説明

薬物送達デバイスのための非対称膜

【課題】薬物送達デバイスのための非対称膜を有する浸透圧剤形を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種の薬学的に活性な成分を含む核を備え、さらに、少なくとも1つの非対称膜コーティングを備えた浸透圧剤形であって、前記コーティングが、1種または複数の実質的に水不溶性のポリマーならびに長期保存において実質的な量の過酸化水素またはホルムアルデヒドを発生しない1種または複数の固体水溶性ポリマー材料を含む浸透圧剤形を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質を制御放出するための浸透圧コーティングにおいて非対称膜として適している新規の膜処方物を対象としている。
【背景技術】
【0002】
非対称膜は、Herbigら、J.Controlled Release、35、1995年、127〜136頁、米国特許第5612059号明細書および米国特許第5698220号明細書に、浸透圧薬物送達系におけるコーティングとして開示されている。これらの非対称膜技術(AMT)系は、浸透圧制御放出デバイスに全般的な利点(胃腸管における位置とは独立した信頼可能な薬物送達)をもたらし、さらに、多くの他の浸透圧系で見られるような、コーティングに穴をあける付加的な製造ステップを必要としない。これらの多孔性コーティングの形成では、水不溶性ポリマーを水溶性空孔形成材料と組み合わせる。この混合物を、水および溶媒を組み合わせたものから、浸透圧錠剤核にコーティングする。コーティングが乾燥するにつれて、転相プロセスが生じて、多孔性の非対称膜が製造される。
【0003】
非対称膜を製造する際に空孔形成剤として使用するために多くの材料が開示されているが、以前に開示された材料はすべて、化学的または物理的安定性の問題をこの系に持ち込む。特に、大部分の先行技術材料は、液体であり、これは、保存の間にコーティングの外部に移動してしまうこともある。固体であるもののうち、ポリマー材料も無機材料も教示されている。無機材料は、多くの理由で使用することが困難である。特に、これらは往々にして、結晶化し、かつ/または保存の際に水分を吸収する傾向を有する。教示されている特別なポリマー材料には、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)誘導体が含まれる。これらの材料は両方とも、保存の間に過酸化物および/またはホルムアルデヒドを形成する傾向を強く有する(例えば、Watermanら、「Impurities in Drug Products」、Handbook of Isolation and Characterization of Impurities in Pharmaceuticals、S.AjiraおよびK.M.Alsante、2003年版、75〜85頁参照)。多くの原薬は、その固有の反応性と保存の間の移動傾向との両方によって、このようなポリマー分解生成物と反応する。例えば、バレニクリンは、ホルムアルデヒドおよびギ酸と反応して、N−メチル化生成物をもたらすと、米国特許出願公開第2004/0235850A1号明細書は開示しており、これはさらに、コーティング中のPEG空孔形成剤が保存の間に反応性生成物を発生する傾向を最小化するAMTコーティング用の処方物を開示している。しかしながら、この処方物スペースは、比較的狭い。米国特許第4519801号明細書は、浸透圧系におけるコーティングに有用な水溶性ポリマー成分の幅広いリストを開示しているが、AMT系用の水溶性成分の適切な選択は教示していない。
【非特許文献1】Herbigら、J.Controlled Release、35、1995年、127〜136頁
【特許文献1】米国特許第5612059号明細書
【特許文献2】米国特許第5698220号明細書
【非特許文献2】Watermanら、「Impurities in Drug Products」、Handbook of isolation and Characterization of Impurities in Pharmaceuticals、S.AjiraおよびK.M.Alsante、2003年版、75〜85頁
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0235850A1号明細書
【特許文献4】米国特許第4519801号明細書
【非特許文献3】G.M.Eisenberg、「Colorimetric determination of hydrogen peroxide」、Ind.Eng.Chem.(Anal.Ed.)、1943年、15、327〜328頁
