およびサル種等の非ヒト霊長類;牛、馬、羊、山羊、豚等の家畜;ウサギ、犬、および猫等の家庭用動物;ラット、マウス、およびモルモット等の齧歯動物を含む実験動物等が挙げられるがこれらに限定されない。非哺乳動物の例としては、鳥、魚等が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に提供する方法および組成物の一実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0025】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、疾病、疾患、もしくは状態の症状の緩和、軽減、もしくは改善、さらなる症状の予防、症状の根本原因の改善もしくは予防、疾病、疾患、もしくは状態の抑制、例えば、疾病、疾患、もしくは状態の進行の停止、例えば、疾病、疾患、もしくは状態の解消、疾病、疾患、もしくは状態の退行の誘発、疾病、疾患、もしくは状態によって引き起こされる状態の解消、または予防的および/もしくは治療的な疾病、疾患、または状態の症状の阻止を含む。
【0026】
本明細書で使用される「治療剤」、「活性成分」、「生理活性物質」、「治療剤」、「薬学的化合物」、「薬物」等という用語は、疾病、疾患、または状態の症状を治療または改善するために対象に投与される、材料を指す。治療剤は、特に限定されず、全身的または局所的作用を有する薬物、ワクチン、プロドラッグ、および他の誘導体、塩等を含む。
【0027】
本明細書で使用される「小分子」、「低分子量分子」等という用語は、生物活性のある小さい有機化合物を指す。小分子という用語は、一次および二次代謝産物を包含する。小分子は、カフェインおよびモルヒネ等の自然発生的な化合物、ならびにフェンタニル等の半合成または合成化合物を含む。
【0028】
本明細書で使用される「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」等という用語は、アミノ酸のポリペプチドまたは高分子である、生物活性分子を指す。ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質は、ペプチドから、オリゴペプチド、タンパク質へと次第に長くなる、一連のポリペプチドを表す。ペプチドが概して、アミノ酸の短鎖、または分子もしくはタンパク質の断片を含むと考えられる一方で、タンパク質は概して、完全体分子、無傷分子、または全分子を含むアミノ酸のより長い鎖である。
【0029】
概して、ペプチドは、約100〜約50,000ダルトンの分子量を有する。一実施形態では、本発明で使用されるペプチドは、約100〜約30,000ダルトンの分子量を有するが、他のペプチドもまた、それらのコイルが30,000ダルトンよりも大きい場合があるため、本発明の範囲内である。
【0030】
ペプチドは、米国特許第6,784,157号に記載されるような天然配列への修飾または置換を有する分子を含む。例えば、自然発生的なL−アミノアミノ酸は、セリンをイソセリンで置き換える等、D−アミノ酸で、または非天然アミノ酸で置き換えることができる。加えて、分子を固定化するために、環状構造を主鎖に組み込むことができるか、またはC末端もしくはN末端を化学修飾することができる。さらに、天然アミノ酸配列に欠失または添加を行うことができる。
【0031】
ペプチドという用語はまた、ペプチド模倣薬すなわちペプチドの生物活性を模倣するが、もはや化学的性質において全体的または部分的にペプチド性ではない分子を包含する。つまり、ペプチド模倣薬は、ペプチド結合(すなわち、アミノ酸間のアミド結合)を含有しない場合があるか、またはそれらは、天然分子と比較して実質的に少ないペプチド結合を含有する場合がある。ペプチド模倣薬という用語は、擬似ペプチド、半ペプチド、およびペプトイドを含む。完全に、または部分的に非ペプチドであるかどうかにかかわらず、ペプチド模倣薬は、ペプチド模倣薬が基づくペプチド中の活性基の三次元配置に酷似する反応性化学部分の空間的配置を提供する。この同様の活性部位配置の結果として、ペプチド模倣薬は、ペプチドの生物活性と同様の、生物系に対する効果を有する。
【0032】
本発明は、吸入可能な組成物および薬学的に活性なペプチドの使用方法に関して最初に記載されるが、本発明は、吸入可能な組成物ならびにペプチド模倣薬および/またはタンパク質の使用方法を包含することを理解されたい。
【0033】
本明細書で使用されるように、特定の治療剤または薬学的組成物の投与による特定の疾病、疾患、または状態の症状の改善は、永続的または一時的、持続性または一過性であるかどうかにかかわらず、治療剤または組成物の投与に起因するか、またはそれと関連付けられる、任意の重症度の軽減、発症の遅延、進行の減速、または期間の短縮を指す。
【0034】
本明細書で使用される、製剤、組成物、または成分に対する「許容される」という用語は、治療されている対象の全体的な健康に持続的な悪影響を与えないことを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」とは、化合物の生物活性または特性を無効にせず、比較的非毒性である、担体または賦形剤等の材料を指し、すなわち、該材料は、望ましくない生物学的効果をもたらすことなく、または含有されている組成物の構成成分のいずれとも有害に相互作用することなく、個人に投与される。
【0036】
本明細書で使用される「同時投与」等という用語は、一人の患者への選択された治療剤の投与を包含するよう意図され、かつ薬剤が同一の、もしくは異なる投与経路によって、または同一の、もしくは異なる時間に投与される、治療計画を含むよう意図される。同時投与は、単一の実体、用量、または投与単位の形態の2つ以上の薬剤の同時送達を包含する。
【0037】
「薬学的組成物」という用語は、本明細書に記載する治療剤の、流動化剤、滑沢剤、防腐剤、界面活性剤、帯電防止剤、抗菌剤等の担体および/または賦形剤を含む他の化学成分との混合物を指す。薬学的組成物は、生物への治療剤の投与を促進することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、治療剤と共に、または治療剤なしでプロドラッグが投与される。「プロドラッグ」とは、生体内で治療剤に変換される薬剤を指す。つまり、治療剤は、プロドラッグから放出されるか、またはプロドラッグから生成される。一実施形態では、治療剤は、プロドラッグの代謝産物である。代謝という用語は、細胞内または細胞外で生じるエステル、リン酸塩、および他の不安定な化学結合の加水分解等の反応を含む。プロドラッグは、療法の投与をより助長する特性を有するため、しばしば有用である。例えば、プロドラッグは、適切なサイズの粒子を作成するという観点からより良好な処理特性、より良好な流動性、またはより良好な保存安定性を有し得る。加えて、プロドラッグは、治療剤よりも改良された溶解性、または治療剤と比較してプロドラッグのより大きいバイオアベイラビリティをもたらす、より望ましい拡散もしくは分配係数を有し得る。
【0039】
本明細書で使用される「有効量」、「薬理学的に有効量」、「生理学的に有効量」、「治療有効量」という用語は、治療されている疾病または状態の症状のうちの1つ以上をある程度緩和する、投与されている十分な量の治療剤または化合物を指す。結果は、疾病の兆候、症状、もしくは原因の減少および/もしくは緩和、または生物系の任意の他の所望の変化である。例えば、治療的使用のための「有効量」は、治療される対象の血流または作用部位(例えば、洞もしくは肺組織)に所望のレベルの治療剤を提供し、それにより疾病の症状の臨床的に有意な減少をもたらすために必要とされる、本明細書の治療剤を含む、組成物の量である。正確な量は、多数の要因、例えば、特定の治療剤、治療剤の活性、採用される送達デバイス、治療剤の物理的特徴、対象による使用目的(すなわち、1日当たり投与される投薬回数)、対象の考慮事項等によって決まり、本明細書に提供する情報に基づき、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態では、任意の個々の場合の適切な「有効」量は、用量漸増試験等の技術を使用して決定される。
【0040】
「薬学的に許容される塩」または「塩」という用語は、(1)治療剤の遊離塩基形態を薬学的に許容される:例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタリン酸等の無機酸と;または、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2−ナフタリンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、酪酸、フェニル酢酸、フェニル酪酸、バルプロ酸等の有機酸と反応させることによって形成される、酸付加塩;(2)親治療剤中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、マグネシウムもしくはカルシウム)、またはアルミニウムイオンで置き換えられる時に形成される塩を含むがこれらに限定されない。場合によっては、治療剤は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン等であるがこれらに限定されない、有機塩基で調整されてもよい。他の場合では、治療剤は、アルギニン、リジン等であるがこれらに限定されない、アミノ酸と塩を形成する。酸性プロトンを含む化合物と塩を形成するために使用される、許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
薬学的に許容される塩への言及は、その溶媒付加形態または結晶形態、特に、溶媒和物または多形体を含むことを理解されたい。溶媒和物は、化学量論または非化学量論量のいずれかの溶媒を含有し、いくつかの実施形態では、水、エタノール等の薬学的に許容される溶媒による結晶化工程中に形成される。溶媒が水である時に水和物が形成されるか、または溶媒がアルコールである時にアルコラートが形成される。他の実施形態では、治療剤は、非溶媒和形態ならびに溶媒和形態で存在する。一般的に、溶媒和形態は、本明細書に提供する組成物、製剤、および方法の目的で、非溶媒和形態と同等であると見なされる。
【0042】
「遊離塩基」という用語は、治療剤、分子、または化合物の非プロトン化アミン形態を含むがこれに限定されない。加えて、「遊離塩基」は、分子または化合物の中性形態を含むがこれに限定されない。遊離塩基は、薬剤、分子、または化合物の塩ではなく、概して、薬剤、分子、または化合物の塩形態と比較して、水等の極性溶媒中の溶解性は低い。
【0043】
「遊離塩基当量」という用語は、存在する薬剤の塩形態の量がその遊離塩基の重量に変換された場合、治療剤の塩形態が、治療剤の重量に基づき比較または分析されていることを意味する。つまり、存在する薬剤のモル量は、同一のままであるが、計算または比較の目的で、薬剤の塩形態は、遊離塩基の対応する同等のモル量の重量に変換される。
【0044】
「バイオアベイラビリティ」は、試験されている動物またはヒトの全身循環の中へ送達される治療剤の重量の百分率を指す。静脈内投与される時の薬剤の総曝露量(AUC(0〜無限大))は、通常、100%生物学的に利用可能なものとして定義される。「鼻腔内バイオアベイラビリティ」は、静脈注射と比較して、薬学的組成物が鼻腔内投与される時に、治療剤が全身循環の中へ吸収される程度を指す。「経肺バイオアベイラビリティ」は、静脈注射と比較して、薬学的組成物が経肺投与される時に、治療剤が全身循環の中へ吸収される程度を指す。
【0045】
「血液血漿濃度」、「血中濃度」、「血漿濃度」、または「血清濃度」は、対象の血液の血漿または血清構成成分中の治療剤の濃度を指す。治療剤の血漿または血清濃度は、代謝に対する変動性および/または他の治療剤との考えられる相互作用によって、対象間で有意に異なり得ることが理解される。本明細書に開示する一実施形態によると、本明細書に開示する治療剤の血漿または血清濃度は、対象によって異なる。同様に、いくつかの実施形態では、最大血漿濃度(Cmax)もしくは最大血漿濃度に到達する時間(Tmax)、または血漿濃度時間曲線下の全領域(AUC(0〜無限大))等の値は、対象によって異なる。この変動性の理由から、「治療有効量」の化合物を構成するために必要な量は、対象によって異なる。
【0046】
治療剤、担体、および賦形剤の粒度
製剤で使用される治療剤、担体、賦形剤、および他の構成成分の粒度分布範囲は、篩い分けおよびレーザー回折を含むおおくの方法で測定することができる。概して、篩い分け分析は、開口サイズの小さい順に一式の篩を積み重ね、試料を頂部の篩で分析させるように配置することによって実行される。微粒子を回収するために、密閉パン(受容器)が積み重ねの底部に配置され、粒子の損失を防止するために、蓋が篩の積み重ねの頂部に配置される。積み重ねは、一定の時間にわたって振動させられ、各篩上の粒子の残余重量が決定される。篩の結果は、高度に再現性があり得る(5%以内)。個々の篩を通過する材料の速度および量を増加させるために、篩にわたって真空を引くことができる。本明細書で報告する全ての篩い分けの値は、特に明記しない限り、真空を使用しないで得た。
【0047】
レーザー回折は、レーザー光線が粒子の分散を通過する時に生成される回折光の「輪」の分析による。粒度が低下するにつれて、回折角が増加するため、この方法は、5マイクロメートル未満のサイズを測定するために特に良好である。
【0048】
一態様では、本発明は、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を含み、治療剤は、遊離塩基として、または塩および遊離塩基の混合物として存在する。本明細書に開示する薬学的製剤は、気道投与、例えば、経鼻、鼻腔内、洞様毛細血管内、経口、および/または経肺投与に好適なものとして製剤化することができる。典型的には、製剤は、それらが気道投与の経路または標的に対して適切な粒度を有するように生成される。したがって、本明細書に開示する製剤は、定義された粒度分布であるように生成することができる。
【0049】
例えば、鼻腔内投与のための治療剤の塩形態に対する粒度分布は、約5マイクロメートル〜約350マイクロメートルの間であってもよい。より具体的には、治療剤の塩形態は、約5マイクロ〜約250マイクロメートル、約10マイクロメートル〜約200マイクロメートル、約15マイクロメートル〜約150マイクロメートル、約20マイクロメートル〜約100マイクロメートル、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートル、約53マイクロメートル〜約100、約53マイクロメートル〜約150マイクロメートル、または約20マイクロメートル〜約53マイクロメートルの間の、鼻腔内投与に対する粒度分布を有することができる。本発明の薬学的組成物中の治療剤の塩形態は、約200マイクロメートル未満である、鼻腔内投与に対する粒度分布範囲を有することができる。他の実施形態では、薬学的組成物中の治療剤の塩形態は、約150マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約53マイクロメートル未満、約38マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満である粒度分布を有する。本発明の薬学的組成物中の治療剤の塩形態は、約5マイクロメートルを超える、約10マイクロメートルを超える、約15マイクロメートルを超える、約20マイクロメートルを超える、約38マイクロメートルを超える、約53マイクロメートルを超える、約70マイクロメートルを超える、約100マイクロメートルを超える、または約150マイクロメートルを超える、鼻腔内投与に対する粒度分布範囲を有することができる。
【0050】
加えて、本発明の薬学的組成物中の治療剤の塩形態は、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルの間の、経肺投与に対する粒度分布範囲を有することができる。他の実施形態では、経肺投与に対して、粒度分布範囲は、約1マイクロメートル〜約5マイクロメートル、または約2マイクロメートル〜約5マイクロメートルの間である。他の実施形態では、治療剤の塩形態は、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも2マイクロメートル、少なくとも3マイクロメートル、少なくとも4マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも60マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、少なくとも80マイクロメートル、少なくとも90マイクロメートル、または少なくとも100マイクロメートルの平均粒度を有する。
【0051】
本明細書に記載するように、本発明の薬学的組成物は、治療剤の遊離塩基形態を単独で、または同一の治療剤の塩形態と組み合わせて含むことができる。加えて、1つの治療剤の塩および/または遊離塩基形態を含む薬学的組成物はまた、1つ以上の追加的治療剤の塩および/または遊離塩基形態も含むことができる。塩形態と同様に、本組成物中で有用な遊離塩基形態もまた、定義された粒度分布を有することができる。この分布は、遊離塩基形態の粒度分布と同一であっても、または異なっていてもよい。例えば、鼻腔内投与に対する治療剤の遊離塩基形態の粒度分布範囲は、約5マイクロメートル〜約350マイクロメートルの間、約5マイクロ〜約250マイクロメートル、約10マイクロメートル〜約200マイクロメートル、約15マイクロメートル〜約150マイクロメートル、約20マイクロメートル〜約100マイクロメートル、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートル、約53マイクロメートル〜約100、約53マイクロメートル〜約150マイクロメートル、または約20マイクロメートル〜約53マイクロメートルの間であってもよい。いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物中の治療剤の遊離塩基形態は、約200マイクロメートル未満、約150マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約53マイクロメートル未満、約38マイクロメートル未満、または約20マイクロメートル未満である、鼻腔内投与に対する粒度分布範囲を有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物中の治療剤の遊離塩基形態は、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満の、経肺投与に対する粒度分布を有する。
【0052】
本発明の薬学的組成物中の治療剤の遊離塩基形態は、約5マイクロメートルを超える、約10マイクロメートルを超える、約15マイクロメートルを超える、約20マイクロメートルを超える、約38マイクロメートルを超える、約53マイクロメートルを超える、約70マイクロメートルを超える、約100マイクロメートルを超える、または約150マイクロメートルを超える、鼻腔内投与に対する粒度分布範囲を有することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物中の治療剤の遊離塩基形態は、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルの間の、経肺投与に対する粒度分布範囲を有する。他の実施形態では、経肺投与に対して、粒度分布範囲は、約1マイクロメートル〜約5マイクロメートル、または約2マイクロメートル〜約5マイクロメートルの間である。他の実施形態では、治療剤の遊離塩基形態は、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも2マイクロメートル、少なくとも3マイクロメートル、少なくとも4マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、または少なくとも10マイクロメートルの平均粒度を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、治療剤の遊離塩基形態は、少なくとも10マイクロメートルの、鼻腔内投与に対する平均粒度を有する。他の実施形態では、治療剤の遊離塩基形態は、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも15マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも60マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、少なくとも80マイクロメートル、少なくとも90マイクロメートル、または少なくとも100マイクロメートルの平均粒度を有する。
【0055】
治療剤、担体、および賦形剤に対する粒度分布および平均粒度は、当該技術分野で既知の任意の方法によって、例えば、篩い分けによって決定することができる。あるいは、噴霧乾燥または粉砕等、生成工程が許容される粒度分布を作成する場合、治療剤、担体、賦形剤、および他の製剤構成成分は、篩い分けなしで生成された状態で使用することができる。代替として、他の実施形態では、材料は、薬学的組成物の製剤化の前に、篩い分けまたは他の好適な手段を使用して、適切なサイズの画分に分離することができる。
【0056】
薬学的組成物
遊離塩基−粒度
単一の粒度分布範囲中の粒子を有する遊離塩基形態中に治療剤を含むことができる、薬学的組成物を提供する。一般に、鼻腔内用遊離塩基組成物に対して、治療剤の粒度が小さいほど、観察されたCmaxはより高く、観察されたTmaxは、より短いことが発見された。したがって、遊離塩基組成物は、薬物動態プロファイルが、同一の遊離塩基当量を有する塩形態を含む同一の組成物で見られる薬物動態プロファイルと実質的に同様であるように、治療剤の粒度に基づき設計することができる。概して、薬物動態プロファイルは、遊離塩基製剤が、塩製剤の対応する1つ以上の薬物動態パラメータの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%である、1つ以上の薬物動態パラメータを有するように設計することができる。典型的には、鼻腔内投与される、約5マイクロメートル〜約38マイクロメートル、約10マイクロメートル〜約38マイクロメートル、または約10マイクロメートル〜約20マイクロメートルの粒度分布範囲を有する遊離塩基粒子は、鼻腔内投与された治療剤の塩形態で見られる薬物動態プロファイルの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%以内である、薬物動態パラメータと実質的に同様であり得るか、または該薬物動態パラメータを有し得る薬物動態プロファイルをもたらす。本態様では、実質的に同様とは、+1%を意味する。いくつかの実施形態では、遊離塩基が同一モル量の治療剤の塩形態で置き換えられる、他の点では同一の製剤に見られるCmaxの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%以内であるCmaxを有する、鼻腔内用薬学的製剤を提供する。いくつかの実施形態では、遊離塩基が同一モル量の治療剤の塩形態で置き換えられる、他の点では同一の製剤で見られるTmaxの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%以内であるTmaxを有する、鼻腔内用薬学的製剤を提供する。いくつかの実施形態では、遊離塩基が同一モル量の治療剤の塩形態で置き換えられる、他の点では同一の製剤で見られるT1/2の+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%以内であるT1/2を有する、鼻腔内用薬学的製剤を提供する。
