説明

薬物治療プログラムへの患者のコンプライアンスをモニターするためのシステムおよび方法

【課題】患者による投薬処理の効果的な自己管理を容易にするためのシステムと方法を提供する。
【解決手段】スマート・トレイ12は、投薬治療プログラムの処方計画に対する患者のコンプライアンスをモニターし、第三者に報告する。薬物の容器34に具えつけられた電磁気のタグは各容器34に含まれる薬物についての様々な情報を提供する。スマート・トレイ12は、薬物を特定するプロセッサとリーダとを具え、回収した情報を利用して、患者に視覚および/または音声シグナルを提供し、様々な薬物を、いつ、どの程度の量、服用するかを思い出させる。スマート・トレイ12は、リーダを介して、いつ薬物容器34が取外されるかもモニターし、コンピュータ・ネットワークを介して、一人以上の第三者、に通知できる。さらに、スマート・トレイ12は、様々な機器と通信でき、受信したデータに応えて、特定の薬物の薬物治療プログラムを変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ねヘルスケア・システムおよび方法に関し、より詳細には、ヘルスケア治療をモニターするためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1987年度の米国医療支出額調査によれば、9000万人のアメリカ人が1つ以上の慢性疾患を患っている。これらの慢性疾患の治療は、ヘルスケア支出の76%以上を示し、これらの慢性疾患を治療する直接の総費用は2030年までに7980億ドルまで上昇すると見積もられている。
【0003】
慢性疾患を抱える多くの患者は、自宅で治療される。不運にも、多くの患者は、医療サービス提供者の監視なしには、自宅で、薬物治療プログラムのような自己治療を確実に行うことができないかもしれない。効果的であるためには、投薬法は、しばしば様々な日程計画や食事指針に従わねばならない。例えば、投薬法の中には、食物と共に摂取されるものもあるが、そうでないものもある。投薬法の中には、一日に一度だけ服用されるものもあるが、一日当たり多数回服用されるものもある。薬物をいつ、およびどのぐらい服用するかを覚えることは、同時に服用する薬物の数が増えるほど困難になる。
【0004】
下記の薬物治療プログラムにおいて、患者を手助けするための様々な装置が知られている。例えば、McIntoshへの米国特許(特許文献1)は、薬物の服用がなされるべき時刻を合図で知らせるための薬物治療用時計を記載している。McIntoshの装置は、さらに投薬スケジュールとの比較のために、各薬物がいつ服用されたかの記録をも提供する。加えて、McIntoshの装置は、ユーザの体温、血圧および脈搏数をモニターおよび記録することができる。
【0005】
Ravenへの米国特許(特許文献2)は、コンパートメントの蓋が開けられた場合にはアラームを取り消すアラーム付錠剤・ボックスを開示している。一日のうちに蓋が開けられた回数を示すために、視覚によるディスプレイが用いられている。
【0006】
Shepherdらへの米国特許(特許文献3)は、予め決められた投薬プログラムによって、計画された錠剤の服用を提供するためのディスペンサーを記載している。ハウジングは、複数の錠剤容器を含み、投与量の錠剤が、ユーザーがアクセス可能な錠剤・レシーバへ放出され得る。錠剤の放出は、投薬プログラムによって指示される通りに、予め決められた間隔で錠剤が放出されるべく制御される。投与量の錠剤の放出時には、服用がなされなければならないことをユーザーに対して指示すべく、アラームが作動される。アラームは、ユーザーが服用量の錠剤にアクセスすると機能が停止される。服用量の放出から所定の時刻内に、ユーザーが錠剤・レシーバにアクセスしない場合には、監視者に警告すべく随意の遠隔アラームが作動されるかもしれない。
【0007】
Hanpeterらへの米国特許(特許文献4)は、薬物用のコンパートメントを画成するプラスチック製のブリスター列を有する、ブリスター・パックから成る薬物治療コンプライアンス監視システムについて記載している。ブリスターパックは、コンパートメントの裏に、薬物服用量が取り除かれるときに裂開される、導電性のトレイス掃引線を含む非導電性の脆弱な裏紙を有している。電子記憶回路は、各コンパートメントがいつ裂開されたかを検知し、この情報を記憶する。
【0008】
Weinbergerへの米国特許(特許文献5)は、医師が処方箋情報を処方用モジュールに記憶させるために使用する処方用データ・エントリ・ステーションと、薬局が処方箋情報を携帯用の処方用調合データ記憶ユニットに記憶させるために使用される調合用データ・エントリ・ステーションと、携帯用の処方用モジュールに記憶された情報に応じて、医師によって処方されたプログラムに従ってディスペンサー中の薬物の使用を指示し、調合用データ記憶ユニットに応じて薬物の調合をコントロールする薬物ディスペンサーと、を含む薬物調合システムを記載している。1つの実施形態は、2つの薬物用引出しを有し、各引出しは、薬物が服用されるべきコンパートメントを選択的に指示する指示用ライトを具える複数のコンパートメントと、薬物用コンパートメントの装填と該薬物の服用に関する指示を表示するためのスクリーンと、指示とのコンプライアンスを確認するための、ユーザーによる作動のためのエントリ確認キーを含むキーボードとを有する。他の実施形態は、一連の薬物包含コンパートメントを有し、各コンパートメントは、別個の摺動式カバーまたは折たたみ式カバーによって覆われている。
【0009】
Mucciacciaroへの米国特許(特許文献6)は、複数の薬物容器を保持するための複数の凹部を有するホルダーであって、各容器が独自の凹部に嵌合するホルダーを記載している。各薬物容器の底の形状は独特で、ホルダーの中の1つの凹部にのみ適合する。各凹部のセンサーは、専用容器の存在或いは不在をマイクロプロセッサへ知らせる。マイクロプロセッサは、異なる容器の中の異なる薬物の各々に関して、処方された服用量管理スケジュールでプログラムされている。特定の錠剤が投与される場合、リアル・タイム・クロックがマイクロプロセッサおよびプログラムと協働して、可聴的および適当な容器の位置で光により可視的に合図する。適切な容器が凹部から取り除かれると合図は止まる。誤った容器が持ち上げられると、異なる警告音が知らせる。
【0010】
