説明

薬物含有粒子および該粒子を含む固形製剤

下記の成分を造粒して得られる薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子;
(1)不快な味を有する薬物、
(2)メチルセルロース及び
(3)マンニトール、
並びに該粒子を含有する固形製剤を提供する。本発明によれば、薬物の苦味の低減を図ることができ、さらに、該粒子を含む製剤を服用した際には不快な味のマスキング及び消化管内での速溶性を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物含有粒子および該粒子を含む固形製剤に関するものである。具体的には、不快な味を有する薬物の口腔内での不快な味を低減させた薬物含有粒子、および該粒子を含む固形製剤であって、当該薬物の不快な味を実質的に感じず、且つ消化管内において溶出性のよい製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品に含まれる薬物には、苦味、渋味、辛味のごとき服用時に不快感を伴う成分が多い。薬物がこのような不快な味を伴う場合、患者が該薬物を含む医薬品を服用することは非常に困難である。そこで、薬物自体の不快な味を製剤中において遮蔽させることが製剤上の大きな課題となっている。この課題を解決するために、即ち、服用時の薬物の不快な味をマスキングするために、従来から、甘味料や香料等を添加する方法が用いられているが、十分な苦味マスキングのためには甘味料の量を増加させる必要がある場合があった。また、水不溶性高分子基剤、たとえばエチルセルロース等を利用して薬物自体または薬物を含む顆粒等をコーティングする方法も行われているが、この方法では、不快な味を有する薬物の味を抑えようとすればするほど、コーティング量が増大し、その結果、消化管内に移行した際の薬物の放出量にも影響を与え、十分な薬物放出が得られないという問題がある。
【0003】
例えば、口腔内速崩壊錠においては、口腔内での崩壊性及び消化管内における溶出性に優れた錠剤を生産することが望まれている。しかし、不快な味を呈する薬物を含有する口腔内速崩壊錠においては、口腔内での速やかな崩壊性という条件と口腔内での不快な味を低減するという条件とを担保することは相反することであり、さらに、口腔内での不快な味を低減するという条件と消化管内での優れた溶出性という条件を担保することも相反することであり、これら条件を同時に解決することは容易でなかった。
【0004】
発明者らは種々検討する過程において、予め薬物を他の成分と粒子化することおよび粒子化する際に水溶性高分子を用いることに注目した。これまで薬物を造粒して得られる粒子(または顆粒)を製剤に配合することは知られており、例えば、特許文献1においては、「薬物および糖類を含有してなる口腔内速崩壊錠において苦味を有する薬物および/または流動性の劣る薬物と、製剤用担体とからなる、噴霧乾燥されてなる、平均粒子径約50〜約250μm、かつ見掛け比重約0.5〜約1.2の薬物含有粒子を配合することを特徴とする口腔内速崩壊錠」を開示している。ここにおいて、製剤用担体としては、水不溶性高分子、胃溶性高分子、腸溶性高分子、ワックス状物質および糖類が例示されており、具体的には水不溶性高分子を用いた実施例が開示されている。このように、該公報では、エチルセルロースのような水不溶性高分子を含む薬物含有粒子の形をとることにより苦味マスキングが可能であることを開示している。また、同公報中、「本発明において、苦味を有さない薬物では流動性を改善すればよく、その場合、上記水不溶性高分子、胃溶性高分子、腸溶性高分子等の高分子物質、あるいはワックス状物質等の他、水溶性高分子、糖類等を上記担体として用いることができる。かかる担体としては、水溶性高分子としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。」と開示している。これはとりもなおさず、苦味を有する薬物と水溶性高分子を含有した薬物含有粒子を製造しても、苦味マスキングできないことを示唆するものである。
【0005】
また、例えば、特許文献2では、「(1)(a)薬物が水溶性高分子マトリックス又はワックスマトリックス中に包含される顆粒、及び/又は(b)薬物含有顆粒を水溶性高分子または水不溶性高分子皮膜により被覆した顆粒と、(2)賦形剤を混合し、(3)溶媒を加えて練合し、(4)鋳型に入れ成形した錠剤」を開示している。その中で、水溶性高分子として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールが例示されている。しかしながら、該公報における顆粒は、水中または胃腸管内において薬物を徐々に放出させるものであり、本課題とは相反する作用を有するものである。
【0006】
また、特許文献3は、易服用性放出制御型製剤の製造に有用な薬物を含有する球形微粒子の製造方法を開示するものであり、具体的には「溶媒を保持する性質を有する賦形剤粉末及び薬物粉末を含む混合物に、結合剤の溶液を添加し、高速転動造粒することを特徴とする該薬物を含有する平均粒子径200μm以下の球形微粒子の製法」を開示している。該公報中、溶媒保持性賦形剤として、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類や、種々のデンプン類を例示している。しかしながら、該公報は、薬物の有する苦味のマスキングには何らの開示も示唆もなく、以下に述べる本発明、即ち、不快な味を有する薬物、メチルセルロースおよびマンニトールとの組み合わせについてはなんら開示していない。
【0007】
また、特許文献4には、「難溶性薬剤を界面活性剤及び/又は水溶性高分子と共に有機溶媒又は含水有機溶媒に溶解させた後に、賦形剤にコーティング又は賦形剤と共に造粒して得られた成型物に糖類を混合し、有機溶媒、水又は含水有機溶媒を加えて練合後、圧縮成型してなる口腔内速崩壊性錠剤の製造方法」が開示されている。しかしながら、該公報は難溶性の薬剤の溶出性を改善するものであり、苦味マスキングについては何らの記載もない。また、実施例においても界面活性剤を使用する場合のみ開示するものであり、水溶性高分子を用いる場合については開示されていない。更に、本発明のような不快な味を有する薬物、メチルセルロースおよびマンニトールとの組み合わせについてはなんら開示していない。
【特許文献1】国際公開WO2002/002083号公報
【特許文献2】特開2001−039861号公報
【特許文献3】国際公開WO2000/024379号公報
【特許文献4】特開2000−191518号公報
【特許文献5】米国特許第4,870,074号公報
【特許文献6】国際公開WO2004/066913号公報
【特許文献7】特開平11−349475号公報
【特許文献8】米国特許第6,413,541号公報
【特許文献9】特開昭56−164122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、不快な味を有する薬物を含有する固形製剤において、従来は不快な味を有する薬物の不快な味のマスキングおよび消化管内での速溶性を実現することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況において、本発明者らは、水溶性高分子の中でも、これまで一般的に徐放化基剤や被覆剤として用いられていたメチルセルロースと特定の糖アルコールとを用いて薬物含有粒子を調製することによって、口腔内での薬物の苦味の低減を図ることができ、さらに、該粒子を含む製剤を服用した際には消化管内での速溶性と不快な味のマスキングを同時に実現することができることを見いだし、上記課題を解決することに成功し、本発明を完成した。さらに、口腔内で速崩壊する製剤においては、口腔内での早期の崩壊も可能であって且つ口腔内での薬物の苦味の低減を図ることができるという効果を有することを見いだした。
本発明は下記の各種の態様の発明を提供するものである。
【0010】
1. 下記の成分を混合し粒子化した薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子:
(1)不快な味を有する薬物、
(2)メチルセルロースおよび
(3)マンニトール。
【0011】