【非特許文献4】M.Ashraf−Khorassaniら、「Purification of pharmaceutical excipients with supercritical fluid extraction」、Pharm.Dev.Tech.2005、10、1〜10頁
【特許文献5】欧州特許出願公開第1027886A2号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第901786A2号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/053653A1号パンフレット
【特許文献8】国際公開第9935131A1号パンフレット
【特許文献9】国際公開第0162736A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、保存の間に、空孔形成材料が反応性副産物を発生せず、結晶化せず、コーティングから移動しないAMT系用の新規の空孔形成材料に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)少なくとも1種の薬学的に活性な成分を含む核および(b)少なくとも1つの非対称膜技術コーティングを備えた剤形を提供するが、前記コーティングは:
a.1種または複数の実質的に水不溶性のポリマーおよび
b.40℃/RH75%で12週間保存した後に約0.01%(w:w)を上回る量の過酸化水素またはホルムアルデヒドを含有しない1種または複数の固体水溶性ポリマー材料
を有する。
【0006】
本発明はさらに、主に浸透圧により薬物を送達するような剤形を提供する。特別な実施形態では、本発明は、薬学的に活性な成分がバレニクリン(5,8,14−トリアザテトラシクロ[10.3.1.02,11.04.9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタエン)またはその薬学的に許容できる塩である剤形を提供する。本発明で使用される水不溶性ポリマーは好ましくは、セルロース誘導体、さらに好ましくは酢酸セルロースを含む。本発明で使用される固体水溶性ポリマー材料は、2000から50000ダルトンの重量平均分子量を有するポリマーを含む。好ましい実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、水溶性セルロース誘導体、アラビアゴム、デキストリン、グアーガム、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールおよびゼインからなる群から選択される。特別な実施形態では、水溶性セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースを含む。特定の実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、5%(w:w)水溶液で400mPas未満の粘度を有する。特定の他の実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、5%(w:w)水溶液で300mPas未満の粘度を有する。他の実施形態では、固体水溶性ポリマー材料は、55℃を上回る軟化温度を有する。
【0007】
本発明の剤形は、錠剤または多粒子剤であってよい。特定の実施形態では、本発明の核は、糖を含む。さらに好ましくは、糖は、マンニトールである。特定の実施形態では、水不溶性ポリマーは、酢酸セルロースであり、前記固体水溶性ポリマー材料は、ヒドロキシプロピルセルロースである。特定の好ましい実施形態では、本発明の剤形は、薬学的に活性な成分としてバレニクリンまたはその薬学的に許容できる塩を含む一方で、水不溶性ポリマーは、酢酸セルロースであり、固体水溶性ポリマー材料は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0008】
本発明はさらに、少なくとも1種の薬学的に活性な成分を含む核が:
a.1種または複数の実質的に水不溶性のポリマーおよび
b.40℃/RH75%で12週間保存した後に約0.01%(w:w)を上回る量の過酸化水素またはホルムアルデヒドを含有しない1種または複数の固体水溶性ポリマー材料
を含む非対称膜でコーティングされている制御放出剤形を形成する方法を提供する。
【0009】
本発明のプロセスは、アセトンと水との混合物から、パンコーティングを使用して、コーティングを施与するプロセスを包含する。本発明のプロセスはさらに、非対称膜が酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含み、これらが、約9:1から6:4(v/v)、さらに好ましくは約3.5:1から約4.5:1(v/v)のアセトンと水との混合物から、パンコーターを使用してコーティングされるプロセスを包含する。特に、本発明のプロセスは、核がバレニクリンまたはその薬学的に許容できる塩を含むプロセスを包含する。