E-pill(www.epill.com)は、その日の特定の時にそれらの薬物を服用するよう患者に対して催促状を送るページャー・システムを提供している。Carebridge(www.carebridge.net)は、薬物を服用することを思い出す手助けとするために患者が使用できる電子タイミング装置を提供している。
【0011】
IBV Technologiea(ワシントン州98109、シアトルのウェストレイク通り北1500)は、患者がボタンを押すと、患者が彼/彼女の薬物を服用する時刻を記録する薬物瓶を提供している。補充のために薬局に戻されるとき、薬局は、瓶からのコンプライアンス・レポートをダウンロードし、検討し、薬物治療コンプライアンスについて患者に助言することができる。
【0012】
APREX(カリフォルニア州、ユニオンシティ、Eigenbrodt通り30112)は、薬物治療コンプライアンスをモニターするための遠隔医療サービスを提供している。患者は、ミニコンピューターを有するキャップが装備された薬物容器から薬物を服用する。患者が容器に含まれる服用量の薬物を服用すべくボトルからキャップを取外すと、ミニコンピューターは服用が行われた時刻と日にちを記録する。その日の終わりに、患者は、毎日の服用情報を選定された医療サービス提供者に送るべく特別に設計されたモデムの上に薬物ボトルを置く。医療サービス提供者が、患者が薬物を服用する方法または時刻についての問題を見つけた場合、患者は、特別に訓練された医療サービス提供者によって、翌日、呼び出される。
【0013】
InforMedix社(メリーランド州20852、ロックヴィルのHubbard Dr. 5920)から入手可能なMediMonitor.(登録商標)は、個々のコンパートメントに5種類までの薬物を1ヶ月の供給量として保持すべく設計されており、且つ、いつ、どのようにして薬物を服用すべきかを患者に対して警告する。MediMonitor.(登録商標)はまた、患者の薬物服用行為の日時が刻印された記録を、特定の質問への患者の回答とともに提供することによって、薬物の使用と健康状態をも監視する。MediMonitor.(登録商標)は、インターネットアクセス可能なサーバーおよびデータ・ベースを介して、情報を、臨床薬剤試行サイト、医師、薬局および他の医療サービス提供者へ送信することができる。医療サービス提供者は、催促状や特別な処方と同様、MediMonitor.(登録商標)を介して、直接、患者に情報を伝えることができる。
【0014】
Szetoらは、5つの標準サイズの薬物容器のための受容部と、4本線、20文字の文字数字式のLCDと、電源供給とデータ通信のためのコネクタとを有するホルダーを記載している。各受容部の壁に埋め込まれたマイクロスイッチは、受容部が占拠されているか、空であるかを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,837,719号明細書
【特許文献2】米国特許第5,020,037号明細書
【特許文献3】米国特許第4,911,327号明細書
【特許文献4】米国特許第4,616,316号明細書
【特許文献5】米国特許第5,408,443号明細書
【特許文献6】米国特許第5,239,491号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
不運にも、下記の薬物治療プログラムにおいて患者を手助けするための既存の装置は、多少高価で設計において複雑になり得る。更に、下記の薬物治療プログラムにおいて患者を手助けするための既存の装置は、ユーザーにとって多少扱いが複雑であるようにも見える。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、患者による薬物治療法の効果的な自己管理を容易にするためのシステムおよび方法に関する。薬物治療プログラムを含む様々な治療プログラムへの患者のコンプライアンスを監視し、第三者に報告可能である「スマート・トレイ」が提供される。薬物容器には、各容器に含まれている1つ以上の薬についての様々な情報を提供する電磁タグ、あるいは他の識別子が設けられている。スマート・トレイには、各電磁タグに質問を行い、各容器に含まれている薬を識別するリーダが備えられている。リーダは、服用プログラムのような他の情報も回収することができる。この回収された情報を利用して、スマート・トレイは、1種類以上の薬を、患者が、いつ、どれだけ服用すべきかを思い出させるために、患者に視覚および/または音声による合図を提供し得る。スマート・トレイは、リーダを介して、いつ薬剤容器が取外され、この情報が記憶されるかをもモニターする。これによって、1つ以上の薬物治療プログラムに従って薬物が服用されたか否かの表示をすることができる。
【0018】
本発明によるスマート・トレイは、インターネット(あるいはイントラネット)、広域ネットワーク(WAN)、あるいはローカル・エリア・ネットワーク(LAN)のようなコンピュータ・ネットワークを介して、医療サービス提供者、薬局、および他のヘルスケア製品およびサービスの提供者のような1人以上の第三者と通信すべく構築され得る。例えば、スマート・トレイは、特定の薬剤の供給が低いことを察知して、薬局と直接、あるいは医療サービス提供者を介してさらなる薬剤の注文を出すことができる。
【0019】
さらに、スマート・トレイは、パソコン、Web TV、体重計、冷蔵庫、運動装置、およびスキャナ等を含むが、これらに限定されない様々な器具および装置と通信可能である。スマート・トレイは、様々な器具から受信したデータに応答して、特定の薬剤に関する薬物治療プログラムを変更することができる。例えば、スマート・トレイが、患者が、彼または彼女の運動プログラムの量を増加させたと、運動装置からデータを受信した場合、スマート・トレイ中のプロセッサは、1種類以上の患者の薬物治療プログラムを調整することができる。さらに、血圧モニターなどの健康管理装置からデータを回収することもできる。回収されたデータは、スマート・トレイによって、様々な薬物治療プログラムを修正するのにも利用され得る。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、スマート・トレイは、2種類以上の薬剤が禁忌を示すか否かを判断すべく構成され得る。2つ以上の薬剤容器と協働する電磁タグは、各容器に含まれる薬剤を識別すべく質問されることができる。その後、スマート・トレイは、各容器から回収した情報に基づき、各容器に含まれる薬剤が禁忌を示すか否かを判断し得る。2種類以上の薬剤が禁忌を示すと判断された場合、患者は、スマート・トレイにより警告を受け得る。同様に、第三者であるところの医療サービス提供者は、スマート・トレイによって警告を受け得る。