2. 不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.05〜約10重量部程度の割合で含む上記1記載の薬物含有粒子。
【0012】
3. 不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.15〜約7重量部程度の割合で含む上記1記載の薬物含有粒子。
【0013】
4. 不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.8〜約5重量部程度の割合で含む上記1記載の薬物含有粒子。
【0014】
5. メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.3〜約50重量部程度の割合で含む上記1〜4のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0015】
6. メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.5〜約12重量部程度の割合で含む上記1〜4のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0016】
7. メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.7〜約7.5重量部程度の割合で含む上記1〜4のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0017】
8. マンニトールがD−マンニトールである上記1〜7のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0018】
9. 不快な味を有する薬物が、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその生理学的に許容される塩である上記1〜8のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【0019】
10. (1)(±)−4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドのクエン酸塩2水和物、
(2)メチルセルロースおよび
(3)D−マンニトール
を混合し粒子化した上記1に記載の薬物含有粒子であって、
(±)−4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドのクエン酸塩 1重量部に対してメチルセルロースを約0.15〜約7重量部程度、メチルセルロース1重量部に対してD−マンニトールを約0.5〜約12重量部程度の割合で含む薬物含有粒子。
【0020】
11. 上記1〜10のいずれかに記載の薬物含有粒子と他の製剤化成分を含む固形製剤。
【0021】
12. 固形製剤が錠剤状製剤または粒状製剤である上記11に記載の固形製剤。
【0022】
13. 錠剤状製剤が錠剤または丸剤である上記12に記載の固形製剤。
【0023】
14. 粒状製剤が、顆粒剤、細粒剤または散剤である上記12に記載の固形製剤。
【0024】
15. 固形製剤が口腔内速崩壊製剤である上記11〜14のいずれかに記載の固形製剤。
【0025】
16. 口腔内速崩壊製剤が錠剤である上記15に記載の固形製剤。
【0026】
17. 口腔内速崩壊製剤が粒状製剤である上記15に記載の固形製剤。
【0027】
18. 次の特性を備えることを特徴とする上記15〜17のいずれかに記載の口腔内速崩壊製剤:
(i)本製剤を健常成人の舌のうえに置き、閉口のまま噛まない状態において40秒以内に崩壊し、
(ii)日本薬局方第14改正に記載の溶出試験(錠剤においては第2法(50回転/分)、粒状製剤においては第1法(50回転/分)、溶媒:水900ml)において、15分後の溶出率が実質的に85%以上であり、
(iii)本製剤を口に含むとき、実質的に不快な味を感じない。
【0028】
19. 上記15に記載の口腔内速崩壊製剤を製造するための組成物であって、不快な味を有する薬物、メチルセルロース及びマンニトールを混合し粒状化した不快な味を低減した薬物含有粒子、賦形剤、並びに崩壊剤を含有する組成物。
【0029】
20. (1)不快な味を有する薬物、(2)メチルセルロースおよび(3)マンニトールを混合し、水または含水溶媒を用いて粒子化することを特徴とする薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子の製造方法。
【0030】
21. 不快な味を有する薬物として4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその生理学的に許容される塩を含む上記11に記載の固形製剤及び当該固形製剤に関する記載物を含む商業パッケージであって、当該固形製剤を消化管運動機能促進、胃切除後症状の改善又は胃食道逆流症(GERD)の予防若しくは治療に使用することができる又は使用すべきである旨の記載を、該パッケージ上又は該パッケージ内の記載物に含む商業パッケージ。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1の各錠剤の溶出試験の結果を示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本請求の範囲及び本明細書において「平均粒子径」は、特にことわらない限り、例えばシンパテック(SYMPATEC)社のレーザー回折式粒度測定器[ヘロスアンドロドス(HELOS&RODOS)]で測定された値で表される。
【0033】
本請求の範囲及び本明細書における「薬物1重量部あたり」とは、一般的に薬剤として採用されている「医薬活性成分」の形態を基準とするものである。すなわち、塩の形態をとっている薬物の場合には、その塩の1重量部を基準とする。但し、薬物が結晶水を有する場合は、当該結晶水相当量を減じた量を1重量部とする。
【0034】
本発明の薬物含有粒子は、本質的には
下記成分:
(1)不快な味を有する薬物、
(2)メチルセルロース及び
(3)マンニトール
を混合し粒子化した薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子であり、以下に各成分について説明する。
【0035】
(1)不快な味を有する薬物
本発明に用いられる「不快な味を有する薬物」としては、医薬活性成分として疾患の治療や予防に供されるものであり、苦味、渋味、辛味のごとき不快な味を有するものであれば、特に制限されない。かかる薬物としては、解熱鎮痛消炎剤、キノロン系抗菌剤、抗生物質、抗ガン剤、胃腸薬、止しゃ剤、抗うつ剤、抗てんかん剤、降圧剤等が挙げられる。例えば、以下に示すクエン酸モサプリド、硫酸キニーネ、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、カフェイン、エテンザミド、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩化ベルベリン、アクリノール、ゾニサミド、塩酸ロペラミド、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、アラセプリル、クラリスロマイシンなどが例示できる。上述のごとく、本薬物は、塩フリーのものであってもよいし、塩の形態であってもよい。さらに、それらの水和物であってもよい。
特に、本発明は、不快な味を有する薬物として次式で表される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔〔4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル〕メチル〕ベンズアミドまたはその生理学的に許容される塩に適用されるのが好ましい。該化合物(またはその酸付加塩或いはこれらの水和物)は選択的セロトニン4受容体アゴニストであり、良好な消化管運動促進作用を示す(特許文献5)。該化合物は、例えば、特許文献5に記載の方法またはこれに準じる方法によって製造することができる。また、該化合物は逆流性食道炎、胃切除後症候群、その他の消化器症状の治療薬としても有用である。
【0036】
【化1】