【0010】
最後に、本発明は、ニコチン依存症、中毒および禁断症状を治療するための、特に、禁煙療法において使用するための方法を提供するが、これは、バレニクリンまたはその薬学的に許容できる塩を含む核ならびに酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含む非対称膜技術コーティングを備えた剤形を1日1錠剤投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非対称膜コーティングを調製する際には、非対称膜コーティングの水不溶性成分を有利には、セルロース誘導体から形成する。特にこれらの誘導体には、セルロースエステルおよびエーテル、即ち、アシル基が2から4個の炭素原子からなるモノ−、ジ−およびトリアシルエステルならびにアルキル基が1から4個の炭素原子を有するセルロースの低級アルキルエーテルが含まれる。セルロースエステルはさらに、酢酸酪酸セルロースなどの混合エステルまたはセルロースエステルのブレンドであってもよい。同様の変形形態が、セルロースのエーテルに存在してもよく、セルロースエステルとセルロースエーテルとのブレンドも含まれる。本発明の非対称膜を製造する際に使用することができる他のセルロース誘導体には、硝酸セルロース、アセトアルデヒドジメチルセルロース、酢酸エチルカルバミン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸メチルカルバミン酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸ジメタミノ酢酸セルロース、酢酸エチル炭酸セルロース、酢酸ジメタミノ酢酸セルロース、酢酸エチル炭酸セルロース、酢酸クロロ酢酸セルロース、酢酸エチルシュウ酸セルロース、酢酸メチルスルホン酸セルロース、酢酸ブチルスルホン酸セルロース、酢酸p−トルエンスルホン酸セルロース、シアノ酢酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、メタクリル酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。特に好ましい水不溶性成分は、酢酸セルロースである。特に好ましい酢酸セルロースには、約40%のアセチル含分および約3.5%のヒドロキシル含分を有するものが含まれる。非対称膜技術コーティングを作成する際に、実質的に水不溶性であり、膜形成性であり、薬学的用途で使用するために安全である材料ならば、他の材料を使用することもできる。
【0012】
本発明の水溶性ポリマー成分は、40℃/相対湿度75%で12週間保存したとき約0.01%(w/w)(1ミリオン当たり100部(ppm))を上回る量で、過酸化水素またはホルムアルデヒドを形成しない固体ポリマー材料を含む。水溶性に関しては、固体水溶性ポリマー材料は優先的には、0.5mg/mLを上回る、さらに好ましくは2mg/mLを上回る、さらに一層好ましくは5mg/mlを上回る水溶性を有する。
【0013】
固体水溶性ポリマー材料は、室温を上回る溶融または軟化温度を有する。有利には、固体材料は、30℃を上回る、さらに有利には40℃を上回る、最も有利には50℃を上回る溶融または軟化温度を有する。当技術分野で知られているように、溶融および軟化点を、融点装置を使用して視覚的に決定することもできるし、あるいは示差走査熱分析(DSC)を使用して測定することもできる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。このようなポリマーは、天然ポリマーであってもよいし、天然産物の誘導体であってもよいし、完全に合成であってもよい。このような材料の分子量は有利には、移動を妨げ、膜形成を促進する程度に十分に高いが、コーティングが可能な程度に十分に低い(下記で検討)。したがって、本発明で好ましい分子量範囲は、2000から50000ダルトン(重量平均)である。本発明での非対称膜技術コーティングの水溶性成分として適している好ましいポリマーには、置換水溶性セルロース誘導体、アラビアゴム、デキストリン、グアーガム、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールおよびゼインが含まれる。特に好ましい水溶性ポリマーには、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルアルコールが含まれる。
【0014】
