説明

薬理活性物質を局所適用するための担体としてのゴム樹脂

【課題】ゴム樹脂と、局所的に許容される揮発性溶剤と、薬理活性物質とを含む皮膚疾患治療用の生物学的包帯剤を提供。
【解決手段】ゴム樹脂が適量含まれているので、溶剤の蒸発時に組成物が乾燥して、組成物が適用された皮膚または粘膜に付着する固形のコーティングが形成され、疾患症状を呈している皮膚または粘膜部位との持続した期間にわたる接触で薬理活性物質が維持される。この薬理学的組成物を用いて、皮膚疾患症状を治療する方法。
【効果】ベンゾインとクロトリマゾールのチンキ剤を含む生物学的包帯剤は、乾疱状白癬の症状を長期的に緩和する上で有効なことが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
導入
技術分野
本発明は、皮膚に付着し、皮膚疾患関連症状および粘膜に影響を及ぼす症状を治療するための薬理活性物質を1種以上含有する、ゴム樹脂を基剤とした生物学的包帯剤に関する。本発明の例として、ベンゾインおよびクロトリマゾールのチンキ剤を含む、汗疱状白癬治療用の生物学的包帯剤が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
一般用医薬品の粉剤、スプレー、液剤、ローション、クリームは、皮膚の状態の多くに関して効果が不十分である。その理由は、状態の発生源や原因への薬剤の送達がうまくいかないことから、患者の日常活動の際に薬剤が擦れてとれてしまうこと、せっかく適用した薬が患者のソックスや衣服に吸収されてしまうことに至るまで多岐にわたっている。現在入手可能な市販の薬剤は、こうした各種の理由のため、患部への適用後に剥がれやすいので、こうした問題を見越して過剰な量を適用したり、また適用部位から薬剤が分散したりしてしまう結果、薬剤の大半が無駄になっている。こうした状態に用いる薬剤の場合、通常は少なくとも2〜4週間の連続した治療が必要であり、以上のように送達がうまくいかない場合には、治療が失敗することも多い。
【0003】
既存の薬剤の使用に伴う別の問題は、患者が使用方法をきちんと守らないことである。用法が煩雑かつ困難であることから、患者は、往々にして、こうした一般用医薬品を、症状が緩解するまでしか使用せず、その時点で、つまり、推奨された治療過程が終了する前、そして往々にして、感染症が本当に解消する前に使用をやめてしまう。たとえ、その瞬間には感染症が緩解していたとしても、その後感染症はぶり返すわけで、数日から数週間のうちには、再び、本格的な感染症の状態となる。多くの場合、患者は、症状が消えるまで再度一般用医薬品を使用し、また、緩解の最初の徴候が見えたところで、薬剤の適用をやめてしまい、かくして、この悪循環が繰り返されることとなる。
【0004】
したがって、局所的に適用する医薬品の清浄かつ安価な賦形剤/担体であって、治療の簡便性と有効性を増し、治療に要する時間を短縮できるようなものが必要とされている。また、この賦形剤/担体は、その使用によって無駄が減り、費用が安くてすみ、結果的に患者の症状をよりよいかたちで治療することができ、患者の満足度が増すようなものであるのが好ましい。
【0005】
関連技術の説明
医学では、ベンゾインチンキ剤およびマスティックガム(マスティゾル)は、粘着性製剤が使用されるようになる前から、粘着性の塗膜を皮膚上に形成する際に使用されてきた。ベンゾインチンキ剤は、また、体表面の皮膚の創傷やアフタ性潰瘍(口内びらん)上に生物学的包帯剤を形成する際にも使用されてきた。しかし、マスティックガムやベンゾインガムのようなゴム樹脂を、薬理学的物質のトポロジーの効果や有用性を増大させる目的で半永久的に適用された担体として一般的に使用することは、開示されていない。
【0006】
ベンゾインチンキ剤は、性器いぼを治療する際に、ポドフィリン樹脂(10〜25%)とともに使用されてきたが、この治療は、厄介で面倒であると考えられることが多かった(米国特許第5,063,065号(特許文献1)および5,167,649号(特許文献2)を参照のこと)。また、ポドフィリン樹脂は残念なことに有害であり、ベンゾインチンキ剤への溶液として適用した場合であっても、適用の1〜6時間後には、徹底的な洗浄による除去が必要である。このように、ポドフィリン樹脂をベンゾインチンキ剤への溶液として使用することには問題があるので、他の担体が探索されてきた。たとえば、性器いぼの治療に関しては、Gohら(Singapore Med J (1998) 39: 17-19(非特許文献1))に、ポドフィリンを0.25%エタノール溶液として調製したものであれば、患者自身で適用が可能であり、ポドフィリンのベンゾインチンキ剤溶液を医療機関で適用したのと同程度に有効なことが報告されている。ベンゾインチンキ剤を生物学的包帯剤として用いて、皮膚と長期にわたって接触させることが望ましい化合物を担持させることは、報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,063,065号
【特許文献2】米国特許第5,167,649号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gohら(Singapore Med J (1998) 39: 17-19)
【発明の概要】
【0009】
ゴム樹脂を薬理活性物質の担体として使用することによって、哺乳動物の皮膚または粘膜における皮膚疾患の治療の有効性を高める組成物および方法が提供される。本薬理学的組成物は、ゴム樹脂と、ゴム樹脂以外の皮膚疾患治療用の局所的に許容される少なくとも一つの薬理活性物質であって、目的の病変部と少なくとも6時間接触させておいても、治療される哺乳動物に対して非毒性である薬理活性物質と、局所的に許容される揮発性溶剤とを含有している。本組成物には、任意選択的に、浸透性増強剤を含有させてもよい。皮膚疾患の症状の治療方法は、治療が必要な患者の皮膚の患部に、ゴム樹脂、薬理学的物質(一つまたは複数)、および蒸発性溶剤を含む薬理学的組成物を接触させる段階、ならびにこの組成物を乾燥させて生物学的包帯剤を形成させる段階を含む。生物学的包帯剤は、揮発性溶剤が蒸発した後は、ゴム樹脂の粘着性膜と、皮膚または粘膜上に残された薬理活性物質とを含む。包帯材は、適用部位で薬理活性物質を持続的に放出する、疎水性の保護膜を形成する。本発明は、感染症、炎症、および表皮細胞の過剰増殖などの皮膚疾患の治療に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