【0057】
一方、概して、遊離塩基粒度が増加するにつれて、薬物動態パラメータは、鼻腔内投与された治療剤の塩形態で見られる薬物動態プロファイルと比較して変化することが発見された。概して、Cmaxが減少すると、Tmaxは、増加する可能性があり、T1/2は、増加する可能性がある。いくつかの実施形態では、治療剤が同一モル量の塩形態である、同一の鼻腔内用薬学的製剤のCmaxの約90%、80%、60%、40%、20%、または10%以下であるCmaxを有する、遊離塩基治療剤の鼻腔内用薬学的製剤を提供する。いくつかの実施形態では、治療剤が同一モル量の塩形態である、同一の鼻腔内用薬学的製剤のTmaxの少なくとも約110%、125%、150%、200%、300%、または400%であるTmaxを有する、遊離塩基治療剤の鼻腔内用薬学的製剤を提供する。いくつかの実施形態では、治療剤が同一モル量の塩形態である、同一の鼻腔内用薬学的製剤のT1/2の少なくとも約110%、120%、140%、160%、200%、または400%であるT1/2を有する、遊離塩基治療剤の鼻腔内用薬学的製剤を提供する。
【0058】
粒度に基づき遊離塩基治療剤の薬物動態を変化させる能力について知ることで、適切なサイズの粒子分布範囲を使用することによって、または2つ以上の粒子分布範囲の混合物を製剤化することによって、所望の薬物動態パラメータを有する鼻腔内用製剤を設計することが可能になる。例えば、吸入可能な薬学的組成物は、約10マイクロメートル〜約20マイクロメートルの遊離塩基の1つの粒度分布、および約50マイクロメートル〜約100マイクロメートルの遊離塩基の別の粒度分布を有することができる。このようにして、主により小さい粒度分布範囲の使用によって、塩形態と実質的に同様であるCmaxが達成される一方で、主に遊離塩基のより大きい粒度分布の寄与によって、塩形態よりも長いT1/2が達成される。例えば、片頭痛のためのスマトリプタン製剤は、迅速な治療および長期的治療/予防効果をもたらすように、異なる粒度分布の粒子を有することができる。
【0059】
遊離塩基および塩の混合物
本発明の一態様では、治療剤の遊離塩基および塩形態の混合物を含む、鼻腔内投与に好適な乾燥粉末薬学的製剤を提供する。所望の薬物動態プロファイルを有する鼻腔内用乾燥粉末製剤は、製剤中に治療剤の遊離塩基および塩形態を組み込むことによって設計することができることが発見された。概して、治療剤の遊離塩基形態は、同一の粒度分布の治療剤の塩形態よりもゆっくりと吸収される。典型的には、治療剤の塩形態および遊離塩基形態の混合物を有する鼻腔内用製剤を提供することによって、治療剤の初期の高い血中濃度が主に塩形態によってもたらされ得る一方で、後の血中濃度は、主に遊離塩基形態によってもたらされる。
【0060】
治療剤の遊離塩基形態に対する吸収速度は、より大きいサイズの粒子よりも吸収の速い、概してより小さいサイズの粒子で粒度分布を変化させることによって、調節することができる。典型的には、小さい粒度分布範囲を有する遊離塩基治療剤は、同一の遊離塩基治療剤に対するより大きい粒度分布範囲と比較して、より高いCmaxおよび/またはより短いTmaxをもたらす。慎重な分析および試験によって、治療剤の塩形態のみを含有する鼻腔内用乾燥粉末製剤で現在達成されるものよりも改良された薬物動態プロファイルおよびパラメータを有する、治療剤の遊離塩基および塩形態の鼻腔内用製剤を設計することができる。用途に応じて、本明細書に開示する発見に基づき、より低い、より高い、または同等のCmax、Tmax、T1/2、またはBAを有する薬学的製剤を設計することができる。例えば、製剤は、特定の製剤に対して所望の薬物動態プロファイルに応じて、遊離塩基に対してより小さい粒度および塩形態に対してより大きい粒度、ほぼ同等のサイズ、または、塩形態に対してより小さい粒度および遊離塩基に対してより大きい粒度を有することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、遊離塩基および塩製剤混合物の薬物動態プロファイルは、1つ以上の薬物動態パラメータが、同等のモル量の治療剤の塩形態で作製される同一の製剤で見られる薬物動態パラメータと比較して改良された、薬物動態プロファイルを有する。いくつかの実施形態では、遊離塩基および塩混合物製剤のCmaxは、塩製剤の対応するCmaxの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%と同等またはその範囲内であるが、Tmaxは、同一の(すなわち、等モルの)塩製剤で見られるTmaxよりも少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、または100%長い。いくつかの実施形態では、遊離塩基および塩混合物製剤のCmaxは、塩製剤の対応するCmaxの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%と同等またはその範囲内であるが、T1/2は、塩製剤で見られるT1/2よりも少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、または100%長い。いくつかの実施形態では、遊離塩基および塩混合物製剤のTmaxは、塩製剤の対応するTmaxの+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%と同等またはその範囲内であるが、T1/2は、塩製剤で見られるT1/2よりも少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、または100%長い。
【0062】
いくつかの実施形態では、治療剤が同一モル量の塩形態である同一の鼻腔内用薬学的製剤のCmaxの約90%、80%、60%、40%、20%、または10%以下であるCmaxを有するが、塩製剤で見られるTmaxよりも少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、または100%長いTmaxを有する、治療剤の遊離塩基および塩混合物の鼻腔内用薬学的製剤を提供する。いくつかの実施形態では、治療剤が同一モル量の塩形態である同一の鼻腔内用薬学的製剤のCmaxの約90%、80%、60%、40%、または20%以下であるCmaxを有するが、塩製剤で見られるT1/2よりも少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、または100%長いT1/2を有する、治療剤の遊離塩基および塩混合物の鼻腔内用薬学的製剤を提供する。かかる薬物動態プロファイルは、遊離塩基形態および塩形態の相対比率を変化させること、ならびに治療剤の一方または両方の形態の粒度を変化させることによってもたらすことができる。
【0063】
製剤は、所望の薬物動態プロファイルまたはパラメータを提供するように、多くの方法で設計することができる。いくつかの実施形態では、治療剤の遊離塩基対塩形態の割合は、変更することができる。いくつかの実施形態では、治療剤の塩形態対遊離塩基形態の比は、モル基準で1:1以上である。他の実施形態では、治療剤の塩形態対遊離塩基形態の比は、モル基準で3:1、2:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:20、または1:50以上である。
【0064】
混合物中の治療剤の遊離塩基および塩形態は、実質的に同様または同等の粒度分布を有することができる。あるいは、混合物の遊離塩基および塩形態は、異なる粒度分布を有することができる。さらに、治療剤の遊離塩基または塩形態に対する2つ以上の粒度分布が混合物中に存在することができる。
【0065】
鼻腔内用製剤は、遊離塩基および塩形態の組成物の割合が異なり、粒度分布も異なる、遊離塩基および塩混合物を含有することができる。例えば、グラニセトロン鼻腔内用製剤は、グラニセトロンの塩形態が100マイクロメートルを超える粒度分布を有する一方で、グラニセトロンの遊離塩基形態は、38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度分布を有することができる、1:4の塩形態対遊離塩基形態の比を使用して作製することができる。加えて、鼻腔内用製剤は、遊離塩基および塩形態の組成物の割合が異なり、少なくとも遊離塩基治療剤は、少なくとも2つの異なる粒度分布中に存在する、遊離塩基および塩混合物を含有することができる。
【0066】
プロドラッグ混合物
鼻腔内用組成物の薬物動態プロファイルおよびパラメータの制御および設計はまた、プロドラッグの使用によって達成することができる。プロドラッグは、製剤中で単独で使用することができるか、または他の治療剤の塩、遊離塩基、もしくは塩および遊離塩基の混合物と混合することができる。プロドラッグを作製するために使用される、またはプロドラッグを定義する化学修飾の種類に応じて、より高いCmaxおよび/またはより長いT1/2が観察され得る。例えば、化合物の溶解性を変化させることによって、付加または修飾された官能基が鼻粘膜にわたる薬物の取り込みを改善する場合、プロドラッグの血中濃度の早期の増加が生じる。治療剤を放出するように身体によってプロドラッグが迅速に処理される場合、より高いCmaxが生じ得る。さらに、官能基が鼻粘膜にわたる薬物の取り込みを遅延させる場合、および/または官能基がゆっくりと処理される場合、結果は、より長いT1/2となり得る。
【0067】
経肺投与および鼻腔内投与の組み合わせ
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、各標的に対して最も適している粒度分布範囲の選択によって、同時鼻腔内および経肺投与に好適である。例えば、肺を治療するための1マイクロメートル〜5マイクロメートルの第1の粒子分布範囲、および鼻孔を治療するための20マイクロメートル〜100マイクロメートルの第2の粒子分布範囲の、2つの粒子分布範囲中に存在する治療剤を有する、抗生物質の製剤を提供することができる。同様に、一方は肺に、他方は鼻孔に、2つの異なる薬剤を送達する製剤を設計することができ、送達は、各薬剤の粒度によって制御される。
【0068】
分布または分配係数
多くの要因が治療剤の薬物動態プロファイル(例えば、Cmax、Tmax、T1/2、およびBA)に影響を及ぼす。例えば、治療剤の正確な製剤は、同一の治療剤を用いてさえ、薬物動態プロファイルに対して大きな影響を有し得る。製剤は、例えば、治療剤の放出、治療剤の安定性、生物組織および/もしくは水と接触する時の製剤の付着性、製剤の流動性、または治療剤の溶解性に影響を及ぼす、担体または賦形剤を含むことができる。製剤はまた、それら自体が、それらの薬物動態特性に影響を及ぼす異なる特性を示す、同一の治療剤の異なる形態を含むことができる。例えば、遊離塩基、塩形態、またはそれらの混合物中の治療剤の溶解度は、部分的に薬物動態プロファイルを決定し得る。いくつかの実施形態では、塩形態、遊離塩基、またはそれらの混合物中の治療剤の溶解度は、分配または分布係数を測定することによって決定され得る。分配(P)または分布係数(D)は、平衡状態の2つの非混和性溶媒の混合物の2つの相における化合物の濃度の比である。したがって、これらの係数は、これらの2つの溶媒間の化合物の特異的溶解性の測定値である。
【0069】
概して、1つの溶媒が水性、通常は水である一方で、第2の溶媒は、疎水性である。好適な疎水性溶媒としては、オクタノール、または例えば、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、またはヘプタノールを含む、別の実質的に水不溶性のアルコールが挙げられるがこれらに限定されない。使用され得る他の実質的に水不溶性の有機液体としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびシクロヘキサンが挙げられる。したがって、分配および分布係数の両方は、化学物質の親水性(「水を好む」)または疎水性(「水を嫌う」)特性の測定値である。分配係数は、例えば、体内の薬物の分布およびバイオアベイラビリティを予測するために有用である。場合によっては、高い分配係数を有する疎水性薬物が、細胞の脂質二重層等の疎水性コンパートメントに優先的に分布する一方で、親水性薬物(低い分配係数)は、場合によっては、血清等の親水性コンパートメントにおいて優先的に見られる。
【0070】
分配係数は、2つの溶液間の非イオン化化合物の濃度の比である。イオン性溶質の分配係数を測定するために、化合物の主要な形態が非イオン化されるように、水相のpHが調節される。溶媒中の非イオン化溶質の濃度の比の対数は、LogP、または代替として、cLogPと呼ばれる。
(数1)

【0071】
分布係数は、2つの相のそれぞれにおける化合物の全ての形態の濃度の合計である(イオン化+中性)。分布係数の測定のために、pHが化合物の導入によって著しく乱されないように、水相のpHが特定の値に緩衝化される。一方の溶媒中の溶質の様々な形態の濃度の合計の、他方の溶媒中のその形態の濃度の合計に対する対数は、LogDと呼ばれる。
(数2)

【0072】
さらに、LogDは、pH依存性であり、したがって、LogDが測定されるpHを指定しなければならない。特に興味深いのは、pH=7.4におけるLogDである(血清の生理学的pH)。非イオン化化合物に対して、LogP=任意のpHのLogDである。
【0073】
加えて、化合物のpKが既知であるか、または評価可能である場合、LogDは、LogP計算または測定から決定され得る。pKの評価のために、ハメット方程式を使用することができる。
LogPおよびpKからのLogDの評価(所与のpHにおける)
正確な式:
(数3)

化合物が大部分イオン化された時の近似値:
(数4)
酸に対して、

塩基に対して、

化合物が大部分非イオン化された時の近似値:
(数5)

【0074】
LogPに対する実験値は、所与の溶媒系中の化合物の濃度と直接関連し合っている。例えば、LogP=1は、化合物が所与の有機:水性溶媒系において10部対1部を分配することを意味し、LogP=0は、1:1の分配が生じることを意味する。いくつかの実施形態では、好ましいLogP値は、約0〜約7、約1〜約6、約2〜約5、約3〜約4、約0〜約6、約0〜約5、約0〜約4、約0〜約3、約1〜約5、約1〜約4、約1〜約3、約1〜約2、約2〜約7、約2〜約6、約2〜約4、約2〜約3の間の値を含む。いくつかの実施形態では、好ましいLogPは、少なくとも約0、少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4、少なくとも約4.5、少なくとも約5、少なくとも約5.5、少なくとも約6、少なくとも約6.5、および少なくとも約7である。
【0075】
場合によっては、LogDは、薬物または化合物の生物学的特性をさらに示し得る。例えば、化合物は、7のLogPを示し得るが、1つ以上のイオン基の存在によって、pH7.4における2のLogDを示し得る。かかる化合物は、場合によっては、生理学的pHにおけるその好ましいLogD値の結果として、所望の膜透過性およびバイオアベイラビリティパラメータを示すことが予想され得る。いくつかの実施形態では、好ましいLogD値は、約0〜約7、約1〜約6、約2〜約5、約3〜約4、約0〜約6、約0〜約5、約0〜約4、約0〜約3、約1〜約5、約1〜約4、約1〜約3、約1〜約2、約2〜約7、約2〜約6、約2〜約4、約2〜約3の間の値を含む。いくつかの実施形態では、好ましいLogDは、少なくとも約0、少なくとも約1、少なくとも約1.5、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4、少なくとも約4.5、少なくとも約5、少なくとも約5.5、少なくとも約6、少なくとも約6.5、および少なくとも約7である。
【0076】
LogD実験を実施するための好適なpH値の選択は、投与経路(例えば、経口または経鼻)、試験される化合物のpk、および標的とされる所望の生物学的コンパートメントのpH等の要因を考慮することによって、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態では、LogD値を決定するために好適なpH値は、約1.5〜約7、約2.0〜約7、約2〜約6、約2〜約5、約3〜約8、約3〜約7、約3〜約6、約3〜約5、約4〜約8、約4〜約7、約4〜約6、約4〜約5、約5〜約8、約5〜約7、約5〜約6、約6〜約8、または約6〜約7等の約1.5〜約8のpH値を含む、約2の胃酸のpHから約7.5の腸管腔のpHに及ぶ。いくつかの実施形態では、pHは、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.4、7.5、8.0、または8.5よりも大きい。いくつかの実施形態では、pHは、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.4、7.5、8.0、または8.5よりも小さい。
【0077】
場合によっては、化合物は、その塩形態と比較して、その遊離塩基形態において実質的に異なるLogDを有してもよい。そのような場合、好適な溶解性データを得るために、両方の形態、またはそれらの混合物を分析することが望ましくあり得る。例えば、塩形態の化合物は、水に非常に溶けやすく、有機相にはほぼ不溶性であり得る。かかる化合物は、低いLogD値を有する。対照的に、同一の化合物の遊離塩基形態は、有機溶媒に非常に溶けやすいが、水には実質的に不溶性であり得る。したがって、同一の化合物の遊離塩基形態は、有意により高いLogD値を有し、したがって、異なる薬物動態プロファイルを示すことが予想され得る。
【0078】
治療剤の塩形態および治療剤の遊離塩基形態の両方の混合物である、本明細書の製剤を提供することができる。得られた混合物は、治療剤単独の個々の形態に対して、付加的、相乗的、または相補的薬物動態特性を有し得る。例えば、塩形態の化合物が、高いCmaxまたは短いTmaxを提供し得る高い溶解性を示すLogD値を示し得る一方で、同一の化合物の対応する遊離塩基形態は、長いT1/2を示す、実質的に異なるLogD値を示し得る。そのような場合、本発明の方法は、化合物の塩形態および遊離塩基形態の両方の混合物である製剤の作製および使用を提供する。本発明の方法はさらに、所与の製剤の薬物動態特性を調整するためのかかる混合物の使用を提供する。例えば、化合物の塩形態および遊離塩基形態の混合物は、例えば、長いT1/2等の遊離塩基形態の有益な特性と共に、例えば、迅速な吸収、高いCmax、および低いTmax等の塩形態の総合または混合した有益な特性を示す、薬学的製剤を提供し得る。
【0079】
LogPまたはLogD決定の古典的な方法は、振とうフラスコ法であり、それは、一定期間にわたる撹拌または混合によって、大量のオクタノールおよび水中に当該溶質の一部を溶解すること、次いで、各溶媒中の溶質の濃度を測定することから成る。各溶媒中の溶質の濃度は、例えば、UV−Vis分光法;蛍光分光法;放射性トレーサの測定;逆相、イオン交換、もしくはサイズ排除クロマトグラフィ等であるがこれらに限定されない、クロマトグラフィ法(例えば、HPLC);または質量分析法等の当該技術分野で一般に既知のあらゆる方法によって測定され得る。放射性トレーサの測定が使用される場合、測定される試料全体が放射性トレーサを含んでもよく、または測定される試料の一部分が放射性トレーサを含んでもよい。例えば、化合物のLogPまたはLogDを測定するために、振とうフラスコ中の水/オクタノール混合物へと、溶媒交換に耐性がある、1つの水素位置において三重水素で置換される、例えば、99.9%の化合物および0.1%の試料の混合物を溶解してもよい。次いで、平衡状態に到達した後、各溶媒中の化合物の濃度は、シンチレーション計測、γ計測、ccd検出、フォトダイオード、光電子増倍管、フィルム、ゲルマニウム検出器等のエネルギー分散型検出器等が挙げられるがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の放射性崩壊を検出するためのあらゆる方法または器具を使用して測定されてもよい。放射性トレーサとしての使用に好適な他の好適な放射性核種としては、硫黄、ヨウ素、リン、カルシウム、水素、鉄、および炭素の不安定同位体が挙げられるがこれらに限定されない。重水素のような安定同位体であるが希少同位体もまた、化合物を標識するために使用することができる。かかる標識化合物の検出は、質量分析法または他の好適な手段で実施することができる。
【0080】
分配係数を評価するための方法は、逆相HPLC保持時間を、既知の分配係数(LogPまたはLogD)値を有する同様の化合物の保持時間に関連付けることを含む。この技術は、分配係数が既知ではない化合物および分配係数が既知である化合物が、構造的および化学的に同様である必要がある。分配係数を評価するための他の方法としては、例えば、原子ベース予測、断片ベース予測、データマイニング予測、および分子マイニング予測等の計算法が挙げられる。評価されたlogPを提供することが可能である例示的なプログラムとしては、Chemistry Development Kit、JOElib、ACD/LogP DB、Simulations Plus、ALOGPS、Marvin、miLogP、PreADMET、およびXLOGP3が挙げられる。
【0081】
ほとんどの場合、オクタノール/水溶媒系中の化合物のLogPまたはLogD値は、生体内薬物吸収研究の結果とよく相関することが示されている。しかしながら、ある特定の場合、他の方法は、予測値の改善を示している。例えば、疎水性ペプチドまたはペプチド模倣薬等の多くの水素結合官能基を有する疎水性化合物は、好ましいLogP値を示すが、それにもかかわらず、不十分な生体内の吸収度およびバイオアベイラビリティを示す可能性がある。そのような場合、ΔLogPまたはΔLogD測定が化合物または製剤の薬物動態特性をよりよく予測し得る。ΔLogPまたはΔLogD測定は、例えば、オクタノール−水溶媒系中の薬物または化合物の分配係数と、シクロヘキサン−水溶媒系中の薬物または化合物の分配係数との間の差の測定を伴ってもよい。
【0082】
化合物の薬物動態特性を評価するための他の方法は、人工または生体膜の使用を伴う。LogPおよびLogD測定は、疎水性データを提供し、次いで、実際の細胞または膜透過性または輸送が推測されなければならない。対照的に、人工または生体膜を利用する方法は、実際の脂質膜透過性に関するデータを提供する。さらに、細胞または膜透過性は、所与の製剤中に存在し得る特定の薬学的担体またはアジュバントとの関連で分析されてもよい。よく知られている膜に基づく方法としては、Caco−2、MDR1−MDCKII、またはHT29細胞を使用する方法;および並行人工膜透過性アッセイ(PAMPA)が挙げられるがこれらに限定されない。細胞または膜透過性は、胃腸からの薬物吸収に重要であることが広く認められているが、それはまた、血液脳関門(BBB)を通る等の組織透過および経鼻投与された化合物の吸収において重要な役割を有する。
【0083】