上記化合物のラセミ体(以下、「モサプリド」ということがある。)のクエン酸塩・2水和物は、慢性胃炎に伴う消化器症状の改善を目的として既に実用化され、クエン酸モサプリド(無水物)として2.5mgまたは5mg(モサプリドとして1.72mgまたは3.44mg)含有する錠剤が、日本では「ガスモチン」なる商標名のもとに市販されている。この錠剤は、モサプリドが苦味を有する薬物であることから、フィルムコーティング錠の形態をとっている。
【0037】
モサプリドを含有する他の固形製剤として、特許文献5の実施例245には、クエン酸モサプリド、コーンスターチ、乳糖、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸及びステアリン酸マグネシウムを含有する固形製剤が開示されている。
【0038】
また、特許文献6には、実質的に軽質無水ケイ酸を含まず、モサプリド又はその塩を含有する、フィルムコーティングを含まない固形製剤(但し、口腔内崩壊錠は除く)を開示している。
【0039】
一方、クエン酸モサプリドを含む口腔内速崩壊錠として、特許文献7には、非晶質乳糖含有低圧成形された錠剤を相対湿度約60%〜約90%の湿度下に放置し、非晶質乳糖を結晶乳糖に変換させることを特徴とするクエン酸モサプリドの口腔内速崩壊錠の製造方法が開示されている。更に、特許文献8には、(a)水に対する溶解度が高い糖類の少なくとも一種と水溶性結合剤の少なくとも一種を水単独又は水とアルコール類からなる混合物に溶解させる工程、(b)上記工程(a)で得られる溶液に少なくとも一種の賦形剤を混合し、造粒、乾燥した後、低圧で打錠する工程、(c)上記工程(b)で得られる錠剤をエージングする工程からなり、工程(b)において薬物を造粒前又は打錠前に混合することを特徴とするクエン酸モサプリドの口腔内速崩壊錠の製造方法が開示されている。
【0040】
しかしながら、いずれの公報もクエン酸モサプリドを含有する粒子について何ら記載がない。
【0041】
この4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドは、ラセミ体であっても、又は一方の光学活性体であってもよいが、ラセミ体(即ち「モサプリド」)が好適である。また、モサプリドはフリー体であってもよいし、その生理学的に許容される塩であってもよい。塩としては好ましくは酸付加塩がよい。たとえば有機酸の付加塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。この中でも特にクエン酸塩が好ましい。さらに、モサプリドまたはその生理学的に許容される塩は、溶媒和物であってもよく、水和物および非水和物であってもよい。好ましくはクエン酸塩の水和物がよく、とりわけクエン酸塩・2水和物が好ましい。
【0042】
(2)メチルセルロース
本発明の薬物含有粒子に配合される「メチルセルロース」はマンニトールとの特定の組み合わせによって不快な味のマスキング機能を有する。これまで、下記公報に記載のごとく、メチルセルロースは不快な味をマスクするには適当でないと考えられていた。即ち、例えば、特許文献9では、メチルセルロースでは苦味のマスキングができなかったことを開示している(特許文献9中参考処方C)。また、特許文献1でも、上述のごとく、苦味を有する薬物に対しては水溶性高分子で造粒しても苦味を低減できないことを開示している。
【0043】
本発明においては、多々ある水溶性高分子の中でもメチルセルロースをマンニトールと併用することにより所望の効果が得られることを見いだした。言い換えれば、公知の造粒に用いられている他の水溶性高分子、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどでは、所望の効果が得られず、メチルセルロースを用いることにより所望の効果が達成できた(下記、比較例参照)。
【0044】
メチルセルロースの配合量としては、通常、薬物1重量部に対して、約0.05〜約10重量部程度、好ましくは、約0.15〜約7重量部程度、より好ましくは約0.8〜約5重量部程度がよい。
【0045】
(3)マンニトール
本発明の薬物含有粒子における必須成分の一つは、マンニトールである。メチルセルロースとの組み合わせにおいて所望の効果が得られる糖または糖アルコールとしては、上記のマンニトールである。言い換えれば、他の糖または糖アルコールでは所望の効果が確認できず、マンニトールを用いることによって始めて達成できた(下記比較例参照)。マンニトールとしては、好ましくはD−マンニトールである。
【0046】
マンニトールの配合量は、メチルセルロース1重量部あたり、約0.3〜約50重量部程度、好ましくは、約0.5〜約12重量部程度、より好ましくは、約0.7〜約7.5重量部程度になるように配合するのが好ましい。
【0047】
薬物含有粒子
当該粒子は、上記(1)〜(3)の各成分を混合し粒子化したものである。具体的には、例えば、上記(1)〜(3)の各成分を混合し、水や含水溶媒を加えて粒子化することによって得られる粒子である。該方法には、各成分を混合した後、水や含水溶媒を加えて粒子化することや、メチルセルロースの一部を水に溶解させ、それを混合物に加えて粒子化することも含まれる。さらに、該方法には、各成分を混合した後、本発明の効果に影響を与えない範囲において他の通常の結合剤を含んだ水または含水溶媒を加えて粒子化することも含まれる。粒子化する方法としては、例えば、攪拌造粒法(agitation granulation method)、押出し造粒法(extrusion granulation method)、流動層造粒法(fluidized bed granulation method)、乾式造粒法(dry granulation method)などの慣用の造粒法に従って製造することができる。