治療を必要としている哺乳動物、特にヒトの皮膚疾患の少なくとも1種の症状を、生物学的包帯剤を用いることにより、簡便かつ効果的に治療するための組成物および方法が提供される。「生物学的包帯剤(biological dressing)」、「生物的包帯剤(biologic dressing)」、または「生物学的包帯(biologic bandage)」という用語は、皮膚上で、ゴム樹脂(たとえばベンゾインまたはマスティック・ガム)、薬理活性物質、および局所的に許容される揮発性溶剤(たとえばエタノール)を含む薬理学的組成物を乾燥させることによって形成された、非閉塞性ではあるが接着性を有する薬理学的組成物を意味する。生物的包帯剤は、皮膚または粘膜の疾患症状を呈する1箇所または複数箇所の部位で保護コーティングを形成し、さらに1種または複数種の薬理活性物質の貯蔵手段として作用して、該部位に対して適当な医薬品またはその組み合わせを持続的に送達する。治療対象となる皮膚疾患症状としては、皮膚および粘膜の病変、炎症、かゆみ、鱗屑化、および痛みがある。疾患としては、ウイルス、真菌、および細菌感染症、炎症状態、ならびに過剰増殖性疾患が含まれる。1種もしくは複数種の薬理学的物質は、皮膚疾患症状緩和のために使用することができ、局所的に活性であるような物質、たとえば、抗微生物および抗ウイルス剤、抗炎症剤、鎮痛剤、ならびに麻酔剤を含むことができる。また、薬理学的物質の効果は、薬理学的組成物に必要に応じて皮膚浸透性増強剤に含有させることによって増大させることができる。生物学的包帯剤は、エタノールなどの溶剤を使用することによって、簡単に取り除くことができる。このように意図的に取り除くまで、薬剤を含有させた塗膜が、皮膚上に存在したままとなるので、皮膚が、長時間にわたって有効成分と接触しつづけることになり、治療効果が改善される。その結果、治療時間が短縮され、最終的には、症状の治療が向上し、患者の満足度が増すことになる。したがって、本発明の組成物は、有機溶剤、たとえばアルコールに可溶性で、通常は皮膚疾患の治療に際して適用される薬剤の送達を改善する目的で使用することができる。
【0011】
本発明の利点としては、皮膚疾患に罹患した部位に、医薬品をより具体的に指向されたかたちで適用できること、そして、膜が水や衣服による擦れに対して抵抗性であるために、薬剤が皮膚上で長時間保持されることを挙げることができる。また、賦形剤が比較的安価で、香りがよく、必要に応じて、包帯をアルコールなどで簡単に取り除くことができるという利点もある。さらに、皮膚の状態は、水分によって悪化することが多いので、この包帯剤が撥水性を有していることで、皮膚が、さらなる損傷から保護されていることになる。この生物学的包帯剤は、治療が必要な病変部に直接適用し、その位置にそのまま長時間にわたって位置させておくことを意図しており、その際には、通常の粘着性包帯を用いる必要がない。また、包帯剤を病変部から洗い流す必要があるのは、簡便さと清潔さを目的とする場合のみである。本発明の生物学的包帯剤は、通常の包帯剤や既存の薬剤と比較して、清潔かつ簡便に適用することができ、無駄が少なく経済的なので、より効率的、有効、快適に症状を緩和し、治療対象皮膚疾患を快復させることが可能である。本発明のさらなる利点は、ベンゾイン、マスティソルをはじめとして、使用する各種のゴム樹脂が、ヒトへの使用について承認済みであり、ヒト以外の哺乳動物の局所適用についても、試験を行った結果、安全であることが認められていることである。
【0012】
生物学的包帯剤は、皮膚疾患症状の緩和に使用できる薬剤と、揮発性溶剤に溶解したゴム残基とを含む薬理学的組成物を皮膚上で乾燥させることによって生成する。通常、薬理学的組成物は、皮膚または粘膜上の部位に適用しうる粘着性のスラリーまたは溶液として調製する。薬理学的組成物の粘稠度は、組成物中の溶剤対ゴム残基の比を調整して、具体的な適用部位に望ましい粘稠度とすることによって変化させることができる。溶剤の蒸発が遅い可能性のある領域、たとえば、歯肉のような粘膜上の病変部に適用する場合には、組成物をペーストとして調製し、揮発性が高めの溶剤を使用することが好ましい可能性があるのに対し、足指の間のような手の届きにくい領域に適用する場合には、患部に薄く塗ることのできる粘度の低い組成物を調製することが望ましい可能性がある。しかし、乾疱状白癬感染症などによって生じた目視確認できない領域のより重篤な病変部を治療する際には、粘度が高めの製剤を塗布することが好ましいかもしれない。好適な組成物でのゴム樹脂担体、1種以上の薬理活性物質、および蒸発性溶剤の相対的な割合は、生物学的包帯剤を具体的にどのようなケースに使用するかに応じて変わってくる。詳細な比として好適な値は、薬理活性物質の膜からの放出速度、形成された膜に対して望まれる粘着性、適用する面積によってある程度決まる。たとえば、適用しようとしている患部が顔にあるのであれば、好適な組成物は、薄く塗られ、目につきにくく、粘着性も低い医療用包帯剤を形成できるよう、ゴム樹脂の割合が低いものである。通常、本発明の薬理学的組成物には、少なくとも約10%のゴム樹脂、できれば、約20%、30%、または40%のゴム樹脂、場合によっては、50%または60%のゴム樹脂を含有させる。
【0013】