細胞透過性アッセイを実施するための方法は、製薬産業で広く使用されており、トランスウェルプレートまたはチャンバの使用を含む。例えば、Caco−2細胞、HT29細胞、MDR1−MDCKII細胞、またはそれらの組み合わせ等の細胞は、例えば、トランスウェルプレートの内部チャンバ等の好適な基板上で播種した後、単層として増殖され得る。いくつかの実施形態では、単層を得るために、約2〜約25日を必要とする場合がある。時間の長さに影響を及ぼす可能性がある変動としては、播種された細胞の数、使用される細胞の相対的健康状態、細胞の継代数、使用される細胞型または細胞型の混合物、使用される細胞増殖培地または培地構成成分、ならびに温度、pH、および湿度が挙げられるがこれらに限定されない細胞増殖条件が挙げられる。場合によっては、細胞は、腸上皮の完全に分化した層を形成するまで、播種および増殖されてもよい。単層の完全性は、経上皮電気抵抗(TEER)またはルシファーイエロー透過性の測定によって確認されてもよい。無傷単層を示す好適なTEER値は、約225オーム/cm、250オーム/cm、275オーム/cm、300オーム/cm、350オーム/cm、400オーム/cm、450オーム/cm、500オーム/cm、および約550オーム/cmを含む、約200オーム/cm〜約600オーム/cmの間の値を含む。
【0084】
次いで、試験される薬物、化合物、または製剤は、トランスウェルプレートの内部または外部チャンバに適用されてもよく、培養期間後、すでに記載された定量法のうちのいずれかを使用して、内部および外部チャンバの両方において、濃度が分析されてもよい。このようにして、細胞障壁にわたる薬物、化合物、または製剤の輸送が測定される。好適な培養期間は、典型的には、約24時間未満であり、概して、数分〜4時間に及ぶ。場合によっては、培養期間は、約1、2、または3時間である。
【0085】
透過係数(Pc)は、以下の方程式:Pc=dA/(dt×S×Co)に従って計算することができ、式中、dA/dtは、単層にわたる試験化合物の流束(nmol/s)であり;Sは、細胞単層の表面積(cm)であり;Coは、ドナーコンパートメント中の初期濃度(マイクロM)である。Pc値は、nm/sとして表される。約100nm/s未満の透過性値を示す化合物または製剤は、概して、低透過性と見なされる。100nm/sを超える透過性値を示す化合物は、概して、高い輸送を示すと見なされ、高いバイオアベイラビリティ、短いTmax、および/または高いCmaxを示すと予想される。
【0086】
場合によっては、単層を形成する細胞は、極性化され、頂端面および側底面を示す。内部または外部チャンバに薬物、化合物、または製剤を適用するための選択は、側底から頂端への輸送が測定されるか、または頂端から側底への輸送が測定されるかによる。受動的に輸送された化合物は、両方の方向で等しい透過性を示す。頂端から側底への輸送と比較して高い側底から頂端への輸送速度は、化合物が輸送基質であることを示す。
【0087】
市販の薬物の80〜95%が主に受動拡散によって吸収されるという最近の結論を考慮すると、受動的吸収機構に関する直接的なデータを提供する迅速かつ安価な透過性アッセイに強い関心がある。Kansy et al.J Med Chem 41:1007−1010は、「並行人工膜透過性アッセイ」(PAMPA)と呼ばれる新しい透過性アッセイを導入した。この技術は、細胞培養を伴わない。PAMPAは、人工膜によって分離される2つの水性緩衝液ウェルを使用する。人工膜は、ドデカン中のホスファチジルコリン、ドデカン中の1、2−ジオレオイル−sn−グリセル−3−ホスホコリン(DOPC)、または様々な脂質の混合物等の有機希釈剤中の脂質から成る。場合によっては、Kansyの方法の他の変化形が、PAMPAの結果の、特定の化合物の種類または特定の標的(例えば、血液脳関門)を通る化合物輸送との相関関係を改善する。Caco−2実験とは異なり、PAMPAアッセイは、胃、腸、および血漿等の様々な生物学的コンパートメントを模倣するために、幅広いpH値におけるpHプロファイリングに適合する。
【0088】
脂質膜はさらに、多孔質フィルタプレートマトリクスによって支持される。好適な市販のフィルタマトリクスは、8ミクロンの直径の細孔PVDFを含むが、他の細孔径およびフィルタ材料も本発明の範囲内と考えられる。実験の開始時、試験化合物は、緩衝剤(例えば、25マイクロg/mL)中で希釈され、「ドナー」ウェル中に配置される。化合物は、受動的拡散によってドナーウェルから人工膜の中へ、次いで、「受容」ウェルの中へ移動する。透過度は、化合物の有効透過率(Pe)によって決定される。実験設定のための時間は、細胞単層法と比較して大幅に低減される。受動的拡散のみが試験され、代謝はない。したがって、能動輸送または薬物分解による交絡効果がなく、データの解釈をより容易にする。PAMPAは、96ウェル形式で実施され、例えば、UVプレートリーダー、またはすでに記載された定量法のうちのいずれかを使用して迅速に定量化され得る。輸送タンパク質はないため、飽和は問題ではない。
【0089】
いくつかの実施形態では、吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、約0〜約5の間の水−オクタノールLogD7.4を有する。他の実施形態では、吸入可能な薬学的製剤は、約1〜約4の間または約2〜約4の間の水−オクタノールLogD7.4を有する。他の実施形態では、吸入可能な薬学的製剤は、約2〜約4の間の水−オクタノールLogD7.4を有し、塩形態および遊離塩基形態は個別に、2未満の、または4を超える水−オクタノールLogD7.4を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、吸入可能な乾燥粉末製剤は、約0〜約5の間の水−オクタノールLogPを有する。他の実施形態では、吸入可能な乾燥粉末製剤は、約1〜約4の間または約2〜約4の間の水−オクタノールLogPを有する。さらなる実施形態では、吸入可能な薬学的製剤は、約2〜約4の間の水−オクタノールLogPを有し、塩形態および遊離塩基形態は個別に、2未満の、または4を超える水−オクタノールLogPを含む。
【0091】
溶解速度
吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤はまた、インビトロ溶解速度に基づき開発、分類、および/または説明することができる。溶解速度を決定するための方法は、米国薬局方24(2000)および日本薬局方14(2001)を含む様々な薬局方において見ることができる。典型的には、錠剤、ピル、または他の固体投与単位は、パドルが固体投与単位よりも上に配置された、溶解媒体で充填された装置の底部に配置される。代替として、固体投与単位は、撹拌機構を含有する、溶解媒体中に懸濁したメッシュバスケット中に配置される。媒体は、持続的に撹拌しながら一定温度で保持される。定期的に、試料は、容器から引き出され、濾過され、HPLC、分光光度法、または他の好適な手段によって分析される。
【0092】
本発明が部分的に乾燥粉末製剤に関するため、試験方法は、粉末の異なる物理的特徴を考慮するように修正される。装置の底部上またはバスケット中に固体投与単位を配置する代わりに、乾燥粉末製剤は、両端を閉鎖した透析管中に配置される。図1。試料は、表面から一端でつるされ、管および封入された製剤は、媒体中でぶら下がっている。典型的には、溶解媒体は、脱イオン化水であるが、鼻粘液のpHおよびイオン強度を模倣する水性緩衝系を使用することができる。スターバーが媒体を収容する容器の底部に配置される。次いで、容器は、ヒータ/撹拌装置上に配置され、次いで、一定の温度および撹拌速度で制御される。典型的には、温度は37℃に、撹拌速度は60rpmに設定される。試料は定期的に除去され、HPLCまたは分光光度法を使用して分析される。
【0093】
治療剤のうちのどれも遊離塩基として存在していない治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末製剤に対する溶解速度よりも遅い溶解速度を有する、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在している、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を開示する。いくつかの実施形態では、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、1分、2分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、40分、50分、または60分にわたって測定される時、治療剤のうちのどれも遊離塩基として存在していない治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末製剤の溶解速度の90%、80%、70%、60%、50%、40%、25%、10%、または5%未満である溶解速度を有する。他の実施形態では、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、約1、2、5、10、または20分以内に、組成物の少なくとも10%、20%、40%、60%、80%、または90%が溶解されるような溶解プロファイルを有する。さらに他の実施形態では、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、約1、2、5、10、または20分以内に、組成物の10%、20%、40%、60%、80%、または90%未満が溶解されるような溶解プロファイルを有する。
【0094】
一般に、固体投与単位に関して、塩形態の治療剤は、遊離塩基と比較してより高い溶解速度を有し、したがって、治療剤の塩は、より速い治療剤の作用発現およびより大きいバイオアベイラビリティをもたらすと考えられる。したがって、この一般現象が必ずしも鼻腔内用乾燥粉末製剤に当てはまらなかったという発見は、驚くべき結果であった。いくつかの実施形態では、予想に反して、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基として存在する治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、CmaxおよびTmaxによって測定されるように、同等または実質的に同様の迅速な治療剤の作用発現を有することがわかった。これは、乾燥粉末製剤の溶解速度が、等モル量で治療剤の塩形態のみを含む同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤よりも遅い時でさえ、当てはまる。
【0095】
薬物動態プロファイル
同一モル量で治療剤の100%の塩形態を含む同一の薬学的組成物と比較して、実質的に同様の、または改良された薬物動態プロファイルおよび/またはパラメータを有する、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を開示する。治療剤の遊離塩基形態は、組成物中に存在する治療剤の総量の100%を表すことができるか、または治療剤は、薬剤の塩形態の遊離塩基形態との混合物として存在することができる。同一の製剤中に存在する時の塩形態および遊離塩基形態の粒度は、同一の、または異なる平均粒度または粒度分布を有することができる。薬物動態プロファイルは、当該技術分野で既知の標準的な手段を用いて得ることができる。例えば、薬物動態プロファイルは、霊長類(例えば、アカゲザル(Macaca mulatta)等のサル、またはヒト)を含む哺乳動物等の動物から得ることができる。
【0096】
薬学的組成物間の比較は、組成物の投与後に測定される薬物動態プロファイルおよび/またはパラメータの検査によって容易に達成することができる。概して、血中ベースライン薬物濃度は、投与前に得られる。投与後、薬物分析のために様々な時点で採血される。典型的には、血清または血漿は、血液試料から分離され、治療剤の濃度を決定するために分析される。伝統的に、時間(x軸)対薬物濃度(y軸)のグラフが作成され、このグラフから様々な薬物動態パラメータを導出することができる。あるいは、薬物動態パラメータを導出し、それらを測定された値のグラフに適合させるソフトウェアプログラムにデータを入力することができる。本開示の教示を実施するために使用され得る、多数であるが非限定的な薬物動態ソフトウェアプログラムは、以下のウェブサイト:http://www.boomer.org/pkin/softに記載される。
【0097】
製剤を比較するために有用な薬物動態パラメータは、最大血中治療濃度(Cmax)、Cmaxに到達する時間(Tmax)、Cmaxの1/2の血中濃度に到達する時間(T1/2)、およびバイオアベイラビリティ(BA)を含む。典型的には、BAは、血中治療濃度対時間グラフの曲線(AUC)下の範囲を決定するために測定される。薬学的組成物間の比較分析のために、薬物動態パラメータは個別に、または様々な組み合わせで比較することができる。
【0098】
遊離塩基および混合物の組成
同一モル量で治療剤が塩形態のみで存在する、同一の薬学的製剤と比較して、実質的に同様の、または改良された薬物動態プロファイルを有する、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を本明細書に開示する。いくつかの実施形態では、少なくとも一部の遊離塩基が存在する吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤の塩形態のみを有する同一の薬学的製剤で観察される薬物動態パラメータと実質的に同様である1つ以上の薬物動態パラメータを有する。他の実施形態では、遊離塩基の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤の塩形態のみを有する同一の薬学的製剤で観察される薬物動態パラメータと比較して実質的に改良された、1つ以上の薬物動態パラメータを有する。本発明のいくつかの実施形態では、吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤が遊離塩基としての治療剤のみを含有する一方で、他の実施形態では、治療剤は、治療剤の遊離塩基形態および塩形態の混合物として存在する。いくつかの実施形態では、モル量で計算される時の混合物中の治療剤の塩形態の割合は、約0.0%〜約99.9%である。いくつかの実施形態では、モル量で計算される時の混合物中の治療剤の塩形態の割合は、約1%〜約99%、約5%〜約95%、約10%〜約90%、約20%〜約80%、30%〜約70%、および約40%〜約60%に及ぶ場合がある。さらなる実施形態では、モル量で計算される時の混合物中の治療剤の塩形態の割合は、少なくとも0%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%である。他の実施形態では、モル量で計算される時の混合物中の治療剤の塩形態の割合は、99%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満である。
【0099】
Cmax
いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxと実質的に同様である最大血中治療濃度(Cmax)を有する。いくつかの実施形態では、遊離塩基形態を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxの約+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%である、最大血中治療濃度(Cmax)を有する。
【0100】
加えて、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxの少なくとも95%である、最大血中治療濃度(Cmax)を有することができる。いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤の塩形態および遊離塩基形態の混合物を含む、吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxの少なくとも400%、200%、150%、125%、110%、90%、80%、60%、または40%であるCmaxを有する。
【0101】
また、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を本明細書に開示し、これは、霊長類に投与される場合、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含み他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxよりも実質的に高い最大血中治療濃度(Cmax)を有することができる。いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤の遊離塩基形態を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態のみを含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxよりも少なくとも約150%、200%、300%、400%、500%、または1000%大きい、Cmaxを有する。
【0102】
Tmax
いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxと実質的に同様である血中濃度Cmaxに到達する時間(Tmax)を有する。いくつかの実施形態では、遊離塩基形態を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxの約+5%、+10%、+20%、+30%、または+40%である、最大血中治療濃度(Cmax)を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のT1/2の少なくとも95%である、血中濃度Cmaxに到達する時間(Tmax)を有する。いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のCmaxの少なくとも400%、200%、150%、125%、110%、90%、80%、60%、または40%であるTmaxを有する。
【0104】
また、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤を本明細書に開示し、これは、霊長類に投与される場合、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含み他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のTmaxより実質的に高い、Tmaxを有することができる。いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のTmaxよりも少なくとも約150%、200%、300%、400%、500%、または1000%大きい、Tmaxを有する。
【0105】
1/2
いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のT1/2の少なくとも95%であるCmaxの1/2の血中濃度に到達する時間(T1/2)を有する。いくつかの実施形態では、霊長類に投与される場合に治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、治療剤が両方の組成物中で同一モル量で存在する時、治療剤の塩形態を含む、他の点では同一の吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤のT1/2の少なくとも400%、200%、150%、125%、110%、90%、80%、60%、または40%であるT1/2を有する。
【0106】
バイオアベイラビリティ
いくつかの実施形態では、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤において、薬学的製剤中の治療剤のバイオアベイラビリティ(BA)が、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤のBAの少なくとも95%である。
【0107】
いくつかの実施形態では、その少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の治療剤のBAの少なくとも800%、400%、200%、150%、125%、110%、90%、80%、60%、または40%であるBAを有する。
【0108】
概して、バイオアベイラビリティが増加した薬学的製剤は、1つ以上の所望の薬理学的効果を達成するためのより少量の治療剤の使用を可能にする。いくつかの実施形態では、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、1つ以上の所望の薬理学的効果を達成するために、等モル量で、塩形態の治療剤を含有する同一の製剤によって必要とされる用量よりも10%低い用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、治療剤のうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、1つ以上の所望の薬理学的効果を達成するために、等モル量で、塩形態の治療剤を含有する同一の製剤によって必要とされる用量よりも約20%低い、約30%低い、約40%低い、約50%低い、または約75%低い用量で投与することができる。所望の薬理学的効果は、治療されている疾病または状態、および使用されている特定の薬物または薬物の種類によって左右されるが、疾病または状態の1つ以上の症状の低減;疼痛、炎症、もしくは所望のバイオマーカーの低減;または可動性、食欲、覚醒、認知能力、血球数、または所望のバイオマーカーの増加を含むことができる。
【0109】
グラニセトロン製剤
いくつかの実施形態では、グラニセトロンが吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤として投与され、グラニセトロンのうちの少なくとも一部は、1、5、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000nM以上の血漿濃度を患者において達成するのに十分な量で、遊離塩基形態で存在する。いくつかの実施形態では、吸入可能な乾燥粉末製剤は、250nMまたは350nM以上の患者における血漿中濃度を達成するのに十分な量で投与される。ある特定の実施形態では、それは、1〜10nM、1〜100nM、10〜1000nM、50〜500nM、100〜500nM、200〜400nM、200〜1000nM、または500〜1000nMの範囲の血漿濃度を患者において達成するのに十分な量で投与される。
【0110】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンが吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤として投与され、グラニセトロンのうちの少なくとも一部は、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも550nM、または550nMを超える、患者における血漿濃度を達成するのに十分な量で、遊離塩基形態で存在する。ある特定の実施形態では、グラニセトロンは、少なくとも1、2、4、6、8、10、または12時間にわたって、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも550nM、または550nMを超える、患者における血漿濃度を維持するのに十分な量で投与される。