【0048】
薬物含有粒子の平均粒子径は約500μm程度以下が好ましく、例えば、約5〜約500μm程度、好ましくは、約10〜約400μm程度、より好ましくは約10〜約300μm程度である。その平均粒子径は、不快な味のマスキング効果と共に、服用感や溶出性も考慮して適宜粒子の大きさを決定することができる。
【0049】
本発明においては、不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.05〜約10重量部程度配合した薬物含有粒子がよい。好ましくは、不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.15〜約7重量部程度配合した薬物含有粒子がよい。更に好ましくは、不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.8〜約5重量部程度配合した薬物含有粒子がよい。
【0050】
また、メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.3〜約50重量部程度配合した薬物含有粒子がよい。好ましくは、メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.5〜約12重量部程度配合した薬物含有粒子がよい。更に、好ましくは、メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.7〜約7.5重量部程度配合した薬物含有粒子がよい。
【0051】
本発明における「薬物含有粒子」においては、薬物のまわりにメチルセルロースが完全に被膜されている状態ではなく、薬物もその粒子表面にも存在する。このようにして得られた薬物含有粒子は、薬物自体が有する不快な味を低減させている。
【0052】
本発明の薬物含有粒子は、更に矯味剤、流動化剤、安定化剤、界面活性剤、崩壊剤、着色剤等を該粒子内に配合してもよい。これら成分の具体例は、以下の固形製剤の欄において例示したものが使用できる。
【0053】
本発明の固形製剤
本発明の薬物含有粒子を用いて、固形製剤を製造することができる。適用できる剤型としては、例えば、錠剤状製剤または粒状製剤が例示できる。錠剤状製剤としては、錠剤や丸剤が、粒状製剤としては、顆粒剤、細粒剤または散剤が例示できる。また、固形製剤は、口腔内速崩壊製剤であってもよく、これには錠剤(口腔内速崩壊錠)や粒状製剤(口腔内速崩壊顆粒や口腔内速崩壊散)が含まれる。
【0054】
本発明の固形製剤には、通常、薬物含有粒子に加えて、特に支障のない限り、固形医薬製剤の製造に用いられる薬学的に許容される製剤化成分を配合され、このような「製剤化成分」としては、配合しても不都合がなく、且つ、配合の必要性があるものならばいずれでもよく、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等が挙げられる。
【0055】
賦形剤の例としては、たとえば、乳糖、ショ糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、エリスリトール、トレハロース、無水リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウムなどが例示できる。また、結合剤としては、アラビアゴム、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、ゼラチン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0056】
また、滑沢剤として、例えば、ステアリン酸やステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸金属塩、タルク、コロイドシリカ、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、硬化油、ポリエチレングリコールなど、崩壊剤として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプンなどが用いられる。
【0057】
また、必要に応じて、安定化剤(エデト酸ナトリウム、トコフェロール、L−アスコルビン酸、L−システイン、亜硫酸塩など)、流動化剤(軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、など)、防腐剤、着色剤(食用色素、三二酸化鉄、カルミンなど)、香料(ストロベリーを含む種々の果実香料並びにヨーグルト、ミント、メントールなど)、矯味剤等を加えてもよい。
【0058】
矯味剤としては、ネオテーム、ソーマチン(タウマチン)、アスパルテーム、ステビア、サッカリンナトリウム、グルタミン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは単品で使用してもよいが、二種または数種の併用であってもよい。例えば、矯味の発現の速いものと矯味の発現の遅いものを併用してもよい。矯味の発現の速いいものとしては、ネオテーム、グルタミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム等が挙げられ、矯味の発現の遅いものとしては、ソーマチン、ステビア等が挙げられる。
【0059】