生物学的包帯剤の粘着性は、ゴム樹脂を使用することによって得られるもので、ゴム樹脂としては、通常、天然ゴム樹脂、たとえば、樹木から収穫されるゴム樹脂を使用するが、ゴム樹脂は、合成手段によって製造することも可能である(たとえば、米国特許第5,644,049号、5,429,590号、および4,307,717号を参照のこと)。好適なゴム樹脂としては、エゴノキ科(Styracaceae)の樹木から収穫したベンゾイン樹脂状出液水、たとえば、スティラックス・トキネンシス(Styrax tonkinesis)から得られるシャム・ベンゾインおよびスティラックス・ベンゾイン(Styrax benzoin)から得られるスマトラ・ベンゾインがある。ベンゾインチンキ剤およびベンゾイン化合物のチンキ剤は、薬局や外科資材の供給業者をはじめとする数多くの市販の供給元を介して容易に入手することができる。好適な樹木由来の樹脂状出液水で、外科用包帯の付着性を増すために医薬分野で一般的に使用されているものとしては、他にも、ピスタチア・レンチスクス(Pistacia lentiscus)から収穫される乳香ゴムがある。マスティックガムのチンキ剤(マスティゾル)は、ミシガン州ファーンデール(Ferndale)のファーンデール・ラボラトリーズ(Ferndale Laboratories)で製造されており、外科資材の供給業者を通しても入手可能である。使用が可能なゴム樹脂としては、他に、カンラン科(Burserceae)の樹木から得たゴム樹脂出液水、たとえばボスウェリア・セルラータ(Boswellia serrata、別名ボズウェリン)、ボスウェリア・ダルジエリ(Boswellia dalzielli)、ボスウェリア・カルテリ(Boswellia carteri)(ガム・オリバナム)、ならびにカナリウム・ルゾニクム(Canarium luzonicum)またはカナリウム・コムネ(Canarium commune)(エレミ・ガムまたは樹脂)がある。樹木からの樹脂状出液水として他に念頭に置いているものとしては、ユーカリ科(Eucalyptus)の種(ユークリプラス・グロビュルス(Eucalyptus globulus)ならびにフトモモ科(Myrtaceae)の「ティートゥリー」の種(メラリューカ・アルテルニフォリア(Melaleuca alternifolia)、レプトスペルムム・スコパリウム(Leptospermum scoparium)、およびクンゼア・エリコイデス(Kunzea ericoides))がある。多くの天然のゴム樹脂は、それ自体、薬理学的特性を有しており、局所的に適用すると、患者によっては刺激を生じたり、状態が悪化したりすることがある。生物学的包帯剤を調製する際に使用するゴム樹脂は、治療を行う皮膚の傷害や、その特定の患者の皮膚の感受性を考慮して、注意深く選択することが肝要である。
【0014】
本発明の組成物が有する望ましい特徴の一つは、この組成物が乾燥すると、粘着性で付着性の保護膜、すなわち、生物学的包帯剤が形成され、この生物学的包帯剤が皮膚の病変部を覆うことである。この特徴を実現するために、本発明の薬理学的組成物は、蒸発すると、ゴム樹脂と薬理学的物質を含む疎水性の塗膜が皮膚上に残るような揮発性溶剤を用いて調製する。本発明の組成物に使用する揮発性溶剤としては、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノール、ならびにケトン、たとえばアセトンがある。他の蒸発性化合物も、薬理学的組成物の他の成分と相溶性で、患者の大半に局所適用可能である限り利用可能である。選んだゴム樹脂を、揮発性溶剤で希釈し、この際、溶剤の濃度が、全組成物の少なくとも約40%または50%(v/vまたはv/w)、より一般的には少なくとも約60%、70%、または80%、あるいは、約90%となるように希釈を行う。特に好適な組成物は、ベンゾインが約60%、70%、80%、または90%のエタノールに溶解しているベンゾインチンキ剤である。
【0015】
薬理学的組成物に含有させる1種以上の薬理学的物質は、治療対象の皮膚疾患に応じて決まる。生物学的包帯剤と治療する病変部とを長時間にわたって接触させておくうえでは、選んだ薬理学的物質が、この薬剤含有被覆剤を適用する哺乳動物に対して、局所的、全身的に、毒性であったり、傷害を及ぼすことなく効果を発揮する必要がある。本発明の生物学的包帯剤については、少なくとも6時間、できれば8、10、または12時間にわたって、場合によっては16、18または20時間という長時間にわたって、そして治療の種類によっては24、36、または72時間、またはそれ以上という長時間にわたって、適用部位に適用しておいてから取り除くことを意図している。望ましい治療時間は、治療対象の状態と、使用する薬理学的物質の種類がどういったものなのかによっても、決まってくる。一般に、薬理学的組成物は、生物学的包帯剤に含有させる薬理学的物質の濃度が、既存の局所適用用処方剤でのその物質の濃度に近似するように処方する。しかし、ゴム樹脂を基剤とした生物学的被覆剤が付着性を有しているので、皮膚の病変部を、より長時間にわたって連続的に薬剤と接触させておくことが可能となっており、濃度を低めにした処方も可能であるし、その方が好ましいともいえる。したがって、使用量は、適宜調整可能である。一般に、使用量は、表示した濃度±25%の範囲、好ましくは表示した濃度±10%の範囲である。以下の段落では、具体的な物質の名称の後ろの括弧内に示すパーセントが、既存の局所適用用処方剤でのその物質の濃度である。
【0016】
本発明の生物学的包帯剤は、表面感染症(真菌、細菌、ウイルス、および寄生虫感染症)、炎症性の皮膚傷害をはじめとする数多くの皮膚疾患の治療で、具体的に利用することができる。また、毛の成長の刺激したりや抑制したりする薬理学的物質、皮膚の色素沈着および色素脱失剤、日焼け止め、防虫剤、抗狭心症薬、制汗剤、ならびに制吐剤を持続的に送達する際にも、本発明の生物学的包帯剤を使用することができる。
【0017】
