説明

薬物発見に有用な空間的に規定された大環状化合物

固有の立体配座制御要素を含む、空間的に規定された新規の大環状化合物を開示する。次いで、これらの大環状分子のライブラリーを使用して、特定の生物学的標的との特異的相互作用を示す大環状分子種1つ以上を選択する。特に、本発明による化合物は、哺乳類モチリン受容体及び哺乳類グレリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の立体配座制御要素を備えた空間的に規定された大環状(macrocyclic)化合物に関する。これらの大環状分子のライブラリーの作成にも関する。次いで、これらのライブラリーを使用して、特別の生物学的標的との特異的な相互作用を示す大環状分子種1つ以上を選択する。
【背景技術】
【0002】
有力かつ選択的生物活性を有すると一貫して判明している様々な化合物のうちに、天然産物及びペプチドがある。実際、これらの類のメンバーは、有用な医薬品となっている。不運なことに、各タイプには、これらの構造のより広い有用性を制限する限度がある。
【0003】
現に、天然産物は、合成するのが困難である極めて複雑な構造をしばしば有し、特に、薬理作用団成分を規定し、親化合物の生物学的特性の変調を最良に調査する非常に多数の類似体にアクセスできるであろうコンビナトリアル方式で合成するのが困難である。にもかかわらず、多少の努力により、適度な数の類似体を含む天然産物ライブラリーを構築するのに成功している。
【0004】
他方、ペプチドは、固体支持体上での合成の容易さ、関係する反応の再現性及び高収率、並びに出発物質の容易な入手可能性のために、コンビナトリアルケミストリー開発の最先端にあった。ペプチドは、多数の酵素及び受容体のための内因性リガンドであり、その修飾は、これらの同一の受容体及び酵素のさらに強力なアゴニスト又はインヒビターを開発するのに実施することができる。更に、コンビナトリアルペプチドライブラリーを使用して、多様な酵素及び受容体系の以前は未知であった多数の活性配列を見出した。
【0005】
しかしながら、ペプチド化合物には、ペプチドを医薬品として直接使用するのに関連する通常の限界がある。この限界には、プロテアーゼによる迅速な代謝性分解、短い薬物動態的半減期、組織及び器官中の作用部位への輸送の困難性、貧弱な経口バイオアベイラビリティ及び可溶性、潜在的抗原性並びに高額の製造費が含まれる。
【0006】
それでもなお、新規薬物分子を探索する時に、ペプチドの強く官能基化された性質及び構造的に多様な性質が有利である。従って、ペプチドは、新規医薬品の開発のための出発物質又はテンプレートとして、主に使用され、このことは、仮にそうであるとしても、しばしば、最初の活性ペプチドに部分的にのみ似ている構造をもたらすこととなる。特に、アミノ酸側鎖の認識ポテンシャル(recognition potential)は、これらの側鎖を非ペプチドの堅固な足場へ組み込もうとし、分子と標的との間の最適の相互作用に必要な立体配座のディスプレーを複製し、また基準タンパク質及びペプチド第二構造要素を模倣することを試みる。例えば、糖及び芳香環は、1つ以上の位置でペンダント部としてアミノ酸又は類似体を含む堅固な足場として利用されている。3−及び4−置換ピロリドンを、相互作用官能性の表示のために、中心テンプレートとして利用する化合物及びコンビナトリアルライブラリーは、U.S.5646285及びU.S.5891737に開示されている。
【0007】
他のアプローチでは、環状構造は、ペプチドの医薬品及び薬物動態的特性を大幅に改良することができる(Molecular Diversity 2000(2002出版),5,289〜304)。環状ペプチド類似体は、対応する線状類似体と比較して、立体配座の運動性の制限、規定されたトポロジー、タンパク質分解酵素に対する高い安定性及び改良された極性を含む多数の利点を提供する。更に、環状ペプチドは、効力、選択性、安定性、バイオアベイラビリティ及び膜透過性を増強することができる。酵素分解に対する環状構造の安定性は、そのような分子がペプチダーゼの基質として認識されるのに必要な延伸された立体配座をとりにくいことによる。環状ペプチドの非常に大きな混合物ライブラリー(108以上のメンバー)は、WO98/54577に記載されている。
【0008】
しかしながら、より大きい環は、しばしば柔軟すぎ、有用であるには、あまりに多い立体配座をとり得る。更に、それらの分子サイズ及び生じる物理化学的特性は、「薬物様」であるための特有な要件に適合しない。重要な相互作用残基を含有する小環状ペプチドは、必要な立体配座制限を提供するが、他の欠点を有することもある。他の欠点は、合成の難しさ、容易い二量化、好ましいトランスアミド結合の存在により引き起こされた好ましくない環のひずみ、代謝に対する安定性の欠如並びにひずみ及び限定されたトポロジーの多様性を解除する加水分解を含む。
【0009】
コンビナトリアルケミストリーでは、化学組成に関して多様性が生じることに多くの注意が払われている。しかしながら、これを決定的な3次元構造おける多様性と統合することには、本質的に、努力が払われていない。
【0010】
立体配座を調節する特定のテザー(tether)成分の使用が、WO01/25257に報告された。しかしながら、これらのテザーは、分子の立体配座表示を制限するのに成功したが、数千とはいかないまでも数百もの可能な立体配座を含みうる線状分子へアクセスできる一部の空間領域を再現できただけである。立体配座の利用可能空間をよりよくカバーするために、新規の立体配座を限定する追加のテザー成分が必要である。更に、以前の報告にあるテザーは、一般に、事実上疎水性であった。これは、大環状分子の主要な特性、例えば、化合物の薬理的特性、特に経口アベイラビリティ、への影響を有することが公知である可溶性及びlogPに影響する。更に、これらの物理化学的特性の変異は、しばしば、治療薬としての分子の所望の特性を最適化するために必要とされる。その上、初期のテザーは、その化学的官能性においてむしろ制限されている。分子のこの部分は、その立体配座調節作用の他に、生物学的標的との相互作用も有し得たので、化学的官能基におけるより大きな多様性は有利であると判明した。そのため、本発明のより化学的に多様なテザーは、実在の技術のこれらの制限に対応するようにデザインされており、以下の利点を示す:
・以前はアクセス不可能だった立体配座へのアクセス
・ 物理化学的パラメーターの改善
・ 薬物動態特性の改良
・ 生物活性の変調のための補足的相互作用機能性
【0011】
増大する証拠により、分子の剛性は、好ましい薬物動態特性を分子に与え、臨床的成功を増進することが示唆される(J.Med.Chem.2003,46,1250〜1256; J.Med.Chem.2002,45,2615〜2623)。そのため、本発明のテザーは、これらの大環状分子を新規の薬品のサーチに利用する点において極めて有用であろう。本発明の代表的分子により示された活性例を提供する
【0012】
そのため、大環状の骨格を基礎とする特別にデザインされた化学物質の必要性がまだそのままあり、これは、ペプチドの修飾及び/又は特異的テザー様部分を装入することにより大環状骨格に引き起こされた3次元立体配座の変化を活用する
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、その三次元構造を少数の空間的配向に制限するために、立体配座調節因子を組み込んだ、立体的に規定された大環状化合物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの化合物は、一般式(I):
【化1】

[式中、
1、A2、A3及びA4は、天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基であり、
3及びA4は、場合により存在し、
WはO又は−NR1−であり、R1は、水素、アルキル、置換アルキル、アシル及びスルホニルからなる群から選択され、
Tは、
【化2】