【0111】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンが吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤として投与され、グラニセトロンのうちの少なくとも一部は、約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.1mg/kg〜約50mg/kg、約0.5mg/kg〜約20mg/kg、または約1.0mg/kg〜約10mg/kgの範囲内の量で、遊離塩基形態で存在する。特定の実施形態では、グラニセトロンは、約1mg/kg〜約10mg/kg、約2mg/kg〜約10mg/kg、約4mg/kg〜約8mg/kg、または約6mg/kg〜約8mg/kgの範囲内の量で投与される。一実施形態では、グラニセトロンは、約Xmg/kgで投与される。したがって、特定の実施形態では、約100〜1000mg、100〜500mg、200〜500mg、300〜500mg、または400〜500mgの間の総量のグラニセトロンが、単回または複数回用量として患者に投与される。一実施形態では、約450mgが患者に投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、ヒトへの1mgの投薬後に、約440ng/mLを超える、約450ng/mLを超える、約500ng/mLを超える、約550ng/mLを超える、約600ng/mLを超える、約650ng/mLを超える、約700ng/mLを超える、約750ng/mLを超える、約800ng/mLを超える、約850ng/mLを超える、約900ng/mLを超える、約950ng/mLを超える、約1000ng/mLを超える、約1050ng/mLを超える、約1100ng/mLを超える、約1150ng/mLを超える、約1200ng/mLを超える、約1250ng/mLを超える、約1300ng/mL、約1350ng/mL、または約1400ng/mLを超えるCmaxを有する。
【0113】
注射可能なグラニセトロン組成物(例えば、Kytril(登録商標))による比較薬物動態試験において、2.0mgで投与される、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、患者において、10マイクロg/kgで投与される、静脈内グラニセトロンによって示されるCmaxよりも約5%大きい、約10%大きい、約15%大きい、約20%大きい、約30%大きい、約40%大きい、約50%大きい、約60%大きい、約70%大きい、約80%大きい、約90%大きい、約100%大きい、約110%大きい、約120%大きい、約130%大きい、約140%、または約150%大きい、Cmaxを示す。
【0114】
グラニセトロンのうちの少なくとも一部が本発明の遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤の2mgの用量を患者に投与した後、得られたCmaxは、好ましくは、約5.0ng/mLを超える、約8.0ng/mLを超える、約10.0ng/mLを超える、約12.0ng/mLを超える、約15.0ng/mLを超える、約18.0ng/mLを超える、約20.0ng/mLを超える、約22.0ng/mL、または約24.0ng/mLを超える。
【0115】
注射可能なグラニセトロン組成物(例えば、Kytril(登録商標))による比較薬物動態試験において、2.0mgで患者に投与される、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、10マイクロg/kgで投与される、静脈内グラニセトロンによって示されるAUCよりも約5%大きい、約10%大きい、約15%大きい、約20%大きい、約30%大きい、約40%大きい、約50%大きい、約60%大きい、約70%大きい、約80%大きい、約90%大きい、約100%大きい、約110%大きい、約120%大きい、約130%大きい、約140%、または約150%大きいAUCを示す。
【0116】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、本発明のグラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、ヒトへの2.0mgの投薬後に、約5.0ng/mLを超える、約10.0ng/mLを超える、約15.0ng/mLを超える、約20.0ng/mLを超える、約25.0ng/mLを超える、約30.0ng/mLを超える、約35.0ng/mL、または約40ng/mLを超えるCmaxをもたらす。
【0117】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、ヒトへの2.0mgの投薬後に、約90分未満、約80分未満、約60分未満、約50分未満、約40分未満、約30分、または約20分未満のTmaxを有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、ヒトへの2.0mgの投薬後に、少なくとも約4.0時間、少なくとも約5.0時間、少なくとも約6.0時間、少なくとも約7.0時間、少なくとも約8.0時間、少なくとも約9.0時間、少なくとも約10.0時間、少なくとも約11.0時間、少なくとも約12.0時間、少なくとも約13.0時間、または少なくとも約14.0時間のT1/2を有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、グラニセトロンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、グラニセトロンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、ヒトへの2.0mgの投薬後に、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のBAを有する。
【0120】
スマトリプタン製剤
いくつかの実施形態では、6.0mgの用量でアカゲサルに投与される場合にスマトリプタンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、スマトリプタンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、約200ng/mLを超える、約300ng/mLを超える、約400ng/mLを超える、約500ng/mLを超える、約600ng/mLを超える、約700ng/mLを超える、約800ng/mL、または約900ng/mLを超えるCmaxを有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、6.0mgの用量でアカゲサルに投与される場合にスマトリプタンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、スマトリプタンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、約90分未満、約80分未満、約60分未満、約50分未満、約40分未満、約30分、または約20分未満のTmaxを有する。
【0122】
いくつかの実施形態では、6.0mgの用量でアカゲサルに投与される場合にスマトリプタンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、スマトリプタンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、少なくとも約4.0時間、少なくとも約5.0時間、少なくとも約6.0時間、少なくとも約7.0時間、少なくとも約8.0時間、少なくとも約9.0時間、少なくとも約10.0時間、少なくとも約11.0時間、少なくとも約12.0時間、少なくとも約13.0時間、または少なくとも約14.0時間のT1/2を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、6.0mgの用量でアカゲサルに投与される場合にスマトリプタンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、スマトリプタンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のBAを有する。
【0124】
ゾルミトリプタン製剤
いくつかの実施形態では、ゾルミトリプタンが吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤として投与され、ゾルミトリプタンのうちの少なくとも一部は、1、5、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000nM以上の血漿濃度をアカゲサルにおいて達成するのに十分な量で、遊離塩基形態で存在する。いくつかの実施形態では、吸入可能な乾燥粉末製剤は、250nMまたは350nM以上の血漿中濃度を達成するのに十分な量で投与される。ある特定の実施形態では、それは、1〜10nM、1〜100nM、10〜1000nM、50〜500nM、100〜500nM、200〜400nM、200〜1000nM、または500〜1000nMの範囲の血漿濃度を達成するのに十分な量で投与される。
【0125】
いくつかの実施形態では、ゾルミトリプタンが吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤として投与され、ゾルミトリプタンのうちの少なくとも一部は、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも550nM、または少なくとも600nMの血漿濃度を達成するのに十分な量で、遊離塩基形態で存在する。ある特定の実施形態では、ゾルミトリプタンは、少なくとも1、2、4、6、8、10、または12時間にわたって、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nM、少なくとも250nM、少なくとも300nM、少なくとも350nM、少なくとも400nM、少なくとも450nM、少なくとも500nM、少なくとも550nM、または550nMを超える血中濃度を維持するのに十分な量で投与される。
【0126】
いくつかの実施形態では、ゾルミトリプタンが吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤として投与され、ゾルミトリプタンのうちの少なくとも一部は、約0.01mg/kg〜約100mg/kg、約0.1mg/kg〜約50mg/kg、約0.5mg/kg〜約20mg/kg、または約1.0mg/kg〜約10mg/kgの範囲内の量で、遊離塩基形態で存在する。特定の実施形態では、ゾルミトリプタンは、約1mg/kg〜約10mg/kg、約2mg/kg〜約10mg/kg、約4mg/kg〜約8mg/kg、または約6mg/kg〜約8mg/kgの範囲内の量で投与される。一実施形態では、ゾルミトリプタンは、約Xmg/kgで投与される。したがって、特定の実施形態では、約100〜1000mg、100〜500mg、200〜500mg、300〜500mg、または400〜500mgの間の総量のゾルミトリプタンが、一用量として患者に投与される。一実施形態では、約450mgが患者に投与される。
【0127】
いくつかの実施形態では、ゾルミトリプタンのうちの少なくとも一部が遊離塩基形態で存在する、ゾルミトリプタンの吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤は、ヒトへの1mgの投薬後に、約440ng/mLを超える、約450ng/mLを超える、約500ng/mLを超える、約550ng/mLを超える、約600ng/mLを超える、約650ng/mLを超える、約700ng/mLを超える、約750ng/mLを超える、約800ng/mLを超える、約850ng/mLを超える、約900ng/mLを超える、約950ng/mLを超える、約1000ng/mLを超える、約1050ng/mLを超える、約1100ng/mLを超える、約1150ng/mLを超える、約1200ng/mLを超える、約1250ng/mLを超える、約1300ng/mL、約1350ng/mL、または約1400ng/mLを超えるCmaxを有する。
【0128】
他の治療剤
実施例および本文における、本明細書に開示する治療剤に加えて、他の薬剤は、本明細書の組成物の治療構成成分のうちの1つとして調製することができる。薬物の種類の非限定的な例としては、抗生物質、抗真菌薬、サルファ剤、抗結核薬、抗菌剤、抗ウイルス薬、催眠薬、抗てんかん薬、麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬、鎮静剤、精神治療剤、筋弛緩薬、抗アレルギー剤、抗リウマチ薬、強心薬、抗不整脈薬および降圧薬、利尿薬、冠拡張薬、抗認知症薬、脳活性化剤、脳循環改善剤、抗パーキンソン病薬、抗脂質異常症薬、抗潰瘍薬、制吐薬、肥満治療剤、糖尿病薬、止血薬、抗血栓剤、片頭痛薬、鎮咳薬および去痰薬、呼吸刺激薬、喘息薬、止痢薬、非ステロイド性抗炎症薬、痛風治療剤、尿疾患治療剤、性機能改善薬、子宮剤、ステロイド、プロスタグランジン、ビタミン、ヒスタミン、解毒剤、重金属被毒治療剤、禁煙剤、抗アナフィラキシー剤、ならびに抗腫瘍薬が挙げられる。
【0129】
特定の薬物の特定の非限定的な例としては、ペニシリン、カルバペネム、セフェム、アミノグリコシド、マクロライド、テトラサイクリン、およびクロラムフェニコール等の抗生物質;アンホテリシンB、グリセオフルビン、ニスタチン、フルコナゾール、フルシトシン、およびミコナゾール等の抗真菌薬;サラゾスルファピリジンおよびスルファメトキサゾール等のサルファ剤;イソニアジド、エタンブトール、およびリファンピシン等の抗結核薬;エノキサシン、オフロキサシン、シプロフラキサシン、トスフロキサシン、およびノルフロキサシン等の抗菌剤;ビダラビン、アシクロビル、ディダノシン、ジドブジン、オセルタミビル、ザナミビル、およびバルガンシクロビル等の抗ウイルス薬;ブロチゾラム、トリアゾラム、およびゾピクロン等の睡眠補助薬;カルバマゼピン、クロナゼパム、ゾニサミド、バルプロ酸、フェニトイン、フェノバルビタール、およびプリミドン等の抗てんかん薬;モルヒネ、フェンタニル、およびペチジン等の麻薬性鎮痛薬;ブプレノルフィン、ペンタゾシン、および塩酸トラマドール等の非麻薬性鎮痛薬;ミダゾラム等の鎮静剤;クロルプロマジン、ハロペリドール、トリプタノール、イミプラミン、クロミプラミン、エチゾラム、オキサゾラム、およびジアゼパム等の精神治療剤;エペリゾン、チザニジン、バクロフェン、塩化スキサメトニウム、臭化パンクロニウム、およびダントロレン等の筋弛緩薬;クロルフェニラミン、シプロヘプタジン、メキタジン、ジフェンヒドラミン、およびクロモグリク酸ナトリウム等の抗アレルギー剤;オウラノフィン、ブシラミン、およびD−ペニシラミン等の抗リウマチ薬;ジゴキシンおよびジギトキシン等の強心薬;アテノロール、プロプラノロール、メトプロロール、アミオダロン、キニジン、プロカインアミド、メキシレチン、ニカルジピン、エナラプリル、カプトプリル、プラゾシン、ヒドララジン、レセルピン、およびクロニジン等の抗不整脈薬および降圧薬;ヒドロクロロチアジド、カンレノ酸カリウム、スピロノラクトン、マンニトール、アセタゾールアミド、およびフロセミド等の利尿薬;ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、およびジピリダモール等の冠拡張薬;塩酸ドネペジル、ガランタミン、およびメマンチン等の抗認知症薬;シチコリンおよびチアプリド等の脳活性化剤;ATP、イソソルビド、およびニセルゴリン等の脳循環改善剤;トリヘキシフェニジル、ビペリデン、レボドパ、ドーパミン、およびアマンタジン等の抗パーキンソン病薬;クロフィブラートおよびプラバスタチン等の抗脂質異常症薬;シメチジン、ファモチジン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ピレンゼピン、アルジオキサ、ソファルコン、およびテプレノン等の抗腫瘍薬;グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、シサプリド、ドンペリドン、およびメトクロプラミド等の制吐薬;マジンドール等の肥満治療剤;塩酸ピオグリタゾン、ボグリボース、グリクラジド、アカルボース、シグリタゾン、ソルビニル、グリメピリド、エパルレスタット、ガングリオシド、塩酸ミダグリゾール、およびポナルレスタット等の糖尿病薬;カルバゾクロム(cabazochrome)およびトラネキサム酸等の止血薬;ヘパリン、低分子量ヘパリン、ワルファリン、シロスタゾール、チクロピジン、イコサペント酸エチル、およびベラプロスト等の抗血栓剤;エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、およびスマトリプタン等の片頭痛薬;コデイン、チペピジン、デキストロメトルファン、アセチルシステイン、カルボシステイン、およびブロムヘキシン等の鎮咳薬および去痰薬;ジモルホラミン、ドキサプラム、およびナロキソン等の呼吸刺激薬;サルブタモール、テルブタリン、プロカテロール、テオフィリン、エフェドリン、イブジラスト、ケトチフェン、テルフェナジン、トラニラスト、およびベクロメタゾン等の喘息薬;ロペラミド等の止痢薬;メフェナム酸、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、およびジクロフェナク等の非ステロイド性抗炎症薬;アロプリノール、コルヒチン、およびベンズブロマロン等の痛風治療剤;エストラムスチン、クロルマジノン、フラボキセイト、およびオキシブチニン等の尿疾患治療剤;シルデナフィル、バルデナフィル、およびアポモルヒネ等の性機能改善薬;イソクスプリン、ジノプロスト、リトドリン、エストリオール、およびエコナゾール等の子宮作用薬;デキサメタゾン、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、テストステロン、エストラジオール、およびクロルマジノン等のステロイド;アルプロスタジル、リマプロスト、およびジノプロスト等のプロスタグランジン;レチノール、チアミン、リボフラビン、ピリドキサール、コバラミン、およびパントテン酸等のビタミン;ヨウ化メチルプラリドキシム、プロタミン、およびロイコボリン等の解毒剤;ジメルカプロールおよびチオ硫酸ナトリウム等の重金属被毒治療剤;ニコチン等の禁煙補助薬;エピネフリン等の抗アナフィラキシー剤;シクロホスファミド、ダカルバジン、シタラビン、テガフール、5−FU、メトトレキサート、メルカプトプリン、エピルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシン、およびエトポシド、ディダノシン、ジドブジン、ラミブジン、アタザナビル、ネルフィナビル(nelfenavir)、サニルブジン、エムトリシタビン、オセルタミビル、ザナミビル、バルガンシクロビル、アマンタジン、ケタミン、ペントバルビタールナトリウム、リドカイン、エスタゾラム、ミダゾラム、トリアゾラム、ニトラゼパム、フルニトラゼパム、リルマザホン、ゾピクロン、ブロチゾラム、抱水クロラール、カルバマゼピン、クロナゼパム、ゾニサミド、バルプロ酸ナトリウム、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン、ガバペンチン、アヘン、モルヒネ、エチルモルヒネ、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ドロペリドール、レボルファノール、メタドン、メペリジン、ペチジン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、トラマドール、ナルフラフィン、ペンタゾシン、スルピリン、アスピリン、アセトアミノフェン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、スマトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ドネペジル、スキサメトニウム、パンクロニウム、シルデナフィル、バルデナフィル、アポモルヒネ、タダラフィル、アトロピン、スコポラミン、ジギトキシン、ジゴキシン、メチルジゴキシン、イソソルビド、ニトログリセリン、キニジン、ジソピラミド、ドーパミン、ドブタミン、エピネフリン、エチレフリン、ノルエピネフリン、フェニレフリン、ジモルホラミン、ドキサプラム、ナロキソン、フルマゼニル、チペピジン、デキストロメトルファン、アンブロキソール、ブロムヘキシン、サルブタモール、テルブタリン、プロカテロール、テオフィリン、エフェドリン、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェン、オキサトミド、トラニラスト、グラニセトロン、アゼセトロン、ラモセトロン、トロピセトロン、インジセトロン、パロノセトロン、シサプリド、ドンペリドン、メトクロプラミド、トリメブチン、ロペラミド、メフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、ロキソプロフェン、ジクロフェナク、チアプロフェン酸、チアラミド、カルバゾクロムスルホン酸、トラネキサム酸、ヨウ化メチルプラリドキシム、プロタミン、ロイコボリン、ジメルカプロール、デフェロキサミン、およびチオ硫酸ナトリウム等の抗腫瘍薬が挙げられる。
【0130】
担体/製剤技術
担体の種類
本発明の組成物、製剤、および方法の範囲内で、治療剤は、好適な担体または媒体と組み合わせるか、または協調的に投与してもよい。ここで使用される「担体」という用語は、薬学的に許容される個体充填剤、希釈剤、封入および/または担持材料を意味する。担体は通常不活性であり、しばしば、カプセル等の貯蔵容器またはデバイス中に治療剤を分注するための希釈剤として機能する。多くの場合、投与される用量は、例えば、200マイクログラムまたは400マイクログラムと非常に少ない。通常、かかる少量は、それら自体だけで貯蔵容器またはデバイスの中へ正確に分注することができない。薬物を、通常は均一に、大過剰の担体とブレンドすることによって、容器の中へ分注される量は、実質的に増加し、したがって、機械的分注操作を促進する。同様に、担体の使用は、患者への治療剤の投与を促進し、投薬均一性を増加させ、投与デバイス中に留まる治療剤の量を低減する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本組成物および製剤のための薬学的に許容される担体としては、単独で、または組み合わせて存在し得る、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、非生体高分子、生体高分子、単糖類、糖質、ゴム、無機塩、および金属化合物が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体としては、天然型、誘導体化型、修飾型、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0132】