本発明者らは、コーティング溶液の粘度が高すぎると、非対称膜コーティングを得ることが難しく、この問題を解決するための1つの手法は、より希釈されたポリマー溶液を使用することであることを発見した。コーティング溶液の相挙動および水溶性成分と有機溶解性成分との両方を有することにより、水溶性ポリマーの濃度がどの程度まで低くてもよいか、さらに、工業化プロセスが得られるかについて、限界がある。この理由により、水溶性ポリマーが高すぎる粘度を有さないことが好ましい。5%(w:w)水溶液での粘度レベルに応じたスピンドルおよび速度の組合せを伴うブルックフィールドLVF粘度計(Brookfield Engineering Corp.(Middleboro、MA)から入手可能)を使用して、25℃で粘度を決定することができる。好ましい水溶性ポリマーは、5%(w:w)溶液で400mPas未満;さらに好ましくは300mPas未満の粘度を有する。
【0015】
前記基準を使用すると、特に好ましい水溶性ポリマーには、5%(w:w)で300mPas未満の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースが含まれる。このようなポリマーの市販の例には、Klucel EF(商標)およびNatrasol LR(商標)が含まれ、これらは両方とも、Aqualon Division of Hercules Corp.(Hopewell、VA)により製造されている。
【0016】
過酸化水素の形成に対する固体水溶性ポリマー材料の安定を、それぞれ40℃およびRH75%の温度および相対湿度(RH)を有するオーブンにこのポリマーを保存することにより測定することができる。ポリマーを、「開放」条件下にオーブン環境にさらして保存すべきである。ポリマーを少なくとも12週間保存すべきである。過酸化水素のレベルは、G.M.Eisenberg、「Colorimetric determination of hydrogen peroxide」、Ind.Eng.Chem.(Anal.Ed.)、1943年、15、327〜328頁に記載されているようにアッセイすることができる。これらの保存条件下で、本発明で許容できるポリマー材料は、1ミリオン当たり100部(ppm)未満;さらに好ましくは50ppm未満;および最も好ましくは10ppm未満の過酸化水素を有する。
【0017】
同様に、ホルムアルデヒドの形成に対する水溶性ポリマーの安定性を、40℃およびRH75%のオーブンにこのポリマーを保存することにより測定することができる。ポリマーは、密閉容器中に保存して、揮発性ホルムアルデヒドの損失を回避すべきである。ポリマーを少なくとも12週間保存すべきである。ホルムアルデヒドのレベルは、M.Ashraf−Khorassaniら、「Purification of pharmaceutical excipients with supercritical fluid extraction」、Pharm.Dev.Tech.2005、10、1〜10頁に記載されているようにアッセイすることができる。これらの保存条件下で、本発明で許容できる水溶性ポリマー材料は、100ppm未満、さらに好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満のホルムアルデヒドを有する。
【0018】
非対称膜技術コーティング処方物が、その機能を著しく変化させることがないか、または本発明の性質を変更することのない少量の他の材料を含有してもよいことは、当業者であれば認めるであろう。このような添加物には、流動促進剤(例えばタルクおよびシリカ)および可塑化剤(例えばクエン酸トリエチルおよびトリアセチン)が含まれ、これらは、必要な場合には、コーティングに対して約5%(w:w)未満のレベルで通常は加えられる。
【0019】
本発明の核は、1種または複数の活性な薬学的成分を含む。これらの活性な薬学的成分を単独で、または他の活性な薬学的成分と組み合わせて使用することができる。AMT系を用いた患者への薬物の送達は、薬物が膜空孔サイズよりも小さい形態であることを必要とするので、最も適した薬物は、十分な可溶性を有するか、粒子が空孔(通常の直径は5μm未満)を通過しうるような微細な粒度まで分散する。このような薬学的に活性な物質には、抗高血圧、抗不安、気管支拡張、抗低血糖、咳および風邪、抗ヒスタミン、うっ血除去、新生物、抗潰瘍、抗炎症、催眠、鎮静、精神安定、麻酔、筋弛緩、抗痙攣、抗鬱、抗微生物、無痛、抗ウイルス、禁煙などのために作用する薬物が含まれる。適切な薬学的に活性な成分の例には特に、アトルバスタチン、プソイドエフェドリン、セルトラリン、セチリジン、アジスロマイシンおよびバレニクリンが含まれる。本発明に特に好ましい薬物は、バレニクリンである。活性な薬学成分が薬学的に許容できる塩の形態であってもよいことは、当業者であれば認めるであろう。本発明のための核はさらに、可溶化添加剤を使用することもできる。