(式中、
1、q2、q3、q6、q7、q8、q9、q10、q11、q13、q15及びq16は、それぞれ相互に無関係に1、2、3、4又は5であり、
4及びq18は、相互に無関係に1又は2であり、
5は、2、3又は5であり、
12及びq14は、それぞれ相互に無関係に0、1、2、3又は4であり、
17は、0、1、2又は3であり、
1、P2、P3、P4及びP5は、それぞれ相互に無関係にO、S又はNHであり、
6は、N又はCHであり、
7は、O又はCR5253であり、
36は、水素、C1〜C6アルキル、ベンジル又はアシルであり、
50及びR51は、相互に無関係に、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノからなる群より選択されるが、但し、R50又はR51のうちの一方がヒドロキシ、アルコキシ又はアミノの場合には、他方が水素又はアルキルであるものとし、
52及びR53は、相互に無関係に、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノからなる群より選択されるが、但し、R52又はR53のうちの一方がヒドロキシ、アルコキシ又はアミノの場合には、他方が水素又はアルキルであるものとし、
54、R55,R56,R57及びR58は、相互に無関係に、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノからなる群より選択され、
AAは、天然アミノ酸の側鎖又は非天然アミノ酸の側鎖であり、
(W)は、TがWに結合する位置を示し、
(A1)はTがA1に結合する位置を示す)からなる群から選択される二価の基である]により定義される。
【0015】
次いで、これらの化合物のライブラリーを使用して、特別の生物学的標的との特異的な相互作用を示す大環状分子種1つ以上を選択する。そのような標的は、酵素及び受容体を含むが、これらに限定はされない。更に詳細には、医薬候補スクリーニングアッセイにより新規生物活性の大環状化合物を同定するのに使用するため、構造/活性関係を定義する研究に使用するため及び/又は臨床試験で使用するための、種々の大環状化合物の容易にアクセスできるソースとして、本発明の大環状分子ライブラリーを使用する。
【0016】
特に、式(I)の化合物は、哺乳類モチリン受容体及び哺乳類グレリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして開示される。
【0017】
本発明は、例による実施態様と共に記載されるが、本発明の範囲をそのような実施態様に限定することを意図としないことは理解されよう。それどころか、特許請求の範囲に定義されるように、含まれうる全ての変法、変更及び均等物もカバーすることを意図とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の大環状化合物は、様々なテザーを組み込むので、立体配座スペースの特定部分をカバーすることが可能である。更に、これらのテザーは、広範囲のシーケンスにわたり合理的な収率で大環状分子を合成する能力に基づき選択される。従って、これらのテザーを組み込んだ本発明の化合物は、多様な異なる立体配座を示し、その幾つかはより剛性であり、他はより柔軟である。更に、テザーのあるものは、その立体配座において、いっそう剛性であり、時には本質的に唯一の低エネルギー形態を示す。これらの場合に、改良された生物学的結果は、特異的、最適な生物活性立体配座に関する優れた情報を提供するであろう。更に、従来の多くのアプローチと対照的に、この最適化工程に、同じ合成経路及び方法を使用する。そのような情報に迅速にアクセスする能力は、通常極めて困難であり、時間を集中させる仕事であるものを、はるかに単純な仕事に変形させる。
【0019】
従って、本発明は、単一の構造的枠組み内での化学的及び立体構造多様性の同時の検討を可能にし、そのため、新規医薬品に向けられた研究のスピード及び効率を増すのに使用するという大きな可能性を有する。
【0020】
従って、本発明は、式(I):
【化3】

[式中、A1、A2、A3、A4、W及びTは、前記のものを表す]の大環状化合物提供する。
【0021】
特定の実施態様では、Tが、以下の二価の基:
【化4A】

【化4B】

[式中、Yは、水素、アルキル、ベンジル又はアシルから選択される]から選択される式(I)の化合物が提供される。
【0022】
本発明は、A1、A2、A3及びA4のうちの少なくとも1つは、さらにまた、保護された天然又は非天然アミノ酸残基であってよい、式(I)の化合物も提供する。
【0023】
本発明は、同様に多様な治療指標を示す広範囲の生物学的標的へ適用可能である。最初に生じた活性化合物は、更に最適化され、最終的に先頭の臨床候補を提供するために絞り込まれ得る。本発明のもう1つの利点は、最適化工程におけるこれらの後続のステップが、同じ基本的化学合成経路を利用して行うことができ、従って、全体の薬物発見工程の一般に極めて時間を費やす段階であるものを極めて簡単にして、スピードアップできることである。
【0024】
特に、本発明は、哺乳類モチリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニスト及び/又は哺乳類グレリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニストである式(I)の化合物を提供する。
【0025】
モチリン(直鎖22−アミノ酸ペプチド)は、空腹時胃腸運動活性を支配することによって、GI生理学的系において重要な調節機能を果たしている。従って、該ペプチドは、ヒトを含む哺乳類において空腹時に十二指腸粘膜から定期的に放出される。より正確には、モチリンは、胃腸管平滑筋を収縮させて、胃内容物排出を促し、腸菅通過時間を短縮し、小腸の第III相進行性胃腸運動群を開始することにより、胃の運動性に強力な影響を発揮する。モチリンは、胃の運動性の調節に不可欠かつ直接的に関与するため、モチリン受容体での活性を減少させる(低運動性)かまたは増加させる(高運動性)薬剤は、これらの適応症の新規有効薬剤を探すさらなる研究において、特に興味のもたれる分野である。モチリン受容体の大環状アンタゴニストは、U.S.Prov.Pat.Appl.Ser.No.60/479223に開示されている。同様にグレリンは、成長ホルモン分泌、エネルギーバランスの維持、食欲及び腸の運動を含む、多数の重要な生理機能に関与する重要なペプチドホルモンである。従って、この受容体のアンタゴニストは、肥満症の治療について研究されているが、グレリンアゴニストは、成長ホルモン欠損により生じる病状、消耗症候群及び運動不全を伴う胃腸障害を含む様々な疾病の治療に関与する。
【0026】
【化5】