いくつかの実施形態では、有用なタンパク質としては、ゼラチンまたはアルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体としての機能を果たすことができる有用な糖類としては、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、メレジトース、ミオイノシトール、パラチニット、ラフィノース、スタキオース、スクロース、トレハロース、キシリトール、それらの水和物、およびそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0133】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体としての機能を果たすことができる有用な糖質としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、および架橋デンプン等のデンプンが挙げられるがこれらに限定されない。他の実施形態では、薬学的に許容される担体としての機能を果たすことができる有用な糖質としては、セルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、α−セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および酢酸セルロースが挙げられるがこれらに限定されない。
【0134】
別の実施形態では、有用な無機塩または金属化合物としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、シリコン、および亜鉛塩が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルミニウム塩としては、例えば、アルミニウムヒドロキシクロリド、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、および硫酸アルミニウムカリウムが挙げられる。他の実施形態では、カルシウム塩としては、例えば、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、乳酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、第一リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、および硫酸カルシウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、マグネシウム化合物としては、例えば、塩化マグネシウム、アルミン酸ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、およびケイ酸マグネシウムナトリウムが挙げられる。結晶多価金属化合物の形態のさらなる有用な金属化合物は、米国特許第5,603,943号に列挙される。
【0135】
実質的に水不溶性の担体
いくつかの実施形態では、担体は、実質的に水不溶性である。さらなる実施形態では、実質的に水不溶性の担体は、ペプチド、タンパク質、非生体高分子、生体高分子、糖質、ゴム、無機塩、および金属化合物から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、実質的に水不溶性の糖質としては、セルロース、結晶セルロース、および微結晶セルロースが挙げられる。実質的に水不溶性の担体は、水を吸収し、多くの場合、ゲルを形成することができるが、水中のそれらの溶解性は、Xg/l未満である。
【0136】
実質的に水溶性の担体
いくつかの実施形態では、担体は、実質的に水溶性である。さらなる実施形態では、実質的に水溶性の担体は、多糖類、糖類、塩類、ペプチド、タンパク質、糖質、非生体高分子、生体高分子、ゴム、無機塩、および金属化合物から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、実質的に水溶性多糖類は、セルロースである。いくつかの実施形態では、セルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸セルロースである。他の実施形態では、実質的に水溶性の多糖類は、デンプンである。いくつかの実施形態では、実質的に水溶性のデンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋デンプン、アミロース、アミロペクチン、またはペクチン、およびそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、実質的に水溶性の糖としては、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、メレジトース、ミオイノシトール、パラチニット、ラフィノース、スタキオース、スクロース、トレハロース、キシリトール、それらの水和物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0137】
担体のサイズ
通常、担体は、薬物よりも実質的に大きい平均粒度および/または粒度分布を有する。治療剤の小さい粒度は、しばしば、カプセル等の貯蔵容器またはデバイスの中へ装填される時の分注薬剤の充填精度を低下させる、非常に不十分な流動特性を示す。同じ不十分な流動特性はまた、エアロゾル化を妨げ、患者に送達される治療剤の目的とする量に支障を来す。超微粒治療剤を、実質的により大きい中央粒度を有する過剰の担体とブレンドすることによって、組成物の流動特性は、本質的に、担体の特性を決定し、それによって正確な分注および投与に必要とされる取扱適性を改善する。
【0138】
本明細書のいくつかの製剤に対して、担体粒子は、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも2マイクロメートル、少なくとも3マイクロメートル、少なくとも4マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも15マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも60マイクロメートル、少なくとも70マイクロメートル、少なくとも80マイクロメートル、少なくとも90マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも150マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、または少なくとも250マイクロメートルの平均粒度を有する。
【0139】
他の製剤では、担体粒子は、約10マイクロメートル〜約350マイクロメートルの粒度分布範囲を有する。他の実施形態では、粒度範囲は、約10マイクロメートル〜約250マイクロメートル、約10マイクロメートル〜約200マイクロメートル、約10マイクロメートル〜約150マイクロメートル、約10マイクロメートル〜約100マイクロメートル、約20マイクロメートル〜約100マイクロメートル、約20マイクロメートル〜約53マイクロメートル、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートル、または約38マイクロメートル〜約53マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、担体粒子は、約350マイクロメートル未満、約250マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約150マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約53マイクロメートル未満、約38マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約10マイクロメートル、または約5マイクロメートル未満の粒度分布範囲を有する。さらなる実施形態では、担体粒子は、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも38マイクロメートル、少なくとも53マイクロメートル、少なくとも75マイクロメートル、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも150マイクロメートル、または少なくとも200マイクロメートルの粒度分布範囲を有する。他の実施形態では、担体粒子は、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートル、約1マイクロメートル〜約5マイクロメートル、または約2マイクロメートル〜約5マイクロメートルの粒度分布範囲を有する。
【0140】
さらに他の製剤では、担体の2つ以上の平均粒度または粒度分布範囲を、製剤で使用するために組み合わせることができる。例えば、製剤は、約25マイクロメートル未満の粒度範囲を有する一群、および約100マイクロメートル〜約200マイクロメートルの範囲の粒子の別の群を有する、担体粒子を含むことができる。かかる組み合わせは、異なる部位が投与の標的となる製剤で使用することができる(例えば、鼻腔内および経肺投与の両方)。
【0141】
100マイクロメートル未満の粒子を有するような規定範囲の粒子組成はさらに、規定範囲内の部分的範囲を構成する、粒子の百分率組成に基づいて表現することができる。例えば、100マイクロメートル未満の粒子から成る規定された粒子範囲はさらに、規定範囲の10重量%以下を構成する約25マイクロメートル未満の直径の一群、規定範囲の20%〜60重量%を構成する約25マイクロメートル〜約38マイクロメートルの直径を有する第2の粒子の群、規定範囲の20%〜60重量%を構成する約38マイクロメートル〜約53マイクロメートルを超える直径を有する第3の群、および53マイクロメートルを超えるが、100マイクロメートル未満である直径を有する全ての粒子を表す第4の粒子の群から成ると、表現することができる。
【0142】
任意の所与の粒度範囲内で、規定の粒子の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が規定範囲内のサイズを有することができる。例えば、担体または他の構成成分が約20マイクロメートル〜約38マイクロメートルの粒度を有すると規定される場合、担体または構成成分の粒子の少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%がこの範囲内の粒子を有する。
【0143】
いくつかの実施形態では、治療剤および残りの製剤構成成分のいずれかに対する所望の粒度範囲を作成するために、粉砕、製粉、または他の標準的な粒度低下技術が使用される。他の実施形態では、所望のサイズの治療剤は、超臨界流体急速膨張(RESS)、超臨界貧溶媒(SAS)、および粒子ガス飽和溶液からの粒子(PGSS)の等の超臨界流体の使用によって、噴霧乾燥、微粒子化、制御沈殿方法(例えば、国際公開公報第00/38811号および第01/32125号に記載される)によって生成される。本発明は、活性薬剤を吸入による投与に好適なものにする方法に制限を設けない。
【0144】
いくつかの実施形態では、粒度低下技術は、治療剤および他の構成成分に対して別々に実行される。後に、治療剤および他の構成成分は、組成物を生成するように一緒にブレンドまたは混合される。このように、治療剤の粒度が、例えば、担体または賦形剤の粒度よりも大きいまたは小さい組成物または製剤を提供することが可能である。混合粒度の組成物の利点は、治療剤が組成物の他の構成成分とは異なる解剖学的位置に配置される製剤を設計する能力を含む。製剤中に複数の治療剤が存在する場合、この技術の変化形が可能である。それぞれは、その粒度範囲に基づき、異なる解剖学的位置に優先的に配置され得る。例えば、2つの治療剤を有する組成物は、肺が、1〜5マイクロメートルの粒度範囲を有する粒子の使用によって1つの治療剤によって標的される一方で、他の鼻腔は、100〜150マイクロメートルの粒度範囲を有する粒子の使用によって第2の治療剤によって標的され得るように、設計することができる。
【0145】
他の担体特性
いくつかの実施形態では、担体粒子は、接着剤である。すなわち、それらは、担体および担体に付着した任意の取り込まれたまたは結合された治療剤の鼻粘膜への接着を促進する特性を有する。粘膜生体接着剤の非限定的な例としては、エステル化ヒアルロン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、グルタミン酸キトサン、カルボポール934P、ポリエチレンオキシド600K、およびプルロニックF127が挙げられる。
【0146】
かさ密度
かさ密度は、通常g/cmと表現される、比容積を占める粒子の質量を指す。容積は、粒子容積、粒子間空隙容積、および内部細孔容積を含む。かさ密度は、材料の固有特性ではなく、材料がどのように取り扱われるかによって変化し得る。独自に定着する新しく注がれた粉末は、「非タップ」かさ密度を有する。通常は振動によって、かかる粉末が乱されると、粉末粒子は移動し、相互により近づいて定着し、これによって、通常「タップ密度」と称される、より高いかさ密度が得られる。
【0147】
粉末の「非タップ」かさ密度を決定するための標準化技術は、日本薬局方第14版の付録Iの第I部に記載される。より具体的には、密度は、1000マイクロメートルのJIS規格の篩を通して、46mmの内径および110mmの高さ(測定容積、180mL)を有する円筒状容器の中へ、上方から均一に試料を注ぎ、容器の頂部を滑らかな平らにした後、試料を計量することによって決定することができる。
【0148】
非タップかさ密度は、粒度、形状、凝集力等によって変動する。一般的に、非タップかさ密度は、粒子が球状から離れてより不規則な形状をとるにつれて、減少する傾向がある。さらに、粒径がより小さくなるにつれて、粒子自体の重量よりもむしろ粒子間凝集力がより密度に影響を及ぼし、したがって、非タップかさ密度は、より小さくなる傾向がある。いくつかの実施形態では、担体粒子は、約0.05g/cm〜約0.80g/cm、0.10g/cm〜約0.70g/cm、0.13g/cm〜約0.29g/cm、約0.21g/cm〜約0.28g/cm、約0.22〜約0.40g/cm、約0.26g/cm〜約0.48g/cm、約0.35g/cm〜約0.65g/cm、約0.30g/cm〜約0.46g/cm、約0.38g/cm〜約0.43g/cm、または約0.40g/cm〜約0.60g/cmの非タップかさ密度を有する。他の実施形態では、担体粒子は、約0.80g/cm未満、約0.70g/cm未満、約0.60g/cm未満、約0.50g/cm未満、約0.40g/cm未満、約0.30g/cm、または約0.20g/cm未満の非タップかさ密度を有する。なおさらなる実施形態では、担体粒子は、少なくとも0.10g/cm、少なくとも0.20g/cm、少なくとも0.30g/cm、少なくとも0.40g/cm、少なくとも0.50g/cm、少なくとも0.60g/cm、または少なくとも70g/cmの非タップかさ密度を有する。いくつかの実施形態では、担体粒子は、約0.20g/cm、0.21g/cm、0.22g/cm、0.23g/cm、または0.24g/cmの非タップかさ密度を有する。
【0149】
比表面積
比表面積は、質量単位、またはかさ容積当たりの総表面積を測定する個体の材料特性である。それは、表面積割る質量(m/kgの単位)、または表面積割る体積(m/mもしくはm−1の単位)のいずれかによって定義される。
比表面積を測定するための一方法は、固体表面上の気体分子の物理吸着のBET理論による。
日本薬局方第14版第I部は、固定温度(77.35ケルビン)での6時間の予備排気後、粉末表面上に吸着する窒素分子の量から、BET式に基づく、材料の比表面積の計算の方法を記載する。
【0150】
比表面積は、粒度、表面特性、細孔の存在等によって変動する。一般的に、粒径がより小さくなるにつれて、比表面積は、より大きくなる傾向がある。いくつかの実施形態では、比表面積は、約0.4m/g〜約6.0m/g、0.4m/g〜約4.0m/g、0.4m/g〜約2.0m/g、約2.0m/g〜約3.5m/g、0.4m/g〜1.3m/g、0.5m/g〜1.0m/g、0.5m/g〜1.3m/g、または0.7m/g〜1.0m/gの間である。いくつかの実施形態では、粒子の比表面積は、1.3m/g以下、1.0m/g以下、0.80m/g以下、0.70m/g以下、0.60m/g以下、0.50m/g以下、または0.4.0m/g以下である。さらなる実施形態では、粒子の比表面積は、少なくとも0.4.0m/g、少なくとも0.50m/g、少なくとも0.60m/g、少なくとも0.70m/g、少なくとも0.80m/g、少なくとも1.0m/g、または少なくとも1.3m/gである。
【0151】
安息角
安息角は、安定した傾斜の最大角度であり、粒子の摩擦、凝集、および形状によって決定される。バルク顆粒材料が水平面上に注がれる時、円錐形の山が形成される。山の表面と水平面との間の内角は、安息角として知られている。低い安息角を有する材料は、高い安息角を有する材料よりも平らな山を形成する。概して、安息角は、粒径がより小さくなるにつれて増加する傾向がある。安息角は粉末流動性の指標としての役割を果たし、より小さい安息角がより大きい粉末流動性と相関する。
【0152】
安息角を決定するための最も簡単な方法は、山が形成される水平面よりも上方に既知の固定距離でセットした漏斗に試験材料を注ぎ、次いで、水平面に対する山の外面によって形成される角度を測定することである。いくつかの実施形態では、安息角は、約10〜約80度、約20度〜約70度、約30度〜約60度、約30度〜約50度、約35度〜約55度、約35度〜約45度、約40度〜約53度、または約40度〜約50度である。いくつかの実施形態では、安息角は、約80度以下、約70度以下、約60度以下、約55度以下、約50度以下、約45度以下、約40度以下、約35度以下、または約30度以下である。さらなる実施形態では、安息角は、少なくとも30度、少なくとも35度、少なくとも40度、少なくとも45度、少なくとも50度、少なくとも55度、少なくとも60度、または少なくとも70度である。
【0153】
重合度
重合度は、平均高分子鎖中の反復単位または単量体の数である。セルロースを含む糖質の場合、単量体は、糖である。いくつかの実施形態では、高分子担体の平均重合度は、約20〜約600、約20〜約500、約20〜約400、約20〜約300、約20〜約250、または約20〜約200である。他の実施形態では、重合度は、600未満、550未満、500未満、450未満、400未満、350未満、300未満、250未満、200未満、150、または100未満である。さらなる実施形態では、重合度は、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500である。
【0154】
無担体
いくつかの実施形態では、その天然形態、または担体薬剤の付加なしでの加工形態の治療剤を使用することが可能または所望である。かかる組成物および製剤は、「無担体」として知られる。
【0155】
賦形剤
しばしば、治療剤への他の材料の添加が望ましい。担体以外に、吸入に好適な他の不活性材料または材料の組み合わせである「賦形剤」が、組成物または製剤に添加され得る。しばしば、賦形剤は、例えば、治療剤のより効率的かつ再現可能な送達を提供すること、粉末の取扱適性(例えば、流動性および一貫性)、薬剤の安定性を改善すること、ならびに/または単位投与形態の製造および充填を促進することによって、治療剤組成物の特徴を改善する働きをする。特に、賦形剤材料は、治療剤の物理的および化学的安定性をさらに改善し、鼻および/または肺粘膜層への製剤または治療用粒子の付着または結合を助け、かつ粘膜および/または肺胞細胞への治療剤の取り込みを強化し、したがって、治療剤の有効性を増加させる働きをし得る。賦形剤はさらに、残留含水量を最小限に抑える、および/または水分の取り込みを妨げ、粒子凝集を最小限に抑え、粒子表面特性(すなわち、粗度)を修正し、吸入の容易さを増加させ、洞および/または肺への粒子の標的化を改善する働きをし得る。賦形剤はまた、製剤中の治療剤の濃度を低減することが望ましい場合、充填剤としての役割も果たし得る。さらに、賦形剤は、好ましくない匂いおよび/または味に対するマスキング剤としての機能を果たし得る。
【0156】
本発明の組成物および製剤に添加され得る有用な賦形剤としては、流動化剤、滑沢剤、接着剤、界面活性剤、酸性化剤、アルカリ化剤、pH調整剤、抗菌性保存剤、酸化防止剤、帯電防止剤、緩衝剤、キレート剤、保水剤、ゲル形成剤、または湿潤剤が挙げられるがこれらに限定されない。賦形剤はまた、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、および香料、ならびに他のマスキング剤を含む。本発明の組成物および製剤は、担体を使用した、または使用しない、個々の賦形剤を有する、または任意の好適な組み合わせの複数の賦形剤を有する治療剤を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、組成物の流動性を改善するために、鼻腔内用組成物に流動化剤が添加される。典型的には、流動化剤は、組成物が集合および凝集することを防止するのに役立ち、改良された粉末の取り扱いを可能にする。流動化剤の使用は、経鼻投与デバイスの用量投与の一貫性および効率を増大させると共に、カプセル充填の効率および一貫性を増大させ得る。流動化剤の例としては、第三リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム(magnesium sterate)、または米国特許第5,098,907号に開示された無水ケイ酸が挙げられる。流動化剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、第三リン酸カルシウムが使用される。概して、製剤中の第三リン酸カルシウムの割合は、約0.1〜約10(W/W)%に及ぶ。いくつかの実施形態では、流動化作用の増加は、第三リン酸カルシウムが2つ以上のサイズの1つの担体、または随意に、国際出願第PCT/JP2007/074787号に開示されるような異なる材料と組み合わされた時に生じる。
【0157】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウムが挙げられる。pH調整剤としては、例えば、第二リン酸ナトリウム、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムが挙げられる。薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤が挙げられる一方で、油溶性酸化防止剤の例としては、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等が挙げられる。防腐剤の例としては、例えば、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0158】
好適な帯電防止剤は、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびアルキルアリールスルホン酸の脂肪族アミン塩から選択されてもよい。好適な帯電防止剤はまた、国際公開公報第94/04133号に開示される。
【0159】
いくつかの実施形態では、接着剤は、生体接着および/または粘膜接着促進剤である。いくつかの実施形態では、接着剤が担体粒子である一方で、他の実施形態では、接着剤は、担体粒子または治療剤を被覆する。代替として、接着剤は、担体または薬物に結合されていないその遊離状態で、製剤に添加されてもよい。生体接着および/または粘膜接着剤は、治療剤または薬剤の鼻粘膜への付着を増大させる。概して、生体接着および/または粘膜接着促進剤は、水と接触して配置された時に膨張および拡大する。
【0160】
典型的には、生体接着および/または粘膜接着促進剤は、水和させられ高分子の膨張をもたらし得る高分子物質である。概して、高分子の膨張がより速くなるにつれて、生体接着および/または粘膜接着の開始は、より速くなる。有用な生体接着および/または粘膜接着促進剤は、米国特許出願第20060216352号に開示される。
【0161】