本発明の組成物によって治療が可能な真菌感染症としては、カビ様の真菌(皮膚真菌類または白癬菌)あるいは酵母様の真菌(カンジダ)によって生じる、角質層または扁平上皮粘膜に限局された真菌感染症がある。特に念頭に置いているのは、白癬菌感染症、たとえば乾疱状白癬(足白癬)、白癬(頭部白癬)、たむし(股部白癬)、体部白癬、手白癬、および癜風の治療である。本発明に記載する生物学的包帯剤によって治療が可能な皮膚真菌感染症としては、他にも、カンジダ、表皮菌属、小胞子菌属、白癬菌属およびピチロスポルム属の感染症がある。体表面の真菌感染症の治療用組成物には、少なくとも1種の抗真菌薬理学的物質を含有させる。生物学的包帯剤組成物に使用できる抗真菌剤としては、当業界で周知のもの、たとえば、クロトリマゾール(0.5%、1.0%、2.0%)、ケトコナゾール((1%、2%)、エコナゾール(1%)、ミコナゾール(2%)、テルコナゾール(0.4%)、ブトコナゾール(2%)、オキシコナゾール(1%)、スルコナゾール(1%)、シクロピロクスオラミン(1%)、ハロプロジン(1%)、トルナフテート(1%)、アンホテリシンB(3%)、ブテナフィン(1.0%)、テルビナフィン(1.0%)、ナフチフィン、ナイスタチンおよびグリセオフルビンがある。適当な薬理学的物質を選ぶ際に参照して役立てることのできる文献としては、GoodmanおよびGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第9版、1996、Pergamon Press、New York、および最新版のthe Physician's Desk Reference (Medical Economics Company、Montvale, N.J.)がある。
【0018】
一次真菌感染症に際して生じる可能性のある二次細菌感染は、生物学的包帯剤に、局所適用が可能な抗生物質製剤をさらに含有させることによって、同時に、または予防的に治療が可能である。当業界で周知の抗生物質剤であって、本発明の組成物を調製するにあたって使用が可能なものとしては、クリンダマイシン(1%)、エリスロマイシン(1.5%、2.0%)、テトラサイクリン(3%)、ムピロシン(2.0%)、ゲンタマイシン(0.1%)、メトロニジゾール(0.75%、1%)、バシトラシン、ネオマイシン、およびポリミキシンBがある。治療の内容によっては、複数の異なった系統の細菌に対する抗生物質の組み合わせを含有する組成物が好ましいこともある。真菌感染症治療用の生物学的包帯剤に、ステロイド薬理学的物質、たとえば、ベータメタゾン(0.025%、0.05%、0.1%)をさらに含有させて、病変部の縮小を促進することもできる。
【0019】
主剤として抗生物質剤を有する生物学的包帯剤を調製して、こうした薬剤が伝統的に使用されてきた他の皮膚傷害、たとえば、伝染性膿痂疹、尋常性座瘡、ならびに体表面に生じる原因不明の皮膚感染症、および手術後の体表面の皮膚感染症(たとえば、カテーテル挿入部の周囲に生じる感染症)を治療することもできる。スルファジアジン銀(1%)を含有する生物学的包帯剤を適用することによって、創傷の治癒を助け、創傷(すなわち、1度の火傷を被った孤立領域)でのコロニー形成を抑制することができる。生物学的包帯剤に含有させるにあたって具体的に選択される抗生物質は、感染症の原因細菌の系統がどの物質に対して感受性を有するのか、また、患者が具体的に何を必要としているのかに応じてもちろん変わってくる。
【0020】
体表面の寄生虫による感染症、たとえば疥癬、シラミの卵、幼虫および成虫(アタマジラミおよびケジラミを含む)の治療を目的としたゴム樹脂包帯剤を調製することもできる。こうした感染症を治療には、殺ダニ剤または殺シラミ剤、たとえば、クロタミトン(10%)またはペルメトリン(5%)、リンデン(1%)、マラチオン(0.003%、0.06%、0.5%)、安息香酸ベンジル(26%〜30%)、チアベンダゾール、およびピレトリンを含有する薬理学的組成物を調製する。
【0021】
関節炎、関節の炎症、および筋痛に伴う痛みの治療のためには、1種以上の活性成分、たとえばメタノール(10%)、サリチル酸メチル(10%)、およびカプサイシン(0.01%〜10%)またはコルチコステロイド(適当な化合物および適用量については、以下を参照のこと)を含有するゴム樹脂包帯剤を調製することができる。この生物学的包帯剤組成物は、主剤がコルチコステロイドであるような皮膚の炎症性疾患の治療にも使用が可能である。ここで、特に念頭に置いているのは、コルチコステロイド応答性の炎症状態、たとえばアトピー性皮膚炎または湿疹、脂漏性皮膚炎、ある種の乾癬、アフタ性潰瘍(口内びらん)、有毒植物、たとえばアメリカツタウルシ(poison oak)またはツタウルシ(poison ivy)によるかぶれや虫さされによる体表面の皮膚患部、その他の原因不明の皮膚の発疹の治療である。生物学的包帯剤製剤には、当業界で公知の各等級(1〜7)すべてのステロイド剤を含有させることができる。こうしたステロイド剤としては、ベータメタゾン(0.025%、0.05%、0.1%)、クロベタゾール(0.05%)、ジフロラゾン(0.05%)、アムシノニド(0.1%)、デスオキシメタゾ(0.05%、0.25%)、フルオシノニド(0.05%)、ハルシノニド(0.1%)、トリアムシノロン(0.025%、0.1%、0.5%)、ヒドロコルチゾン(0.1%、0.2%、0.5%、1.0%、2.5%)、フルランドレノリド(0.05%)、アルクロメタゾ(0.05%)、フルランドレノリド(0.01%、0.025%、0.2%)、デソニド(0.05%)、デサメタゾン(0.1%)、およびメチルプレドニゾロン(1.0%)、クロコルトロン(0.1%)、フルチカゾン(0.05%、0.005%)、モメタゾン(0.1%)、プレドニカルバート(0.1%)、アムシノニド(0.1%)、およびハロベタゾール(0.05%)がある。実際にどのコルチコステロイド剤を選択するのかは、患者や治療対象となる皮膚疾患に応じて決まってくる。
【0022】
皮膚疾患の治療には、非ステロイド剤が適当である場合もある。例を挙げると、サリチル酸(2.5%、5%、10%、20%、40%、60%)を含有する生物学的包帯剤は、挫瘡、乾癬、イボ、をはじめとする角化症を治療するうえで適当である。カンタリジン(0.7%)、イミキモド(5%)、およびポドフィロクス(0.5%)は、性器いぼをはじめとするいぼを治療する目的で生物学的包帯剤を調製する際に使用しうる薬理学的物質の例である。挫瘡の治療に適した他の薬理学的物質としては、トレチノイン(0.025%、0.05%、0.1%、0.2%)、イソトレチノイン、アダパリン(0.1%)、アゼライン酸(20%)、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、過酸化ベンゾイル(2.5%、5%、10%)、およびスルファセタミド(10%)がある。メトロニダゾール(0.75%)を含有するゴム樹脂組成物は、酒さの治療に使用することができる。アントラリン(0.1%、0.2%、0.25%、0.4%、および0.5%)、カルシポトリエン(0.005%)および/またはタザロテンを含有する生物学的包帯剤は、乾癬の治療に使用することができる。