活性な薬学成分が、剤形から溶液中に排出されるように十分に高い可溶性を有するpHに核を維持するためのpH緩衝添加剤が、このような添加剤には含まれる。他の可溶化添加剤には、例えば、可溶性が増強されるような高エネルギー形態に薬物を維持する物質が含まれる。このような材料を有利には、活性な薬学成分との分散剤として使用する。その好ましい例は、その内容が参照により本願明細書に援用される欧州特許出願公開第1027886A2号明細書および欧州特許出願公開第901786A2号明細書に記載されているように同時噴霧乾燥または同時押出により調製された腸溶ポリマーを伴う薬物の分散剤である。活性な薬学的成分は、薬物効力および圧縮特性に応じて、約0.1%(w:w)から約75%(w:w)の範囲のレベルで核中に存在してよい。
【0020】
核は、薬物送達に駆動力をもたらすのに役立つ浸透剤を含んでもよい。このような浸透剤には、水溶性の糖および塩が含まれる。特に好ましい浸透剤は、マンニトールである。
【0021】
AMT系の核は、安定性、製造可能性および系性能などの利点をもたらす他の添加剤を含有してもよい。安定化賦形剤には、pH変更成分、抗酸化剤、キレート化剤および当技術分野で知られているような他の添加剤が含まれる。製造可能性を改善する賦形剤には、流動性、圧縮または押出を補助する薬剤が含まれる。タルク、ステアリン酸塩およびシリカなどの添加剤により、流動を補助することができる。当技術分野で知られているように、薬物および賦形剤の顆粒化によっても、流動はやはり改善される。このような顆粒化には往々にして、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプンおよびポリビニルピロリドン(ポビドン)などの結合剤の添加が役立つ。処方物に希釈剤を加えることにより、圧縮を改善することができる。希釈剤の例には、当技術分野で知られているように、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロースなどが含まれる。押出により製造される核では、賦形剤の溶融特性が重要となりうる。通常、このような賦形剤が約100℃を下回る溶融温度を有することが好ましい。溶融プロセスのための適切な賦形剤の例には、エステル化グリセリンおよびステアリルアルコールが含まれる。圧縮剤形では、滑剤を加えることにより、製造可能性を改善することができる。特に好ましい滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0022】
当技術分野で知られているような標準的な錠剤化方法を使用して、核を製造することができる。このような方法は、粉末を金型に充填し、その後、適切なパンチを使用して圧縮することを含む。押出法により、核を製造することもできる。押出法は特に、小さい核(多粒子剤)を製造するために適している。好ましい押出法は、参照により援用される国際公開第2005/053653A1号パンフレットに記載されているような溶融噴霧凝結法である。種核に薬物を積層させることにより、核を調製することもできる。このような種核は有利には、糖、最も有利にはスクロースからなる。薬物を、当技術分野で知られているように、噴霧により、優先的には液床処理で核に施与することができる。
【0023】
本発明を実施する際には、核全体に対するコーティングとして非対称膜をもたらしうる任意の技術により、核に非対称膜をコーティングする。好ましいコーティング法には、パンコーティングおよび液床コーティングが含まれる。いずれのコーティング法でも、水不溶性ポリマーおよび水溶性ポリマー、さらに他の何らかの添加剤を初めに、適切な溶媒または溶媒を組み合わせたものに溶解または分散させる。適切な多孔性を有する膜を達成するために、コーティング溶媒を、性能に関して最適化する必要がある。通常、水不溶性ポリマー成分では、揮発性が高い程、良好な溶媒であるように溶媒を選択する。この結果、コーティングの間に、水不溶性ポリマー成分は溶液から沈殿する。系の多成分可溶性動態を試験することにより、好ましい溶媒および溶媒比を決定することができる。特に好ましい溶媒混合物は、約9:1から約6:4(v:v)の比のアセトンおよび水である。
【0024】
過酸化水素またはホルムアルデヒドを実質的な量で含まない固体水溶性ポリマー材料を含有する非対称膜技術コーティングは、禁煙薬のバレニクリン(およびその薬学的に許容できる塩)の剤形を提供する際に特に有用である。このようなコーティングを使用することにより、薬物を摂取している対象での副作用が最小限であるように、胃腸管での薬物送達を制御する剤形、特に錠剤が得られる。これらの剤形の特別な利点は、これらがバレニクリンの1日1回投与をもたらすことである。過酸化水素またはホルムアルデヒドを実質的な量で含まない固体水溶性ポリマー材料を含有する非対称膜技術コーティングを使用して、1日1回のバレニクリン投与が行われる場合、活性薬物の用量は好ましくは、0.5から5mg、さらに好ましくは1から3mgである。