【実施例】
【0027】
合成法
液相及び固相技術の両方を含む、色々な合成方法を使用して、本発明の大環状化合物を得ることができ、その幾つかは、既にWO01/25257に開示されている。
【0028】
チオエステルリンカー方策を用いる、本発明の化合物の固相合成への第一のアプローチの概要は、図(1)に示す。閉環メタセシス(RCM)と呼ばれる、第二のアプローチは、また、一般に図(2)で概略する。その両方において、その構成は、4段階を含む。第一は、生物学的標的での相互作用のための認識要素を主に含み、さらに、主に立体配座の調節及び規定のためにキーとなるテザー部分を含む基礎単位の合成である。これらの基礎単位は、標準化学変換及び本明細書中の標準手順に記載されているものを使用して、一般には逐次的に、第二段階で、集成する。次いで、集成からの前駆体は、複数のステップを含むこともある第三ステージで環化され、大環状構造が得られる。最後に、保護基の除去及び場合によっては精製を含む環化後処理ステージにより、所望の最終化合物が得られる。
【0029】
一般情報
試薬及び溶媒は、試薬品質又はそれ以上であり、特に記載がなければ、種々の商業的供給会社から入手した状態のままで使用した。使用したDMF、DCM、DME及びTHFは、(i)脱保護、(ii)樹脂キャッピング反応、(iii)洗浄用以外は、DriSolv(登録商標名:EM Science,E.Merck)又は合成等級品質である。アミノ酸(AA)カップリング反応に使用したNMPは、分析等級(analytical grade)である。DMFは、使用前、真空下に最低30分間置くことにより、十分に脱気した。N−メチル及び非天然アミノ酸の誘導体を含有する、Boc−及びFmoc−保護アミノ酸及び側鎖保護誘導体は、市販で得るか又は当業者に公知の標準法により合成した。Ddz−アミノ酸は、標準法により合成するか又はOrpegen(ハイデルベルグ、ドイツ)又はAdvanced Chem Tech( Louisville,KY,USA)から市販のものを得た。Bts−アミノ酸は、確立された手順で合成した。ヒドロキシ酸は、市販で得られるか又は文献(Tetrahedron1989,45,1639〜1646; Tetrahedron1990,46,6623〜6632;J.Org.Chem.1992,57,6239〜6256;J.Am.Chem.Soc.1999,121,6197〜6205)に記載のようにして対応するアミノ酸から合成した。分析TLCは、蛍光指示薬を含有するシリカゲル60F254のプレコート板(厚さ0.25mm)で実施した。
【0030】
1H及び13CNMRスペクトルは、Varian Mercury300MHz分光計で記録し、溶媒の残留プロトン信号に対して内部参照する。溶液中の分子の立体配座に関する情報は、当業者に公知の適切な2次元NMR技術を用いてもとめることができる。
【0031】
HPLC分析は、Xterra MS C18カラム(又は同等物)4.6×50mm(3.5μm)を用いて、Waters Alliance system2695を1mL/分で操作して行う。Waters 996PDAにより、純度評価のためのUVデータを得た。LCPackingsスプリッター(50:40:10)は、流れを3部分に分離することを可能にした。第一部分(50%)は、素性確認のために、質量分光器(APClプローブを備えたMicromass Platform II MS)へ行った。第二部分(40%)は、純度評価のために、蒸発光散乱検出器(ELSD,Polymer Laboratories,PL−ELS−1000)へと行った。最後の部分(10%)は、定量化及び純度評価のために、化学発光窒素検出器(CLND,Antek Model8060)へと行った。最新版Waters Millenniumソフトウェアパッケージを使用して、データを取り込み、処理した。
【0032】
分取HPLC精製を、Xterra MS C18カラム(又は同等物)19×100mm(5μm)のWaters FractionLynx systemを使用して、最終脱保護大環状分子に施行した。Waters2767インジェクター/コレクター及び2mL/分で稼動するWaters515ポンプを備えたAt−Column−Dilution配置を用いてインジェクションを果たした。質量分光器、HPLC及び質量に基づくフラクション収集(mass−directed fraction collection)は、FractionLynxを備えたMassLynxソフトウェアバージョン3.5を介して制御した。MS分析により生成物を含有することが示されたフラクション(13×125mmチューブ)は、最も代表的には遠心蒸発器システム(Genevac HT−4,ThermoSavant Discovery,SpeedVac又は同等物)で減圧下に蒸発させるか又は凍結乾燥させる。次いで化合物を、立体配座、純度及び量の評価のためにLC−MS−UV−ELSD−CLND分析により徹底的に分析した。
【0033】
自動中圧クロマトグラフィー精製を、16個までのサンプルを同時に作動させる、使い捨てシリカ又はC18カートリッジを備えたIsco CombiFlash 16×システムで実施した。MSスペクトルは、Waters Micromass Platform II又はZQシステムで記録した。HRMSスペクトルは、VG Micromass ZAB−ZF分光計で記録した。化学的及び生物学的情報は、Activity Baseデーターベースソフトウェア(IDBS,Guildford,Surrey,UK)を用いて蓄積し、分析した。
【0034】
用語「減圧下での濃縮/蒸発/除去」は、溶媒除去に適切であるとして、水流吸引器圧、又はメカニカルオイル真空ポンプにより設けられたそれより強い真空下において、回転蒸発器を用いる蒸発を示す。「ドライパック」は、溶媒で前処理されていないシリカゲルのクロマトグラフィーを意味し、これは、所望の生成物と任意の不純物との間にRfの大きな差が存在する場合に、一般により大きい規模で精製に適用される。「フラッシュクロマトグラフィー」は、文献中に記載される方法であり、かつその1部が所望の物質に近いRfを有し得る不純物を除去するのに使用されるシリカゲルのクロマトグラフィー(230〜400メッシュ、EM Science)に対し適用される。固相化学に特異的な方法は、別に詳細に記載する。
【0035】
固相化学のための一般的方法
これらの方法は、単一の化合物、又は少数の化合物の合成並びに本発明の化合物のライブラリーの合成のために、等しく良く適用することができる。固相化学では、溶液化学におけるように反応成分を溶解させるだけでなく、樹脂を膨潤させるために、溶媒の選択は重要である。ある種の溶媒は、ポリマーマトリックスと、その性質に応じて異なる相互作用を行い、この膨潤特性に影響することができる。例として、ポリスチレン(DVB架橋を有する)は無極性溶媒、例えばDCM及びトルエン中で、最良に膨潤するが、アルコールのような極性溶媒に曝されると、収縮する。対照的に、他の樹脂、例えばTentaGelのようなPEG−グラフト樹脂は、極性溶媒中ですら、その膨潤を保持する。本発明の反応に関して、適切な選択は、当業者により行うことができる。一般に、ポリスチレン−DVB樹脂は、DMF及びDCMの一般的な溶媒と共に使用される。必要とされる反応溶媒の容積は、一般に、樹脂100mg当り、1〜1.5mLである。用語「適切な溶媒量」が、合成法で使用される場合、それは、この量を示す。溶媒の推奨量は、おおよそ、基礎単位(リンカー、アミノ酸、ヒドロキシ酸及びテザー:最初の樹脂添加量に対して5当量で使用)の0.2M溶液に相当する。反応化学量論は、出発樹脂の「ローディング(mmol/gとして記載される、活性機能部位の数を表す)」に基づいて決定された。
【0036】
反応は、なにか適切な容器、例えば、丸底フラスコ、フリットフィルターと活栓とを備えた固相反応容器、又はテフロン(登録商標)キャップ付きジャー中で行うことができる。容器の大きさは、溶媒用に適切なスペースがあり、かつ有機溶媒で処理されると、ある種の樹脂が著しく膨潤できることを考慮に入れて、樹脂を有効に撹拌するのに十分な余地のあるものでなくてはならない。溶媒/樹脂混合物は、容器の約60%を充たさねばならない。固相化学において、スケールのため、緩慢な機械的撹拌がより好適である場合を除く全ての撹拌は、オービタルシェーカー(例えばForma Scientific,model 430,160〜180rpm)で行うのがベストであり、反応成功のために重要であると一般に容認されている適切な混合を確実に行なうことに注目されたい。
【0037】
樹脂洗浄のために使用する溶媒の容積は、反応のために使用されるのと最低同じ容積であるが、過剰の試薬及び他の可溶性残留副産物を完全に除去するために、一般にそれより多くを使用する。実施例に明記された樹脂洗浄は、それぞれ(特に記載が無ければ)記載された順序で撹拌して少なくとも5分間継続して実行するべきである。洗浄回数は,溶媒又は溶液と共に「n×」で示され、ここでnは整数である。混合溶媒洗浄系の場合には、両方が一緒にリストされ、溶媒1/溶媒2と示される。洗浄ステップで使用される溶媒混合物DCM/MeOH及びTHF/MeOHの割合は、全ての場合に、(3:1)である。他の混合溶媒はリストされているとおりである。洗浄後、「標準方法」での乾燥は、樹脂を先ず空気中で乾燥させ(1時間)、引き続き真空下(通常油ポンプ)に完全に乾燥するまで(最低30分、O/N(一晩)まで)乾燥させることを意味する
【0038】
本明細書中に開示される新規テザー部分の代表例については、図3〜19に示された合成経路が、下記に詳細に示される選択例についての追加情報と共に使用される。記載の経路は、特有の保護方法を表すが、当技術で公知の他の好適な保護基も使用することができる。
【0039】
実施例T12:テザーT12の合成の標準手順