【0023】
特定の炎症性の皮膚によっては、生物学的包帯剤組成物に、ステロイド化合物とともに1種以上の抗ヒスタミン化合物も含有させて、炎症状態の病変部に伴いがちな痒みの緩和を助けることが望ましいこともある。当業界で公知のヒスタミンH1およびH2受容体ブロッカーは、特定の炎症性皮膚状態を治療するための生物学的包帯剤を調製するうえで有用であり、具体例としては、H1ブロッカーであるアステミゾール、およびテルフェナジン、H2ブロッカーであるシメチジンがある。
【0024】
抗ヒスタミンを主剤とする薬理学的組成物を用いて治療できる皮膚状態としては、じんま疹、リンパ組織増殖性疾患、たとえば真性一次性赤血球増加症およびホジキン病に伴う痒みがある。H1およびH2ブロッカーの両方を使用した場合に、最良の結果が得られることも多い。また、鎮痒ドキセピン(5%)を含有する薬剤含有ゴム樹脂包帯剤は、特定のタイプの湿疹を有する患者の痒みを緩和する際に使用することができる。局所適用したドキセピンは、ヒスタミンの効果を防ぐすることによって作用するようである。
【0025】
ゴム樹脂担体は、局所抗ウイルス剤の使用が適当であるようなものであれば、任意の体表面皮膚ウイルス感染症に使用することもできる。特に念頭に置いているのは、単純ヘルペス(1型および2型)によって生じるウイルス感染症の治療にあたってのアシクロビル(5%)の投与であるが、生物学的包帯剤は、パピローマウイルスによって生じる体表面皮膚感染症(たとえば、普通のいぼおよび性器いぼ)に適用することもできる。生物学的包帯剤に含有させて使用する抗ウイルス剤の他の例としては、ガンシクロビル、ペンシクロビル(1%)、ビダラビン(3%)、イドクスウリジン(0.5%)、およびトリフルウリジンがある。
【0026】
生物学的包帯剤は、特定の皮膚疾患によって生じる病変部に伴う痛みの緩和する際にも使用することができる。特に念頭に置いているのは、水痘帯状疱疹ウイルス(帯状疱疹、水痘)に伴って生じうる皮膚の痛みに対しての、局所適用が可能な局所麻酔薬を用いた治療である。皮膚疾患に伴う痛みを治療するために調製したゴム樹脂を基剤とする被覆剤に含有させて使用するうえで好適な薬理学的物質は、リドカインである(0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、25%、米国特許第5,709,869、5,601,838号、5,589,180号、および5,411,738号を参照のこと)。リドカイン、すなわち塩酸リドカインと化学的におよび/または薬理学的に関連した他の局所麻酔剤としては、塩酸ブピバカイン(0.25%、0.5%、0.75%、1.5%)、塩酸エチドカイン(1.0%、1.5%、3.0%)、塩酸メピバカイン(1.0%、1.5%、2.0%、3.0%、5.0%)、塩酸プリロカイン(4.0%、8.0%)、および塩酸テトラカイン(0.5%、1.0%、2.0%)がある。他の好適な局所麻酔剤としては、水への溶解度が低く、局所に適用することによって持続的な局所麻酔作用を得るのに特に適したものが挙げられる。水への溶解度が低い局所麻酔剤の例としては、ベンゾカインおよびテトラカインヨウ化水素酸塩が挙げられる。粘膜および皮膚の治療に使用される局所麻酔剤としては、さらに、ジブカイン、塩酸ジクロニン(0.5%、1.0%)、および塩酸プラモキシン(1.0%)がある。局所に適用することによって皮膚の痛みを緩和する薬理学的物質のさらに別の例としては、カプサイシン(0.025%)がある。
【0027】
合成ホルモンを含有するゴム樹脂組成物は、ホルモン生成異常や受胎に関連した各種徴候の治療に使用することができる。たとえば、経皮テストステロンを通常1回あたり約2.5〜5.0mg、または同等の他のアンドロジェン化合物を適量含有するゴム樹脂組成物は、先天性または後天性原発性性腺機能低下症、あるいは先天性または後天性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、または他の類似疾患を有する若年男性の治療に使用することができる。女性の場合には、エストラジオール(活性状態のエストロジェン)または他の同等のエストロジェン化合物を適量含有するゴム樹脂組成物を、萎縮性腟炎、外陰部の萎縮性ジストロフィー、閉経症状、女性性腺機能低下症、卵巣切除術、原発性卵巣不全、非ステロイド依存性の手術不能の乳ガン、および閉経に伴う血管運動症状に伴う徴候および症状の治療、ならびに閉経後骨粗鬆症の予防に用いることができる。ゴム樹脂組成物は、徴候の治療に十分な量のエストロジェン化合物、たとえば、エストラジオールを含有させて使用する。
【0028】
ノルエチンドロン(プロゲスチン)を含有する組成物は、排卵抑制および頚部粘膜肥厚による妊娠防止に使用することができる。また、プロゲスチン化合物、たとえば、ノルエチンドロン(適用1回あたり0.14〜0.25 mg)を含有するゴム樹脂組成物は、月経異常状態、たとえば、無月経、子宮の異常出血、および子宮内膜症の治療に使用することができる。適用は、通常、皮膚に対して行うが、ゴム樹脂組成物の適用部位は、用途に応じて変わる。一般に、適用部位は、皮膚の、血流への吸収が可能となるような位置である。しかし、特に女性生殖器関連の治療に関しては、膣内への適用も可能である。
【0029】
ゴム樹脂組成物は、毛の成長を遅らせたり、刺激したりする薬理学的物質を持続的に送達する際にも有用である。毛の成長を刺激するための治療には、ミノキシジル(1%、2%、5%)を含有する組成物を調製する。ゴム樹脂とともに使用が可能な他の局所用処方剤については、米国特許第6,184,249号を参照されたい。毛の成長を遅らせるための治療には、塩酸エフロルニチン(13.9%)を含有する組成物を調製する。