【0025】
詳述のために、次の実施例を提供するが、これらは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
使用材料:
その内容を参照により本願明細書に援用される国際公開第9935131A1号パンフレットまたは国際公開第0162736A1号パンフレットに記載されている方法により、バレニクリン(L−酒石酸塩)を調製した。
FMC Pharmaceutical(Philadelphia、PA)から入手可能な微結晶性セルロース(Avicel(商標)PH200)。
SPI Polyois,Inc.(New Castle、DE)から入手可能なマンニトール(顆粒2080)。
Rhodia Inc.(Chicago Heights、IL)から入手可能な無水リン酸二カルシウム(A−tab(商標))。
Hercules,Inc.(Hopewell、VA)から入手可能なヒドロキシプロピルセルロース(Klucel(商標)EF)。
Mallinckrodt(St.Louis、MO)から入手可能な植物由来のステアリン酸マグネシウム。
Eastman Chemicals(Kingsport、TN)から入手可能な酢酸セルロース(398−10NF)。
Union Carbide Corp.(Dow Chemical Co.、Midland、MIの子会社)から入手可能なポリエチレングリコール(PEG3350)。
【実施例1】
【0026】
バレニクリンの非対称膜錠剤核の形成
錠剤用顆粒の45kgバッチを次のように調製した:微結晶性セルロース6750gおよびリン酸二水素カルシウム21626.7gを3ftのV形ブレンダー内で20分間混合した。ブレンドの半分をポリエチレンバッグ(バッグ「A」)に排出し、ブレンドの半分をブレンダー内に残したままにした。16クォートV型ブレンダーに、マンニトール7875gおよび薬物310.8gを加えた。次いで、マンニトール(100g)をAPI容器に加えて、残りの薬物を流した。次いで、このマンニトールを16クォートV形ブレンダーに加えた。この混合物を30分間混合した。次いでこの材料を、ポリエチレンバッグ(バッグ「B」)に排出した。マンニトール(7775g)を16クォートV形ブレンダーに加え、5分間混合した。このマンニトールを、バッグ「B」に排出した。次いで、バッグ「B」中の材料を3ftV形ブレンダーに残っている材料と組み合わせ、この混合物を10分間ブレンドした。次いで、バッグ「A」からの材料を、このとき空のバッグ「B」に加えて、ほぐれたAPIをバッグの壁からすすぎ落とした。次いで、この材料を3ftV形ブレンダーに加え、20分間混合した。次いで、ステアリン酸マグネシウム337.5gアリコットをV形ブレンダーに加え、混合物を5分間ブレンドした。混合物を、「S」ローラー、「B」オーガースクリューフィードおよび20kg/cmの圧縮圧を備えたFreund TF−156ローラー圧縮機(Vector Corp.、Freund Corporationの子会社(東京、日本)から入手可能)を使用してローラー圧縮して、0.6526の固体フラクションを得た。このリボンを、18メッシュConidurラスピングスクリーンを備えたM5Aミル(Fitzpatrick Corp.、Elmhurst、ILから入手可能)を300rpmで使用して粉砕した。次いで、粉末を3ftV形ブレンダーに戻して、10分間ブレンドした。さらなるステアリン酸マグネシウム222.1gを加え(ブレンド44189gに対して)、続いて、さらに5分間ブレンドした。
【0027】
9/32”(11mm)標準円形凹形(SRC)工具を使用するKilian T100(Kilian & Co.Inc.、Horsham、PA)錠剤プレスを使用することにより、顆粒を錠剤化して、250mg/錠剤(1.0mgA)の錠剤を得た。20rpmのフィードパドル速度で74rpmで操作して、使用された予備圧縮力は、2.8kNであり、主な圧縮力は、8kNであった。生じた錠剤は、6.5±2kpの硬度を示し、測定可能な破砕性は示さなかった。
【実施例2】
【0028】
コーティングされた非対称膜錠剤PEG対照の調製および安定性試験
アセトン4506gおよび水1547g中の酢酸セルロース538gおよびPEG134.5gからなるコーティング溶液を初めに調製することにより、実施例1で調製された錠剤をコーティングした。HCT−30EP Hicoater(Vector Corp.、Marian、IAから入手可能)を使用して、コーティングを実施した。27.5%のコーティング重量増加目標が達成されるまで、28℃の排気口温度で、噴霧速度20.0g/分を維持した。次いで、錠剤を40℃のオーブン中で16時間、棚乾燥させた。