本発明の固形製剤は、製剤分野において慣用の方法を用いて製造することができる。例えば本発明の薬物含有粒子に上述のような諸成分を均一に混合したのち、その混合物を公知手段で製剤化することができる。例えば錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤などの経口投与に適した各種固形製剤に製剤化することができる。例えば、錠剤の場合は、薬物含有粒子と賦形剤、崩壊剤等を加え、混合し、結合剤を加えて造粒を行って顆粒とし、これに滑沢剤を加えて打錠して錠剤とすることができる。又は、薬物含有粒子と賦形剤及び崩壊剤等の製剤化成分を、混合機を用いて混合し、これを打錠してもよいし、製剤化成分の混合物を造粒したのち薬物含有粒子を混合し、これを打錠してもよい。
また、顆粒剤においても錠剤とほぼ同様な方法の流動層造粒を行なうか、攪拌造粒を行うことにより製造することができる。散剤等も同様な方法で製造できる。
【0060】
本発明においては、薬物含有粒子を口腔内速崩壊製剤に適用することもできる。本発明における「口腔内速崩壊製剤」とは、製剤を服用するために水を摂取することなく、口腔内で主として唾液により40秒以内に崩壊する製剤を意味し、通常、40秒以内、好ましくは35秒以内で崩壊する。口腔内速崩壊錠においては、通常滑沢剤を含有するが、錠剤内部に滑沢剤を含有させてもよいし、錠剤表面に滑沢剤を局在させた形態のものであってもよい。錠剤表面に滑沢剤を局在させた形態のものである場合、具体的には、本発明の薬物含有粒子に他の製剤化成分、例えば、上記記載の適当な賦形剤や崩壊剤等を混合し、滑沢剤を杵及び臼に付着させた打錠機により、当該混合物を打錠することにより製造できる。
【0061】
ここにおいて、「滑沢剤を杵及び臼に付着」させることは、手動で行ってもよいが、機械的に行うのがよい。このような方法は「外部滑沢打錠法」と呼ばれている。上記外部滑沢打錠法を可能とする手段や装置としては、例えば、特開2001−205493号公報及び特開2001−293599号公報に記載の外部滑沢剤供給手段や装置及び外部滑沢剤回収手段が挙げられる。具体的には、薬物含有粒子、賦形剤、崩壊剤、必要に応じてその他の製剤化成分からなる粉体を打錠する際に、成形された錠剤において、滑沢剤が0.01〜0.5重量%の含量となるように、あらかじめ滑沢剤を連続的に杵及び臼に噴霧して付着させ、錠剤成形に利用されなかった余剰の滑沢剤を連続的に回収するような外部滑沢剤供給装置及び外部滑沢剤回収装置を装着した打錠機により連続的に錠剤に成形する。
【0062】
かくして得られる本発明の固形製剤は、口腔内で薬物に由来する不快な味を感じさせることなく、消化管内での溶出性もよく、日本薬局方第14改正に記載の溶出試験(37℃、溶媒:水900ml、錠剤状製剤においては第2法(50回転/分)粒状製剤においては第1法(50回転/分))において、15分後の溶出率が実質的に約85%以上である。なお、溶出試験における溶出率は、採取した試験液を通常用いられる定量法、例えば吸光度測定法、液体クロマトグラフ法などにより求めることができる。
【0063】
また、本発明の固形製剤は、該製剤に関する情報を記載した記載物とともに包装され、流通する。記載物はパッケージ上であってもよいし、パッケージ内に指示書として含めてもよい。ここにおいて、「固形製剤に関する情報」としては、例えば、薬物が、(±)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔〔4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル〕メチル〕ベンズアミド、またはその生理学的に許容される塩の場合には、消化管運動機能促進、胃切除後症状の改善又は胃食道逆流症(GERD)の予防若しくは治療に使用することができる又は使用すべきであるといった情報が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下の実施例において、口腔内速崩壊錠を製造する場合は、外部滑沢剤供給機能及び回収機能を有する外部滑沢噴霧システム(菊水製作所製、ELS−P1)を備えた回転式打錠機(菊水製作所製、コレクト19K型)にて製造し、噴霧しても利用されない余剰のステアリン酸マグネシウムは連続的に回収する。また、1錠全重量に対するステアリン酸マグネシウム量は、製造した錠剤を原子発光分析法でマグネシウム量を測定することにより求める。
【0065】
尚、表1中、クエン酸モサプリド・2水和物とは、(±)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド クエン酸塩・2水和物であって、大日本製薬(株)のものを使用する(平均粒子径約3μm)。
【0066】
メチルセルロースは、信越化学工業のメトローズSM−25(粘度25.3mm/s(20℃における2%水溶液粘度(日本薬局方)))を使用し、D−マンニトールは、ロケット社(ROQUETTE)のMANNITOL60(平均粒子径60μm)を用いる。
【0067】
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、信越化学工業のLH−21(平均粒子径37μm、ゆるめ嵩密度0.34g/ml、固め嵩密度0.60g/ml、ヒドロキシプロポキシル基含量10.9重量%)を使用する。
【0068】
ソーマチンは、三栄源エフ・エフ・アイのサンスイートTを使用し、グルタミン酸ナトリウムは味の素株式会社のものを使用する。
【0069】
メントールは、三栄源エフ・エフ・アイのサンフィックスメントールNo.25206を使用し、ステアリン酸マグネシウムは太平化学産業のもの(平均粒子径7.5μm)を使用する。乳糖は、DMV社の200M 乳糖を使用し、軽質無水ケイ酸は、日本アエロジル社のアエロジルを用いる。
【0070】
実施例1
【表1】