【0030】
ゴム樹脂賦形剤は、日焼け防止用紫外線吸収剤を含む保護組成物を調製する際にも使用することができる。ゴム樹脂を基剤とした被覆剤に配合して用いることのできる日焼け止め剤としては、アミノ安息香酸エステル剤、たとえば、p-アミノ安息香酸(PABA)、アミノ安息香酸エチル4-[ビス(ヒドロキシプロピル)]、オクチルジメチルPABA、PABAプロポキシレート、グリセラルPABA、2-エチルヘキシルPABA、および、ペンチルPABA;桂皮酸エステル剤、たとえば、シノキセート、p-メトキシ桂皮酸ジエタノールアミン、p-メトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、およびメトキシ桂皮酸オクチル;ベンゾン、たとえば、オキシベンゾン、ジオキシベンゾン、スルイソベンゾン;サリチル酸エステル、たとえばサリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン、およびサリチル酸オクチル;ならびに他の日焼け止め剤、たとえば二酸化チタンおよび酸化亜鉛がある。日焼け止め剤として使用する際には、通常、薄いゴム樹脂/紫外線吸収剤製剤を、皮膚の日光にさらされる領域に適用する。高度の高い場所で鼻の皮膚を保護するために日焼け止めを塗布するような状況など、状況によっては、もっと濃いゴム樹脂処方剤を適用した方が、皮膚の露出部分を日光からきちんと保護できる。ゴム樹脂/日焼け止め化合物処方剤は、こすれたり湿気にさらされたりしても剥がれにくいので、皮膚の露出部分を長期にわたって日焼けから保護するうえで特に有効であり、この点が有利である。
【0031】
ゴム樹脂組成物は、皮膚に色素を沈着させたり、皮膚から色素を脱失させたりする際に用いる薬理学的物質、たとえば、白斑を有する患者の治療に用いる薬理学的物質を用いて調製することもできる。孤立した皮膚領域の色素脱失や薄色化を目的とした治療には、ヒドロキノン(2%、3%、4%)を含む薬理学的組成物を調製する。皮膚の所望領域に色素を沈着させる治療には、紫外線と組み合わせて使用できるよう、ソラーレン剤、たとえばメトキサレン(1.0%)を含む組成物を調製することができる。
【0032】
薬物添加包帯剤は、制汗剤、抗狭心症薬、制吐剤、抗癌剤を、持続的に送達する際にも有用である。ここで特に念頭に置いているのは、孤立した皮膚領域の発汗を抑制するために塩化アルミニウム(20%)を含有させた組成物で、この組成物は、たとえば、外科的処置に際して補助的に使用することができる。ニトログリセリン(0.5%、1.0%、2.0%)を含有させたゴム樹脂組成物は、この抗狭心症薬を持続的に皮膚を解して送達する際に使用することができ、抗狭心症薬の持続的送達によって胸痛の緩和が可能となる。車酔い等による吐き気は、スコポラミンを含有させた生物学的包帯剤を使用することによって緩和することができる。制吐目的で使用する場合には、吐き気を催す可能性のある活動の開始前に、耳の後ろ側などに、ゴム樹脂/スコポラミン組成物を適用すればよい。また、表面癌の癌および前癌病変部の治療に有用な薬理学的物質を持続的に送達させる目的で、ゴム樹脂包帯剤を調製することもできる。ここで特に念頭においているのは、5-フルオロウラシル(5-FU;5%、10%)を含有させた生物学的包帯剤を用いた光線性角化症の孤立病変部の治療である。
【0033】
ゴム樹脂担体は、薬理学的物質として防虫剤を用いることによっても調製することができる。生物学的包帯剤に含有させるのに適した防虫剤化合物としては、テルペノイド、たとえばシトロネラール、ゲラニオール、まつやに、ボレイハッカ、セダー油、ユーカリ、およびウィンターグリーン;ベンゾキノン;芳香族化合物、たとえばクレゾール、ベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド、安息香酸;ならびに合成防虫剤、たとえばN、N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)、エチルヘキサンジオール、フタル酸ジメチル、ジメチルエチルヘキサンジオール、カルバート、ブトピロノキシル、イソシンコンメロン酸ジ-n-プロピル、N-オクチルビシクロヘプテン、ジカルボキシミド、および2、3、4、5-ビス(2-ブチレン)テトラヒドロ-2-フルアルデヒドがある。防虫剤として使用する場合には、ゴム樹脂製剤は、皮膚の、虫に攻撃される可能性が最も高い領域に、薄い塗膜として適用するのが好ましい。使用する防虫剤化合物としては、皮膚を刺激することなく虫を忌避しうるものが好ましい。上述の日焼け止め製剤の場合と同様、ゴム樹脂/防虫剤処方剤は、こすれたり湿気にさらされたりしても剥がれにくいので、皮膚に長期にわたって防虫性を付与するうえで特に有効であり、この点が有利である。
【0034】
ゴム樹脂組成物は、薬物依存症の治療にも使用することができるニコチンへの依存を減らす十分な量、通常は1回分あたり約14〜22 mg、または他の適量のニコチンを含む組成物は、喫煙、噛みたばこの喫色をはじめとする各種のニコチン含有化合物の量を減らしたり、および/または完全にやめたりする際に使用することができる。この場合、組成物は、ニコチンが十分吸収されうる位置、通常は上腕部の皮膚に適用する。また、組成物中のニコチン量は、ニコチン要求量の低下にあわせて減らしていく。
【0035】
生物学的包帯剤には、任意選択的に、浸透性増強剤、すなわち、製剤に含有させると皮膚の薬剤浸透性を一時的に増大させて、より多くの薬剤のより短時間での吸収が可能となるような化学物質を含有させることができる。使用可能な浸透性増強剤の例としては、ジメチルスルホキシド、n-デシルメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-メチル-2-ピロリドン、およびオクチルフェニルポリエチレングリコールがある。
【0036】
