薬物送達ステントのための反管腔側の多層被覆構築物
埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)のための被覆物の様々な実施形態が開示される。このデバイスは、反管腔側の面と、管腔側の面と、反管腔側の面と管腔側の面の間における側壁とを有する少なくとも1つの構造的要素を含むことができる。被覆物は、少なくとも2つの連続する被覆層を含むことができる。いくつかの実施形態において、管腔側の面、および、側壁のすべてまたは大部分が被覆層の少なくとも2つに接触していない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達用の埋め込み可能な医療デバイス(その一例がステントである)に関する。より具体的には、本発明は薬物送達ステントのための反管腔側の多層被覆構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、身体の管腔に埋め込まれるために適合化される半径方向に拡張可能な体内補綴物に関する。「体内補綴物」は、身体の内部に設置される人工の埋め込み可能な医療デバイスに相当する。「管腔」は管状器官(例えば、血管など)の空洞を示す。ステントはこれらの体内補綴物の一例である。ステントは、血管または他の解剖学的管腔(例えば、尿路および胆管など)の一部が詰まらないように保つために、また、血管または他の解剖学的管腔(例えば、尿路および胆管など)の一部を時には広げるために機能する一般には円筒形状をしたデバイスである。ステントは、多くの場合、血管におけるアテローム硬化性狭窄の処置において使用される。「狭窄」は、身体の通路または開口部の直径が狭くなるか、または締めつけられることを示す。そのような処置において、ステントは身体の脈管を補強し、かつ、血管系における血管形成術の後での再狭窄を防止する。「再狭窄」は、血管または心臓弁が(バルーン血管形成術、ステント設置または弁形成術によるように)処置され、外見上は成功した後での血管または心臓弁における狭窄の再発を示す。
【0003】
ステントを用いた疾患部位または疾患病変部の処置では、ステントの送達および展開の両方が伴う。「送達」は、ステントを、処置を必要とする血管内の領域(例えば、病変部など)に身体の管腔を通して導入および運搬することを示す。「展開」は、ステントを処置領域において管腔内で広げることに対応する。ステントの送達および展開は、ステントをカテーテルの一方の端部の周りに設置し、カテーテルのその端部を、皮膚を貫いて身体の管腔に挿入し、カテーテルを身体の管腔内において所望の処置場所に進め、ステントを処置場所において広げ、その後、カテーテルを管腔から除くことによって達成される。バルーン拡張型ステントの場合、ステントは、カテーテルに配置されたバルーンの周りに取り付けられる。ステントを取り付ける際には、ステントをバルーンに押し付けるか、または押し込むことが伴う。ステントは、その後、バルーンを膨張させることによって広げられる。その後、バルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜くことができる。自己拡張型ステントの場合、ステントは伸縮自在のさやまたはソックス状物によってカテーテルに固定することができる。ステントが所望の身体場所の中にあるとき、さやを引き抜くことができ、これにより、ステントを自己拡張させることが可能である。
【0004】
ステントは、金属およびポリマーをはじめとする多くの材料から作製される。ポリマー材料には、生体内非分解性および生体内分解性の両方のプラスチック材料が含まれる。ステントの円筒状の構造体が典型的には、相互につながっている構造的要素または支柱のパターンまたは網状構造を含む足場材料から構成される。足場材料は、円筒形状に巻かれる材料のワイヤ、棒材、チューブまたは平面フィルムから形成され得る。さらには、ステントを構成するパターンは、ステントが半径方向に拡張可能であり、かつ、長さ方向に柔軟であることを可能にする。長さ方向の柔軟性は、ステントの送達を容易にし、また、剛直性が、身体の管腔が詰まらないように保つために必要である。パターンは、ステントの要求される長さ方向の柔軟性および剛直性を維持するように設計されなければならない。
【0005】
ステントは機械的介入のためだけに使用されるのではなく、生物学的治療を提供するためのビヒクルとしてもまた使用される。生物学的治療は、ステントに薬物を施すことによって達成することができる。薬物が施されたステントにより、治療物質の疾患部位における局所的投与がもたらされる。有効濃度を処置部位において提供するために、そのような薬物の全身投与は、多くの場合、患者については不都合な副作用または毒性でさえある副作用を生じさせる。局所的送達は、より少ない総レベルの薬物が、全身的な投薬に対する比較において投与され、しかし、特定の部位に集中するという点で好ましい処置方法である。従って、局所的送達では、より少ない副作用が生じ、かつ、より好都合な結果が達成される。
【0006】
薬物が施されたステントを、薬物リザーバー層を表面に作製するために金属性またはポリマーのいずれかの足場材料の表面を被覆することによって製造することができる。薬物リザーバー層は、典型的には、活性な薬剤または薬物を含むポリマーキャリアを含む。被覆を製造するために、ポリマーまたはポリマーの混合物を、当業者に知られている一般に使用される技術を使用してステントに塗布することができる。ステントに塗布される組成物は、溶媒、溶媒に溶解されたポリマー、および、混合物に分散された活性な薬剤を含むことができる。このような組成物は、ステントを組成物に浸けることによって、または、直接的な塗布によって、または、ロールコーティングによって、または、組成物をステントに噴霧することによってステントに塗布することができる。溶媒を蒸発させることができ、これにより、ステントの支柱表面に、ポリマーと、ポリマーに含浸させた活性な薬剤との被覆物を残すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薬物送達ステントの被覆物は、機械的一体性、薬物の制御された放出、および生体適合性をはじめとするいくつかの周知の基準を満たさなければならない。ポリマーに基づく被覆層に含まれる活性な薬剤は、活性な薬剤が被覆物の機械的性質に負の影響を及ぼすので、被覆物の機械的一体性を妨げる可能性があり、また、ポリマーマトリックスがステントの表面に効果的に接着する能力を妨げる可能性がある。活性な薬剤の量を増大することは、接着の有効性を低下させる。下塗り層は、デバイスの表面と、活性な薬剤を含有する被覆またはリザーバー被覆との間における機能的に有用な中間層として、あるいは、リザーバー被覆の多数の層の間における機能的に有用な中間層として役立ち得る。このような下塗り層はリザーバー被覆とデバイスとの間における接着性のつなぎ材を提供する。加えて、薬物が施されたステントによる疾患部位の成功した処置では、多くの場合、活性な薬剤または薬物の放出速度が所定の範囲内であることが要求される。リザーバー層の上側のバリア層またはポリマーの上塗り層は、活性な薬剤または薬物の放出速度を制御するという目的を果たす。
【0008】
さらに、異物ポリマーの存在は身体に悪影響を及ぼし得るので、被覆上のポリマーが身体にさらされることを制限することは一般に望ましい。従って、ステントはまた、被覆の生体適合性を改善するために、リザーバー層および/または上塗り層を覆って生体有益な被覆を含むことができる。しかしながら、一般には、多くても、薬物をステント上に保持し、かつ、その放出を制御するために必要であるほどのポリマーを使用することが適切である。このことは特に、生体吸収性ポリマーを含む被覆の場合には当てはまる。これは、そのようなポリマーはインビボで吸収されるからである。従って、ステント上の被覆材の量を、ステントの処置能に悪影響を及ぼすことなく減らすことは好都合であると考えられる。
【0009】
加えて、管腔側ステント表面における上塗り層(例えば、ポリ(エステルアミド)(PEA)層など)の存在はステントの送達性および被覆物の機械的一体性に対する有害な影響を有する可能性がある。PEA被覆物はステントと送達バルーンとの間の摩擦係数を変化させる。加えて、一部のPEAポリマーは、ポリマーを粘着性または付着性にする構造を有する。PEAが摩擦係数を増大させるか、または、カテーテルバルーンに接着するならば、収縮後のバルーンからのステントの円滑な放出が損なわれる。PEAのステント被覆物はまた、展開後の広範囲にわたるバルーンの剪断損傷を示すことが多く、そのような損傷は血栓形成性の管腔側ステント表面を生じさせ得る。従って、バルーンがPEA上塗り層にさらされることを制限することは望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)のための被覆物に関する。デバイスは、反管腔側の面と、管腔側の面と、反管腔側の面と管腔側の面の間に広がる2つの側壁とを伴う表面を有する構造的要素を含むことができる。被覆は、反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置される連続する第1の層を含むことができる。管腔側の面および側壁の一部分が第1の層に接触していない。被覆はさらに、第1の層のどの部分も第2の層によって覆われないことがないように第1の層を覆う連続する第2の層を含むことができる。構造的要素の管腔側の面が第2の層に接触していない。
【0011】
本発明のさらなる実施形態には、反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置される連続する第1の層を含む、構造的要素のための被覆物が含まれ得る。管腔側の面および側壁の一部分が第1の層に接触していない。被覆はさらに、第1の層の少なくとも一部分が第2の層によって覆われないように第1の層の一部分を覆う連続する第2の層を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書中に記載される本発明の様々な実施形態は、薬物送達用の埋め込み可能な医療デバイスに関する。具体的には、薬物送達のための反管腔側の多層被覆構築物を伴うデバイスの様々な実施形態が記載される。本明細書中に記載されるデバイスのそのような実施形態は、被覆(例えば、ポリマーに基づく被覆など)を伴う基礎となる足場材料または下地を含む埋め込み可能な医療デバイスに関する。ポリマーに基づく被覆は、例えば、疾患部位における局所的投与のための活性な薬剤または薬物を含有することができる。活性な薬剤は、治療効果または予防効果を及ぼすことができる任意の物質であり得る。被覆される基礎となる下地は、ポリマー、金属またはセラミックスが可能であり、あるいは、任意の好適な材料から作製することができる。「埋め込み可能な医療デバイス」は、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステント−グラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極および心臓内リード線(例えば、FINELINEおよびENDOTAK、これらはGuidant Corporation(Santa Clara、CA)から入手可能である)を含むことが意図される。デバイスの基礎となる構造体または下地は事実上任意の設計が可能である。
【0013】
埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)の基礎となる構造体または下地は、完全に、または少なくとも一部が、生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーの組合せ、あるいは、生体安定性ポリマーまたは生体安定性ポリマーの組合せ、あるいは、生分解性ポリマーおよび生体安定性ポリマーの組合せから作製され得る。加えて、デバイスの表面のためのポリマー系被覆は、生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーの組合せ、あるいは、生体安定性ポリマーまたは生体安定性ポリマーの組合せ、あるいは、生分解性ポリマーおよび生体安定性ポリマーの組合せが可能である。
【0014】
被覆を製造するために、ポリマーまたはポリマーの混合物を、当業者に知られている一般に使用される技術を使用してステントに塗布することができる。例えば、ポリマーを、ポリマーを被覆用溶媒または溶媒の混合物に溶解し、得られた溶液を、噴霧、「インクジェット型」の付着方法、はけ塗り、ロールコーティングおよびプラズマ蒸着などによりステントに塗布することによってステントに塗布することができる。「溶媒」は、1つまたは複数の他の物質を溶解または分散することができる物質として、あるいは、1つまたは複数の他の物質を少なくとも部分的に溶解または分散して、分子サイズまたはイオンサイズのレベルでの均一に分散された混合物を形成することができる物質として定義される。溶媒は、周囲温度および周囲圧力において、少なくとも0.1mgのポリマーを1mlの溶媒に溶解することができなければならず、より狭くは、0.5mgのポリマーを1mlの溶媒に溶解することができなければならない。
【0015】
ポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生分解性または生体内分解性であることが可能である。生体安定性(的)は、生分解性でないポリマーを示す。生分解性、生体吸収性および生体内分解性の各用語は交換可能に使用され、体液(例えば、血液など)にさらされたときに完全に分解および/または侵食されることが可能であり、かつ、身体によって徐々に再吸収、吸収および/または排出され得るポリマーを示す。ポリマーを分解し、最終的には吸収および排出するプロセスは、例えば、加水分解、代謝プロセス、全体的または表面的な侵食などによって引き起こされ得る。被覆適用の場合、分解、侵食、吸収および/または再吸収のプロセスが完了した後、ポリマーがデバイス上に残らないことが理解される。いくつかの実施形態では、ほとんど無視できるほどの微量物または残渣が残留する場合がある。生分解性ポリマーから作製されたステントの場合、そのようなステントは、例えば、血管開通および/または薬物送達を維持するというその意図された機能が達成されるまでの期間にわたって体内に留まることが意図される。
【0016】
本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスの下地の実施形態、または、本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスのための被覆の実施形態において使用され得るポリマーの代表的な例には、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(ヒドロキシブチラート−co−バレラート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D−乳酸)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカルボナート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー、ポリアクリラート以外のアクリル酸ポリマーおよびアクリル酸コポリマー、ビニルハリドのポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリビニリデンハリド(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリ芳香族ビニル(例えば、ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニルなど)、ポリ(メタクリラート)、ポリ(アクリラート)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン66およびポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨントリアセタート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルおよびカルボキシメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されない。本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスの下地の実施形態、または、本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスのための被覆の実施形態における使用のために特に十分に適し得るポリマーのさらなる代表的な例には、エチレンビニルアルコールコポリマー(これはEVOHの一般的な名称またはEVALの商品名によって一般に知られている)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、SOLEF21508、これはSolvay Solexis PVDF(Thorofare、NJ)から入手可能である)、ポリフッ化ビニリデン(他の場合にはKYNARとして知られており、ATOFINA Chemicals(Philadelphia、PA)から入手可能である)、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0017】