緩衝剤の例としては、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムが挙げられる。キレート剤の例としては、クエン酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、およびリン酸が挙げられる。有用な界面活性剤としては、米国特許第6,815,424号に開示されるような胆汁酸界面活性剤、もしくはホスファチジルコリン、例えば、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ヘキサデカノール、脂肪アルコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、界面活性脂肪酸、例えば、パルミチン酸もしくはオレイン酸、または米国特許第5,855,913号に開示されるような他の界面活性剤が挙げられる。
【0162】
本発明のいくつかの実施形態では、薬物吸収を改善するために、吸水性およびゲル形成材料が添加される。典型的には、このゲル形成材料は、単独で、あるいは吸水性であるが非ゲル形成の物質と組み合わせて、担体として使用される。例示的なゲル形成材料としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース誘導体が挙げられる。吸水性およびゲル形成材料ならびにそれらの使用のさらなる開示は、米国特許第6,835,389号において見られる。
【0163】
湿潤剤の代表的な例としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000等のマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、TWEEN(商標))、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、硫酸ドデシルナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
【0164】
有用な甘味剤としては、例えば、D−ソルビトール、カンゾウ、サッカリン、およびステビアが挙げられる。
【0165】
本明細書に記載する粉末組成物および製剤で使用される賦形剤の機能にはかなりの重複があり得ることを理解されたい。したがって、上記に挙げた賦形剤の分類は、本明細書に記載する粉末組成物および製剤に含まれる賦形剤の種類を制限するものではなく、単にその例示的なものとして見なされるべきである。本発明の組成物および製剤での使用に好適な上記分類の薬学的賦形剤および/または添加剤のさらなる例は、U.S.Pharmacopeia National Formulary,1990,pp.1857−1859、ならびにRaymond C.Rowe,et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th ed.,2006、および”Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”21st ed.,2006,editor David B.Troy、およびPhysician’s Desk Reference,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.,1998.において見ることができる。
【0166】
概して、薬学的賦形剤は、存在する場合、約0.01重量%〜約95重量%の量に及ぶ。より典型的には、賦形剤は、組成物の約0.5〜約80重量%、約1.0重量%〜約50重量%、または約5重量%〜約30重量%に及ぶ。
【0167】
治療剤、担体、賦形剤、および他の構成成分は、使用前に製粉、粉砕、噴霧乾燥、または何らかの他の処理ステップを必要とする場合がある。しばしば、必要とされる処理は、治療剤を、所望の中央粒度および/または規定の粒度分布範囲を有する粒子に変換する。いくつかの実施形態では、天然または加工治療剤担体、賦形剤、および他の構成成分は、そのままで、肺内または鼻腔内使用に好適である。他の実施形態では、これらの成分は、所望の、または必要な粒度分布を達成するために、篩い分け等のさらなる処理を必要とする。
【0168】
製剤
いくつかの実施形態では、以下の担体および流動化剤組成物を有する鼻腔内用製剤が使用される。0.1〜10(W/W)%の範囲の第三リン酸カルシウム;5.0〜30(W/W)%で150マイクロメートルの平均粒径を有する第1の結晶セルロース;組成物の残りの部分を構成する、30マイクロメートル以下の平均粒径を有する第2の結晶セルロース。治療剤が当量でその遊離形態として投与される時、これに、流動化剤/担体組成物に対して0.0001〜1.2の重量比の治療剤が添加される。150マイクロメートルの平均粒径を有する有用な結晶セルロースとしては、Asahi Kasei Chemicals(日本)CorporationおよびFMC Corporation(米国)からのCeolus(登録商標)およびAvicel(登録商標)PH−101、PH−102、PH−301、およびPH−302が挙げられる。30マイクロメートル以下の平均粒径を有する有用な結晶セルロースとしては、Ceolus(登録商標)PH−F20JPが挙げられる。
【0169】
あるいは、第1の結晶セルロースは、150マイクロメートル以下の平均粒径を有するデンプンで置き換えることができる。有用なデンプンとしては、コーンスターチ(Merck)が挙げられる。好ましい製剤に関するさらなる情報は、第PCT/JP2007/074787号において見ることができる。
【0170】
薬物
いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物または製剤は、小分子、ペプチド薬、タンパク薬、サイトカイン、ワクチン、アレルゲン、核酸、またはビタミンを含む治療剤を含む。いくつかの実施形態では、小分子としては、例えば、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、ブトルファノール、およびトラマドール等の鎮痛薬;グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、およびインジセトロン等の制吐薬;スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、およびエルゴタミン等の抗片頭痛薬;トリアゾラムおよびメラトニン等の睡眠誘発剤;カルバマゼピン等の抗痙攣剤;ミダゾラム等の鎮静剤;ドネペジル等の抗認知症剤;チアプリド等の脳活性化剤;セファクロル等の抗生物質;エノキサシン等の抗菌剤;アシクロビル、ジドブジン、ディダノシン、ネビラピン、およびインジナビル等の抗ウイルス薬;ダントロレン等の筋弛緩薬;ジゴキシン等の強心薬;トリヘキシフェニジルおよびビペリデン等のパーキンソン病治療剤;デキストロメトルファン等の鎮咳薬および去痰薬;ナロキソン等の呼吸刺激薬;ベタヒスチン等の鎮暈剤;ナファゾリン等の血管緊張剤;ジルチアゼム等の冠拡張薬;トラニラスト等の喘息治療剤;ロペラミド等の下痢止め薬;ジクロフェナク等のNSAID;ベクロメタゾン等のステロイド;クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;シルデナフィルおよびバルデナフィル等の性機能改善薬;フィナステライド等の育毛剤;エピネフリン等の抗アナフィラキシー剤;ならびに5−FU等の抗腫瘍薬が挙げられる。好ましい小分子としては、モルヒネ、グラニセトロン、オンダンセトロン、フェンタニル、オキシコドン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ベクロメタゾン、およびケトチフェンが挙げられる。
【0171】
いくつかの実施形態では、ペプチドおよびタンパク質薬物としては、例えば、インスリン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、カルシトニン、インターフェロン、エリスロポエチン、インターロイキン、PTH(1−84)、PTH(1−34)、PTH関連ペプチド、GLP−1、バソプレシン、リュープロレリン、顆粒球コロニー刺激因子、プロラクチン、ヒト閉経期尿性性腺刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、レプチン、神経成長因子(NGF)、幹細胞成長因子(SCGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、チオレドキシン、シクロスポリン、インフルエンザワクチン、およびそれらの類似体が挙げられる。好ましいペプチドおよびタンパク質薬物としては、インスリン、PTH(1−34)、およびヒト閉経期尿性性腺刺激ホルモンが挙げられる。
【0172】
いくつかの実施形態では、核酸としては、例えば、DNA、RNA;RNAi;siRNA;およびアンチセンスDNAが挙げられる。他の実施形態では、アレルゲンとしては、例えば、花粉、カビ胞子、ラテックス、毛皮、鱗屑、および他の環境要因が挙げられる。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗原は、裸のDNAを含む、病原体からのタンパク質、組み換えタンパク質、ペプチド、多糖類、共役多糖類、糖タンパク質、リポ多糖類、不活化毒素、およびポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、全細胞またはウイルスが抗原として使用される。いくつかの実施形態では、細胞またはウイルスは、不活性化全ウイルス、破壊ウイルス、またはその部分から選択される。細胞としては、細菌、菌類、他の微生物、単細胞性寄生虫、およびそれらの部分が挙げられる。
【0174】
例示的な抗原としては、インフルエンザウイルス抗原(血球凝集素およびノイラミニダーゼ抗原等)、百日咳菌抗原(百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、パータクチン等)、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ヘリコバクターピロリ抗原、狂犬病抗原、ダニ媒介脳炎(TBE)抗原、髄膜炎菌抗原(血清群A、B、C、Y、およびW−135の莢膜多糖類等)、破傷風抗原(破傷風トキソイド等)、ジフテリア抗原(ジフテリアトキソイド等)、肺炎球菌抗原(肺炎連鎖球菌3型莢膜多糖類等)、結核抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原(GP−120、GP−160等)、コレラ抗原(コレラ毒素Bサブユニット等)、ブドウ球菌抗原(ブドウ球菌エンテロトキシンB等)、赤痢菌抗原(赤痢菌多糖類等)、水疱性口内炎ウイルス抗原(水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質等)、サイトメガロウイルス(CMV)抗原、肝炎抗原(A型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV)、およびG型肝炎(HGV)ウイルス抗原等)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原、単純ヘルペス抗原、またはそれらの組み合わせ(例えば、ジフテリア、百日咳、および破傷風(DPT)の組み合わせ)が挙げられるがこれらに限定されない。好適な抗原としてはまた、網膜抗原等、寛容の誘導のために送達されるものが挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態では、免疫反応を刺激することによって、ワクチン組成物の有効性をさらに高めるために、アジュバントがワクチン抗原と同時投与される(例えば、Hibberd et al.,Ann.Intern.Med.,110,955(1989)を参照されたい)。有効であることが示されているアジュバントの例としては、インターフェロンα、肺炎桿菌、糖タンパク質、およびインターロイキン−2が挙げられる。
【0176】
ワクチンは、防御免疫反応を刺激するために有効な量で、患者に投与される。例えば、ワクチンは、1つ以上の用量でヒトに投与されてもよく、各用量は、1〜250マイクログラム、より好ましくは、2〜50マイクログラムの抗原を含有する。例えば、例えば、2×インフルエンザAおよびI×インフルエンザBの3つのウイルス株から、血球凝集素およびノイラミニダーゼ製剤が調製される場合、投与されるウイルスタンパク質の総用量は、15〜150マイクログラムの範囲であってもよい。百日咳菌抗原が採用される場合、個々に、あるいは組み合わせて、FHA、百日咳毒素(トキソイド)、またはパータクチンとして投与される細菌タンパク質の総用量は、5〜150マイクログラムの範囲であってもよい。
【0177】
百分率組成
一般的に、鼻腔内投与のための乾燥粉末組成物は、約0.01重量%〜約99重量%の治療剤を含有する。いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、約0.1重量%〜約95重量%、約0.5重量%〜約90重量%、約1.0重量%〜約80重量%、約2重量%〜約75重量%、約5重量%〜約50重量%、約10重量%〜30重量%の治療剤を含有する。他の実施形態では、乾燥粉末組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、または80重量%の治療剤を含有する。さらなる実施形態では、鼻腔内用粉末剤は、90%、80%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、または10%未満を含有する。百分率組成は、特定の治療剤の重量、および組成物中に含有される担体、賦形剤、または他の添加剤の相対量によって変動する。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療剤が製剤中で混合される。
【0178】
乾燥粉末製剤は、無担体であってもよく、すなわち、1つ以上の治療剤のみを含有してもよいが、より典型的には、製剤は、担体、および所望に応じて、1つ以上の賦形剤と治療剤のブレンドまたは混合物である。粉末製剤は、所望に応じて、単位用量分量に分割および/または別様に処理されてもよく、例えば、単位用量分量に分割され、投与形態または薬物送達システム内に個々に配置されてもよい。製剤の単位用量を含有する任意の投与形態が許容されるが、カプセルおよび単回使用用デバイスが好ましい。カプセル材料は、硬質または軟質のどちらであってもよく、当業者によって理解されるように、典型的には、ゼラチン、デンプン、またはセルロース系材料等の水溶性の化合物を含む。好ましくは、カプセルは、セルロース系材料、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から成る。カプセルは、ゼラチンバンド等で密閉されてもよい。例えば、カプセル化薬剤を調製するための材料および方法を記載する、上記のRemington.The Science and Practice of Pharmacyを参照されたい。多数の空洞(すなわち、単位用量パッケージ)を定量の乾燥粉末薬剤で充填するための方法は、例えば、国際公開公報第97/41031号に記載される。各カプセルまたは単位投与形態は、典型的には、治療有効用量の各治療剤を含有する。代替として、投与形態は、治療有効用量未満を含有してもよく、その場合、治療有効用量を達成するために、2つ以上の投与形態の投与が必要とされる。
【0179】
加えて、粉末製剤は、投与形態または薬物送達デバイスに装填され、使用されるまで単位用量に「量り分け」されなくてもよい。さらに、乾燥粉末製剤は、デバイス、典型的には、使い捨て式または単回使用用デバイスに予め装填されてもよい。
【0180】
通常、乾燥粉末バルクまたは単位投与形態は、周囲条件下で保管され、約25℃以下の温度および約15〜80%に及ぶ相対湿度(RH)で保管されてもよい。約40%未満のRHは、投与形態の二次包装に乾燥剤を使用して達成され得る。
【0181】
本発明の組成物は、約0.001mg/kg/日〜約100mg/kg/日、約0.01mg/kg/日〜約75mg/kg/日、約0.10mg/kg/日〜約50mg/kg/日、または約5mg/kg/日〜約20mg/kg/日の用量で送達される治療剤に特に有用である。
【0182】
鼻腔内薬学的投与
本発明の組成物および製剤は、任意の好適な乾燥粉末吸入器(DPI)、すなわち、鼻孔、類洞空間、および/または肺に乾燥粉末を輸送するための媒体として患者の吸気を利用する吸入器デバイスを使用して、送達されてもよい。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、カプセル、ブリスターパッケージ、またはカートリッジ等のレセプタクルに含有される。典型的には、レセプタクルは、穿刺可能な蓋または他のアクセス表面を有する。いくつかの実施形態では、レセプタクルは、単回投与単位または複数回投与単位を含有してもよい。
【0183】
カプセルを使用する、本明細書に記載する粉末を使用するための好適なデバイスは、例えば、米国特許第3,906,950号、米国特許第4,013,075号、米国特許第7,278,982号、および米国特許第7,353,823号に開示される。
【0184】
いくつかの実施形態では、乾燥粉末吸入器は、使い捨て式および/または単回使用用であるように設計され、乾燥粉末製剤を予め装填される。いくつかの実施形態では、使い捨て式乾燥粉末吸入器の使用は、使用者がカプセルまたはブリスターを破る、または開けるよりもむしろ、製剤を投与することが可能となるように、蓋を折って開ける、または除去することのみを必要とする。
【0185】
乾燥粉末はまた、米国特許第5,320,094号および米国特許第5,672,581号に記載されるように、薬学的に不活性な液体噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボンまたはフッ化炭素中に薬物の溶液または懸濁液を含有する、加圧定量吸入器(MDI)、例えば、Ventolin(商標)定量吸入器を使用して送達されてもよい。
【0186】
適応症
いくつかの実施形態では、治療剤は、疾病、状態、または疾患の症状の発現の前、発現と同時、または発現の後に投与される。他の実施形態では、治療剤は、疾病、状態、もしくは疾患の家族歴を有するか、または疾病、状態、もしくは疾患に対する素因を示す表現型もしくは遺伝子型を有する対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾病、状態、または疾患の症状を緩和、改善、または別様に低減する目的で投与される。他の実施形態では、治療剤は、基礎疾患過程を治癒、制御、または改善する目的で治療的に投与される。さらに他の実施形態では、治療剤は、疾病、状態、または疾患の発生を予防または未然に防ぐ目的で予防的に投与される。いくつかの実施形態では、開示された組成物および製剤はまた、治療される状態に対するそれらの治療的価値に対して選択される、他の治療剤を含有してもよい。
【0187】
味の低減
概して、薬物の塩形態は、しばしば、苦い性質の、好ましくない味を有する。経肺投与では、患者は通常、口から薬学的製剤を吸入し、これは舌の直接的または間接的曝露につながる。鼻腔内投与では、舌の薬物曝露は通常、間接的である。薬物の塩形態の好ましくない味は、不快であり、患者がそれらの薬剤を服用するのを消極的にさせる可能性があるか、または患者が服用を飛ばすか、もしくは治療を早期に停止する、服薬不履行をもたらす可能性さえある。
【0188】
対照的に、遊離塩基薬物の薬学的製剤の経肺または鼻腔内投与は、概して、かかる製剤が通常、不快感を与えるほどの味がしないため、患者にとってはるかに良好に受け入れられる。いくつかの実施形態では、遊離塩基薬物組成物は、無味であるか、または実質的に認識できる味を有しない。他の実施形態では、遊離塩基薬物組成物は、わずかに認識できる味を有してもよい。いくつかの実施形態では、遊離塩基薬物組成物の認識できる味の度合いは、薬物組成物の塩形態の味の約1/2、1/3、1/4、1/5、1/10、1/20、1/50、1/100、1/500、または1/1000未満である。
【0189】
遊離塩基薬物組成物中に存在し得るわずかな味は、添加された香味料、香料、甘味料、および/または他のマスキング剤でより容易にマスクされ得る。いくつかの実施形態では、好ましくない味をマスクするために必要とされる香味料および/または香料の量は、薬物組成物の塩形態と比較して低減される。いくつかの実施形態では、好ましくない味をマスクするために必要とされる香味料および/または香料の低減は、薬物組成物の塩形態における好ましくない味をマスクするために必要とされる量の約1/2、1/3、1/4、1/5、1/10、1/20、1/50、1/100、1/500、または1/1000未満である。
【0190】
好ましくない味の存在の欠如もしくは低減、または好ましくない味を効果的にマスクする能力の結果として、患者がそれらの薬剤の定期的な服用に逆らわなくなり、患者の服薬不履行を低減または防止し得る。
【0191】
薬物の塩形態および遊離塩基形態の混合物もまた、塩形態と比較して、実質的に低減された味を有し得る。好ましくない味の強度は、塩形態対遊離塩基形態の比によって左右され得、概して、塩対遊離塩基の比がより高くなるにつれて、好ましくない味の強度は、より大きくなる。場合によっては、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100、1:500、または1:1000の塩対遊離塩基の比を有する鼻腔内用薬学的製剤は、100%の塩形態の治療剤を有する鼻腔内用薬学的製剤と比較して、低減された好ましくない味の度合いを有し得る。
【0192】
好ましくない味の存在および度合いは、試験者の舌上に、標準総モル量の薬物を有するが塩対遊離塩基の比を変動させた組成物を配置することによって、定量化することができる。
【0193】
キット/製造物品
本明細書に記載する治療組成物の使用のために、キットおよび製造物品もまた本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、かかるキットは、1つ以上のブリスターパック、ボトル、チューブ、カプセル等を受容するようにコンパートメント化される、担体、パッケージ、または容器を含む。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に提供する化合物を含有する1つ以上の単位投与形態を含有する、パックまたはディスペンサデバイス中に提供される。他の実施形態では、パックは、ブリスターパック等の金属またはプラスチックホイルを含有する。いくつかの実施形態では、パックは、カプセル、バイアル、またはチューブを含有する。他の実施形態では、パックまたはディスペンサデバイスは、投与説明書が添付される。いくつかの実施形態では、ディスペンサが使い捨て式または単回使用用である一方で、他の実施形態では、ディスペンサは、再利用可能である。ある特定の実施形態では、薬学的製剤は、デバイスの中に予め装填される。
【0194】
さらに他の実施形態では、パックまたはディスペンサは、薬剤の製造、使用、または販売を規制する行政機関によって要求されるように、通知が添付される。この通知は、薬物がヒトまたは動物投与に関して機関によって承認されていることを示す。かかる通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局によって承認されているラベリング、または承認された製品挿入物である。また、相溶性薬学的担体中で調合される、本明細書に提供する化合物を含有する組成物が調製され、適切な容器中に配置され、指示された状態の治療に関してラベル付けされる。