この経路の概要については図3を参照。3−L火炎乾燥三口フラスコ中で、(アミノメチル)フェニルチオベンジルアルコール(12−0、96g、0.39モル)の脱気DMF(1L,0.4M)溶液を調製した。これに、Ddz−N3(0.95当量)を添加し、その後、TMG(0.39モル、49mL)を添加した。反応物を、10分間撹拌し、次いで、DIPEA(68mL、0.39モル)を添加した。混合物は、TLCがDdz−N3の残留を示さなくなるまで(一般に48時間)、N2下に50℃に加熱した。(TLC溶離剤:EtOAc:Hex 50:50;検出:ニンヒドリン)。完了時に、反応混合物にクエン酸緩衝液3Lを添加し、分離した水層をEt2O(3×1500mL)で抽出した。集めた有機層を、クエン酸緩衝液(2×200mL)、水(2×200mL)及びブライン(2×200mL)で順次洗浄した。有機層は、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濾液は減圧下に蒸発させた。ダークオレンジの油状物が得られ、ドライパックにより精製した。この手順に関して、油状物が最初に、EtOAc:Hex:DCM:TEA(20:80:1:0.5、v/v/v/v)に溶解した。この時点で、溶解完了を確実にするために、少量の余分のDCMが必要となることがあった。溶液をカラムに装填し、次いで、所望の生成物に極めて類似した物質に特に注意を払って、不純物の全てが分離されたことが、TLCにより示されるまで、カラムをEtOAc:Hex:DCM:ET3N(20:80:1:0.5)で溶離した。次いで、溶離を、EtOAc:ヘキサン:ET3N(30:70:0.5(v/v/v))を用いて続け、最後に、EtOAc:ヘキサン:ET3N(50:50:0.5)を用いて所望の生成物を溶離する。生成物を含有するフラクションから溶媒を減圧下に除去した後、残分を最小量のDCMに溶解させ、3倍多い容積のヘキサンを添加し、次いで、減圧下に溶媒を再び蒸発させた。オフホワイトの泡状物が得られるまでこの処理を繰り返した。真空下(油ポンプ)で乾燥させている間に、これは固化した。あるいは、前記材料は、DCM(1×)及びヘキサン(2×)を用いる連続濃縮後に固体を産出した。テザーT12が、オフホワイト固体として得られた(収率85〜90%)。
【0040】
実施例T13:テザーT13の合成の標準手順
テザー13の保護バージョンが、H−Ser−OEt−HClから出発すること以外はT14について更に詳細に下に記載される経路と類似した経路(図4参照)により得られ、6つの連続ステップにより総収率は14〜30%である。
1H NMR (CDCl3): δ 7.53 (1H, s, RR'C=CH-O), 6.42-6.58 (2H, m, Ph), 6.30-6.38 (1H, m, Ph), 5.40-5.50 (1H, m, NH), 4.57 (2H, s, CH2OH), 4.40 (2H, d, CH2NHDdz), 3.78 (6H, s, 2X(CH3OPh)), 2.23-2.00 (1H, 広幅, OH), 1.76 (6H, s, RR'C(CH3)2)
13C NMR (CDCl3): δ 162, 161, 155, 149, 141, 136, 103, 99, 82, 57, 56, 39, 29
【0041】
実施例T14:テザーT14の合成の標準手順
合成スキームの概要については図5を参照のこと。
ステップT14−1:0℃で、MeOH中の4.4Mナトリウムメトキシド(1.0mL、4.6mmol、0.01当量)のDCM(300mL)溶液を、MeOH(35mL)で希釈した。ジクロロアセトニトリル(50g、455mmol、1.0当量)を45分間にわたり添加し、生じた混合物を0℃で1時間撹拌した。L−シスチンエチルエステルヒドロクロリド(84.5g、455mmol、1.0当量)を添加し、室温で一晩(O/N)反応撹拌した。反応混合物をDCM及び水で希釈した。分離した水相をDCM(2×)で抽出した。有機相を合わせて、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた粗生成物は、更に精製せずに次のステップで使用することができた。
【0042】
ステップT14−2:ステップT14−1からの粗生成物(理論的収率に基づいて455mmol)のDCM(500mL)溶液に、DIPEA(119mL、652.5mmol、1.5当量)を添加した。生じた混合物を50℃で5時間撹拌し、次いで室温でO/N撹拌した。反応をTLC(30%EtOAc:70%ヘキサン;検出:UV及びCMA、Rf=0.29)によって監視した。反応が終了したら、反応混合物をDCM及び水で希釈した。分離した水相をDCM(2×)で抽出した。有機相を一緒にし、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮した。1HNMRを使用して中間化合物の純度及び素性を確認した。得られた粗生成物は、更に精製せずに次のステップで使用することができた(収率:100%)。
【0043】
ステップT14−3:ステップT14−2からの粗生成物(77g、375mmol、1.0当量)のDMF(500mL)溶液に、アジ化ナトリウム(122g、1874mmol、5.0当量)を添加した。生じた混合物を65℃ O/Nで機械的に撹拌した。TLCでは、出発物質と生成物が共溶出するので、反応は、1H NMRにより監視した。終了及び室温まで冷却後に、反応混合物をEt2O及び飽和NH4Cl水溶液で希釈した。分離した水相をEt2O(2×)で抽出した。有機相を合わせて、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。1H NMRを使用して、中間化合物の純度及び素性を確認した。得られた粗生成物は、更に精製せずに次のステップで使用することができた(収率:93%)。
【0044】
ステップT14−4:95%EtOH(700mL)中のステップT14−3からの粗アジ化物(73.1g、345mmol、1.0当量)の溶液に、10%Pd/C(18.3g、17.3mmol、0.05当量)を添加した。水素ガスを懸濁液中へと1時間泡立たせ、次いで、生じた混合物を、水素バルーンを用いて撹拌した(O/N)。反応をTLC(30%EtOAc:70%ヘキサン;検出:UV及びニンヒドリン)によって監視した。最終生成物がベースラインに留まり、ニンヒドリンに対しポジティブであった。反応が終了していないことをTLCが示した場合は、もう一度10%Pd/C(使用したもとの量の25%)を添加し、水素を溶液中で泡立たせ、生じた懸濁液を室温で再度撹拌した(O/N)。反応溶液は、セライトパッド(Celite Pad)により濾過し、パッドをEtOAcで(生成物がもはや回収されないことをTLCが示すまで)徹底的に濯いだ。1H NMRを使用して、中間化合物の純度及び素性を確認した。得られた粗生成物は、更に精製せずに次のステップで使用することができた(収率:93%)。
【0045】
ステップT14−5:脱気された(真空ポンプで1時間保持)DMF(200mL)中の、ステップT14−4からの粗アミンの溶液(59.5g、320mmol、1.0当量)に、Ddz−N3(93.3g、352mmol、1.1当量)、TMG(40.1mL、320mmol、1.0当量)及びDIPEA(55.8mL、320mmol、1.0当量)を順次添加した。生じた溶液を室温で2日間撹拌した。反応をTLC(100%EtOAc;検出:UV及びニンヒドリン、Rf=0.52)によって監視した。終了後、反応混合物をEt2O及びクエン酸緩衝液の水溶液(1M)で希釈した。分離した水相をEt2O(2×)で抽出した。合わせた有機相をクエン酸緩衝液(1M、2×)、水(2×)およびブライン(2×)で洗浄し、次いで、MgSO4で乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。粗生成物をドライパック(20%EtOAc:80%Hex〜50%EtOAc:50%Hex)によって精製して、保護アミノエステルが黄色固体として得られた。中間化合物の素性を1H NMRを使用して確認した(収率:65%)。
【0046】
ステップT14−6:0℃で、ステップT14−5からの保護されたアミノエステル(10.5g、25.7mmol、1.0当量)のTHF溶液(150mL)に、水素化ホウ素リチウム(1.68g、77.1mmol、3.0当量)及びMeOH(3.1mL、77.1mmol、3.0当量)を添加した。生じた混合物を1時間撹拌し、次いで、同量の水素化ホウ素リチウムとMeOHを添加した。生じた混合物を室温で3時間撹拌した。反応をTLC(5%MeOH、95%EtOAc;検出:UV及びニンヒドリン、Rf=0.27)によって監視した(注意:ボロネートは、出発物質と共溶出するが、急冷後にこのスポットは消失する)。反応混合物を0℃まで冷却し、水をゆっくりと添加して(100〜150mL)、反応を停止させる。大規模では、反応中に生じた塩は、この段階では、水相に完全に溶解せず、このことは、抽出を複雑にし、収率を下げる。生じた混合物を次いで撹拌した(O/N)。水相をEtOAc(4×)で抽出した。有機相を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。化合物は、フラッシュクロマトグラフィ(3%MeOH、97%EtOAc)で精製し、テザーDdz−T14が淡黄色固体として得られた(収率:67%)。
1H NMR (CDCl3, ppm): 7.53 (1H, s, RR'C=CH-S), 6.42-6.58 (2H, m, Ph), 6.35 (1H, t, Ph), 5.60-5.50 (1H, m, NH), 4.75 (2H, s, CH2OH), 4.60 (2H, d, CH2NHDdz), 3.78 (6H, s, 2x(CH3OPh)), 2.70-2.50 (1H, 広幅, OH), 1.76 (6H, s, RR'C(CH3)2)
13C NMR (CDCl3, ppm): 170, 161, 157, 156, 149, 116, 103, 99, 82, 61, 56, 42, 29
【0047】
実施例T21:テザーT21の合成の標準手順
合成スキームについての概要は、図6を参照のこと。この図は、その第二ヒドロキシル基のためのメチルエーテル保護を含む、該テザーについての多段階プロトコールを提供する。除去が容易な他の保護、例えばアセトニド、もこの経路により可能である。
【0048】
実施例T22:テザーT22の合成の標準手順
このテザーのジアステレオマー形への有効な経路を提供する合成スキームの概要は、図7に示される。
【0049】
実施例T23:テザーT23の合成の標準手順
このテザーへの経路を提供する合成スキームは、図8に示される。同属のテザーについて変形を使用することができる。
【0050】
実施例T24:テザーT24の合成の標準手順
このテザーの合成方法は、図9に示される。
【0051】
実施例T26:テザーT26の合成の標準手順
このテザーを提供する合成スキームは、図10に示される。
1825NO6についてのMW計算値:351.39;MS実測値:(M+H)+352
【0052】
実施例T27:テザーT27の合成の標準手順
合成スキームの概要は、図11に示される。
ステップT27−1:Ddz−N−(6−O−TBDPS,2,3−デオキシ−β−D−リボフラノシル)メチルアミン(27−1)