加えて、ポリ(乳酸)に由来する部分を含有するポリマーもまた、デバイスを製造および被覆するために、ポリ(乳酸)に加えて、または、ポリ(乳酸)の代わりに使用することができる。ポリ(乳酸)に基づくポリマーには、ポリ(乳酸)の誘導体、例えば、加水分解またはカルボキシル化されたポリ(乳酸)、あるいは、その混合物が含まれる。加水分解またはカルボキシル化されたポリ(乳酸)を使用することにより、被覆の増大した分解速度がもたらされることが期待される。埋め込み可能な医療デバイスを製造および被覆するために使用することができる別のタイプのポリ(乳酸)系ポリマーには、グラフトコポリマーおよびブロックコポリマー(例えば、ABブロックコポリマー(「ジブロックコポリマー」)またはABAブロックコポリマー(「トリブロックコポリマー」)など)またはその混合物が含まれる。
【0018】
活性な薬剤の例には、抗増殖性物質が含まれ、例えば、アクチノマシンD、または、その誘導体およびアナログ(これらはSigma−Aldrich(1001 West Saint Paul Avenue、Milwaukee、WI53233)によって製造される)、あるいは、COSMEGEN(これはMerckから入手可能である)が含まれる。アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマシンX1およびアクチノマイシンC1が含まれる。生物活性な薬剤はまた、抗新生物剤、抗炎症剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤、抗トロンビン剤、有糸分裂阻止剤、抗生物質、抗アレルギー剤および抗酸化剤の部類にも含まれ得る。そのような抗新生物剤および/または有糸分裂阻止剤の例には、パクリタキセル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(Stamford、Conn)によるTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventis S.A.(Frankfurt、ドイツ)から得られるTaxotere(登録商標))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pharmacia&Upjohn(Peapack、N.J.)から得られるAdriamycin(登録商標))およびマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(Stamford、Conn)から得られるMutamycin(登録商標))が含まれる。そのような抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤および抗トロンビン剤の例には、アスピリン、ナトリウムヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリンアナログ、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、ならびに、トロンビン阻害剤(例えば、Angiomax a(Biogen,Inc.、Cambridge、Mass.)など)が含まれる。そのような細胞増殖抑制剤または抗増殖剤の例には、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(Stamford、Conn)から得られるCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)から得られるPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標))、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピンなど)、コルヒチン、タンパク質、ペプチド、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω−3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、商品名Mevacor(登録商標)(これはMerck&Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)から得られる))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に対して特異的な抗体など)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)および一酸化窒素が含まれる。抗アレルギー剤の一例がペルミロラストカリウムである。適切な薬剤であり得る他の治療物質または治療剤には、シスプラチン、インスリン増感剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、カルボプラチン、α−インターフェロン、遺伝子操作された上皮細胞、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗ガン薬物、抗凝固剤、フリーラジカル除去剤、エストラジオール、抗生物質、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ABT−578、クロベタゾール、細胞増殖抑制剤、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、ならびに、それらの組合せが含まれる。他の治療物質または治療剤には、ラパマイシンおよびその構造的誘導体または機能的アナログ、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(これはEVEROLIMUSの商品名によって知られている)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび40−O−テトラゾール−ラパマイシンが含まれ得る。
【0019】
デバイスの非ポリマー下地を金属性材料または合金から作製することができ、例えば、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレススチール(316L)、高窒素ステンレススチール(例えば、BIODUR 108)、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(Nitinol)、タンタル、ニッケルタンタル合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム、または、それらの組合せなど(これらに限定されない)から作製することができる。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel Co.(Jenkintown、PA)から入手可能な、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金に対する商品名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。
【0020】
本明細書中に記載されるデバイスの様々な実施形態がステントによって例示され得る。図1はステント10の三次元図を一例を示す。このステントは、数多くの相互につながっている構造的要素または支柱15からなるパターンから構成され得る。本明細書中に開示される様々な実施形態は、ステント、または、図1に例示されるステントパターンに限定されない。本明細書中に開示される実施形態は他のパターンおよび他のデバイスに容易に適用可能である。パターンの構造における変化は事実上無限である。
【0021】
加えて、埋め込み可能な医療デバイスの表面はまた、身体の管腔に対する表面の相対的な位置によって特徴づけられ得る。デバイスは、管腔側表面または内側部分、反管腔側表面または外側部分、および、管腔側表面と反管腔側表面との間の表面または側壁表面を含むことができる。例えば、ステント10の支柱15は、管腔側表面35、反管腔側表面40、および、側壁表面45を含む。支柱はまた、軸によって、すなわち、長さ方向の軸および横方向の軸によって記述することができる。図2は支柱の一部分50の反管腔側表面または管腔側表面52の平面投影図を示し、部分50の直線部に沿った長さ方向の軸55および横方向の軸60が示される。支柱の湾曲部における長さ方向の軸65は、湾曲部上の位置における曲率に対する接線として定義することができる。対応する横方向の軸70は長さ方向の軸65に対して直角である。
【0022】
図3はステントからの構造的要素または支柱の三次元切り取り部80を示す。部分80は反管腔側表面85および側壁表面90を例示する。管腔側表面および反対側の側壁表面は隠れている。部分80の断面95は、丸みのある角100を伴う長方形状である。部分80は、本明細書中に記載される実施形態を例示する目的のためだけに示される。実施形態は部分80の特定の幾何形状に限定されず、他の支柱幾何形状に容易に適用可能である。構造的要素の断面は、反管腔側/管腔側表面と側壁表面との間での端または境界をはっきりと描くとがった角を有する場合がある。加えて、事実上任意の断面形状が適用可能である(例えば、円形、正方形、楕円形、台形状など)。
【0023】
上記で示されたように、図3に示される構造的要素のような構造的要素を伴うステントのための薬物送達被覆は、機械的一体性(例えば、接着)、薬物の制御された放出、および生体適合性をはじめとするいくつかの基準を満たすために設計され得る。これらの基準を満たすために設計される被覆形態には、任意の数の層、および、層の任意の組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、被覆は下記の4つのタイプの層の1つまたは組合せを含むことができる。
(a)下塗り層(これは、埋め込み可能な被覆対象物におけるその後の層の接着、または、以前に形成された層におけるその後の層の接着を改善することができる);
(b)リザーバー層または薬剤層(これはポリマーおよび薬剤あるいはポリマー非含有薬剤を含むことができる);
(c)上塗り層(これは、リザーバー層からの薬剤の放出速度を制御する手段として役立ち得る);および
(d)生体有益な薬剤を含有する生体有益または生体適合性の仕上げ層(これは被覆の生体適合性を改善し得る)。
【0024】
リザーバー層を、少なくとも1つの活性な薬剤のためのリザーバーとして役立たせるための純粋な作用因として、埋め込み可能な医療デバイスの表面の少なくとも一部分に直接に塗布することができる。薬剤はマトリックスとしての生分解性ポリマーと組み合わせることができ、この場合、薬剤はポリマーに結合させてもよく、または結合させなくてもよい。下塗り層は、表面への薬剤層の接着または層間の接着を改善するためにデバイスの表面と薬剤層との間に塗布することができ、また、場合により薬剤を含むことができる。純粋または実質的に純粋な活性な薬剤の層を、生分解性ポリマーを含む層の間に挟むことができる。例えば、主としてEVEROLIMUSを含有するリザーバー層は接着が金属性支柱に対してあまり良好でないことが観測されている。例えば、ポリ(メタクリル酸ブチル)(PBMA)を含む下塗り層は、EVEROLIMUSのリザーバー層をステント上に留めることを可能にする。上塗り層を、活性な薬剤の放出速度を制御するための膜として役立たせるためにリザーバー層の少なくとも一部分の上に塗布することができ、また、上塗り層は場合により薬剤を含むことができる。
【0025】
生体有益な仕上げ層もまた、例えば、急性の血液適合性を増大させることによって、被覆の生体適合性を増大させるために塗布することができ、この層もまた、活性な薬剤を含むことができる。「生体有益な薬剤」は、ポリマーから放出されることは必ずしも伴うことなく、哺乳動物の体内で生物学的利益をもたらす、ポリマーに連結された薬剤である。生物学的利益は、ポリマーまたは被覆が生体有益な薬剤により改変されて、非血栓性になり、その結果、タンパク質の吸収が血栓塞栓症の形成を避けるために阻害または防止されること;あるいは、ポリマーまたは被覆が生体有益な薬剤により改変されて、治癒を促進し、その結果、管腔側ステント表面の内皮化が迅速であり、健全かつ機能的な内皮層を形成すること;あるいは、ポリマーまたは被覆が生体有益な薬剤により改変されて、非炎症性になり、その結果、生体有益な薬剤が、炎症を生じさせる事象カスケードを引き起こす単球および好中球を呼び寄せることを受動的に避けるための生体模倣物として作用することである場合がある。生体有益な薬剤はまた、ポリマーと組み合わせることができ、または混合することができ、またはブレンドすることができる。生体有益な薬剤の代表的な例には、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホナート)、スルホン酸化デキストラン、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(チロシンカーボネート)、ヒアルロン酸、ヘパリンおよび任意の誘導体、ヒルジン、それらのアナログ、同族体、コンジナー、塩、コポリマーおよび組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
上記タイプの層の1つまたは複数を伴うステント上における被覆形態は典型的には順応的(conformal)であり、これは、反管腔側表面、管腔側表面および側壁表面を含めて、支柱の表面のすべてまたはほとんどを覆う被覆である。図4は例示的な順応的薬物送達被覆を例示する。ステントからの支柱115の断面110が図4に示される。支柱115はその表面の4つすべて(反管腔側表面120、管腔側表面125および両方の側壁表面130)に多層被覆を有する。この多層被覆は最も内側の下塗り層135をリザーバー層140の下に有する。上塗り層は、リザーバー層140からの活性な薬剤または薬物の放出を制御するための上塗り層145である。活性な薬剤はまた、活性な薬剤の初期放出速度を調節するために、または、上塗り層がステントの送達時および展開時にカテーテルバルーンに付着することを低下させるために、上塗り層145に組み込むことができる。
【0027】
機械的一体性、制御された放出、および生体適合性をはじめとする上記で議論された基準の1つまたは複数に同様に対処する、ステントの反管腔側表面に完全または実質的に制限された薬物送達被覆を有することが望ましいと考えられる。支柱の反管腔側表面領域に完全に制限された薬物送達被覆を有することには利点がいくつかある。治療的観点から、反管腔側の被覆は順応的な被覆と同じくらい有効であり得る。さらに、反管腔側の被覆はステント上における総ポリマー負荷量の低下を可能にし、このことははステントの生体適合性を増大させることができる。より少ないポリマー負荷はステントの形状因子を低下させ、このことは局所的な血流の乱れを低下させ、従って、ステントの血栓形成性を低下させる。加えて、生分解性被覆物についての低下したポリマー負荷量は、血流中における分解途中のポリマー粒子に帰因する塞栓形成の可能性を低下させる。
【0028】
反管腔側表面に完全または実質的に制限された被覆の別の利点は、上塗り層とカテーテルバルーンとの間の相互作用が低下するか、または排除されることである。管腔側ステント表面における最も外側の上塗り層(具体的には、ポリ(エステルアミド))の使用は、ステントの送達性および被覆の機械的一体性に対する有害な影響を有し得ることが観測されている。PEA被覆物はステントと送達バルーンとの間の摩擦係数を変化させる。加えて、一部のPEAポリマーは、ポリマーを接着性または付着性にする構造を有する。PEAが摩擦係数を増大させるか、または、カテーテルバルーンに接着するならば、膨張後におけるバルーンからのステントの滑らかな放出が損なわれる。PEAのステント被覆物はまた、展開後の広範囲にわたるバルーンの剪断損傷を示し、そのような損傷は管腔側ステント表面の血栓形成性を増大させ得ることが観測されている。
【0029】
本明細書中に記載される反管腔側の多層被覆形態は、上記で議論された利点を有しており、かつ、機械的一体性、制御された放出、および生体適合性の基準の1つまたは複数を満たす。加えて、そのような被覆は、反管腔側表面における空洞または凹みに埋め込まれたリザーバーを使用することなく、反管腔側のリザーバー層からの制御された放出を可能にする。順応的な被覆のために使用される埋め込み可能な医療デバイスの構造的部材の表面は、現在記載されている反管腔側の被覆実施形態において使用される表面と同一である。
【0030】
ポリマー被覆の様々な実施形態が図5〜図15A〜Bによって例示される。これらの図は原寸に比例して描かれておらず、また、様々な層の厚さが例示目的のために過度に強調されているか、または十分に強調されていない。下塗り材のために使用されるポリマーは、埋め込み可能なデバイスの表面(例えば、ステントの金属性表面など)に対する大きな接着能力、または、ポリマー表面(例えば、ポリマーから作製されたステントの表面など)に対する大きな接着能力、または、ポリマー材の以前に塗布された層に対する大きな接着能力を有しなければならない。下塗り層におけるポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであり得る。ポリマーはまた、そのランダム変化体、交互変化体、ブロック変化体、架橋変化体、ブレンド変化体およびグラフト変化体を含むことができる。例えば、下塗り層は、PEA、ポリ(メタクリル酸ブチル)またはポリ(乳酸)を含むことができる。活性な薬剤は、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(これはEVEROLIMUSの商品名によって知られており、NovartisからCertican(商標)として入手可能である)であり得る。活性な薬剤は、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロパン)(Solef)などのポリマーに分散させることができる。上塗り層またはバリア層は、活性な薬剤の移動を制御する任意のポリマーであり得る。例えば、上塗り層はPEAを含むことができる。