(1)薬物含有粒子の製造
本発明の薬物含有粒子は、上記処方に従って製造する。すなわち、薬物含有粒子を構成する各成分を攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)で精製水130gを噴霧して造粒し、引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られる粒子を32メッシュ(目開き500μm)の篩で篩過し、平均粒子径が約250μmの薬物含有粒子を得る。
(2)口腔内速崩壊錠の製造
(1)で得られる薬物含有粒子とD−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ソーマチン、グルタミン酸ナトリウムの各成分とを上記処方に従って攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)を用いて精製水140gを噴霧して造粒し、引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られる粒子を22メッシュ(目開き710μm)の篩で篩過する。
これにメントールを混合し、ついでステアリン酸マグネシウムを、約15g/hの供給量で、定常風量10L/min(Normal)で噴霧しながら、打錠圧:100〜120MPa/cmで打錠し、1錠重量200mg、直径8mmの錠剤を製造する。1錠全重量に対するステアリン酸マグネシウム量は約0.2重量%である。
【0071】
実施例2〜12
実施例1と同様にして、下記表2の処方に従って、表3に示す濃度の平均粒子径が約250μmの薬物含有粒子および口腔内速崩壊錠(200mg錠)を製造する。
【表2】

【表3】

【0072】
実施例13及び14
実施例1と同様にして、表4に記載の薬物含有粒子及び口腔内速崩壊錠を製造する。但し、実施例14の錠剤においては、攪拌造粒機を用いず、万能混合攪拌機(ダルトン製、5DM)を用い、また精製水は噴霧ではなく、注加する。
【表4】

【0073】
比較例1
実施例1と同様にして下記表5に記載の平均粒子径が約250μmの薬物含有粒子および口腔内速崩壊錠を製造する。なお、この錠剤は、薬物含有粒子にD−マンニトールが配合されていない点において、本発明とは区別される。
【表5】

【0074】
比較例2
下記表6に記載のメントールとステアリン酸マグネシウムを除く各成分を攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)を用いて精製水140gを噴霧して造粒し、引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られる粒子を22メッシュ(目開き710μm)の篩で篩過する。
これにメントールを混合し、ついでステアリン酸マグネシウムを、約15g/hの供給量で、定常風量10L/min(Normal)で噴霧しながら、打錠圧:100〜120MPa/cmで打錠し、1錠重量200mg、直径8mmの錠剤を製造する。1錠全重量に対するステアリン酸マグネシウム量は約0.2重量%である。
なお、この口腔内速崩壊錠は、実施例1の錠剤と組成においては同一であるが、薬物含有粒子を形成していない点で異なる。
【表6】