【0021】
本発明は、薬物治療プログラム、特に複合的な投薬法を含む複雑なプログラムを容易にし得る。従って、本発明は、誤った薬の服用、誤った服用量、誤った時刻での服用というような、患者によって引き起こされる誤投薬を減らすことができる。更に、本発明は、特定の薬物を、いつ、どのぐらい服用すべきかを患者に思い出させる必要性を減らし得る。
【0022】
さらに、本発明は、患者が薬物治療における空白の発生なしに新しい処方箋を受け取るように、処方用の再調剤を容易にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による、患者の薬物治療プログラムをインタラクティブに管理するためのシステムの概略図である。
【図2】本発明の他の実施形態による、患者の薬物治療プログラムをインタラクティブに管理するためのシステムの概略図であって、図1のスマート・トレイが、1つ以上の器具及び装置と通信すべく構成されている。
【図3】本発明の1つの実施形態によるスマート・トレイの斜視図であって、複数の薬物容器が各受容部に取外し可能に受け入れられている。さらに、血圧モニターは、感知表面と称される他の受容部中に取外し可能に受け入れられている。
【図4】本発明の実施形態によるスマート・トレイ内に含まれる様々な電子コンポーネントの概略図である。
【図5】底部表面に取り付けられたRFIDタグを有する薬物容器を例示した側面図である。
【図6】薬物容器の底部表面に取り付けられたRFIDタグを有し、且つ、該RFIDタグに取り付けられ、通信状態とされている圧電素子を有する薬物容器を例示した側面図である。
【図7】本発明の様々な形態による薬物治療プログラムとのコンプライアンスをモニターするためのオペレーションを示す。
【図8】本発明の様々な形態による薬物治療プログラムとのコンプライアンスをモニターするためのオペレーションを示す。
【図9】本発明の様々な形態による薬物治療プログラムとのコンプライアンスをモニターするためのオペレーションを示す。
【図10】本発明の様々な形態による薬物治療プログラムとのコンプライアンスをモニターするためのオペレーションを示す。
【図11】本発明の他の実施形態により、取り付けられた識別タグを有する人を示し、これは、対象物をスマート・トレイ上に配したとき、または対象物をスマート・トレイから取り除いたとき、該スマート・トレイが人を識別するのを可能とする。
【図12】本発明の他の実施形態により、取り付けられた識別タグまたはしるしを有する錠剤を示す。
【図13】本発明の他の実施形態によるスマート・トレイの斜視図であって、受容部は利用されず、対象物の存在の視覚的な表示が利用されている。
【図14】本発明の他の実施形態による、タグ付けされた人を電磁タグを介して識別のためのオペレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、今や、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照しつつ、より詳細に説明される。しかしながら、この発明は様々な形式で具現化されてもよく、ここに記載される実施形態に制限すべく解釈されるべきではない、むしろ、これらの実施形態は、本記載が充分で完全であり、当業者に対して本発明の範囲を十分に伝えることができるように提供されている。図面の説明の全体を通して、同一番号は同一の要素を指している。
【0025】
当業者には容易に理解されるであろうが、本発明は、方法およびシステムとして具現化されてもよい。本発明は、全体的にハードウエアの実施形態の形体をとっていてもよく、あるいは、ハードウエアとソフトウエアの観点を組み合わせた他の実施形態であってもよい。本発明の説明を通じて、薬物、内服薬、薬、および薬剤という用語は、相互交換的に使用されてもよい。
【0026】
(システムの概要)
さて、図1を参照するに、患者による薬物治療法の効果的な自己管理を容易にするための本発明の実施形態によるシステム10が図解されている。図示されたシステム10は、「スマート・トレイ」と称される電子装置12を含み、該「スマート・トレイ」は、薬物治療コンプライアンスを含む様々な治療プログラムへの患者のコンプライアンスをモニターし、および第三者へ報告することができる。スマート・トレイ12は、投薬治療患者に対して1日の決められた時刻に服用し、薬剤が服用されたか否かを記録するよう思い出させるべく構成され得る。
【0027】
スマート・トレイ12は、また、インターネット(あるいはイントラネット)、広域ネットワーク(WAN)あるいはローカル・エリア・ネットワーク(LAN) のようなコンピューター・ネットワーク20を介して、医療サービス提供者14、薬局16、および他のヘルスケア製品およびサービスの供給者18のような1人以上の第三者と通信すべく構成され得る。スマート・トレイ12は、様々な情報を伝達したり受信したりするために、第三者の様々なデータ処理システムおよびコンピュータ装置と通信すべく構成されてもよい。例えば、スマート・トレイ12は、特定の薬の供給が低いことを察知して、薬局16と直接、あるいは医療サービス提供者14を介して、薬の注文を出すことができる。スマート・トレイ12は、好ましくは、通信ネットワークを介して、外部のコンピュータ装置と通信すべく構成されたモデムを使用する。
【0028】
図2に示された本発明の他の実施形態によれば、システム10’は、様々な器具(22a-22f)と通信可能なスマート・トレイ12を含む。器具の例としては、パソコン22a、Web TV 22b、体重計22c、冷蔵庫22d、運動器具22eおよびスキャナ22fを含み得るが、それらに限定されない。スマート・トレイ12は、様々な器具から受信したデータに応じて、特定の薬のための薬物治療プログラムを変更すべく構成されたプロセッサを含んでいるのが好ましい。例えば、スマート・トレイ12が、患者が彼または彼女の運動プログラムを増加させたことを運動器具22eからデータとして受信すると、スマート・トレイ12内のプロセッサは、患者の1種類以上の薬物治療プログラムを調整し得る。同様に、体重計22cから患者の体重が変化しているとの情報を受信することによって、薬物治療プログラムは変更され得る。スマート・トレイが、冷蔵庫22dと、あるいは食物のパッケージを走査するベく構成されたスキャナと通信しているとき、患者の食物摂取(同様に、ナトリウムのような化学製品の摂取)もモニターされ得る。スマート・トレイ12と図1および2の中の他の装置との間の通信は、有線通信として図示されているが、無線通信も使用可能であることは理解されるであろう。