【0031】
限定としてではなく、例として、下塗り層は任意の好適な厚さを有することができ、その例として、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲が可能であり、または、より狭くは約0.1ミクロン〜約2ミクロンの範囲が可能が可能である。リザーバー層は約0.1ミクロン〜約20ミクロンの厚さを有することができ、または、より狭くは約0.5ミクロン〜15ミクロンの厚さを有することができる。埋め込み可能な医療デバイスに含められる活性な薬剤の量は、多数のリザーバー層を交互に上に塗布することによってさらに増大させることができる。上塗り層は任意の好適な厚さを有することができ、その例として、約0.1ミクロン〜約20ミクロンの範囲が可能であり、または、より狭くは約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲が可能が可能である。
【0032】
表面または層の「上に(上側の)」は、表面に対して垂直な軸に沿って定められる表面または層よりも高いとして、あるいは、そのような表面または層を覆うとして定義され、しかし、そのような表面または層と接触している必要は必ずしもない。「下に(下側の)」は、「上に(上側の)」の反対として定義される。「覆う」は、上に、かつ、接触しているとして定義される。「連続する(した)」は、空間において中断されない広がりによって特徴づけられるとして定義される。本明細書中で使用されるとき、層の「端」は、層が終わる所を示す表面上の線または領域を示す。
【0033】
本明細書中に開示される被覆実施形態のために好適な、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)の構造的要素は、反管腔側の面と、管腔側の面と、反管腔側の面と管腔側の面の間に広がる2つの側壁とを有する表面を含むことができる。いくつかの実施形態では、被覆層を、反管腔側の面の上に、かつ、場合により、反管腔側の面に隣接する側壁の1つまたは両方のわずかな部分を覆って含む。これらの反管腔側または実質的な反管腔側被覆実施形態の一部では、リザーバー層からの活性な薬剤の制御された放出、および/または、下塗り層に帰因する改善された接着が含まれる。下記に記載される被覆の実施形態において、被覆の下側の構造的要素の表面には空洞がない。
【0034】
埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素における被覆の1つの実施形態では、反管腔側の面の大部分の上に配置された連続する第1の層を含むことができる。連続する第1の層は、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上にあってもよい。管腔側の面および側壁の一部分が第1の層に接触していなくてもよい。
【0035】
被覆はさらに、第1の層のどの部分も第2の層によって覆われないことがないように第1の層を覆う連続する第2の層を含むことができる。構造的要素の管腔側の面が第2の層に接触していなくてもよい。いくつかの実施形態において、第2の層は、第1の層によって覆われない構造的要素の一部分を覆う場合がある。そのような被覆の1つの実施形態において、側壁の大部分が第1の層および第2の層に接触していなくてもよい。
【0036】
上塗り層、下塗り層および/または生体有益層として機能し得る第3の層をリザーバー層の上に有することが好都合である場合がある。上塗り層はリザーバー層からの活性な薬剤の放出を制御することができる。加えて、下塗り層として機能する第3の層は、第2の層と、第2の層の上側の別の層との間における接着を改善することができる。いくつかの実施形態において、連続する第3の層は、第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように第2の層を覆うことができる。加えて、第3の層は、第2の層によって覆われない構造的要素の一部分を覆うことができる。
【0037】
1つの実施形態において、側壁の大部分が第3の層に接触していなくてもよい。あるいは、第3の層は側壁の一部分またはすべてを覆うことができる。
【0038】
さらなる実施形態において、構造的要素の管腔側の面が第3の層に接触していなくてもよい。あるいは、第3の層は管腔側の面の一部分または全体を覆うことができる。
【0039】
特定の実施形態において、第1の層または第2の層の少なくとも1つが、純粋または実質的に純粋な活性な薬剤を含むリザーバー層である場合がある。1つのそのような実施形態において、第1の層がリザーバー層である場合がある。この実施形態において、第2の層が、リザーバー層からの活性な薬剤の放出を制御するために機能する上塗り層またはバリア層である場合がある。第2の層は、さらに、または、あるいは、リザーバー層と、第2の層の上側の別の層との間における接着を改善する下塗り層として機能し得る。
【0040】
図5は、反管腔側が被覆された構造的要素150の1つの実施形態の断面図である。構造的要素150は、リザーバー層155が反管腔側表面162の一部分160の上にある被覆を有する。この被覆はまた、リザーバー層155と、第1の層155の下でない表面の2つのさらなる一部分175との上に第2の層170を含む。さらなる一部分175はリザーバー層155の端190に隣接する。さらに、第2の層170の端195が側壁表面180にあるので、さらなる一部分175は、反管腔側表面162の一部分と、側壁表面180とを含む。側壁表面180の大部分および管腔側表面185のすべてがリザーバー層155および第2の層170に接触していない。上記で示されたように、第2の層170が上塗り層またはバリア層である場合がある。この場合、上塗り層はリザーバー層を効果的に封じ込め、かつ、リザーバー層155からの活性な薬剤の放出速度を制御する。
【0041】
特定の実施形態において、反管腔側または実質的に反管腔側の被覆における被覆層は、被覆層の少なくとも1つの端が構造的要素の長さ方向の軸に平行する細片形状であり得る。例示されるように、図6は、図5に示される被覆の被覆層の実施形態を例示する、構造的要素150の一部分の三次元レンダリングを示す。図6は、リザーバー層155の端190および第2の層170の端195の輪郭を示すことによって、細片形状のリザーバー層155および細片形状の第2の層を例示する。端190および端195は構造的部材150の長さ方向の軸200に対して平行である。他の実施形態において、反管腔側または実質的に反管腔側の被覆は任意の有用な形状を有することができる(例えば、円板形状、長方形など)。図6はまた、端191および端196をそれぞれ有する、円板形状を有するようなリザーバー層155および第2の層170を示す。
【0042】
図7は、図5からの被覆形態を伴う生体有益層の使用を例示する。図7において、生体有益層172が、第2の層170のすべておよび側壁180の一部分を覆って示される。第2の層170のすべておよび構造的部材150の表面の残り部分を覆う、代わりの生体有益層173もまた示される。
【0043】
代わりの実施形態において、第2の層がリザーバー層である場合がある。この実施形態において、そうならば、第1の層が、リザーバー層と表面または別の層との間における接着を改善する下塗り層である場合がある。
【0044】
図8は、下塗り層205が反管腔側表面215の一部分210の上にある被覆を有する構造的部材200の1つの実施形態の断面図である。この被覆はまた、下塗り層205と、下塗り層205の下でない表面の2つのさらなる一部分225との上にリザーバー層220を含む。さらなる一部分225は下塗り層205の端230に隣接する。側壁表面240のすべておよび管腔側表面245は下塗り層205およびリザーバー220の下ではない。
【0045】
上記で議論されたように、上塗り層および/または生体有益層として機能する第3の層をリザーバー層の上に有することが好都合である場合がある。図9は、第3の層250がリザーバー層220の上にある図8に例示される被覆を示す。第3の層250は、リザーバー層220と、構造的部材200の表面の一部分255とを覆う。構造的部材はさらに、第3の層と、第3の層の下でない表面の一部分または全体とを覆う第4の層(例えば、生体有益層)を含むことができる。
【0046】
構造的要素における被覆の他の実施形態では、構造的要素の反管腔側の面の大部分の上に、かつ、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置された連続する第1の層を含むことができる。管腔側の面、および、側壁の一部分が第1の層に接触していなくてもよい。被覆はまた、第1の層の少なくとも一部分が第2の層によって覆われないように第1の層の一部分を覆う連続する第2の層を含むことができる。側壁の大部分が第1の層および第2の層に接触していなくてもよい。1つの実施形態において、第2の層がリザーバー層である場合があり、かつ、第1の層が、構造的要素の表面に対するリザーバー層の接着を改善する下塗り層である場合がある。
【0047】
図10は、被覆された構造的要素300の1つの実施形態の断面図である。構造的要素300は、下塗り層305が反管腔側表面310および側壁表面320の一部分315の上にある被覆を有する。この被覆はまた、リザーバー層325を下塗り層305の一部分の上に含む。側壁表面320のほとんどおよび管腔側表面全体330が下塗り層305およびリザーバー層325に接触していない。
【0048】
加えて、図10に例示される実施形態ではさらに、上塗り層、下塗り層および/または生体有益層として機能し得る第3の層をリザーバー層の上に含むことができる。第3の層は、第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように第2の層を覆う連続する層であり得る。いくつかの実施形態において、第3の層は、第1の層全体の上ではなく、第1の層の一部分の上である場合がある。あるいは、第3の層は第1の層全体の上である場合がある。加えて、第3の層は、第1の層全体と、第1の層によって覆われない構造的要素の表面の一部分とを覆うことができる。1つの実施形態において、側壁の大部分が第3の層と接触していなくてもよい。
【0049】
図11は、第3の層350がリザーバー層325の上にある図10に例示される被覆を示す。第3の層350により、リザーバー層325および下塗り層305の一部分355が覆われる。
【0050】
構造的部材はさらに、第3の層のどの部分も第4の層によって覆われないことがないように第3の層を覆う第4の層を含むことができる。第4の層は、被覆の生体適合性を増大させる生体有益な被覆層である場合がある。
【0051】
そのうえ、上記で記載された被覆実施形態の数多くの変形が可能である。そのような変形は、リザーバー層からの活性な薬剤の放出制御を達成するために、かつ/または、層間の接着を改善するために、かつ/または、被覆の生体適合性を改善するために構成され得る。特定の実施形態において、反管腔側または実質的に反管腔側の被覆実施形態は多数の下塗り層およびリザーバー層を有することができ、この場合、これらの層は被覆の厚さを通して2つのタイプの層の間で交互に並んでいる。そのような実施形態は、例えば、それぞれの段階で異なるタイプの活性な薬剤の使用が要求されるいくつかの段階で行われる1クールの処置のために有用である場合がある。
【0052】
そのうえ、下塗りおよびリザーバーが多数の実施形態では、図5に例示される放出制御の上塗り−リザーバーの実施形態、ならびに、図8および図10に例示される接着改善の下塗り−リザーバーの実施形態を利用することができる。図8は、リザーバー層が、下塗り層の一部分と、下塗り層の下でない表面の一部分との上にある実施形態を例示する。図10は、リザーバー層が下塗り層の一部分の上にある実施形態を例示する。
【0053】
下塗り層およびリザーバー層の多層被覆の1つの実施形態では、図8に例示される実施形態の反復ユニットを含むことができる。図12はそのような多層状の実施形態を例示する。図12は、第1の下塗り層405、第1のリザーバー層410、第2の下塗り層415および第2のリザーバー層420を有する構造的要素400を示す。第1のリザーバー層410および第2のリザーバー層420からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層425もまた示される。第2の下塗り層415もまた、第1のリザーバー層410からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。第2のリザーバー層420および上塗り層425の組合せでは、図5に例示される実施形態が利用される。
【0054】
下塗り層およびリザーバー層の多層被覆の別の実施形態では、図10に例示される実施形態の反復ユニットを含むことができる。図13はそのような多層状の実施形態を例示する。図13は、第1の下塗り層445、第1のリザーバー層450、第2の下塗り層455および第2のリザーバー層460を有する構造的要素440を示す。第1のリザーバー層450および第2のリザーバー層460からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層465もまた示される。第2の下塗り層455もまた、第1のリザーバー層450からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。
【0055】
下塗り層およびリザーバー層の多層被覆のさらなる実施形態では、図8に例示される実施形態を、図10に例示される実施形態の下に含むことができる。図14Aは、第1の下塗り層485、第1のリザーバー層490、第2の下塗り層495および第2のリザーバー層500を有する構造的要素480を示す。第1のリザーバー層490および第2のリザーバー層500からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層505もまた示される。第2の下塗り層495もまた、第1のリザーバー層490からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。
【0056】
加えて、図10に例示される実施形態は、図8に例示される実施形態の下である場合がある。図14Bは、第1の下塗り層525、第1のリザーバー層530、第2の下塗り層535および第2のリザーバー層540を有する構造的要素520を示す。第1のリザーバー層530および第2のリザーバー層540からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層545もまた示される。第2の下塗り層535もまた、第1のリザーバー層530からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。
【0057】
加えて、下塗りおよびリザーバーが多数の被覆では、図8および/または図10によって例示される実施形態との組合せで、図5に示される被覆を含むことができ、この場合、上塗り層170が下塗り層として作用する。図15Aは、図5の被覆を図8によって例示される実施形態の下に含む被覆を示す。図15Aは、第1のリザーバー層565、第1の下塗り層570および第2のリザーバー層575を有する構造的要素560を示す。第1のリザーバー層565および第2のリザーバー層575からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層580もまた示される。
【0058】
加えて、図15Bは、図5の被覆を図10によって例示される実施形態の下に含む被覆を示す。図15Bは、第1のリザーバー層605、第1の下塗り層610および第2のリザーバー層615を有する構造的要素600を示す。第1のリザーバー層605および第2のリザーバー層615からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層620もまた示される。
【0059】
様々な方法を、本明細書中に記載されるような被覆物を形成するために使用することができ、そのような方法には、インクジェットタイプのコーティング、静電コーティング、ロールコーティング、マスキングを伴う熱蒸着、マスキングを伴うプラズマ重合、マイクロシリンジによるポリマー/溶媒溶液の直接的な塗布、直接的なポリマー溶融塗布、および、フォトマスキングを伴うスプレーコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、様々な物質を埋め込み可能な医療デバイスの特定の標的化された部分にだけ塗布する制御された付着システムによるインクジェットタイプの被覆方法を使用することができる。そのようなシステムの代表的な一例、および、そのようなシステムを使用する方法が、米国特許第6,395,326号(Castroら)に記載される。制御された付着システムでは、物質を、複雑な幾何形状を有する埋め込み可能な医療デバイスに付着させることができ、また、そうでない場合には、物質が、被覆がデバイスの特定部分に限定されるように塗布される。そのようなシステムは、ディスペンサーと、医療用の被覆対象体を支持するホルダーとを有し得る。ディスペンサーおよび/またはホルダーは、非常に小さい間隔で、例えば、約0.001インチ未満で移動させることができる。さらに、ディスペンサーおよび/またはホルダーは、x方向、y方向またはz方向で移動させることができ、また、ある1点の周りに回転させることができる。