生物学的包帯剤には、必要に応じて、薬剤の効果や樹脂状送達賦形剤に悪影響を及ぼさず、塗布した皮膚に傷害を生じない他の薬理学的に許容される担体を含有させることもできる。適当な薬理学的担体としては、滅菌水;生理食塩水、デキストロース;デキストロースの水または生理食塩水溶液;ヒマシ油1モルあたり約30〜約35モルのエチレンオキシドを加えたヒマシ油およびエチレンオキシドの濃縮生成物;液状の酸;低級アルカノール;油、たとえばコーン油、ピーナツ油、ゴマ油などに、乳化剤、たとえば脂肪酸のモノ-またはジグリセリド、もしくはホスファチド、たとえば、レシチンなどを加えたもの;グリコール;ポリアルキレングリコール;水性溶媒を懸濁剤、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロースと共存させたもの;アルギン酸ナトリウム;ポリ(ビニルピロリドン)などがあり、これらは、単独で使用することも、適当な分散剤、たとえば、レシチン、ステアリン酸ポリオキシエチレンなどとともに使用することもできる。担体には、さらに、アジュバント、たとえば、保存剤、安定化剤、保湿剤、乳化剤を含有させることもできる。
【0037】
皮膚疾患症状の治療方法を患者で実施するにあたっては、薬理学的組成物を、調製された形状のまま、治療を要する皮膚の病変部または損傷部位に、直接かつ部位限定的に適用する。生物学的包帯剤組成物は、ゴム樹脂担体と薬理活性物質の双方が、その処方とすることで、組成物適用皮膚表面に効果的に付着し、揮発性溶剤蒸発後に保護遮断膜が皮膚上に形成されるのであれば、基本的に、局所適用に適した任意の剤形、たとえば、ペースト、液体、半固形状、ゲル、懸濁液、乳液などとして調製することができる。組成物は、無駄を減らすうえでも、通常は、塗りつけたり、脱脂綿等に含ませて塗布することによって皮膚の1箇所以上の患部に適用するが、製剤の種類によっては、処方物を吹き付けて乾燥させることによって適用することもできる。生物学的包帯剤組成物は、患者が体表面に皮膚の病変部または感染症を有するのであれば、皮膚領域、粘膜、粘膜と皮膚の移行部(すなわち、肛門周囲、間擦性、および陰門膣領域)など、いずれの部位にも適用可能である。適用後は、揮発性溶剤が蒸発し、塗布した皮膚表面上に、皮膚に付着して固形化した疎水性の保護膜または塗膜が残る。固形化した膜状残留物は、ゴム樹脂担体と、1種以上の薬理活性物質とを含有している。ゴム樹脂によって、皮膚表面上に、薬理活性物質を保持する遮断膜が形成されるので、1種以上の薬剤が持続的かつ連続的に放出され、皮膚が長期にわたってその1種以上の薬剤と接触しつづけることが可能となる。塗膜が所定位置に存在しているかぎり、皮膚は、薬剤と連続的に接触しつづける。したがって、生物学的包帯剤を用いた場合には、薬剤の適用回数を減らしても、症状を緩和させることが可能となる。ゴム樹脂を基剤とした被覆剤を用いて治療を行う皮膚疾患の大半において、1日1回または2回の適用で、目的皮膚病変部の縮小または消滅を十分促すことができる。効果が非顕著な特定の病変部に対しては、症状を解消させるために1日3回の適用が必要となることもある。一方、皮膚疾患によっては、隔日の塗布で症状を緩和させうる場合もある。組成物は、適当な溶剤、通常はエタノールを使用することによって、いつでも簡単に除去できる。組成物は、石鹸と水でこすって除去することもできる。
【0038】
以上では、本発明を一般的に説明してきたが、本発明は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されると思われる。なお、これらの実施例は、本発明を例示するためにのみ挙げるものであって、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
ベンゾインとクロトリマゾールのチンキ剤を含む、ゴム樹脂を基剤とする生物学的包帯剤による汗疱状白癬(足白癬)の治療
標準的なベンゾインチンキ剤(3M、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis, Minn.))を用いて、ベンゾイン組成物のチンキ剤を製造した。ベンゾインチンキ剤を、60%のアルコールおよび1%のクロトリマゾールとともに含有する組成物を用いて、反復実験を行った。乾疱状白癬治療時の効果を判定するために、乾疱状白癬に症例に対してベンゾイン/クトロリマゾール組成物を適用し、これを5回繰り返した。各回とも、この組成物を7日間にわたって1日2回適用した場合には、乾疱状白癬が1週間以内に完全に解消した。試験では、アレルギー反応は観察されなかったが、深い裂傷への適用時に、アルコール成分が刺痛を生じることが報告された。組成物適用部位の塗膜上にソックスの糸くずの付着が少量認められたが、エタノールで簡単に除去可能であった。ベンゾイン/クトロリマゾール組成物の効果を、ベンゾインチンキ剤を単独で適用した対照例および治療を行わなかった対照例と比較した。ベンゾインチンキ剤単独でも、治療を行わなかった場合と比較すると、症状や徴候がより速やかに改善されたものの、ベンゾイン/クトロリマゾール組成物を用いた場合には、ベンゾインチンキ剤単独の場合より、症状がさらに速やかに緩和し、早期の治癒が達成された。これは、チンキ剤の粘着性塗膜が水分をはじくことによるものである可能性が高い。ベンゾイン/クトロリマゾール組成物の効果については、市販の薬剤、たとえば、ラミジル(R)、ロトリミン(R)、マイセレックス(R)、およびティナクティン(R)との比較も行った。ベンゾイン/クトロリマゾール組成物の場合、市販の薬剤の各製剤と比較して、特に、市販の薬剤を粉末、液剤、溶液、スプレー、ゲルの剤形として投与した場合には、治療に要する時間が大幅に短縮された。ベンゾイン/クトロリマゾール組成物は、上記薬剤をクリーム剤とした場合と比較しても、治療に要する時間が短縮され、また、検討した市販のどの製剤よりも取り扱いが簡単であった。
【0040】
以上の結果から明らかなように、生物学的絆創膏を形成するゴム樹脂担体に局所適用可能な薬理学的物質を担持させて適用すると、現在入手可能な担体の場合と比較して、皮膚の疾患症状がよりよく緩和される。ゴム樹脂を基剤とした生物学的包帯剤を用いると、皮膚病変部の不快な症状が、より効率的かつ、簡便で不快感なく緩和される。
【0041】