【0029】
(スマート・トレイ)
ここで、図3を参照するに、本発明の好ましい実施形態によるスマート・トレイ12が図示されている。図示されたスマート・トレイ12は、概ね平坦な表面30を備える細長い形状を有している。表面30に配されているのは、複数の薬物容器34を中に取外し可能に受け入れるべく形状付けられた複数の受容部32である。図示された実施形態において、受容部32は、円筒状の薬物容器34(即ち、従来の錠剤・ボトル)を取外し可能に受け入れるべく円状の形状を有している。しかしながら、スマート・トレイ12は、様々な形状の薬物容器を取外し可能に受け入れるべく様々な形状の受容部を有していてもよく、図示された実施形態に限定されるものではないことが理解される。例えば、使い捨てタイプである「カクテル」(即ち、混合薬物)を含むあつらえの薬物容器が、本発明によるスマート・トレイに利用されてもよい。これらのあつらえの薬物容器は、様々な形状および寸法を有し得る。
【0030】
図示されたスマート・トレイ12はまた、複数の受容部32に隣接して配されたLCD(液晶ディスプレイ)のようなディスプレイ35を含んでいる。種々のタイプのディスプレイが利用可能である。スマート・トレイ12は、LCDに限定されない。ディスプレイ35は、患者に対して様々なタイプの情報を表示すべく構成されている。例えば、以下に説明されるように、患者が特定の薬物、あるいは薬物の組み合わせを服用する時刻になったとき、患者に対して指示を表示することができる。
【0031】
図示されたスマート・トレイ12はまた、複数の受容部32とディスプレイ35に隣接して配された感知表面37も含む。以下に説明されるように、感知表面37は、患者がヘルスケア機能を遂行するために使用し得る種々の対象物を取外し可能に受け入れ、且つ相互に作用させるべく構成されている受容部である。例示的には、「対象物」とは、血圧モニター、体温計、ページャー、グルコメーター、プロトロンビンおよび凝固モニターを含むが、それらに限定されない。
【0032】
図4に概略的に図示されるように、スマート・トレイ12は、プロセッサ40を含み得る。RFコイル・アレイ41、マルチプレクサ42およびモデム43が、該プロセッサ40と通信する。RFコイル・アレイ41は、スマート・トレイ12中の受容部内に配された対象物に関連した電磁タグを素速く識別することができる電磁タグ・リーダとしての役割を果たす。アレイ41内のRFコイルは、スマート・トレイ12内の多数の対象物の位置が同時に追跡されることを許容するために、マルチプレクサ42によって切り替えられる。マルチプレクサは、当業者に理解されており、ここでさらに説明する必要はないであろう。
【0033】
RFコイル・アレイ41は、約55kHzから約85kHzの範囲内で共振する電磁タグを識別することができるものが好ましい。しかしながら、他の周波数で共振する電磁タグも本発明によるRFコイル・アレイを使用して識別され得ることが理解される。さらに、様々な他のタイプの識別子が容器34に使用され得、それらは、限定されないが、1次元および2次元のバーコード、図形インディシア、および他の電磁タグを含むことも理解されよう。光学的、磁気的および容量的センサーを含む、対応するセンサーが設けられてもよい。さらに、識別子およびセンサーは同じタイプである必要はない。
【0034】
プロセッサ40は、8ビット・プロセッサのような実際上いかなるタイプのプロセッサであってもよく、電磁タグの読み取りおよびディスプレイ機能を制御する。さらに、プロセッサ40は、以下に詳細に説明されるように、好ましくは、メモリ内に出来事の履歴を記録する。様々な薬物の服用プログラムは、プロセッサのメモリ内に格納され得る。さらに、服用プログラムは、薬物容器に添付された電磁タグから読み取られ、プロセッサのメモリ内に記憶され得る。汎用プロセッサまたは専用プロセッサが用いられ得ることは、理解されるであろう。さらに、特定用途向け集積回路(ASIC)が、図4の1つ以上の要素を統合するために設けられてもよい。ASICは、オペレーションを制御するためにプロセッサおよび/または論理回路を含むことができる。
【0035】
モデム43は、外部コンピュータ装置と通信すべく構成されているので、プロセッサのメモリに記憶されたデータは、医療サービス提供者や薬物提供者(例えば、薬局)を含む、他の第三者へ転送することができ、その結果、医療サービス提供者や他の第三者から情報を受け取ることができる。
【0036】
図4の実施形態において、アレイ41中の各RFコイルは、それぞれの受容部32と関連され(好ましくは、それぞれの受容部に隣接して配され)ている。アレイ41中のRFコイルは、感知表面37と関連され(且つ、該感知表面と隣接して配され)ている。各RFコイルは、取り付けられている無線周波数識別(RFID)タグのような電磁タグを有する、対象物の存在を独自に感知すべく構成されている。例えば、特定の受容部32と関連するRFコイルは、該受容部中に配された電磁タグを感知することができる。一つのコイルは、一つ以上の容器の複数のRFIDタグを感知することができるということも理解されるであろう。そのように、一つのRFコイルが、一つ以上の受容部32について利用され得る。
【0037】
加えて、アレイ41中の各RFコイルは、対象物に付けられた電磁タグとRFコイルの近隣で通信すべく構成されている。好ましくは、各RFコイルは、電磁タグ(または、他の識別子)に「応答指令信号を送り」、電磁タグ(または、他の識別子)に記憶されている情報を入手することができる「リーダ」としての役割を果たす。電磁タグは、薬物容器に取り付けられたとき、該容器中に含まれる一つ以上の薬物を識別する情報、および服用割合や服用頻度についての情報を含み得る。患者の治療に関する他の情報も電磁タグに記憶され得る。例えば、薬物が食物と一緒に服用されるべきか、あるいは、患者が日光を回避するべきかについての情報が含まれ得、さらに他の類似したタイプの情報も含まれ得る。RFコイルによって電磁タグから入手した情報は、プロセッサのメモリ内に記憶され得る。
【0038】