【0060】
制御された付着システムはディスペンサーアセンブリーを含むことができる。ディスペンサーアセンブリーは、組成物を送達前に保持するリザーバーと、組成物が通過して送達される開口部を有するノズルとを含む単純なデバイスが可能である。1つの例示的なタイプのディスペンサーアセンブリーが、インクジェットタイプのプリントヘッドを含むアセンブリーであり得る。別の例示的なタイプのディスペンサーアセンブリーが、約2nL〜約70nLの範囲での小さい体積を射出することができるマイクロインジェクターであり得る(例えば、World Precision Instrumentsから入手可能なNanoLiter2000、または、Cell Technology Systemから入手可能な、Micropipetteを伴うPneumatic PicoPumps PV830など)。そのようなマイクロインジェクションシリングを好適な設計の顕微鏡と併せて用いることができる。
【0061】
さらに、埋め込み可能な医療デバイスの選択的な被覆を、フォトマスキング技術を使用して行うことができる。マスクの設置および除去を、被覆対象体の表面を選択的に被覆するために使用することができる。マスキングの設置は当業者に知られている。
【0062】
加えて、本発明の物質はまた、静電付着プロセスによって選択的に付着させることができる。そのようなプロセスでは、電気的に帯電またはイオン化した被覆物質がもたらされ得る。電気的荷電はそのような被覆物質をデバイスに示差的に引き寄せさせ、それにより、より大きな転送効率をもたらす。電気的に帯電した被覆物質を、デバイスの異なる領域が異なる電気的電位を有するようにすることによって、デバイスの選択された領域に付着させることができる。
【0063】
図16〜図20は、ステントを被覆するために静電コーティングを使用した例を例示する。図16〜図20は、ポリ(エステルアミド)(PEA)の被覆を有するステントの走査電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。この例で使用されたステントは、Guidant Corporation(Santa Clara、California)から得られる金属性Visionステントである。このステントは3mmの外径を有し、長さが12mmであった。
【0064】
静電コーティング法を、エタノールにおけるPEA−TEMPOの2重量%溶液を使用して、ステントに合計で328μgの固体を被覆するために使用した。PEA−TEMPOはGuidant Corporationから得ることができる。ステントを平行移動し、エレクトロスプレーノズルの下で回転させた。管腔側表面および反管腔側表面での異なる電気的電位を、スプレーマンドレルを覆ってプラスチックスリーブを使用することによって生じさせた。プラスチックスリーブは同じ電荷の液滴を反発させ、これにより、その液滴がステントの管腔側の面に付着することを妨げた。これにより、反管腔側表面よりも薄い被覆層が管腔側表面に生じた。シリンジポンプが1cc/hrで制御され、電圧が5kVで設定された。被覆されたステントを50℃で30分間オーブン乾燥した。図16は、3.5mmの外径を有するカテーテルバルーンを使用するステントの湿潤膨張の後でのステントの反管腔側表面のSEM画像を示す。被覆は、画像によって示されるように損なわれていない。図17および図18は湿潤膨張の後でのステントの管腔側表面を示す。図17および図18における薄い被覆層は軽微〜中程度のバルーンの剪断損傷を示している。
【0065】
もう1つの同じタイプのステントを、静電コーティングによるステントと比較するために、従来のスプレーコーティングを使用して被覆した。ステントに、エタノールにおけるPEA−TEMPOの2重量%溶液の300μgを被覆した。被覆されたステントを50℃で30分間オーブン乾燥した。図19は、従来の被覆ステントのカテーテルバルーンにより3.33mmの外径に乾燥膨張させた後での管腔側表面を示す。図19は、静電コーティングを使用して得られるもの(図17および図18を参照のこと)よりも厚い被覆を示す。図20は、3.3mmの外径を有するカテーテルバルーンによる湿潤拡張の後での従来の被覆ステントの管腔側表面を示す。図20は、より薄いPEA−TEMPO被覆に対する広範囲にわたるバルーンの剪断損傷を示す。被覆に対する損傷は、静電的に塗布された被覆よりもはるかに広範囲であった(図17および図18を参照のこと)。
【0066】
本発明の具体的な実施形態を示し、また、記載したが、様々な変更および改変が、本発明から逸脱することなく、そのより広い様々な態様において行われ得ることは当業者には明らかである。従って、添付された請求項は、本発明の本来の趣旨および範囲に含まれるようなすべてのそのような変更および改変をその範囲に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ステントを示す。
【図2】ステントの一部分の平面投影図を示す。
【図3】ステントの構造的要素の一部分を示す。
【図4】被覆を伴うステントの構造的要素の断面を示す。
【図5】反管腔側が被覆されたステントの構造的要素の1つの実施形態の断面図である。
【図6】図5に例示される被覆層の端部を示す三次元図を示す。
【図7】生体有益層を伴う図5における被覆実施形態を示す。
【図8】反管腔側が被覆されたステントの構造的要素の1つの実施形態の断面図である。
【図9】第3の層を伴う図8に例示される被覆実施形態を示す。
【図10】反管腔側が被覆されたステントの構造的要素の1つの実施形態の断面図である。
【図11】第3の層を伴う図10に例示される被覆実施形態を示す。
【図12】図8に例示される実施形態の反復ユニットを伴う、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図13】図10に例示される実施形態の反復ユニットを伴う、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図14A】図8に例示される実施形態が図10に例示される実施形態の下にある、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図14B】図10に例示される実施形態が図8に例示される実施形態の下にある、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図15A】図5の被覆を図8により例示される実施形態の下に含む被覆を示す。
【図15B】図5の被覆を図10により例示される実施形態の下に含む被覆を示す。
【図16】静電コーティングされたステントの反管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【図17】静電コーティングされたステントの管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【図18】静電コーティングされたステントの管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【図19】従来の被覆ステントの管腔側表面の乾燥拡張後のSEM画像を示す。
【図20】従来の被覆ステントの管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達用の埋め込み可能な医療デバイス(その一例がステントである)に関する。より具体的には、本発明は薬物送達ステントのための反管腔側の多層被覆構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、身体の管腔に埋め込まれるために適合化される半径方向に拡張可能な体内補綴物に関する。「体内補綴物」は、身体の内部に設置される人工の埋め込み可能な医療デバイスに相当する。「管腔」は管状器官(例えば、血管など)の空洞を示す。ステントはこれらの体内補綴物の一例である。ステントは、血管または他の解剖学的管腔(例えば、尿路および胆管など)の一部が詰まらないように保つために、また、血管または他の解剖学的管腔(例えば、尿路および胆管など)の一部を時には広げるために機能する一般には円筒形状をしたデバイスである。ステントは、多くの場合、血管におけるアテローム硬化性狭窄の処置において使用される。「狭窄」は、身体の通路または開口部の直径が狭くなるか、または締めつけられることを示す。そのような処置において、ステントは身体の脈管を補強し、かつ、血管系における血管形成術の後での再狭窄を防止する。「再狭窄」は、血管または心臓弁が(バルーン血管形成術、ステント設置または弁形成術によるように)処置され、外見上は成功した後での血管または心臓弁における狭窄の再発を示す。
【0003】
ステントを用いた疾患部位または疾患病変部の処置では、ステントの送達および展開の両方が伴う。「送達」は、ステントを、処置を必要とする血管内の領域(例えば、病変部など)に身体の管腔を通して導入および運搬することを示す。「展開」は、ステントを処置領域において管腔内で広げることに対応する。ステントの送達および展開は、ステントをカテーテルの一方の端部の周りに設置し、カテーテルのその端部を、皮膚を貫いて身体の管腔に挿入し、カテーテルを身体の管腔内において所望の処置場所に進め、ステントを処置場所において広げ、その後、カテーテルを管腔から除くことによって達成される。バルーン拡張型ステントの場合、ステントは、カテーテルに配置されたバルーンの周りに取り付けられる。ステントを取り付ける際には、ステントをバルーンに押し付けるか、または押し込むことが伴う。ステントは、その後、バルーンを膨張させることによって広げられる。その後、バルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜くことができる。自己拡張型ステントの場合、ステントは伸縮自在のさやまたはソックス状物によってカテーテルに固定することができる。ステントが所望の身体場所の中にあるとき、さやを引き抜くことができ、これにより、ステントを自己拡張させることが可能である。
【0004】
ステントは、金属およびポリマーをはじめとする多くの材料から作製される。ポリマー材料には、生体内非分解性および生体内分解性の両方のプラスチック材料が含まれる。ステントの円筒状の構造体が典型的には、相互につながっている構造的要素または支柱のパターンまたは網状構造を含む足場材料から構成される。足場材料は、円筒形状に巻かれる材料のワイヤ、棒材、チューブまたは平面フィルムから形成され得る。さらには、ステントを構成するパターンは、ステントが半径方向に拡張可能であり、かつ、長さ方向に柔軟であることを可能にする。長さ方向の柔軟性は、ステントの送達を容易にし、また、剛直性が、身体の管腔が詰まらないように保つために必要である。パターンは、ステントの要求される長さ方向の柔軟性および剛直性を維持するように設計されなければならない。
【0005】
ステントは機械的介入のためだけに使用されるのではなく、生物学的治療を提供するためのビヒクルとしてもまた使用される。生物学的治療は、ステントに薬物を施すことによって達成することができる。薬物が施されたステントにより、治療物質の疾患部位における局所的投与がもたらされる。有効濃度を処置部位において提供するために、そのような薬物の全身投与は、多くの場合、患者については不都合な副作用または毒性でさえある副作用を生じさせる。局所的送達は、より少ない総レベルの薬物が、全身的な投薬に対する比較において投与され、しかし、特定の部位に集中するという点で好ましい処置方法である。従って、局所的送達では、より少ない副作用が生じ、かつ、より好都合な結果が達成される。
【0006】
薬物が施されたステントを、薬物リザーバー層を表面に作製するために金属性またはポリマーのいずれかの足場材料の表面を被覆することによって製造することができる。薬物リザーバー層は、典型的には、活性な薬剤または薬物を含むポリマーキャリアを含む。被覆を製造するために、ポリマーまたはポリマーの混合物を、当業者に知られている一般に使用される技術を使用してステントに塗布することができる。ステントに塗布される組成物は、溶媒、溶媒に溶解されたポリマー、および、混合物に分散された活性な薬剤を含むことができる。このような組成物は、ステントを組成物に浸けることによって、または、直接的な塗布によって、または、ロールコーティングによって、または、組成物をステントに噴霧することによってステントに塗布することができる。溶媒を蒸発させることができ、これにより、ステントの支柱表面に、ポリマーと、ポリマーに含浸させた活性な薬剤との被覆物を残すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薬物送達ステントの被覆物は、機械的一体性、薬物の制御された放出、および生体適合性をはじめとするいくつかの周知の基準を満たさなければならない。ポリマーに基づく被覆層に含まれる活性な薬剤は、活性な薬剤が被覆物の機械的性質に負の影響を及ぼすので、被覆物の機械的一体性を妨げる可能性があり、また、ポリマーマトリックスがステントの表面に効果的に接着する能力を妨げる可能性がある。活性な薬剤の量を増大することは、接着の有効性を低下させる。下塗り層は、デバイスの表面と、活性な薬剤を含有する被覆またはリザーバー被覆との間における機能的に有用な中間層として、あるいは、リザーバー被覆の多数の層の間における機能的に有用な中間層として役立ち得る。このような下塗り層はリザーバー被覆とデバイスとの間における接着性のつなぎ材を提供する。加えて、薬物が施されたステントによる疾患部位の成功した処置では、多くの場合、活性な薬剤または薬物の放出速度が所定の範囲内であることが要求される。リザーバー層の上側のバリア層またはポリマーの上塗り層は、活性な薬剤または薬物の放出速度を制御するという目的を果たす。
【0008】
さらに、異物ポリマーの存在は身体に悪影響を及ぼし得るので、被覆上のポリマーが身体にさらされることを制限することは一般に望ましい。従って、ステントはまた、被覆の生体適合性を改善するために、リザーバー層および/または上塗り層を覆って生体有益な被覆を含むことができる。しかしながら、一般には、多くても、薬物をステント上に保持し、かつ、その放出を制御するために必要であるほどのポリマーを使用することが適切である。このことは特に、生体吸収性ポリマーを含む被覆の場合には当てはまる。これは、そのようなポリマーはインビボで吸収されるからである。従って、ステント上の被覆材の量を、ステントの処置能に悪影響を及ぼすことなく減らすことは好都合であると考えられる。
【0009】
加えて、管腔側ステント表面における上塗り層(例えば、ポリ(エステルアミド)(PEA)層など)の存在はステントの送達性および被覆物の機械的一体性に対する有害な影響を有する可能性がある。PEA被覆物はステントと送達バルーンとの間の摩擦係数を変化させる。加えて、一部のPEAポリマーは、ポリマーを粘着性または付着性にする構造を有する。PEAが摩擦係数を増大させるか、または、カテーテルバルーンに接着するならば、収縮後のバルーンからのステントの円滑な放出が損なわれる。PEAのステント被覆物はまた、展開後の広範囲にわたるバルーンの剪断損傷を示すことが多く、そのような損傷は血栓形成性の管腔側ステント表面を生じさせ得る。従って、バルーンがPEA上塗り層にさらされることを制限することは望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)のための被覆物に関する。デバイスは、反管腔側の面と、管腔側の面と、反管腔側の面と管腔側の面の間に広がる2つの側壁とを伴う表面を有する構造的要素を含むことができる。被覆は、反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置される連続する第1の層を含むことができる。管腔側の面および側壁の一部分が第1の層に接触していない。被覆はさらに、第1の層のどの部分も第2の層によって覆われないことがないように第1の層を覆う連続する第2の層を含むことができる。構造的要素の管腔側の面が第2の層に接触していない。
【0011】
本発明のさらなる実施形態には、反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置される連続する第1の層を含む、構造的要素のための被覆物が含まれ得る。管腔側の面および側壁の一部分が第1の層に接触していない。被覆はさらに、第1の層の少なくとも一部分が第2の層によって覆われないように第1の層の一部分を覆う連続する第2の層を含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書中に記載される本発明の様々な実施形態は、薬物送達用の埋め込み可能な医療デバイスに関する。具体的には、薬物送達のための反管腔側の多層被覆構築物を伴うデバイスの様々な実施形態が記載される。本明細書中に記載されるデバイスのそのような実施形態は、被覆(例えば、ポリマーに基づく被覆など)を伴う基礎となる足場材料または下地を含む埋め込み可能な医療デバイスに関する。ポリマーに基づく被覆は、例えば、疾患部位における局所的投与のための活性な薬剤または薬物を含有することができる。活性な薬剤は、治療効果または予防効果を及ぼすことができる任意の物質であり得る。被覆される基礎となる下地は、ポリマー、金属またはセラミックスが可能であり、あるいは、任意の好適な材料から作製することができる。「埋め込み可能な医療デバイス」は、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステント−グラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極および心臓内リード線(例えば、FINELINEおよびENDOTAK、これらはGuidant Corporation(Santa Clara、CA)から入手可能である)を含むことが意図される。デバイスの基礎となる構造体または下地は事実上任意の設計が可能である。