【0195】
本明細書に提供する製造物品はまた、投与または分注デバイスを含有してもよい。投与デバイスの例としては、経肺吸入器および鼻腔内アプリケータが挙げられる。ポンプが吸入器および鼻腔内デバイスと共に提供されてもよく、またはポンプは、デバイスに組み込まれてもよい。代替として、噴射剤がデバイスと共に含まれてもよく、またはそれは、デバイス内に保管されてもよい。
【0196】
かかるキットは、随意に、容器に対する識別記述またはラベルを含む。さらなる実施形態では、ラベルは、容器表面にあり、文字、数字、または他の記号がラベルを形成し、容器自体に添付、成形、またはエッチングされる;ラベルは、例えば、添付文書として、容器も保持するレセプタクルまたは担体内に存在する時、容器と関連付けられる。いくつかの実施形態では、ラベルは、内容物が特定の治療用途で使用されることを示すために使用される。さらに他の実施形態では、ラベルはまた、本明細書に記載する方法等における、内容物の使用法を示す。いくつかの実施形態では、一式の説明書もまた、概して、添付文書の形態で含まれてもよい。情報材料は、治療され得る患者の種類の説明、スケジュール(例えば、用量および頻度)等を含む、薬学的組成物の投薬方法に関する説明書を含有してもよい。
【0197】
吸入可能な乾燥粉末組成物を開発するための方法
改良された薬物動態プロファイルを有する吸入可能な乾燥粉末組成物は、多くの方法によって開発することができる。一実施形態では、複数の吸入可能な乾燥粉末薬学的組成物は、動物、具体的には、哺乳動物、より具体的には、霊長類で試験される。概して、薬学的組成物は、その組成が同じであるが、通常は治療剤の化学的または物理的パラメータの1つ、2つ、または3つが異なる。典型的には、研究されるパラメータは、遊離塩基の割合、遊離塩基または塩粒子のサイズを含む。一定モル量の治療剤が試験組成物の全てに存在するべきである。
【0198】
試験対象から特定の時点において連続的に採血され、薬物または関連代謝産物の濃度が決定される。次いで、Cmax、Tmax、T1/2、およびBAを含む組成物の薬物動態プロファイルが計算および比較される。データから、組成物の化学的または物理的パラメータは、顕著な傾向または特徴をさらに調査するために変更することができる。例えば、他の点では同一の組成物において、50マイクロメートルの平均粒度を有する遊離塩基薬物の組成物が、薬物の塩形態で見られるCmaxの80%であるCmaxを有する場合、次の研究に関して、Cmaxがさらに増加するかどうかを確認するために、20マイクロメートルの平均粒度の遊離塩基薬物を有する組成物を試験することができる。このようにして、所望の薬物動態プロファイルを達成するように、組成物をさらに改良することができる。
【実施例】
【0199】
本発明の実施は、特に指定がない限り、当該技術分野の技術の範囲内である薬学的製剤等の従来の技術を採用する。かかる技術は、文献において十分に説明されている。本明細書に提供される実施例および本明細書で使用される例示的な用語は、単に例示目的であり、本発明の範囲を制限することを目的としていない。本発明に好適な化合物または分子のリスト等の実施例のリストが提供される時、リストの化合物または分子の混合物もまた好適であることが、当業者に明らかとなるであろう。
【0200】
以下の実施例において、使用される数値(例えば、量、温度等)に対して正確さを確保するように努力してきたが、何らかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。特に指定のない限り、温度は、摂氏温度であり、圧力は、大気圧またはほぼ大気圧である。全ての試薬は、特に指定がない限り、商業的に入手した。
【0201】
実施例1
スマトリプタン研究(サル研究)
スマトリプタン薬物動態−経口投与と液体鼻腔用スプレーとの間の比較
スマトリプタンの薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。一方の群、n=6には、50mg/動物で錠剤形態のスマトリプタン(IMGRAN(登録商標))を投与した一方で、他方の群、n=6には、20mg/動物で鼻腔用スプレーとしてスマトリプタン(IMGRAN(登録商標))を投与した。固体投与形態を投与したサルから、投与の10、20、30、60、120、240、および480分後に血液を採取した。鼻腔用スプレーで治療されたサルに関しては、治療の5、10、20、30、60、120、240、および480分後に血液を採取した。両方の群に対して血漿スマトリプタン濃度を測定し、次いで、データを処理し、群に対する薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図2)。経口投与は、120分のTmax、80ng/mLのCmax、のT1/2、およびのAUCをもたらした。鼻腔内投与は、120分のTmax、48分のCmax、104分のT1/2、および11,063ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0202】
スマトリプタン薬物動態−コハク酸塩としてスマトリプタンを含む、皮下注射と、液体鼻腔用スプレーと、鼻腔内用乾燥粉末との間の比較
スマトリプタンの薬物動態をアカゲサルの3つの群で研究した。1つの群、n=2には、0.67mg/kg、1.8mg/動物で、皮下注射によってコハク酸スマトリプタンを投与した。第2の群、n=2には、20mg/動物で鼻腔用スプレーとしてスマトリプタン(IMGRAN(登録商標))を投与した。第3の群、n=2には、6mg/動物で乾燥粉末としてコハク酸スマトリプタンを投与した。コハク酸スマトリプタンの粒度は、<15マイクロメートルであった。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。全ての群に対して血漿スマトリプタン濃度を決定し、次いで、データを処理し、群に対する薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図2)。
【0203】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:コハク酸塩対遊離塩基
スマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。1つの群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用コハク酸スマトリプタンを投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第2の群、n=2には、6mg/動物で鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。スマトリプタン遊離塩基の粒度は、<15マイクロメートルであった。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。両方の群に対して血漿スマトリプタン濃度を決定し、次いで、データを処理し、投与群に対する薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図3)。鼻腔内用コハク酸スマトリプタンは、7.5分のTmax、696ng/mLのCmax、114のT1/2、および2632ng:分/mLのAUCをもたらした。鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、612ng/mLのCmax、119分のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0204】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:薬物動態に対する遊離塩基粒度の効果
スマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。1つの群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第2の群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する50%の遊離塩基および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する50%の遊離塩基の混合物として、鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。両方の群に対して血漿スマトリプタン濃度を決定し、次いで、データを処理し、投与群に対する薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図4)。<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、696ng/mLのCmax、114のT1/2、および2632ng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの50%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの50%の粒子を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.6分のTmax、373ng/mLのCmax、119分のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0205】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:粒度の小さなコハク酸塩/遊離塩基の効果
<15マイクロメートルの粒度を有するスマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態を、アカゲサルの3つの群で研究した。1つの群、n=2には、6mg/動物の用量で鼻腔内用コハク酸スマトリプタンを投与した。第2の群、n=2には、6mg/動物の用量で鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。第3の群には、50%のコハク酸スマトリプタンおよび50%のスマトリプタン遊離塩基の混合物を投与した。総用量は、6mg/動物であった。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。血漿スマトリプタン濃度を全ての群に対して決定し、次いで、データを処理し、薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図5)。鼻腔内用コハク酸スマトリプタンは、7.5分のTmax、696ng/mLのCmax、114のT1/2、および2632ng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの100%の粒子を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、612ng/mLのCmax、119分のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの50%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの50%の粒子を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.6分のTmax、373ng/mLのCmax、119分のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0206】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:薬物動態に対するコハク酸塩粒度の効果
スマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。1つの群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用コハク酸スマトリプタンを投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第2の群、n=2には、38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用コハク酸スマトリプタンを投与した。投与用量は、6mg/動物であった。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。両方の群に対して血漿スマトリプタン濃度を決定し、次いで、データを処理し、薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図6)。<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用コハク酸スマトリプタンは、7.5分のTmax、696ng/mLのCmax、114のT1/2、および2632ng:分/mLのAUCをもたらした。38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用コハク酸スマトリプタンは、15分のTmax、426ng/mLのCmax、119分のT1/2、および39863ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0207】
粒度の差は、コハク酸塩の溶解速度に有意な影響を及ぼさないため、2つの群の薬物動態間で有意な差はなかった。
【0208】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:薬物動態に対する遊離塩基粒度の効果
スマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。1つの群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第2の群、n=2には、38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。両方の群に対して血漿スマトリプタン濃度を決定し、次いで、データを処理し、薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図7)。<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、612ng/mLのCmax、119のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、345ng/mLのCmax、104分のT1/2、および2865ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0209】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:薬物動態に対する異なるサイズの遊離塩基粒子の混合物の効果
スマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの3つの群で研究した。1つの群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第2の群、n=3には、<15マイクロメートルの50%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の50%の粒子の混合物として、鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第3の群、n=2には、<15マイクロメートルの20%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の80%の粒子の混合物として、鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。血漿スマトリプタン濃度を全ての群に対して決定し、次いで、データを処理し、薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図8)。<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、612ng/mLのCmax、119のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの50%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の50%の粒子の混合物を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、345ng/mLのCmax、104分のT1/2、および2865ng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの20%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の80%の粒子の混合物を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、345ng/mLのCmax、104分のT1/2、および2865ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0210】
38マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲の粒子の割合が増加するにつれて、観察されたCmaxは、減少した。
【0211】
スマトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:薬物動態に対する同一サイズのコハク酸塩および遊離塩基粒子の混合物の効果
スマトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの3つの群で研究した。1つの群、n=2には、38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用コハク酸スマトリプタンを投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第2の群、n=2には、38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、6mg/動物であった。第3の群、n=1には、38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する20%のコハク酸塩および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する80%の遊離塩基の混合物として、鼻腔内用スマトリプタンを投与した。投与の5、10、20、30、60、120、および240分後に血液を採取した。血漿スマトリプタン濃度を全ての群に対して決定し、次いで、データを処理し、薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図9)。鼻腔内用コハク酸スマトリプタンは、7.5分のTmax、612ng/mLのCmax、119のT1/2、および1827ng:分/mLのAUCをもたらした。鼻腔内用スマトリプタン遊離塩基は、7.5分のTmax、362ng/mLのCmax、178分のT1/2、および2287ng:分/mLのAUCをもたらした。20%のコハク酸塩および80%の遊離塩基の混合物を有する鼻腔内用スマトリプタンは、7.5分のTmax、345ng/mLのCmax、104分のT1/2、および2865ng:分/mLのAUCをもたらした。
【0212】
経鼻スマトリプタン吸収への粒度および塩/遊離塩基形態の影響の要約
遊離塩基を含有した、試験された製剤の中で、<15マイクロメートルの粒度の粒子を有する100%の遊離塩基を有する製剤が、最高のCmaxを有した。この製剤のCmaxは、<15マイクロメートルである粒子を有する100%のコハク酸塩を有する製剤で得られたものに相当する。遊離塩基粒子のサイズが増加するにつれて、Cmaxは、減少する(図10)。
【0213】
実施例2
ゾルミトリプタン研究(サル研究)
ゾルミトリプタン薬物動態−遊離塩基ゾルミトリプタンを含む液体鼻腔用スプレーと鼻腔内用乾燥粉末との間の比較
ゾルミトリプタン液体鼻腔用スプレーおよび乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。1つの群、n=2には、ゾルミトリプタンの鼻腔用スプレー(Zomig(登録商標)、水性緩衝液中5mg/100μL)を投与した。第2の群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用ゾルミトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、5mg/動物であった。投与の10、20、30、60、120、240、および480分後(Zomig)、または投与の5、10、20、30、60、120、240、および480分後(乾燥粉末)に血液を採取した。血漿ゾルミトリプタンの濃度を両方の群に対して決定し、次いで、データを処理し、投与群に対する薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図11)。鼻腔用スプレーは、120分のTmax、ng/mLのCmax、のT1/2、およびng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用ゾルミトリプタン遊離塩基は、10分のTmax、ng/mLのCmax、のT1/2、およびng:分/mLのAUCをもたらした。
【0214】
遊離塩基ゾルミトリプタン乾燥粉末は、液体スプレーと比較して、有意に増加したCmaxおよびBAを有した。
【0215】
ゾルミトリプタン薬物動態−鼻腔内用乾燥粉末製剤間の比較:薬物動態に対する異なるサイズの遊離塩基粒子の混合物の効果
ゾルミトリプタン乾燥粉末製剤の薬物動態をアカゲサルの2つの群で研究した。1つの群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用ゾルミトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、5mg/動物であった。第2の群、n=2には、<15マイクロメートルの粒度を有する50%の遊離塩基および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの粒度を有する50%の遊離塩基の混合物として、鼻腔内用ゾルミトリプタン遊離塩基を投与した。投与用量は、5mg/動物であった。投与の5、10、20、30、60、120、240、および480分後に血液を採取した。血漿ゾルミトリプタン濃度を両方の群に対して決定し、次いで、データを処理し、投与群に対する薬物動態パラメータを計算し、血漿濃度対時間曲線のグラフを作成した(図12)。<15マイクロメートルの粒度を有する鼻腔内用ゾルミトリプタン遊離塩基は、10分のTmax、ng/mLのCmax、のT1/2、およびng:分/mLのAUCをもたらした。<15マイクロメートルの50%の粒子および38マイクロメートル〜100マイクロメートルの50%の粒子を有する鼻腔内用ゾルミトリプタン遊離塩基は、20分のTmax、ng/mLのCmax、分のT1/2、およびng:分/mLのAUCをもたらした。
【0216】
より大きいサイズの遊離塩基粒子の包含は、Cmaxを低下させ、BAを増加させる。
【0217】
実施例3.