RFコイルと、電磁タグ近辺の検知における該RFコイルの使用、および情報を入手するために電磁タグに応答指令信号を送る該RFコイルの使用は、当業者には理解されており、ここでこれ以上議論をする必要はない。電磁タグで標識をつけられた対象物の近辺を検知するため、および情報を入手するために、電磁タグに応答指令信号を送るRFコイル・アレイを有する特に好ましいスマート・トレイは、同時に譲渡され、同時係属中の米国仮出願、即ち、発明の名称を「Platform for Item Sensing and Identification」(代理人識別番号1090226−77)とし、1999年12月29日に出願された米国仮出願に開示されており、その全体がここに参照され、組み込まれている。
【0039】
RFIDタグは、典型的には、互換性をもつRFIDリーダ/ライタと協働するタグに取り付けられたアイテムに関する情報を記憶し、送信する回路を含む。従来のRFID回路は、バッテリーあるいは外部のエネルギー源を必要としない。しかしながら、バッテリーが含まれてもよい。RFエネルギーは、典型的には、RFIDタグのRF回路と相互作用すべく特別に適合されたRFリーダによって送信される。RFIDタグは、米国特許第5,528,222号に開示されており、該開示内容は、その全体がここに参照により組み込まれている。
【0040】
さて、図5を参照するに、例示としての薬物容器34は、その底部表面34aに取り付けられたRFIDタグ50を有している。各受容部32と協働するRFコイル(図6中の39)は、RFIDタグ50を介して、該受容部に配された薬物容器34の存在を検知すべく構成されている。さらに、RFコイルもRFIDタグ50から情報を取得するために、その回路に応答指令信号を送るべく構成されている。図示されたRFIDタグ50は、薬物容器の底部表面34aに取り付けられているが、RFIDタグは、薬物容器の様々な場所に取り付けられ(または、その内部に組み込まれ)得、そして、RFコイルは様々な位置に配され得る。
【0041】
図3に戻って参照するに、図示されたスマート・トレイ12は、各受容部32の各々に隣接するLED(発光ダイオード)36を含んでいる。各LED36は、患者に、視覚的な信号を表示するための視覚的な指標としての役割を果たす。例えば、薬物容器34がそれぞれの受容部32内に配されているとき、該受容部32に隣接するLED36は、緑色を表示してもよい。受容部32内に配されている薬物容器34内の薬物が患者によって服用されるべきときには、患者の注意を得るために、LED36が赤色を表示するか、あるいは閃いてもよい。図3に示された実施形態においては、5つの薬物容器34が、5つのそれぞれの受容部32内に配されている。これらの受容部の各々に隣接するLED36は、その中に薬物容器が存在するのを示すために明るくされている。
【0042】
さらに、スマート・トレイ12は、薬物治療プログラムに従ってどの薬物を服用しなければならないかに関して、患者に聞こえるように合図を送ることができる可聴インジケータを含んでもよい。例示的な可聴信号は、音声コマンドおよびベル、ホイッスル、ビーパー、ブザー等の合図を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0043】
閃光および/または可聴信号の数が、服用されるべき錠剤の数(投薬量)を示すために使用され得る。例えば、3つの閃光(あるいは、可聴信号)は3錠の錠剤を示し、2つの閃光(あるいは可聴信号)は2錠の錠剤を示し、以下同様とすることができる。さらに、音声コマンドも薬の量を指定するために利用され得る。
【0044】
タグが付けられた薬物容器34が受容部32に配されるか、あるいはタグが付けられた対象物が感知表面37上に配されるたびに、そのことが、スマート・トレイ12内部のプロセッサ40または他の装置に記録される。同様に、薬物容器34が受容部32から取り除かれるか、あるいは対象物が感知表面37から取外されるたびに、その取外しの事象がスマート・トレイのプロセッサ40または他の装置によって記録される。各事象は保管され、通信ネットワーク20を介して、他のコンピュータ装置に通信することができる。
【0045】
スマート・トレイ12は、限定されないが、Bluetooth規格を含む様々な規格およびプロトコルに合致する通信ネットワークを介してコンピュータ装置と通信すべく構成され得る。当業者には周知であるが、Bluetooth技術は、携帯用電子機器を、短距離特定ネットワークを介して、無線で繋ぎ、通信することを可能にする2.45GHzの周波数帯中のユニバーサル・ラジオ・インターフェースを提供している。Bluetooth技術は、例えば、Haartsenの「Bluetooth−The Universal Radio Interface for Ad Hoc, Wireless Connectivity」、Ericsson Review No. 3、1998年、110-117頁に説明されており、当該開示は、参照によってここに組込まれる。さらに、外部の機器および他の装置とのデータの交換を許容すべく、シリアル・データ接続が設けられてもよい。
【0046】
薬物容器34が受容部32内に置かれたとき、受容部32に関連するRFコイルは、容器34中の薬物についての情報を得るために薬物容器に取り付けられたRFIDタグ50に質問することができる。情報の例は、薬物の名称および薬物治療のための服用プログラムを含む。服用プログラムは、典型的には、各服用がなされるべき、薬物の量と時刻を含んでいる。加えて、食物とともに服用すべきか、あるいは他のタイプの薬物と関連する薬物の服用を避けるべきか等の他の情報もRFIDタグから取得可能である。好ましくは、本発明によるスマート・トレイ12は、ディスプレイ35を介して、患者に様々なタイプの情報を表示することができる。
【0047】
図6に示された本発明の他の実施形態によれば、1つ以上の圧電素子60あるいは他の計量装置が、薬物容器34に取り付けられ得る。図示された実施形態では、圧電素子60が、薬物容器34の底部表面34a上のRFIDタグ50に取り付けられている。当業者には理解されるように、圧電素子は、該圧電素子に機械的な応力が加えられると、電気信号を発生する。従って、薬物容器34の重さの下に応力が加えられた圧電素子60によって発生された電気信号を測定することにより、薬物容器34中の薬の重さ(即ち、量)が測定可能である。圧電素子の使用によって、本発明によるスマート・トレイ12は、時間の経過と共に、どの程度の量の薬が服用されたかをモニターすることができ、これによって、ユーザーの薬物治療プログラムへのコンプライアンスを容易にモニターすることができる。本発明のこの形態による圧電素子は、薬物容器(または、他の対象物)に取り付けられたRFIDタグと通信可能であるか、または、スマート・トレイ12中のRFコイルあるいは他のセンサーと直接通信可能である。