【0013】
埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)の基礎となる構造体または下地は、完全に、または少なくとも一部が、生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーの組合せ、あるいは、生体安定性ポリマーまたは生体安定性ポリマーの組合せ、あるいは、生分解性ポリマーおよび生体安定性ポリマーの組合せから作製され得る。加えて、デバイスの表面のためのポリマー系被覆は、生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーの組合せ、あるいは、生体安定性ポリマーまたは生体安定性ポリマーの組合せ、あるいは、生分解性ポリマーおよび生体安定性ポリマーの組合せが可能である。
【0014】
被覆を製造するために、ポリマーまたはポリマーの混合物を、当業者に知られている一般に使用される技術を使用してステントに塗布することができる。例えば、ポリマーを、ポリマーを被覆用溶媒または溶媒の混合物に溶解し、得られた溶液を、噴霧、「インクジェット型」の付着方法、はけ塗り、ロールコーティングおよびプラズマ蒸着などによりステントに塗布することによってステントに塗布することができる。「溶媒」は、1つまたは複数の他の物質を溶解または分散することができる物質として、あるいは、1つまたは複数の他の物質を少なくとも部分的に溶解または分散して、分子サイズまたはイオンサイズのレベルでの均一に分散された混合物を形成することができる物質として定義される。溶媒は、周囲温度および周囲圧力において、少なくとも0.1mgのポリマーを1mlの溶媒に溶解することができなければならず、より狭くは、0.5mgのポリマーを1mlの溶媒に溶解することができなければならない。
【0015】
ポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生分解性または生体内分解性であることが可能である。生体安定性(的)は、生分解性でないポリマーを示す。生分解性、生体吸収性および生体内分解性の各用語は交換可能に使用され、体液(例えば、血液など)にさらされたときに完全に分解および/または侵食されることが可能であり、かつ、身体によって徐々に再吸収、吸収および/または排出され得るポリマーを示す。ポリマーを分解し、最終的には吸収および排出するプロセスは、例えば、加水分解、代謝プロセス、全体的または表面的な侵食などによって引き起こされ得る。被覆適用の場合、分解、侵食、吸収および/または再吸収のプロセスが完了した後、ポリマーがデバイス上に残らないことが理解される。いくつかの実施形態では、ほとんど無視できるほどの微量物または残渣が残留する場合がある。生分解性ポリマーから作製されたステントの場合、そのようなステントは、例えば、血管開通および/または薬物送達を維持するというその意図された機能が達成されるまでの期間にわたって体内に留まることが意図される。
【0016】
本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスの下地の実施形態、または、本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスのための被覆の実施形態において使用され得るポリマーの代表的な例には、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(ヒドロキシブチラート−co−バレラート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D−乳酸)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカルボナート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカルボナート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー、ポリアクリラート以外のアクリル酸ポリマーおよびアクリル酸コポリマー、ビニルハリドのポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテルなど)、ポリビニリデンハリド(例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリ芳香族ビニル(例えば、ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニルなど)、ポリ(メタクリラート)、ポリ(アクリラート)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン66およびポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨントリアセタート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルおよびカルボキシメチルセルロースが含まれるが、これらに限定されない。本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスの下地の実施形態、または、本明細書中に開示される埋め込み可能な医療デバイスのための被覆の実施形態における使用のために特に十分に適し得るポリマーのさらなる代表的な例には、エチレンビニルアルコールコポリマー(これはEVOHの一般的な名称またはEVALの商品名によって一般に知られている)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロペン)(例えば、SOLEF21508、これはSolvay Solexis PVDF(Thorofare、NJ)から入手可能である)、ポリフッ化ビニリデン(他の場合にはKYNARとして知られており、ATOFINA Chemicals(Philadelphia、PA)から入手可能である)、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0017】
加えて、ポリ(乳酸)に由来する部分を含有するポリマーもまた、デバイスを製造および被覆するために、ポリ(乳酸)に加えて、または、ポリ(乳酸)の代わりに使用することができる。ポリ(乳酸)に基づくポリマーには、ポリ(乳酸)の誘導体、例えば、加水分解またはカルボキシル化されたポリ(乳酸)、あるいは、その混合物が含まれる。加水分解またはカルボキシル化されたポリ(乳酸)を使用することにより、被覆の増大した分解速度がもたらされることが期待される。埋め込み可能な医療デバイスを製造および被覆するために使用することができる別のタイプのポリ(乳酸)系ポリマーには、グラフトコポリマーおよびブロックコポリマー(例えば、ABブロックコポリマー(「ジブロックコポリマー」)またはABAブロックコポリマー(「トリブロックコポリマー」)など)またはその混合物が含まれる。
【0018】
活性な薬剤の例には、抗増殖性物質が含まれ、例えば、アクチノマシンD、または、その誘導体およびアナログ(これらはSigma−Aldrich(1001 West Saint Paul Avenue、Milwaukee、WI53233)によって製造される)、あるいは、COSMEGEN(これはMerckから入手可能である)が含まれる。アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマシンIV、アクチノマイシンI1、アクチノマシンX1およびアクチノマイシンC1が含まれる。生物活性な薬剤はまた、抗新生物剤、抗炎症剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤、抗トロンビン剤、有糸分裂阻止剤、抗生物質、抗アレルギー剤および抗酸化剤の部類にも含まれ得る。そのような抗新生物剤および/または有糸分裂阻止剤の例には、パクリタキセル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(Stamford、Conn)によるTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventis S.A.(Frankfurt、ドイツ)から得られるTaxotere(登録商標))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pharmacia&Upjohn(Peapack、N.J.)から得られるAdriamycin(登録商標))およびマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(Stamford、Conn)から得られるMutamycin(登録商標))が含まれる。そのような抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤および抗トロンビン剤の例には、アスピリン、ナトリウムヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリンアナログ、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、ならびに、トロンビン阻害剤(例えば、Angiomax a(Biogen,Inc.、Cambridge、Mass.)など)が含まれる。そのような細胞増殖抑制剤または抗増殖剤の例には、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.(Stamford、Conn)から得られるCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)から得られるPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標))、カルシウムチャネル遮断剤(例えば、ニフェジピンなど)、コルヒチン、タンパク質、ペプチド、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω−3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、商品名Mevacor(登録商標)(これはMerck&Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)から得られる))、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に対して特異的な抗体など)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)および一酸化窒素が含まれる。抗アレルギー剤の一例がペルミロラストカリウムである。適切な薬剤であり得る他の治療物質または治療剤には、シスプラチン、インスリン増感剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、カルボプラチン、α−インターフェロン、遺伝子操作された上皮細胞、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗ガン薬物、抗凝固剤、フリーラジカル除去剤、エストラジオール、抗生物質、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ABT−578、クロベタゾール、細胞増殖抑制剤、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、ならびに、それらの組合せが含まれる。他の治療物質または治療剤には、ラパマイシンおよびその構造的誘導体または機能的アナログ、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(これはEVEROLIMUSの商品名によって知られている)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび40−O−テトラゾール−ラパマイシンが含まれ得る。
【0019】
デバイスの非ポリマー下地を金属性材料または合金から作製することができ、例えば、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレススチール(316L)、高窒素ステンレススチール(例えば、BIODUR 108)、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(Nitinol)、タンタル、ニッケルタンタル合金、白金イリジウム合金、金、マグネシウム、または、それらの組合せなど(これらに限定されない)から作製することができる。「MP35N」および「MP20N」は、Standard Press Steel Co.(Jenkintown、PA)から入手可能な、コバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金に対する商品名である。「MP35N」は、35%コバルト、35%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。「MP20N」は、50%コバルト、20%ニッケル、20%クロムおよび10%モリブデンからなる。
【0020】
本明細書中に記載されるデバイスの様々な実施形態がステントによって例示され得る。図1はステント10の三次元図を一例を示す。このステントは、数多くの相互につながっている構造的要素または支柱15からなるパターンから構成され得る。本明細書中に開示される様々な実施形態は、ステント、または、図1に例示されるステントパターンに限定されない。本明細書中に開示される実施形態は他のパターンおよび他のデバイスに容易に適用可能である。パターンの構造における変化は事実上無限である。
【0021】
加えて、埋め込み可能な医療デバイスの表面はまた、身体の管腔に対する表面の相対的な位置によって特徴づけられ得る。デバイスは、管腔側表面または内側部分、反管腔側表面または外側部分、および、管腔側表面と反管腔側表面との間の表面または側壁表面を含むことができる。例えば、ステント10の支柱15は、管腔側表面35、反管腔側表面40、および、側壁表面45を含む。支柱はまた、軸によって、すなわち、長さ方向の軸および横方向の軸によって記述することができる。図2は支柱の一部分50の反管腔側表面または管腔側表面52の平面投影図を示し、部分50の直線部に沿った長さ方向の軸55および横方向の軸60が示される。支柱の湾曲部における長さ方向の軸65は、湾曲部上の位置における曲率に対する接線として定義することができる。対応する横方向の軸70は長さ方向の軸65に対して直角である。
【0022】
図3はステントからの構造的要素または支柱の三次元切り取り部80を示す。部分80は反管腔側表面85および側壁表面90を例示する。管腔側表面および反対側の側壁表面は隠れている。部分80の断面95は、丸みのある角100を伴う長方形状である。部分80は、本明細書中に記載される実施形態を例示する目的のためだけに示される。実施形態は部分80の特定の幾何形状に限定されず、他の支柱幾何形状に容易に適用可能である。構造的要素の断面は、反管腔側/管腔側表面と側壁表面との間での端または境界をはっきりと描くとがった角を有する場合がある。加えて、事実上任意の断面形状が適用可能である(例えば、円形、正方形、楕円形、台形状など)。
【0023】
上記で示されたように、図3に示される構造的要素のような構造的要素を伴うステントのための薬物送達被覆は、機械的一体性(例えば、接着)、薬物の制御された放出、および生体適合性をはじめとするいくつかの基準を満たすために設計され得る。これらの基準を満たすために設計される被覆形態には、任意の数の層、および、層の任意の組合せが含まれ得る。いくつかの実施形態において、被覆は下記の4つのタイプの層の1つまたは組合せを含むことができる。
(a)下塗り層(これは、埋め込み可能な被覆対象物におけるその後の層の接着、または、以前に形成された層におけるその後の層の接着を改善することができる);
(b)リザーバー層または薬剤層(これはポリマーおよび薬剤あるいはポリマー非含有薬剤を含むことができる);
(c)上塗り層(これは、リザーバー層からの薬剤の放出速度を制御する手段として役立ち得る);および
(d)生体有益な薬剤を含有する生体有益または生体適合性の仕上げ層(これは被覆の生体適合性を改善し得る)。
【0024】