【0075】
実施例15〜24および比較例3〜4
実施例1と同様にして下記表7に記載の平均粒子径が約100μmの薬物含有粒子を製造する。なお、比較例3、4はメチルセルロースを含有していない点で本願発明とは異なるものである。
【表7】

【0076】
比較例5〜9
実施例1と同様にして下記表8の処方に従って、表9に記載の薬物含有粒子および口腔内速崩壊錠を製造する。なお、これら薬物含有粒子は、実施例1の薬物含有粒子中に含まれるメチルセルロースが他の水溶性高分子である点及び薬物含有粒子の平均粒子径が約150μmである点において異なる。
なお、プルランは、林原商事のプルランPI−20を使用し、ポリビニルアルコール(PVA)は、信越化学工業の信越ポバールを用いる。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は日本曹達のHPC Lを使用し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、信越化学工業のTC−5RWを用い、ポリビニルピロリドン(PVP)は、ISP社のポビドンK−30を用いる。
【表8】

【表9】

【0077】
実施例25および比較例10〜17
実施例1と同様にして下記表10の処方に従って、表11に記載の薬物含有粒子および口腔内速崩壊錠を製造する。なお、これら薬物含有粒子は、実施例1の薬物含有粒子と平均粒子径が約150μmである点において異なり、各比較例の薬物含有粒子は、実施例25の薬物含有粒子中に含まれるマンニトールが他の糖または糖アルコールである点で異なる。
なお、キシリトールは、東和化成工業のキシリットを使用し、トレハロースは、旭化成のトレハロースPを用いる。エリスリトールは日研化学のエリスリトール微粉を使用し、ソルビトールは、東和化成工業のD−ソルビトールDP−50を用い、マルチトールは、東和化成工業のアマルティを用いる。乳糖はDMV社の200M 乳糖を使用し、ラクチトールは、東和化成工業のミルヘンを用い、ショ糖は、日新製糖のハイグレードパウダーシュガーを用いる。
【表10】

【表11】

【0078】
実施例26および27
実施例1と同様にして、表12に記載の薬物含有粒子及び口腔内速崩壊錠を製造する。薬物含有粒子は、篩過ではなくパルベライザー(ホソカワミクロン,AP−S型)で粉砕する。粒子の平均粒子径は約25μmである。
【表12】

【0079】
試験例1
各実施例及び各比較例で製造された薬物含有粒子および錠剤の特性を調べ、表13〜15の結果を得た。なお、薬物含有粒子については不快な味の遮蔽度を、錠剤については、崩壊時間、引っ張り強度、不快な味の遮蔽度、服用感、および溶出試験をおこなった。また、実施例1の錠剤と比較例1の錠剤の溶出試験での経時的変化を図1に示す。
【表13】

【表14】

【表15】

【0080】
実施例28および29
下記表16に記載の処方に従って、口腔内速崩壊散(細粒)(実施例28)および口腔内速崩壊顆粒(実施例29)を製造する。即ち、細粒に関しては、実施例1と同様にして、平均粒子径が約250μmの薬物含有粒子を製造し、得られた薬物含有粒子及びD−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸の各成分を攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)で精製水150gを噴霧して造粒し引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られる粒子を32メッシュ(目開き500μm)の篩で篩過する。
また、口腔内崩壊顆粒に関しては、上記と同様にして得られた薬物含有粒子及びD−マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロースの各成分を攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)で精製水100gを噴霧して造粒し、さらに卓上形顆粒製造機(筒井理化学製、KAR−180型、スクリーン径1.0mm)で押し出し造粒し、引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られる粒子を16メッシュ(目開き1000μm)の篩で篩過する。
【表16】

【0081】
試験例2
試験例1に準じて、実施例28および29の製剤の不快な味の遮蔽度の試験を行った。結果を表17に示す。
【表17】

【0082】
実施例30
下記表18に記載の処方に従って、錠剤を製造する。即ち、実施例1と同様にして、平均粒子径が約250μmの薬物含有粒子を製造し、得られる薬物含有粒子及び乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸の各成分を流動層造粒機(フロイント製、FLO−5型)でヒドロキシプロピルセルロースを精製水380gに溶かした液を噴霧して造粒、乾燥し、得られる粒子を22メッシュ(目開き710μm)の篩で篩過する。これにステアリン酸マグネシウムを加え、V型混合機(不二パウダル製、VM−5型)で混合し、打錠圧約200MPa/cmで打錠し、1錠重量200mg、直径8mmの錠剤を製造する。
【表18】