【0048】
図3に戻って参照するに、血圧モニター70は、感知表面37上に配されている。感知表面37に関連したRFコイルは、好ましくは、血圧モニター70に取り付けられた電磁タグ(図示されず)と通信し、そこから情報をダウンロードする。例えば、血圧モニター70で彼または彼女の血圧を測定した後、患者は、該血圧モニター70を感知表面37上に置くことができ、血圧情報は、スマート・トレイのプロセッサ40にダウンロードされ、および保管されることができる。この情報は、モデム43を介して第三者である医療サービス提供者に送信され得る。あるいは、この情報は、上記のように、一種類以上の薬のための一つ以上の服用プログラムを変更するのに使用され得る。
【0049】
感知表面37は、患者が使用することができ、取り付けられあるいは埋め込まれた電磁タグを有する実際のいかなるタイプのヘルスケア装置からも情報をダウンロードするために使用され得、この装置は、限定されないが、血圧モニター、体温計、ページャー、グルコメーター、プロトロンビンおよび凝固モニターを含む。
【0050】
本発明によるスマート・トレイは、患者の薬物治療プログラムへのコンプライアンスのモニターを受動的かつ控え目に促進する。例えば、スマート・トレイは、どの薬を服用すべきかを、視覚および/または聴覚による合図を用いて、患者に思い出させることができる。加えて、スマート・トレイは、疾病管理の援助として、薬物投与を記録することができる。更に、スマート・トレイは、患者に教育と動機を与えることにより疾病管理を促進することが可能である。
【0051】
本発明によるスマート・トレイはまた、供給物が枯渇する前に自動的に注文を出すことによって薬の在庫を容易に管理できる。スマート・トレイは、薬箱か棚に組み込まれ得、食事制限および薬物管理のために、台所の棚と一体とすることもできる。スマート・トレイは、様々な投薬プログラムに用いられ得る。例えば、スマート・トレイは、液体の薬のディスペンサーにも用いられ得る。スマート・トレイは、また冷却装置に組み込まれてもよい。携帯用のスマート・トレイは、旅行用に構成され得る。
【0052】
本発明の他の実施形態によれば、スマート・トレイは、禁忌が1つ以上の薬剤に示される場合に、患者に警告を出すよう構成され得る。当業者に周知のとおり、「禁忌が示される」という用語は、2種類以上の薬が同時に投与された場合、それらの2種類以上の薬が、患者において有害反応を引き起こす可能性があるか、或いはお互いの効能を打ち消し合う可能性がある、という意味である。禁忌は、視覚インジケータによって、あるいは聴覚インジケータによって、または、聴覚よび視覚インジケータの組み合わせによって合図され得る。
【0053】
本発明によるスマート・トレイは、薬物容器および他の対象物を受け入れるための受容部を有する必要はない。例えば、図13に図示のごとく、スマート・トレイ12’は、薬物容器34のようなタグが取り付けられた対象物を受け入れるために概ね平坦な表面30を有していてもよい。RFコイル・アレイは、表面30のどこかに位置されたタグ付き対象物を認識すべく構成され得る。様々なタイプの視覚インジケータが、タグ付けされた対象物の存在を示すために用いられ得る。図示された実施形態おいて、薬物容器34の直下の表面の部分36’は、タグ付けされた薬物容器34の存在を示すべく明るくされている。
【0054】
(オペレーション)
ところで、図7ないし10を参照するに、本発明の様々な実施形態による、薬物治療法との患者のコンプライアンスをモニターするためのオペレーションが図示されている。まず、図7を参照するに、1種類以上の薬を含む薬物容器が、スマート・トレイの受容部内に取外し可能に受け入れられる(ブロック100)。容器は、(例えば、取り付けられた、あるいは、埋め込まれた)RFIDタグのような電磁タグまたは関連する他のインディシアを有し、該タグは、容器内の薬についての様々なタイプの情報を含んでいる。例示的な情報は、各薬の識別子と、容器内の各薬用の服用プログラムとを含むが、それらに限定されない。
【0055】
電磁タグは、電磁タグから薬の識別子および/または服用プログラムなどの情報を回収するために、RFコイルのようなリーダによって質問される(ブロック110)。その後、患者は、スマート・トレイを介して、識別された薬に関連する投薬プログラムに従って薬の用量を服用するように警告される(ブロック120)。患者が受容部から容器を取外すたびに、その取外し時刻はリーダによって検知され、記憶される(ブロック130)。
【0056】
患者は、スマート・トレイによって、視覚および/または聴覚インジケータを介して薬の用量を服用するよう警告される。例えば、特別の薬が服用されるべきこと(および、服用されるべき量)を指示するために、ライトが点滅し得る。同様に、特別の薬が服用されるべきこと(および、服用されるべき量)を指示するために、可聴信号が鳴ってもよい。合成された音声による指示を生成することも可能である。さらには、患者は、メッセージを表示するディスプレイを介して警告されてもよい。
【0057】
容器が受容部に返却されるたびに、容器中の薬の残量が計測され得る(ブロック140)。前述のごとく、このステップは、容器とその中身の重量の下に歪む圧電素子または他の重量センサーを使用して行われるのが好ましい。
【0058】
本発明の他の実施形態によれば、通信ネットワークを介して、スマート・トレイと1台以上のコンピュータ機器との間に通信を確立することができる(ブロック150)。その後、情報は、スマート・トレイから外部のコンピュータ機器に送られ得る(ブロック160)。例えば、患者が薬物治療(あるいは、他の治療法)に従っているか否かを判断するために、スマート・トレイからのデータを利用する一人以上の医療サービス提供者との通信が確立され得る。医療サービス提供者は、スマート・トレイの表示を介して、患者に表示されることができるメッセージを送ることによって、患者と通信することができる(ブロック170)。さらに、医療サービス提供者は、コマンドをスマート・トレイに送信することによって、服用プログラムを変更することができる。他の例として、追加の薬を患者に供給し得るように、薬の供給者とも通信を確立することが可能である。