リザーバー層を、少なくとも1つの活性な薬剤のためのリザーバーとして役立たせるための純粋な作用因として、埋め込み可能な医療デバイスの表面の少なくとも一部分に直接に塗布することができる。薬剤はマトリックスとしての生分解性ポリマーと組み合わせることができ、この場合、薬剤はポリマーに結合させてもよく、または結合させなくてもよい。下塗り層は、表面への薬剤層の接着または層間の接着を改善するためにデバイスの表面と薬剤層との間に塗布することができ、また、場合により薬剤を含むことができる。純粋または実質的に純粋な活性な薬剤の層を、生分解性ポリマーを含む層の間に挟むことができる。例えば、主としてEVEROLIMUSを含有するリザーバー層は接着が金属性支柱に対してあまり良好でないことが観測されている。例えば、ポリ(メタクリル酸ブチル)(PBMA)を含む下塗り層は、EVEROLIMUSのリザーバー層をステント上に留めることを可能にする。上塗り層を、活性な薬剤の放出速度を制御するための膜として役立たせるためにリザーバー層の少なくとも一部分の上に塗布することができ、また、上塗り層は場合により薬剤を含むことができる。
【0025】
生体有益な仕上げ層もまた、例えば、急性の血液適合性を増大させることによって、被覆の生体適合性を増大させるために塗布することができ、この層もまた、活性な薬剤を含むことができる。「生体有益な薬剤」は、ポリマーから放出されることは必ずしも伴うことなく、哺乳動物の体内で生物学的利益をもたらす、ポリマーに連結された薬剤である。生物学的利益は、ポリマーまたは被覆が生体有益な薬剤により改変されて、非血栓性になり、その結果、タンパク質の吸収が血栓塞栓症の形成を避けるために阻害または防止されること;あるいは、ポリマーまたは被覆が生体有益な薬剤により改変されて、治癒を促進し、その結果、管腔側ステント表面の内皮化が迅速であり、健全かつ機能的な内皮層を形成すること;あるいは、ポリマーまたは被覆が生体有益な薬剤により改変されて、非炎症性になり、その結果、生体有益な薬剤が、炎症を生じさせる事象カスケードを引き起こす単球および好中球を呼び寄せることを受動的に避けるための生体模倣物として作用することである場合がある。生体有益な薬剤はまた、ポリマーと組み合わせることができ、または混合することができ、またはブレンドすることができる。生体有益な薬剤の代表的な例には、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホナート)、スルホン酸化デキストラン、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(チロシンカーボネート)、ヒアルロン酸、ヘパリンおよび任意の誘導体、ヒルジン、それらのアナログ、同族体、コンジナー、塩、コポリマーおよび組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
上記タイプの層の1つまたは複数を伴うステント上における被覆形態は典型的には順応的(conformal)であり、これは、反管腔側表面、管腔側表面および側壁表面を含めて、支柱の表面のすべてまたはほとんどを覆う被覆である。図4は例示的な順応的薬物送達被覆を例示する。ステントからの支柱115の断面110が図4に示される。支柱115はその表面の4つすべて(反管腔側表面120、管腔側表面125および両方の側壁表面130)に多層被覆を有する。この多層被覆は最も内側の下塗り層135をリザーバー層140の下に有する。上塗り層は、リザーバー層140からの活性な薬剤または薬物の放出を制御するための上塗り層145である。活性な薬剤はまた、活性な薬剤の初期放出速度を調節するために、または、上塗り層がステントの送達時および展開時にカテーテルバルーンに付着することを低下させるために、上塗り層145に組み込むことができる。
【0027】
機械的一体性、制御された放出、および生体適合性をはじめとする上記で議論された基準の1つまたは複数に同様に対処する、ステントの反管腔側表面に完全または実質的に制限された薬物送達被覆を有することが望ましいと考えられる。支柱の反管腔側表面領域に完全に制限された薬物送達被覆を有することには利点がいくつかある。治療的観点から、反管腔側の被覆は順応的な被覆と同じくらい有効であり得る。さらに、反管腔側の被覆はステント上における総ポリマー負荷量の低下を可能にし、このことははステントの生体適合性を増大させることができる。より少ないポリマー負荷はステントの形状因子を低下させ、このことは局所的な血流の乱れを低下させ、従って、ステントの血栓形成性を低下させる。加えて、生分解性被覆物についての低下したポリマー負荷量は、血流中における分解途中のポリマー粒子に帰因する塞栓形成の可能性を低下させる。
【0028】
反管腔側表面に完全または実質的に制限された被覆の別の利点は、上塗り層とカテーテルバルーンとの間の相互作用が低下するか、または排除されることである。管腔側ステント表面における最も外側の上塗り層(具体的には、ポリ(エステルアミド))の使用は、ステントの送達性および被覆の機械的一体性に対する有害な影響を有し得ることが観測されている。PEA被覆物はステントと送達バルーンとの間の摩擦係数を変化させる。加えて、一部のPEAポリマーは、ポリマーを接着性または付着性にする構造を有する。PEAが摩擦係数を増大させるか、または、カテーテルバルーンに接着するならば、膨張後におけるバルーンからのステントの滑らかな放出が損なわれる。PEAのステント被覆物はまた、展開後の広範囲にわたるバルーンの剪断損傷を示し、そのような損傷は管腔側ステント表面の血栓形成性を増大させ得ることが観測されている。
【0029】
本明細書中に記載される反管腔側の多層被覆形態は、上記で議論された利点を有しており、かつ、機械的一体性、制御された放出、および生体適合性の基準の1つまたは複数を満たす。加えて、そのような被覆は、反管腔側表面における空洞または凹みに埋め込まれたリザーバーを使用することなく、反管腔側のリザーバー層からの制御された放出を可能にする。順応的な被覆のために使用される埋め込み可能な医療デバイスの構造的部材の表面は、現在記載されている反管腔側の被覆実施形態において使用される表面と同一である。
【0030】
ポリマー被覆の様々な実施形態が図5〜図15A〜Bによって例示される。これらの図は原寸に比例して描かれておらず、また、様々な層の厚さが例示目的のために過度に強調されているか、または十分に強調されていない。下塗り材のために使用されるポリマーは、埋め込み可能なデバイスの表面(例えば、ステントの金属性表面など)に対する大きな接着能力、または、ポリマー表面(例えば、ポリマーから作製されたステントの表面など)に対する大きな接着能力、または、ポリマー材の以前に塗布された層に対する大きな接着能力を有しなければならない。下塗り層におけるポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどであり得る。ポリマーはまた、そのランダム変化体、交互変化体、ブロック変化体、架橋変化体、ブレンド変化体およびグラフト変化体を含むことができる。例えば、下塗り層は、PEA、ポリ(メタクリル酸ブチル)またはポリ(乳酸)を含むことができる。活性な薬剤は、例えば、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(これはEVEROLIMUSの商品名によって知られており、NovartisからCertican(商標)として入手可能である)であり得る。活性な薬剤は、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロパン)(Solef)などのポリマーに分散させることができる。上塗り層またはバリア層は、活性な薬剤の移動を制御する任意のポリマーであり得る。例えば、上塗り層はPEAを含むことができる。
【0031】
限定としてではなく、例として、下塗り層は任意の好適な厚さを有することができ、その例として、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲が可能であり、または、より狭くは約0.1ミクロン〜約2ミクロンの範囲が可能が可能である。リザーバー層は約0.1ミクロン〜約20ミクロンの厚さを有することができ、または、より狭くは約0.5ミクロン〜15ミクロンの厚さを有することができる。埋め込み可能な医療デバイスに含められる活性な薬剤の量は、多数のリザーバー層を交互に上に塗布することによってさらに増大させることができる。上塗り層は任意の好適な厚さを有することができ、その例として、約0.1ミクロン〜約20ミクロンの範囲が可能であり、または、より狭くは約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲が可能が可能である。
【0032】
表面または層の「上に(上側の)」は、表面に対して垂直な軸に沿って定められる表面または層よりも高いとして、あるいは、そのような表面または層を覆うとして定義され、しかし、そのような表面または層と接触している必要は必ずしもない。「下に(下側の)」は、「上に(上側の)」の反対として定義される。「覆う」は、上に、かつ、接触しているとして定義される。「連続する(した)」は、空間において中断されない広がりによって特徴づけられるとして定義される。本明細書中で使用されるとき、層の「端」は、層が終わる所を示す表面上の線または領域を示す。
【0033】
本明細書中に開示される被覆実施形態のために好適な、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、ステントなど)の構造的要素は、反管腔側の面と、管腔側の面と、反管腔側の面と管腔側の面の間に広がる2つの側壁とを有する表面を含むことができる。いくつかの実施形態では、被覆層を、反管腔側の面の上に、かつ、場合により、反管腔側の面に隣接する側壁の1つまたは両方のわずかな部分を覆って含む。これらの反管腔側または実質的な反管腔側被覆実施形態の一部では、リザーバー層からの活性な薬剤の制御された放出、および/または、下塗り層に帰因する改善された接着が含まれる。下記に記載される被覆の実施形態において、被覆の下側の構造的要素の表面には空洞がない。
【0034】
埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素における被覆の1つの実施形態では、反管腔側の面の大部分の上に配置された連続する第1の層を含むことができる。連続する第1の層は、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上にあってもよい。管腔側の面および側壁の一部分が第1の層に接触していなくてもよい。
【0035】
被覆はさらに、第1の層のどの部分も第2の層によって覆われないことがないように第1の層を覆う連続する第2の層を含むことができる。構造的要素の管腔側の面が第2の層に接触していなくてもよい。いくつかの実施形態において、第2の層は、第1の層によって覆われない構造的要素の一部分を覆う場合がある。そのような被覆の1つの実施形態において、側壁の大部分が第1の層および第2の層に接触していなくてもよい。
【0036】
上塗り層、下塗り層および/または生体有益層として機能し得る第3の層をリザーバー層の上に有することが好都合である場合がある。上塗り層はリザーバー層からの活性な薬剤の放出を制御することができる。加えて、下塗り層として機能する第3の層は、第2の層と、第2の層の上側の別の層との間における接着を改善することができる。いくつかの実施形態において、連続する第3の層は、第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように第2の層を覆うことができる。加えて、第3の層は、第2の層によって覆われない構造的要素の一部分を覆うことができる。
【0037】
1つの実施形態において、側壁の大部分が第3の層に接触していなくてもよい。あるいは、第3の層は側壁の一部分またはすべてを覆うことができる。
【0038】
さらなる実施形態において、構造的要素の管腔側の面が第3の層に接触していなくてもよい。あるいは、第3の層は管腔側の面の一部分または全体を覆うことができる。
【0039】
特定の実施形態において、第1の層または第2の層の少なくとも1つが、純粋または実質的に純粋な活性な薬剤を含むリザーバー層である場合がある。1つのそのような実施形態において、第1の層がリザーバー層である場合がある。この実施形態において、第2の層が、リザーバー層からの活性な薬剤の放出を制御するために機能する上塗り層またはバリア層である場合がある。第2の層は、さらに、または、あるいは、リザーバー層と、第2の層の上側の別の層との間における接着を改善する下塗り層として機能し得る。
【0040】
図5は、反管腔側が被覆された構造的要素150の1つの実施形態の断面図である。構造的要素150は、リザーバー層155が反管腔側表面162の一部分160の上にある被覆を有する。この被覆はまた、リザーバー層155と、第1の層155の下でない表面の2つのさらなる一部分175との上に第2の層170を含む。さらなる一部分175はリザーバー層155の端190に隣接する。さらに、第2の層170の端195が側壁表面180にあるので、さらなる一部分175は、反管腔側表面162の一部分と、側壁表面180とを含む。側壁表面180の大部分および管腔側表面185のすべてがリザーバー層155および第2の層170に接触していない。上記で示されたように、第2の層170が上塗り層またはバリア層である場合がある。この場合、上塗り層はリザーバー層を効果的に封じ込め、かつ、リザーバー層155からの活性な薬剤の放出速度を制御する。
【0041】
特定の実施形態において、反管腔側または実質的に反管腔側の被覆における被覆層は、被覆層の少なくとも1つの端が構造的要素の長さ方向の軸に平行する細片形状であり得る。例示されるように、図6は、図5に示される被覆の被覆層の実施形態を例示する、構造的要素150の一部分の三次元レンダリングを示す。図6は、リザーバー層155の端190および第2の層170の端195の輪郭を示すことによって、細片形状のリザーバー層155および細片形状の第2の層を例示する。端190および端195は構造的部材150の長さ方向の軸200に対して平行である。他の実施形態において、反管腔側または実質的に反管腔側の被覆は任意の有用な形状を有することができる(例えば、円板形状、長方形など)。図6はまた、端191および端196をそれぞれ有する、円板形状を有するようなリザーバー層155および第2の層170を示す。
【0042】
図7は、図5からの被覆形態を伴う生体有益層の使用を例示する。図7において、生体有益層172が、第2の層170のすべておよび側壁180の一部分を覆って示される。第2の層170のすべておよび構造的部材150の表面の残り部分を覆う、代わりの生体有益層173もまた示される。
【0043】
代わりの実施形態において、第2の層がリザーバー層である場合がある。この実施形態において、そうならば、第1の層が、リザーバー層と表面または別の層との間における接着を改善する下塗り層である場合がある。
【0044】
図8は、下塗り層205が反管腔側表面215の一部分210の上にある被覆を有する構造的部材200の1つの実施形態の断面図である。この被覆はまた、下塗り層205と、下塗り層205の下でない表面の2つのさらなる一部分225との上にリザーバー層220を含む。さらなる一部分225は下塗り層205の端230に隣接する。側壁表面240のすべておよび管腔側表面245は下塗り層205およびリザーバー220の下ではない。
【0045】
上記で議論されたように、上塗り層および/または生体有益層として機能する第3の層をリザーバー層の上に有することが好都合である場合がある。図9は、第3の層250がリザーバー層220の上にある図8に例示される被覆を示す。第3の層250は、リザーバー層220と、構造的部材200の表面の一部分255とを覆う。構造的部材はさらに、第3の層と、第3の層の下でない表面の一部分または全体とを覆う第4の層(例えば、生体有益層)を含むことができる。
【0046】
構造的要素における被覆の他の実施形態では、構造的要素の反管腔側の面の大部分の上に、かつ、場合により、反管腔側の面から広がる側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置された連続する第1の層を含むことができる。管腔側の面、および、側壁の一部分が第1の層に接触していなくてもよい。被覆はまた、第1の層の少なくとも一部分が第2の層によって覆われないように第1の層の一部分を覆う連続する第2の層を含むことができる。側壁の大部分が第1の層および第2の層に接触していなくてもよい。1つの実施形態において、第2の層がリザーバー層である場合があり、かつ、第1の層が、構造的要素の表面に対するリザーバー層の接着を改善する下塗り層である場合がある。
【0047】
図10は、被覆された構造的要素300の1つの実施形態の断面図である。構造的要素300は、下塗り層305が反管腔側表面310および側壁表面320の一部分315の上にある被覆を有する。この被覆はまた、リザーバー層325を下塗り層305の一部分の上に含む。側壁表面320のほとんどおよび管腔側表面全体330が下塗り層305およびリザーバー層325に接触していない。
【0048】
加えて、図10に例示される実施形態ではさらに、上塗り層、下塗り層および/または生体有益層として機能し得る第3の層をリザーバー層の上に含むことができる。第3の層は、第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように第2の層を覆う連続する層であり得る。いくつかの実施形態において、第3の層は、第1の層全体の上ではなく、第1の層の一部分の上である場合がある。あるいは、第3の層は第1の層全体の上である場合がある。加えて、第3の層は、第1の層全体と、第1の層によって覆われない構造的要素の表面の一部分とを覆うことができる。1つの実施形態において、側壁の大部分が第3の層と接触していなくてもよい。
【0049】