味覚アッセイ
本アッセイは、乾燥粉末遊離塩基製剤ならびに塩および遊離塩基の乾燥粉末混合物が、塩形態のみを含む同等量の製剤の乾燥粉末または液体製剤と比較して大幅に低減された不快な味を有することを示すことを目的とする。
【0218】
ボランティアは、年齢、健康、薬剤使用、アルコール消費、妊娠、喫煙、アレルギー、歯科衛生、および味覚障害等の研究の選定および除外パラメータに対して識別およびスクリーニングされる。研究手順、薬物毒性、および関連リスクに関する情報を受け取った後、インフォームドコンセントを得る。
【0219】
ボランティアは、味覚評価の正確な実施を理解するように、かつ彼らの個人的な味の好みを無視するように訓練される。トレーニングセッションは、試料適用法、試料および試料スケールの試飲、強度のランク付け方法、ならびに試料の正確な吐出の指導を含む。ボランティアは、味覚評価者になる前に、基本的な感覚トレーニング試験に合格する必要がある。
【0220】
味覚評価のために、標準溶液が脱イオン化水で新たに調製される。甘味、塩味、酸味、および苦味の4つの基本的な味が、スクロース、NaCl、酒石酸、およびキニーネのそれぞれの溶液を使用して評価される。カフェインもまた、苦味に使用することができる。各基本的な味に対して標準希釈液が作製される。キニーネに対して、0.01mM、0.03mM、0.10mM、0.30mM、および1.00mMの濃度の塩酸塩が使用され、0、1、2、3、および4の苦味スコアのランキングと関連付けられる(Ishizaka et al.,2004、Nakamura et al.,2003、Ogawa et al.,2004、Uchida et al.,2001)。全ての溶液は、室温で提供される。脱イオン化水がブランク刺激剤および洗浄剤として使用される。
【0221】
所望に応じて、存在する薬物の量によってのみ異なる規定の製剤レシピを使用して、薬物の塩形態の乾燥粉末標準が調製される。随意に、製剤は、鼻腔内用製剤である。典型的には、存在する薬物の量は、試料間で5倍異なる。例えば、薬物、グラニセトロンでは、4つの用量にわたる範囲は、0.01mg、0.05mg、0.25mg、および1.25mgであるが、試料間で任意の倍数または数列を使用することができる。加えて、乾燥粉末試験製剤を比較する前に、乾燥粉末標準は、標準化液体製剤と同程度の感覚、例えば、苦味を客観的にもたらす、塩形態の所与の量の薬物を関連付けるか、または滴定するために、液体標準、特に苦味標準と比較することができる。試験薬物を欠いた乾燥粉末製剤は、ブランクとしての機能を果たす。
【0222】
遊離塩基および塩混合物の乾燥粉末試験製剤は、薬物の総遊離塩基当量を一定に保持する一方で、試験薬物の遊離塩基対塩形態の比を変化させる規定の製剤レシピを使用して作製される。1つの試験製剤は、遊離塩基のみを含有する。
【0223】
ボランティアは、試験日に濃い味の食べ物を避けることが要求される。彼らはまた、試験後1時間以内に何も食べないこと、および試験の終了までいかなる他の食べ物または飲み物の摂取も控えることが要求される。試験前、ボランティアは、脱イオン化水で数回ゆすぎ、吐出する。彼らはまた、試料間にもゆすぐことが要求される。必要に応じて、前の試料からの残った味を中和するのに役立つように、塩味のクラッカーが提供される。ボランティアは、使い捨て式ピペットを使用してボランティアの舌上に少量、2〜5mLの標準溶液を配置することによって、味覚標準を再熟知する。試料は、基準の期間にわたってボランティアの口内に保持される。味覚標準は、濃度が増加する方法で適用される。再熟知中、試験対象は、味覚(甘味、塩味、酸味、および苦味)および強度(0、1、2、3、および4)を伝えられる。再熟知後、乾燥粉末製剤の試験が開始される。
【0224】
乾燥粉末製剤は、一定容積の粉末を提供するように、小型スパチュラを使用して、ボランティアの舌に適用される。乾燥粉末は、舌の外側半分に配置される。ボランティアは、ランダムな順序で乾燥粉末製剤を味見する。彼らの口の中で適切な時間が経過した後、ボランティアは、標準溶液のものに対する味覚特性および強度をランク付けし、粉末製剤と同等の味を有する標準溶液を選択するように求められる。(Ishizaka et al.,2004;Katsuragi et al.,1997)。ランク付けを確認するために、ボランティアは、彼らが最も緊密に一致すると信じている液体味覚標準の試料を受け取ることを要求することができる。彼らの口を洗浄し、必要に応じて、前の試験試料の味を中和するように塩味のクラッカーを食べた後、新しい乾燥粉末試料が試験のために提供される。
【0225】
標準と同一のランクを有する試験製剤は、同等と分類される。乾燥粉末標準よりも1単位低いランクを有する試験製剤が低下した味を有すると分類される一方で、2単位低いランクを有する試験製剤は、はるかに低下した味を有すると分類される。標準よりも3単位低いランクを有する試験製剤は、実質的に無味と分類される。アッセイされた試験の全くない試験製剤は、無味と分類される。
【0226】
臭気試料に対して、ランク付け中の嗅覚入力を除去するために、ボランティアに鼻栓が提供される。ボランティアはまた、乾燥粉末投与後の後味、渋味、およびしびれに関して質問することができる。
【0227】
所望に応じて、試験製剤は、乾燥粉末標準と直接比較される。標準と同一のランクを有する試験製剤は、同等と分類される。乾燥粉末標準よりも1単位低いランクを有する試験製剤が低下した味を有すると分類される一方で、2単位低いランクを有する試験製剤は、はるかに低下した味を有すると分類される。乾燥粉末標準よりも3単位低いランクを有する試験製剤は、実質的に無味と分類される。アッセイされた試験の全くない試験製剤は、無味と分類される。
【0228】
製剤の味認識を比較するための代替方法として、乾燥粉末製剤は、液体標準の味を参照することなく、相互との関連で試験される。薬物の塩形態のみを含む乾燥粉末製剤は、遊離塩基のみを含む製剤または遊離塩基および塩混合物製剤と比較される。全ての試験製剤は、遊離塩基として測定される時の薬物の当量を有する。当量の各製剤がボランティアの舌上に置かれ、適切な時間が経過した後、彼らは、彼らの知覚を記録するように求められる。当量の1つの遊離塩基薬物の全ての試料が試験された後、ボランティアは、最も味がないのが0、および最も味があるのが4で、試料を相互に対してランク付けするよう求められる。味はさらに、苦味または塩味等の古典的に定義された味に基づき定義することができる。代替として、味のランク付けは、不快感の度合いに基づく。所望に応じて、ボランティアは、各試料の味を説明するように求められる。
【0229】
それぞれが1.25mgの遊離塩基当量のグラニセトロンを含有する、3つの乾燥粉末製剤が調製される。1つの試料は、塩酸塩としてグラニセトロンを含有する。第2の試料は、遊離塩基としてグラニセトロンを含有する。第3の試料は、20%のグラニセトロン塩酸塩および80%のグラニセトロン遊離塩基の混合物として、グラニセトロンを含有する。
【0230】
ボランティアは、連続的に、ランダムな順序で彼らの舌上に0.5cmの各粉末製剤を投与される。投与後1分後、彼らは、彼らの主観的知覚経験を記録するように求められる。2分後、ボランティアは、内容物を吐出することによって彼らの口をきれいにし、脱イオン化水で3回ゆすぐ。5分後、および10分後に再び、彼らは、全ての後味の存在および強度を記録するように求められる。
【0231】
次いで、ボランティアは、次の試験試料を投与される前に、塩味のクラッカーを食べ、脱イオン化水で彼らの口をゆすぐ。全ての試料が試験された後、ボランティアは、試験試料を2つの様式でランク付けするように求められる:1)最も弱い味〜最も強い味、および2)最も不快感の少ない味〜最も不快感の大きい味。
【0232】
ボランティアは、グラニセトロン塩酸塩が最も強い味がし、非常に苦く、不快であることに気付く。20%のグラニセトロン塩酸塩および80%のグラニセトロン遊離塩基の混合物は、中程度の味、苦味を有するが、明らかな不快感は有しないことが分かる。グラニセトロン遊離塩基製剤は、ほとんど知覚できる味を有しないことが分かる。知覚された味の強度に対する3つの試料のランキングは、グラニセトロン遊離塩基<20%のグラニセトロン塩酸塩、および80%のグラニセトロン遊離塩基<<グラニセトロン塩酸塩である。同様に、知覚された不快感は、グラニセトロン遊離塩基<20%のグラニセトロン塩酸塩、および80%のグラニセトロン遊離塩基<<グラニセトロン塩酸塩である。
【0233】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され記載されてきたが、かかる実施形態は、単に例示目的で提供されていることが当業者には明らかとなるであろう。ここで、当業者は、本発明から逸脱することなく、多くの変更、変化、および置き換えを思い浮かぶであろう。本明細書に記載する本発明の実施形態への様々な代替手段が本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、かつ当該特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの同等物は、その対象であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、前記治療剤は、約5マイクロメートル〜約250マイクロメートルの間の粒度分布を有する粒子を含む、薬学的製剤。
【請求項2】
前記治療剤の塩形態をさらに含む、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項3】
前記治療剤は、約15マイクロメートル〜約200マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項4】
前記治療剤は、約20マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項5】
前記治療剤は、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
前記治療剤は、約53マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項7】
担体をさらに含む、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項8】
前記担体は、実質的に水溶性である、請求項7に記載の薬学的製剤。
【請求項9】
前記担体は、多糖類、糖類、塩類、高分子、ゴム、タンパク質、および糖質から成る群より選択される、請求項8に記載の実質的に水溶性の担体。
【請求項10】
前記担体は、実質的に水不溶性である、請求項7に記載の薬学的製剤。
【請求項11】
前記担体は、多糖類、高分子、糖質、塩類、およびタンパク質から成る群より選択される、請求項10に記載の実質的に水不溶性の担体。
【請求項12】
前記担体は、生体接着剤である、請求項7に記載の薬学的製剤。
【請求項13】
前記多糖類は、天然型、誘導体化型、および/または修飾型の該多糖類を含む、請求項9に記載の薬学的製剤。
【請求項14】
前記多糖類は、デンプンである、請求項9に記載の薬学的製剤。
【請求項15】
前記デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋デンプン、アミロース、アミロペクチン、およびペクチンから成る群より選択される、請求項14に記載の薬学的製剤。
【請求項16】
前記糖類は、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マンニトール、メレジトース、ミオイノシトール、パラチニット、ラフィノース、スタキオース、スクロース、トレハロース、キシリトール、それらの水和物、またはそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の薬学的製剤。
【請求項17】
前記多糖類は、セルロースである、請求項9に記載の薬学的製剤。
【請求項18】
前記セルロースは、結晶セルロース、セルロース、α−セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから成る群より選択される、請求項17に記載の薬学的製剤。
【請求項19】
前記結晶セルロースは、約5〜250マイクロメートルの粒径範囲を有する、請求項18に記載の薬学的製剤。
【請求項20】
前記結晶セルロースは、0.60g/cm未満のかさ密度を有する、請求項18に記載の薬学的製剤。
【請求項21】
前記結晶セルロースは、約20〜約250の平均重合度を有する、請求項18に記載の薬学的製剤。
【請求項22】
追加的治療剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項23】
前記追加的治療剤は、該追加的治療剤の塩、該追加的治療剤の遊離塩基、またはそれらの混合物である、請求項22に記載の薬学的製剤。
【請求項24】
流動化剤、滑沢剤、界面活性剤、酸性化剤、アルカリ化剤、抗菌性保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、錯化剤、可溶化剤、保水剤、または湿潤剤をさらに含む、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項25】
前記流動化剤は、第三リン酸カルシウムを含む、請求項24に記載の薬学的製剤。
【請求項26】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、その少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該製剤は、約0〜約5の間の水−オクタノールLogD7.4を有する、薬学的製剤。
【請求項27】
約1〜約4の間の水−オクタノールLogD7.4を有する、請求項26に記載の薬学的製剤。
【請求項28】
約2〜約4の間の水−オクタノールLogD7.4を有する、請求項26に記載の薬学的製剤。
【請求項29】
約2〜約4の間の水−オクタノールLogD7.4を有し、前記治療剤の塩および遊離塩基の形態は個別に、2未満の、または4を超える水−オクタノールLogD7.4を含む、請求項26に記載の薬学的製剤。
【請求項30】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、その少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該製剤は、約0〜約5の間の水−オクタノールLogPを有する、薬学的製剤。
【請求項31】
約1〜約4の間の水−オクタノールLogPを有する、請求項30に記載の薬学的製剤。
【請求項32】
約2〜約4の間の水−オクタノールLogPを有する、請求項30に記載の薬学的製剤。
【請求項33】
約2〜約4の間の水−オクタノールLogPを有し、前記治療剤の塩および遊離塩基の形態は個別に、2未満の、または4を超える水−オクタノールLogPを含む、請求項30に記載の薬学的製剤。
【請求項34】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、該治療剤は、モル基準で1:2以上である塩形態対遊離塩基形態の比で存在する、薬学的製剤。
【請求項35】
前記治療剤は、モル基準で1:5以上である塩形態対遊離塩基形態の比で存在する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項36】
前記治療剤は、モル基準で1:10以上である塩形態対遊離塩基形態の比で存在する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項37】
前記治療剤の前記遊離塩基形態は、約5マイクロメートル〜約250マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項38】
前記治療剤の前記遊離塩基形態は、約15マイクロメートル〜約200マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項39】
前記治療剤の前記遊離塩基形態は、約20マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項40】
前記治療剤の前記遊離塩基形態は、約38マイクロメートル〜約100マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項41】
前記治療剤の前記遊離塩基形態は、約53マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の粒度分布を有する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項42】
前記治療剤の前記遊離塩基形態は、約100マイクロメートルを超える粒度分布を有する、請求項34に記載の薬学的製剤。
【請求項43】
治療剤を含む薬学的製剤であって、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、ヒトへの鼻腔内投与の後の味プロファイルは、該治療剤が同一モル量で塩形態として存在しかつ他の点では同一である薬学的製剤の味プロファイルと比較して、苦味または不快感が実質的に少ない、薬学的製剤。
【請求項44】
請求項1に記載の薬学的製剤を含有する、単位投与形態。
【請求項45】
カプセルの形態である、請求項44に記載の単位投与形態。
【請求項46】
前記カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルである、請求項45に記載の投与形態。
【請求項47】
鼻腔内投与デバイスの形態である、請求項1に記載の単位投与形態。
【請求項48】
前記鼻腔内投与デバイスは、使い捨て式である、請求項47に記載の投与形態。
【請求項49】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該薬学的製剤中の該治療剤の最高血中治療濃度(Cmax)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも60%のCmaxである、薬学的製剤。
【請求項50】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のCmaxと比較して、少なくとも80%であるCmaxを有する、請求項49に記載の薬学的製剤。
【請求項51】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のCmaxと比較して、少なくとも90%であるCmaxを有する、請求項49に記載の薬学的製剤。
【請求項52】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のCmaxと比較して、少なくとも95%であるCmaxを有する、請求項49に記載の薬学的製剤。
【請求項53】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のCmaxと比較して、少なくとも110%であるCmaxを有する、請求項49に記載の薬学的製剤。
【請求項54】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のCmaxと比較して、少なくとも125であるCmaxを有する、請求項49に記載の薬学的製剤。
【請求項55】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のCmaxと比較して、少なくとも150%であるCmaxを有する、請求項49に記載の薬学的製剤。
【請求項56】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該薬学的製剤中の該治療剤のCmaxの1/2の血中濃度に到達する時間(T1/2)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも60%のT1/2である、薬学的製剤。
【請求項57】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、前記T1/2の少なくとも80%であるT1/2を有する、請求項56に記載の薬学的製剤。
【請求項58】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、前記T1/2の少なくとも90%であるT1/2を有する、請求項56に記載の薬学的製剤。
【請求項59】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、前記T1/2の少なくとも95%であるT1/2を有する、請求項56に記載の薬学的製剤。
【請求項60】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、前記T1/2の少なくとも110%であるT1/2を有する、請求項56に記載の薬学的製剤。
【請求項61】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、前記T1/2の少なくとも125%であるT1/2を有する、請求項56に記載の薬学的製剤。
【請求項62】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、前記T1/2の少なくとも150%であるT1/2を有する、請求項56に記載の薬学的製剤。
【請求項63】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該薬学的製剤中の該治療剤の血中濃度Cmaxに到達する時間(Tmax)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも60%のTmaxである、薬学的製剤。
【請求項64】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤の少なくとも80%であるTmaxを有する、請求項63に記載の薬学的製剤。
【請求項65】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも90%であるTmaxを有する、請求項63に記載の薬学的製剤。
【請求項66】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも95%であるTmaxを有する、請求項63に記載の薬学的製剤。
【請求項67】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも110%であるTmaxを有する、請求項63に記載の薬学的製剤。
【請求項68】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも125%であるTmaxを有する、請求項63に記載の薬学的製剤。
【請求項69】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも150%であるTmaxを有する、請求項63に記載の薬学的製剤。
【請求項70】
治療剤を含む吸入可能な乾燥粉末薬学的製剤であって、該治療剤のうちの少なくとも一部は遊離塩基形態で存在し、該薬学的製剤中の該治療剤のバイオアベイラビリティ(BA)は、霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤と比較して、少なくとも60%のBAである、薬学的製剤。
【請求項71】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のBAと比較して、少なくとも80%であるBAを有する、請求項70に記載の薬学的製剤。
【請求項72】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のBAと比較して、少なくとも90%であるBAを有する、請求項70に記載の薬学的製剤。
【請求項73】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のBAと比較して、少なくとも95%であるBAを有する、請求項70に記載の薬学的製剤。
【請求項74】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のBAと比較して、少なくとも110%であるBAを有する、請求項70に記載の薬学的製剤。
【請求項75】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のBAと比較して、少なくとも125%であるBAを有する、請求項70に記載の薬学的製剤。
【請求項76】
霊長類に投与される場合に他の点では同一の薬学的製剤中に同一モル量で100%の塩形態で存在する時の該治療剤のBAと比較して、少なくとも150%であるBAを有する、請求項70に記載の薬学的製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−526726(P2012−526726A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548484(P2011−548484)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/JP2010/003285
【国際公開番号】WO2010/131486
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(393030626)株式会社新日本科学 (5)
【Fターム(参考)】