本明細書で言及したすべての刊行物および特許出願は、本発明に関与する技術の当業者の技術レベルを示すものである。すべての刊行物および特許出願は、各刊行物および特許出願が具体的且つ個別に参照として組み込まれるのと同程度に、本明細書に参照として組み込まれる。
【0042】
本発明は十分に説明されているので、当業者であれば、付随する特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、数多くの変更や改良を加えることができるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ゴム樹脂と、
b)哺乳動物の皮膚または粘膜の疾患症状緩和用治療剤として有効な、該ゴム樹脂以外の少なくとも1つの局所的に許容される薬理活性物質であって、該皮膚または粘膜と6時間を超える時間にわたって該哺乳動物に対して毒性作用を示すことなく接触させておくことができる薬理活性物質と、
c)該ゴム樹脂および該薬理活性物質のための局所的に許容される揮発性溶剤と
を含む薬理学的組成物。
【請求項2】
ゴム樹脂がベンゾインを含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
局所的に許容される揮発性溶剤がエタノールを含む請求項1記載の組成物。
【請求項4】
局所的に許容される揮発性溶剤がエタノールであり、組成物の約60%から90%を構成する、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
薬理活性物質が抗菌剤である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
抗菌剤が抗真菌剤である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
抗真菌剤がクロトリマゾールである請求項6記載の組成物。
【請求項8】
クロトリマゾールが組成物の1%の量で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
薬理活性物質がステロイド剤である請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ステロイド剤がベータメタゾンである請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ベータメタゾンが組成物の0.025〜0.05%の量で存在する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
薬理活性物質が抗菌剤とステロイド剤の双方を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
浸透性増強剤をさらに含む請求項1記載の組成物。
【請求項14】
a)ベンゾインと、
b)クロトリマゾールと、
c)エタノールと
を含む薬理学的組成物。
【請求項15】
皮膚疾患の症状を緩和するための治療の有効性を、症状の緩和を必要としている患者において高める方法であって、
a)該皮膚疾患の症状を呈している該患者の皮膚部位に、請求項1記載の薬理学的組成物を接触させる段階、および
b)該組成物を乾燥させて、皮膚上に膜を形成させることにより、該症状を緩和するための該治療の有効性が高められる段階
を含む方法。
【請求項16】
皮膚疾患が真菌感染症であり、薬理活性物質が抗真菌化合物である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
真菌感染症が乾疱状白癬である請求項16記載の方法。
【請求項18】
抗真菌化合物が濃度約1重量%のクロトリマゾールである、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
皮膚疾患が皮膚の炎症性疾患である請求項15記載の方法。
【請求項20】
炎症性疾患が、湿疹、脂漏性皮膚炎、および乾癬からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
薬理活性物質が抗炎症性ステロイド剤である請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
抗炎症性ステロイド剤が、濃度約0.025重量%〜0.05重量%のベータメタゾンである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
皮膚疾患が細菌感染症である請求項15記載の方法。
【請求項24】
薬理活性物質が抗菌剤である請求項23記載の方法。
【請求項25】
皮膚または粘膜の疾患の症状を緩和する治療として生物学的包帯剤を製造する方法であって、
哺乳動物の該疾患の症状を呈する部位の皮膚または粘膜上で請求項1記載の組成物を乾燥させて、該皮膚または粘膜上で膜を形成させることにより、該症状を緩和させるための生物学的包帯剤が得られる段階を含む方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法によって得られた生物学的包帯剤。
【請求項27】
a)ベンゾインと、
b)1%のクロトリマゾールと、
c)60%のエタノールと
を含む薬理学的組成物。
【請求項28】
a)乾疱状白癬の症状を呈している皮膚部位に、請求項14または27記載の薬理学的組成物を接触させる段階、および
b)該組成物を乾燥させて皮膚上に膜を形成させることにより、乾疱状白癬の症状が治療される段階
を含む、乾疱状白癬の治療方法。

【公開番号】特開2010−155853(P2010−155853A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35523(P2010−35523)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【分割の表示】特願2003−504893(P2003−504893)の分割
【原出願日】平成14年5月23日(2002.5.23)
【出願人】(503465030)
【Fターム(参考)】