図11は、第3の層350がリザーバー層325の上にある図10に例示される被覆を示す。第3の層350により、リザーバー層325および下塗り層305の一部分355が覆われる。
【0050】
構造的部材はさらに、第3の層のどの部分も第4の層によって覆われないことがないように第3の層を覆う第4の層を含むことができる。第4の層は、被覆の生体適合性を増大させる生体有益な被覆層である場合がある。
【0051】
そのうえ、上記で記載された被覆実施形態の数多くの変形が可能である。そのような変形は、リザーバー層からの活性な薬剤の放出制御を達成するために、かつ/または、層間の接着を改善するために、かつ/または、被覆の生体適合性を改善するために構成され得る。特定の実施形態において、反管腔側または実質的に反管腔側の被覆実施形態は多数の下塗り層およびリザーバー層を有することができ、この場合、これらの層は被覆の厚さを通して2つのタイプの層の間で交互に並んでいる。そのような実施形態は、例えば、それぞれの段階で異なるタイプの活性な薬剤の使用が要求されるいくつかの段階で行われる1クールの処置のために有用である場合がある。
【0052】
そのうえ、下塗りおよびリザーバーが多数の実施形態では、図5に例示される放出制御の上塗り−リザーバーの実施形態、ならびに、図8および図10に例示される接着改善の下塗り−リザーバーの実施形態を利用することができる。図8は、リザーバー層が、下塗り層の一部分と、下塗り層の下でない表面の一部分との上にある実施形態を例示する。図10は、リザーバー層が下塗り層の一部分の上にある実施形態を例示する。
【0053】
下塗り層およびリザーバー層の多層被覆の1つの実施形態では、図8に例示される実施形態の反復ユニットを含むことができる。図12はそのような多層状の実施形態を例示する。図12は、第1の下塗り層405、第1のリザーバー層410、第2の下塗り層415および第2のリザーバー層420を有する構造的要素400を示す。第1のリザーバー層410および第2のリザーバー層420からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層425もまた示される。第2の下塗り層415もまた、第1のリザーバー層410からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。第2のリザーバー層420および上塗り層425の組合せでは、図5に例示される実施形態が利用される。
【0054】
下塗り層およびリザーバー層の多層被覆の別の実施形態では、図10に例示される実施形態の反復ユニットを含むことができる。図13はそのような多層状の実施形態を例示する。図13は、第1の下塗り層445、第1のリザーバー層450、第2の下塗り層455および第2のリザーバー層460を有する構造的要素440を示す。第1のリザーバー層450および第2のリザーバー層460からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層465もまた示される。第2の下塗り層455もまた、第1のリザーバー層450からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。
【0055】
下塗り層およびリザーバー層の多層被覆のさらなる実施形態では、図8に例示される実施形態を、図10に例示される実施形態の下に含むことができる。図14Aは、第1の下塗り層485、第1のリザーバー層490、第2の下塗り層495および第2のリザーバー層500を有する構造的要素480を示す。第1のリザーバー層490および第2のリザーバー層500からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層505もまた示される。第2の下塗り層495もまた、第1のリザーバー層490からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。
【0056】
加えて、図10に例示される実施形態は、図8に例示される実施形態の下である場合がある。図14Bは、第1の下塗り層525、第1のリザーバー層530、第2の下塗り層535および第2のリザーバー層540を有する構造的要素520を示す。第1のリザーバー層530および第2のリザーバー層540からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層545もまた示される。第2の下塗り層535もまた、第1のリザーバー層530からの活性な薬剤の放出を制御するために作用することができる。
【0057】
加えて、下塗りおよびリザーバーが多数の被覆では、図8および/または図10によって例示される実施形態との組合せで、図5に示される被覆を含むことができ、この場合、上塗り層170が下塗り層として作用する。図15Aは、図5の被覆を図8によって例示される実施形態の下に含む被覆を示す。図15Aは、第1のリザーバー層565、第1の下塗り層570および第2のリザーバー層575を有する構造的要素560を示す。第1のリザーバー層565および第2のリザーバー層575からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層580もまた示される。
【0058】
加えて、図15Bは、図5の被覆を図10によって例示される実施形態の下に含む被覆を示す。図15Bは、第1のリザーバー層605、第1の下塗り層610および第2のリザーバー層615を有する構造的要素600を示す。第1のリザーバー層605および第2のリザーバー層615からの活性な薬剤の放出を制御するための上塗り層620もまた示される。
【0059】
様々な方法を、本明細書中に記載されるような被覆物を形成するために使用することができ、そのような方法には、インクジェットタイプのコーティング、静電コーティング、ロールコーティング、マスキングを伴う熱蒸着、マスキングを伴うプラズマ重合、マイクロシリンジによるポリマー/溶媒溶液の直接的な塗布、直接的なポリマー溶融塗布、および、フォトマスキングを伴うスプレーコーティングが含まれるが、これらに限定されない。例えば、様々な物質を埋め込み可能な医療デバイスの特定の標的化された部分にだけ塗布する制御された付着システムによるインクジェットタイプの被覆方法を使用することができる。そのようなシステムの代表的な一例、および、そのようなシステムを使用する方法が、米国特許第6,395,326号(Castroら)に記載される。制御された付着システムでは、物質を、複雑な幾何形状を有する埋め込み可能な医療デバイスに付着させることができ、また、そうでない場合には、物質が、被覆がデバイスの特定部分に限定されるように塗布される。そのようなシステムは、ディスペンサーと、医療用の被覆対象体を支持するホルダーとを有し得る。ディスペンサーおよび/またはホルダーは、非常に小さい間隔で、例えば、約0.001インチ未満で移動させることができる。さらに、ディスペンサーおよび/またはホルダーは、x方向、y方向またはz方向で移動させることができ、また、ある1点の周りに回転させることができる。
【0060】
制御された付着システムはディスペンサーアセンブリーを含むことができる。ディスペンサーアセンブリーは、組成物を送達前に保持するリザーバーと、組成物が通過して送達される開口部を有するノズルとを含む単純なデバイスが可能である。1つの例示的なタイプのディスペンサーアセンブリーが、インクジェットタイプのプリントヘッドを含むアセンブリーであり得る。別の例示的なタイプのディスペンサーアセンブリーが、約2nL〜約70nLの範囲での小さい体積を射出することができるマイクロインジェクターであり得る(例えば、World Precision Instrumentsから入手可能なNanoLiter2000、または、Cell Technology Systemから入手可能な、Micropipetteを伴うPneumatic PicoPumps PV830など)。そのようなマイクロインジェクションシリングを好適な設計の顕微鏡と併せて用いることができる。
【0061】
さらに、埋め込み可能な医療デバイスの選択的な被覆を、フォトマスキング技術を使用して行うことができる。マスクの設置および除去を、被覆対象体の表面を選択的に被覆するために使用することができる。マスキングの設置は当業者に知られている。
【0062】
加えて、本発明の物質はまた、静電付着プロセスによって選択的に付着させることができる。そのようなプロセスでは、電気的に帯電またはイオン化した被覆物質がもたらされ得る。電気的荷電はそのような被覆物質をデバイスに示差的に引き寄せさせ、それにより、より大きな転送効率をもたらす。電気的に帯電した被覆物質を、デバイスの異なる領域が異なる電気的電位を有するようにすることによって、デバイスの選択された領域に付着させることができる。
【0063】
図16〜図20は、ステントを被覆するために静電コーティングを使用した例を例示する。図16〜図20は、ポリ(エステルアミド)(PEA)の被覆を有するステントの走査電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。この例で使用されたステントは、Guidant Corporation(Santa Clara、California)から得られる金属性Visionステントである。このステントは3mmの外径を有し、長さが12mmであった。
【0064】
静電コーティング法を、エタノールにおけるPEA−TEMPOの2重量%溶液を使用して、ステントに合計で328μgの固体を被覆するために使用した。PEA−TEMPOはGuidant Corporationから得ることができる。ステントを平行移動し、エレクトロスプレーノズルの下で回転させた。管腔側表面および反管腔側表面での異なる電気的電位を、スプレーマンドレルを覆ってプラスチックスリーブを使用することによって生じさせた。プラスチックスリーブは同じ電荷の液滴を反発させ、これにより、その液滴がステントの管腔側の面に付着することを妨げた。これにより、反管腔側表面よりも薄い被覆層が管腔側表面に生じた。シリンジポンプが1cc/hrで制御され、電圧が5kVで設定された。被覆されたステントを50℃で30分間オーブン乾燥した。図16は、3.5mmの外径を有するカテーテルバルーンを使用するステントの湿潤膨張の後でのステントの反管腔側表面のSEM画像を示す。被覆は、画像によって示されるように損なわれていない。図17および図18は湿潤膨張の後でのステントの管腔側表面を示す。図17および図18における薄い被覆層は軽微〜中程度のバルーンの剪断損傷を示している。
【0065】
もう1つの同じタイプのステントを、静電コーティングによるステントと比較するために、従来のスプレーコーティングを使用して被覆した。ステントに、エタノールにおけるPEA−TEMPOの2重量%溶液の300μgを被覆した。被覆されたステントを50℃で30分間オーブン乾燥した。図19は、従来の被覆ステントのカテーテルバルーンにより3.33mmの外径に乾燥膨張させた後での管腔側表面を示す。図19は、静電コーティングを使用して得られるもの(図17および図18を参照のこと)よりも厚い被覆を示す。図20は、3.3mmの外径を有するカテーテルバルーンによる湿潤拡張の後での従来の被覆ステントの管腔側表面を示す。図20は、より薄いPEA−TEMPO被覆に対する広範囲にわたるバルーンの剪断損傷を示す。被覆に対する損傷は、静電的に塗布された被覆よりもはるかに広範囲であった(図17および図18を参照のこと)。
【0066】
本発明の具体的な実施形態を示し、また、記載したが、様々な変更および改変が、本発明から逸脱することなく、そのより広い様々な態様において行われ得ることは当業者には明らかである。従って、添付された請求項は、本発明の本来の趣旨および範囲に含まれるようなすべてのそのような変更および改変をその範囲に包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ステントを示す。
【図2】ステントの一部分の平面投影図を示す。
【図3】ステントの構造的要素の一部分を示す。
【図4】被覆を伴うステントの構造的要素の断面を示す。
【図5】反管腔側が被覆されたステントの構造的要素の1つの実施形態の断面図である。
【図6】図5に例示される被覆層の端部を示す三次元図を示す。
【図7】生体有益層を伴う図5における被覆実施形態を示す。
【図8】反管腔側が被覆されたステントの構造的要素の1つの実施形態の断面図である。
【図9】第3の層を伴う図8に例示される被覆実施形態を示す。
【図10】反管腔側が被覆されたステントの構造的要素の1つの実施形態の断面図である。
【図11】第3の層を伴う図10に例示される被覆実施形態を示す。
【図12】図8に例示される実施形態の反復ユニットを伴う、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図13】図10に例示される実施形態の反復ユニットを伴う、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図14A】図8に例示される実施形態が図10に例示される実施形態の下にある、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図14B】図10に例示される実施形態が図8に例示される実施形態の下にある、下塗り層およびリザーバー層の多層被覆を示す。
【図15A】図5の被覆を図8により例示される実施形態の下に含む被覆を示す。
【図15B】図5の被覆を図10により例示される実施形態の下に含む被覆を示す。
【図16】静電コーティングされたステントの反管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【図17】静電コーティングされたステントの管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【図18】静電コーティングされたステントの管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【図19】従来の被覆ステントの管腔側表面の乾燥拡張後のSEM画像を示す。
【図20】従来の被覆ステントの管腔側表面の湿潤拡張後のSEM画像を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素の表面が、反管腔側の面と、管腔側の面と、前記反管腔側の面と前記管腔側の面の間に広がる2つの側壁と、を含み、
前記構造的要素が、
前記反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、前記反管腔側の面から広がる前記側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置された連続する第1の層であって、前記管腔側の面および前記側壁の一部分が第1の層に接触していない連続する第1の層と、
前記第1の層のどの部分も第2の層によって覆われないことがないように前記第1の層を覆い、かつ、構造的要素の前記管腔側の面が第2の層に接触していない連続する第2の層と、
を含む被覆を有する、埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素。
【請求項2】
前記第2の層が、前記第1の層によって覆われない構造的要素の一部分を覆う、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項3】
前記側壁の大部分が前記第1の層および前記第2の層に接触していない、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項4】
前記構造的要素はポリマーを含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項5】
前記ポリマーが生分解性である、請求項4に記載の構造的要素。
【請求項6】
前記ポリマーがポリ(エステルアミド)である、請求項4に記載の構造的要素。
【請求項7】
前記埋め込み可能な医療デバイスがステントである、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項8】
前記被覆の下にある前記構造的要素の表面には空洞がない、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項9】
前記構造的要素は金属を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項10】
前記層の少なくとも1つが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび/または40−O−テトラゾール−ラパマイシンを含むリザーバー層である、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項11】
前記層の少なくとも1つが、純粋または実質的に純粋な活性な薬剤を含むリザーバー層である、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項12】
少なくとも1つの層が、ポリマーに分散および/または溶解された活性な薬剤を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項13】
前記ポリマーが生分解性である、請求項12に記載の構造的要素。
【請求項14】
前記第1の層がリザーバー層を含み、かつ、前記第2の層が、上塗り層、下塗り層および/または生体有益層を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項15】