【0029】
錠剤を40℃および相対湿度(RH)75%で6カ月保存した。錠剤のHPLC分析により、31%を上回る薬物が、分解生成物に変換したことが示された。
【実施例3】
【0030】
HPCでコーティングされた非対称膜錠剤の調製および安定性試験
2Lフラスコに、精製水1422.4g、次いでヒドロキシプロピルセルロース(Klucel EF)96.8gを加えたが、その際、攪拌(高架攪拌機を使用)を約3時間続けた。アセトン(4143.6g)をこの容器に加え、次いで、攪拌速度を上げて、渦を生じさせた。酢酸セルロース(387.2g)を徐々に加え、次いで、混合をさらに2時間続けた。実施例1からの核1100gを充填したLDCS−20コーター(Vector Corp.、Marian、IAから入手可能)を使用して、コーティングを実施した。ノズルから床までの距離を、2.75インチに調節した。27〜28℃の排気口温度および31〜35CFMの気流で、20.0g/分の噴霧速度を維持した。溶液1602.0gが付着するまで、錠剤に噴霧したが、これは、11.5%の重量増加に相当した。次いで、供給空気温度を40℃に調節し、錠剤をコーティングパンで10分間乾燥させた。次いで、錠剤を40℃のオーブン中で16時間、棚乾燥させた。
【0031】
錠剤を40℃およびRH75%で3カ月保存したが、この時点で、不純物の全量(HPLCによる)は、親ピークの0.10%に相当することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の薬学的に活性な成分を含む核を備え、少なくとも1つの非対称膜技術コーティングを備えた剤形であって、前記コーティングが:
a.1種または複数の実質的に水不溶性のポリマーおよび
b.40℃/RH75%で12週間保存した後に約0.01%(w:w)を上回る量の過酸化水素またはホルムアルデヒドを含有しない1種または複数の固体水溶性ポリマー材料
を有する剤形。
【請求項2】
前記剤形が主に浸透圧により薬物を送達する、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
前記薬学的に活性な成分がバレニクリンまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項1に記載の剤形。
【請求項4】
前記水不溶性ポリマーがセルロース誘導体を含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
前記セルロース誘導体が酢酸セルロースである、請求項4に記載の剤形。
【請求項6】
前記固体水溶性ポリマー材料が、2000から50000ダルトンの重量平均分子量を有するポリマーを含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項7】
前記固体水溶性ポリマー材料が、水溶性セルロース誘導体、アラビアゴム、デキストリン、グアーガム、マルトデキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールおよびゼインからなる群から選択される、請求項1に記載の剤形。
【請求項8】
前記水溶性セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項7に記載の剤形。
【請求項9】
前記固体水溶性ポリマー材料が、5%(w:w)水溶液で400mPas未満の粘度を有する、請求項1に記載の剤形。
【請求項10】
前記固体水溶性ポリマー材料が、5%(w:w)水溶液で300mPas未満の粘度を有する、請求項1に記載の剤形。
【請求項11】
前記固体水溶性ポリマー材料が、55℃を上回る軟化温度を有する、請求項1に記載の剤形。
【請求項12】
前記核が糖を含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項13】
前記糖がマンニトールである、請求項12に記載の剤形。
【請求項14】
ニコチン依存症、中毒および禁断症状を治療するための、特に、禁煙療法において使用するための方法であって、バレニクリンまたはその薬学的に許容できる塩を含む核ならびに酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含む非対称膜技術コーティングを備えた剤形を1日1錠剤投与することを含む方法。

【公開番号】特開2007−291105(P2007−291105A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−113622(P2007−113622)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】