【0059】
加えて、患者は、ウェブサイトのように、スマート・トレイを介して外部のコンピュータ機器と通信を確立し、そこから情報を引出すことができる(ブロック170)。例えば、特定の薬に関する情報は、スマート・トレイ、あるいはスマート・トレイと通信状態に有るパソコンまたはWeb TVを介して、患者に表示され得る。
【0060】
図8に図示された本発明の他の実施形態によれば、スマート・トレイは、運動器具、冷蔵庫、スキャナおよび体重計等を含むが、これらに限定されない、1つ以上の器具との間で通信すべく構成される。この実施形態によれば、スマート・トレイと器具との間に通信が確立される(ブロック200)。その後、データは器具から回収される(ブロック210)。例えば、患者の体重が、体重計から回収され、あるいは、患者のナトリウムの摂取が、患者によって得られた食物をモニターしている「スマート」冷蔵庫から回収される。1種類以上の薬と関連した薬物治療(または、他の)プログラムは、その後、1台以上の器具から受け取ったデータに応じて変更され得る(ブロック220)。
【0061】
患者は、変更された薬物治療プログラムのスマート・トレイによって、警告を受け得る(ブロック230)。加えて、医療サービス提供者のような第三者は、変更された薬物治療プログラムについて通知を受け得る(ブロック240)。上述のごとく、スマート・トレイは、外部の通信機器と通信を確立し、その間で情報を送信することによって、第三者に通知することができる。
【0062】
本発明の他の実施形態によれば、スマート・トレイは、健康モニター装置から回収したデータに基づき服用プログラムを変更すべく構成され得る。図9を参照するに、1種類以上の薬を含んでいる薬物容器が、スマート・トレイの受容部中に取外し可能に受け入れられる(ブロック300)。容器は、上述のごとく、容器中の薬についての様々なタイプの情報を含み、該容器に取り付けられた電磁タグを有する。電磁タグは、RFコイルのようなリーダによって質問され、該電磁タグから薬の識別子および/または服用プログラム等の情報を引出す(ブロック310)。
【0063】
健康モニター装置は、スマート・トレイの受容部内(例えば、上記の感知表面37)に置かれる(ブロック320)。健康モニター装置は、該健康モニター装置を識別する、それに取り付けられた電磁タグを有している。データは、その後、健康モニター装置から回収される(ブロック330)。例えば、健康モニター装置は、患者が彼または彼女の血圧を測定するのに正に用いた血圧モニターであってもよい。患者は、血圧モニターを受容部内に置き、血圧データがスマート・トレイによって回収される。
【0064】
1種類以上の薬に関連した薬物治療(または、他の)プログラムは、健康モニター装置から受け取ったデータに応じて変更され得る(ブロック340)。患者は、変更された薬物治療プログラムのスマート・トレイによって警告され得る(ブロック350)。加えて、医療サービス提供者のような第三者は、変更された薬物治療プログラムについて通知を受け得る(ブロック360)。上記のごとく、スマート・トレイは、外部のコンピュータ機器との通信を確立し、それらの間に情報を送信することにより、第三者に通知することができる。
【0065】
本発明の他の実施形態によれば、スマート・トレイは、2つ以上の薬に対して禁忌が示されるか否かを判断すべく構成され得る。図10を参照するに、2つ以上の薬物容器がスマート・トレイの各受容部内に取外し可能に受け入れられる(ブロック400)。上記のごとく、各薬物容器は、それぞれの容器に含まれている薬物についての様々な情報を含む電磁タグまたは他の識別子/インジケータを含んでいる。各容器の電磁タグは、その後、上記の通り、質問される(ブロック410)。各電磁タグから回収された情報に基づいて、各々の容器に含まれる薬が禁忌を示すか否かの判断がなされる(ブロック420)。2種類以上の薬に、禁忌が示されると判断された場合、患者は、スマート・トレイによって警告される(ブロック430)。上記のごとく、視覚および/または聴覚による合図が患者への警告のために利用され得る。
【0066】
(人および薬へのタグの取り付け)
本発明の追加の実施形態によれば、人や薬剤にも「タグ付けする」ことができる。図11に図示された実施形態において、人70は、ブレスレット72を着用している。該ブレスレット72は、スマート・トレイ12のセンサーによって識別可能な識別タグを含んでいる。識別タグは、上記のように、RFコイル・アレイによって質問され得るRFIDタグ等の電磁タグであるのが好ましい。この実施形態によれば、スマート・トレイ12は、該スマート・トレイ12上に対象物を置いたり、取り除いたり、またはスマート・トレイ12から対象物を取り除く特別の人を認識することができる。
【0067】
図14に示されるように、スマート・トレイ・リーダは、人に取り付けられたRFIDタグのような電磁タグに質問をし、その人の身元、何時その人がスマート・トレイ上の対象物にアクセスしたかのような情報を、それから引き出すように構成されている(ブロック500)。用語「アクセスする」は、薬物容器をスマート・トレイ上に置くこと、および該薬物容器を該スマート・トレイから取り除くことを意味し得る。さらに、用語「アクセスする」は、血圧モニターや他のモニター装置を含むが、それらに限定されない他の様々なタグ付けされた対象物を、スマート・トレイに置き、および/またはスマート・トレイから取り除くことを意味し得る。好ましくは、本発明のこの実施形態によるスマート・トレイは、スマート・トレイによって保持されている対象物に人がアクセスする時刻を、スマート・トレイ(または、他の場所)に記憶する(ブロック510)。
【0068】
図12を参照するに、食べられる薬80は、スマート・トレイが個々の食べられる薬80を識別することを可能にする無毒な電磁タグ82を含んでいる。図示されている食べられる薬80は、錠剤状であるが、キャップレット、カプセル等の他のタイプの食べられる薬形が用いられ得ることが理解される。さらに、無毒な電磁タグは、食べられる薬の中に配されてもよいことが理解される。
【0069】
各薬の単位毎にタグをつけることによって、本発明によるスマート・トレイは、特定の薬の服用が、定められた時刻に、患者によってなされたか否かを正確に追跡することができる。さらに、個々の薬物の単位にタグを付けることは、薬物の在庫管理を容易にし得る。