【0083】
実施例31〜33
下記表19に記載の処方に従って、散剤(実施例31)、散剤(細粒)(実施例32)および顆粒剤(実施例33)を製造する。即ち、各製剤とも、実施例1と同様にして、平均粒子径が約250μmの薬物含有粒子を製造し、散剤(実施例31)に関しては、得られる薬物含有粒子、乳糖、軽質無水ケイ酸の各成分をV型混合機(不二パウダル製、VM−10)で混合し、22メッシュ(目開き710μm)の篩で篩過する。
散剤(細粒)(実施例32)に関しては、得られる薬物含有粒子と乳糖、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースの各成分を攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)で精製水150gを噴霧して造粒し引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られた粒子を32メッシュ(目開き500μm)の篩で篩過する。
顆粒剤(実施例33)に関しては、得られる薬物含有粒子、乳糖、軽質無水ケイ酸およびヒドロキシプロピルセルロースの各成分を攪拌造粒機(パウレック製、FM−VG−05)で精製水100gを噴霧して造粒し、さらに卓上形顆粒製造機(筒井理化学製、KAR−180型、スクリーン径1.0mm)で押し出し造粒し、引き続き棚型乾燥機で乾燥する。得られる粒子を16メッシュ(目開き1000μm)の篩で篩過する。
【表19】

【0084】
試験例3
試験例1に準じて、実施例30〜33の製剤の不快な味の遮断度の試験を行った。結果を表20に示す。
【表20】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の薬物含有粒子は、薬物の苦味の低減を図ることができ、さらに、該粒子を含む製剤は不快な味のマスキングおよび消化管内での速溶性を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を混合し粒子化した薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子:
(1)不快な味を有する薬物、
(2)メチルセルロースおよび
(3)マンニトール。
【請求項2】
不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.05〜約10重量部程度の割合で含む請求項1記載の薬物含有粒子。
【請求項3】
不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.15〜約7重量部程度の割合で含む請求項1記載の薬物含有粒子。
【請求項4】
不快な味を有する薬物1重量部に対して、メチルセルロースを約0.8〜約5重量部程度の割合で含む請求項1記載の薬物含有粒子。
【請求項5】
メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.3〜約50重量部程度の割合で含む請求項1〜4のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項6】
メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.5〜約12重量部程度の割合で含む請求項1〜4のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項7】
メチルセルロース1重量部に対して、マンニトールを約0.7〜約7.5重量部程度の割合で含む請求項1〜4のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項8】
マンニトールがD−マンニトールである請求項1〜7のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項9】
不快な味を有する薬物が、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその生理学的に許容される塩である請求項1〜8のいずれかに記載の薬物含有粒子。
【請求項10】
(1)(±)−4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドのクエン酸塩2水和物、
(2)メチルセルロースおよび
(3)D−マンニトール
を混合し粒子化した請求項1に記載の薬物含有粒子であって、
(±)−4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドのクエン酸塩 1重量部に対してメチルセルロースを約0.15〜約7重量部程度、メチルセルロース1重量部に対してD−マンニトールを約0.5〜約12重量部程度の割合で含む薬物含有粒子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の薬物含有粒子と他の製剤化成分を含む固形製剤。
【請求項12】
固形製剤が錠剤状製剤または粒状製剤である請求項11に記載の固形製剤。
【請求項13】
錠剤状製剤が錠剤または丸剤である請求項12に記載の固形製剤。
【請求項14】
粒状製剤が、顆粒剤、細粒剤または散剤である請求項12に記載の固形製剤。
【請求項15】
固形製剤が口腔内速崩壊製剤である請求項11〜14のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項16】
口腔内速崩壊製剤が錠剤である請求項15に記載の固形製剤。
【請求項17】
口腔内速崩壊製剤が粒状製剤である請求項15に記載の固形製剤。
【請求項18】
次の特性を備えることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の口腔内速崩壊製剤:
(i)本製剤を健常成人の舌のうえに置き、閉口のまま噛まない状態において40秒以内に崩壊し、
(ii)日本薬局方第14改正に記載の溶出試験(錠剤においては第2法(50回転/分)、粒状製剤においては第1法(50回転/分)、溶媒:水900ml)において、15分後の溶出率が実質的に85%以上であり、
(iii)本製剤を口に含むとき、実質的に不快な味を感じない。
【請求項19】
請求項15に記載の口腔内速崩壊製剤を製造するための組成物であって、不快な味を有する薬物、メチルセルロース及びマンニトールを混合し粒状化した不快な味を低減した薬物含有粒子、賦形剤、並びに崩壊剤を含有する組成物。
【請求項20】
(1)不快な味を有する薬物、(2)メチルセルロースおよび(3)マンニトールを混合し、水または含水溶媒を用いて粒子化することを特徴とする薬物の不快な味を低減した薬物含有粒子の製造方法。
【請求項21】
不快な味を有する薬物として4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその生理学的に許容される塩を含む請求項11に記載の固形製剤及び当該固形製剤に関する記載物を含む商業パッケージであって、当該固形製剤を消化管運動機能促進、胃切除後症状の改善又は胃食道逆流症(GERD)の予防若しくは治療に使用することができる又は使用すべきである旨の記載を、該パッケージ上又は該パッケージ内の記載物に含む商業パッケージ。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/055989
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516121(P2005−516121)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018204
【国際出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】