EtOAc(40mL)中の26−5(20g、0.03mmol)の溶液に、アルミナ上の10%ロジウム(200mg)を添加した。混合物に、大気圧下にH2ガスのバルーンを使用して水素添加した(注意:水素ガスは引火性である)。12時間後、反応混合物をセライトのショートパッドにより濾過し、濾滓をMeOHで洗浄した。出発物質と生成物がTLCで同一のRfを有するので、反応は、NMRにより監視しなければならなかった。濾液及び洗液を合わせて、減圧下に濃縮した。残分をドライトルエンと共沸させ、収率98%で27−1が得られ、これは、次のステップに、更に精製せずに直接に使用した。
3445NO6SiについてのMW計算値:591.8097;MS実測値:(M+H)+592.
【0053】
ステップT27−2:Ddz−N−(2,3−デオキシ−β−D−リボフラノシル)メチルアミン(Ddz−T27)
前記ステップからの粗生成物、27−1(100g、0.17mol)、を、無水THF(500mL)に溶解させた。生じた清澄溶液にTBAF(0.25mol、250mL)を添加し、反応液を室温で2時間撹拌した。反応をTLC[(EtOAc/ヘキサン、1;1)検出:ニンヒドリン、Rf=0.5]によって監視した。反応が終了したら、溶液を氷水に注ぎ、水溶液をDCM(3×100mL)で抽出した。有機抽出物を合わせて、飽和クエン酸緩衝液(1×300mL)、H2O(200mL)及びブライン(200mL)で洗浄した。洗浄済み有機抽出物を無水Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させ、油状残分を得た。この残分は、フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン、1:1、Rf=0.5)で精製し、保護されたテザー(Ddz−T27)がシロップとして得られた(収率:90%)。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 1.61 (m, 1H), 1.74 (s, 6H); 1.80-1.88 (m, 3H); 2.66 (sb, 1H); 3.21 (m, 2H); 3.26 (m, 1H), 3.67 (m, 1H); 3.75 (s, 6H); 4.05 (m, 2H); 5.25 (m, 1H); 6.32 (m, 1H); 6.51 (m, 2H)
HPLC (標準勾配):保持時間 (tr): 6.43 分
1827NO6についてのMW計算値:353.4101;MS実測値:(M+H)+354
【0054】
実施例T33:テザーT33の合成の標準手順
このキラルテザーを製造する合成スキームの概要は、図12に示される。(R)−メチルラクテートから生じるT33の(S)−異性体と(S)−メチルラクテート起源の(R)−異性体とを有する出発乳酸誘導体の立体配置に依存してエナンチオマーが得られる。
1H NMR (CDCl3): δ 7.18-7.11 (m, 2H), 6.90 (m, 2H), 6.52 (m, 2H), 6.33(m, 1H), 5.09 (bt, 1H), 4.52 (m, 1H), 3.77 (s, 6H), 3.08 (bq, 2H), 2.64 (bt, 2H), 1.75 (m, 8H); 1.27 (bd, 3H)
13C NMR (CDCl3): δ 160.8, 155.5, 149.5, 131.2, 130.6, 127.4, 121.2, 113.3, 103.2, 98,4, 80.7, 74.8, 66.5, 55,4, 40.2, 30.6, 29.3, 29.2, 27.4, 16.1
【0055】
実施例T38:テザーT38の合成の標準手順
ラセミ物質の合成スキームの概要は、図13に示される。光学的に純粋な酸化プロピレンエナンチオマーの使用により、エナンチオマーが得られる。エポキシドの中心がプロトコールの間、反転されるので、(R)−エポキシドは、T38(S)を提供し、(S)−エポキシドは、T38(R)を提供する。
1H NMR (CDCl3): δ 7.20-7.10, (m, 2H), 6.95-9.80 (m, 2H), 6.55 (bs, 2H), 6.35 (s, 1H), 5.18 (bt, 1H), 4.12 (m, 1H), 3.98 (m, 2H), 3.80 (s, 6H), 3.15 (bq, 2H), 2.65 (t, 2H), 1.98 (bs, 2H), 1.65 (bs, 6H), 1.25 (m, 3H)
【0056】
実施例T39:テザーT39の合成の標準手順
ラセミ生成物の合成スキームの概要は、図14を参照。第三ステップで、分割方法(resolution methodology)によるか又は不斉マイケル付加反応を使用して、エナンチオマー変形が得られる。
1H NMR (CDCl3): δ 7.11-7.08 (2H, m), 6.86 (1H, t), 6.76 (1H, d), 5.05 (1H, 広幅), 4.26-3.85 (4H, m), 3.22-3.07 (2H, m), 2.71 (1H, 広幅), 1.66-1.60 (2H, m), 1.33 (9H, s), 1.17 (3H, d)
13C NMR (CDCl3): δ 156.1, 135.0, 127.1, 127.0, 121.4, 111.7, 69.9, 61.5, 39.8, 38.4, 28.7, 20.7
【0057】
実施例T40:テザーT40の合成の標準手順
ラセミ物質の合成スキームの概要は、図15に示されるが、図16は、キーステップとして酵素的分割を含む、両エナンチオマーへの経路の概要を示す。
1H NMR (CDCl3): δ 7.11-7.08 (2H, m), 6.86 (1H, t), 6.76 (1H, d), 5.05 (1H, 広幅), 4.26-3.85 (4H, m), 3.22-3.07 (2H, m), 2.71 (1H, 広幅), 1.66-1.60 (2H, m), 1.33 (9H, s), 1.17 (3H, d)
13C NMR (CDCl3): δ 156.1, 135.0, 127.1, 127.0, 121.4, 111.7, 69.9, 61.5, 39.8, 38.4, 28.7, 20.7
【0058】
実施例T41:テザーT41の合成の標準手順
図1により大環状分子生成に使用するための適切に保護された誘導体を提供する合成スキームの概要は、図18(a)を参照。
1H NMR (CDCl3): δ 1.23 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 1.69 (s, 3H), 1.74 (s, 3H), 1.90 (m, 2H), 2.35 (m, 1H), 3.35 (m, 2H), 3.76 (s, 6H), 3.92 (m, 2H), 4.40 (m, 2H), 5.10 (m, 1H), 6.15 (s, 1H), 6.25 (s, 2H)
13C NMR (CDCl3): δ 25.52 (CH3), 27.53 (CH3), 28.88 (CH3), 29.61 (CH3), 35.92 (CH2), 42.62 (CH2), 55.43 (CH3), 60.60 (CH2), 82.38 (CH), 83.33 (CH), 83.68 (CH), 84.96 (CH), 98.26 (CH), 103.23 (CH), 118.3 (Cq), 149.50 (Cq), 156.20 (Cq), 160, 02 (Cq)
2233NO8についてのMW計算値:439.50;MS実測値:(M+H)+440
【0059】
実施例T54:テザーT54の合成の標準手順
T55誘導体からの合成スキームの概要は、図18(c)を参照。
1H NMR (CDCl3): δ 1.55 (m, 2H), 1.72 (s, 6H), 1.8-2.01 (m, 4H), 2.75 (sb, 1H), 3.10 (m, 1H), 3.32 (m, 1H), 3.65 (s, 6H), 3.66 (m, 2H), 3.90-4.01 (m, 2H), 5.30 (m, 1H), 6.30 (s, 1H), 6.50 (s, 2H)
13C NMR (CDCl3): δ 28.04 (CH2), 29.18 (CH3), 29.34 (CH3), 31.69 (CH2), 38.08 (CH2), 44.94 (CH2), 55.41 (CH3), 61.28 (CH2), 78.84 (CH), 79.41 (CH), 80.75 (Cq), 98.44 (CH), 103.15 (CH), 149.44 (Cq), 155.64 (Cq), 160.81 (Cq)
1929NO6についてのMW計算値:367.44;MS実測値:(M+H)+368
【0060】
実施例T55:テザーT55の合成の標準手順
合成スキームの概要は、図18(b)を参照。
1H NMR (CDCl3): δ 1.66 (s, 3H), 1.71 (s, 3H), 1.82 (m, 1H), 1.89 (m,1H), 3.26 (m, 2H), 3.77 (s, 6H), 3.80 (m, 2H), 4.84 (m, 1H), 4.95 (m, 1H), 5.20 (m, 1H), 5.70 (m, 1H), 5.85 (m,1H), 6.32 (s, 1H), 6.49 (s, 2H).
13C NMR (CDCl3): δ 29.06 (CH3), 29.42 (CH3), 38.73 (CH2), 44.87 (CH2), 55.45 (CH3), 61.01 (CH2), 80.77 (Cq), 85.84 (CH), 86.25 (CH), 98.28 (CH), 103.28 (CH), 127.84 (CH), 131.95 (CH), 149.42 (Cq), 155.59 (Cq), 160.79 (Cq)
1927NO6についてのMW計算値:365.42;MS実測値:(M+H)+366
【0061】
実施例T56:テザーT56及びT57のための前駆体(56−1)の標準合成手順
閉環メタセシス法(RCM、図2)から特異的に生じるテザー構造の幾つかに関して、テザーは、既にアセンブルされたユニットとして添加されず、大環状化反応の間に適切な前駆体ピースから構成される。そのような1例が、図19に示され、この図では、ペンダントアルケン部分を含む56−1にRCMが施され、アルケンは基質の他の部分のアルケンと結合し、大環状分子を形成し、そうしてテザーT56(又は同族体)を構築する。T56を含有する大環状分子中の二重結合の還元によりT57含有大環状分子が生じる。この方法で構築される他のテザーには、T46、T47、T49及びT51が含まれる。
【0062】
表1に、式(I)の化合物の有利な実施態様60個の構造的特徴をリストする。
表2は、これらの化合物の質量スペクトルによる分析データーを記載する。
【0063】
表1:式(I)
【化6】