前記第1の層が、上塗り層、下塗り層および/または生体有益層を含み、かつ、前記第2の層がリザーバー層を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項16】
前記第2の層がポリ(エステルアミド)を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項17】
前記第1の層および/または前記第2の層が、前記第1の層の少なくとも1つの端および/または前記第2の層の少なくとも1つの端が前記構造的要素の長さ方向の軸に対して平行または実質的に平行であるような細片形状である、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項18】
前記第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように前記第2の層を覆う連続する第3の層をさらに含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項19】
前記第3の層が生体有益な被覆層および/または上塗り層である、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項20】
前記構造的要素の前記管腔側の面が前記第3の層に接触していない、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項21】
前記第3の層が、前記第2の層によって覆われない前記構造的要素の一部分を覆う、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項22】
前記側壁の大部分が前記第3の層に接触していない、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項23】
前記第3の層がポリ(エステルアミド)を含む、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項24】
前記第3の層のどの部分も第4の層によって覆われないことがないように前記第3の層を覆う連続する第4の層をさらに含む、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項25】
埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素の表面が、反管腔側の面と、管腔側の面と、前記反管腔側の面と前記管腔側の面の間に広がる2つの側壁とを含み、
前記構造的要素が、
前記反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、前記反管腔側の面から広がる前記側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置された連続する第1の層であって、前記管腔側の面および前記側壁の一部分が第1の層に接触していない連続する第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部分が第2の層によって覆われないように前記第1の層の一部分を覆う連続する第2の層と、
を含む被覆を有する、埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素。
【請求項26】
前記側壁の大部分が前記第1の層および前記第2の層に接触していない、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項27】
前記構造的要素はポリマーを含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項28】
前記ポリマーが生分解性である、請求項27に記載の構造的要素。
【請求項29】
前記ポリマーがポリ(エステルアミド)である、請求項27に記載の構造的要素。
【請求項30】
前記埋め込み可能な医療デバイスがステントである、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項31】
前記被覆の下にある前記構造的要素の表面には空洞がない、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項32】
前記構造的要素は金属を含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項33】
前記層の少なくとも1つが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび/または40−O−テトラゾール−ラパマイシンを含むリザーバー層である、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項34】
前記リザーバー層が純粋または実質的に純粋な活性な薬剤を含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項35】
少なくとも1つの層が、ポリマーに分散および/または溶解された活性な薬剤を含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項36】
前記ポリマーが生分解性である、請求項35に記載の構造的要素。
【請求項37】
前記第1の層が、ポリ(エステルアミド)を含む下塗り層である、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項38】
前記第1の層および/または前記第2の層が、前記第1の層の少なくとも1つの端および/または前記第2の層の少なくとも1つの端が前記構造的要素の長さ方向の軸に対して平行または実質的に平行であるような細片形状である、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項39】
前記第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように前記第2の層を覆う連続する第3の層をさらに含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項40】
前記第1の層が下塗り層を含み、前記第2の層がリザーバー層を含み、かつ、前記第3の層が上塗り層および/または生体有益層を含む、請求項39に記載の構造的要素。
【請求項41】
前記側壁の大部分が前記第3の層に接触していない、請求項39に記載の構造的要素。
【請求項42】
前記第3の層のどの部分も第4の層によって覆われないことがないように前記第3の層を覆う連続する第4の層をさらに含み、かつ、前記第4の層が、前記被覆の生体適合性を増大させる生体有益な被覆層である、請求項39に記載の構造的要素。
【請求項1】
埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素の表面が、反管腔側の面と、管腔側の面と、前記反管腔側の面と前記管腔側の面の間に広がる2つの側壁と、を含み、
前記構造的要素が、
前記反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、前記反管腔側の面から広がる前記側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置された連続する第1の層であって、前記管腔側の面および前記側壁の一部分が第1の層に接触していない連続する第1の層と、
前記第1の層のどの部分も第2の層によって覆われないことがないように前記第1の層を覆い、かつ、構造的要素の前記管腔側の面が第2の層に接触していない連続する第2の層と、
を含む被覆を有する、埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素。
【請求項2】
前記第2の層が、前記第1の層によって覆われない構造的要素の一部分を覆う、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項3】
前記側壁の大部分が前記第1の層および前記第2の層に接触していない、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項4】
前記構造的要素はポリマーを含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項5】
前記ポリマーが生分解性である、請求項4に記載の構造的要素。
【請求項6】
前記ポリマーがポリ(エステルアミド)である、請求項4に記載の構造的要素。
【請求項7】
前記埋め込み可能な医療デバイスがステントである、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項8】
前記被覆の下にある前記構造的要素の表面には空洞がない、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項9】
前記構造的要素は金属を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項10】
前記層の少なくとも1つが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび/または40−O−テトラゾール−ラパマイシンを含むリザーバー層である、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項11】
前記層の少なくとも1つが、純粋または実質的に純粋な活性な薬剤を含むリザーバー層である、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項12】
少なくとも1つの層が、ポリマーに分散および/または溶解された活性な薬剤を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項13】
前記ポリマーが生分解性である、請求項12に記載の構造的要素。
【請求項14】
前記第1の層がリザーバー層を含み、かつ、前記第2の層が、上塗り層、下塗り層および/または生体有益層を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項15】
前記第1の層が、上塗り層、下塗り層および/または生体有益層を含み、かつ、前記第2の層がリザーバー層を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項16】
前記第2の層がポリ(エステルアミド)を含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項17】
前記第1の層および/または前記第2の層が、前記第1の層の少なくとも1つの端および/または前記第2の層の少なくとも1つの端が前記構造的要素の長さ方向の軸に対して平行または実質的に平行であるような細片形状である、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項18】
前記第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように前記第2の層を覆う連続する第3の層をさらに含む、請求項1に記載の構造的要素。
【請求項19】
前記第3の層が生体有益な被覆層および/または上塗り層である、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項20】
前記構造的要素の前記管腔側の面が前記第3の層に接触していない、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項21】
前記第3の層が、前記第2の層によって覆われない前記構造的要素の一部分を覆う、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項22】
前記側壁の大部分が前記第3の層に接触していない、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項23】
前記第3の層がポリ(エステルアミド)を含む、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項24】
前記第3の層のどの部分も第4の層によって覆われないことがないように前記第3の層を覆う連続する第4の層をさらに含む、請求項18に記載の構造的要素。
【請求項25】
埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素の表面が、反管腔側の面と、管腔側の面と、前記反管腔側の面と前記管腔側の面の間に広がる2つの側壁とを含み、
前記構造的要素が、
前記反管腔側の面のすべてまたは大部分の上に、かつ、場合により、前記反管腔側の面から広がる前記側壁の少なくとも1つの一部分の上に配置された連続する第1の層であって、前記管腔側の面および前記側壁の一部分が第1の層に接触していない連続する第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部分が第2の層によって覆われないように前記第1の層の一部分を覆う連続する第2の層と、
を含む被覆を有する、埋め込み可能な医療デバイスの構造的要素。
【請求項26】
前記側壁の大部分が前記第1の層および前記第2の層に接触していない、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項27】
前記構造的要素はポリマーを含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項28】
前記ポリマーが生分解性である、請求項27に記載の構造的要素。
【請求項29】
前記ポリマーがポリ(エステルアミド)である、請求項27に記載の構造的要素。
【請求項30】
前記埋め込み可能な医療デバイスがステントである、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項31】
前記被覆の下にある前記構造的要素の表面には空洞がない、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項32】
前記構造的要素は金属を含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項33】
前記層の少なくとも1つが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシンおよび/または40−O−テトラゾール−ラパマイシンを含むリザーバー層である、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項34】
前記リザーバー層が純粋または実質的に純粋な活性な薬剤を含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項35】
少なくとも1つの層が、ポリマーに分散および/または溶解された活性な薬剤を含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項36】
前記ポリマーが生分解性である、請求項35に記載の構造的要素。
【請求項37】
前記第1の層が、ポリ(エステルアミド)を含む下塗り層である、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項38】
前記第1の層および/または前記第2の層が、前記第1の層の少なくとも1つの端および/または前記第2の層の少なくとも1つの端が前記構造的要素の長さ方向の軸に対して平行または実質的に平行であるような細片形状である、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項39】
前記第2の層のどの部分も第3の層によって覆われないことがないように前記第2の層を覆う連続する第3の層をさらに含む、請求項25に記載の構造的要素。
【請求項40】
前記第1の層が下塗り層を含み、前記第2の層がリザーバー層を含み、かつ、前記第3の層が上塗り層および/または生体有益層を含む、請求項39に記載の構造的要素。
【請求項41】
前記側壁の大部分が前記第3の層に接触していない、請求項39に記載の構造的要素。
【請求項42】
前記第3の層のどの部分も第4の層によって覆われないことがないように前記第3の層を覆う連続する第4の層をさらに含み、かつ、前記第4の層が、前記被覆の生体適合性を増大させる生体有益な被覆層である、請求項39に記載の構造的要素。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−523901(P2008−523901A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546792(P2007−546792)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/044766
【国際公開番号】WO2006/065685
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/044766
【国際公開番号】WO2006/065685
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】
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