【0070】
以上は、本発明の例証であり、それらに限定されるものと解釈されるべきではない。この発明の2,3の例示的な実施形態が説明されたが、当業者は、これらの例示的な実施形態において、この発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。従って、そのような変更はすべて、請求の範囲で定義されるように、この発明の範囲内に含まれるべきことが意図されている。したがって、上記は本発明の例示であり、開示された特定の実施形態に限定されるものと解釈されず、且つ、開示された実施形態への変更は、他の実施形態同様、添付の請求の範囲に含まれるべきことが意図されていることが理解されよう。発明は請求の範囲によって定義され、該請求の範囲の均等物はその範囲に含まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の薬物治療法への服薬順守をモニターするトレイであって、
容器を取外し可能に受け入れる受容部であって、該容器は薬を含み、該容器が、該容器に取り付けられ、薬の識別を含んだ薬についての情報を含む電磁タグを有する、該受容部と、
該電磁タグに質問し、薬を識別すべく構成されたリーダと、
識別された薬に関連する服用プログラムに従って、薬の用量の服用を患者に警告するインジケータと、
該トレイに関連され、該容器が該受容部から取外されたのが該リーダによって検知された時刻を記憶するメモリと、
を具えることを特徴とするトレイ。
【請求項2】
薬物治療法への患者の服薬順守をモニターするシステムであって、
薬を含む容器であって、該容器は、該容器に取り付けられ、薬の識別を含む薬についての情報を包含する識別子を有する、該容器と、
トレイであって、該容器を取外し可能に受け入れる受容部、該識別子に質問し、それから情報を引き出すべく構成されたリーダ、識別された薬に関連する服用プログラムに従い、薬の用量を服用するように、患者に対して警告するインジケータ、該トレイに関連され、該容器が該受容部から取外されたのが該リーダによって検出された時刻を記憶するメモリ、および、通信ネットワークを介して外部のコンピュータ機器と通信すべく構成されたモデム、を備える該トレイと、
通信ネットワークを介して該トレイと通信するコンピュータ機器であって、該コンピュータ機器が情報を該トレイへ送信し、且つ該トレイから受信する該コンピュータ機器と、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
薬物治療法への患者の服薬順守をモニターするシステムであって、
薬を含む容器であって、該容器は、該容器に取り付けられ、薬の識別を含む薬についての情報を包含する識別子を有する、該容器と、
トレイであって、該容器を取外し可能に受け入れる受容部、該識別子に質問し、それから情報を引き出すべく構成されたリーダ、および、該トレイに関連され、該容器が該受容部から取外されたのが該リーダによって検出された時刻を記憶するメモリ、を備える該トレイと、
該トレイと通信する機器であって、該機器がデータを該トレイへ送信すべく構成されている、該機器と、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項4】
薬物治療法への患者の服薬順守をモニターするシステムであって、
薬を含む容器であって、該容器が、該容器に取り付けられ、薬についての情報を含む識別子を有する、該容器と、
トレイであって、該容器を取外し可能に受け入れる第一の受容部、健康モニター装置を取外し可能に受け入れる第二の受容部、および、該識別子に質問し、それから情報を引き出すリーダであって、該第二の受容部内の該健康モニター装置からデータを回収すべく構成された該リーダ、を具え、該トレイが、該健康モニター装置から回収されたデータに応じて、薬と関連する服用プログラムを変更する該トレイと、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項5】
薬物治療法への患者の服薬順守をモニターするシステムであって、
第一の薬を含む第一の容器であって、該第一の容器が、該第一の容器に取り付けられ、該第一の薬の識別を含む、該第一の薬についての情報を包含する第一の識別子を有する、該第一の容器と、
該第一の薬とは異なる第二の薬を含む第二の容器であって、該第二の容器が、該第二の容器に取り付けられ、該第二の薬の識別を含む、該第二の薬についての情報を包含する第二の識別子を有する、該第二の容器と、
トレイであって、該第一の容器を取外し可能に受け入れる第一の受容部と、該第二の容器を取外し可能に受け入れる第二の受容部と、該第一および第二の識別子に質問し、それらから情報を引き出すべく構成されたリーダであって、引き出された情報が、該第一および第二の薬の識別を含んでいる、該リーダとを具える該トレイと、
を具え、
該トレイは、該第一および第二の薬が禁忌を示すか否かを判断すべく構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
薬物治療法への患者の服薬順守をモニターするトレイであって、
容器を取外し可能に受け入れる表面であって、該容器は薬を含み、該容器が、該容器に取り付けられ、薬の識別を含む、薬についての情報を包含する電磁タグを有する、該表面と、
該電磁タグに質問し、薬を識別すべく構成されたリーダと、
識別された薬に関連する服用プログラムに従って薬の用量を服用すべきことを患者に警告するインジケータと、
該トレイに関連され、該容器が表面から取外されたのが該リーダによって検知された時刻を記憶するメモリと、
を具えることを特徴とするトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−200677(P2011−200677A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124577(P2011−124577)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【分割の表示】特願2001−548061(P2001−548061)の分割
【原出願日】平成12年12月21日(2000.12.21)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】