(Wは、化合物229から232までを除き、NHであり、229から232までは、WはOである)の代表的化合物
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

【表1E】

【表1F】

【表1G】

【表1H】

【表1I】

*括弧内の記号表示は、テザー上のキラル中心の絶対配置(R又はS)を示す。配置がそのように表示されていない場合は、中心はラセミである。他の表示は、可変置換基の素性を示す。
【0064】
表2:式Iの代表的な化合物の質量スペクトル分析
【表2A】

【表2B】

注記
1.分子式および分子量(MW)は、ActivityBaseソフトウェア(IDBS, Guildford, Surrey, UK)によって構造から、またはMWだけについては、フリーウェアプログラムMolecular Weight Calculator v. 6.32から自動的に算出される。
2.M+HはLC−MS分析から得られる。
3.全ての分析は分取精製後に物質に実施した。
【0065】
本発明化合物の生物学的評価
それぞれ、方法B1及びB2に記載する競合放射性リガンド結合アッセイを使用して、ヒトモチリン受容体及びヒトグレリン受容体における相互作用能力について、本発明の化合物を評価した。それぞれ、モチリン受容体及びグレリン受容体のための方法B3およびB4に記載する機能アッセイを使用して、相互作用のさらなる特性決定を行うことができる。所望の場合には、これらの方法のすべてを高スループットな方法で行って、多くの化合物を同時に評価することができる。
【0066】
方法B1及びB2を使用した本発明の代表的化合物の試験の結果を、表3に示す。
【0067】
方法例B1:競合放射性リガンド結合アッセイ(モチリン受容体)
材料
・ ヒトモチリン受容体を安定に形質移入したCHO細胞から膜を調製し、1.5μg/アッセイポイントの量で使用した。[PerkinElmer(商標) SignalScreen Product #6110544]
・ [125I]−モチリン(PerkinElmer,#NEX−378);最終濃度:0.04〜0.06nM
・ モチリン(Bachem(商標),#H−4385);最終濃度:1μM
・ マルチスクリーンハーベストプレート−GF/B(Multiscreen Harvest plates−GF/B:Millipore(商標),#MAHFB1H60)
・ ポリプロピレン製ディープウェルタイタープレート(Beckman Coulter(商標),#267006)
・ TopSeal−A(PerkinElmer,#6005185)
・ ボトムシール(Millipore,#MATAH0P00)
・ MicroScint−0(PerkinElmer,#6013611)
・ 結合緩衝液:50mM Tris−HCl(pH 7.4)、10mM MgCl2、1mM EDTA、0.1%BSA
【0068】
アッセイ容量
・ 結合緩衝液で希釈した膜150μL
・ 結合緩衝液で希釈した化合物10μL
・ 結合緩衝液で希釈した放射性リガンド([125I]−モチリン)10μL
化合物の最終試験濃度(N=11):10、5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.005μM
【0069】
化合物取り扱い
化合物を、100%DMSOで希釈した10mMのストック濃度でドライアイス上で凍結し、試験日まで−20℃で保存した。試験日に、化合物を室温で解凍し、次に、アッセイ緩衝液で所望の試験濃度に希釈した。これらの条件下で、アッセイにおける最大最終DMSO濃度は0.5%であった。
【0070】
アッセイプロトコル
ディープウェルプレートにおいて、希釈細胞膜(1.5μg/mL)を、結合緩衝液(全結合、N=5)、1μM モチリン(非特異的結合、N=3)または適切な濃度の試験化合物のいずれか10μLと合わせる。10μLの[125I]−モチリン(最終濃度0.04〜0.06nM)を各ウェルに添加することによって、反応を開始させる。プレートをTopSeal−Aで密閉し、ゆっくりボルテックスし、室温で2時間インキュベートする。Tomtec Harvesterを使用して、予備浸漬した(0.3%ポリエチレンイミン、2時間)マルチスクリーンハーベストプレートで試料を濾過して、反応を停止し、冷たい50mM Tris−HCl(pH7.4)500μLで9回洗浄し、次に、プレートをドラフトで30分間空気乾燥する。ボトムシールをプレートに適用してから、各ウェルに25μLのMicroScint−0を添加する。次に、プレートをTopSeal−Aで密閉し、TopCount Microplate Scintillation and Luminescence Counter(PerkinElmer)で、各ウェルにつき30秒間カウントし、結果を1分あたりのカウント(cpm)として表す。
【0071】
変数勾配(variable slope)非線形回帰分析を使用して、GraphPad(商標) Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)によって、データを分析する。Ki値は、[125I]−モチリンについて0.16nMのKd値(膜特性決定の間に前もって測定)を使用して計算した。
【数1】

[式中、全結合および非特異的結合は、1μM モチリンの非存在または存在下においてそれぞれ得られるcpmを表す]。
【0072】
方法例B2:競合放射性リガンド結合アッセイ(グレリン受容体)
ヒト成長ホルモン分泌促進受容体(hGHS−R1a)における競合結合アッセイを、文献記載のアッセイと同様にして実施した(Bednarek MA et al.(2000),Structure−function studies on the new growth hormonereleasing peptide ghrelin:minimal sequence of ghrelin necessary for activation of growth hormone secretagogue receptor 1a;J Med Chem 43:4370〜4376及びPalucki BL et al.(2001),Spiro(indoline−3,4’−piperidine)growth hormone secretagogues as ghrelin mimetics;Bioorg Med Chem Lett 11:1955〜1957)。
材料
・ ヒトグレリン受容体(hGHS−R1a)を安定に形質移入したHEK−293細胞から膜(GHS−R/HEK 293)を調製した。これらの膜は、PerkinElmer Bio Signal(#RBHGHSM,lot#1887)により提供され、0.71μg/アッセイポイントの量で使用した。
・ [125I]−グレリン(PerkinElmer,#NEX−388);最終濃度:0.0070〜0.0085nM
・ グレリン(Bachem,#H−4864);最終濃度:1μM
・ マルチスクリーンハーベストプレート−GF/C(Millipore,#MAHFC1H60)
・ ポリプロピレン製ディープウェルタイタープレート(Beckman Coulter,#267006)
・ TopSeal−A(PerkinElmer,#6005185)
・ ボトムシール(Millipore,#MATAH0P00)
・ MicroScint−0(PerkinElmer,#6013611)
・ 結合緩衝液:25mM Hepes(pH 7.4)、1mM CaCl2、5mM MgCl2、2.5mM EDTA、0.4%BSA
【0073】
アッセイ容量
競合実験は、300μL濾過アッセイフォーマットで実行した。
・ 結合緩衝液で希釈した膜220μL
・ 結合緩衝液で希釈した化合物40μL
・ 結合緩衝液で希釈した放射性リガンド([125I]−グレリン)40μL
本発明化合物の最終試験濃度(N=1):10、1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.005、0.002、0.001μM
【0074】
化合物取り扱い
化合物を、100%DMSOで希釈した10mMのストック濃度においてドライアイス上で凍結し、試験日まで−80℃で保存した。試験日に、化合物を室温で一晩かけて解凍し、次に、アッセイ緩衝液で所望の試験濃度に希釈した。これらの条件下で、アッセイにおける最大最終DMSO濃度は0.1%であった。
【0075】
アッセイプロトコル
ディープウェルプレートにおいて、希釈細胞膜(最終濃度:0.71μg/ウェル)220μLを、結合緩衝液(全結合、N=5)、1μM グレリン(非特異的結合、N=3)または適切な濃度の試験化合物(各試験濃度についてN=2)のいずれか40μLと合わせた。40μLの[125I]−グレリン(最終濃度0.0070〜0.0085nM)を各ウェルに添加することによって、反応を開始させた。プレートをTopSeal−Aで密閉し、ゆっくりボルテックスし、室温で30分間インキュベートした。TomtecHarvesterを使用して、(0.5%ポリエチレンイミン中に予備浸漬した)マルチスクリーンハーベストプレートで試料を濾過することによって、反応を停止し、冷たい50mM Tris−HCl(pH7.4、4℃)500μLで9回洗浄し、次に、プレートをドラフトで30分間空気乾燥した。ボトムシールをプレートに適用してから、各ウェルに25μLのMicroScint−0を添加した。次に、プレートをTopSeal−Aで密閉し、TopCount Microplate Scintillation and Luminescence Counter(PerkinElmer)で、各ウェルにつき、60秒のカウント遅延を使用して、30秒間カウントした。結果を1分あたりのカウント(cpm)として表した。
【0076】
変数勾配の非線形回帰分析を使用して、GraphPad Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)によって、データを分析した。Ki値は、[125I]−グレリンについて0.01nMのKd値(膜特性決定の間に前もって測定)を使用して計算した。
【0077】
max値は、以下の式:
【数2】

[式中、全結合および非特異的結合は、1μM グレリンの非存在または存在下においてそれぞれ得られるcpmを表す]を用いて計算した。
【0078】
方法例B3:エクオリン機能アッセイ(モチリン受容体)
材料
・ ヒトモチリン受容体を発現するAequoScreen(商標)(EUROSCREEN,ベルギー)細胞系(細胞系ES−380−A;受容体受託番号#AF034632)を使用して、膜を調製した。この細胞系は、Gα16およびミトコンドリア的に標的にされるエクオリン(参照番号ES−WT−A5)を共発現するCHO−K1細胞に、ヒトモチリン受容体を形質移入することによって構築される。
・ モチリン(Bachem,#H−4385)
・ アッセイ緩衝液:15mM HEPESおよび0.1%BSA(pH7.0)を含むDMEM−F12(ダルベッコ変法イーグル培地:Dulbeccoe’s Modified Eagles Medium)
・ セレンテラジン(Molecular Probes(商標),Leiden,オランダ)
化合物の最終試験濃度(N=5):10、3.16、1、0.316、0.1μM
【0079】
化合物取り扱い
化合物は、フォーマット済みの96ウェルプレートで約1.2μmolの量の乾燥薄膜として提供した。化合物を10mMの濃度で100%DMSOに溶解させ、使用するまで−20℃で保存した。ドータープレート(daughter plates)を0.1%BSAを含む30%DMSO中に500μMの濃度で調製し、試験まで−20℃で保存した。試験日に、化合物を室温で解凍し、次に、アッセイ緩衝液で所望の試験濃度に希釈した。これらの条件下で、アッセイにおける最大最終DMSO濃度は、0.6%であった。
【0080】
細胞調製
5mM EDTAを補充したCa2+およびMg2+不含燐酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する培養皿から、細胞を収集し、1000xgで2分間ペレット化し、5×106細胞/mLの密度でアッセイ緩衝液(前記参照)に再懸濁し、5μMセレンテラジンの存在下に一晩インキュベートする。ローディング後、細胞をアッセイ緩衝液で5×105細胞/mLの濃度に希釈した。
【0081】
アッセイプロトコル
アゴニスト試験については、細胞懸濁液50μLを、適切な濃度の試験化合物またはモチリン(基準アゴニスト)50μLと、96ウェルプレート中で混合した(二重試料)。受容体活性化によって生じた発光を、Functional Drug Screening System 6000「FDSS 6000」(Hamamatsu Photonics K.K.,日本)を使用して記録した。
【0082】
アンタゴニスト試験については、アゴニスト試験の終了から15〜30分後に、約EC80濃度のモチリン(即ち、0.5nM;100μL)を、試験化合物を含有する細胞懸濁液に注入し(二重試料)、受容体の活性化によって生じた発光を、前段落に記載したように測定した。
【0083】
結果は相対発光量(RLU)として表す。濃度応答曲線を、等式E=Emax/(1+EC50/C)n[式中、Eは所定アゴニスト濃度(C)における測定RLU値であり、Emaxは最大応答であり、EC50は50%刺激を生じる濃度であり、nは勾配指数である]に基づく非線形回帰分析(シグモイダル用量−応答)によって、GraphPad Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)を使用して分析した。アゴニスト試験に関しては、各濃度の試験化合物の結果を、EC80に等しい濃度(即ち、0.5nM)でモチリンによって誘発される信号に対する活性の割合(%)として表した。アンタゴニスト試験に関しては、各濃度の試験化合物の結果を、EC80に等しい濃度(即ち、0.5nM)でモチリンによって誘発される信号に対する阻害の割合(%)として表した。
【0084】
方法例B4:エクオリン機能アッセイ(グレリン受容体)
材料
・ ヒトグレリン受容体を発現するAequoScreen(商標)(EUROSCREEN,ベルギー)細胞系(細胞系ES−410−A;受容体受託番号#60179)を使用して、膜を調製した。この細胞系は、Gα16およびミトコンドリア的に標的にされるエクオリン(参照番号#ES−WT−A5)を共発現するCHO−K1細胞に、ヒトグレリン受容体を形質移入することによって構築される。
・ グレリン(基準アゴニスト;Bachem,#H−4864)
・ アッセイ緩衝液:0.1%BSA(ウシ血清アルブミン;pH7.0)を含有するDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)
・ セレンテラジン(Molecular Probes,Leiden,オランダ)
【0085】
本発明化合物の最終試験濃度(N=8):10、1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、0.001μM
【0086】
化合物取り扱い
化合物のストック溶液(100%DMSO中10mM)を、ドライアイス上で凍結させ、使用まで−20℃で保存した。ストック溶液から、26%DMSOで20倍に希釈して、500μMの濃度のマザー溶液を製造した。次いで、0.1%BSA含有DMEM培地で適切に希釈して、アッセイプレートを調製した。これらの条件において、アッセイの最大最終DMSO濃度は、<0.6%であった。
【0087】
細胞調製
5mM EDTAを補充したCa2+およびMg2+不含燐酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する培養プレートから、AequoScreen(商標)細胞を収集し、1000×gで2分間ペレット化し、5×106細胞/mLの密度で、0.1%BSAを含有するDMEM−Ham’sF12に再懸濁させ、5μMセレンテラジンの存在下に、室温で一晩インキュベートした。ローディング後、細胞をアッセイ緩衝液で5×105細胞/mLの濃度に希釈した。
【0088】
アッセイプロトコル
アゴニスト試験では、96ウェルプレートにおいて、細胞懸濁液50μLを、適切な濃度の試験化合物またはグレリン(基準アゴニスト)50μLと混合した(二重試料)。実験をバリデートするために、幾つかの濃度でグレリン(基準アゴニスト)を試験化合物と同時にテストした。グレリン又は試験化合物に応答する受容体活性化によって生じた発光を、Hamamatsu FDSS6000リーダー(Hamamatsu Photonics K.K.,日本)を使用して記録した。
【0089】
結果の分析と提示
結果を相対発光量(RLU)として表した。濃度応答曲線を、等式E=Emax/(1+EC50/C)n[式中、Eは所定アゴニスト濃度(C)におけるRLU測定値であり、Emaxは最大応答であり、EC50は50%刺激を生じる濃度であり、nは勾配指数である]に基づく非線形回帰分析(シグモイダル用量−応答)によって、GraphPad Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)を使用して分析した。アゴニスト試験では、各濃度の試験化合物の結果を、EC80に等しい濃度(即ち、3.7nM)でグレリンによって誘発される信号に対する活性の割合(%)として表した。EC50、ヒルスロープ(Hill Slope)及び%Emax値を報告した。
【0090】
表3:式Iの代表的な化合物の生物活性
【表3A】

【表3B】

1.示された活性は以下の範囲で示した:
A=0.001〜0.10μM、B=0.1〜1.0μM、C=1.0〜10.0μM
2.結合は実施例に記載する標準的な方法を使用して実施した。
【0091】
本発明の好ましい実施態様が、本明細書中に詳細に記載されるが、本発明がこれらのまさにその実施態様に限定されず、また本発明の範囲又は精神から逸脱せずに種々の変更及び修正をなしうるものと、理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の化合物の固相合成への1アプローチを示す一般的スキームである。
【図2】本発明の化合物の固相合成への第二アプローチを示す一般的スキームである。
【図3−19】本発明の化合物の合成に使用される特殊なテザー(T)を得る経路を示す合成スキームである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
1、A2、A3及びA4は、天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基であり、
3及びA4は、場合により存在し、
WはO又は−NR1−であり、R1は、水素、アルキル、置換アルキル、アシル及びスルホニルからなる群から選択され、
Tは、
【化2】

(式中、
1、q2、q3、q6、q7、q8、q9、q10、q11、q13、q15及びq16は、それぞれ相互に無関係に1、2、3、4又は5であり、
4及びq18は、相互に無関係に1又は2であり、
5は、2、3又は5であり、
12及びq14は、それぞれ相互に無関係に0、1、2、3又は4であり、
17は、0、1、2又は3であり、
1、P2、P3、P4及びP5は、それぞれ相互に無関係にO、S又はNHであり、
6は、N又はCHであり、
7は、O又はCR5253であり、
36は、水素、C1〜C6アルキル、ベンジル又はアシルであり、
50及びR51は、相互に無関係に、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノからなる群より選択され、但し、R50又はR51のうちの一方がヒドロキシ、アルコキシ又はアミノの場合には、他方が水素又はアルキルであるものとし、
52及びR53は、相互に無関係に、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノからなる群より選択され、但し、R52又はR53のうちの一方がヒドロキシ、アルコキシ又はアミノの場合には、他方が水素又はアルキルであるものとし、
54、R55、R56、R57及びR58は、相互に無関係に、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノからなる群より選択され、
AAは、天然アミノ酸の側鎖又は非天然アミノ酸の側鎖であり、
(W)は、TがWに結合する位置を示し、
(A1)はTがA1に結合する位置を示す)からなる群から選択される二価の基である]
の化合物。
【請求項2】
Tが、
【化3A】

【化3B】

[式中、Yは、水素、アルキル、ベンジル又はアシルから選択される]
からなる群より選択される、式(I)の化合物。
【請求項3】
1、A2、A3及びA4のうちの少なくとも1つが、さらに、保護された天然又は非天然アミノ酸残基であってよい、式(I)の化合物。
【請求項4】
Wが、NHである、式(I)の化合物。
【請求項5】
Wが、N−Btsであり、Btsが、ベンゾチアゾールスルホニル保護基である、式(I)の化合物。
【請求項6】
X、A1、A2、A3及びTが、表1に定義されるものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(I)の大環状分子を合成するために使用される式W−T−Xの化合物であって、式中、W及びXは、相互に無関係に、−OH、−NH2及び−NHR1からなる群より選択され、R1は、低級アルキルであり、Tは、
【化4A】

【化4B】

からなる群から選択される立体配座制御要素である、化合物。
【請求項8】
更に、有機合成への使用に好適な保護基1つ以上を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の構造を有する哺乳類モチリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニスト。
【請求項10】
請求項1に記載の構造を有する哺乳類グレリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−527863(P2007−527863A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521360(P2006−521360)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001439
【国際公開番号】WO2005/012331
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506034835)トランザイム・ファーマ (2)
【Fターム(参考)】